上記の目的を達成するために、本発明の第1のレーザ加工条件設定装置は、加工対象物の3次元状の加工面に対して、レーザ光の焦点距離を調整可能なレーザ光走査系で所定の加工パターンにレーザ光を走査させて加工可能なレーザ加工装置について、レーザ光の出力及び/又は走査速度を含む加工条件を設定するためのレーザ加工条件設定装置であって、レーザ光の出力及び/又は走査速度に加えて、少なくともレーザ光の焦点距離を加工パラメータとして含む加工条件の内、少なくともレーザ光の焦点距離を所定の範囲で指定可能な加工条件設定手段と、加工条件設定手段により範囲で指定された加工パラメータを、指定された範囲内で変化させた複数の加工条件の組を生成する複数加工条件生成手段と、複数加工条件生成手段で生成された複数の加工条件の組に従い、レーザ光の焦点距離を連続的又は離散的に変化させた各加工条件でレーザ光を加工対象物に照射して所定のパターンに加工させると共に、各加工条件毎にレーザ光走査系により二次元的な走査が可能な同一の作業領域内における位置に加工することで、焦点距離を加工位置に応じて変化させたテスト加工パターンを生成するテスト加工パターン生成手段と、テスト加工パターン生成手段で生成されたテスト加工パターンから、所望の加工位置を選択するよう促すことで、該選択された加工位置において採用された加工条件を抽出し、これを加工条件として再設定可能な加工条件選択手段とを備える。これにより、レーザ光の焦点距離を調整可能なレーザ加工装置において、焦点距離を変化させて加工したテスト加工パターンの各位置を対比しながら、所望の加工が得られている位置を選択することで、所望の加工条件に容易に再設定できる。
また、本発明の第2のレーザ加工条件設定装置は、加工条件選択手段で、少なくともレーザ光の焦点距離の範囲を再設定し、新たな加工条件として加工条件設定手段に設定すると共に、複数加工条件生成手段で複数の加工条件をさらに生成し、これに基づいてテスト加工パターン生成手段がテスト加工パターンを生成するよう構成している。これにより、テスト加工パターンに基づいてさらにレーザ光の焦点距離の範囲を適切な条件に再設定し、より正確な範囲でテスト加工パターンを再度生成して焦点距離を確認できる。
さらに、本発明の第3のレーザ加工条件設定装置は、さらに、加工条件選択手段で選択された加工位置に該当する加工条件が確定されると、所定の出力先に出力可能な加工条件出力手段を備える。これにより、テスト加工パターンに基づいて特定されたレーザ光の焦点位置等を出力して利用することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するためのレーザ加工条件設定装置、レーザ加工条件設定方法、レーザ加工条件設定プログラム、コンピュータで読み取り可能な記録媒体及び記録した機器並びにレーザ加工システムを例示するものであって、本発明はレーザ加工条件設定装置、レーザ加工条件設定方法、レーザ加工条件設定プログラム、コンピュータで読み取り可能な記録媒体及び記録した機器並びにレーザ加工システムを以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
本明細書においてレーザ加工装置とこれに接続される操作、制御、入出力、表示、その他の処理等のためのコンピュータ、プリンタ、外部記憶装置その他の周辺機器との接続は、例えばIEEE1394、RS−232x、RS−422、RS−423、RS−485、USB等のシリアル接続、パラレル接続、あるいは10BASE−T、100BASE−TX、1000BASE−T等のネットワークを介して電気的に接続して通信を行う。接続は有線を使った物理的な接続に限られず、IEEE802.1x、OFDM方式等の無線LANやBluetooth等の電波、赤外線、光通信等を利用した無線接続等でもよい。さらに観察像のデータ保存や設定の保存等を行うための記録媒体には、メモリカードや磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が利用できる。
以下の実施の形態では、本発明を具現化したレーザ加工装置の一例として、レーザマーカについて説明する。ただ、本明細書においてレーザ加工装置は、その名称に拘わらずレーザ応用機器一般に利用でき、例えばレーザ発振器や各種のレーザ加工装置、穴あけ、マーキング、トリミング、スクライビング、表面処理などのレーザ加工や、レーザ光源として他のレーザ応用分野、例えばDVDやBlu−ray等の光ディスクの高密度記録再生用光源や通信用の光源、印刷機器、照明用光源、ディスプレイなどの表示装置用の光源、医療機器等において、好適に利用できる。また、本明細書においては加工の代表例として印字について説明するが、印字とは文字や記号、図形などのマーキングの他、上述した各種の加工も含む概念で使用する。さらに本明細書において印字文字列や印字パターンとは、ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベットや数字、記号、絵文字、アイコン、ロゴ、バーコードや2次元コード等のグラフィック等も含める意味で使用する。
図1はレーザ加工装置100を構成するブロック図を示す。この図に示すレーザ加工装置100は、レーザ制御部1とレーザ出力部2と入力部3とを備える。
