JP4778036B2 - 車両のシートベルト装置 - Google Patents

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Description

この発明は、車両のシートに着座した乗員をウェビングによって拘束する車両のシートベルト装置に関するものである。
近年、シートベルト装置として、緊急時にモータによってウェビングを引き込むものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
このシートベルト装置は、ウェビングを引き込むためのモータと、車両の緊急状態を検出する車両状態検出手段と、車両状態検出手段の検出信号を受けてモータの通電電流を制御するコントローラを備え、車両状態検出手段が緊急状態を検出すると、コントローラによる制御によってモータを駆動し、ウェビングによって乗員を拘束するようになっている。
特開2008−18843号公報
ところで、この種のシートベルト装置では、緊急時等のモータの作動トリガとして、車両状態量の一つである加速度(減速度)が用いられることがある。この場合、例えば、緊急時等に乗員によって車両操作デバイス(例えば、ブレーキ装置)が設定量以上操作されて車両加速度の絶対値が設定閾値以上になると、シートベルト装置のモータを巻取り方向に作動させ、ウェビングによって乗員を拘束する。
しかし、このようなシートベルト装置においては、熱や経時劣化等の影響によって車両操作デバイスの機能が低下すると、乗員が危険を察知して車両操作デバイスを操作してから、実際に車両加速度の絶対値が設定閾値に達するまでの時間が長くなり、その結果、危険察知から乗員拘束の完了までに多く時間を要してしまう。
そこで、この発明は、車両操作デバイスの機能低下に拘わらず、常時速やかに乗員を拘束することのできる車両のシートベルト装置を提供しようとするものである。
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、ウェビングが巻回されたベルトリール(例えば、後述の実施形態におけるベルトリール12)と、このベルトリールに駆動力を伝達するモータ(例えば、後述の実施形態におけるモータ10)と、乗員による操作によって車両加速度を含む車両の運動状態量を変化させる車両操作デバイス(例えば、後述の実施形態におけるブレーキ装置23)と、を備え、前記モータを制御することによって前記ウェビングで乗員を拘束する車両のシートベルト装置において、前記車両加速度の加速度の絶対値が判定閾値を超えたときに前記ウェビングによる乗員拘束を要すると判定する拘束判定手段(例えば、後述の実施形態における第2の拘束判定手段27)と、この拘束判定手段が乗員拘束を要すると判定したときに前記モータの制御を実行するモータ制御手段(例えば、後述の実施形態におけるモータ制御手段28)と、前記車両操作デバイスの機能低下を判定する機能低下判定手段(例えば、後述の実施形態における温度センサ25及び温度判定手段29)と、前記機能低下判定手段が機能低下と判定したときに、前記拘束判定手段の判定閾値を下方にシフトさせることを特徴とする。
熱や経時劣化等の影響によって車両操作デバイスの機能が低下すると、機能低下判定手段が機能低下有りと判定し、その結果、拘束判定手段による車両加速度の絶対値の判定閾値が下方にシフトされるようになる。これにより、拘束判定手段が比較的低い車両加速度で拘束を要するものと判定するようになり、車両操作デバイスの操作の開始からモータ制御による乗員拘束までの時間が短縮されるようになる。
