以下に本発明に関する実施の形態の例を示すが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
本発明に係る液滴吐出ヘッド本体は、液滴を吐出するためのノズルと、このノズルに連通する圧力発生室と、この圧力発生室内に圧力を付与してノズルから液滴を吐出させる圧力付与手段とを備えた液滴吐出ヘッド本体であれば、どのようなタイプの液滴吐出ヘッド本体にも適用でき、また、圧力発生室内に満たされる液体はどのような液体であっても良い。以下の説明では、圧力発生室内の容積を膨張又は収縮させることによって圧力を変化させる圧力付与手段を備え、圧力発生室内に満たされる液体としてインクを使用した液滴吐出ヘッド本体であるせん断モード(シェアモード)タイプのインクジェットヘッド本体を用いて説明する。
せん断モードタイプのヘッド本体では、圧力発生室の隔壁の少なくとも一部を圧力付与手段である圧電素子により構成し、この圧電素子を変形することによりノズルからインク滴を吐出する。
また、液滴吐出ヘッド本体と駆動回路を併せて液滴吐出ヘッドと定義する。
このような液滴吐出ヘッドを用いた液滴吐出装置として、インクジェットプリンタを用いて説明する。
<インクジェットプリンタの機械的構成>
以下、図1のシリアル型インクジェットプリンタ1の主要部の機械的構成の図面に基づいて説明するが、この発明はこの実施の形態に限定されない。
この実施形態では、各色当たり2列のノズル列を有し、Y,M,C,K4色分のノズル列を備えたインクジェットヘッド本体を備えたプリンタの例を示しているが、1列のノズル列を備えたヘッド本体や単色のヘッド本体で記録を行うプリンタにおいても本発明は適用できる。
なお、以下、ヘッド本体17や駆動回路16に関する構成は、Y,M,C,K各色で共通なので、個々の色に関する構成を表示するアルファベットの添え字は省略して、総括的に表記する場合がある。
キャリッジ2は後述するヘッド本体17とヘッド本体17の圧力付与手段を駆動する4色分の駆動回路16とインクカートリッジ(不図示)を納めた樹脂性のケースである。キャリッジ2に納められた駆動回路16はICで構成してあり、キャリッジ2から引き出されたフレキシブルケーブル5で制御基板9と接続されている。
液滴吐出ヘッド本体であるヘッド本体17は、17Y,17M,17C,17Kの4色のヘッド本体で構成され、各色のヘッド本体17は、記録媒体に対する主走査方向であるX方向に配置した2列のノズル列を有している。ノズル数は、1列当たり256個であり、副走査方向であるY方向に配列している。また、ノズル列毎に駆動回路16を有している。
キャリッジ2はキャリッジ駆動機構6によって図中矢印Xで示した主走査方向に往復移動される。キャリッジ駆動機構6は、モータ6a、プーリ6b、歯付きベルト6c、ガイドレール6dを含んで構成されていて、キャリッジ2は歯付きベルト6cに固着されている。
モータ6aによりプーリ6bが回転すると、歯付きベルト6cに固着されたキャリッジ2は図中矢印Xの方向に沿って移動させられる。ガイドレール6dは互いに平行な2本の円柱で、かつキャリッジ2の挿通穴を貫通していてキャリッジ2が滑走するようにしてある。
このため歯付きベルト6cはキャリッジ2の自重では撓まないし、キャリッジ2の往復移動の方向は一直線上となる。モータ6aの回転方向を逆転すればキャリッジ2が移動する向きを変更でき、回転数を変更すればキャリッジ2の移動速度を変更することも可能である。
インクカートリッジは内部にインクタンクを有している。インクタンクのインク供給口はインクカートリッジをキャリッジ2にセットしてインク供給パイプと接続されると開口し、接続が解除されると閉鎖され、ヘッド本体17にインクが供給される。
キャリッジ2にはインクカートリッジの取り付け部が設けてあり、吐出用のY、M、C、Kの各色のインクを納めたインクカートリッジを着脱できるようになっている。
フレキシブルケーブル5は、吐出データである画像データ等を転送するデータ転送手段であり、可撓性を有するフィルムに、データ信号線、電源線等を含む配線パターンをプリントしたもので、駆動回路16と制御基板9との間でデータを転送し、キャリッジ2の移動に追従する。
エンコーダ7は樹脂の透明なフィルムに所定の間隔で目盛りをつけたもので、この目盛りをキャリッジ2に設けた光センサにより検出して、キャリッジ2の移動速度を検知する。
紙搬送機構8は図中矢印Yで示した副走査方向に記録紙Pを搬送させる機構で、搬送モータ8a、搬送ローラー対8b、8cを含んで構成される。搬送ローラー対8bと搬送ローラー対8cは搬送モータ8aにより駆動されて、図示せぬギア列によって略等しいが搬送ローラー対8cが極わずかに速い周速で回転するローラー対である。
記録紙Pは給紙機構(図示せず)から送り出されてから一定速度で回転させられている搬送ローラー対8bに挟持され、給紙ガイド(図示せず)によって副走査方向に搬送の向きを修正させられたうえで搬送ローラー対8cに挟持されて搬送される。
搬送ローラー対8cの周速は搬送ローラー対8bよりも極わずか速いので、記録紙Pは弛みを発生させずに記録部を通過する。また記録紙Pが副走査方向に移動する速度は一定の速度に設定する。
このようにして記録紙Pを副走査方向に一定速度で移動させつつ、キャリッジ2を主走査方向に一定速度で移動させ、ヘッド17から吐出したインクを付着させて記録紙Pの片面の所定範囲に画像を記録する。
なお、本プリンタは、その記録速度を向上するために、主走査方向における往復双方向の走査時においてインク滴を吐出させ画像を記録することができる。(以下、かかる記録方法を双方向記録と呼ぶ場合がある。)。
<インクジェットヘッド本体の構成>
以下、図1のインクジェットプリンタにおけるヘッド本体の実施の形態を図面に基づいて説明するが、この発明はこの実施の形態に限定されない。
図2は図1におけるインクジェットヘッド本体17を記録紙Pの方向からみたノズル部の拡大図である。この図では、1色当たり512個のノズルの一部に相当する1色当たり15個のノズルが示してある。
インクジェットヘッド本体17を構成する17Y、17M,17C,17Kのノズル部は、この順に主走査方向Xに所定距離離れて並んでいる。各色のインクジェットヘッド本体は、記録媒体に対する主走査方向Xに対して、例えば17Yは、ノズル18Y1の第1ノズル列102Yとノズル18Y2の第2ノズル列103Yを有している。即ち、合計で8列のノズル列が主走査方向に配置されていることになる。これらのノズル列は、同一色内でのノズル列間距離L1、色間の距離L2だけ離れている。これらの8列のノズル列から吐出されたインク滴を所定の位置に着弾させ、副走査方向の直線のライン像を形成するには、各ノズル列からのインク滴の吐出タイミングを調整する必要がある。画像の印画開始はヘッドの主走査方向の先行ノズル列に対して後行ノズル列は、記録ヘッドの主走査速度及び前述の距離とで定まる吐出周期に合わせて駆動され、所定周期分遅れて印画開始する。往復印画する場合には復路では往路の逆順でノズル列間の駆動波形印加タイミングをずらす。詳細は後述する。
前述のような少なくとも一部が圧電材料で構成された隔壁によって隔てられた複数の圧力発生室を有するせん断モード型記録ヘッドを駆動する場合、一つの圧力発生室の隔壁が吐出の動作をすると、隣の圧力発生室が影響を受けるため、複数の圧力発生室(ノズル)のうち、互いに1本以上の圧力発生室(ノズル)を挟んで離れている圧力発生室(ノズル)をまとめて1つの組となすようにして、M個(Mは2以上の整数)の組に分割し、各組毎にインク吐出動作を時分割で順次行うように駆動制御される。本実施形態では、全圧力発生室(ノズル)を2つおきに選んで3組に分けて吐出する、いわゆる3サイクル吐出法を採用している。
