以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
まず、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10の構成について、図1〜図8を参照しつつ説明する。
図1は、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10の要部構成を示す図であり、ここでは記録用紙の搬送系を除き、主としてインクジェット記録ヘッド周辺部の構成を示している。
同図に示すように、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10は、インクジェット記録装置10全体の動作を司るコントローラ12と、供給された印刷データに基づいてインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド14と、を備えている。また、インクジェット記録ヘッド14は、各々個別に設けられた圧電素子(ピエゾ素子)30の変形によってインク滴を吐出する複数のイジェクタ32が2次元配置されて構成された複数のイジェクタ群34と、イジェクタ群34の各々に対応して設けられた駆動IC(Integrated Circuit)16と、を備えている。
なお、本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッド14は、記録用紙の幅にほぼ等しい幅を有する長尺状のものとされている。すなわち、本インクジェット記録装置10は、当該インクジェット記録ヘッド14を固定したまま記録用紙のみを搬送しながら記録を行う、いわゆるFWA(Full Width Array)方式のインクジェット記録装置として構成されている。
また、本実施の形態に係るイジェクタ32は、インクが充填される圧力発生室と、当該圧力発生室と連通し、インクを吐出可能なインク吐出口と、前記圧力発生室の壁面の一部を構成し、振動することによって前記圧力発生室を膨張又は収縮させる振動板、及び記録すべき画像を示す画像データに応じて印加された電圧によって変形することにより前記振動板を振動させる圧電素子30を備えたアクチュエータと、を含んで構成されている。
コントローラ12にはインクジェット記録ヘッド14に設けられた全ての駆動IC16が接続されており、駆動IC16の作動の制御は、クロック信号、印刷データ及びラッチ信号と、各々一対の信号とされた波形信号A、波形信号B及び波形信号C等が用いられてコントローラ12によって行われる。
図2には、本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッド14の概略構成を示す平面図が示されている。
同図に示すように、本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッド14は、複数のイジェクタ32が2次元配置されて構成されたイジェクタ群34A1、34B1、34A2、34B2・・・の各々を単位構造として、複数の単位構造が、所定の一方向(インクジェット記録ヘッド14の長手方向(長尺方向))に対して、隣接する単位構造に配置されているイジェクタ群の端部の一部領域が互いに重なり合うように配置されている。
そして、各イジェクタ群34A1、34B1、34A2、34B2・・・には、駆動IC16A1、16B1、16A2、16B2・・・が1対1で個別に設けられており、イジェクタ群と、対応する駆動ICとの間は、各々接続線18によって電気的に接続されている。なお、以下では、特定のものを示したい場合を除き、イジェクタ群34A1、34B1、34A2、34B2・・・を「イジェクタ群34」と略して表記する場合がある。また、以下では、特定のものを示したい場合を除き、駆動IC16A1、16B1、16A2、16B2・・・を「駆動IC16」と略して表記する場合がある。
本実施の形態に係るイジェクタ群34は、配置領域の形状が、上底と下底とを結ぶ2つの斜辺の角度が互いに異なる台形形状とされている。そして、本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッド14では、一対のイジェクタ群34が、各々の上底同士がインクジェット記録ヘッド14の長手方向中心線に向かって互いに対向するように配設されると共に、各々に対応する駆動IC16も一体的に配設されることにより、単体部品としてヘッドユニット15を構成している。そして、インクジェット記録ヘッド14は、複数の当該ヘッドユニット15が長手方向に配列された状態で構成されている。
一方、図3には、本実施の形態に係る駆動IC16の構成が示されている。
同図に示すように、本実施の形態に係る駆動IC16は、シフトレジスタ42と、ラッチ回路44と、セレクタ46と、レベルシフタ48と、駆動波形生成回路50と、を備えている。
コントローラ12から出力されたクロック信号及び印刷データはシフトレジスタ42に入力され、ラッチ信号はラッチ回路44に入力される。
印刷データは、波形信号A、波形信号B、及び波形信号Cの何れか1つ(一対の信号)を選択するものとされており、波形信号A選択信号42A、波形信号B選択信号42B、波形信号C選択信号42Cからなるシリアルデータである。波形信号A選択信号42A、波形信号B選択信号42B、波形信号C選択信号42Cは、各々「0」又は「1」となる1ビットデータを示す信号である。波形信号A選択信号42Aは、波形信号Aを選択するときに「1」となり、波形信号Aを選択しないときには「0」となる信号である。また、波形信号B選択信号42Bは、波形信号Bを選択するときに「1」となり、波形信号Bを選択しないときには「0」となる信号である。更に、波形信号C選択信号42Cは、波形信号Cを選択するときに「1」となり、波形信号Cを選択しないときには「0」となる信号である。
すなわち、印刷データは、波形信号Aを選択する場合には「100」、波形信号Bを選択する場合には「010」、波形信号Cを選択する場合には「001」の、3ビットシリアルデータとなる。このような印刷データが、対応するイジェクタ群34に含まれるイジェクタ32の数に、隣接配置されたイジェクタ群34のインクジェット記録ヘッド14短手方向に重なっているイジェクタ32の数を加算した数だけ連続してシフトレジスタ42に入力される。
なお、以下では、1つの圧電素子30に駆動波形を供給する場合について説明するが、他の圧電素子30についても同様であるので、説明は省略する。
シフトレジスタ42は、入力された3ビットシリアルデータである印刷データを3ビットのパラレルデータに変換してラッチ回路44へ出力する。
ラッチ回路44は、シフトレジスタ42から出力されたパラレルデータをラッチ信号の入力に応じてラッチ(自己保持)する。
セレクタ46には、コントローラ12から波形信号A、波形信号B、及び波形信号Cが選択対象信号として入力されると共に、ラッチ回路44によってラッチされた印刷データのパラレルデータがセレクト端子に入力される。従って、セレクタ46は、波形信号A、波形信号B、及び波形信号Cから印刷データによって選択が指示されたものを選択して出力することになる。
セレクタ46の波形信号の出力端子はレベルシフタ48に接続されており、セレクタ46から出力された波形信号はレベルシフタ48によってレベル変換されて出力される。なお、レベルシフタ48には、不図示の第3電源から所定電圧レベル(本実施の形態では、40V超の所定レベル)HVDDの電力が供給されており、レベルシフタ48では、印刷データによって選択された波形信号を、電圧レベルHVDDに応じた電圧レベルまでレベル変換する。
なお、レベルシフタ48としては、従来既知のものを適用することができるが、本実施の形態では、図4に示される、PチャネルMOS FET(以下、「PMOS」という。)及びNチャネルMOS FET(以下、「NMOS」という。)による直列回路が4組用いられた回路構成のものが適用されている。なお、同図に示す回路は、セレクタ46から入力される一対の波形信号の一方に対応するものであるため、実際には、当該回路が2組必要である。また、同図に示す回路は、当該一方の波形信号を反転した信号のレベル変換にも対応するものとされているが、本実施の形態では、この部分を用いることはない。
一方、図3に示すように、本実施の形態に係る駆動波形生成回路50は、第1信号生成回路52と、第2信号生成回路54とが備えられている。
本実施の形態に係る第1信号生成回路52は、PMOS52AとNMOS52Bを直列接続して構成したインバータ回路として構成されており、同様に、第2信号生成回路54もまた、PMOS54AとNMOS54Bを直列接続して構成したインバータ回路として構成されている。
すなわち、第1信号生成回路52は、PMOS52AとNMOS52Bのドレイン同士が接続されると共に、PMOS52AとNMOS52Bのゲートが接続されている。同様に、第2信号生成回路54も、PMOS54AとNMOS54Bのドレイン同士が接続されると共に、PMOS54AとNMOS54Bのゲートが接続されている。
ここで、第1信号生成回路52におけるPMOS52Aのソースには、不図示の第1電源からの所定電圧レベルHV1(本実施の形態では、10Vから30Vまでの範囲内の所定レベル)とされた電力が供給されると共に、NMOS52Bのソースは接地されてグランドレベルとされている。また、PMOS52A及びNMOS52Bの各ゲートにはレベルシフタ48の一方の出力端子が接続されており、セレクタ46によって選択された一対の波形信号の一方で、かつレベルシフタ48によってレベル変換された波形信号S1が入力される。
従って、第1信号生成回路52では、レベルシフタ48から入力された波形信号S1の信号レベルがハイレベルである場合はPMOS52Aがオフ状態でNMOS52Bがオン状態となるため、出力される電圧の電圧レベルはグランドレベルとなる。これに対し、レベルシフタ48から入力された波形信号S1の信号レベルがローレベルである場合はPMOS52Aがオン状態でNMOS52Bがオフ状態となるため、出力される電圧の電圧レベルは電圧レベルHV1となる。この結果、第1信号生成回路52から出力される電圧は、波形がレベルシフタ48から入力された波形信号S1の反転波形と同一で、かつ電圧レベルとしてグランドレベル及び電圧レベルHV1の2つを有するものとなる。
一方、第2信号生成回路54におけるPMOS54Aのソースには、不図示の第2電源からの所定電圧レベルHV2(本実施の形態では、20Vから40Vまでの範囲内の所定レベル)とされた電力が供給されると共に、NMOS54Bのソースには、第1信号生成回路52におけるPMOS52A及びNMOS52Bの接続点(ドレイン)が接続されている。従って、NMOS54Bのソースには、第1信号生成回路52のインバータ出力が印加されることになる。また、PMOS54A及びNMOS54Bの各ゲートにはレベルシフタ48の他方の出力端子が接続されており、セレクタ46によって選択された一対の波形信号の他方で、かつレベルシフタ48によってレベル変換された波形信号S2が入力される。
従って、第2信号生成回路54では、レベルシフタ48から入力された波形信号S2の信号レベルがハイレベルである場合はPMOS54Aがオフ状態でNMOS54Bがオン状態となるため、出力される電圧(すなわち、駆動波形)の電圧レベルは第1信号生成回路52から出力された電圧と同様のもの(波形がレベルシフタ48から入力されている波形信号S1の反転波形と同一で、かつ電圧レベルがグランドレベル及び電圧レベルHV1の2つを有するもの)となる。これに対し、レベルシフタ48から入力された波形信号S2の信号レベルがローレベルである場合はPMOS54Aがオン状態でNMOS54Bがオフ状態となるため、出力される電圧(駆動波形)の電圧レベルは電圧レベルHV2となる。この結果、第2信号生成回路54から出力される電圧(駆動波形)は、レベルシフタ48から入力された一対の波形信号S1、S2に応じて第1信号生成回路52及び第2信号生成回路54から各々出力される電圧を組み合わせた、電圧レベルとしてグランドレベル、電圧レベルHV1、及び電圧レベルHV2の3つを有するものとなる。