請求項2に記載の発明は、ウェビングが巻回されたベルトリールと、このベルトリールに駆動力を伝達するモータと、乗員による操作によって車両加速度を含む車両の運動状態量を変化させる車両操作デバイスと、を備え、前記モータを制御することによって前記ウェビングで乗員を拘束する車両のシートベルト装置において、前記車両操作デバイスの操作量が判定閾値を超えたときに前記ウェビングによる乗員拘束を要すると判定する第1の拘束判定手段(例えば、後述の実施形態における第1の拘束判定手段26)と、前記車両加速度の絶対値が判定閾値を超えたときに前記ウェビングによる乗員拘束を要すると判定する第2の拘束判定手段(例えば、後述の実施形態における第2の拘束判定手段27)と、前記第1の拘束判定手段と前記第2の拘束判定手段の少なくとも一方が前記ウェビングによる乗員拘束を要すると判定したときに前記モータの制御を実行するモータ制御手段と、前記車両操作デバイスの機能低下を判定する機能低下判定手段と、前記機能低下判定手段が機能低下と判定したときに、前記第1の拘束判定手段の判定閾値を上方にシフトさせるとともに、前記第2の拘束判定手段の判定閾値を下方にシフトさせることを特徴とする。
熱や経時劣化等の影響によって車両操作デバイスの性能が低下すると、機能低下判定手段が機能低下有りと判定し、その結果、第1の拘束判定手段による操作デバイスの操作量の判定閾値が上方にシフトされるとともに、第2の拘束判定手段による車両加速度の絶対値の判定閾値が下方にシフトされるようになる。これにより、第2の拘束判定手段が比較的低い車両加速度で拘束を要するものと判定するようになり、車両操作デバイスの操作の開始からモータ制御による乗員拘束までの時間が短縮される。また、第1の拘束判定手段が大きな操作量でなければ拘束を要するものと判定しなくなるため、ウェビングによる積極的な乗員拘束を必要としない車両操作デバイスの操作時にモータが頻繁に作動することが無くなる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両のシートベルト装置において、前記第1の拘束判定手段が前記ウェビングによる乗員拘束を要すると判定してから所定時間内に前記第2の拘束判定手段が乗員拘束を要すると判定しない場合に、前記モータの制御をキャンセルするキャンセル手段(例えば、後述の実施形態におけるキャンセル手段30)を備えていることを特徴とする。
これにより、車両操作デバイスの操作量が一時的に判定閾値を越えても、その後に車両加速度の絶対値が所定時間内に判定閾値を超えない状況、つまり、乗員に大きな加速度が作用する可能性の少ない状況では、速やかにウェビングによる乗員拘束が解除されるようになる。
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の車両のシートベルト装置において、前記モータ制御手段は、前記ベルトリールの回転位置を基準拘束位置に保持するように前記モータを制御する保持制御モードと、前記ベルトリールを前記基準拘束位置から巻取り方向に所定量以上回転させるように前記モータを制御する強拘束制御モードと、を備え、前記第1の拘束判定手段が乗員拘束を要すると判定したときには、前記保持制御モードで前記モータを制御し、前記第2の拘束判定手段が乗員拘束を要すると判定したときには、前記強拘束制御モードで前記モータを制御することを特徴とする。
車両操作デバイスを操作するときには、多くの場合、車両操作デバイスの操作量が増大し、その後に遅れをもって車両加速度が増大するようになる。このため、第1の拘束判定手段が車両操作デバイスの操作量を基にして乗員拘束を要すると判定した後に、第2の拘束判定手段が車両加速度を基にして乗員拘束を要すると判定しない状況が考えられる。このシートベルト装置においては、最初に第1の拘束判定手段が乗員拘束を要すると判定したときには、モータが保持制御モードで制御されるため、ウェビングが大きく引き込まれて乗員を強く拘束することがない。また、この後に第2の拘束判定手段が乗員拘束を要すると判定したときには、モータが強拘束制御モードで制御されるため、ウェビングの大きな引き込みによって乗員が強くシートに拘束されるようになる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両のシートベルト装置において、前記機能低下判定手段は、前記車両操作デバイスの機能低下の度合いを判定し、その度合いに応じて前記拘束判定手段の判定閾値を多段階、若しくは、連続的に変化させることを特徴とする。
