本発明は、ノズル毎に対応した複数の駆動波形生成部を備え、干渉の影響によって生じる吐出特性(インク滴量及び着弾位置のうち少なくとも1つ)の変動を補正するように駆動波形の補正情報を生成することを特徴とする。また本発明は、各々対応した駆動波形生成部においてこの補正情報に応じて補正された駆動波形を生成することを特徴とする。
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について実施例を挙げて詳細に説明する。
図1は、本実施形態の一例(以下、実施例1と称す。)に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
本実施例1に係る画像形成装置は記録ヘッドとしてノズルから液体を吐出し、あるいは噴射する液体吐出ヘッドを使用した画像形成装置である。さらに具体的には、液体吐出ヘッドとしてとしてインクジェットヘッドを採用したライン走査型インクジェット記録装置である。
液体吐出ヘッドとは、ノズルから液体を吐出し、あるいは噴射する機能部品である。吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度がヘッドに応じた所定値(例えば、30mPa・s)以下となるものであることが好ましい。吐出液体の例として、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンである。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。本実施形態では、積層型圧電素子を使用した例を例示している。
図1は、本実施例1に係る画像形成装置(インクジェット記録装置)1を記録媒体10の垂直上方から見た平面図である。
記録媒体10は、例えば用紙であり、ロール紙(連続用紙)あるいはカット紙などの形状は問わない。また、用紙以外の様々な媒体であってもよい。記録媒体10は所定の方向(図1の矢印A方向)に搬送されている。この記録媒体10の記録する面に所定の距離を保って対向して記録部2が支持されている。記録部2は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた色毎のK記録部2K、C記録部2C、M記録部2M及びY記録部2Yからなる。記録部2が用紙搬送速度に同期してインク滴吐出を行うことにより、記録媒体10上にカラー画像を形成する。
なお、画像形成装置1には当然のことながら、記録媒体10が所定の速度で、また記録部2に対して所定の位置で通過するように搬送制御する機構が備えられているが、本発明は、これらの搬送機構に特徴があるものではない。ラインプリンタとして公知の機構を採用すればよいので、ここでは、本発明の要旨に直接関係のない部分の図示及び説明は省略する。
K記録部2K、C記録部2C、M記録部2M及びY記録部2Yは、それぞれ複数の液体吐出ヘッド3が搬送方向の直交方向に一列に、あるいは図示するように千鳥状に配列して構成されている。このように液体吐出ヘッド3をアレー化することにより広域な印刷領域幅を確保している。
図2は、液体吐出ヘッド3の一例を示す図である。液体吐出ヘッド3は、複数のノズル104が用紙搬送方向(矢印A方向)と直交する方向(以下、適宜「ノズル列方向」と称する。:矢印B方向)に所定のピッチpで配列されている。図2の液体吐出ヘッド3では、このノズル列が2列備えられ、各ノズルがノズル列方向にそれぞれほぼ1/2・pずれて配列されており、ノズル列方向に高解像に記録できるようにしている。
図3及び図4は、液体吐出ヘッド3を液室長手方向(ノズル列方向と直交する方向)に沿って断面して要部を示す図である。
液体吐出ヘッド3は、貫通孔105、個別液室106、流体抵抗部107、液体導入部108及び共通液室110を備え、貫通孔105の液体吐出側に配置されたノズル板103に形成されたノズル104から液体が吐出される。貫通孔105のノズル板103配置側の反対側には、振動板部材102が設けられている。ノズル104は、流路板101と振動板部材102とノズル板103とを接合し、貫通孔105を介して個別液室106に連通している。個別液室106は、加圧室、加圧液室、圧力室、個別流路、圧力発生室などとも称されるので、以下、単に「液室」と称す。
液室106には、フレーム部材117に形成された共通液室110から振動板部材102に形成されたフィルタ109を介して液体(インク)が液体導入部108に導入され、液体導入部108から流体抵抗部107を通って液室106にインクが供給される。
流路板101は、SUSなどの金属板を積層して、貫通孔105、液室106、流体抵抗部107及び液体導入部108などの開口部や溝部をそれぞれ形成している。
振動板部材102は液室106、流体抵抗部107、液体導入部108などの壁面を形成する壁面部材であると共に、フィルタ109部を形成する部材である。なお、流路板101は、SUSなどの金属板に限らず、シリコン基板を異方性エッチングして形成することもできる。
そして、振動板部材102の液室106と反対側の面に液室106のインクを加圧してノズル104から液滴を吐出させる積層型圧電部材112が接合されている。この積層型圧電部材(以下、単に圧電部材とも称す。)112は、エネルギーを発生する駆動素子(アクチュエータ手段、圧力発生手段、圧力発生素子)であり、本実施例1では、柱状の電気機械変換素子として構成されている。この圧電部材112の一端部はベース部材113に接合され、また、圧電部材112には駆動波形を伝達するFPC(Flexible Printed Circuit)基板115が接続されている。これらによって、圧電アクチュエータ111が構成されている。
