以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るシートベルト制御装置を搭載した車両Vを示している。この車両Vは、運転席及び助手席に設けられたシートベルト装置2(運転席側のみ図示)と、4つの車輪W(左前側のみ図示)に個別に配設された4つのブレーキ装置3(左前側のみ図示)と、車両前方の障害物を検知する障害物検知センサ4と、インストルメントパネル10に設けられたメータユニット11及び警報ブザー12と、これらを制御する制御ユニット5とを備えている。そして、車両Vは、車速を制御して自動走行するように走行制御を行うと共に、車両前方の障害物を検知又は推定して、その検知、推定結果に基づいてシートベルト装置2やブレーキ装置3を作動させるPCS(Pre-Crash Safety System)制御を行うように構成されている。
前記シートベルト装置2は、各座席に着座した乗員を拘束するウエビング2aと、センターピラー(図示省略)に設けられ、ウエビング2aを巻き取る巻取りドラム(図示省略)を有するリトラクタ2bと、ウエビング2aに所定の張力を付与するシートベルトプリテンショナ20とを有している。上記リトラクタ2bは、ウエビング2aの巻き取り量を検知する巻き取り量検知センサ(図示省略)を有している。また、上記シートベルトプリテンショナ20は、リトラクタ2bの後面に一体的に設けられ、ウエビング2aを巻き取ってウエビング2aに通常時よりも大きな所定の第1張力を付与する第1プリテンショナ機構2cと、リトラクタ2bの前面に一体的に設けられ、ウエビング2aを巻き取ってウエビング2aに第1張力よりも大きい所定の第3張力を付与する第2プリテンショナ機構2dとを有する。
前記リトラクタ2bは、前記巻取りドラムの他に、ウエビング2aが所定加速度以上で引き出されたときにその引出しをロックする引出し感応ロック手段と、車両Vの衝突、急ブレーキ、コーナーリング走行等により該リトラクタ2b本体に加わる加速度又は該リトラクタ2b本体の傾き角が所定値以上になったときにウエビング2aの引出しをロックする車体感応ロック手段とが設けられている。
前記引出し感応ロック手段は、図示は省略するが、ウエビング2aの引出し加速度が所定加速度以上となると係合する第1ラチェット等を有し、前記引出し加速度が所定加速度以上となったときにこの第1ラチェット等の作用により巻取りドラムの引出し方向への回転が阻止され、引出しロック状態となる。そして、ウエビング2aに対する引出し方向の力が解除されると、巻取りドラムは該巻取りドラムをウエビング巻取り方向へ付勢している渦巻バネにより巻取り方向に回転し、これによって第1ラチェットの係合が解除され、即ち、引出しロック状態が解除されて、ウエビング2aの引出し・巻取りが可能となるように構成されている。
前記車体感応ロック手段は、図示は省略するが、リトラクタ2b本体に加わる加速度と該リトラクタ2b本体の傾き角とを検知するセンサおよび該センサによって所定値以上の該加速度又は傾き角が検知されたときに係合する第2ラチェット等を有し、前記加速度又は傾き角が所定値以上となったときにこの第2ラチェット等の作用により巻取りドラムの引出し方向への回転が阻止され、ロック状態となる。そして、ウエビング2aに対する引出し方向の力が解除されると、前記引出し感応ロック手段と同様に、ロック状態が解除され、ウエビング2aの引出し・巻取りが可能となるように構成されている。
前記第1プリテンショナ機構2cは、DCモータ2eと前記巻取りドラムのドラムシャフトに回動自在に設けられ且つDCモータ2eのモータギヤと噛合する大径ギヤ(図示省略)とを備えている。また、該大径ギヤは前記ドラムシャフトに回動不能に設けられたラチェットと係合自在に構成された係合部材を有している。そして、該係合部材を該ラチェットに係合させることで、DCモータ2eの駆動力を、モータギヤ、大径ギヤ、係合部材及びラチェットを介してドラムシャフトに伝達して巻取りドラムを回転させてウエビング2aを巻き取る。また、DCモータ2eを停止しても、係合部材とラチェットとの係合状態が維持されるように構成されている。これにより、DCモータ2eが停止されて巻取りガイドのウエビング引出し方向への回転が許容されるようになっても、巻取りガイドには所定の回転抵抗が付与された状態となる。すなわち、係合部材とラチェットとの係合状態が維持されているため、DCモータ2eの出力軸の回転抵抗及びモータギヤと大径ギヤとの大きなギヤ比とによってドラムシャフトには引出し方向への回転抵抗が与えられている。尚、この係合部材とラチェットとの係合状態はDCモータ2eをウエビング引出し方向へ駆動することによって容易に解除されるように構成されている。