(入力部3)
入力部3はレーザ制御部1に接続され、レーザ加工装置を操作するための必要な設定を入力してレーザ制御部1に送信する。設定内容はレーザ加工装置の動作条件や具体的な印字内容等である。入力部3はキーボードやマウス、コンソール等の入力デバイスである。また、入力部3で入力された入力情報を確認したり、レーザ制御部1の状態等を表示する表示部を別途設けることもできる(図1に図示せず)。表示部はLCDやブラウン管等のモニタであり、タッチパネル方式として入力部と表示部を兼用することもできる。これによって、コンピュータなどを外部接続することなく入力部でレーザ加工装置の必要な設定を行うことができる。
(レーザ制御部1)
レーザ制御部1は、制御部4とメモリ部5とレーザ励起部6と電源7とを備える。入力部3から入力された設定内容をメモリ部5に記録する。制御部4は必要時にメモリから設定内容を読み込み、印字内容に応じた印字信号に基づいてレーザ励起部6を動作させてレーザ出力部2のレーザ媒質8を励起する。メモリ部5はRAMやROM等の半導体メモリが利用できる。またメモリ部5はレーザ制御部1に内蔵する他、挿抜可能なPCカードやSDカード等の半導体メモリカード、カード型ハードディスクなどのメモリカードを利用することもできる。メモリカードで構成されるメモリ部5は、コンピュータ等の外部機器で容易に書き換え可能であり、コンピュータで設定した内容をメモリカードに書き込み、レーザ制御部1にセットすることで、入力部をレーザ制御部に接続することなく設定を行うことができる。特に半導体メモリはデータの読み込み・書き込みが高速で、しかも機械的動作部分がないため振動等に強く、ハードディスクのようなクラッシュによるデータ消失事故を防止できる。
さらに制御部4は、設定された印字を行うようレーザ媒質8で発振されたレーザ光Lを印字対象物(ワーク)W上で走査させるため、レーザ出力部2の走査部9を動作させる走査信号を走査部9に出力する。電源7は、定電圧電源として、レーザ励起部6へ所定電圧を印加する。印字動作を制御する印字信号は、そのHIGH/LOWに応じてレーザ光LのON/OFFが切り替えられ、その1パルスが発振されるレーザ光Lの1パルスに対応するPWM信号である。PWM信号は、その周波数に応じたデューティ比に基づいてレーザ強度が定められるが、周波数に基づいた走査速度によってもレーザ強度が変化するよう構成することもできる。
(レーザ励起部6)
レーザ励起部6は、光学的に接合されたレーザ励起光源10とレーザ励起光源集光部11を備える。レーザ励起部6の内部の一例を図4の斜視図に示す。この図に示すレーザ励起部6は、レーザ励起光源10とレーザ励起光源集光部11をレーザ励起部ケーシング12内に固定している。レーザ励起部ケーシングは、熱伝導性の良い真鍮などの金属で構成され、レーザ励起光源10を効率よく外部に放熱する。レーザ励起光源10は半導体レーザやランプ等で構成される。図4の例では、複数の半導体レーザダイオード素子を直線状に並べたレーザダイオードアレイを使用しており、各素子からのレーザ発振がライン状に出力される。レーザ発振はレーザ励起光源集光部11の入射面に入射されて、出射面から集光されたレーザ励起光として出力される。レーザ励起光源集光部11はフォーカシングレンズ等で構成される。レーザ励起光源集光部11からのレーザ励起光は光ファイバケーブル13等によりレーザ出力部2のレーザ媒質8に入射される。レーザ励起光源10とレーザ励起光源集光部11、光ファイバケーブル13は、空間あるいは光ファイバを介して光学的に結合されている。
(レーザ出力部2)
レーザ出力部2は、レーザ発振部50を備える。レーザ光Lを発生させるレーザ発振部50は、レーザ媒質8と、レーザ媒質8が放出する誘導放出光の光路に沿って所定の距離を隔てて対向配置された出力ミラー及び全反射ミラーと、これらの間に配されたアパーチャ、Qスイッチ等を備える。レーザ媒質8が放出する誘導放出光を、出力ミラーと全反射ミラーとの間での多重反射により増幅し、Qスイッチの動作により短周期にて通断しつつアパーチャによりモード選別して、出力ミラーを経てレーザ光Lを出力する。図1に示すレーザ出力部2は、レーザ媒質8と走査部9を備える。レーザ媒質8は光ファイバケーブル13を介してレーザ励起部6から入射されるレーザ励起光で励起されて、レーザ発振される。レーザ媒質8はロッド状の一方の端面からレーザ励起光を入力して励起され、他方の端面からレーザ光Lを出射する、いわゆるエンドポンピングによる励起方式を採用している。
(レーザ媒質8)
上記の例では、レーザ媒質8としてロッド状のNd:YVO4の固体レーザ媒質を用いた。また固体レーザ媒質の励起用半導体レーザの波長は、このNd:YVO4の吸収スペクトルの中心波長である809nmに設定した。ただ、この例に限られず他の固体レーザ媒質として、例えば希土類をドープしたYAG、LiSrF、LiCaF、YLF、NAB、KNP、LNP、NYAB、NPP、GGG等も用いることもできる。また、固体レーザ媒質に波長変換素子を組み合わせて、出力されるレーザ光Lの波長を任意の波長に変換できる。