これにより、拘束判定手段の判定閾値は、車両操作デバイスの性能の低下度合いに応じて調整されるようになる。
請求項1に記載の発明によれば、車両操作デバイスの機能低下を機能低下判定手段によって判定し、機能低下判定手段が機能低下と判定したときに、拘束判定手段による車両加速度の判定閾値を下方にシフトさせるため、乗員拘束を必要とする状況下では、車両操作デバイスの機能低下に拘わらずウェビングによる迅速な乗員拘束を得ることができる。
請求項2に記載の発明によれば、車両操作デバイスの機能低下を機能低下判定手段によって判定し、機能低下判定手段が機能低下と判定したときに、第1の拘束判定手段による車両操作デバイスの操作量の判定閾値を上方にシフトさせるとともに、第2の拘束判定手段による車両加速度の判定閾値を下方にシフトさせるため、車両操作デバイスの機能低下に拘わらずウェビングによる迅速な乗員拘束を得ることができ、しかも、乗員拘束を必要としない状況下での頻繁な乗員拘束を低減することができる。したがって、この発明によれば、乗員の安全性の向上と快適性の維持を両立させることができる。
請求項3に記載の発明によれば、車両操作デバイスの操作量が一時的に判定閾値を越えても、乗員に大きな加速度が作用する可能性の少ない状況では、速やかにウェビングによる乗員拘束を解除することができるため、ウェビングによる拘束によって乗員に与える不快感をより少なくすることができる。
請求項4に記載の発明によれば、車両操作デバイスの操作量に基づいて第1の拘束判定手段が乗員拘束を要すると判定したときにはモータを保持制御モードで制御し、車両加速度に基づいて第2の拘束判定手段が乗員拘束を要すると判定したときにはモータを強拘束制御モードで制御するため、車両加速度の絶対値が判定閾値に達しない状況下での不要な乗員の強拘束を制限しつつ、車両加速度の絶対値が判定閾値を超えるときには速やかな強拘束を得ることができる。したがって、この発明においては、乗員の安全性の向上と快適性の維持をより高いリベルで両立させることができる。
請求項5に記載の発明によれば、拘束判定手段の判定閾値を、車両操作デバイスの性能の低下度合いに応じて多段階、若しくは、連続的に調整することができるため、車両操作デバイスの現状の性能により適した判定閾値の設定を行うことが可能になる。
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明にかかるシートベルト装置1の全体概略構成を示すものであり、同図中2は、乗員3の着座するシートである。この実施形態のシートベルト装置1は、所謂三点式のシートベルト装置であり、図示しないセンタピラーに取付けられたリトラクタ4からウェビング5が上方に引き出され、そのウェビング5がセンタピラーの上部側に支持されたスルーアンカ6に挿通されるとともに、ウェビング5の先端がシート2の車室外側寄りのアウタアンカ7を介して車体フロアに固定されている。そして、ウェビング5のスルーアンカ6とアウタアンカ7の間にはタングプレート8が挿通されており、そのタングプレート8は、シート2の車体内側寄りの車体フロアに固定されたバックル9に対して脱着可能となっている。
ウェビング5は、初期状態ではリトラクタ4に巻き取られており、乗員3が手で引き出してタングプレート8をバックル9に固定することにより、乗員3の主に胸部と腹部をシート2に対して拘束する。また、このシートベルト装置1は、緊急時や車両の挙動変化が大きいときに、電動式のモータ10によって自動的にウェビング5の引き込みを行う。
リトラクタ4は、図2に示すようにケーシング(図示せず)に回転可能に支持されたベルトリール12にウェビング5が巻回されるとともに、ケーシングの一端側にベルトリール12の軸が突出している。このベルトリール12は、動力伝達機構13を介してモータ10の回転軸10aに連動可能に接続されている。動力伝達機構13は、モータ10の回転を減速してベルトリール12に伝達する。また、リトラクタ4には、ベルトリール12をウェビング巻取り方向に付勢する図示しない巻取りばねが設けられ、ベルトリール12とモータ10がクラッチ20によって切り離された状態において、巻取りばねによる張力がウェビング5に作用するようになっている。なお、クラッチ20は、モータ10の正転方向(ウェビング巻取り方向)の回転と逆方向(ウェビング引き出し方向)の回転を契機としてオン状態とオフ状態に切り替え操作されるようになっている。