図5には、圧電素子30に印加される駆動波形の例と、当該駆動波形を生成するために必要とされる第1信号生成回路52単独の出力波形及び第2信号生成回路54単独の出力波形の例が示されている。
同図に示すように、駆動波形の電圧レベルを電圧レベルHV2としたい場合は、第2信号生成回路54からの出力波形の電圧レベルを電圧レベルHV2にするようにする。従って、この場合には、第2信号生成回路54に入力する波形信号S2をローレベルとすればよい。なお、この場合は第1信号生成回路52の出力は第2信号生成回路54の出力に影響を与えることはないので、第1信号生成回路52に入力する波形信号S1のレベルは制限されない。
一方、駆動波形の電圧レベルを電圧レベルHV1としたい場合は、第1信号生成回路52からの出力波形の電圧レベルを電圧レベルHV1にすると共に、第2信号生成回路54からの出力波形の電圧レベルも電圧レベルHV1にする必要がある。従って、この場合には、第1信号生成回路52に入力する波形信号S1をローレベルにすると共に、第2信号生成回路54に入力する波形信号S2をハイレベルにする必要がある。
更に、駆動波形の電圧レベルをグランドレベルとしたい場合は、第1信号生成回路52からの出力波形の電圧レベルをグランドレベルにすると共に、第2信号生成回路54からの出力波形の電圧レベルもグランドレベルにする必要がある。従って、この場合には、第1信号生成回路52に入力する波形信号S1をハイレベルにすると共に、第2信号生成回路54に入力する波形信号S2もハイレベルにする必要がある。
表1には、本実施の形態に係る駆動波形生成回路50の動作を示す真理値表が示されている。なお、同表におけるS1は第1信号生成回路52に入力される波形信号を示し、S2は第2信号生成回路54に入力される波形信号を示し、OUTは第2信号生成回路54から対応する圧電素子30に供給される駆動波形の電圧レベルを示す。
第1信号生成回路52及び第2信号生成回路54の各々に入力すべき波形信号S1、S2を生成させる際には、表1に示される真理値表に基づき、最終的に所望の駆動波形が得られるように一対の波形信号A、波形信号B及び波形信号Cを生成し、全ての駆動IC16に供給すればよい。なお、図15には、第1信号生成回路52に入力する波形信号S1及び第2信号生成回路54に入力する波形信号S2と、これらの波形信号によって生成される駆動波形との例が示されている。
本実施の形態に係るインクジェット記録装置10では、圧電素子30の駆動によって吐出されるインク滴の吐出量の種類として、「大滴」、「中滴」、及び「小滴」の3種類が適用されており、コントローラ12では、当該3種類の吐出量の各々に対応する駆動波形を生成することができる3組の波形信号として、波形信号A、波形信号B、及び波形信号Cが各々生成され、各駆動IC16に入力されるように構成されている。
なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10では、不図示の第3電源から供給される電力の電圧レベルHVDDと第2電源から供給される電力の電圧レベルHV2との関係を(電圧レベルHVDD>電圧レベルHV2)とし、電圧レベルHV2と不図示の第1電源から供給される電力の電圧レベルHV1との関係を(電圧レベルHV2>電圧レベルHV1)としている。
また、本実施の形態に係る駆動IC16に設けられているシフトレジスタ42は、駆動対象とするイジェクタ32と同数の印刷データを一度に保持できるように構成されている。これに対し、前述したように、シフトレジスタ42には、印刷データが、駆動対象とするイジェクタ32の数に、隣接配置されたイジェクタ群34のインクジェット記録ヘッド14短手方向に重なっているイジェクタ32の数を加算した数だけ連続して入力される。従って、駆動IC16には、イジェクタ群34の配置領域の形状である台形形状の各斜辺の角度に応じて、シフトレジスタ42によって保持可能な印刷データ量以上で、かつ当該保持可能な印刷データ量の2倍未満の範囲内の印刷データが入力されることになる。
ところで、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10では、コントローラ12から各駆動IC16に入力する印刷データを、対応する単位構造に配置されているイジェクタ群34を駆動させる印刷データに、当該単位構造に隣接する単位構造に配置されているイジェクタ群34の互いに重なり合う領域に含まれるイジェクタ32に対する印刷データのみを含めた状態で入力するものとしている。このため、駆動IC16では、入力された印刷データから、自身が駆動させるイジェクタ群34を駆動させる印刷データのみを選択的に適用する必要がある。
これを簡易に実現するために、本実施の形態に係るコントローラ12にはクロック前処理部12Cが設けられている。
すなわち、図6に示すように、コントローラ12には、駆動IC16に供給するクロック信号を生成する発振器12Aと、不揮発性のメモリ12B(一例として、フラッシュ・メモリ)と、クロック前処理部12Cと、コントローラ12全体の動作を司るCPU(中央処理装置)12Dと、が備えられている。
メモリ12BはCPU12Dに接続されており、CPU12Dはメモリ12Bにアクセスすることができる。一方、クロック前処理部12Cには、2入力1出力のアンドゲート12C1が備えられており、アンドゲート12C1の一方の入力端には発振器12Aのクロック信号を出力する出力端が、他方の入力端にはCPU12Dが、各々接続されている。また、発振器12Aのクロック信号を出力する出力端はCPU12Dにも接続されている。そして、アンドゲート12C1の出力端は駆動IC16にクロック信号を供給するものとされている。
ここで、メモリ12Bには、駆動IC16に入力するクロック信号を、当該駆動IC16が駆動対象とするイジェクタ群34を駆動させる印刷データのシフトレジスタ42への入力タイミングに対応する信号のみ有効とし、他の印刷データ(すなわち、隣接する単位構造に配置されているイジェクタ群34の互いに重なり合う領域に含まれるイジェクタ32に対する印刷データ)のシフトレジスタ42への入力タイミングに対応する信号を無効とするマスクデータが予め記憶されている。なお、本実施の形態に係るマスクデータは、上記有効とするタイミングに対応するデータとして‘1’が、上記無効とするタイミングに対応するデータとして‘0’が、各々適用されている。
CPU12Dは、メモリ12Bからマスクデータを読み出し、一例として図7に模式的に示すように、発振器12Aから入力されているクロック信号に同期させると共に、駆動IC16のシフトレジスタ42への印刷データの入力タイミングに同期させた状態で、読み出したマスクデータをアンドゲート12C1にシリアルに出力する。これにより、アンドゲート12C1から駆動IC16に入力されるクロック信号は、当該駆動IC16の駆動対象とするイジェクタ群34を駆動させる印刷データのシフトレジスタ42への入力タイミングに対応する信号のみ有効とされ、他の印刷データのシフトレジスタ42への入力タイミングに対応する信号は無効とされる。従って、各駆動IC16では、自身が駆動対象としているイジェクタ群34のみを駆動させる駆動波形が生成され、当該イジェクタ群34のみが駆動されることになる。
図8には、印刷データとマスクデータの状態と、互いに隣接する単位構造(イジェクタ群34)に対応する2つの駆動IC16におけるシフトレジスタ42での印刷データのデータ転送の状態が模式的に示されている。なお、同図では、当該2つの駆動IC16に対して同一の印刷データ1、2、・・・(実際には、各々上記3ビットシリアルデータ)をシリアルに入力すると共に、一方の駆動IC16に対して図示したマスクデータを適用し、他方の駆動IC16に対しては当該マスクデータの反転データを適用した場合が示されている。また、同図における‘−’は、シフトレジスタ42内でデータ転送が発生しないことを示している。
同図に示すように、この場合、一方の駆動IC16におけるシフトレジスタ42では、マスクデータにおける‘0’とされたタイミングに対応する印刷データが間引かれた状態でデータ転送され、他方の駆動IC16におけるシフトレジスタ42では、マスクデータにおける‘1’とされたタイミングに対応する印刷データが間引かれた状態でデータ転送されることになる。
次に、図9を参照して、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10の印刷時の作用を説明する。なお、図9は、パーソナル・コンピュータ等の外部装置から印刷すべき画像を示す画像データが入力された際にコントローラ12のCPU12Dで実行される印刷処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。なお、ここでは、錯綜を回避するために、1枚分の画像を印刷する場合について説明する。
同図のステップ100では、入力された画像データをメモリ12Bの所定領域に一旦格納し、次のステップ102では、当該画像データに基づいて、当該画像データにより示される2次元画像を示す印刷データをメモリ12Bの2次元メモリ空間における矩形領域に作成(展開)する。
次のステップ104では、メモリ12Bの2次元メモリ空間に展開された印刷データをインクジェット記録ヘッド14によって一度に印刷する長尺矩形状の画像に対応する印刷データ毎に分割し、分割した印刷データをインクジェット記録ヘッド14に設けられているイジェクタ群34の各々で用いる印刷データ毎に分割する。
この分割によって得られる各印刷データは、図10の上図に示すように、メモリ12Bの2次元メモリ空間において、対応するイジェクタ群34の配置領域の形状と同様の台形形状を示すものとなる。そこで、同図に示すように、各台形形状を、両端部を三角形形状とし、中間部を矩形形状とした3つの領域に分割した状態を想定する。
同図に示す例では、図2に示されるイジェクタ群34A1に対応する印刷データの2次元メモリ空間上の3つの領域として、領域1A1及び領域3A1の2つの三角形形状の領域と、領域2A1の1つの矩形形状の領域に分割した状態が想定されている。同様に、イジェクタ群34B1に対応する上記3つの領域として、領域3B1及び領域1B1の2つの三角形形状の領域と、領域2B1の1つの矩形形状の領域に分割した状態が想定され、イジェクタ群34A2に対応する上記3つの領域として、領域1A2及び領域3A2の2つの三角形形状の領域と、領域2A2の1つの矩形形状の領域に分割した状態が想定され、イジェクタ群34B2に対応する上記3つの領域として、領域3B2及び領域1B2の2つの三角形形状の領域と、領域2B2の1つの矩形形状の領域に分割した状態が想定される。
次のステップ106では、インクジェット記録ヘッド14によって最初に印刷する長尺矩形状の画像に対応する印刷データ(以下、「処理対象印刷データ」という。)について、図10の下図に示すように、インクジェット記録ヘッド14の長手方向両端部に位置するイジェクタ群34(一端部に位置するイジェクタ群34はイジェクタ群34A1)に対応する印刷データの2次元メモリ空間上の3つの領域のうち、当該長手方向端部に位置する領域に対してダミーデータ(同図では、‘dummy’と表記。)を補填する。なお、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10では、上記ダミーデータとして、イジェクタ32からインク滴を吐出させないデータを適用しているが、これに限定されるものではなく、任意のデータを適用することができる。