さらに、固体レーザ媒質を使用せず、言い換えるとレーザ光を発振させる共振器を構成せず、波長変換のみを行う波長変換素子を使用することもできる。この場合は、半導体レーザの出力光に対して波長変換を行う。波長変換素子としては、例えばKTP(KTiPO4)、有機非線形光学材料や他の無機非線形光学材料、例えばKN(KNbO3)、KAP(KAsPO4)、BBO、LBOや、バルク型の分極反転素子(LiNbO3(Periodically Polled Lithium Niobate :PPLN)、LiTaO3等)が利用できる。また、Ho、Er、Tm、Sm、Nd等の希土類をドープしたフッ化物ファイバを用いたアップコンバージョンによるレーザの励起光源用半導体レーザを用いることもできる。このように、本実施の形態においてはレーザ発生源として様々なタイプを適宜利用できる。
さらにまた、レーザ発振部は、固体レーザに限られず、CO2やヘリウム−ネオン、アルゴン、窒素等の気体を媒質として用いる気体レーザを利用することもできる。例えば炭酸ガスレーザを用いた場合のレーザ発振部は、レーザ発振部の内部に炭酸ガス(CO2)が充填され、電極を内蔵しており、レーザ制御部から与えられる印字信号に基づいて、レーザ発振部内の炭酸ガスを励起し、レーザ発振させる。
(走査系)
次に、レーザ加工装置のレーザ光走査系を図5、図6、図7に示す。これらの図において、図5はレーザ加工装置のレーザ光走査系の構成を示す斜視図を、図6は図5を逆方向から見た斜視図を、図7は側面図を、それぞれ示している。これらの図に示すレーザ加工装置は、レーザ光Lを発生させるレーザ発振部と光路を一致させたZ軸スキャナを内蔵するビームエキスパンダ53と、X軸スキャナ14aと、X軸スキャナ14aと直交するよう配置されたY軸スキャナ14bとを備える。このレーザ光走査系は、レーザ発振部より出射されるレーザ光LをX軸スキャナ14a、Y軸スキャナ14bで作業領域WS内で2次元的に走査させ、さらにZ軸スキャナ14cで高さ方向にワーキングディスタンスすなわち焦点距離を調整することができ、3次元状に印字加工が可能となる。なお図において集光レンズであるfθレンズは図示を省略している。
各スキャナは、光を反射する反射面として全反射ミラーであるガルバノミラーと、ガルバノミラーを回動軸に固定して回動するためのガルバノモータと、回動軸の回転位置を検出して位置信号として出力する位置検出部を備える。またスキャナは、スキャナを駆動するスキャナ駆動部に接続される。スキャナ駆動部はスキャナ制御部に接続され、スキャナを制御する制御信号をスキャナ制御部から受けて、これに基づいてスキャナを駆動する。例えばスキャナ駆動部は、制御信号に基づいてスキャナを駆動する駆動電流を調整する。またスキャナ駆動部は、制御信号に対する各スキャナの回転角の時間変化を調整する調整機構を備える。調整機構は、スキャナ駆動部の各パラメータを調整する可変抵抗等の半導体部品で構成される。
(ディスタンスポインタ)
さらにレーザ光走査系は、ディスタンスポインタとして、ガイド用光源60と、ガイド光光学系の一形態としてハーフミラー62を備えると共に、ポインタ光調整系として、ポインタ光Pを照射するためのポインタ用光源64と、Y軸スキャナ14bの裏面に形成された第3のミラーとしてポインタ用スキャナミラー14dと、ポインタ用スキャナミラー14dで反射されたポインタ用光源64からのポインタ光Pをさらに反射させて焦点位置に向かって照射する固定ミラー66とを備えている。このディスタンスポインタは、後述するようにガイド光Gで描画されるガイドパターンGPの中心にポインタ光Pを照射するよう調整することで、レーザ光Lの焦点位置が指示される。
(Z軸スキャナ14cの動作)
近年、2次元平面内で走査可能なレーザ加工装置のみならず、高さ方向に焦点距離を調整可能な、すなわち3次元状に加工が可能なレーザ加工装置も開発されている。しかしながら従来の3次元に印字可能なレーザマーカは、あくまでも2次元の平面印字の高さレベルを段階的に変更できるにすぎなかった。すなわち、曲面や傾斜面に印字できるレーザマーカは存在しなかった。一方で、缶のような曲面にも高品質に印字加工できるレーザマーカが要求されていた。そこで、本発明者らはX軸スキャナ、Y軸スキャナに加えて、焦点可変光学系としてZ軸スキャナを設けることで焦点位置を調整可能とし、これによってワークの表面形状に沿って3次元状に加工可能なレーザ加工装置を実現した。
Z軸スキャナ14cはレーザ光Lのスポット径を調整し、これによって焦点距離を調整するビームエキスパンダ53を構成している。ビームエキスパンダ53は、小スポットへの集光を効果的に行わせるため、図5に示すようにガルバノミラーの前段に配置され、レーザ発振部から出力されるレーザ光Lのビーム径を調整すると共に、レーザ光Lの焦点位置を調整可能としている。Z軸スキャナ14cがワーキングディスタンスを調整する方法を、図8〜図10に基づいて説明する。図8、図9はレーザ光走査系の側面図であり、図8はレーザ光Lの焦点距離を長くする場合、図9は焦点距離を短くする場合をそれぞれ示している。また図10はZ軸スキャナ14cの正面図及び断面図を示している。これらの図に示すように、Z軸スキャナ14cはレーザ発振部側に面する入射レンズ16と、レーザ出射側に面する出射レンズ18を含んでおり、これらのレンズ間の距離を相対的に変化可能としている。図8〜図10の例では、出射レンズ18を固定し、入射レンズ16を光軸方向に沿って駆動モータなどで摺動可能としている。図10は出射レンズ18の図示を省略して、入射レンズ16の駆動機構を示している。コイルと磁石によって軸方向に可動子を摺動可能とし、可動子に入射レンズ16を固定している。ただ、入射レンズ側を固定して出射レンズ側を移動可能としたり、入射レンズ、出射レンズを共に移動可能とすることもできる。