なお、本実施例1では、圧電部材112は積層方向に伸縮させるd33モードで使用しているが、積層方向と直交する方向に伸縮させるd31モードで使用してもよい。
このように構成した液体吐出ヘッド3においては、例えば、図3に示すように、圧電部材112に加える電圧を基準電位Veから下げることによって圧電部材112が収縮し、振動板部材102が変形して液室106の容積が膨張する。その結果、液室106内に液体(インク)が流入する。その後、図4に示すように、圧電部材112に加える電圧を上げて圧電部材112を積層方向に伸長させる。これにより、振動板部材102がノズル104方向に変形し、液室106の容積を収縮させる。その結果、液室106内のインクが加圧され、ノズル104から液滴301が吐出される。
そして、圧電部材112に加える電圧を基準電位Veに戻すことによって振動板部材102が初期位置に復元し、液室106が膨張して負圧が発生する。この負圧により、共通液室110から液室106内にインクが充填される。このインクの充填をリフィルと称する。
そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。しかしながら、近年は、印字速度の高速化を図るため印字駆動周波数が高くなっており、メニスカス面の振動が減衰する前に、次の液滴吐出が開始されてしまうことがある。このように前記減衰前に次の液滴吐出が開始されると、吐出開始時のメニスカス位置が異なるため、吐出速度及び吐出滴量が変化し、あるいは吐出が不安定になるといった現象が生じる。特に、リフィルによる振動は長周期になることが多く、直前の吐出だけでなく、それ以前の吐出の残留振動が影響することも少なくない。これが前に述べた時間的干渉である。
また、ノズル104は、図3の紙面垂直方向に1ピッチpの間隔で並んで配置される。液室106を形成する流路板101と振動板部材102とノズル板103は、隣接するノズルのそれらと一体化しており、隣接のノズルで吐出する際には、各部材の振動や変形が当該ノズルの吐出に影響することがある。この影響とは、前記振動や変形により、吐出速度及び吐出滴量が変化し、あるいは吐出速度及び吐出滴量が不安定になることである。また、それぞれのノズルを隔てる隔壁の振動が影響することもある。これは一般にクロストークと呼ばれている。特に、ヘッドの小型化と高解像度化を両立するために、ピッチpの高密度化が進むと、クロストークの影響は大きくなる。これが前に述べた空間的干渉である。
ところで、ノズル104から吐出された液滴301は、一定距離Lで保たれた記録媒体10に飛翔時間Ti後に着弾する。このとき液滴301の吐出速度をViとすると、飛翔時間Tiは、「Ti=L/Vi」である。この吐出速度Viは、時間的干渉及び空間的干渉の影響により変動することがあり、結果として飛翔時間Tiが異なることになる。一方、記録媒体10は一定速度で搬送されているため、搬送方向の着弾位置にばらつきが生じる。また、吐出される滴量にもばらつきが生じる。
図5は、本実施形態における他の例(以下、実施例2と称す。)の画像形成装置の概略構成を示す図である。
実施例2に係る画像形成装置は、実施例1と同様に記録ヘッドとしてノズルから液体を吐出し、あるいは噴射する液体吐出ヘッドを使用した画像形成装置である。さらに具体的には、液体吐出ヘッドとしてとしてインクジェットヘッドを採用したシリアル型インクジェット記録装置である。シリアル型である点がライン型である実施例1と異なる。
図5は本実施例2に係る画像形成装置1を記録媒体10の垂直上方から見た平面図である。本実施例2に係る画像形成装置1は、装置本体の左右の側板に横架したガイド部材である主従のガイドロッド11,12を備えている。画像形成装置1のキャリッジ13はガイドロッド11,12によって記録媒体10の搬送方向Aと直交する方向(主走査方向)に摺動自在に保持されている。キャリッジ13は、主走査モータによってタイミングベルトを介して図5で矢印C方向(キャリッジ走査方向)に移動走査する。キャリッジ13には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液滴を吐出するための第1液体吐出ヘッド14a及び第2液体吐出ヘッド14bが、ノズル列が主走査方向と直交するように配列している。また第1液体吐出ヘッド14a及び第2液体吐出ヘッド14bは、インク滴吐出方向を下方に向けて装着されている。以下、第1液体吐出ヘッド14a及び第2液体吐出ヘッド14bを区別しないときには、両者を液体吐出ヘッド14と総称する。
液体吐出ヘッド14は、それぞれ2つのノズル列を有し、第1液体吐出ヘッド14aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、それぞれ吐出する。また第2液体吐出ヘッド14bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
そして、キャリッジ13を移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド14を主走査方向に駆動することにより、停止している記録媒体10にインク滴を吐出して1走査分を記録し、記録媒体10を所定量搬送後、次の行の記録を行う、という動作を繰り返す。また、液体吐出ヘッド14の機構自体は実施例1において図3及び図4に示した構成と同様である。
また、キャリッジ13には、第1液体吐出ヘッド14a、及び第2液体吐出ヘッド14bに対して後述の図12に示すようなヘッドタンク15を一体にした液体吐出ユニット16を搭載している。液体吐出ユニット16の液体吐出ヘッド14は、前述のように例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。
また、本願の用語における画像形成若しくは記録は同義語であり、印字、印写、印刷、造形等も同義語である。