次のステップ108では、図11に示すように、イジェクタ群34毎の印刷データに対して、隣接するイジェクタ群34の互いに重なり合う領域に含まれるイジェクタ32に対する印刷データのみを含めた状態として、これらの印刷データを対応する駆動IC16にシリアルに入力する。
これにより、各イジェクタ群34では、互いに隣接するイジェクタ群34との間で互いに重なり合うイジェクタ32に対応する印刷データを共有することになる。なお、図11では、イジェクタ群34A1に対応する印刷データの2次元メモリ空間上の領域(領域1A1、2A1、3A1が組み合わされた領域)を‘A1’と表記し、イジェクタ群34B1に対応する印刷データの2次元メモリ空間上の領域(領域3B1、2B1、1B1が組み合わされた領域)を‘B1’と表記し、イジェクタ群34A2に対応する印刷データの2次元メモリ空間上の領域(領域1A2、2A2、3A2が組み合わされた領域)を‘A2’と表記し、イジェクタ群34B2に対応する印刷データの2次元メモリ空間上の領域(領域3B2、2B2、1B2が組み合わされた領域)を‘B2’と表記している。
この場合、例えば、駆動IC16A1に入力される印刷データDA1、駆動IC16B1に入力される印刷データDB1、駆動IC16A2に入力される印刷データDA2、駆動IC16B2に入力される印刷データDB2は、各々次の(1)式〜(4)式のように模式的に示される。
DA1=dummy+A1+3B1 ・・・(1)
DB1=3A1+B1+1A2 ・・・(2)
DA2=1B1+A2+3B2 ・・・(3)
DB2=3A2+B2+1A3 ・・・(4)
ここで、例えば、印刷データDA1及び印刷データDB1は、次の(5)式及び(6)式で示すように展開される。
DA1=dummy+1A1+2A1+(3A1+3B1) ・・・(5)
DB1=(3A1+3B1)+2B1+(1B1+1A2) ・・・(6)
(5)式及び(6)式に示されるように、イジェクタ群34A1とイジェクタ群34B1とでは、領域3A1及び領域3B1からなる印刷データが共有されることになる。
コントローラ12は、以上のように印刷データを各駆動IC16のシフトレジスタ42に入力すると共に、前述したように各駆動IC16のシフトレジスタ42に対して、クロック前処理部12Cを介して不要な印刷データの入力タイミングに対応する信号がマスクされたクロック信号を入力しているので、各駆動IC16では、対応するイジェクタ群34のみによるインク滴の吐出が行われ、この結果として、インクジェット記録ヘッド14によって一度に印刷される長尺矩形状の画像が記録用紙に印刷されることになる。
そこで、次のステップ110では、この一度分の印刷の終了待ちを行い、次のステップ112にて、記録用紙をインクジェット記録ヘッド14の長手方向に直交する方向に一度の印刷画像の当該方向に対する幅に対応する距離だけ搬送する。
次のステップ114では、1枚分の画像の印刷が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ106に戻り、肯定判定となった時点で本印刷処理プログラムを終了する。なお、上記ステップ106〜ステップ114の処理を繰り返し実行する際には、次に印刷すべき画像領域に対応する印刷データを処理対象印刷データとするようにする。
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、各々インク滴を吐出する複数のイジェクタが2次元配置されたイジェクタ群を単位構造として、複数の前記単位構造が、所定の一方向に対して、隣接する単位構造に配置されているイジェクタ群の端部の一部領域が前記一方向に直交する方向に互いに重なり合うように配置されたインクジェット記録ヘッドを駆動させるに当たり、入力された印刷データに基づいて、対応する単位構造に配置されているイジェクタ群を駆動させる複数の駆動回路(ここでは、駆動IC16)を前記単位構造の各々に対応して設け、前記複数の駆動回路の各々に対して、対応する単位構造に配置されているイジェクタ群を駆動させるための印刷データを、対応する単位構造に配置されているイジェクタ群を駆動させる印刷データに、当該単位構造に隣接する単位構造に配置されているイジェクタ群の互いに重なり合う領域に含まれるイジェクタを駆動させる印刷データのみを含めた状態で入力しているので、イジェクタ群の繋ぎ目に起因する前記インクジェット記録ヘッドによる印刷速度の低下を防止することができる。
また、本実施の形態によれば、前記複数の駆動回路の各々に入力される印刷データに対して、対応する単位構造に隣接する単位構造に配置されているイジェクタ群の互いに重なり合う領域に含まれるイジェクタに対する印刷データをマスクするマスク手段(ここでは、クロック前処理部12C)を更に備えているので、前記複数の駆動回路に対し、対応するイジェクタのみを確実に駆動させることができる。
特に、本実施の形態では、前記マスク手段により、前記印刷データを前記駆動回路に入力するタイミングを示すクロック信号における、前記隣接する単位構造に配置されているイジェクタ群の互いに重なり合う領域に含まれるイジェクタに対する印刷データに対応する信号を間引くことにより前記マスクを行っているので、当該マスクを簡易に行うことができる。
なお、本実施の形態では、1つの単位構造(イジェクタ群34)に対して1つの駆動IC16を設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1つの単位構造に対して複数の駆動IC16を設ける形態とすることもできる。
図12には、1つの単位構造に対して2つの駆動IC16を設ける場合のインクジェット記録ヘッド14’の構成例が示されている。
同図に示すように、このインクジェット記録ヘッド14’は、上記実施の形態に係るインクジェット記録ヘッド14において単位構造としたイジェクタ群34の各々を、インクジェット記録ヘッド14’の長手方向に直交する方向の分割線により、各々上底と下底とを結ぶ一方の辺が垂直となる2つの台形領域に分割し、各分割領域に対して1対1で駆動IC16を設けている。
なお、ここでは、上記実施の形態に係るインクジェット記録ヘッド14におけるイジェクタ群34A1を2つに分割したものをイジェクタ群34A1及びイジェクタ群34B1と表現し、イジェクタ群34B1を2つに分割したものをイジェクタ群34C1及びイジェクタ群34D1と表現し、イジェクタ群34A2を2つに分割したものをイジェクタ群34A2及びイジェクタ群34B2と表現し、イジェクタ群34B2を2つに分割したものをイジェクタ群34C2及びイジェクタ群34D2と表現する。また、イジェクタ群34A1に対応する駆動ICを駆動IC16A1、イジェクタ群34B1に対応する駆動ICを駆動IC16B1とし、イジェクタ群34C1に対応する駆動ICを駆動IC16C1、イジェクタ群34D1に対応する駆動ICを駆動IC16D1とし、イジェクタ群34A2に対応する駆動ICを駆動IC16A2、イジェクタ群34B2に対応する駆動ICを駆動IC16B2とし、イジェクタ群34C2に対応する駆動ICを駆動IC16C2、イジェクタ群34D2に対応する駆動ICを駆動IC16D2とする。
この場合、コントローラ12は、前述した印刷処理プログラム(図9も参照。)の実行時において、まず、ステップ100では、入力された画像データをメモリ12Bの所定領域に一旦格納し、次のステップ102では、当該画像データに基づいて、当該画像データにより示される2次元画像を示す印刷データをメモリ12Bの2次元メモリ空間における矩形領域に作成(展開)する。
次のステップ104では、メモリ12Bの2次元メモリ空間に展開された印刷データをインクジェット記録ヘッド14’によって一度に印刷する長尺矩形状の画像に対応する印刷データ毎に分割し、分割した印刷データをインクジェット記録ヘッド14’に設けられているイジェクタ群34(2つに分割する前のイジェクタ群)の各々で用いる印刷データ毎に分割する。
この分割によって得られる各印刷データは、図13の上図に示すように、メモリ12Bの2次元メモリ空間において、対応するイジェクタ群34の配置領域の形状と同様の台形形状を示すものとなる。そこで、同図に示すように、各台形形状を、両端部を三角形形状とし、中間部を上記分割線で分割された2つの矩形形状とした4つの領域に分割した状態を想定する。
同図に示す例では、図12に示されるイジェクタ群34A1、34B1に対応する印刷データの2次元メモリ空間上の4つの領域として、領域1A1及び領域1B1の2つの三角形形状の領域と、領域2A1及び領域2B1の2つの矩形形状の領域に分割した状態が想定されている。同様に、イジェクタ群34C1、34D1に対応する上記4つの領域として、領域1C1及び領域1D1の2つの三角形形状の領域と、領域2C1及び領域2D1の2つの矩形形状の領域に分割した状態が想定され、イジェクタ群34A2、34B2に対応する上記4つの領域として、領域1A2及び領域1B2の2つの三角形形状の領域と、領域2A2及び領域2B2の2つの矩形形状の領域に分割した状態が想定され、イジェクタ群34C2、34D2に対応する上記4つの領域として、領域1C2及び領域1D2の2つの三角形形状の領域と、領域2C2及び領域2D2の2つの矩形形状の領域に分割した状態が想定される。
次のステップ106では、インクジェット記録ヘッド14’によって最初に印刷する長尺矩形状の画像に対応する印刷データ(処理対象印刷データ)について、図13の下図に示すように、インクジェット記録ヘッド14’の長手方向両端部に位置するイジェクタ群34(一端部に位置するイジェクタ群34はイジェクタ群34A1)に対応する印刷データの2次元メモリ空間上の4つの領域のうち、当該長手方向端部に位置する領域に対してダミーデータ(同図では、‘dummy’と表記。)を補填する。
次のステップ108では、図14に示すように、イジェクタ群34(2つに分割する前のイジェクタ群、以下同様。)毎の印刷データに対して、隣接するイジェクタ群34の互いに重なり合う領域に含まれるイジェクタ32に対する印刷データのみを含めた状態として、これらの印刷データを各駆動IC16に対応するように2つに分割し、対応する駆動IC16にシリアルに入力する。
これにより、各イジェクタ群34には、互いに隣接するイジェクタ群34との間で互いに重なり合うイジェクタ32に対応する印刷データを共有することになる。なお、図14では、イジェクタ群34A1に対応する印刷データの2次元メモリ空間上の領域(領域1A1、2A1が組み合わされた領域)を‘A1’と表記し、イジェクタ群34B1に対応する印刷データの2次元メモリ空間上の領域(領域2B1、1B1が組み合わされた領域)を‘B1’と表記し、イジェクタ群34C1に対応する印刷データの2次元メモリ空間上の領域(領域1C1、2C1が組み合わされた領域)を‘C1’と表記し、イジェクタ群34D1に対応する印刷データの2次元メモリ空間上の領域(領域2D1、1D1が組み合わされた領域)を‘D1’と表記し、イジェクタ群34A2に対応する印刷データの2次元メモリ空間上の領域(領域1A2、2A2が組み合わされた領域)を‘A2’と表記し、イジェクタ群34B2に対応する印刷データの2次元メモリ空間上の領域(領域2B2、1B2が組み合わされた領域)を‘B2’と表記し、イジェクタ群34C2に対応する印刷データの2次元メモリ空間上の領域(領域1C2、2C2が組み合わされた領域)を‘C2’と表記し、イジェクタ群34D2に対応する印刷データの2次元メモリ空間上の領域(領域2D2、1D2が組み合わされた領域)を‘D2’と表記している。