図8に示すように、入射レンズ16と出射レンズ18との間の距離を近付けると、焦点位置が遠ざかり、焦点距離(ワーキングディスタンス)が大きくなる。逆に図9に示すように入射レンズ16と出射レンズ18との距離を離すと、焦点位置が近付き焦点距離が小さくなる。
(焦点補正機能)
このようにして、ワーキングディスタンスを調整してレーザ光Lを走査することが可能で、3次元状に走査可能なレーザ加工装置が実現され、曲面状や段差状のワークW表面にも焦点距離を合わせた状態で高精度に印字加工できる。この様子を図11に基づいて説明すると、従来のレーザ加工装置では、図11において実線で示すようにレーザ光Lの焦点位置が固定されているため、印字加工可能な作業領域WSの中心位置で焦点を合わせるようにワークWを設置しても、レーザ光Lを走査させると中心から離れるほど焦点とワークWとのずれが大きくなり(図11右に示すレーザ光L’)、印字品質が安定しないという問題があった。具体的には図12(a)に示すように、作業領域WS(印字可能エリア)中の印字位置に応じて印字の幅が異なってしまう。すなわち、作業領域WSの中心近傍では、焦点位置がほぼワーキングディスタンスとほぼ等しいため印字幅の狭い高品質な印字加工が可能である反面、作業領域WSの周辺近傍になるほど印字幅が太くなって印字品質が低下してしまう。
これに対して、本実施の形態に係るレーザ加工装置では、上述の通りZ軸スキャナ14cで焦点位置を調整可能な焦点補正機能を備えているため、図11の左側において破線Lで示すように印字可能エリアのどの位置においてもレーザ光Lの焦点位置を調整でき、最小スポットでの印字加工が可能となる結果、図12(b)に示すように印字位置によらず印字の線幅変化を抑制した高品質な印字加工を可能としている。
このように、印字可能エリアのどの位置でも最小スポットで印字でき、パレット印字や大型銘板の捺印などの作業において、印字品質を高品質に安定して得ることができる。また加工用途で使用する場合も、加工状態を均一に維持することができる。この結果、ワークWの形状によらず、均一な加工を行うことができ、例えば図13(a)に示すように段差のあるワークWや、図13(b)に示すようにワークW表面が曲面状であっても、また図13(c)に示すように傾斜していても、均一で高品質な加工を行うことができる。このように焦点補正機能によってワークWの多様な形状に対して最適な印字が可能となり、さらに奥行きのあるゲートカットのような加工においても精度よく、綺麗な仕上げを行える。
さらに本実施の形態によれば、レーザマーカのレーザ出力部を構成するマーキングヘッド150から照射されるレーザ光Lの作業領域WSを広く取りつつ、領域内での精密な加工が可能となる。図14(a)に示すように、従来のレーザ加工装置では作業領域WS内の加工位置に応じて焦点位置の変化が大きいため、作業領域WSを大きくする程この変化も大きくなり、レーザ光L’の焦点位置が加工位置から離れてしまうため、作業領域WSの広域化にも不適であった。これに対して本実施の形態に係るレーザ加工装置では、図14(b)に示すように作業領域WSを広くしても、各位置に応じて焦点位置を調整可能であるため、作業領域WSを従来よりも広く取りつつ、スポット径を安定させて加工品質も確保できるという優れた特長を備える。
(設置支援機能)
さらに本実施の形態に係るレーザ加工装置によれば、設置時や段取り替えの際の位置決め作業をも簡略化できる。図15(a)に、従来のレーザ加工装置のマーキングヘッド150を設置する例、図15(b)に本実施の形態に係るレーザ加工装置のマーキングヘッド150を設置する例を、それぞれ示す。従来のレーザ加工装置のマーキングヘッド150は、レーザ光L’の焦点位置が固定されているため、ワークとマーキングヘッド150との間のワーキングディスタンスと焦点位置とが合致するよう、図15(a)に示すようにマーキングヘッド150自体の設置高さを調整する調整機構160が必要となり、また調整作業に非常に手間がかかっていた。例えばマーキングヘッドが微妙に傾いている場合、加工精度を高めるためにネジ調整などで水平に補正し、必ず焦点位置と一致するように調整しなければならない。このために、各マーキングヘッド150毎に設置高さを微調整するための上下機構が必要となり、しかも調整作業を要し、設置機構が複雑になる上、極めて煩雑な作業を強いられていた。
これに対して、本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置によれば、図15(b)に示すようにレーザ光Lの焦点位置を調整可能であるため、レーザ加工装置を設置する設置台170は、基準となるワーキングディスタンスに設定するだけで足りる。したがってマーキングヘッド150の上下機構を用意する必要も、そのような調整作業も不要とできる。このため、3次元印字可能なレーザ加工装置は、2次元の印字に利用する場合であっても、位置あわせが容易で、多少焦点距離がずれていたり、マーキングヘッドが傾いていても調整することができる。