本実施形態では、各ノズル列は256ノズルからなり、各列内のノズルは3ノズル周期で隣接ノズルが主走査方向に最小画素ピッチの1/3ずつずれて配置される。各列内は2ノズルおきにA組、B組、C組の3サイクルで、記録ヘッドの主走査速度及び最小画素ピッチの1/3のずれ量とで定まる吐出周期に合わせて駆動される。これよりA組,B組,C組の各ノズルから吐出されるインク滴の着弾位置を揃えて、副走査方向に直線のライン像を形成する。
このようにノズル列内を分割駆動することで、同時に駆動する圧力付与手段の数が軽減でき、駆動回路の負担が小さくなり、駆動回路の駆動能力を抑え、小容量の駆動源を用いることでコスト削減が可能である。
また、列内のノズル列方向のノズルピッチは180dpi(141μm)であり、2列は平行に配列し、互いのノズルに対してノズル列方向に70.5μm(360dpi相当)ずらして、2列全体でノズル列方向のノズル密度が360dpiで、512個のノズル群を構成している。即ち、各ノズル列102,103のノズル位置が、互いに補間し画像格子に対応するようにノズル列方向にずらして配置され、1走査で全画素が記録されるように構成される。
図3は1色分のせん断モードタイプのインクジェットヘッド本体及びその製造工程を示す概略図である。
を示す概略図である。ここでは、ヘッド本体17Yの構成を示すが、ヘッド17M〜17Kについても同様な構成になっている。
まず、互いに分極方向が異なる第1の圧電性材料基板10aと第2の圧電性材料基板10bとが用意され、第1の圧電性材料基板10aは、厚基板26aと薄基板22aとからなり、同様に第2の圧電性材料基板10bも厚基板26bと薄基板22bとからなる(図3(a))。
第1の圧電性材料基板10aの薄基板22a上にドライフィルム130aを貼り、このドライフィルム130aに露光現像処理して圧力発生室となるインクチャネルや電極の加工位置を設定するマスクを作成する(図3(b))。第1の圧電性材料基板10aには、マスクにより設定された位置にダイヤモンドブレード等により258本の溝加工を行ない、インクチャネルである圧力発生室28aを形成する。これにより隣接する圧力発生室は、圧電材料の隔壁により区画される。アルミ蒸着により圧力発生室28aに駆動電極25aを形成するとともに、この駆動電極25aに接続した取出電極160aを形成する(図3(c))。
ここで、258個の圧力発生室のち、両端の2個の圧力発生室は、ノズルからのインク吐出を伴わないダミーの圧力発生室である。このようにインクを吐出する256個の圧力発生室の両外側に圧電物質の隔壁を介してインク吐出を伴わないダミーの圧力発生室を設けることにより、256本の圧力発生室の両端に位置する圧力発生室からのインク吐出量の低下を防ぐ。後述するように、このダミーの圧力発生室には、インクは供給されるが、対応するノズルを設けていない。
同様に、第2の圧電性材料基板10bの薄基板22b上にドライフィルム130bを貼り、このドライフィルム130bに露光現像処理してインクチャネルや電極の加工位置を設定するマスクを作成する。第2の圧電性材料基板10bには、マスクにより設定された位置にダイヤモンドブレード等により258本の溝加工を行ない、圧力発生室28bを形成する。これにより隣接する圧力発生室は、圧電材料の隔壁により区画される。アルミ蒸着により圧力発生室28bに駆動電極25bを形成するとともに、この駆動電極25bに接続した取出電極160bを形成する。
次に、第1の圧電性材料基板10a及び第2の圧電性材料基板10bに、圧力発生室28a、28bを覆うカバー基板24a、24bを取出電極160a,160bを残して設け(図3(d))、第1の圧電性材料基板10aと第2の圧電性材料基板10bとを、カバー基板24a,24bを設けた側と反対側を貼り合わせて中央部を切断し(図3(e))、圧力発生室28a,28bに対応する部分に256個×2列のノズル18a、18bを有するノズルプレート180を設けて2個のヘッド本体17Yを製造する(図3(f))。
貼り合わせの際、各ヘッドの圧力発生室が、相互に1/2ピッチずらされ、千鳥状に配置するように貼り合わせることより、各ヘッドのそれぞれが180dpiのヘッドであるので、ノズルのピッチを互いに1/2ずらせることで、360dpiの記録ヘッドとして使用することが可能となり、ノズル数を増やし、高密度の記録ヘッドとすることができる。
その後に、それぞれの2個のヘッド本体には、第1の圧電性材料基板10aと第2の圧電性材料基板10bとに、インクを圧力発生室28a,28bに供給するマニホールド19b、19bを接続すると共に、取出電極160a,160bに駆動回路16a,16bを備えた配線基板であるフレキシブルケーブル5a,5bを接続して同時に2個のインクジェットヘッドを製造する(図3(g))。同時に2個の2列ヘッドを作製できるので、ヘッドの製造コストを低減できる。この2列ヘッドの圧力発生室には、同一色のイエローインクが供給されて、ノズルから吐出される。
この実施の形態では、複数のノズル列のノズル18a、18bを1枚のノズルプレート基板に一体的に形成しており、複数のノズル列のノズル18a、18bの位置決めが正確で、誤差を小さくして、高精度にインク滴を吐出させることができる。
圧電性材料基板10に使用される圧電材料としては、電圧を加えることにより変形を生じるものであれば特に限定されず、公知のものが用いられ、有機材料からなる基板であっても良いが、圧電性非金属材料からなる基板が好ましく、この圧電性非金属材料からなる基板として、例えば成形、焼成等の工程を経て形成されるセラミックス基板、又は塗布や積層の工程を経て形成される基板等がある。有機材料としては、有機ポリマー、有機ポリマーと無機物とのハイブリッド材料が挙げられる。
セラミックス基板としては、PZT(PbZrO3−PbTiO3)、第三成分添加PZTがあり、第三成分としてはPb(Mg1/3Nb2/3)O3、Pb(Mn1/3Sb2/3)O3、Pb(Co1/3Nb2/3)O3等があり、さらにBaTiO3、ZnO、LiNbO3、LiTaO3等を用いて形成することができる。
また、塗布や積層の工程を経て形成される基板として、例えば、ゾル−ゲル法、積層基板コーティング等で形成することができる。
カバー基板24の材料は、特に限定されず、有機材料からなる基板であっても良いが、非圧電性非金属材料からなる基板が好ましく、この非圧電性非金属材料からなる基板として、アルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニア、シリコン、窒化シリコン、シリコンカーバイド、石英、分極されていないPZTの少なくとも1つから選ばれることが好ましい。有機材料としては、有機ポリマー、有機ポリマーと無機物とのハイブリッド材料が挙げられる。
また、ノズルプレート180の材料としては、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、液晶ポリマー、アロマティックポリアミド樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリサルフォン樹脂等の合成樹脂のほか、ステンレス等の金属材料を用いることもできる。
駆動電極25、取出電極160に用いられる金属としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム、パラジウム、ニッケル、タンタル、チタンを用いることができ、特に、電気的特性、加工性の点から、金、アルミニウム、銅、ニッケルが好ましく、めっき、蒸着、スパッタで形成される。
この実施形態では、圧力発生室の隔壁が、分極方向が異なる2枚の圧電性材料基板である薄基板と厚基板によって構成されているが、圧電性材料基板は例えば薄基板の部分のみであってもよく、隔壁の少なくとも一部にあればよい。
せん断モードタイプの記録ヘッドは、以上のように圧電材料に圧力発生室を形成して、その隔壁に金属電極を形成するだけで、ヘッドの主要部分を構成できるので、製造が簡単で、多数の圧力発生室を高密度に配置できるために、高精細な画像記録を行う上で好ましい態様である。