コントローラ12は、以上のように印刷データを各駆動IC16のシフトレジスタ42に入力すると共に、前述したように各駆動IC16のシフトレジスタ42に対して、クロック前処理部12Cを介して不要な印刷データの入力タイミングに対応する信号がマスクされたクロック信号を入力しているので、各駆動IC16では、対応するイジェクタ群34のみによるインク滴の吐出が行われ、この結果として、インクジェット記録ヘッド14’によって一度に印刷される長尺矩形状の画像が記録用紙に印刷されることになる。
そこで、次のステップ110では、この一度分の印刷の終了待ちを行い、次のステップ112にて、記録用紙をインクジェット記録ヘッド14’の長手方向に直交する方向に一度の印刷画像の当該方向に対する幅に対応する距離だけ搬送する。
次のステップ114では、1枚分の画像の印刷が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ106に戻り、肯定判定となった時点で本印刷処理プログラムを終了する。なお、上記ステップ106〜ステップ114の処理を繰り返し実行する際には、次に印刷すべき画像領域に対応する印刷データを処理対象印刷データとするようにする。この場合も、本実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、本実施の形態では、クロック前処理部12Cをコントローラ12に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、各駆動IC16に設ける形態とすることもできる。この場合の形態例としては、各駆動IC16にマスクデータを記憶したメモリを設けると共に、各駆動IC16にコントローラ12から発振器12Aによって生成されたクロック信号を入力し、当該クロック信号を本実施の形態と同様にクロック前処理部12Cにてマスクした状態でシフトレジスタ42に入力する形態を例示することができる。この場合も、本実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、本実施の形態では、本発明のイジェクタ群の配置領域の形状として台形形状を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、三角形形状を適用する形態や、台形形状と三角形形状の双方を適用する形態とすることもできる。この場合も、本実施の形態と同様の効果を奏することができる。なお、イジェクタ群の配置領域の形状として三角形形状を適用した場合、駆動IC16には、シフトレジスタ42によって保持可能な印刷データ量の2倍の印刷データが入力されることになる。
また、本実施の形態では、本発明の駆動回路をICとして構成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電子素子を用いた電子回路として構成する形態とすることもできる。この場合も、本実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、本実施の形態では、駆動IC16をインクジェット記録ヘッド14に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、各駆動IC16をコントローラ12と一体的に構成する形態や、コントローラ12及びインクジェット記録ヘッド14とは別体として設ける形態とすることもできる。この場合、インクジェット記録ヘッド14のサイズを小型化することができる。
その他、本実施の形態で説明したインクジェット記録装置10の各部構成や、駆動波形、波形信号、各種データの状態(図1〜図8参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
更に、本実施の形態で説明した印刷処理プログラムの処理の流れ(図9参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
[第2の実施の形態]
まず、本実施の形態に係るインクジェット記録装置510の構成について、図16〜図18を参照しつつ説明する。
図16は、本実施の形態に係るインクジェット記録装置510の要部構成を示す図であり、ここでは記録用紙の搬送系を除き、主としてインクジェット記録ヘッド周辺部の構成を示している。
同図に示すように、本実施の形態に係るインクジェット記録装置510は、インクジェット記録装置510全体の動作を司るコントローラ512と、供給された印刷データに基づいてインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド514と、を備えている。また、インクジェット記録ヘッド514は、各々個別に設けられた圧電素子(ピエゾ素子)30の変形によってインク滴を吐出する複数のイジェクタ32が2次元配置されて構成された複数のイジェクタ群534と、イジェクタ群534の各々に対応して設けられた駆動IC(Integrated Circuit)16と、を備えている。
なお、本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッド514は、記録用紙の幅にほぼ等しい幅を有する長尺状のものとされている。すなわち、本インクジェット記録装置510は、当該インクジェット記録ヘッド514を固定したまま記録用紙のみを搬送しながら記録を行う、いわゆるFWA(Full Width Array)方式のインクジェット記録装置として構成されている。
また、本実施の形態に係るイジェクタ32は、上記第1の実施の形態に係るイジェクタ32と同様に、インクが充填される圧力発生室と、当該圧力発生室と連通し、インクを吐出可能なインク吐出口と、前記圧力発生室の壁面の一部を構成し、振動することによって前記圧力発生室を膨張又は収縮させる振動板、及び記録すべき画像を示す画像データに応じて印加された電圧によって変形することにより前記振動板を振動させる圧電素子30を備えたアクチュエータと、を含んで構成されている。
コントローラ512にはインクジェット記録ヘッド514に設けられた全ての駆動IC16が接続されており、駆動IC16の作動の制御は、クロック信号、印刷データ及びラッチ信号と、各々一対の信号とされた波形信号A、波形信号B及び波形信号C等が用いられてコントローラ512によって行われる。
一方、図17には、本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッド514の概略構成を示す平面図が示されている。
同図に示すように、本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッド514は、複数のイジェクタ32が2次元配置されて構成されたイジェクタ群534A1、534B1、534A2、534B2・・・の各々を単位構造として、複数の単位構造が、所定の一方向(インクジェット記録ヘッド514の長手方向(長尺方向))に対して、自身のイジェクタ群における一方の端部の一部領域が隣接する単位構造のイジェクタ群における端部の一部領域と上記一方向に直交する方向(インクジェット記録ヘッド514の短手方向)に互いに重なり合う状態で配置されている。
そして、各イジェクタ群534A1、534B1、534A2、534B2・・・には、駆動IC16A1、16B1、16A2、16B2・・・が1対1で個別に設けられており、イジェクタ群と、対応する駆動ICとの間は、各々不図示の接続線によって電気的に接続されている。なお、以下では、特定のものを示したい場合を除き、イジェクタ群534A1、534B1、534A2、534B2・・・を「イジェクタ群534」と略して表記する場合がある。また、以下では、特定のものを示したい場合を除き、駆動IC16A1、16B1、16A2、16B2・・・を「駆動IC16」と略して表記する場合がある。
本実施の形態に係るイジェクタ群534は、2つが組み合わされることにより、外径形状が平面視平行四辺形形状となり、かつ各イジェクタ群の組み合わせた側の端部の一部領域が組み合わせ方向に直交する方向に互いに重なり合うものとされたヘッドユニット515として単体部品として構成されている。そして、本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッド514は、一対のヘッドユニット515が長手方向に複数組配列されたものとなっている。
なお、本実施の形態に係る駆動IC16及びレベルシフタ48の構成と動作は、上記第1の実施の形態に係るもの(図3〜図5、図15、表1参照。)と同一であるので、ここでの説明は省略する。但し、駆動IC16におけるシフトレジスタ42に入力される印刷データが、上記第1の実施の形態では、対応するイジェクタ群34に含まれるイジェクタ32の数に、隣接配置されたイジェクタ群34のインクジェット記録ヘッド14短手方向に重なっているイジェクタ32の数を加算した数だけ連続して入力されるのに対し、本第2の実施の形態では、対応するヘッドユニット515に配置されている全てのイジェクタ32を駆動させる印刷データが含まれ、かつ記録画像が略矩形形状となる状態で連続して入力される点が異なる。
このように、本実施の形態に係るインクジェット記録装置510では、コントローラ512から各駆動IC16に入力する印刷データを、対応するヘッドユニット515に配置されている全てのイジェクタ32を駆動させる印刷データが含まれ、かつ記録画像が略矩形形状となるものとしている。このため、駆動IC16では、入力された印刷データから、自身が駆動させるイジェクタ群534を駆動させる印刷データのみを選択的に適用する必要がある。
これを簡易に実現するために、本実施の形態に係るコントローラ512にはクロック前処理部512Cが設けられている。
すなわち、図18に示すように、コントローラ512には、インクジェット記録装置510の動作を制御するための基準信号となるクロック信号を生成する発振器512Aと、不揮発性のメモリ512B(一例として、フラッシュ・メモリ)と、クロック前処理部512Cと、コントローラ512全体の動作を司るCPU(中央処理装置)512Dと、が備えられている。なお、錯綜を回避するために、同図では、クロック前処理部512Cとして駆動IC16A1及び駆動IC16B1に関する部分のみ図示し、以下では、主としてこの部分について説明するが、他の駆動IC16に関する部分も同様である。
メモリ512BはCPU512Dに接続されており、CPU512Dはメモリ512Bにアクセスすることができる。
一方、クロック前処理部512Cには、2入力1出力のアンドゲート512C1、512C2と、倍周器512C3と、インバータ512C4と、が備えられている。倍周器512C3の入力端には発振器512Aのクロック信号を出力する出力端が接続されており、倍周器512C3では、入力されたクロック信号の周波数が2倍とされて出力される。そして、倍周器512C3の周波数が2倍とされたクロック信号の出力端はアンドゲート512C1、512C2の各々における一方の入力端とCPU512Dに接続されており、各アンドゲート512C1、512C2の一方の入力端及びCPU512Dには2倍の周波数とされたクロック信号(以下、「2倍周クロック信号」という。)が入力されることになる。
一方、アンドゲート512C1の他方の入力端にはCPU512Dが直接接続され、アンドゲート512C2の他方の入力端にはCPU512Dがインバータ512C4を介して接続されている。そして、アンドゲート512C1の出力端は駆動IC16A1にクロック信号を供給するものとされており、アンドゲート512C2の出力端は駆動IC16B1にクロック信号を供給するものとされている。