また実際の設置状態は、テスト印字モードを実行することによって、最適な印字状態のパターンを選択するのみで、焦点位置の設定も最適に調整できる。テスト印字モードとは、レーザの走査速度やレーザ出力を変化させた複数の異なる条件を設定して、ワークに対して試験的に印字加工を行って印字見本を作成する。一の印字見本には、条件の異なるテスト加工パターンが複数印字されているので、ユーザは様々な条件で印字された文字等から鮮明さや濃度、太さ、深さなどに基づいて、所望の条件を選択することができる。これによって、ユーザが望む最適の印字結果を得るための条件を容易に見出すことができる。テスト印字モードの詳細については、後述する。なお本明細書において印字の濃度とは、印字の深さ、太さ、発色の程度等の概念も含む意味で使用する。
さらに、図16(a)に示すように、従来はワークの角度に合わせてマーキングヘッド150自体も調整機構160B等で傾斜させて設置する必要があったが、本実施の形態に係るレーザ加工装置においては、表面が傾斜しているなど、角度を有するワークであっても図16(b)に示すように、マーキングヘッド150を水平に維持したまま正確に加工できるという特徴も有する。このように、非常に柔軟に各種アプリケーションに対応でき、しかも設置作業も容易であり印字加工精度も高いという極めて優れた特長を発揮できる。
(レーザマーカのシステム構成)
次に図17に、3次元印字可能なレーザマーカのシステム構成を示す。この図に示すレーザ加工システムは、マーキングヘッド150と、マーキングヘッド150と接続されてこれを制御するレーザ制御部1であるコントローラ1Aと、コントローラ1Aとデータ通信可能に接続され、コントローラ1Aに対してテスト加工パターンを3次元の3次元加工データとして設定したり、レーザマーカの加工条件を設定するためのレーザ加工条件設定装置300とを備える。レーザ加工条件設定装置300は、図17の例においてはコンピュータにレーザ加工条件設定プログラムをインストールして、レーザ加工条件設定機能を実現させている。レーザ加工条件設定装置は、コンピュータの他、タッチパネルを接続したプログラマブルロジックコントローラ(PLC)や、その他専用のハードウェア等を利用することもできる。またレーザ加工条件設定装置は、レーザ加工装置の動作を制御する制御装置として機能させることもできる。例えば、一のコンピュータにレーザ加工条件設定装置とコントローラの機能を統合してもよい。また一方、この例ではレーザ加工条件設定装置に、平面状の印字データを3次元状に印字するための3次元加工データを設定する3次元加工データ設定装置の機能を統合しているが、3次元加工データ設定装置を個別に設けることもできることはいうまでもない。
さらにコントローラ1Aには、必要に応じて各種外部機器190を接続できる。例えばライン上に搬送されるワークの種別、位置等を確認するイメージセンサ等の画像認識装置、ワークとマーキングヘッド150との距離に関する情報を取得する変位計等の距離測定装置、所定のシーケンスに従って機器の制御を行うPLC、ワークの通過を検出するPDセンサその他各種のセンサ等を設置し、これらとデータ通信可能に接続できる。
(3次元加工データの設定)
図18は、レーザ加工条件設定装置の一例としてブロック図を示している。この図に示すレーザ加工条件設定装置300は、各種設定を入力するための入力部3と、入力部3から入力された情報に基づいて加工条件の設定や傾斜角の演算等を行う演算部80と、設定内容や演算結果等を表示するための表示部82と、各種設定データを記憶するための記憶部5Aとを備える。入力部3は、加工条件の加工パラメータを設定する加工条件設定手段3Dと、テスト加工パターンから所望の加工位置を選択して該当する加工条件に再設定する加工条件選択手段3Eの機能を実現する。加工パラメータには、レーザ光の出力、走査速度の他、レーザ光の焦点位置すなわちワークからレーザ光出射面までの距離(高さ)等が挙げられる。加工条件設定手段3Dは、テスト印字モードにおいては、高さを範囲で設定することにより、高さをこの範囲で変化させたテスト印字を行う。記憶部5Aは、図1のメモリ部5に相当し、入力部3で設定された加工パラメータ等の情報を記憶する部材であり、固定記憶装置などの記憶媒体や半導体メモリなどが利用できる。
また演算部80は、加工条件設定手段3Dにより範囲で指定された加工パラメータから、指定された範囲及び幅で変化させた複数の加工条件の組を生成する複数加工条件生成手段80D、最終的に設定された加工条件を所定の出力先に出力する加工条件出力手段80E、さらに離散ブロックの高さに基づいて、加工面の傾斜角及び傾斜方向を演算する傾斜演算手段80Fの機能を実現する。さらに演算部80は、生成された複数の加工条件毎にレーザ光を加工対象物に照射してテスト加工パターンを生成するよう制御するテスト加工パターン生成手段80Gとしても機能する。さらにまた演算部80は、テスト印字前にレーザ光の光学特性に起因する座標のずれを補正する座標補正手段80Hの機能も備えている。この演算部80は、LSIやICなどで構成される。表示部82は、専用のディスプレイを設ける他、コンピュータのモニタを利用してもよい。