以上のようにして、各色のヘッド本体17Y,17M,17C,17Kを作製し、ヘッド本体17となる。
なお、かかるヘッド本体17では、以上のように、隔壁の変形によって圧力発生室内のインクに正負の圧力が付与されるものであり、この隔壁は圧力付与手段を構成している。
<インクジェットプリンタ全体の電気的構成>
図4は図1に示した本発明の実施の形態例のインクジェットプリンタ全体の電気的構成の一例を示すブロック図である。
図4において、破線で示された制御基板9はインクジェットプリンタ1全体の制御を行う制御手段としてのCPU11が実装されており、先に説明したとおりフレキシブルケーブル5によってキャリッジ2の駆動回路16と接続されている。
この制御基板9は、ノズル列に対応した吐出データである画像データをノズル列に対応した駆動回路の第1の記憶手段であるシフトレジスタに格納するタイミングを複数のノズル列間で共通とし、ノズル列から液滴を吐出させるタイミングを複数のノズル列毎に独立とする制御手段でもある。
ページメモリ12は、インクジェットプリンタ1自体を周辺機器として利用するパーソナルコンピュータ等から受け取った吐出データである画像データを記憶するものである。ページメモリ12の記憶容量は、パーソナルコンピュータ等の扱う画像データのビット数、ドット数、信号の転送速度、CPUの処理速度等によって決めればよい。
ラインメモリ13a及び13bは、記録紙Pに記録する際に副走査方向に一列に並べて記録される各画素の画像データを記憶するラインメモリとして使用していて、各画像データは数ビットの階調データでページメモリ12から転送される。本実施形態では12ビット処理のラインメモリ13a及び13bを2個パラレルに使用しているが、24ビット処理の一つのラインメモリで構成してもよい。
ページメモリ12からのデータ信号線(データBUS)は24ビットで、各ラインメモリ13に12ビットずつ分岐している。ラインメモリ13a及び13bの画像データはフレキシブルケーブル5を介して駆動回路16に転送される。
インタフェース14a及び14bは、外部のパーソナルコンピュータとデータの授受を行う手段であり、各種シリアルインタフェース,各種パラレルインタフェースのいずれかで構成される。
また、表示と入力の両方の機能を有し、片道記録(往方向)か双方向記録の設定や後述のアウトプットパターンレジスタ34のテーブルの設定データをはじめとする各種の設定や記録指令等の指示操作を制御基板9に行う操作入力手段(不図示)を有している。
駆動回路16Y1、16Y2〜16K1、16K2はICで構成されており、この実施の形態例ではYMCKの4色について、各ノズル列毎に1個(計8個)設けられている。
各駆動回路16は、カスケード接続された128チャネル×3ビットの2つのシフトレジスタを備え、ラインメモリ13a及び13bからの画像データは一旦このシフトレジスタに格納される。このシフトレジスタは、第1の記憶手段を構成する。
本実施の形態では、イエロー(Y)の第1ノズル列の画像データはラインメモリ13aから3ビットのデータ信号線で駆動回路16Y1へ、イエロー(Y)の第2ノズル列の画像データは同様に駆動回路16Y2へ転送される。そして駆動回路16Y1、16Y2に転送されたイエローの512個の画像データは並列的に処理されて、ヘッド本体17Yによる記録が実行される。
以下同様にマゼンタ(M)の画像データはラインメモリ13aから駆動回路16M1、16M2へ転送されヘッド本体17Mで記録が実行される。シアン(C)の画像データはラインメモリ13bから駆動回路16C1,16C2に転送されてヘッド本体17Cによる記録が実行される。ブラック(K)の画像データはラインメモリ13bから駆動回路16K1,16K2に転送されてヘッド本体17Kによる記録が実行される。尚、これら駆動回路16の詳しい動作は後述する。なお、前述のように制御基板9により、ノズル列に対応した画像データをノズル列に対応した各駆動回路16のシフトレジスタに転送、格納するタイミングは、複数のノズル列間で共通、すなわち、同一のタイミングになるように制御される。このことにより、複数のノズル列に対応した複数の駆動回路のシフトレジスタへのデータ転送を同時に行うことができ、データ転送のトリガー処理を効率的に行うことのできる。また、制御系の構成を簡略化できる。
ANDゲート200は、エンコーダ7の検出した情報を基にキャリッジ2が一往復移動を開始して往路上または復路上で所定の位置に達した時点で、インク吐出を開始させるためのTRGIN信号を制御回路23を介して各駆動回路16に出力する。各駆動回路16はこのTRGIN信号を受けて駆動波形を送出し、各ノズル列からインクの吐出を行う。
なお、前述のように制御基板9により、各ノズル列から液滴を吐出させるタイミングは、複数のノズル列毎に独立に制御される。このことにより、ノズル列毎の液滴の着弾位置を画素ピッチより細かく調整することが可能なる。
駆動回路16Y1〜16K2のそれぞれは、256ビットのデータ信号線によってヘッド本体17Y〜17Kのそれぞれのノズルに設けられたせん断モード圧電素子に駆動波形を供給し、この駆動波形を受けてせん断モード圧電素子が変形することにより各色のヘッド内のインクが吐出される。
駆動信号発生回路15は、後述するように複数の駆動波形で構成された単一の駆動信号を発生させて各駆動回路16に供給するようになっている。駆動波形は画像データにより変える必要があるので、3種類の駆動信号(基本波形として非吐出波形を含むpulse_timing0の駆動信号、基本波形として非動作波形を含むpulse_timing1の駆動信号、基本波形として吐出波形を含むpulse_timing2の駆動信号の3種類)を駆動信号発生回路15内のラインメモリ(図示せず)にデジタルデータとして記憶してある。このラインメモリは、SRAM等を用いて構成できる。
本実施の形態では色当たり3ビット(8階調)のデータを出力するので、ラインメモリに記憶した波形データは、先頭にGND波形を加えて、基本波形を7回くりかえす波形をデジタルデータ化したものである。これらの基本波形の詳細は後述するが、吐出波形、非動作波形はいずれも矩形波パルスである。
複数個の吐出波形により、1画素周期内で、複数個のインク液滴は記録紙P上に記録され、画像データにより、液滴数に応じた面積の記録が可能となり、階調記録が行える。
さらに、吐出波形に異なる波形を用いれば、吐出するインク適量を変えることができ、さらに階調性を高めることができる。
尚、ここでは3ビット(8階調)を例にしているが、これ以外にすることも可能であり、各データのビット数(階調数)やラインメモリのデータを連動させて変更すればよい。
また、本発明は、1ビット(2階調)の画像データで2値の記録を行う場合においても適用できる。
<インクジェットヘッドの駆動回路の電気的構成>
以下、本発明の特徴的構成であるヘッドの駆動回路16の電気的構成を図5、図6に示す駆動回路の詳細を示すブロック図によって説明する。
図5は、図4に示した各色ヘッドの1列分、即ち、256ノズル分の駆動回路16の詳細を示す図である。図6は、図5における128ノズル分の駆動ICの詳細を示すブロック図である。尚、ここでは、ヘッド本体17Yの駆動回路16Y1の構成を示すが、16Y2やヘッド本体17M〜17Kの駆動回路16M1〜16K2についても同様な構成になっている。
本実施の形態の駆動回路16Y1は、図5に示す様に128チャネル(ノズル)の駆動ICを2つ備えており、各駆動IC内の3ビット×128チャネル(ノズル)のシフトレジスタ31がカスケード接続されており。256チャネル(ノズル)分の圧電素子を駆動する。また両端に位置するダミーの圧力発生室の駆動電極と駆動回路が接続されており(outーDがこれに相当)、後述する駆動波形パターンが印加される。
この2つの駆動ICは、基本的に同一の構成であるので、1つについて図6に詳細を示す。