ここで、メモリ512Bには、各駆動IC16に入力するクロック信号を、当該駆動IC16が駆動対象とするイジェクタ群534を駆動させる印刷データのシフトレジスタ42への入力タイミングに対応するパルスのみ有効とし、他の印刷データのシフトレジスタ42への入力タイミングに対応するパルスを無効とするためのマスクデータが予め記憶されている。
本実施の形態に係るコントローラ512は、駆動IC16の各々に対し、印刷データとして、記録対象とする画像の全印刷データを1つのイジェクタ群34のイジェクタ数(ここでは、8個)と同数で、かつ記録画像が略矩形形状となるデータ毎のグループに分割し、対応するヘッドユニット515に配置されているイジェクタ32を駆動させる印刷データが含まれる分割グループの印刷データのみをシリアルに入力するものとされている。この結果、例えば、駆動IC16A1及び駆動IC16B1には、共にイジェクタ群534A1及びイジェクタ群534B1を駆動させる全ての印刷データが入力されることになる。
また、本実施の形態に係るコントローラ512では、ヘッドユニット515の各々に対応するマスクデータであり、対応するヘッドユニット515に配置されているイジェクタ32を駆動させる印刷データを最も多く含む前記分割グループに含まれる全ての印刷データに対し、当該ヘッドユニット515に配置されているイジェクタ32を駆動させる印刷データをマスクせず、当該印刷データ以外の印刷データをマスクすることを示す2値データとして構成されたマスクデータが、メモリ512Bに予め記憶されている。なお、本実施の形態では、マスクしないことを示す値として‘1’が、マスクすることを示す値として‘0’が、各々適用されている。図17に示されるインクジェット記録ヘッド514では、例えば、駆動IC16A1に対応するマスクデータとして‘1,1,1,1,1,1,1,0’が、駆動IC16B1に対応するマスクデータとして‘0,1,1,1,1,1,1,1’が、各々メモリ512Bに記憶されている。
そして、コントローラ512では、駆動IC16の各々に入力される印刷データに対し、印刷データの入力対象となる駆動IC16が駆動対象とするヘッドユニット515に対応するマスクデータと、当該ヘッドユニット515のイジェクタ群534の端部の一部領域にイジェクタ群534の端部の一部領域がインクジェット記録ヘッド514の短手方向に重なるヘッドユニット515に対応するマスクデータの反転データと、を組み合わせた合成マスクデータを用いてマスクを行うものとされている。この結果、図17に示されるインクジェット記録ヘッド514では、例えば、駆動IC16A1に入力される印刷データをマスクする合成マスクデータとして、‘1,1,1,1,1,1,1,0,1,0,0,0,0,0,0,0’が作成されて用いられることになる。
なお、図18に示すように、駆動IC16B1に供給するクロック信号を出力するアンドゲート512C2には、上記マスクデータの反転データ(‘1’を‘0’とし、‘0’を‘1’としたデータ)を入力しているが、これは、図17に示されるインクジェット記録ヘッド514の場合、互いに隣接する駆動IC16に供給する印刷データが同一のものであると共に、当該印刷データにおいて実際に使用する印刷データが互いに逆の領域のものであるためである。
CPU512Dは、メモリ512Bから必要とされるマスクデータを読み出し、これに基づいて合成マスクデータを作成して、倍周器512C3から入力されている2倍の周波数とされたクロック信号に同期させると共に、駆動IC16のシフトレジスタ42への印刷データの入力タイミングに同期させた状態で、作成した合成マスクデータをアンドゲート512C1及びインバータ512C4にシリアルに出力する。これにより、アンドゲート512C1及びアンドゲート512C2から対応する駆動IC16に入力されるクロック信号は、当該駆動IC16の駆動対象とするイジェクタ群534を駆動させる印刷データのシフトレジスタ42への入力タイミングに対応する信号のみ有効とされ、他の印刷データのシフトレジスタ42への入力タイミングに対応する信号は無効とされる。従って、各駆動IC16では、自身が駆動対象としているイジェクタ群534のみを駆動させる駆動波形が生成され、当該イジェクタ群534のみが駆動されることになる。
次に、図19を参照して、本実施の形態に係るインクジェット記録装置510の印刷時の作用を説明する。なお、図19は、パーソナル・コンピュータ等の外部装置から印刷すべき画像を示す画像データが入力された際にコントローラ512のCPU512Dで実行される印刷処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。なお、ここでは、錯綜を回避するために、1枚分の画像を印刷する場合について説明する。
同図のステップ200では、入力された画像データをメモリ512Bの所定領域に一旦格納し、次のステップ202では、当該画像データに基づいて、当該画像データにより示される2次元画像を示す印刷データをメモリ512Bの2次元メモリ空間における矩形領域に作成(展開)する。
次のステップ204では、インクジェット記録ヘッド514によって最初に印刷する長尺矩形状の画像領域に対応する印刷データ(以下、「処理対象印刷データ」という。)を用いて、駆動IC16の各々に対し、印刷データとして、対応するヘッドユニット515に配置されているイジェクタ32を駆動させる印刷データが含まれる上記分割グループの印刷データのみを、倍周器512C3から入力されている2倍周クロック信号に同期させた状態でシリアルに入力する。
コントローラ512は、以上のように印刷データを各駆動IC16のシフトレジスタ42に入力すると共に、前述したように各駆動IC16のシフトレジスタ42に対して、クロック前処理部512Cを介して不要な印刷データの入力タイミングに対応するパルスがマスクされたクロック信号を入力しているので、各駆動IC16では、対応するイジェクタ群534のみによるインク滴の吐出が行われ、この結果として、インクジェット記録ヘッド514によって一度に印刷される長尺矩形状の画像が記録用紙に印刷されることになる。
そこで、次のステップ206では、この一度分の印刷の終了待ちを行い、次のステップ208にて、記録用紙をインクジェット記録ヘッド514の長手方向に直交する方向に一度の印刷画像の当該方向に対する幅に対応する距離だけ搬送する。
次のステップ210では、1枚分の画像の印刷が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ204に戻り、肯定判定となった時点で本印刷処理プログラムを終了する。なお、上記ステップ204〜ステップ210の処理を繰り返し実行する際には、次に印刷すべき画像領域に対応する印刷データを処理対象印刷データとするようにする。
次に、図20を参照して、コントローラ512における各駆動IC16に供給するクロック信号の生成状態及び各駆動IC16に取り込まれる印刷データの状態の具体的な説明として、駆動IC16A1及び駆動IC16B1に関する部分について説明する。
同図に示すように、コントローラ512では、倍周器512C3にて、発振器512Aにより生成されたクロック信号CLKの2倍の周波数とされた2倍周クロック信号が生成され、アンドゲート512C1、512C2の一方の入力端に入力される。
一方、印刷を実行する際に、CPU512Dは、メモリ512Bに記憶されているマスクデータを読み出し、駆動IC16A1に対応するマスクデータと、駆動IC16B1に対応するマスクデータの反転データとを組み合わせて合成マスクデータ(ここでは、‘1,1,1,1,1,1,1,0,1,0,0,0,0,0,0,0’)を作成し、作成した合成マスクデータをアンドゲート512C1及びインバータ512C4にシリアルに出力する。
これにより、図20に示すように、アンドゲート512C1から駆動IC16A1に出力されるクロック信号は、8番目及び10番目〜16番目のパルスが削除された状態(ロー・レベルとされた状態)となり、アンドゲート512C2から駆動IC16B1に出力されるクロック信号は、1番目〜7番目及び9番目のパルスが削除された状態(ロー・レベルとされた状態)となる。
この結果、駆動IC16A1及び駆動IC16B1の各シフトレジスタ42に取り込まれる印刷データは、自身が駆動対象としているイジェクタ32を駆動させるもののみとなる。
従って、駆動IC16A1、16B1では、自身が駆動対象としているイジェクタ群534のみを駆動させる駆動波形が生成され、当該イジェクタ群534のみが駆動されることになる。
なお、ここでは、駆動IC16A1、16B1について着目して説明したが、他の駆動IC16についても同様の動作となる。
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、各々インク滴を吐出する複数のイジェクタが2次元配置されたイジェクタ群を有する複数の単位構造体(ここでは、ヘッドユニット515)が、所定の一方向に対して、イジェクタ群の少なくとも一方の端部の一部領域が隣接する単位構造体のイジェクタ群の端部の一部領域と前記一方向に直交する方向に互いに重なり合う状態で配置されたインクジェット記録ヘッドを駆動させるに当たり、入力された印刷データに基づいて、対応する単位構造体のイジェクタ群を駆動させる複数の駆動回路(ここでは、駆動IC16)を前記単位構造体の各々に対応して設け、前記複数の駆動回路の各々に対し、前記印刷データとして、対応する単位構造体に配置されている全てのイジェクタを駆動させる印刷データが含まれ、かつ記録画像が略矩形形状(図17に示す例では、平行四辺形)となる印刷データを、対応する単位構造体に配置されているイジェクタ以外のイジェクタを駆動させる印刷データをマスクした状態でシリアルに入力しているので、単位構造体の繋ぎ目に起因する前記インクジェット記録ヘッドによる印刷速度の低下を防止することができる。
また、本実施の形態によれば、前記複数の駆動回路の各々に対し、前記印刷データとして、記録対象とする画像の全印刷データを1つのイジェクタ群のイジェクタ数と同数で、かつ記録画像が略矩形形状となるデータ毎のグループに分割し、対応する単位構造体に配置されているイジェクタを駆動させる印刷データが含まれる分割グループの印刷データのみをシリアルに入力するものとしているので、入力する印刷データを最低限のものとすることができ、印刷速度の低下を、より防止することができる。
特に、本実施の形態では、前記複数の単位構造体の各々に対応するマスクデータであり、対応する単位構造体に配置されているイジェクタを駆動させる印刷データを最も多く含む前記分割グループに含まれる全ての印刷データに対し、当該単位構造体に配置されているイジェクタを駆動させる印刷データをマスクせず、当該印刷データ以外の印刷データをマスクすることを示す2値データとして構成されたマスクデータを記憶手段(ここでは、メモリ512B)に予め記憶しておき、前記複数の駆動回路の各々に入力される印刷データに対し、印刷データの入力対象となる駆動回路が駆動対象とする単位構造体に対応するマスクデータと、当該単位構造体のイジェクタ群の端部の一部領域にイジェクタ群の端部の一部領域が前記一方向に直交する方向に重なる単位構造体に対応するマスクデータの反転データと、を組み合わせた合成マスクデータを用いて前記マスクを行っているので、全ての単位構造体に対応するマスクデータとして合成マスクデータを記憶しておく場合に比較して、当該記憶に要する記憶容量を低減することができる。