なお、ここでは、実施例1の場合と同様に、本発明の要旨に直接関係のない部分の図示及び説明は省いている。
図6は、実施例1及び2における液体吐出ヘッド3,14を駆動するためのヘッド駆動装置としてのヘッド駆動部の構成を示すブロック図である。
図6において、ヘッド駆動部31はN個の圧電部材(素子)112−1〜Nをコントローラ32からの指示でそれぞれ駆動する。圧電部材112−1〜Nを駆動することにより、液体吐出ヘッド3,14に設けられたN個のノズルから液体(液滴)が吐出される。このヘッド駆動部31で、液体吐出ヘッド3,14の1ノズル列分の圧電部材を駆動する。例えば図1に示した実施例1の画像形成装置1であれば、それぞれの液体吐出ヘッド3毎、それぞれのノズル列毎にヘッド駆動部31が備えられる。なお、N個の圧電部材のそれぞれを区別せずに総称する場合には、圧電部材112と称する。
圧電部材112は駆動波形を伝達するFPC基板115を介して、一方の電極は他の圧電部材と共に共通電位(例えばグランド)に接続され、他方の電極はそれぞれヘッド駆動部31に接続される。
ヘッド駆動部31は、1つあるいは複数の集積回路で構成され、そのうち少なくとも圧電部材112に接続する部分はFPC基板115に配置されている。コントローラ32から転送されるデータに基づき、各ノズルから適切な状態で吐出するようにそれぞれの圧電部材112に対して最適な駆動波形を生成し、圧電部材112を駆動する。本実施形態では、ヘッド駆動部31と圧電部材112によって液体吐出ヘッドユニット39が構成されている。
なお、ヘッド駆動部31は、液体吐出ヘッド3と一体に設けることができる。一体に設けることにより、本実施形態の記録ヘッドユニットが構成される。
コントローラ32は、印刷する画像データをそれぞれの記録ヘッド、ノズル列に対応する画像データに分離して、ヘッド駆動部31に転送する。また、ヘッド駆動部31で駆動波形を生成する際に使用する駆動波形情報や補正情報などを転送して設定する機能や、各種制御信号を供給する機能を持つ。
以下、ヘッド駆動部31の詳細構成を説明する。
ヘッド駆動部31は、シフトレジスタ33、ラッチ34、駆動波形生成部35、制御部36、駆動波形情報保持部37、及び駆動波形補正部38を含む。コントローラ32から液体吐出ヘッド3の1行分のデータに相当するN個の画像データが、転送クロックSCKに同期してシリアルにヘッド駆動部31に入力される。シリアルに入力されるN個の画像データは、シフトレジスタ33に順次保持される。液体吐出ヘッド3のノズルからは、例えば大滴、中滴、小滴、吐出なしの4値の大きさの異なるドットに対応する液滴(インク滴)を吐出するものとすると、1個の画像データは2ビットのデータである。
ラッチ34は、一旦シフトレジスタ33に保持されたN個の画像データを、ラッチイネーブル信号LENの入力により保持するN個のラッチであり、1つあたり2ビットのデータ(D1〜DN)を保持し、それぞれ対応する駆動波形生成部35へ供給する。
駆動波形生成部35は、N個の圧電部材112−1〜Nをそれぞれ個別に駆動するための駆動波形を生成する。駆動波形生成部35は、圧電部材112−1〜Nにそれぞれ対応させたN個の駆動波形生成部35−1〜35−Nを備える。n番目(nは1〜N:正の整数)のチャンネルである駆動波形生成部35−nでは、ラッチ34からラッチイネーブル信号LENに同期して供給される2ビットの画像データDnが参照される。また駆動波形生成部35−nでは、画像データDnに応じて駆動波形情報保持部37に保持されている駆動波形情報が参照される。駆動波形生成部35−nでは、駆動波形補正部38から供給される駆動波形の補正情報が参照され、これら参照により、ラッチイネーブル信号LENを開始基準として駆動波形が生成され、圧電部材112−nへ供給される。なお、画像データDnに応じて駆動波形情報保持部37に保持されている駆動波形情報を参照するとは、例えば画像データDnが大滴を表すデータであれば、大滴用の駆動波形情報を参照するということである。
駆動波形情報保持部37には、駆動波形の情報が、例えば大滴、中滴、小滴、吐出なしといった大きさの異なるドット毎の駆動波形として保持されている。この情報の詳細は後述する。
駆動波形補正部38は、前述した時間的干渉及び空間的干渉の影響により変動する吐出特性(吐出速度、インク滴量、吐出安定性など)の変動分を抑制するように、駆動波形を補正するための補正情報を生成する。駆動波形補正部38は、圧電部材112−1〜Nにそれぞれ対応させたN個の駆動波形補正部38−1〜38−Nを備える。n番目のチャンネルである駆動波形補正部38−nでは、ラッチ34からラッチイネーブル信号LENに同期して供給される2ビットの画像データDnと、隣接するチャンネルの画像データDn−1、画像データDn+1とを入力して補正情報を生成する。そして駆動波形補正部38−nは、対応する駆動波形生成部35−nに供給する。ここでは画像データDnに隣接する両隣1つずつの画像データDn−1、画像データDn+1を入力しているが、両隣複数個の画像データを入力するようにしても良い。
制御部36は、ヘッド駆動部31全体の制御を行う。また、コントローラ32との間で通信を行う機能を有し、例えば駆動波形情報保持部37あるいは駆動波形補正部38へ保持する情報を設定し、あるいは情報の更新を行う。
図7は駆動波形生成部35の構成を示すブロック図である。
駆動波形生成部35は、図7に示すように、リファレンス波形生成部41、制御アンプ42、ドライバ部43及び減衰器46から構成される。
リファレンス波形生成部41は、画像データDn、駆動波形情報、補正情報及び波形生成開始基準としてのラッチイネーブル信号LENから、圧電部材112に印加したい所望の駆動波形の1/A(A>1)に縮小した波形をリファレンス波形として生成する。例えば、DAコンバータなどにより構成され、駆動波形情報及び補正情報からDAコンバータへの入力データを生成する。