また、リトラクタ4には、ベルトリール12の回転位置を検出する回転センサ11(位置検出手段)が設けられている。この回転センサ11は、例えば、円周方向に沿って異磁極が交互に着磁され、ベルトリール12と一体に回転する磁性円板と、この磁性円板の外周縁部に近接配置された一対のホール素子と、ホール素子の検出信号を処理するセンサ回路とから成り、センサ回路で処理されたパルス信号がコントローラ21に出力されるようになっている。
この場合、ベルトリール12の回転に応じてセンサ回路からコントローラ21に入力されたパルス信号は、ベルトリール12の回転量や、回転速度、回転方向等を検出するのに用いられる。つまり、コントローラ21においては、パルス信号をカウントすることによってベルトリール12の回転量(ウェビング5の引き出し量)を検出し、パルス信号の変化速度(周波数)を演算することによってベルトリール12の回転速度(ウェビング5の巻取り・引き出し速度)を求め、さらに、両パルス信号の波形の立ち上がりの比較によってベルトリール12の回転方向を検出する。
また、コントローラ21の入力側には、回転センサ11のほかに、車両に作用する加速度(減速度)を検出する加速度センサ22が接続されるとともに、車両操作デバイスの一態様であるブレーキ装置23の踏力(操作量)をブレーキペダルのストロークから間接的に検出するストロークセンサ24が接続されている。また、ブレーキ装置23のブレーキバッドの近傍には同パッドの温度を検出するための温度センサ25が設けられており、この温度センサ25もコントローラ21の入力側に接続されている。
また、コントローラ21は、ストロークセンサ24の検出値(ブレーキ装置23の操作量)が判定閾値を超えたときにウェビング5による乗員拘束を要すると判定し、検出値が判定閾値以下であるときにウェビング5による乗員拘束を要しないと判定する第1の拘束判定手段26と、加速度センサ22によって検出される車両加速度の絶対値が判定閾値を超えたときにウェビング5による乗員拘束を要すると判定し、車両加速度の絶対値が判定閾値以下であるときにウェビング5による乗員拘束を要しないと判定する第2の拘束判定手段27と、第1の拘束判定手段26と第2の拘束判定手段27の少なくともいずれか一方がウェビング5による乗員拘束を要すると判定したときに、モータ10の制御を実行するモータ制御手段28と、を備えている。
モータ制御手段28は、ベルトリール12の回転位置を基準拘束位置に保持するようにモータ10の通電電流を制御する保持制御モードと、ベルトリール12を基準拘束位置から巻取り方向に所定量以上回転させるようにモータを制御する強拘束制御モードを備えており、第1の拘束判定手段26が乗員拘束を要すると判定したときには保持制御モードでの制御を実行し、第2の拘束判定手段27が乗員拘束を要すると判定したときには保持制御モードでの制御に優先して強拘束制御モードでの制御を実行する。
なお、基準拘束位置は、例えば、通常時におけるベルトリール12の平均的な回転位置(通常時に回転位置を複数回サンプリングし、サンプリング値の合計をサンプリング回数で除した値)や、その回転位置から巻取り方向に微小量回転された回転位置とする。
さらに、コントローラ21は、温度センサ25から検出信号を受け、その検出値が設定温度を超えているか否かによってブレーキ装置23の機能の低下を間接的に判定する温度判定手段29と、第1の拘束判定手段26がウェビング5による乗員拘束を要すると判定してモータ制御手段28によるモータ10の制御が実行された後、所定時間内に第2の拘束判定手段27がウェビング5による乗員拘束を要すると判定しない場合に、モータ制御手段28によるモータ10の制御をキャンセルするキャンセル手段30と、を備えている。