また、前記第2プリテンショナ機構2dは、インフレータ(図示省略)を備え、インフレータを作動させることによりウエビング2aを第1プリテンショナ機構2cによる巻き取り速度よりも速い速度でウエビング2aを巻き取る。
前記ブレーキ装置3は、ディスクロータ3aと、キャリパ3bと加圧バルブ(図示省略)や減圧バルブ(図示省略)等の各バルブ等からなるブレーキアシスト機構31とを有する液圧式ブレーキであって、ブレーキペダル(図示省略)の踏み込み操作により倍力装置(図示省略)を介して発生したマスタシリンダ(図示省略)の液圧によりブレーキ装置3が作動して車輪Wにブレーキ力が付与される。
前記ブレーキアシスト機構31は、加圧バルブや減圧バルブ等の各バルブにより構成されていて、マスタシリンダの液圧を検知する液圧センサで構成されたブレーキ圧センサ32からの検知信号に基づいてブレーキペダルの踏み込み量と踏み込み速度を算出することにより緊急時にブレーキペダルが踏み込まれたことを検知し、緊急時にブレーキペダルが踏み込まれたと検知した場合に、各バルブを制御してブレーキ装置3に供給される液圧を制御することにより所定の大きなブレーキ力を発生させる。このとき、ブレーキアシスト機構31は、後述するDSCコントローラ7を介してプリテンショナコントローラ9へ緊急時ブレーキ作動情報信号を出力するように構成されている。
前記障害物検知センサ4は、車両Vの前端の車幅方向中央部にレーダ軸が車両Vの前方正面を向くように取り付けられていて、ミリ波を前方の所定角度の範囲でスキャンしながら発信すると共に、車両Vの前方に存在する障害物からの反射波に基づいて該障害物までの距離、角度及び相対速度を検知するスキャン式のミリ波レーダである。この障害物検知センサ4が障害物検知手段を構成する。尚、障害物検知センサはミリ波レーダに限られず、レーザレーダや超音波レーダ等のレーダを採用することもできる。
前記制御ユニット5は、図2に示すように、車両Vのパワートレインを制御するPCM(PowerTrain Control Module)6と、車両Vの横滑りを抑制して車両Vの走行安定性を保つように制動力及びエンジン出力の制御を行うDSC(Dynamic Stability Control)コントローラ7と、前記PCS制御を行うと共に、前記走行制御、詳しくは車両Vの車速を制御して車両Vを定速で走行させ又は先行車両に追従させるACC(Adaptive Cruse Control)制御を行うPCS/ACCコントローラ8と、該PCS/ACCコントローラ8からの制御信号を受けて前記シートベルト装置2を制御するプリテンショナコントローラ9とを有し、これらは車両V内に構築されたCAN(Control Area Network)を介して通信可能に接続されている。
前記PCM6は、車両Vの乗員(運転者)がアクセルペダルを踏み込んだときのアクセル開度を検知するアクセル開度センサ61からの検知信号およびPCS/ACCコントローラ8からの指示信号が入力され、該検知信号又は指示信号に基づいてスロットル62に制御信号を出力して、車両Vを加減速するように構成されている。また、PCM6には、ACC制御を行うためのACC操作スイッチ63からの操作信号が入力されており、これら操作信号はCANを介してPCS/ACCコントローラ8へ出力される。
前記ACC操作スイッチ63は、ステアリング13に設けられていて、ACC制御を行うための複数のスイッチからなる。例えば、ACC制御の実行及び停止を行うACCメインスイッチ、定速制御の設定速度を設定するセットスイッチ、設定速度を減速させるコーストスイッチ、ACC制御を中断させるキャンセルスイッチ、ACC制御が中断された場合に再びACC制御を再開させるリジュームスイッチ、設定速度を増速させるアクセルスイッチ、及び追従制御における先行車両との目標車間距離を設定する目標車間距離設定スイッチ等からなる。