図18の例では、レーザ加工条件設定装置を専用のハードウェアで構成したが、これらの部材はソフトウェアでも実行できる。特に、図17に示すように汎用のコンピュータにレーザ加工条件設定プログラムをインストールして、レーザ加工条件設定装置として機能させることもできる。また図18の例では、レーザ加工条件設定装置とレーザ加工装置とを個別の機器としたが、これらを一体的に統合することもできる。例えばレーザ加工装置に自体にレーザ加工条件設定機能を付加することもできる。
(3次元加工データの設定手順)
ここで、ワークの印字面に印字されるテスト加工パターンから、3次元加工データを生成して、レーザ加工装置に設定するための3次元加工データ設定プログラム200のユーザインターフェース画面を図19に示す。この例では、画面左に3次元印字データの編集状態を表示する編集表示欄202が設けられ、また画面右は後述する印字文字列などのテスト加工パターン入力欄204である。編集表示欄202は編集状態のプレビューを表示する。図19の例ではワークWの2次元図(ここでは横置き姿勢の円柱の平面図)が表示されており、ユーザはマウス操作や座標指定によりワークの表示倍率や姿勢、配置等を任意に変更できる。編集表示欄202は、表示されるサイズに応じて画面をスクロール表示できる。さらに編集表示欄202の右下には、3次元加工データを立体的に示す3次元ビューワ欄206が表示される。図19の例では3次元ビューワ欄206にはワークWである円柱の斜視図が示される。3次元ビューワ欄206で表示されるワークWは、好ましくは姿勢や角度の変更、回転、倍率変更等の操作を可能とする。例えば3次元ビューワ欄206上からワークWを直接ドラッグして回転、移動させる。
なおプログラムのユーザインターフェース画面の例において、各入力欄や各ボタン等の配置、形状、表示の仕方、サイズ、配色、模様等は適宜変更できることはいうまでもない。デザインの変更によってより見やすく、評価や判断が容易な表示としたり操作しやすいレイアウトとすることもできる。例えば詳細設定画面を別ウィンドウで表示させる、複数画面を同一表示画面内で表示する等、適宜変更できる。またこれらのプログラムのユーザインターフェース画面において、仮想的に設けられたボタン類や入力欄に対するON/OFF操作、数値や命令入力等の指定は、プログラムを組み込んだコンピュータに接続された入力部3で行う。本明細書において「押下する」とは、ボタン類に物理的に触れて操作する他、入力部によりクリックあるいは選択して擬似的に押下することを含む。入力部などを構成する入出力デバイスはコンピュータと有線もしくは無線で接続され、あるいはコンピュータ等に固定されている。一般的な入力部としては、例えばマウスやキーボード、スライドパッド、トラックポイント、タブレット、ジョイスティック、コンソール、ジョグダイヤル、デジタイザ、ライトペン、テンキー、タッチパッド、アキュポイント等の各種ポインティングデバイスが挙げられる。またこれらの入出力デバイスは、プログラムの操作のみに限られず、レーザ加工装置等のハードウェアの操作にも利用できる。さらに、インターフェース画面を表示する表示部82のディスプレイ自体にタッチスクリーンやタッチパネルを利用して、画面上をユーザが手で直接触れることにより入力や操作を可能としたり、または音声入力その他の既存の入力手段を利用、あるいはこれらを併用することもできる。
(テスト印字モード)
次に、図18のブロック図に示す演算部80がテスト加工パターン生成手段80Gとしてテスト印字モードを実行する手順について詳述する。テスト印字機能には、大きく分けて以下の3つのモードがある。
(1)焦点位置合わせモード
焦点位置合わせモードは、連続線を描くことで、ワークの印字面の高さを把握するモードである。このモードは、機器設定の際に、マーキングヘッドとワークとの設置位置の補正や、ワークの印字面に異なる材質が含まれている場合など、印字条件をブロック毎に変更する必要がある場合の各ブロック毎の設定、高さ方向のZ軸座標の調整などに利用される。
(2)傾き補正モード
傾き補正モードは、同一直線上にない3点以上の離間ブロック(ポイント)にテスト印字を行うことで、傾斜演算手段80Fが印字面やレーザマーカの傾きを検出するモードである。このモードは、レーザマーカを設置する際の設置位置補正や、加工面上での加工対象領域が複数ある場合の各ブロックの設定、印字面の傾斜角度の設定などに利用される。
(3)加工条件抽出モード
加工条件抽出モードは、2次元マトリックス状にテスト印字を行うことでブロック毎のレーザ光の走査速度、レーザ出力を設定するモードである。この動作モードは2次元印字などで従来利用されていた、レーザ光の加工条件を設定するため等に利用される。
(4)マーキング条件の抽出及び焦点位置合わせモード
マーキング条件の抽出及び焦点位置合わせモードは、上記のレーザ光走査速度、出力を変更した2次元マトリックスの印字に加えて、高さの加工パラメータも変更してテスト印字を行うモードである。このモードは、ブロック設定の際のレーザ光の走査速度、出力、高さの加工パラメータを一括して設定する。
以下、各モードについて詳述する。
(焦点位置合わせモード)