制御アンプ42は、リファレンス波形生成部41の出力する所望の駆動波形の1/Aであるリファレンス波形と、圧電部材112の一端に印加されている駆動電圧が減衰器46により1/Aに縮小された波形とを比較する。そして制御アンプ42は、これらが一致するようにドライバ部43に充放電信号を供給する。
ドライバ部43は、制御アンプ42の出力する充放電信号に従い、圧電部材112に対し充放電を行って、所望の駆動波形が印加されるように駆動する。電圧値Vhの電源47と圧電部材112の一端p点に接続されたp−ch MOSトランジスタ44と、圧電部材112の一端p点とグランドに接続されたn−ch MOSトランジスタ45とで構成され、充放電信号に従って、それぞれのMOSトランジスタのゲート電圧を制御することにより、充電電流及び放電電流を制御し、p点が所望の波形となるように駆動される。
減衰器46は、圧電部材112に印加されている駆動波形を1/Aに減衰させる。例えば、図示したように抵抗の分圧で構成され、抵抗値をR1,R2とすると、「R2/(R1+R2)=1/A」となるように抵抗値が選ばれる。また、減衰器46に流入する電流が、圧電部材112の充放電電流に比べて十分小さくなるようにする。
このようにして、圧電部材112に印加されている駆動波形が所望の波形と常に一致するように充放電が制御されるので、圧電部材112へは所望の波形を精度良く印加することができ、所望の吐出特性が得られる。
なお、駆動波形生成部35のうち、高耐圧プロセスで構成する必要のある電源47に接続されて動作する回路はドライバ部43のみである。ドライバ部43以外のその他は低耐圧プロセスで構成できるので、駆動波形生成部35をノズル毎に複数個備えたとしても、液体吐出ヘッド3,14に配置するのに十分なチップサイズの集積回路として実現可能である。元々、従来の液体吐出ヘッド3,14においても各圧電部材112に対して少なくとも1対の双方向スイッチング素子が設けられている。双方向スイッチング素子に流れる電流の向きは双方向であるため、通常少なくとも2つ以上の高耐圧プロセスのトランジスタで構成されている。つまり、本実施形態のようにして各圧電部材に対応した複数の駆動波形生成部を設けたとしても、高耐圧プロセスで構成される領域は大きく変わらない、あるいは小さくできる。したがって、装置の増大、消費電力の増大、コストアップを招くこともない。なお、複数の駆動信号から選択する構成であれば、複数のスイッチング素子が設けられている。
図8は、駆動波形補正部38の構成を示すブロック図である。
駆動波形補正部38は、図8に示すように、第1検出部51、第2検出部52、第1補正情報保持部53、第2補正情報保持部54及び検出結果制御部55から構成される。なお、図では、第1あるいは第2に対応するように各部名称の後に1あるいは2を付している。
第1検出部51は、当該チャンネルnの画像データDnが入力され、時間的干渉を検出するものであり、データ履歴保持部56と、第1干渉パターン保持部57と、第1比較部58とから構成されている。ここで、画像データDn(i)は、ラッチイネーブル信号LENを基準としてi番目のサイクルでの吐出に対応した画像データを示す。
データ履歴保持部56は、例えばシフトレジスタで構成され、当該サイクルのデータを含め、3サイクル前のデータDn(i−3)までの履歴が保持されている。
図9は第1及び第2パターン保持部に保持された複数の干渉パターンを示す図である。第1干渉パターン保持部57には、複数の干渉パターンが予め設定され、当該設定された干渉パターンが保持されている。図9(a)は、この干渉パターンの一例であり、4つの干渉パターンFP1〜FP4が図示されている。それぞれの干渉パターンは4つの比較データE(i),E(i−1),E(i−2),E(1−3)からなり、それぞれ第1比較部58においてDn(i),Dn(i−1),Dn(i−2),Dn(i−3)と比較される。もちろん、干渉パターン数はこの限りではない。
2ビットの画像データDnが、0:吐出なし、1:小滴、2:中滴、3:大滴の吐出を指示するものであるとする。この場合、例えば干渉パターンFP1は、直前のサイクルの画像データDn(i−1)が、0以外の値(1〜3)、すなわち吐出があった場合に検出するパターンである。ここで記号「−」は、Don’t Careを表し、どのようなデータあってもよい、つまり比較をしない。また記号「#」は当該サイクルの画像データの値を表し、任意の値#に対してFP1の干渉パターンとの一致を比較する。比較データE(i)は4ビットのデータであり、画像データDn(i)が、比較データ各ビット(b3,b2,b1,b0)の内、値が1であるビットのいずれかに対応する値であれば、一致と判定する。つまり、「≠0」は、(1,1,1,0)と設定され、Dnが3、2又は1であるとき一致と判定される。これを各々の比較データについて行い、全て一致したとき、その干渉パターンと一致したとみなす。なお、記号「−」は(1,1,1,1)が設定される。
第1比較部58は、データ履歴保持部56に保持されているデータ履歴と第1干渉パターン保持部57に保持されている複数の干渉パターンFP1〜FP4のそれぞれに対して、一致するか否かを比較する。第1比較部58は、いずれかの干渉パターンと一致していれば、当該サイクルの値#と一致した干渉パターンを示す検出結果を出力する。例えば、データ履歴が
(Dn(i),Dn(i−1),Dn(i−2),Dn(i−3))=(3,2,0,1)
であったとき、干渉パターンFP1と一致するので、当該サイクルの値3と干渉パターン番号1を出力する。なお、複数のパターンで一致する場合は、優先順位を決めておき(例えば、パターン番号の若い方を優先)、その優先順位の高い方を検出結果として出力する。