前記DSCコントローラ7は、ブレーキペダルが操作されたことを検知するブレーキペダルスイッチ71及び、図示省略の、ステアリング13の操舵角を検知する舵角センサ、ヨーレートセンサ、横加速度センサ、スロットル開度センサ、車輪速センサ、などからの出力信号を入力して、それらの信号から得られる情報に基づいてPCM6へ制御信号を出力してエンジン出力を制御すると共に、ブレーキ装置3へ制御信号を出力してブレーキアシスト機構31を作動させて各車輪Wへのブレーキ力を制御する。こうして、車輪Wの横滑りを抑制して、走行状態を安定させる(以下、DSC制御という)。また、DSCコントローラ7は、DSC制御実行中は、DSC作動情報信号をプリテンショナコントローラ9へ出力している。
前記PCS/ACCコントローラ8は、PCSオン/オフスイッチ81からの信号及び前記PCM6を介したACC操作スイッチ63からの操作信号、車速センサ82及び障害物検知センサ4からの検知信号が入力され、それら操作信号及び検知信号から得られる情報に基づいてPCS制御及びACC制御を行う。
まず、PCS制御について説明すると、PCS/ACCコントローラ8は、PCSオン/オフスイッチ81からのオン信号を受信することによってPCS制御を実行する。PCS制御においては、PCS/ACCコントローラ8は、障害物検知センサ4の検知信号等に基づいて車両Vの前方に存在する先行車両やガードレール等の障害物を検知してその衝突可能性を予知し、衝突する可能性が高いときには、プリテンショナコントローラ9へ作動信号を出力して第1プリテンショナ機構2cを作動させると共に、DSCコントローラ7へ減速指示信号を出力する。プリテンショナコントローラ9による第1プリテンショナ機構2cの作動制御については後述する。減速指示信号を受信したDSCコントローラ7は、ブレーキ装置3へ制御信号を出力して、ブレーキアシスト機構31を制御して車両Vを所定の第1減速度で減速させるようにブレーキ装置3を作動させる。それに加えて、PCS/ACCコントローラ8は、衝突する可能性が高いときには、メータユニット11及び警報ブザー12を制御して衝突する可能性が高い旨を運転者に報知する。こうすることで、乗員に体感警報を行うと共に、乗員を予め拘束し且つ車速を減速しておく。すなわち、PCS/ACCコントローラ8が衝突予知手段を構成する。
尚、衝突可能性は、車両Vが障害物に衝突するまでの予測時間によって判断する。すなわち、PCS/ACCコントローラ8は、障害物検知センサ4からの検知信号に基づいて、障害物までの距離、角度及び相対速度から衝突までに要する時間を算出し、その時間が所定時間よりも短いことをもって衝突可能性が高いと判断する。
また、PCS/ACCコントローラ8は、後述する衝突検知センサ96からの検知信号が入力されていて(図示省略)、前記衝突に要する時間を経過しても、該衝突検知センサ96から衝突検知信号が入力されないときには衝突が回避されたと判定して、プリテンショナコントローラ9への作動信号の出力やDSCコントローラ7への減速指示信号の出力を解除する。
次に、ACC制御について説明すると、PCS/ACCコントローラ8は、ACC操作スイッチ63のACCメインスイッチからの操作信号(ACC制御を実行する旨の信号)を受信することによってACC制御を実行する。ACC制御においては、先行車両が存在しないときには車両Vを一定の目標速度で定速走行させる定速制御を、先行車両が存在するときに車両Vを先行車両に対して一定の目標車間距離を維持した状態で追従走行させる追従制御を行う。
前記定速制御では、PCS/ACCコントローラ8は、ACC操作スイッチ63からの操作信号及び車速センサ82からの検知信号に基づいて、車両Vの車速が乗員が設定した目標車速となるように、PCM6へ加速/減速指示信号を出力してスロットル62を制御すると共に、DSCコントローラ7へ減速指示信号を出力することでブレーキ装置3を制御して、車両Vを目標車速で走行させる。