図6に示す128チャネルの駆動ICは、第1のラッチ手段である3ビット×128チャネル(ノズル)の第1のラッチ回路32A、第2のラッチ手段である3ビット×128チャネル(ノズル)の第2のラッチ回路32B、第1のラッチ回路32Aに画像データを出力する第1の記憶手段であるシフトレジスタ31、吐出データに基づいて圧力付与手段を駆動する駆動手段であるグレイスケールコントローラ33、第2の記憶手段であるアウトプットパターンレジスタ34、3相バッファーアンプ35等を含んで構成される。第2の記憶手段としては、アウトプットパターンレジスタ34のようなレジスタを用いることが好ましい。
本実施の形態では1画素あたり8階調からなる画像データを処理するために、駆動回路16を構成する各手段は3ビットに対応する構成となっている。制御回路23から入力される転送クロックDCLKに同期して、ラインメモリ13から1画素が複数ビット、ここでは3ビットからなる画像データが、画素単位でシリアルに駆動回路16のシフトレジスタ31へ転送されてくる。この転送タイミングは、各ノズル列間で共通である。
図6では、第一番目の3ビットの画素データSin0、Sin1、Sin2が3ビットのデータ信号線を経由して転送されている状態を示した。また、このシフトレジスタに格納しきれなかった画像データは、Sout0,Sout1,Sout2としてカスケード接続されている後段のシフトレジスタに出力され、格納される様になっている。
シフトレジスタ31はノズルヘッド17での128ノズルの1回の吐出に相当する数の画素の画像データを記憶できる容量を持っている。このシフトレジスタ31を2つ連結することにより、本実施の形態では副走査方向に並んだ1列分のノズルに対応する256画素分の画像データを記憶する。キャリッジ2が予め定められた所定位置に達すると、制御回路23は、ラッチタイミングを指示する第1のトリガー信号であるLAT1信号を出力し、第1のラッチ回路32AはこのLAT1信号を受けるとシフトレジスタ31から並列に出力された画像データをラッチする。
キャリッジ2が予め定められた所定位置に達すると、制御回路23はラッチタイミングを指示する第2のトリガー信号であるLAT2信号を出力し、第2のラッチ回路32BはこのLAT2信号を受けると第1のラッチ回路32Aから並列に出力された画像データをラッチする。
第1のトリガー信号と第2のトリガー信号は、共通のトリガー信号とすることが好ましい。このことにより、ラッチタイミングのトリガー入力の信号線を削減できる。
具体的には、共通のトリガー信号を立ち上がりエッジと立ち下がりエッジの2つのエッジを有するパルス信号とし、2つのエッジのうちの、一方のエッジは、第1のトリガー信号とし、他方のエッジは、前記第2のトリガー信号とすればよい。このことにより、簡易な構成で、ラッチタイミングの共通トリガー信号ができる。また、パルス幅を変更することにより2つのラッチタイミングを容易に変えることができる。
このように、シフトレジスタ31から出力された画像データは、第1のラッチ回路32Aを経由して、第2のラッチ回路32Bにラッチされる。
キャリッジ2が記録に適した位置に達すると、制御回路23は、インク吐出を開始させるためのTRGIN信号を出力し、第2のラッチ回路32Bは、このTRGIN信号を受けると、第2のラッチ回路32Bにラッチされた画像データは、グレイスケールコントローラ33に出力される。
このように、ラッチ手段を2つ有することにより、データ転送の速度を必要以上に向上させることなく、また記録速度を落とすことなく、複数のノズル列に対応した複数の駆動回路のシフトレジスタへのデータ転送を同時に行うことができ、データ転送のトリガー処理を効率的に行うことのできる。また、制御系の構成を簡略化したり、ノズル列毎の液滴の着弾位置を画素ピッチより細かく調整することが可能なる。
グレイスケールコントローラ33には、駆動信号発生回路から3種類の駆動信号(非吐出波形を含むpulse_timing0の駆動信号、非動作波形を含むpulse_timing1の駆動信号、吐出波形を含むpulse_timing2の駆動信号の3種類)が入力端子を通じて入力される。
また、グレイスケールコントローラ33は、入力端子から供給される選択信号STB−1,2,3により、256個のノズルに対応した圧力発生室をA組、B組、C組の3個の組に分割して、対応する圧電素子を順次に分割駆動させる制御手段を構成する。STB−1ではA組が選択され,STB−2ではB組が選択され,STB−3ではC組が選択され、それぞれ対応するノズルから順次にインク滴が吐出される。
また、グレイスケールコントローラ33は、駆動波形パターンにおける何番目の波形を出力するのかをカウントするカウント手段50を有しており、このカウント手段50のカウント値であるGSC(グレイスケールカウント)を0〜7までカウントする。
また、グレイスケールコントローラ33は、吐出データである画像データと圧力付与手段を駆動する駆動波形に対応した駆動波形パターンデータとの関係を規定した情報である変換テーブルを記憶したアウトプットパターンレジスタ34を有している。この実施形態では、複数の駆動波形に対応した駆動波形パターンデータを示している。
まず、入力されたLOAD信号により、カウント手段がリセットされる。STB−1が選択され、A組の圧力発生室(ノズル)が選択される。A組の各圧力発生室(各ノズル)に対応した画像データから、アウトプットパターンレジスタ34に記憶されている変換テーブルにより、駆動波形パターンデータが決定する。なお、駆動されないB組、C組の圧力発生室には、予め定められた駆動波形パターンデータが選択される。前記カウント手段のカウント値であるGSCが0から1ずつカウントアップされ、出力する駆動波形を決定する。駆動波形は、画像データとカウント手段のカウント値に応じて、非動作波形、非吐出波形、吐出波形の3種類の駆動波形の中から選択される。これらの波形は、入力されたGSCLKのタイミング信号に同期して、前述の3種類の駆動信号から、スイッチング手段(不図示)により選択され、出力される。
3相バッファーアンプ35は、グレイスケールコントローラ33から出力された駆動波形を圧電素子の駆動に必要な電源電圧迄にレベルシフトする。この際、入力端子から入力された電圧値VH1により、吐出波形の駆動電圧が、同様に入力された電圧値VH2により、非動作波形の駆動電圧が決定され、それぞれレベルシフトされた後、対応する圧電素子に出力され、対応するノズルからインク滴が吐出される。VH1、VH2の電圧値を変えることで、吐出波形、非動作波形の駆動電圧を最適値に変更できる。
カウント手段のカウント値がGSC=7に達すると、A組の圧力発生室(ノズル)からのインク滴の吐出が終了したと判断し、カウント手段50がLOAD信号により、リセットされ、STB−2信号によりB組が選択され、B組について同様にインク滴の吐出が行われる。B組が終了すると、同様にC組についてのインク吐出が行われる。これで、1列分の全ノズルについてのインク吐出が終了し、再度、次の画像データに基づいて、記録が繰り返される。
<画像データと駆動波形パターンの関係>
図7は画像データと駆動波形パターンデータの変換テーブルの一例を示す図である。
画像データは、3ビットで8階調なので、階調値0を(0、0、0)、階調値1を(0、0、1)、階調値2を(0,1,0)、階調値3を(0、1、1)、階調値4を(1,0,0)、階調値5を(1,0,1)、階調値6を(1,1,0)、階調値7を(1,1,1)のように表されている。
駆動波形パターンデータは、前述のカウント手段のカウント値のGSC=0〜7に対応した、第1の駆動波形から第8の駆動波形の8個の駆動波形に対応したデータであり、0,1、2の3通りの値をとりうる。