温度判定手段29の判定結果は第1の拘束判定手段26と第2の拘束判定手段27に入力される。温度判定手段29が「設定温度を超えている」と判定した場合には、第1の拘束判定手段26はブレーキ装置23の操作量についての判定閾値を上方側に所定量シフトさせ、第2の拘束判定手段27は車両加速度についての判定閾値を下方側に所定量シフトさせる。
図5は、初速度100km/hで走行する車両で減速度が0.45Gとなるようにブレーキングを行ったときの、ブレーキ装置23の制動回数の増加に対するブレーキパッドの温度変化(A)、及び、ブレーキ踏力の変化(B)を調べた結果を示すものである。
この実験結果からは、制動回数の増加と略比例してブレーキパッドの温度が上昇し、ブレーキ踏力(操作量)も制動回数の増加に略比例して増加することが分かる。
ブレーキ装置23の制動機能は、図6の実験結果からも明らかなように、ブレーキパッドの温度上昇とともに低下するため、一定の減速度(車両加速度)を得るためのブレーキ踏力は、ブレーキパッドの温度上昇に応じて大きくなり、一定の減速度に達するまでの所要時間も増大する傾向となる。
このシートベルト装置1においては、前述のように温度判定手段29が「設定温度を超えている」と判定した場合に、第2の拘束判定手段27が車両加速度についての判定閾値を下方側に所定量シフトさせるため、温度上昇によってブレーキパッドの制動機能が低下すると、低い車両加速度の閾値でもってモータ制御手段28によるモータ制御を開始することになる。
図6の上段のグラフは、ブレーキパッドの温度が低い通常状態の場合と、ブレーキパッドの温度が高いフェード状態の場合の、減速度(車両加速度の絶対値)の立ち上がりを様子を示すものである。
第2の拘束判定手段27は、同図に示すように通常状態の判定閾値がQ1であったものを、フェード状態ではQ2に下方にシフトさせる。このため、危険に至らない速いタイミングでモータ10の制御(ウェビング5による乗員拘束)を開始することができる。
また、このシートベルト装置1においては、前述のように温度判定手段29が「設定温度を超えている」と判定した場合に、第1の拘束判定手段26がブレーキ装置23の操作量についての判定閾値を上方側に所定量シフトさせるため、温度上昇によってブレーキパッドの制動機能が低下すると、高い操作量の閾値でもってモータ制御手段28によるモータ制御を開始することになる。
図6の下段のグラフは、ブレーキング時の踏力の立ち上がりの様子を示すものである。
第1の拘束判定手段26は、同図に示すように通常状態の判定閾値がP1であったものを、フェード状態ではP2に上方にシフトさせる。このため、急減速を要しない通常制動時に踏力がP1を超えても、P2を超えない限りモータ10の制御(ウェビング5による乗員拘束)が開始されなくなる。
以下、このシートベルト装置1のコントローラ21による制御を図3,図4のフローチャートを基にして説明する。
図3は、制御のメインフローを示すものである。
このメインフローのステップS101においては、ベルトリール12の基準拘束位置(例えば、通常時における平均的な拘束位置)を演算等によって求め、設定する。
ステップS102においては、ストロークセンサ24、加速度センサ22、温度センサ25等のセンサ類の信号を読み込み、その後、ステップS103において、第1の拘束判定手段26と第2の拘束手段27で用いる判断閾値の設定処理を行う。この判断閾値の設定処理については後に詳述する。
つづくステップS104においては、ブレーキ装置23のペダル踏力(操作量)が判定閾値を超えるか否かを判定し(第1の拘束判定手段26)、YESの場合には、ステップS105に進み、NOの場合には、ステップS106に進む。
ステップS105においては、車両加速度の絶対値が判定閾値を超えるか否かを判定し(第2の拘束判定手段27)、YESの場合には、ステップS107に進んで強拘束制御モードでのモータ10の制御を開始し、NOの場合には、ステップS108に進んで保持制御モードでのモータ10の制御を開始する。