前記追従制御では、PCS/ACCコントローラ8は、ACC操作スイッチ63からの操作信号、車速センサ82からの検知信号及び障害物検知センサ4からの検知信号に基づいて、車両Vと先行車両との車間距離が乗員が設定した目標車間距離となるように、PCM6へ加速/減速指示信号を出力してスロットル62を制御すると共に、DSCコントローラ7へ減速指示信号を出力することでブレーキ装置3を制御して、車両Vを先行車両と目標車間距離を維持した状態で追従走行させる。
尚、前記定速制御は、車両Vの前方に先行車両が存在しないときにのみ行うことができ、先行車両が存在する場合は、前記追従制御へ自動的に切り替わる。
前記プリテンショナコントローラ9は、前記PCS/ACCコントローラ8が障害物との衝突を予知したときに出力する作動信号を受けて、シートベルト装置2の第1プリテンショナ機構2c及び第2プリテンショナ機構2dを作動させるものである。また、プリテンショナコントローラ9は、障害物との衝突が予知された場合に限らず、前記DSCコントローラ7によってDSC制御が行われているとき及び乗員による緊急時のブレーキ操作があったときにも、シートベルト装置2の第1プリテンショナ機構2cを作動させるように構成されている。このプリテンショナコントローラ9がプリテンショナ制御手段を構成する。
このプリテンショナコントローラ9は、直流電源94が接続され、該直流電源94からの電流を第1プリテンショナ機構2cのDCモータ2eへ供給することでDCモータ2eを駆動する駆動部91と、駆動部91にPWM信号を出力して、駆動部91からDCモータ2eへ供給される通電電流を制御する制御部92と、第2プリテンショナ機構2dを作動させる起動制御部93と、直流電源94と駆動部91との間に介設された温度感応式FET91bとを有する。
前記駆動部91は、直流電源94から供給される電流を制御部92から入力されるPWM信号のデューティ比に応じた電流に制御して、DCモータ2eへ供給する駆動回路91aを有する。
前記温度感応式FET91bは、所定温度以上となると通電を遮断する公知の温度感応式FETであって、前記駆動回路91aの周辺に設置されることによって、前記駆動回路91aの温度及びその周辺温度を検知し、所定温度以上となったときには、直流電源94から駆動回路91aへの電力供給を遮断する。こうして、駆動回路91aを異常過熱から保護するためのものである。
また、駆動部91とDCモータ2eとの間には、DCモータ2eに供給される通電電流を検知する電流センサ95が介設されている。この電流センサ95が電流計測手段を構成する。
前記制御部92は、PCS/ACCコントローラ8からの作動信号、DSCコントローラ7から出力されるDSC作動情報信号およびDSCコントローラ7から出力される緊急時ブレーキ作動情報信号のうち何れかの信号を受信したときに、前記駆動部91へPWM信号を出力して、駆動部91からDCモータ2eへ通電電流を供給させる。この制御部92は、PID制御によってPWM信号のデューティ比を調整することによって、通電電流が所定の目標電流となるように制御している。つまり、制御部92には電流センサ95からの検知信号が入力されており、DCモータ2eへ供給される通電電流をフィードバックして、該通電電流が目標電流となるようにPWM信号のデューティ比を調整する。ここで、所定の目標電流は、ウエビング2aに付与される張力が所定の第1張力となるときのDCモータ2eの駆動トルクに対応する電流である。
さらに、制御部92は、第1プリテンショナ機構2cの作動終了後にDCモータ2eへ確認電流を供給すると共に、該確認電流を供給したときに電流センサ95によって該確認電流に対応した突入電流が計測されるか否かを検出して、突入電流が検出されないときには第1プリテンショナ機構2cに異常過熱が発生していると判定して、その旨をメータユニット11及び警報ブザー12を制御することにより乗員に報知する。この確認電流の供給についての詳細は後述する。
前記起動制御部93は、車両Vが衝突したことを検知する衝突検知センサ96が接続されていて、該衝突検知センサ96からの衝突検知信号が入力されたときに、第2プリテンショナ機構2dのインフレータに起動信号を出力することによって該インフレータを起動させてウエビング2aを所定の第2張力で巻き取らせる。
このように構成された制御部92による第1プリテンショナ機構2cの作動制御について、図3に示すフローチャートを用いて説明する。