第1補正情報保持部53には、第1検出部51の出力する検出結果にそれぞれ対応した駆動波形の補正情報が保持されており、検出結果に従って、保持している補正情報から選択して時間干渉補正情報として出力する。例えば、#=3でFP1が検出されたとすると、大適用駆動波形情報の補正情報であって干渉パターンFP1に対応した補正情報が出力される。
第2検出部52は、当該チャンネルnの画像データDn及び隣接するチャンネルの画像データDn−1、Dn+1が入力され、空間的干渉を検出するものであり、隣接データ保持部59と、第2干渉パターン保持部60と、第2比較部61とから構成されている。
隣接データ保持部59には、当該チャンネル及び隣接するチャンネルで当該サイクルiの画像データDn(i)、Dn−1(i)、Dn+1(i)が保持されている。
第2干渉パターン保持部60には、複数の干渉パターンが予め設定され、当該設定された干渉パターンが保持されている。図9(b)は、この干渉パターンの一例であり、6つの干渉パターンXP1〜XP6が図示されている。それぞれの干渉パターンは3つの比較データEn−1,En,En+1からなり、それぞれ第2比較部61においてDn−1(i),Dn(i),Dn+1(i)と比較される。もちろん、干渉パターン数はこの限りではない。例えば、干渉パターンXP3は、隣接するチャンネルの画像データDn−1、Dn+1がそれぞれ0と2であった場合に検出するパターンである。なお、左右対称なパターンも一致と判定する、すなわち、画像データDn−1、Dn+1がそれぞれ2と0であった場合も一致とみなす。
また、比較データEnは4ビットのデータであり、画像データDn(i)が、比較データ各ビット(b3,b2,b1,b0)の内、値が1であるビットのいずれかに対応する値であれば、一致と判定する。また、干渉パターンは、隣接する複数のチャンネルの画像データのうち、左右それぞれ何チャンネルのノズルから吐出されるか、すなわち、画像データが0以外のチャンネルがいくつあるか、によって判定されても良い。
第2比較部61は、隣接データ保持部59に保持されている隣接データと第2干渉パターン保持部60に保持されている複数の干渉パターンXP1〜XP6のそれぞれに対して、一致する否かを比較する。いずれかの干渉パターンと一致していれば、第2比較部61は、当該サイクルの値#と一致した干渉パターンを示す検出結果を出力する。例えば、隣接データが
(Dn−1(i),Dn(i),Dn+1(i))=(0,3,2)
であったとき、干渉パターンXP3と一致するので、当該サイクルの値3と干渉パターン番号3を出力する。こちらも複数のパターンで一致する場合は、優先順位を決めておき、その優先順位の高い方を検出結果として出力する。
第2補正情報保持部54は、第2検出部52の出力する検出結果にそれぞれ対応した駆動波形の補正情報が保持されており、検出結果に従って、保持している補正情報から選択して空間干渉補正情報として出力する。例えば、#=3でXP3が検出されたとすると、大適用駆動波形情報の補正情報であって干渉パターンXP3に対応した補正情報が出力される。
検出結果制御部55には、第1検出部51及び第2検出部52から出力される検出結果のうち、一方を有効、他方を無効、あるいは双方有効/無効かを決定する検出結果の優先条件が保持されている。検出結果制御部55は、この優先条件に従ってそれぞれの検出結果を変更する、あるいは、有効/無効信号を出力する。例えば、第1検出部51及び第2検出部52の双方からいずれかの干渉パターンと一致したという検出結果が出力されたとする。この場合、第1検出部51からの検出結果を優先するという優先条件が設定されていれば、第1検出部51の検出結果を有効とし、第2検出部52の検出結果を無効とする処理がなされる。有効と処理されると、補正情報保持部から対応する補正情報が出力され、無効と処理されれば補正情報は出力されない。なお、双方とも無効としてもよいし、双方とも有効としても良い。双方とも有効とした場合は、補正情報が2つ出力されるので、この加算値が最終的な補正情報となる。また、第1検出部51及び第2検出部52の干渉パターンの組み合わせ毎に優先条件を設定するものであっても良い。
本実施形態では、時間的及び空間的の双方の干渉を補正する形態として説明したが、採用する液体吐出ヘッド3や使用する液体(例えば、インク)によっては、一方の影響が無視できるほど小さい場合もある。このときは、影響の大きい一方の干渉のみを補正する形態であっても良い。すなわち、駆動波形補正部38が、第1検出部51と第1補正情報保持部53とから、あるいは、第2検出部52と第2補正情報保持部54とから構成されるものであっても良い。
図10は、ヘッド駆動部の動作を説明するための主要信号のタイミングチャートである。
本実施形態に係る液体吐出ヘッド3,14は、所定の印字周期Tで液体を吐出する。印字周期Tは記録媒体10の搬送速度と各ノズル列の搬送方向の印字解像度によって決まる。
図10において、(a)は転送クロックSCKであり、これに同期して(b)画像データSDIがシリアルに入力される。このヘッド駆動部31で駆動するN個のノズルから吐出するN個の画像データが、1印字周期T内に転送されるように転送クロックSCKの周期が決まっている。ここではD1から順次シリアルに転送されているが逆順であってもよい。
(c)はラッチイネーブル信号であり、LENの立ち上がりのタイミングで、前サイクルでシリアル転送された画像データがラッチされる。(d)Dnはそのうちの1つを示し、同じタイミングでD1〜DNもラッチされる。