また、ステップS106においては、車両加速度の絶対値が判定閾値を超えるか否かを判定し(第2の拘束判定手段27)、YESの場合には、ステップS107に進んで強拘束制御モードでのモータ10の制御を開始し、NOの場合には、リターンする。
したがって、ステップS104〜S106においては、最初にブレーキ装置23のペダル踏力(操作量)の判定を行い、その判定結果と、つづく車両加速度の判定結果との組み合わせによって場合分けし、各場合に応じて、強拘束制御モードでのモータ制御の開始と、保持制御モードでのモータ制御の開始と、リターン(モータを開始せず)とに振り分けるようにしている。
具体的には、強拘束制御モードでのモータ制御(ステップS107)は、第1の拘束判定手段26の判定結果に関係なく、第2の拘束判定手段27の判定結果がYES(判定閾値を超える)であれば実行され、保持制御モードでのモータ制御(ステップS108)は、第1の拘束判定手段26の判定結果がYESで、かつ、第2の拘束判定手段27の判定結果がNOの場合にみ実行され、第1の拘束判定手段26の判定結果と第2の拘束判定手段27の判定結果がいずれもNOの場合にはリターンする。
ステップS107における強拘束制御モードでのモータ制御では、回転センサ11からベルトリール12の現在位置情報をフィードバックし、ウェビング5を大きく引き込むようにベルトリール12を基準拘束位置から巻取り方向に所定量以上回転させる。これにより、ウェビング5は乗員をシート2に強力に拘束するようになる。
また、ステップS108における保持制御モードでのモータ制御は、同様に回転センサ11からベルトリール12の現在位置をフィードバックし、外力によってベルトリール12の回転位置が許容幅を超えて変動したときに回転位置を許容幅内に戻すようにモータ10の通電を制御する。
ステップS107の次にはステップS109に進み、ステップS109においては、加速度センサ22の新たな検出信号等を基にして車両が安定状態であると否かを判定する。ここで、YESの場合には、ステップS110に進んでモータ10の制御を終了し、NOの場合には、ステップS107に戻って強拘束制御モードでのモータ制御を継続する。
また、ステップS108の次にはステップS111に進み、ステップS111においては、ステップS104で第1の拘束判定手段26がYESと判定してから所定時間が経過したか否かを判定する。ここで、YESの場合には、ステップS110に進んでモータ10の制御を終了し、NOの場合には、ステップS105へと戻る。したがって、一度ステップS108に進んだ後には、所定時間が経過する前にステップS105における第2の拘束判定手段27の判定結果がYESにならなければ、モータ10の制御がキャンセルされる(キャンセル手段30が実行される)。
図4は、S103の判定閾値の設定処理のフローを示すものである。
このフローのステップ201においては、ブレーキパッドの温度を読み込み、つづくステップS202においては、検出したブレーキパッドの温度が設定値を超えるか否かを判定する。ここで、YESの場合には、ステップS203に進み、NOの場合には、ステップS204に進む。ステップS204では、第1の拘束判定手段26と第2の拘束判定手段27の判定閾値を変更せず、基準値のまま維持する。
一方、ステップS203においては、第1の拘束判定手段26の操作量の判定閾値を上側に所定量シフトし、第2の拘束判定手段の27の車両加速度の判定閾値を下側に所定量シフトさせる。
以上のように、このシートベルト装置1においては、ブレーキパッドの温度上昇によるブレーキ装置23の機能低下を温度センサ25と温度判定手段29によって判定し、温度判定手段29で検出温度が設定値を超えるもの(機能が低下している)と判定されたときに、第2の拘束判定手段27の車両加速度の絶対値の判定閾値を下側に所定量シフトさせるため、車両走行中に乗員拘束を必要とする状況では、ブレーキ装置23の機能低下に拘わらずウェビング5による迅速な乗員拘束を得ることができる。