このフローはPCSオン/オフスイッチ81がオン操作されることでスタートする。
まず、ステップS1において、第1プリテンショナ機構2cの作動条件が成立したか否かを判定する。ここで、第1プリテンショナ機構2cの作動条件とは、障害物との衝突が予知される、DSC制御が実行される、及び緊急時のブレーキ操作がされるという3つの条件のうち何れか1つが成立することである。そして、作動条件が成立したとき(YES)にはステップS2へ進む一方、作動条件が成立しないとき(NO)にはステップS1を繰り返す。
ステップS2では、第1プリテンショナ機構2cのDCモータ2eへの通電を開始する。
そして、ステップS3で、第1プリテンショナ機構2cへの通電電流を計測する。
その後、ステップS4で、通電時間が所定時間t1を経過したか否かを判定する。所定時間経過しているとき(YES)にはステップS9へ進んで、制御部92からのPWM信号の出力を停止することで、DCモータ2eへの通電を停止する。つまり、第1プリテンショナ機構2cを作動させるときには、所定時間だけDCモータ2eへ通電する。一方、所定時間経過していないとき(NO)にはステップS5へ進む。
ステップS5においては、電流センサ95により検知された通電電流が目標電流と一致するか否かを判定する。一致するとき(YES)にはステップS3へ進んで、前記ステップを繰り返す。一方、一致しないとき(NO)にはステップS6へ進む。ここで、本ステップでは、通電電流と目標電流とが一致するか否かを判定しているが、厳密に一致する場合だけでなく、通電電流と目標電流との偏差が所定の許容範囲内に入っているか否かを判定するようにしてもよい。
ステップS6においては、電流センサ95により検知された通電電流が所定の上限電流以上となっているか否かを判定する。上限電流未満のとき(NO)はステップS7へ進む一方、上限電流以上となっているとき(YES)にはステップS8へ進む。
ステップS7では、通電電流が上限電流未満であるので、通常どおり、PID制御を行う。つまり、通電電流が目標電流となるようにデューティ比を調整してPWM信号を駆動部91へ出力する。
こうして、通電時間が所定時間t1となってステップS9へ進む(ステップS5参照)まで、ステップS1〜S7を繰り返してPID制御を行う。
その結果、DCモータ2eへ供給される通電電流は、図4に示すようになる。つまり、障害物との衝突が予知されたとき、PCS制御が実行されているとき及び緊急時のブレーキ操作があったときの何れかのときに、第1プリテンショナ機構2cを作動させるべく、駆動部91へのPWM信号の出力を開始する。PWM信号の出力開始直後は、電流センサ95により検知される通電電流は略零であるため、制御部92はPWM信号のデューティ比を大きくして出力する。その結果、DCモータ2eへの通電電流は、始めは急激に増加する。そうして、駆動部91からDCモータ2eへ電流が供給され始めると、制御部92は電流センサ95により検知される通電電流が目標電流となるようにPWM信号のデューティ比を小さく調整して駆動部91へ出力する。その結果、DCモータ2eへの通電電流は、目標電流を多少オーバーシュートした後、目標電流に収束していく。こうして、ウエビング2aには所定の第1張力が付与される。そして、通電時間が所定時間t1を経過すると、ステップS9において、通電が停止される。
一方、ステップS6において通電電流が上限電流以上となっている(YES)と判定されたときは、ステップS8において、PWM信号のデューティ比を、PID制御で制御するのではなく、所定の規定値に強制的に設定する。つまり、図4の二点鎖線で示すように、DCモータ2eへの通電電流が急激に増加して上限電流以上となったときに、PWM信号のデューティ比を目標電流に対応する所定の規定値に設定することで、通電電流のオーバーシュートが抑えられて、通電電流が早期に目標電流に収束させることができる。こうして、ウエビング2aの張力を所定の第1張力に早期に収束させることができ、乗員が想定以上の大きさの張力で長い間拘束され続けるということを防止することができる。その後、通電時間が所定時間t1を経過すると、ステップS9において、通電が停止される。