また、本実施の形態によれば、所定周波数のクロック信号を生成するクロック信号生成手段(ここでは、発振器512A)を更に備え、前記印刷データを前記クロック信号に同期させた状態で対応する駆動回路に入力するものとすると共に、前記クロック信号における、マスク対象とする印刷データの入力タイミングに対応するパルスを、前記合成マスクデータを用いて間引くことにより前記マスクを行うものとしているので、容易かつ短時間にマスクを行うことができる。
特に、本実施の形態によれば、前記合成マスクデータと、前記クロック信号を2倍周した2倍周クロック信号との論理積をとることによって前記間引き後のクロック信号を生成し、前記印刷データを前記間引き後のクロック信号に同期させた状態で対応する駆動回路に入力しているので、各駆動回路に対して当該駆動回路によって駆動されるイジェクタのみに対応する印刷データを入力する場合を想定した場合と同程度の印刷速度を実現することができる。
[第3の実施の形態]
本第3の実施の形態では、各イジェクタ群534に含まれるイジェクタ32を2系統に分けた状態で各イジェクタ群534を駆動させる場合の形態例について説明する。なお、本第3の実施の形態に係るインクジェット記録装置510の構成は、駆動IC16及びコントローラ512の構成を除き、上記第2の実施の形態に係るインクジェット記録装置510と同様であるので、ここでは、まず、本第3の実施の形態に係る駆動IC16及びコントローラ512の構成を説明する。
図21には、本第3の実施の形態に係る駆動IC16の構成が示されている。なお、図21における図3と同様の構成要素には図3と同一の符号を付して、その説明を省略する。
同図に示すように、本実施の形態に係る駆動IC16は、上記第2の実施の形態に係る駆動IC16に比較して、シフトレジスタ42、ラッチ回路44、セレクタ46、レベルシフタ48及び駆動波形生成回路50からなる構成が、図17左端からのインクジェット記録ヘッド514長手方向の配置順番として奇数番目のノズルに対応するもの(以下、「奇数ノズル対応部17A」という。)と、偶数番目のノズルに対応するもの(以下、「偶数ノズル対応部17B」という。)との2系統分設けられている点が異なっている。
奇数ノズル対応部17Aに設けられた複数の駆動波形生成回路50は、上記奇数番目のノズルに対応する圧電素子30に1対1で接続され、偶数ノズル対応部17Bに設けられた複数の駆動波形生成回路50は、上記偶数番目のノズルに対応する圧電素子30に1対1で接続される。そして、奇数ノズル対応部17Aに設けられたシフトレジスタ42及びラッチ回路44と、偶数ノズル対応部17Bに設けられたシフトレジスタ42及びラッチ回路44とには、各々個別にクロック信号、印刷データ、及びラッチ信号が入力される構成となっている。
一方、図22には、本第3の実施の形態に係るコントローラ512の構成が示されている。なお、図22における図18と同様の構成要素には図18と同一の符号を付して、その説明を省略する。また、錯綜を回避するために、同図では、クロック前処理部512Eとして駆動IC16A1及び駆動IC16B1に関する部分のみ図示し、以下では、主としてこの部分について説明するが、他の駆動IC16に関する部分も同様である。
同図に示すように、本実施の形態に係るコントローラ512は、上記第2の実施の形態に係るコントローラ512に比較して、クロック前処理部512Cに代えて、奇数ノズル対応部17A及び偶数ノズル対応部17Bに対応するものとされたクロック前処理部512Eが適用されている点のみが異なっている。
本実施の形態に係るクロック前処理部512Eには、4つの2入力1出力のアンドゲート512E1〜512E4と、2つのインバータ512E5、512E6と、が備えられている。発振器512Aのクロック信号を出力する出力端はアンドゲート512E1〜512E4の各々における一方の入力端とCPU512Dに接続されており、各アンドゲート512E1〜512E4の一方の入力端及びCPU512Dにはクロック信号が入力される。
一方、アンドゲート512E1の他方の入力端にはCPU512Dの後述する奇数ノズル用マスクデータを出力する第1出力端が直接接続され、アンドゲート512E3の他方の入力端にはCPU512Dの当該第1出力端がインバータ512E5を介して接続されている。また、アンドゲート512E2の他方の入力端にはCPU512Dの後述する偶数ノズル用マスクデータを出力する第2出力端が直接接続され、アンドゲート512E4の他方の入力端にはCPU512Dの当該第2出力端がインバータ512E6を介して接続されている。
そして、アンドゲート512E1の出力端は、駆動IC16A1の奇数ノズル対応部17Aのシフトレジスタ42にクロック信号を供給するものとされており、アンドゲート512E2の出力端は、駆動IC16A1の偶数ノズル対応部17Bのシフトレジスタ42にクロック信号を供給するものとされており、アンドゲート512E3の出力端は、駆動IC16B1の奇数ノズル対応部17Aのシフトレジスタ42にクロック信号を供給するものとされており、アンドゲート512E4の出力端は、駆動IC16B1の偶数ノズル対応部17Bのシフトレジスタ42にクロック信号を供給するものとされている。
本実施の形態に係るコントローラ512では、駆動IC16の各々に入力される印刷データに対し、印刷データの入力対象となる駆動IC16が駆動対象とするヘッドユニット515に対応するマスクデータと、当該ヘッドユニット515のイジェクタ群534の端部の一部領域にイジェクタ群534の端部の一部領域がインクジェット記録ヘッド514の短手方向に重なるヘッドユニット515に対応するマスクデータの反転データと、を組み合わせた合成マスクデータを作成した後、当該合成マスクデータを、奇数ノズル対応部17Aに入力する印刷データをマスクするマスクデータ(以下、「奇数ノズル用マスクデータ」という。)と、偶数ノズル対応部17Bに入力する印刷データをマスクするマスクデータ(以下、「偶数ノズル用マスクデータ」という。)とに分類し、これらのマスクデータを用いて並行してマスクを行うものとされている。なお、図17に示されるインクジェット記録ヘッド514では、駆動IC16A1用の奇数ノズル用マスクデータとして、‘1,1,1,1,1,0,0,0’が、偶数ノズル用マスクデータとして、‘1,1,1,0,0,0,0,0’が作成されて用いられることになる。
ここで、駆動IC16B1に供給するクロック信号を出力するアンドゲート512E3、512E4には、各々アンドゲート512E1、512E2に入力するマスクデータの反転データ(‘1’を‘0’とし、‘0’を‘1’としたデータ)を入力しているが、これは、互いに隣接する駆動IC16に供給する印刷データが同一のものであると共に、当該印刷データにおいて実際に使用する印刷データが互いに逆の領域のものであるためである。
CPU512Dは、メモリ512Bから必要とされるマスクデータを読み出し、これに基づいて合成マスクデータを作成した後に、当該合成マスクデータを用いて奇数ノズル用マスクデータ及び偶数ノズル用マスクデータを作成し、発振器512Aから入力されているクロック信号に同期させると共に、各駆動IC16のシフトレジスタ42への印刷データの入力タイミングに同期させた状態で、奇数ノズル用マスクデータをアンドゲート512E1及びインバータ512E5に、偶数ノズル用マスクデータをアンドゲート512E2及びインバータ512E6に、各々出力する。これにより、アンドゲート512E1〜アンドゲート512E4から対応する駆動IC16に入力されるクロック信号は、当該駆動IC16の駆動対象とするイジェクタ群534を駆動させる印刷データのシフトレジスタ42への入力タイミングに対応する信号のみ有効とされ、他の印刷データのシフトレジスタ42への入力タイミングに対応する信号は無効とされる。従って、各駆動IC16では、自身が駆動対象としているイジェクタ群534のみを駆動させる駆動波形が生成され、当該イジェクタ群534のみが駆動されることになる。
次に、図23を参照して、コントローラ512における各駆動IC16に供給するクロック信号の生成状態及び各駆動IC16に取り込まれる印刷データの状態の具体的な説明として、駆動IC16A1に関する部分について説明する。
同図に示すように、コントローラ512では、発振器512Aにより生成されたクロック信号CLKがアンドゲート512E1〜512E4の一方の入力端に入力される。
一方、印刷を実行する際に、CPU512Dは、メモリ512Bに記憶されているマスクデータを読み出し、駆動IC16A1に対応するマスクデータと、駆動IC16B1に対応するマスクデータの反転データとを組み合わせて合成マスクデータ(ここでは、‘1,1,1,1,1,1,1,0,1,0,0,0,0,0,0,0’)を作成し、作成した合成マスクデータを用いて奇数ノズル用マスクデータ及び偶数ノズル用マスクデータを作成して、奇数ノズル用マスクデータをアンドゲート512E1及びインバータ512E5に、偶数ノズル用マスクデータをアンドゲート512E2及びインバータ512E6に、各々シリアルに出力する。
これにより、図23に示すように、アンドゲート512E1から駆動IC16A1の奇数ノズル対応部17Aのシフトレジスタ42に出力されるクロック信号は、6番目〜8番目のパルスが削除された状態(ロー・レベルとされた状態)となり、アンドゲート512E2から駆動IC16A1の偶数ノズル対応部17Bのシフトレジスタ42に出力されるクロック信号は、4番目〜8番目のパルスが削除された状態(ロー・レベルとされた状態)となる。
なお、このとき、CPU512Dは、図23に示すように、各駆動IC16の奇数ノズル対応部17A及び偶数ノズル対応部17Bに出力する印刷データもまた、奇数番目のノズルに対応する印刷データ(以下、「奇数ノズル用印刷データ」という。)をシリアルに奇数ノズル対応部17Aに入力すると共に、偶数番目のノズルに対応する印刷データ(以下、「偶数ノズル用印刷データ」という。)をシリアルに偶数ノズル対応部17Bに入力する。
この結果、駆動IC16A1の奇数ノズル対応部17A及び偶数ノズル対応部17Bの各シフトレジスタ42に取り込まれる印刷データは、自身が駆動対象としているイジェクタ32を駆動させるもののみとなる。
従って、駆動IC16A1では、自身が駆動対象としているイジェクタ群534のみを駆動させる駆動波形が生成され、当該イジェクタ群534のみが駆動されることになる。
なお、ここでは、駆動IC16A1について着目して説明したが、他の駆動IC16についても同様の動作となる。
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、上記第2の実施の形態における2倍周クロック信号に関する効果を除く効果を奏することができると共に、合成マスクデータを予め定められた2系統に分類し、分類後の2組の合成マスクデータとクロック信号との論理積を並行してとることによって間引き後のクロック信号を並行して2系統分生成すると共に、印刷データを前記2系統に分類し、分類後の2組の印刷データを、前記2系統分のクロック信号における対応するクロック信号に同期させた状態で対応する駆動回路(ここでは、駆動IC16)に入力しているので、各駆動回路に対して当該駆動回路によって駆動されるイジェクタのみに対応する印刷データを入力する場合を想定した場合と同程度の印刷速度を実現することができる。
[第4の実施の形態]
本第4の実施の形態では、上記第3の実施の形態の変形例について説明する。なお、本第4の実施の形態に係るインクジェット記録装置510の構成は、コントローラ512の構成を除き、上記第3の実施の形態に係るインクジェット記録装置510と同様であるので、ここでは、まず、図24を参照して、本第4の実施の形態に係るコントローラ512の構成を説明する。なお、図24における図22と同様の構成要素には図22と同一の符号を付して、その説明を省略する。