まず焦点位置合わせモードで指定連続線Sのテスト印字を行い、高さ方向(z座標)の調整を行う手順について、図20のフローチャート及び図21〜図29に示すレーザ加工条件設定プログラムのユーザインターフェース画面に基づいて説明する。この方法では、連続的に高さを変化させつつ直線を印字し、その印字結果に基づいて焦点位置すなわち高さ情報を得る。
まずステップS11で印字条件を設定する。ここではレーザ光を走査させるスキャナの走査速度、レーザ光源の出力、印字する座標、高さ範囲を指定する。設定は、図21に示す加工条件設定手段3Dの一形態である加工パラメータ設定画面301から行う。図21の例では、加工パラメータ設定欄310で「高さ(連続線)」を選択し、レーザパワー(レーザ出力)設定欄312、スキャンスピード(走査速度)設定欄314などを数値で入力する。さらに、所定長さの線分である指定連続線Sを印字するための始点及び終点のX・Y座標を始点・終点設定欄316、及び高さ範囲を高さ範囲指定欄318から、それぞれ入力する。ここでは、加工条件としてレーザパワー及びスキャンスピードは一定とし、高さ範囲のみを変更させて複数の加工条件を複数加工条件生成手段80Dが自動生成する。高さ範囲は、最大値と最小値を指定している。
この状態で、印字レーザをOFFさせてガイド用光源60のみを点灯し、ガイド光光学系でガイド光を走査させる。ガイド光を高速で走査させ、その残像効果によってテスト加工パターンが作業領域に描画される。この結果、図22に示すように作業領域WSに指定連続線Sが描画される。これによってユーザは印字位置を目視でき、確認できる。この図では直線のみを表示しているが、必要に応じて連続線に加えて、後述する実際のテスト加工パターンと同様の区切り線や文字を付加して描画してもよい。ただ、ガイド光を走査する段階では印字位置が確認できれば足りる。このため、高さ方向(Z座標)の印字位置が詳細に設定されていなくともよい。また、実際に印字を行わないので、ワークをセットする必要もない。ただ、ワークを配置した状態で位置決めを行うこともできることは言うまでもない。
次に、ステップS12として、ワークをセットしてテスト印字を行う。ワークは、上記ステップS11で示されたレーザ照射位置を参照して位置決めされる。ここでは、平板状のワークを水平面内に設置する例を考える。
(座標補正)
テスト印字を行う前段階で、レーザ光の光学特性を考慮した座標補正を演算部80の座標補正手段80Hが行う。本来、高さの変化率が一定のデータを入力した場合に光学特性により出力される座標は、図23に示すように作業領域WSの中心からの距離と基準位置からの高さの関係を示すグラフにおいて、図23において破線L1で示すように直線状となるべきである。しかしながら、レーザ光の焦点距離が固定された状態では、図11において実線のLで示すように作業領域WSの中心に焦点位置を合わせると、中心から離れるほど、円弧状にワークの作業面から焦点位置が遠ざかり、実線のL’で示すように作業領域の周辺部分ではレーザ光の焦点が合わない状態となる。この結果、図23に太線L2で示すように、作業領域WSの中心からの距離が大きくなるほど基準位置からの高さは直線上からずれる。この状態では高品質な印字結果を得ることができないので、焦点距離を補正し、図11において破線のLで示すように作業領域WSの周辺部分では焦点距離を長く設定する。この様子を図23で示すと、細線L3で示すように、出力の高さの変化が一定となるよう光学特性を補正した入力データを指定する。このように入力データを、軌跡が意図的に逆方向に折曲されるよう設定することで、破線L1で示すような直線状に補正されて意図通りの印字結果を得ることができる。このように、レーザ光の光学特性により印字場所によって高さの情報が異なるので、光学特性を考慮して高さの変化が一定になるように座標を発生させる。
なお、このような座標補正はテスト印字の前に行うが、印字条件の設定前、あるいは設定後のいずれのタイミングで行ってもよい。あるいはレーザマーカの初期設定の段階で行うこともできる。
(テスト印字)
このように入力データを補正した状態で印字を実行するため、走査光をガイド光からレーザ光に切り替える。ここでは図24に示すように、レーザ選択欄320でガイドレーザ(ガイド用光源60)から印字レーザにラジオボタンを変更する。これによって、図21の加工パラメータ設定画面301で設定された加工条件に従い、レーザ光を照射してテスト印字が行われる。加工条件は、図21で指定された範囲に従って、複数加工条件生成手段80Dが複数の加工条件の組を自動的に生成する。これら生成された複数の加工条件に従って、レーザ加工が行われる。すなわち、レーザ加工される位置毎に異なった加工条件でレーザ加工が行われることになる。またここでは、レーザ加工により指定連続線Sを直線状に印字すると共に、図25に示すように指定連続線S上の位置を示す位置情報として、所定の間隔で区切り線Kと区切り線Kに沿えて英文字Eとを印字している。
印字を行うと、上述した図11の通り、印字領域の中心部分では焦点位置が合うため濃く印字され、中心から遠ざかるほど焦点位置がずれて印字が不鮮明となる。この結果、図25に示すように中心部分では濃く、周辺に向かうほど薄く印字されるようになる。