ステップS9においては、通電の停止だけでなく、第1プリテンショナ機構2cの解除制御も行われる。この解除制御が完了することで第1プリテンショナ機構2cの作動終了となる。解除制御について具体的に説明すると、通電停止後は、ステップS1で受信が確認されていたPCS/ACCコントローラ8からの作動信号、DSCコントローラ7から出力されるDSC作動情報信号又はDSCコントローラ7から出力される緊急時ブレーキ作動情報信号が解除されるまで、DCモータ2eへの通電は停止される。これらの信号が出力されている間は、通常は乗員によりブレーキペダルが踏み込まれているか、ブレーキアシスト機構31が作動し、さらには急旋回走行が行われる場合もあり、前記リトラクタ2bの車体感応ロックが働いてウエビング2aの引出しはロックされた状態となる。車体感応ロックが働かない場合でも、車両Vがブレーキ状態にあるときは、乗員の体に前方へ向かう慣性力が働いているから、ウエビング2aに大きな引出し力が加わって前記リトラクタ2bの引出し感応ロックが働いてウエビング2aの引出しはロックされた状態となる。つまり、前記信号が出力されている間は、ウエビング2aの引出しがロックされており、乗員はウエビング2aにより前記第1張力で拘束された状態が維持される。
そして、前記信号が解除されると、DCモータ2eにウエビング巻取り方向への通電が所定の短い時間t2だけ行われ、それによって巻取りドラムが回転してウエビング2aが所定量巻き取られる。この短時間のウエビング2aの巻取りにより、前記車体感応ロック又は引出し感応ロックが解除される。
そうして、前記時間t2後にDCモータ2eへの通電が所定時間t3だけ停止される。衝突の回避が判定されたときは、車両Vにかけられたブレーキは解除され、又はブレーキ状態が続いている場合でもそのブレーキ力は小さくなっているから、乗員の体に対しては前方へ向かう慣性力は小さくなっているが、乗員を比較的大きな力で締め付けているウエビング2aに対しては乗員の体の反発力が働いている。そのため、通電停止によりウエビング2aは乗員の体の反発力で引き出されるが、通電を停止しただけでは第1プリテンショナ機構2cが前記リトラクタ2bのドラムシャフトに係合して回転抵抗を与えた状態になっているから、その引出し加速度が抑制され、引出し感応ロックが作動することなく、ウエビング2aが確実に引き出される。
前記時間t3の通電停止後、DCモータ2eへウエビング引出し方向の通電が所定の短い時間t4だけ行われる。この通電によって、第1プリテンショナ機構2cとリトラクタ2bのドラムシャフトとの係合が解除される。このときは、前記時間t3の通電停止によって乗員の体の反発力によるウエビング2aの引出しが終わった後であるため、リトラクタ2bのドラムシャフトへの回転抵抗を解除しても、引出し感応ロックが働くことはない。そうして、この係合解除によって、乗員はウエビング2aの引出し長さを自由に調節することができる。
こうして、ステップS9における解除制御が完了する。
前記解除制御が完了する、即ち、第1プリテンショナ機構2cの作動が終了すると、ステップS10において、前記制御部92によって確認電流の供給が行われる。すなわち、DCモータ2eをウエビング引出し方向へ回転させる確認電流が所定の短い時間t5の間だけ供給される。
そして、ステップS11において、電流センサ95によって、該確認電流に応じた突入電流が計測されたか否かを判定する。突入電流が検出されたとき(YES)にはステップS1へ戻って前記フローを繰り返す。つまり、図4に示すように、異常過熱が生じていないときには、前記温度感応式FET91bが直流電源94と駆動回路91aとの通電状態を遮断していないため、所定時間t5の間だけ確認電流に対応する突入電流が確認される。こうして、異常過熱が生じていないと判定されたときには、ステップS1へ戻って、第1プリテンショナ機構2cの作動条件が次に成立するときまで待機する。
一方、突入電流が検出されなかったとき(NO)にはステップS12へ進む。つまり、図5に示すように、異常過熱が生じているときには、前記温度感応式FET91bが直流電源94と駆動回路91aとの通電状態を遮断するため、制御部92からPWM信号が出力されていてもDCモータ2eへの通電が停止される。そのため、第1プリテンショナ機構2cの作動終了後にDCモータ2eへ確認電流を供給しても突入電流は検出されない。