同図に示すように、本実施の形態に係るコントローラ512は、上記第3の実施の形態に係るコントローラ512に比較して、クロック前処理部512Eに代えて、倍周器512E7を有するクロック前処理部512E’が適用されている点、及びマスクデータ分類用のセレクタ512F及び印刷データ分類用のセレクタ512Gが新たに設けられている点のみが異なっている。
すなわち、本実施の形態に係るクロック前処理部512E’には、発振器512Aのクロック信号を出力する出力端と、4つの2入力1出力のアンドゲート512E1〜512E4の一方の入力端及びCPU512Dとの間に介在された状態で、発振器512Aから入力されたクロック信号の周波数を2倍にして各アンドゲート512E1〜512E4の一方の入力端及びCPU512Dに入力する倍周器512E7が設けられている。従って、アンドゲート512E1〜512E4の一方の入力端及びCPU512Dには、2倍の周波数とされたクロック信号が入力されることになる。
一方、アンドゲート512E1の他方の入力端には入力端がCPU512Dに接続されたセレクタ512Fの後述する奇数ノズル用マスクデータを出力する第1出力端が直接接続され、アンドゲート512E3の他方の入力端にはセレクタ512Fの当該第1出力端がインバータ512E5を介して接続されている。また、アンドゲート512E2の他方の入力端にはセレクタ512Fの後述する偶数ノズル用マスクデータを出力する第2出力端が直接接続され、アンドゲート512E4の他方の入力端にはセレクタ512Fの当該第2出力端がインバータ512E6を介して接続されている。更に、CPU512Dの各駆動IC16に対する印刷データの出力端の各々にはセレクタ512Gの入力端が個別に接続されている。
本実施の形態に係るCPU512Dでは、合成マスクデータを奇数ノズル用マスクデータ及び偶数ノズル用マスクデータには分類せず、合成マスクデータをセレクタ512Fに出力する。セレクタ512Fは、CPU512Dから入力された合成マスクデータを奇数ノズル用マスクデータ及び偶数ノズル用マスクデータに選別して出力するものとされている。
なお、アンドゲート512E1の出力端が駆動IC16A1の奇数ノズル対応部17Aのシフトレジスタ42にクロック信号を供給するものとされており、アンドゲート512E2の出力端が駆動IC16A1の偶数ノズル対応部17Bのシフトレジスタ42にクロック信号を供給するものとされており、アンドゲート512E3の出力端が駆動IC16B1の奇数ノズル対応部17Aのシフトレジスタ42にクロック信号を供給するものとされており、アンドゲート512E4の出力端が駆動IC16B1の偶数ノズル対応部17Bのシフトレジスタ42にクロック信号を供給するものとされていることは、上記第3の実施の形態に係るコントローラ512と同様である。
CPU512Dは、メモリ512Bから必要とされるマスクデータを読み出し、これに基づいて合成マスクデータを作成して、倍周器512E7から入力されている2倍周クロック信号に同期させると共に、各駆動IC16のシフトレジスタ42への印刷データの入力タイミングに同期させた状態で、合成マスクデータをセレクタ512Fにシリアルに出力する。これに応じて、セレクタ512Fから奇数ノズル用マスクデータがアンドゲート512E1及びインバータ512E5に、偶数ノズル用マスクデータがアンドゲート512E2及びインバータ512E6に、各々出力される。この動作により、アンドゲート512E1〜アンドゲート512E4から対応する駆動IC16に入力されるクロック信号は、当該駆動IC16の駆動対象とするイジェクタ群534を駆動させる印刷データのシフトレジスタ42への入力タイミングに対応する信号のみ有効とされ、他の印刷データのシフトレジスタ42への入力タイミングに対応する信号は無効とされる。従って、各駆動IC16では、自身が駆動対象としているイジェクタ群534のみを駆動させる駆動波形が生成され、当該イジェクタ群534のみが駆動されることになる。
次に、図25を参照して、コントローラ512における各駆動IC16に供給するクロック信号の生成状態及び各駆動IC16に取り込まれる印刷データの状態の具体的な説明として、駆動IC16A1に関する部分について説明する。
同図に示すように、コントローラ512では、倍周器512E7により2倍の周波数とされたクロック信号(2倍周クロック信号)がアンドゲート512E1〜512E4の一方の入力端及びCPU512Dに入力される。
一方、印刷を実行する際に、CPU512Dは、メモリ512Bに記憶されているマスクデータを読み出し、駆動IC16A1に対応するマスクデータと、駆動IC16B1に対応するマスクデータの反転データとを組み合わせて合成マスクデータ(ここでは、‘1,1,1,1,1,1,1,0,1,0,0,0,0,0,0,0’)を作成して、セレクタ512Fにシリアルに出力する。これに応じてセレクタ512Fは、奇数ノズル用マスクデータ(ここでは、‘1,1,1,1,1,0,0,0’)をアンドゲート512E1及びインバータ512E5に、偶数ノズル用マスクデータ(ここでは、‘1,1,1,0,0,0,0,0’)をアンドゲート512E2及びインバータ512E6に、各々シリアルに出力する。
これにより、図25に示すように、アンドゲート512E1から駆動IC16A1の奇数ノズル対応部17Aのシフトレジスタ42に出力されるクロック信号は、6番目〜8番目のパルスが削除された状態(ロー・レベルとされた状態)となり、アンドゲート512E2から駆動IC16A1の偶数ノズル対応部17Bのシフトレジスタ42に出力されるクロック信号は、4番目〜8番目のパルスが削除された状態(ロー・レベルとされた状態)となる。
なお、このとき、CPU512Dは、駆動IC16A1に出力する印刷データ(駆動IC16A1及び駆動IC16B1の双方が駆動対象としている全てのイジェクタ32を駆動させる印刷データ)を対応するセレクタ512Gにシリアルに入力する。この結果、当該セレクタ512Gから駆動IC16A1へは、奇数番目のノズルに対応する印刷データ(同図における‘1,3,5,7,9,11,13,15’)がシリアルに奇数ノズル対応部17Aに入力されると共に、偶数番目のノズルに対応する印刷データ(同図における‘2,4,6,8,10,12,14,16’)がシリアルに偶数ノズル対応部17Bに入力される。
この結果、駆動IC16A1の奇数ノズル対応部17A及び偶数ノズル対応部17Bの各シフトレジスタ42に取り込まれる印刷データは、自身が駆動対象としているイジェクタ32を駆動させるもののみとなる。
従って、駆動IC16A1の奇数ノズル対応部17A及び偶数ノズル対応部17Bでは、自身が駆動対象としているイジェクタ群534のみを駆動させる駆動波形が生成され、当該イジェクタ群534のみが駆動されることになる。
なお、ここでは、駆動IC16A1について着目して説明したが、他の駆動IC16についても同様の動作となる。
本実施の形態においても、上記第3の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
[第5の実施の形態]
本第5の実施の形態では、イジェクタ群534の端部の一部領域に互いに重なり合うヘッドユニット515が2つとされたヘッドユニット515が設けられているインクジェット記録ヘッド514を駆動対象とした場合の形態例について説明する。なお、本第5の実施の形態に係るインクジェット記録装置510の構成は、インクジェット記録ヘッド514及びコントローラ512の構成を除き、上記第2の実施の形態に係るインクジェット記録装置510と同様であるので、ここでは、まず、本第5の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッド514及びコントローラ512の構成を説明する。
まず、図26を参照して、本第5の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッド514の構成を説明する。なお、図26は、本第5の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッド514の概略構成を示す平面図である。
同図に示すように、本第5の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッド514は、複数のイジェクタ32が2次元配置されて構成されたイジェクタ群534C1、534D1、534C2、534D2・・・の各々を単位構造として、複数の単位構造が、所定の一方向(インクジェット記録ヘッド514の長手方向)に対して、自身のイジェクタ群における少なくとも一方の端部の一部領域が隣接する単位構造のイジェクタ群における端部の一部領域と上記一方向に直交する方向(インクジェット記録ヘッド514の短手方向)に互いに重なり合う状態で配置されている。
そして、各イジェクタ群534C1、534D1、534C2、534D2・・・には、駆動IC16C1、16D1、16C2、16D2・・・が1対1で個別に設けられており、イジェクタ群と、対応する駆動ICとの間は、各々不図示の接続線によって電気的に接続されている。なお、以下では、特定のものを示したい場合を除き、イジェクタ群534C1、534D1、534C2、534D2・・・を「イジェクタ群534」と略して表記する場合がある。また、以下では、特定のものを示したい場合を除き、駆動IC16C1、16D1、16C2、16D2・・・を「駆動IC16」と略して表記する場合がある。
本実施の形態に係るイジェクタ群534は、2つが組み合わされることにより、外径形状が平面視台形形状となり、かつ各イジェクタ群の組み合わせた側の端部の一部領域が組み合わせ方向に直交する方向に互いに重なり合うものとされたヘッドユニット515として単体部品として構成されている。そして、本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッド514は、以上のように組み合わせられた一対のヘッドユニット515がインクジェット記録ヘッド514の長手方向に複数組配列されたものとなっており、この状態において、両端部に位置するヘッドユニット515を除くヘッドユニット515は、左右に隣接するヘッドユニット515におけるイジェクタ群534の一部領域が自身のイジェクタ群534に、インクジェット記録ヘッド514の短手方向に重なり合った状態とされている。
次に、図27を参照して、本第5の実施の形態に係るコントローラ512の構成を説明する。なお、図27における図18と同様の構成要素には図18と同一の符号を付して、その説明を省略する。
同図に示すように、本実施の形態に係るコントローラ512は、上記第2の実施の形態に係るコントローラ512に比較して、クロック前処理部512Cに代えて、3倍周器512C3’を有するクロック前処理部512C’が適用されている点のみが異なっている。なお、錯綜を回避するために、同図では、クロック前処理部512C’として駆動IC16C1及び駆動IC16D1に関する部分のみ図示し、以下では、主としてこの部分について説明するが、他の駆動IC16に関する部分も同様である。
本実施の形態に係るクロック前処理部512C’には、2入力1出力のアンドゲート512C1、512C2と、3倍周器512C3’と、が備えられている。3倍周器512C3’の入力端には発振器512Aのクロック信号を出力する出力端が接続されており、3倍周器512C3’では、入力されたクロック信号の周波数が3倍とされて出力される。そして、3倍周器512C3’の周波数が3倍とされたクロック信号の出力端はアンドゲート512C1、512C2の各々における一方の入力端とCPU512Dに接続されており、各アンドゲート512C1、512C2の一方の入力端及びCPU512Dには3倍の周波数とされたクロック信号(以下、「3倍周クロック信号」という。)が入力されることになる。