さらに、このシートベルト装置1においては、温度判定手段29で検出温度が設定値を超えるもの(機能が低下している)と判定されたときに、第1の拘束判定手段26の操作量の判定閾値を上側に所定量シフトさせるため、乗員拘束を必要としない通常ブレーキング時にウェビング5による乗員拘束が頻繁に開始される不具合を無くすことができる。
したがって、このシートベルト装置1によれば、温度によるブレーキ装置23の機能低下が生じてもウェビング5による乗員拘束の遅れが生じることがないうえ、頻繁に乗員拘束が開始されることによって乗員に不快感を与えることもない。このため、乗員の安全性の向上と快適性の維持を両立させることができる。
また、このシートベルト装置1は、第1の拘束判定手段26が操作量の判定閾値を超えたと判定した後に、所定時間内に第2の拘束判定手段27が車両加速度の絶対値の判定閾値を超えたと判定しない場合に、キャンセル手段30がモータ10の制御をキャンセルするため、一時的にブレーキ装置23の操作量が増大しただけで、その後に乗員に大きな加速度(減速度)が作用しない状況でウェビング5による拘束が行われる不具合を無くすことができる。したがって、ウェビング5による乗員拘束によって乗員に与える不快感をより少なくすることができる。
また、このシートベルト装置1においては、ブレーキ装置23の操作量に基づいて第1の拘束判定手段26が乗員拘束を要すると判定したときには保持制御モードでモータ10を制御し、車両加速度に基づいて第2の拘束判定手段27が乗員拘束を要すると判定したときには強拘束制御モードでモータ10を制御するため、車両加速度の絶対値が判定閾値に達しない状況下での不要な乗員の強拘束を制限しつつも、車両加速度の絶対値が判定閾値を超える緊急を要する状況では、速やかに乗員を強拘束することができる。
特に、多くの場合には、ブレーキ装置23の操作量に基づいて第1の拘束判定手段26が乗員拘束を要すると判定した後に、第2の拘束判定手段27が乗員拘束を要すると判定するため、保持制御モードでウェビング5の弛みや引き出しを抑制した状態から強拘束制御モードに移行することにより、より迅速に乗員を強拘束することができる。
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、ブレーキパッドの温度が設定値を超えたときに、第1,第2の拘束判定手段26,27の判定閾値をそれぞれ所定量シフトさせているが、ブレーキパッドの温度変化の度合い求め、その度合いに応じて第1,第2の拘束判定手段26,27のシフト量を多段階、若しくは、無段階に調整するようにしても良い。この場合には、ブレーキ装置23の現状の性能により適した判定閾値の設定を行うことができるため、より正確な制御を行うことができる。
また、ブレーキパッドの温度が設定値を超え、第1,第2の拘束判定手段26,27の判定閾値をシフトさせる場合には、踏力の付与から一定の車両加速度が得られるまでの遅れ時間を調べ、その遅れ時間に応じて判定閾値をシフトさせるようにしたり、一定の車両加速度を発生させるときの踏力の変化率を調べ、その変化率に応じて判定閾値をシフトさせるようにしても良い。
また、上記の実施形態では、車両の運動状態を変化させる車両操作デバイスとしてブレーキ装置23を採用したが、車両操作デバイスは、車両加速度を含む車両の運動状態を変化させ得るものであれば、ステアリングホイールによって操作されるステアリング装置や、アクセルペダルによって操作されるエンジンや駆動モータ等の駆動系装置であっても良い。
さらに、車両操作デバイスがブレーキ装置である場合の機能判定手段も、ブレーキパッドの温度を検出する温度センサに限らず、タイヤの温度を検出する温度センサやタイヤの空気圧を検出する空気圧センサ等であっても良い。
車両操作デバイスがステアリング装置である場合には、機能判定手段として油温やモータ温度を検出するセンサを採用することができ、車両操作デバイスが駆動系装置である場合には、エンジンやミッションの油温を検出するセンサを採用することができる。