また、データは後に位置するビットから出力されるので、例えば、図7の表中の階調値(0,1,1)の場合は、(1,1,1,2,2,2,1,0)なる駆動波形パターンデータが選択され、(0,1,2,2,2,1,1,1)なる駆動波形パターンデータが出力される。出力された駆動波形パターンは、前述のカウント値GSC=0〜7に対応しており、この場合、前述のカウント手段のカウント値が、GSC=0の場合は0が、GSC=1の場合は1が、そしてGSC=2の場合は2が、GSC=3の場合は2が、GSC=4の場合は2が、GSC=5の場合は1が、GSC=6の場合は1が、GSC=7の場合は1が、それぞれ駆動波形データとして出力される。
前述のように、STB信号は、STB−1,STB−2,STB−3の3つの分割信号に従って、256個のノズルに対応した圧力発生室をA,B,Cの3つの組に分割して、対応する圧電素子を順次に分割駆動させるものである。
図7の表において、n=1で、Aの組の圧力発生室の圧電素子を駆動する際は、Aの組の圧力発生室は、前述のように画像データに応じて駆動波形パターンデータが選択されるが、n=2,3に該当するB組,C組の圧力発生室は、画像データにかかわらず、(1,1,1,1,1,1,1,0)の駆動波形パターンデータが選択され、(0,1,1,1,1,1,1,1)が出力される。
同様に、n=2で、Bの組の圧力発生室の圧電素子を駆動する際は、Bの組の圧力発生室は、前述のように画像データに応じて駆動波形パターンデータが選択されるが、n=1,3に該当するA組,C組の圧力発生室は、画像データにかかわらず、(1,1,1,1,1,1,1,0)の駆動波形パターンデータが選択され、(0,1,1,1,1,1,1,1)が出力される。
同様に、n=3で、Cの組の圧力発生室の圧電素子を駆動する際は、Cの組の圧力発生室は、前述のように画像データに応じて駆動波形パターンデータが選択されるが、n=1,2に該当するA組,B組の圧力発生室は、画像データにかかわらず、(1,1,1,1,1,1,1,0)の駆動波形パターンデータが選択され、(0,1,1,1,1,1,1,1)が出力される。
従って、カウント手段のカウント値がGSC=0の状態では、A組,B組,C組のいずれの圧力発生室において、0の駆動波形データが選択され、圧電素子は、駆動されないが、GSC=1〜7においては、駆動波形データに応じて、以下に示すように圧電素子が駆動される。
また、前述のダミーの圧力発生室の駆動電極には、out−Dとして、(1,1,1,1,1,1,1,0)の駆動波形パターンデータが選択され、(0,1,1,1,1,1,1,1)が出力される。このことにより、256個の圧力発生室の両端の圧力発生室の画像データに対応して電極に印加される駆動波形に応じて、ダミーの圧力発生室の隔壁が駆動される。
図8には、駆動波形データと圧電素子に出力される駆動波形とタイミングを示す。
図8において、横軸は時間、駆動波形の縦軸は駆動電圧を表す。また、図では、駆動波形1個分、すなわち、GSCの1カウント分に相当する区間を表している。
図9は、駆動波形によるせん断モードヘッドの基本動作を示す図である。ここでは、17Yのヘッド本体のノズル1列分の一部である28A、28B、28Cの3つの圧力発生室を示してあり、28Bの圧力発生室が、分割駆動信号であるSTB信号で選択された組の圧力発生室であり画像データに応じて駆動され、28Aと28Cはそれぞれ選択されていない組の圧力発生室であるとする。
図10は、せん断モードインクジェットヘッドの分割駆動の動作を示す図であり、図では、圧力発生室の容積が収縮した状態を示している。
尚、図9、図10においてはヘッド本体の断面を示してあり、ノズルの記載を省略してある。また、図10においては、駆動電極を省略してある。また、図中の参照番号は、図3における部材と同一部材については同一の番号を付してあり、27は隔壁を表している。
ここでは、17Yの1つのノズル列について示すが、他の各ノズル列についても同様である。
図8において、前述の駆動波形データが「0」の期間中には、非吐出波形に相当するpulse_timing0の駆動信号が選択され、非吐出波形であるGND(アース)が画像データに対応した圧力発生室の圧電素子に印加される。選択されない組の圧力発生室には、前述のように駆動波形データ「1」が、選択され、非動作波形に相当するpulse_timing1の駆動信号が選択され、非動作波形である電圧値VH2の正電圧の矩形波パルスが圧力発生室の圧電素子に印加される。
これにより、かかる記録ヘッド本体17Yは、図9(a)に示す状態において、画像データに対応した圧力発生室の電極25Bがアースに接続されると共に、選択されない組の圧力発生室の電極25A,25Cに、非動作波形である電圧値VH2の正電圧の矩形波パルスが印加されると、まず、パルスの最初の立ち上がりによって、隔壁27B、27Cを構成する圧電性材料27a、27bの分極方向に直角な方向の電界が生じ、27a、27bともに隔壁の接合面にズリ変形を生じ、図9(c)に示すように、隔壁27B及び27Cは互いに内側に変形し、圧力発生室28Bの容積が収縮する。この収縮により圧力発生室28B内のインク滴を吐出しない程度の圧力が掛かる。
所定時間経過すると、パルスの立ち下がりにより、電極25A,25Cの電位が0に戻り、隔壁27B、27Cは収縮位置から図9の(a)の中立位置に戻る、
従って、画像データに対応する圧力発生室28Bの圧電素子の隔壁27B,27Cは駆動波形に応じてノズルからインク滴を吐出しない程度に変形し、ノズルから液滴を吐出させずにノズル先端のインク表面が振動する状態に保たれるため、インクの乾燥が防止される。また、非吐出波形による圧力付与手段の駆動での発熱によりインクを加熱することが可能になる。加熱によりインク粘度が低下し、吐出しやすくなる。また、圧力発生室間でインクの温度分布がある場合、これを補正できる。
図8において、駆動波形データが「1」の期間中には、非動作波形に相当するpulse_timing1の駆動信号が選択され、非動作波形である電圧値VH2の正電圧の矩形波パルスが画像データに対応した圧力発生室の圧電素子に印加される。選択されない組の圧力発生室には、前述のように駆動波形データ「1」が、選択され、非動作波形に相当するpulse_timing1の駆動信号が選択され、同様に、非動作波形である電圧値VH2の正電圧の矩形波パルスが圧力発生室の圧電素子に印加される。
これにより、かかる記録ヘッド本体17Yは、図9(a)に示す状態において、画像データに対応した圧力発生室の電極25B及び、選択されない組の圧力発生室の電極25A,25Cともに、非動作波形である電圧値VH2の正電圧の矩形波パルスが印加される、従って、画像データに対応する圧力発生室28Bの圧電素子の隔壁27B,27Cは、電位差が発生しないため、駆動されず、変形しない。
図8において、駆動波形データが「2」の期間中には、吐出波形に相当するpulse_timing2の駆動信号が選択され、吐出波形である電圧値VH1の矩形波パルスが画像データに対応した圧力発生室の圧電素子に印加される。駆動しない組の圧力発生室には、前述のように駆動波形データ「1」が、選択され、非動作波形に相当するpulse_timing1の駆動信号が選択され、非動作波形である電圧値VH2の正電圧の矩形波パルスが圧力発生室の圧電素子に印加される。この吐出波形の矩形波パルスと非動作波形の矩形波パルスはタイミングがずれており、吐出波形の矩形波パルスに引き続いて非動作波形の矩形波パルスが出力されるようになっている。
これにより、かかる記録ヘッド本体17Yは、図9(a)に示す状態において、画像データに対応した圧力発生室の電極25Bに電圧値VH1の矩形波パルスが印加されるとともに、駆動しない組の圧力発生室の電極25A,25Cに、非動作波形の最初のアース部分が印加されると、まず、パルスの最初の立ち上がりによって、隔壁27B、27Cを構成する圧電性材料27a、27bの分極方向に直角な方向の電界が生じ、27a、27bともに隔壁の接合面にズリ変形を生じ、図9(b)に示すように、隔壁27B及び27Cは互いに外側に変形し、圧力発生室28Bの容積が膨張する。これにより圧力発生室28B内のインクに負の圧力が生じてインクが流れ込む。所定時間後にパルスの電位を0に戻すと、隔壁27B,27Cは膨張位置から図9(a)に示す中立位置に戻り、圧力発生室28B内のインクに高い圧力が掛かる。