図10において時刻(i)では前サイクルで転送されたデータが(ここでは大滴の吐出を示す11が)、時刻(ii)では(i)〜(ii)のサイクルで転送されたデータが(ここでは小滴の吐出を示す01が)、それぞれラッチされる。また、本実施形態においてラッチイネーブル信号LENは後述する駆動波形生成の開始基準にもなっているので、LENの周期は印字周期Tである。なお、LENと駆動波形生成の開始基準を示す信号は個別に入力されるものであっても良いし、駆動波形情報の参照時間や補正情報を生成するための演算時間を考慮して、LENを所定量遅延させて生成した信号であっても良い。
以下はnチャンネル目の圧電部材112−nを駆動するための駆動波形生成部35−nを例にとって説明するが、他のチャンネルも同様である。
(e)は、駆動波形生成部35−nで生成する駆動波形の情報を表す駆動波形情報の一部である。(f)は圧電部材112−nに印加されている駆動電圧Vpである。駆動電圧Vpは、通常、基準の電位Veに保たれており、駆動波形生成部35−nに備えられたドライバにより、圧電部材112−nが充放電されることにより駆動電圧Vpが変位する。またドライバがアクティブでないときはその前の電位が保持される。厳密には圧電部材112−nの両端にかかる絶縁抵抗成分などにより自然放電していくが、印字周期に対しては無視できる程度である。
駆動波形生成部35−nは、駆動波形を生成する。例えば、(i)〜(ii)のサイクルにおいて、駆動波形生成部35−nでは大滴吐出用の駆動波形を生成する。大滴吐出時には図に示すような3発のパルスが連なった駆動波形で駆動する。そして、それぞれのパルスで吐出される滴が飛翔中に合体し、かつ所望の着弾位置でかつ所望の滴量吐出するように値が決められる。すなわち、パルスの間隔ti*、パルス幅pw*、パルス波高値V*、立ち下がり時間tf*、立ち上がり時間tr*(ただし、*は順序を表す数字)がそれぞれ決められている。また、それぞれ所望値となるように制御されなければならない。これらが駆動波形情報として駆動波形情報保持部37に保持されている。
また、前述した時間的干渉及び空間的干渉の影響により変動する吐出特性(吐出速度、液体滴量(たとえばインク滴量)、吐出安定性など)の変動分を抑制するように、駆動波形を補正するための補正情報が駆動波形補正部38において生成される。そして、この補正情報を駆動波形情報に加算したものが当該チャンネル、当該サイクルにおける駆動波形となる。
図11は補正情報を加算した後の駆動波形の一例を示す図である。同図において、Δを付した記号が補正情報である。すなわち、これらの補正情報Δにより、パルス波高値V、パルス間隔ti、パルス幅pwなどの駆動波形が調整され、時間的干渉及び空間的干渉の影響を抑制して、それぞれ所望の吐出特性となるように制御される。例えば、各パルスの波高値Vを調整したり、パルス間隔tiあるいはパルス幅pwを調整したりすることにより吐出特性の変動分を抑制することができる。
なお、吐出する液体の液体温度(例えばインク温度)によって吐出特性は変わるので、液体温度別に駆動波形は準備されており、液体温度に応じて駆動波形情報保持部に保持される情報が更新される。あるいは予め全温度範囲の情報が保持されており、コントローラ32から制御部36を介してインク温度が伝えられ、各駆動波形生成部35が参照する情報が切り替えられる。同様に補正情報も液体温度に応じて情報が更新される。
(ii)〜(iii)のサイクルでは、駆動波形生成部35−nでは小滴吐出用の駆動波形を生成する。小滴用の駆動波形は例えば図示するような1発のパルスで構成される。このサイクルでは、ラッチされた画像データDnの値(=01)に基づき小滴用の駆動波形情報が参照される。これに補正情報を加算して、このサイクルでの駆動波形情報を生成し、後は上述と同様にして駆動波形を生成する。
(iii)〜(iv)のサイクルでは、ラッチされた画像データDnは吐出なし(=00)であり、通常、インクの乾燥や液詰まりなどを防ぐ目的で、ノズルから滴が吐出しない程度の振動を与える(これを微駆動又は揺動と称す。)。ここでも微駆動用の駆動波形情報を参照し、同様にして駆動波形を生成する。微駆動の場合は、吐出自体がないので補正情報を加算しなくても影響のない場合が多い。このような、影響の少ない補正情報については、干渉パターンと保持する補正情報を省いて、設定し、保持する情報量を減らすようにしても良い。
なお、駆動波形情報は、液体吐出ヘッド3,14、及び画像形成装置1の設計時に、使用する液体(インク)の特性に適合するように駆動波形が設計され、画像形成装置1内、例えばコントローラ32のプログラム格納ROMや不揮発性メモリに記憶される。そして、装置の立ち上げ時に駆動波形情報保持部37に設定される。
同様に、それぞれの干渉パターンと、それに対応する補正情報及び検出結果の優先条件も、予め実験などにより吐出特性(吐出速度、液体(インク)滴量、吐出安定性など)がほぼ所望となるように決定され画像形成装置1内に記憶される。画像形成装置1の立ち上げ時に、この値が制御部36を介して各保持部に設定される。
また、装置内環境(温度など)や印刷条件(印刷速度)などが変われば、駆動波形情報が変更されるので、これに併せて、それぞれの干渉パターンとそれに対応する補正情報及び検出結果の優先条件も、制御部36を介して更新される。
また、印刷動作中に駆動波形情報が変更される際には、対応する補正情報なども同時に切り替わることが望ましい。これにはそれぞれの情報の保持部は同じ情報を保持できる少なくとも2つの保持部を有しておく。印刷動作中には、一方の保持部に保持された情報が参照され、他方の保持部には制御部を介して新たな情報が書き込まれるようにする。そして、新たな情報を全て書き込み終えた段階で、一斉に参照する情報を新たな情報の書き込まれた保持部に変更するようにすると良い。そして古い情報が保持されている保持部に次の情報を書き込むようにすれば、印刷動作を停止することなく全ての情報を同時に新しい情報に更新することができる。