この発明の一実施形態のシートベルト装置の概略構成図。 同実施形態のシートベルト装置のリトラクタとコントローラの概略構成図。 同実施形態の制御の流れを示すフローチャート。 同実施形態の制御の流れを示すフローチャート。 ブレーキ装置の制動回数の増加によるブレーキパッド温度変化とブレーキ踏力変化の様子を示す特性図。 通常時とフェード時の車両加速度の絶対値の立ち上がりと踏力変化の様子を示す特性図。
符号の説明
1…シートベルト装置
5…ウェビング
10…モータ
12…ベルトリール
23…ブレーキ装置(車両操作デバイス)
25…温度センサ(機能低下判定手段)
26…第1の拘束判定手段
27…第2の拘束判定手段(拘束判定手段)
28…モータ制御手段
29…温度判定手段(機能低下判定手段)
30…キャンセル手段

Claims (5)

  1. ウェビングが巻回されたベルトリールと、
    このベルトリールに駆動力を伝達するモータと、
    乗員による操作によって車両加速度を含む車両の運動状態量を変化させる車両操作デバイスと、を備え、
    前記モータを制御することによって前記ウェビングで乗員を拘束する車両のシートベルト装置において、
    前記車両加速度の絶対値が判定閾値を超えたときに前記ウェビングによる乗員拘束を要すると判定する拘束判定手段と、
    この拘束判定手段が乗員拘束を要すると判定したときに前記モータの制御を実行するモータ制御手段と、
    前記車両操作デバイスの機能低下を判定する機能低下判定手段と、
    前記機能低下判定手段が機能低下と判定したときに、前記拘束判定手段の判定閾値を下方にシフトさせることを特徴とする車両のシートベルト装置。
  2. ウェビングが巻回されたベルトリールと、
    このベルトリールに駆動力を伝達するモータと、
    乗員による操作によって車両加速度を含む車両の運動状態量を変化させる車両操作デバイスと、を備え、
    前記モータを制御することによって前記ウェビングで乗員を拘束する車両のシートベルト装置において、
    前記車両操作デバイスの操作量が判定閾値を超えたときに前記ウェビングによる乗員拘束を要すると判定する第1の拘束判定手段と、
    前記車両加速度の絶対値が判定閾値を超えたときに前記ウェビングによる乗員拘束を要すると判定する第2の拘束判定手段と、
    前記第1の拘束判定手段と前記第2の拘束判定手段の少なくとも一方が前記ウェビングによる乗員拘束を要すると判定したときに前記モータの制御を実行するモータ制御手段と、
    前記車両操作デバイスの機能低下を判定する機能低下判定手段と、
    前記機能低下判定手段が機能低下と判定したときに、前記第1の拘束判定手段の判定閾値を上方にシフトさせるとともに、前記第2の拘束判定手段の判定閾値を下方にシフトさせることを特徴とする車両のシートベルト装置。
  3. 前記第1の拘束判定手段が前記ウェビングによる乗員拘束を要すると判定してから所定時間内に前記第2の拘束判定手段が乗員拘束を要すると判定しない場合に、前記モータの制御をキャンセルするキャンセル手段を備えていることを特徴とする請求項2に記載の車両のシートベルト装置。
  4. 前記モータ制御手段は、
    前記ベルトリールの回転位置を基準拘束位置に保持するように前記モータを制御する保持制御モードと、
    前記ベルトリールを前記基準拘束位置から巻取り方向に所定量以上回転させるように前記モータを制御する強拘束制御モードと、を備え、
    前記第1の拘束判定手段が乗員拘束を要すると判定したときには、前記保持制御モードで前記モータを制御し、
    前記第2の拘束判定手段が乗員拘束を要すると判定したときには、前記強拘束制御モードで前記モータを制御することを特徴とする請求項2または3に記載の車両のシートベルト装置。
  5. 前記機能低下判定手段は、前記車両操作デバイスの機能低下の度合いを判定し、その度合いに応じて前記拘束判定手段の判定閾値を多段階、若しくは、連続的に変化させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両のシートベルト装置。
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