引き続いて、画像データに対応した圧力発生室の電極25Bがアースに接続された状態で、駆動しない組の圧力発生室の電極25A,25Cに、VH2の矩形波パルスが印加されると、パルスの立ち上がりによって、図9(c)に示すように、隔壁27B及び27Cは互いに内側に変形し、圧力発生室28Bの容積が収縮する。この収縮により圧力発生室28B内のインクに更に高い圧力を掛け、ノズル28からインク滴を吐出させる。所定時間経過すると、パルスの電位を0に戻し、隔壁27B、27Cを収縮位置から図9の(a)の中立位置に戻す。
本実施形態では、8階調で、駆動波形パターンには、先頭のアース部分を除いて、駆動波形が、7つ含まれているので、上記の動作を7回繰り返して、1つの画素周期内に最大で7滴のインク滴を吐出してマルチドロップ吐出を行う。
本発明は、1ビットの画像データで、駆動波形パターンとして、1つの駆動波形を選択するようにして、1つの画素周期内に1滴のインク滴を吐出してを行う様にしてもよい。この際、画像データにより、非吐出波形と吐出波形と非動作波形のうちのいずれかが選択される。非吐出波形を印加している間も吐出が行えるので、記録速度の低下がなく、非吐出波形を印加できる。
この多チャネルの剪断モードインクジェットヘッドを駆動するには前述のように、A組,B組,C組の3周期をもって行う。
かかる3サイクル吐出動作について図10を用いて更に説明する。図10に示す例ではヘッド本体17Yは、1列の256個の圧力発生室の一部であるA1、B1、C1、A2、B2、C2、A3、B3、C3の9個の圧力発生室を示してある。
インク吐出時には、まずA組(A1、A2、A3)の各圧力発生室28の電極に画像データに応じて駆動波形を印加し、B組(B1、B2、B3)の各圧力発生室及びC組(C1、C2、C3)圧力発生室には、非動作波形を印加する。
続いてB組(B1、B2、B3)の各圧力発生室28、更に続いてC組(C1、C2、C3)の各圧力発生室28へと上記同様に動作する。
かかるせん断モードタイプのインクジェット記録ヘッドでは、隔壁27の変形は壁の両側に設けられる電極に掛かる電圧差で起こるので、本実施形態のように、インク吐出を行う圧力発生室の電極に負電圧を掛ける代わりに、インク吐出を行う圧力発生室の電極を接地して、その両隣の圧力発生室の電極に正電圧を掛けるようにしても動作させることは、正電圧だけで駆動できるため、電源コストの点で好ましい態様である。
また、吐出波形、非動作波形は、一定電圧波高値の矩形波パルスであり、0Vを0%、波高値電圧を100%とした場合に、パルス幅とは、電圧の0Vからの電圧の立ち上がり始め又は立ち下がり始めの10%から波高値電圧からの立ち下がり始め又は立ち上がり始めの10%との間の時間として定義する。更に、矩形波とは、電圧の10%と90%との間の立ち上がり時間、立ち下がり時間のいずれもが0.5μsec以下であるような波形を指す。矩形波を用いることにより、応答性よくインクジェットヘッドを駆動して液滴を吐出させることができ、圧力波の共振により液滴を吐出する方式において、より効率的に高感度にインクジェットヘッドを駆動させることができる。
なお、AL(Acoustic Length)とは、圧力発生室の音響的共振周期の1/2である。このALは、圧力付与手段である隔壁27に矩形波のパルスを印加して吐出するインク滴の速度を測定し、矩形波の電圧値を一定にして矩形波のパルス幅を変化させたときに、インク滴の飛翔速度が最大になるパルス幅として求められる。
また、上記実施形態のように、吐出波形の矩形波パルスの駆動電圧VH1(V)と非動作波形の矩形波パルスの駆動電圧VH2(V)の比を|VH1|>|VH2|の関係とすると、インク滴吐出後の残留圧力波のキャンセルが容易になり、高周波駆動での安定射出を図ることができると共に、非動作波形により適度にノズル内のインクを揺らすことができるので好ましい。
また、吐出波形の矩形波パルスのパルス幅は、1ALの近傍である0.5AL〜1.4ALとすることが好ましい。このことにより、液滴の吐出圧力(吐出速度)が高まり、最も効率の良い吐出力が得られる。
また、非動作波形の矩形波パルスのパルス幅は、2ALの近傍である1.6〜2.5ALが好ましい。このことにより、残留圧力波のキャンセルが容易になる。
なお、この電圧VH1と電圧VH2の基準電圧は0とは限らない。この電圧VH1と電圧VH2は、それぞれ差分の電圧である。
図11に図7のテーブルに対応した駆動波形のパターンと駆動波形の出力とタイミングチャートを示す。ここでは、分割駆動で選択された圧力発生室、例えばA組の1画素分の駆動を示している。ダミーの圧力発生室に印加する駆動波形パターンは省略してあるが、ダミーの圧力発生室の駆動電極には、図11の画像データが(H,I,J)の場合の駆動波形パターンが印加される。
まず、入力されたLOAD信号により、カウント手段がリセットされる。例えばSTBー1が選択され、A組の圧力発生室が選択される。A組に対応した画像データから、アウトプットパターンレジスタ34に記憶されている変換テーブルにより、駆動波形パターンデータが決定する。なお、駆動されないB組、C組の圧力発生室には、予め定められた駆動波形パターンが選択される。前記カウント手段のカウント値であるGSCが0から7まで1ずつカウントアップされ、出力する駆動波形を決定する。駆動波形は、画像データとカウント手段のカウント値に応じて、非動作波形、非吐出波形、吐出波形の3種類の駆動波形の中から選択される。これらの波形は、入力されたGSCLKのタイミング信号に同期して、前述の3種類の駆動信号から、スイッチング手段(不図示)により選択され、出力される。
本実施形態では、画像データが(0,0,0)の階調値0の場合に、GSC=3のカウント、すなわち、4番目の波形で非吐出波形が印加される。非吐出画素のほぼ中央で、ノズル先端のインク表面が振動させることができ、効果的かつ効率的にインクの乾燥が防止される。
また、画像データが(0,0,1)で、階調値が1の場合に、GSC=3のカウント、4番目の駆動波形でインクが吐出されるので、1滴目のドットを1画素のほぼ中央に配置させることができる。そして、画像データが(0,1,0)で、階調値が2の場合に、GSC=3のカウントである4番目の駆動波形とGSC=4のカウントである5番目の駆動波形でインクが吐出されるので、計2滴のドットを1画素のほぼ中央に配置させることができる。同様に階調値の増加と共に画素の中央から周辺へドットを配置させることで、低階調のドットと高階調のドットでドットの重心を揃えることができる。
上述のように、各駆動波形毎にビットデータを割り当てて駆動波形パターンデータを構成すれば、各ビットの値によって所望の波形を選択することができ、簡単な構成で吐出データと駆動波形パターンデータの組み合わせを自由に設定することができ、また、非吐出波形を印加している間も吐出が行えるので、記録速度の低下がなく、非吐出波形を印加できる。
また、プリンタの電源がONされる毎に、CPU11内の不揮発メモリ(不図示)の値をアウトプットパターンレジスタ34にアップロードするようにプログラムされている。
よって、アウトプットパターンレジスタ34は、書き換える動作がない場合は、プリンタの電源投入時に自動的にプリセット値にセットされるので、アウトプットパターンレジスタを書き換える動作が不要の場合などでは、操作手順を省略できる。
また、必要に応じて、CPU11内の不揮発メモリ(不図示)の値を書き換えることにより、アウトプットパターンレジスタのテーブルを書き換えることができる。
また、同じ波形を複数個連続させた駆動波形パターンから複数液滴を吐出させる場合は、単位波形のみを駆動回路のメモリーにより作成してもよい。