一方、アンドゲート512C1、512C2の他方の入力端にはCPU512Dが直接接続されている。そして、アンドゲート512C1の出力端は駆動IC16C1にクロック信号を供給するものとされており、アンドゲート512C2の出力端は駆動IC16D1にクロック信号を供給するものとされている。
ここで、本第5の実施の形態に係るメモリ512Bにも、各駆動IC16に入力するクロック信号を、当該駆動IC16が駆動対象とするイジェクタ群534を駆動させる印刷データのシフトレジスタ42への入力タイミングに対応するパルスのみ有効とし、他の印刷データのシフトレジスタ42への入力タイミングに対応するパルスを無効とするためのマスクデータが予め記憶されている。
すなわち、本第5の実施の形態に係るコントローラ512もまた、駆動IC16の各々に対し、印刷データとして、記録対象とする画像の全印刷データを1つのイジェクタ群534のイジェクタ数(ここでは、8個)と同数で、かつ記録画像が略矩形形状となるデータ毎のグループに分割し、対応するヘッドユニット515に配置されているイジェクタ32を駆動させる印刷データが含まれる分割グループの印刷データのみをシリアルに入力するものとされている。この結果、例えば、駆動IC16C1には、図26に示される1番〜16番のイジェクタ32を駆動させる印刷データが入力され、駆動IC16D1には、1番〜24番のイジェクタ32を駆動させる印刷データが入力されることになる。
また、本実施の形態に係るコントローラ512でもまた、ヘッドユニット515の各々に対応するマスクデータであり、対応するヘッドユニット515に配置されているイジェクタ32を駆動させる印刷データを最も多く含む前記分割グループに含まれる全ての印刷データに対し、当該ヘッドユニット515に配置されているイジェクタ32を駆動させる印刷データをマスクせず、当該印刷データ以外の印刷データをマスクすることを示す2値データとして構成されたマスクデータが、メモリ512Bに予め記憶されている。なお、本実施の形態でも、マスクしないことを示す値として‘1’が、マスクすることを示す値として‘0’が、各々適用されている。図26に示されるインクジェット記録ヘッド514では、例えば、駆動IC16C1に対応するマスクデータとして‘1,1,1,1,0,1,1,1’が、駆動IC16D1に対応するマスクデータとして‘1,1,1,0,1,1,1,0’が、各々メモリ512Bに記憶されている。
そして、コントローラ512でも、駆動IC16の各々に入力される印刷データに対し、印刷データの入力対象となる駆動IC16が駆動対象とするヘッドユニット515に対応するマスクデータと、当該ヘッドユニット515のイジェクタ群534の端部の一部領域にイジェクタ群534の端部の一部領域がインクジェット記録ヘッド514の短手方向に重なるヘッドユニット515に対応するマスクデータの反転データと、を組み合わせた合成マスクデータを用いてマスクを行うものとされている。この結果、図26に示されるインクジェット記録ヘッド514では、例えば、駆動IC16D1に入力される印刷データをマスクする合成マスクデータとして、‘0,0,0,0,1,0,0,0,1,1,1,0,1,1,1,0,1,0,0,0,0,0,0,0’が作成されて用いられることになる。
CPU512Dは、メモリ512Bから必要とされるマスクデータを読み出し、これに基づいて合成マスクデータを作成して、3倍周器512C3’から入力されている3倍の周波数とされたクロック信号に同期させると共に、駆動IC16のシフトレジスタ42への印刷データの入力タイミングに同期させた状態で、作成した合成マスクデータをアンドゲート512C1及びアンドゲート512C2にシリアルに出力する。これにより、アンドゲート512C1及びアンドゲート512C2から対応する駆動IC16に入力されるクロック信号は、当該駆動IC16の駆動対象とするイジェクタ群534を駆動させる印刷データのシフトレジスタ42への入力タイミングに対応する信号のみ有効とされ、他の印刷データのシフトレジスタ42への入力タイミングに対応する信号は無効とされる。従って、各駆動IC16では、自身が駆動対象としているイジェクタ群534のみを駆動させる駆動波形が生成され、当該イジェクタ群534のみが駆動されることになる。
次に、図28を参照して、本第5の実施の形態に係るコントローラ512における各駆動IC16に供給するクロック信号の生成状態及び各駆動IC16に取り込まれる印刷データの状態の具体的な説明として、駆動IC16D1に関する部分について説明する。
同図に示すように、コントローラ512では、3倍周器512C3’にて、発振器512Aにより生成されたクロック信号CLKの3倍の周波数とされた3倍周クロック信号が生成され、アンドゲート512C2の一方の入力端に入力される。
一方、印刷を実行する際に、CPU512Dは、メモリ512Bに記憶されているマスクデータを読み出し、駆動IC16C1に対応するマスクデータの反転データと、駆動IC16D1に対応するマスクデータと、駆動IC16C2に対応するマスクデータの反転データとを組み合わせて合成マスクデータ(ここでは、‘0,0,0,0,1,0,0,0,1,1,1,0,1,1,1,0,1,0,0,0,0,0,0,0’)を作成し、作成した合成マスクデータをアンドゲート512C2にシリアルに出力する。
これにより、図28に示すように、アンドゲート512C2から駆動IC16D1に出力されるクロック信号は、1番目〜4番目、6番目〜8番目、12番目、16番目、及び18番目〜24番目のパルスが削除された状態(ロー・レベルとされた状態)となる。
この結果、駆動IC16D1のシフトレジスタ42に取り込まれる印刷データは、自身が駆動対象としているイジェクタ32を駆動させるもののみとなる。
従って、駆動IC16D1では、自身が駆動対象としているイジェクタ群534のみを駆動させる駆動波形が生成され、当該イジェクタ群534のみが駆動されることになる。
なお、ここでは、駆動IC16D1について着目して説明したが、他の駆動IC16についても同様の動作となる。
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、上記第2の実施の形態における2倍周クロック信号に関する効果を除く効果を奏することができると共に、合成マスクデータと、クロック信号を3倍周した3倍周クロック信号との論理積をとることによって間引き後のクロック信号を生成し、印刷データを前記間引き後のクロック信号に同期させた状態で対応する駆動回路(ここでは、駆動IC16)に入力しているので、各駆動回路に対して当該駆動回路によって駆動されるイジェクタのみに対応する印刷データを入力する場合を想定した場合と同程度の印刷速度を実現することができる。
なお、本第5の実施の形態では、イジェクタ群の端部の一部領域が互いに重なり合う単位構造体が2つとされた単位構造体が設けられたインクジェット記録ヘッドを駆動させる場合において、合成マスクデータと、クロック信号を3倍周した3倍周クロック信号との論理積をとることによって間引き後のクロック信号を生成し、印刷データを間引き後のクロック信号に同期させた状態で対応する駆動回路に入力する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、合成マスクデータを予め定められた3系統に分類し、分類後の3組の合成マスクデータと前記クロック信号との論理積を並行してとることによって間引き後のクロック信号を並行して3系統分生成する一方、印刷データを前記3系統に分類し、分類後の3組の印刷データを、上記3系統分のクロック信号における対応するクロック信号に同期させた状態で対応する駆動回路に入力する形態とすることもできる。
この場合の形態例としては、図26に示されるインクジェット記録ヘッド514を駆動対象とする場合、各ヘッドユニット515のイジェクタ群534を何らかの基準で3つのグループ(例えば、インクジェット記録ヘッド14の長手方向左端から順に3個のイジェクタ、3個のイジェクタ、2個のイジェクタの3グループ)に分類し、各グループ毎に対応して、駆動IC16に、シフトレジスタ42、ラッチ回路44、セレクタ46、レベルシフタ48及び駆動波形生成回路50からなる構成を3系統分設け、各系統に関して、上記第3の実施の形態と同様に、各シフトレジスタに入力するクロック信号を生成する形態を例示することができる。
この場合も、各駆動回路に対して当該駆動回路によって駆動されるイジェクタのみに対応する印刷データを入力する場合を想定した場合と同程度の印刷速度を実現することができる。
また、上記第2〜第5の各実施の形態では、クロック前処理部をコントローラ512に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、各駆動IC16に設ける形態とすることもできる。この場合の形態例としては、各駆動IC16に自身が用いない印刷データをマスクするマスクデータを記憶したメモリを設けると共に、各駆動IC16にコントローラ512から発振器512Aによって生成されたクロック信号を入力し、当該クロック信号を上記第2〜第5の各実施の形態と同様にクロック前処理部にてマスクした状態でシフトレジスタ42に入力する形態を例示することができる。この場合も、上記第2〜第5の各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、上記第2〜第5の各実施の形態では、本発明の駆動回路をICとして構成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電子素子を用いた電子回路として構成する形態とすることもできる。この場合も、上記第2〜第5の各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、上記第2〜第5の各実施の形態では、駆動IC16をインクジェット記録ヘッド514に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、各駆動IC16をコントローラ512と一体的に構成する形態や、コントローラ512及びインクジェット記録ヘッド514とは別体として設ける形態とすることもできる。この場合、インクジェット記録ヘッド514のサイズを小型化することができる。
その他、上記第2〜第5の各実施の形態で説明したインクジェット記録装置510の各部構成や、駆動波形、波形信号等の状態(図16〜図18、図20〜図28参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
更に、上記第2の実施の形態で説明した印刷処理プログラムの処理の流れ(図19参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
また、前述した実施の形態では、液滴としてインクを用いる場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、インクに代えて、例えば、反応液を用いることもできる。詳細には、記録媒体上でインク液滴と反応液滴とを混合することにより画質がさらに向上するため、反応液滴を液滴イジェクタで吐出させる際、本発明を上記と同様に適用することができる。その他、インクジェット方法により、液晶表示素子の配向膜形成材料の塗布、フラックスの塗布、接着剤の塗布、プリント基板の配線材料の塗布、などにも本発明を上記と同様に適用することができる。