こうして、異常過熱が生じていると判定されたときには、ステップS12において、故障制御を行う。この故障制御は、異常過熱が生じている旨をメータユニット11及び警報ブザー12を制御することにより乗員に報知すると共に、第1プリテンショナ機構2cの作動を禁止する。その後、異常過熱が収まって温度感応式FET91bの遮断状態が解除されるまで待機し、温度感応式FET91bが正常状態に戻ると、メータユニット11及び警報ブザー12による報知を停止して、第1プリテンショナ機構2cの作動を解禁する。
こうして、第1プリテンショナ機構2cの作動終了後に確認電流の供給及びそれに対応した突入電流の検出を行うことによって、ウエビング2aの負荷状態の変動による影響を受けることなく、駆動回路91aの異常過熱を正確に検出することができる。
例えば、第1プリテンショナ機構2c作動中において、乗員がウエビング2aを手で握っていてウエビング2aが乗員の体に密着していない状態から乗員が手を離した場合や、ウエビング2aが乗員の体に密着しているけれども乗員の背中がシートから浮いている状態から背中をシートに付けるように乗員がシートにもたれ掛かった場合には、ウエビング2aが瞬間的に緩んで、DCモータ2eは所定の負荷がかかっていた状態から一時的に低負荷状態となる。このように、DCモータ2eが低負荷状態となると、図6に示すように、DCモータ2eにはその低負荷に対応した少量の電流しか流れなくなる(矢印A参照)。
ここで、前記温度感応式FET91bの作動の有無の検出を、第1プリテンショナ機構2cの作動終了後に確認電流を供給することによって行うのではなく、第1プリテンショナ機構2cの作動時における通電電流を検出することによって行う構成が考えられる。すなわち、第1プリテンショナ機構2cの作動時における時間t1の後半部分は通電状態が正常である限り、通電電流が目標電流に収束していると考えられるため、この部分の通電電流を監視し、通電が停止されたことをもって温度感応式FET91bが作動したと判定することができる。しかしながら、かかる構成では、前述の如く、ウエビング2aの負荷が一時的に低負荷状態となったときには、その負荷変動により通電電流が一時的に落ち込んだことをもって温度感応式FET91bが作動したと判定する可能性がある。つまり、かかる構成では、第1プリテンショナ機構2cの作動中に、図5に示すように通電電流が温度感応式FET91bにより遮断された状態と、図6に示すように通電電流が一時的に落ち込んだ状態とを区別することができない。
そこで、前記実施形態では、第1プリテンショナ機構2cの作動終了後に別途、確認電流を供給すると共に、この確認電流に対応した突入電流を検出することで、温度感応式FET91bが作動したか否かを判定することによって、前記駆動部91の駆動回路91aの異常過熱を正確に検出することができる。
また、前記確認電流は、DCモータ2eのウエビング引出し方向へ通電されるため、該確認電流を供給しても、乗員を不要に締め付けることがなく、その結果、乗員に違和感を与えることを防止することができる。
尚、前記実施形態では、第1プリテンショナ機構2cの解除制御を行った後に確認電流の供給を行っているが、これに限られるものではない。すなわち、第1プリテンショナ機構2cを作動させるためのDCモータ2eへの通電が終了した後であれば、任意のタイミングで確認電流を供給して、異常過熱を検出することができる。
また、前記実施形態では、リトラクタ2bは、引出し感応ロック手段及び車体感応ロック手段とを有して構成されているが、これに限られるものではない。すなわち、これら引出し感応ロック手段及び車体感応ロック手段とを設けない構成でもよく、かかる場合は、DCモータ2eへの通電停止後の、ロック解除のための正方向への通電(図5の時間t2)と逆方向への通電(図5の時間t4)を行わなくてよい。そして、制御部92は、PCS/ACCコントローラ8からの作動信号等が入力されている間はDCモータ2eへ通電を行い、該信号等の入力が解除されるとDCモータ2eへの通電を停止することになる。このDCモータ2eへの通電停止をもって第1プリテンショナ機構2cの作動終了とする。