また、本実施形態では、駆動信号は、制御基板9の駆動信号発生回路15から入力しているが、駆動回路内のメモリーにより作成してもよい。
<インクジェットヘッドの複数列ノズルのドット位置調整>
以下、図1のインクジェトプリンタにおけるインクジェットヘッドの複数列ノズルのドット位置調整について説明する。
本実施形態のヘッド本体において、8列のノズル列から吐出されたインク滴を所定の位置に着弾させ、副走査方向の直線のライン像を形成するには、各ノズル列からのインク滴の吐出タイミングを調整する必要がある。
また、図1に示した本実施形態のインクジェットプリンタでは、その記録速度を向上するために、主走査方向における往復双方向の走査時においてドットを形成するモードを有している。このようなインクジェットプリンタにおいては、良好な画像を印刷するために、往動時に形成されたドットと復動時に形成されたドットとの主走査方向の位置を一致させる必要が生じる。往動時に形成されたドットと復動時に形成されたドットに相対的なズレが生じると画像にざらつきが生じ、画質が低下することになるからである。
双方向記録を行う場合には、ドットの形成位置のわずかなズレが画質に大きく影響しやすい。例えば、記録ヘッドが左から右に主走査する場合にはドットの位置が左側にずれる特性を有している場合、復路では逆方向に主走査するからドットの位置は右側にずれることになる。この結果、往復いずれか一方で生じるズレは、双方向記録を行うことで倍増してしまう。このように、双方向記録では、往復のドット位置の調整不良による画質の劣化が激しくなるため、容易且つ精度良くドットの形成タイミングを調整する必要がある。
従って、このようなズレを補正するために、本実施形態のインクジェットプリンタにおいては、以下に説明する所謂テストパターンを用いた調整を行う。
テストパターンでは、往動で各ノズル列からドットを形成する。基準となるノズル列以外のノズル列からは、各画素にインクを吐出するタイミングを数段階にずらし、その相対的な位置関係を変化させてドットを形成する。復動についても同様に行う。
また、基準となるノズル列について、往動でノズル列からドットを形成し、副走査を行わずに復動でドットを形成する。この際、復動時には、各画素にインクを吐出するタイミングを数段階にずらし、往動時と復動時のドットの相対的な位置関係を変化させてドットを形成する。
こうして印刷されたテストパターンを見て、最適なタイミングを選択することにより、各ノズル列からの往復のドットの位置ズレがないようにインクの吐出タイミングを調整することができる。
本実施形態のインクジェットプリンタでは、画素単位でのタイミング調整は、ページメモリ12内の画像データをずらすことにより調整し、画素単位より細かい範囲の調整は、先述の第1のラッチ回路32Aと第2のラッチ回路32Bを利用して、ノズルからのインク滴の吐出タイミングを独立に設定することで調整している。
まず、前者について説明する。
図4のCPU11の不揮発性メモリ(不図示)内には、インクジェットプリンタの製造時に測定した各ノズル列毎の画素単位での位置ズレデータ(基準位置からのシフト量)が、それぞれ主走査方向Xの往方向及び復方向について記憶されている。
図4のページメモリ12には、例えばインクジェットプリンタの電源オン時に、CPU11から位置ズレデータが読み出され、それに対応した数だけ、いかなるインクも吐出しないという画像データすなわちゼロ値(以下、補正データという)が記憶されるようになっている。ゼロ値は、3ビットで表すと(0,0,0)である。
ここで、Y色の第1ノズル列は、主走査方向往方向の先頭即ち前基準位置にあるため、補正データを前(ここでは往方向において画像データより先にくるという意味)に付加する必要はない。Y色の第2ノズル列やそれ以外の色のノズル列については、ノズルの位置ズレに応じて長くなっている補正データを画像データの前に付加する。これに対し、Kの第2ノズル列以外のノズル列の画像データの後(ここでは往方向において画像データより後にくるという意味)には、後データを付加する。K色の第2ノズル列は、キャリッジが最も右に移動したときに、後基準位置に位置することとなるため、後データを付加する必要はない。後データは補正データと同じゼロ値からなるが、位置ズレに厳密に対応する必要はなく、データ長を一定にするために用いられるものである。以上で、ノズルを駆動するための往方向の合成画像データが作成されたこととなる。
復方向の合成画像データの作成について説明する。K色の第2列ノズルは、主走査方向復方向の先頭即ち後基準位置にあるため、補正データを前(ここでは復方向において画像データより先にくるという意味)に付加する必要はない。K色の第1列ノズルとそれ以外の色のノズル列については、ノズルの位置ズレに応じて長くなっている補正データを画像データの前に付加する。一方、Yの第1ノズル列以外のノズル列の画像データの後(ここでは復方向において画像データより後にくるという意味)には、後データを付加する。これで、ノズルを駆動するための復方向の合成画像データが作成されたこととなる。
このようにして形成された各ノズル列の画像データは、1ライン毎に図4のラインメモ13a、13bに送られ、8つのノズル列において同一のタイミングで、駆動回路16Y1〜16K2に入力され、圧電素子に供給されるタイミングを待つこととなる。キャリッジ2即ちヘッド本体17が往方向に移動を開始し、それぞれのノズル列が吐出位置に到達したことをエンコーダーからの信号に基づき判断した場合、CPU11は、制御回路23を駆動し、タイミング信号を各駆動回路16送信する。
すると、各駆動回路16は、合成画像データを各圧電素子に出力する。ここで、合成画像データのうち、Y色の第1ノズル列に出力されたものは、補正データが付加されていないので、直ちに画像データに基づき、Y色の第1ノズル列はインク吐出を開始する。しかしながら、他のノズル列は、まず補正データに基づき駆動されているため、インクを吐出しない状態に維持されたまま、ヘッド本体17が往方向に移動する。
その後、前基準位置からY色の第2ノズル列の位置ズレ分だけヘッド本体17が往方向に移動すると、補正データに基づく駆動が終了するので、画像データに基づき、Y色の第2ノズル列はインク吐出を開始する。更に、前基準位置からM色の第1ノズル列の位置ズレ分だけヘッド17が往方向に移動すると、補正データに基づく駆動が終了するので、画像データに基づき、ノズル列はインク吐出を開始する。以降、M色の第2列ノズル列からK色の第2ノズル列の順に順次、前基準位置から位置ズレ分だけヘッド17が往方向に移動すると、補正データに基づく駆動が終了するので、画像データに基づき、ノズルはインク吐出を開始する。
最後に、Kの第2ノズル列の画像データに基づくノズル列のインク吐出が終了すると、キャリッジ2は、後基準位置に到達するので、その後、復方向へと走査方向を逆転させることとなる。復方向においても、上述と同様にして合成画像データに基づきノズルの駆動制御が行われるようになっている。
このことにより、画素ピッチ単位で、ノズル列毎の着弾位置を調整できる
次に、画素単位より細かい調整について説明する。図12は、17Yを例にして2列のノズル列のデータ処理タイミングチャートの一例を示している。図12の横軸は時間を表している。17M,17C、17Kについても同様な処理方法をとる。
本実施の形態では、転送クロックDCLKに従って、イエロー(Y)の第1ノズル列の画像データはラインメモリ13aから3ビットのデータ信号線で駆動回路16Y1のシフトレジスタへ、イエロー(Y)の第2ノズル列の画像データは同様に駆動回路16Y2のシフトレジスタへ同じタイミングで転送される。マゼンタ(M)の画像データはラインメモリ13aから駆動回路16M1、16M2のシフトレジスタへ転送され、シアン(C)の画像データはラインメモリ13bから駆動回路16C1,16C2のシフトレジスタに転送される。ブラック(K)の画像データはラインメモリ13bから駆動回路16K1,16K2のシフトレジスタに転送される。