なお、本実施形態に係る液体吐出装置は、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置である。液体吐出装置は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置である。液体吐出装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
また、液体吐出装置は、本実施形態では、画像形成装置のように液体吐出ヘッド3,14から液体を吐出して記録媒体に画像を形成するように構成された記録装置(プリンタ)であるとしている。その他、液体吐出装置には、立体造形装置、処理液塗布装置及び噴射造粒装置が含まれてもよい。立体造形装置とは、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる装置であり、3次元造形装置とも称される。
また、液体吐出装置は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
なお、前述した液体が付着可能なものとは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子(圧電部材)などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着する全てのものが含まれる。液体が付着可能なものの材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
また、液体吐出装置は、液体吐出ヘッド3,14と液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッド14を移動させるシリアル型装置(実施例2)、液体吐出ヘッド3を移動させないライン型装置(実施例1)などが含まれる。
また、液体吐出装置としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置であってもよい。また液体吐出装置として、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などでもよい。
さらに、液体吐出装置は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
図12は、液体吐出ヘッドと当該ヘッドに液体を補給する液体吐出ユニットの参考例を示す図である。図12は図5に示したシリアル方式の液体吐出装置を側面から見た図に相当する。キャリッジ13には、液体吐出ヘッド14とヘッドタンク15が搭載され、キャリッジ13はガイドロッド12(ガイドロッド11は不図示)に、紙面に対して垂直な方向に移動可能に支持されている。ヘッドタンク15は液体吐出ヘッド14に吐出する液体を供給するもので、本実施形態では、例えばYMCKの4色のインクがそれぞれ、液体吐出ヘッド14毎に搭載されている。
キャリッジ13は、図5では記録媒体10の上方に位置しているが、記録媒体10は例えば図12に示す搬送ベルト18に吸着された状態で搬送される。搬送ベルト18は、搬送ローラ17aとテンションローラ17bの間に所定圧で張設され、搬送ベルト18と記録媒体10は、搬送ローラ17aの回転に従って搬送される。搬送機構及びキャリッジの移動機構などは公知の技術なので、説明は省略する。
本実施形態によれば、ノズル104各々に対応した複数の駆動波形生成部35−1〜nを備えている。また該ノズルの任意タイミングの吐出時に生じる干渉(たとえば、先の吐出の残留振動や隣接ノズルからのクロストーク)の影響による液体滴量(たとえばインク滴量)や着弾位置の変動を補正するように、当該チャンネルのデータ履歴や隣接チャンネルのデータに応じて駆動波形の補正情報が生成される。そして、対応した駆動波形生成部35で補正情報に応じて調整された駆動波形が生成される。これにより、それぞれのノズルから吐出される液体滴量(たとえばインク滴量)や着弾位置が所望の状態になり、画像品質の劣化を抑制することができる。
なお、従来は複数種類の液滴(インク滴)を吐出させる複数の駆動波形要素を組み合わせた1つの共通駆動波形を用い、各圧電部材に対して必要な波形部分をスイッチング素子によって選択的に印加する方式である共通駆動波形方式を採用していた。本実施形態では、従来の共通駆動波形方式と異なり、複数種類の液体(インク滴)を吐出するための駆動波形を液体(インク滴)の種類毎(例えば大滴、中滴、小滴毎)に設定し、駆動できる。そのため、液体の種類(インク滴種類)毎に駆動波形を最適化することが可能となり、より好ましい吐出特性に設定することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、次のような効果を奏する。なお、以下の説明では、特許請求の範囲における各構成要素と本実施形態の各部とを対応させ、用語が異なる場合には、後者をかっこ書きで示す。
(1) 本実施形態に係るヘッド駆動装置は、複数のノズル104と、前記複数のノズル104に対応して設けられた複数の圧力発生素子112を有する液体吐出ヘッド3,14を駆動するヘッド駆動装置(ヘッド駆動部31)において、前記ノズル104から吐出される液体の吐出特性を定める駆動波形情報を前記ノズル104において発生する干渉による吐出特性の変動を表す干渉パターンFP1〜FP4、XP1〜XP6に基づいて補正する駆動波形補正手段(駆動波形補正部38)を備えたので、時間的干渉及び/又は空間的干渉の影響によって生じる吐出液体の滴量及び/又は着弾位置の変化を精度よく補正し、画像品質の劣化を抑制することができる。