なお、前述のように制御基板9により、ノズル列に対応した画像データをノズル列に対応した各駆動回路16のシフトレジスタに転送、格納するタイミングは、複数のノズル列(ここでは8列)間で共通、すなわち、同一のタイミングになるように制御される。このことにより、複数のノズル列に対応した複数の駆動回路のシフトレジスタへのデータ転送を同時に行うことができ、データ転送のトリガー処理を効率的に行うことのできる。また、制御系の構成を簡略化できる。
キャリッジ2が予め定められた所定位置に達すると、ここでは、256チャネル分のデータ転送が終了すると、制御回路23は、ラッチタイミングを指示する第1のトリガー信号であるLAT1信号(図中の矢印で示す立ち上がりエッジ)を出力し、第1のラッチ回路32AはこのLAT1信号を受けるとシフトレジスタ31から並列に出力された画像データをラッチする。この実施形態では、LAT1の信号の出力タイミングは、8列のノズル列間で共通としている。すなわち、8列間で同時にシフトレジスタに転送された画像データが8列間で同時に第1のラッチ回路32Aにラッチされる。
ここで、図4のCPU11の不揮発性メモリ(不図示)内には、インクジェットプリンタの製造時に測定した各ノズル列間の画素ピッチより細かい単位での吐出タイミングズレ時間データが、それぞれ主走査方向Xの往方向及び復方向について記憶されている。
図4のCPU11は、例えばインクジェットプリンタの電源オン時に、不揮発メモリからズレ時間データを読み出し、制御回路23は、このズレ時間を基に、各ノズル列毎にラッチタイミング信号LAT2(立ち下がりエッジ)の出力タイミングを独立に制御してノズル列に対応した各駆動回路に出力する。
第2のラッチ回路32BはこのLAT2信号を受けると第1のラッチ回路32Aから並列に出力された画像データをラッチする。
キャリッジ2が記録に適した位置に達すると、制御回路23は、インク吐出を開始させるためのTRGIN信号を出力し、第2のラッチ回路32Bは、このTRGIN信号を受けると、第2のラッチ回路32Bにラッチされた画像データは、A組のノズル列から順にグレイスケールコントローラ33に出力された後、圧力付与手段が駆動され、インク滴を吐出する。
このように、ラッチ手段を2つ有することにより、データ転送の速度を必要以上に向上させることなく、また記録速度を落とすことなく、複数のノズル列に対応した複数の駆動回路のシフトレジスタへのデータ転送を同時に行うことができ、データ転送のトリガー処理を効率的に行うことのできる。また、制御系の構成を簡略化したり、各ノズル列から液滴を吐出させるタイミングを、複数のノズル列毎に独立に制御して、ノズル列毎の液滴の着弾位置を画素ピッチより細かく調整することが可能なる。
図13は、17Yを例にして2列のノズル列のデータ処理タイミングチャートの好ましい一例を示している。図12の横軸は時間を表している。17M,17C、17Kについても同様な処理方法をとる。
この例では、各列の第1のトリガー信号LAT1(立ち上がりエッジ)と第2のトリガー信号LAT2(立ち下がりエッジ)は、立ち上がりエッジと立ち下がりエッジの2つのエッジを有するパルス信号からなる共通のトリガー信号としている。このことにより、簡易な構成で、ラッチタイミングの共通トリガー信号ができる。また、ラッチタイミングのトリガー入力の信号線を削減できるとともに、パルス幅を変更することにより2つのラッチタイミングを容易に変えることができる。
前記パルス信号を下向きパルスとして、立ち下がりエッジをLAT1信号と立ち上がり
エッジをLAT2信号としてもよい。
<ライン型インクジェットプリンタ>
図14は本発明をラインヘッド本体を有するインクジェットプリンタ100に適用した例の主要部を示す斜視図である。図中の参照番号は、前記シリアルヘッドの場合の手段あるいは部材と同一部材については同一の番号を付してある。
図1に示す一色あたり512個のノズルを有するヘッド本体17を副走査方向のY方向に沿って4個配列したラインヘッド本体117(ノズル数は1色当たり512×4個)は、各色ヘッドを117Y、117M、117C、117Kの順に、主走査方向のX方向に4個重ねて外ケース117a中に納めてある。同じく外ケース117a中に納めた本発明の駆動回路16によってインク滴の吐出動作を制御される。
紙搬送機構8はインクジェットプリンタ1と同じく搬送モータ8a搬送ローラー対8b、搬送ローラー対8cによって記録紙Pを主走査方向であるX方向に搬送する。その他の、制御基板9、IC化した駆動回路16等の基本的構成は、512×4ノズルに対応できるように変更する以外は、インクジェットプリンタ1と同様である。
インクジェットプリンタ100はインクジェットプリンタ1と同様にパーソナルコンピュータ等から転送された画像データをラインメモリ13a,13bに転送し、ラインメモリ13a,13bからは1画素あたり3ビットの階調で表現される画像データをフレキシブルケーブル5によって接続した駆動回路16に転送する。そして駆動回路16はトリガーイン信号TRGINが入力されると、インクジェットプリンタ1の駆動回路16と同様にノズルヘッド17からインクを吐出させて記録紙Pに記録を実行する。
以上、上記実施形態では、ALに比べて十分に短い立ち上がり時間及び立ち下がり時間を持った矩形波の駆動波形を圧電素子に印加している。矩形波を用いることで、圧力波の音響的共振をより有効に利用した駆動を行なうことができる。台形波を使用する方法に比べてインク滴を吐出させる効率が良く、低い駆動電圧で駆動させることができる上に、簡単なデジタル回路で駆動回路を設計できる効果がある。また、パルス幅の設定が容易になるという利点を有する。
また、上記実施形態では、圧力付与手段として電界を印加することによりせん断モードで変形するせん断モード型の圧電素子を用いた。せん断モード型の圧電素子では、矩形波の駆動パルスをより効果的に利用することができ、駆動電圧が下げられ、より効率的な駆動が可能となるため好ましい。また、圧力発生室であるインクチャネルが隔壁を隔てて連続しているヘッドの例を示したが、インクチャネルとダミーチャネルとを交互に配列して、インクチャネルが1つおきに配置されており、インクチャネルからインクを吐出するようにしたダミーチャネル型ヘッドにも本発明は適用できる。この場合、インクチャネルの隔壁がせん断変形しても、隣接した他のインクチャネルに影響することがなく、インクチャネルの駆動が容易である。
但し、本発明はこれらに限られるものではなく、例えば、圧電素子を単板型の圧電アクチュエータや縦振動タイプの積層型圧電素子等、別の形態の圧電素子を用いてもかまわない。また、静電力や磁力を利用した電気機械変換素子や、沸騰現象を利用して圧力を付与させるための電気熱変換素子等、他の圧力付与手段を用いてもかまわない。
また、以上の説明では、液滴吐出装置としてインクジェットプリンタの適用例を示し、液滴吐出ヘッドとして画像記録を行うためのインクジェット記録ヘッドを用いたが、本発明は、これに限定されるものではなく、液滴を吐出するためのノズルと、前記ノズルに連通する圧力発生室と、吐出データに基づいて駆動されて前記圧力発生室内に圧力を付与することにより前記ノズルから液滴を吐出させる圧力付与手段とを有する液滴吐出ヘッド本体と、圧力付与手段を駆動する駆動回路を備え、圧力発生室内の液体を液滴としてノズルから吐出させる液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置として広く適用可能である。例えば、液晶用カラーフィルターの作製用途などの産業用途においても有効である。特に、径の小さいノズルや、速乾性の液体が用いられ、液滴の吐出直後から急激に吐出ノズルの液体表面の乾燥が生じやすい液体を吐出する場合に特に有効である。