(2) (1)に係るヘッド駆動装置において、前記駆動波形補正手段(駆動波形補正部38)が、前記ノズル104の吐出履歴を保持する吐出履歴保持部(データ履歴保持部56)と、前記干渉パターンFP1〜FP4を保持する第1干渉パターン保持部57と、前記吐出履歴と前記干渉パターンFP1〜FP4とをそれぞれ比較し、一致したかを示す比較結果を出力する第1比較部58と、前記干渉パターンFP1〜FP4に対応付けて保持している駆動波形を補正する駆動波形補正情報を、前記比較結果に応じて選択し出力する第1補正情報保持部53と、を備え、前記干渉パターンFP1〜FP4は、時間的干渉の影響を及ぼすノズル104の吐出履歴に基づくパターンであるので、時間的干渉の影響によって生じる吐出液体の滴量及び/又は着弾位置の変化を精度よく補正し、画像品質の劣化を抑制することができる。なお、複数の干渉パターンと、当該干渉パターンに対応付けて保持している前記補正情報は、複数でなく単数でもよく、その場合でも補正情報を選択すると表現する。
(3) (1)に係るヘッド駆動装置において、前記駆動波形補正手段(駆動波形補正部38)は、対応する前記ノズル104に隣接する複数のノズル104の吐出状態を表すデータを保持する隣接データ保持部59と、複数の干渉パターンXP1〜XP6を保持する第2干渉パターン保持部60と、前記隣接データと前記干渉パターンXP1〜XP6とをそれぞれ比較し、一致したかを示す比較結果を出力する第2比較部61と、前記干渉パターンXP1〜XP6に対応付けて保持している駆動波形を補正する駆動波形補正情報を、前記比較結果に応じて選択し出力する第2補正情報保持部54と、を備え、前記干渉パターンXP1〜XP6は、空間的干渉の影響を及ぼす隣接ノズル104からの吐出状態を示すパターンであるので、空間的干渉の影響によって生じる吐出液体の滴量及び/又は着弾位置の変化を精度よく補正し、画像品質の劣化を抑制することができる。
(4) (1)に係るヘッド駆動装置において、前記駆動波形補正手段(駆動波形補正部38)は、前記ノズル104の吐出履歴を保持する吐出履歴保持部(データ履歴保持部56)と、複数の第1干渉パターンFP1〜FP4を保持する第1干渉パターン保持部57と、前記吐出履歴と前記複数の第1干渉パターンFP1〜FP4とをそれぞれ比較し、いずれの干渉パターンに一致したかを示す比較結果を出力する第1比較部58と、前記第1干渉パターンFP1〜FP4に対応付けて保持している駆動波形を補正する駆動波形補正情報を、前記比較結果に従って選択して出力する第1補正情報保持部53と、対応するノズル104に隣接する複数のノズル104の吐出状態を表すデータを保持する隣接データ保持部59と、複数の第2干渉パターンXP1〜XP6を保持する第2干渉パターン保持部60と、前記隣接データと前記複数の第2干渉パターンXP1〜XP6とをそれぞれ比較し、いずれの干渉パターンに一致したかを示す比較結果を出力する第2比較部61と、前記第2干渉パターンXP1〜XP6に対応付けて保持している補正情報を、前記比較結果に従って選択して出力する第2補正情報保持部54と、を備え、前記第1干渉パターンFP1〜PF4は時間的干渉の影響を及ぼす吐出履歴を示すパターンであって、前記第2干渉パターンXP1〜XP6は空間的干渉の影響を及ぼす隣接ノズル104からの吐出状態を示すパターンであるので、時間的干渉及び空間的干渉の影響によって生じる吐出液体の滴量及び/又は着弾位置の変化を精度よく補正し、画像品質の劣化を抑制することができる。
(5) (4)に係るヘッド駆動装置において、前記駆動波形補正手段(駆動波形補正部38)は、予め設定される優先条件に従って、前記第1比較部58及び前記第2比較部61のそれぞれの比較結果が有効か無効かを決定する比較結果制御部(検出結果制御部55)を備え、無効となった比較結果に対しては、対応する補正情報を出力しないので、予め設定される優先条件に基づいて時間干渉補正情報を優先するか、空間干渉補正情報を優先するかが設定され、優先する干渉補正情報に基づいた吐出液体の滴量及び/又は着弾位置の変化の補正が可能となる。
(6) (1)ないし(5)のいずれかに係るヘッド駆動装置において、前記駆動波形情報は吐出される液滴の大きさに応じた複数の駆動波形情報であって、前記補正情報は吐出される液滴の大きさに応じて設定され、前記干渉パターンFP1〜FP4、XP1〜XP6は吐出される液滴の大きさの情報を含んだパターンであり、前記駆動波形補正手段(駆動波形補正部38)は、対応するノズル104が吐出する液滴の大きさに応じて前記複数の駆動波形情報の中から選択された駆動波形情報と前記補正情報とを参照して前記駆動波形情報を補正するので、液滴の大きさに対応した駆動波形情報の補正が可能となる。
(7) (1)ないし(6)のいずれかに係るヘッド駆動装置において、前記駆動波形情報、前記干渉パターン及び前記補正情報を同期して更新する更新手段(制御部36)を備えたので、これらの情報が同期して更新され、その結果、液体の吐出動作を停止することなく全ての情報を更新することができる。
(8) (1)ないし(7)のいずれかに係るヘッド駆動装置と、前記ヘッド駆動装置によって駆動される液体吐出ヘッド3,14と、を備えたので、液滴吐出ヘッドを駆動することにより、前記(1)から(7)に示した効果を奏することができる。
(9) (1)ないし(7)のいずれかに係るヘッド駆動装置を液体吐出装置(画像形成装置1)が備えたので、当該液体吐出装置は、前記(1)から(7)に示した効果を奏することができる。
(10) (8)に記載の液体吐出ヘッドユニット39を液体吐出装置(画像形成装置1)が備えたので、当該液体吐出装置は、前記(1)から(7)に示した効果を奏することができる。
さらに、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。