次にステップS13で、所望の印字結果が得られているかどうかを判定し、未だの場合はステップS14に進んで印字条件の再設定を行う。具体的には、濃く印字されている部分が1点で指定できるようになるまで、範囲を絞り込む。図25の例では区切り線Kの英文字Eである「D」、「E」で濃度が一定なので、「D」−「E」間で再度印字を行う。具体的には、図26に示すレーザ加工条件設定プログラムにおいて、印字する高さの範囲を指定する。印字高さの範囲を指定する高さ範囲指定欄318は、最小値・最大値の指定を直接数値で入力する数値欄318Aの他、文字列での指定が可能な文字列選択欄318Bを備えている。文字列選択欄318Bは、印字結果から所望の加工条件を選択するための加工条件選択手段3Eとして機能する。すなわち、区切り線Kの英文字Eを文字列選択欄318Bから選択すると、この英文字Eに対応する高さデータが数値欄318Aに自動的に入力される。図26の例では、高さ範囲指定欄318の文字列選択欄318Bに図25に従い最小値として英文字Eの内「D」、最大値として「E」を指定する。すると、図21では高さの最小値が数値欄318Aで−5mm、最大値が5mmに指定されていたものが、「D」に対応する高さとして−0.5mm、「E」に対応する高さとして0.2mmが自動的に数値として設定される。この結果、「D」を最小、「E」を最大とする、より狭い高さ範囲での印字が、所定の間隔で再度行われる。このように、加工パラメータの数値を意識することなく、実際の印字結果から所望の英文字を指定することで、該当する加工パラメータ値に自動的に設定される。なお、英文字は数字などを含む文字列とすることも可能であることはいうまでもない。
このように再設定された状態でステップS12に戻ってテスト印字を再度行った結果、ステップS13の判定で必要な最終印字結果が得られない場合は、さらにステップS14で印字条件を再設定して印字を行うという作業を繰り返し、所望の印字結果が得られるようになるまでこの工程を実行する。そして所望の印字結果が得られると、ステップS13からステップS15に進み、高さ情報を出力する。
最終的に得られたテスト加工パターンが図27のようであったとすると、濃く印字されている部分が区切り線Kの英文字E「E」のポイントに特定されたので、この印字に該当する高さを最終結果として出力する。ここでは、図28に示すように高さ範囲指定欄318のパターン選択欄324で「E」を指定し、確定ボタン326を押して確定する。すると加工パラメータ設定画面が図29に示すように加工パラメータ出力画面302に変化し、「E」に相当する高さとして「0.1mm」が出力表示欄328に表示される。なお、この場合に必ずしも最も濃く印字されている部分を指定する必要は無く、例えばユーザが意図的にデフォーカスさせた弱い印字を望む場合は、所望の濃度が得られた英文字Eを選択すればよい。
このようにして高さ情報が最終決定されると、必要に応じてステップS15で位置の高さ情報を加工条件出力手段80Eが出力する。例えば図29に示すように、最終決定された高さ情報を設定するリンク先をリンク先設定欄330で指定すると、加工条件出力手段80Eは指定されたリンク先に情報を送出する。この例において、「機器設定の高さ」はレーザマーカの高さである。また「ブロック条件の高さ」は印字面の平面に一致させる場合に使用する。さらに、ブロック条件の高さ設定では、複数のブロックについて登録が可能である。さらにまた、出力のリンク先は複数指定することもできる。逆にリンク先無しとすることもでき、例えば高さ情報を表示部に表示させて確認する用途などに利用できる。
(傾き補正モード)
次に、レーザマーカや加工面の傾きを補正する傾き補正モードとして、同一直線上にない3点の離間ブロックをテスト印字する様子を図30のフローチャート及び図31〜図40のレーザ加工条件設定プログラムのユーザインターフェース画面に基づいて説明する。傾き補正モードは、上記のように高さを連続的に変化させた直線を印字するのでなく、レーザ光の走査速度とレーザ出力を一定に維持したまま高さを段階的に変化させ、文字や数字・記号の組み合わせ等をマトリックス状に印字し、これによって印字面の高さ及び傾斜角度、傾斜方向を傾斜演算手段80Fが決定するものである。
まずステップS21で、3つの離間ブロックNo1〜No3に対して印字条件を設定する。これらの離間ブロックは、同一直線にない位置に設定される。図32に、ワーク上でガイド光を走査して離間ブロックNo1〜No3を描画させた例を示す。この図に示すように、高さや傾きの検出精度を向上させるため、各離間ブロックは印字面の隅部などできるだけ離間させた位置に配置することが好ましい。図32の例では、離間ブロックNo1は印字面の左側中心付近、離間ブロックNo2は右上隅部、離間ブロックNo3は右下隅部に、各々配置されている。各離間ブロックは複数のセルCから構成される。セルCは、高さの条件を設定するために複数設けられる。高さの条件としては、高さの最大値及び最小値、高さの中心値と間隔等で指定できる。セルCの数は、高さ条件の設定数となるため、各離間ブロックにおいて適切に高さ条件が決定できる数に設定され、この例では9個としている。すなわち、各離間ブロックで9段階に高さを変化させている。
各離間ブロックにおける印字条件の設定は、図31の加工パラメータ設定画面303から行う。この例では、加工パラメータ設定欄310で傾き補正モードである「高さ(3点)」が選択される。この画面から、加工条件としてレーザ光を走査するスキャナの走査速度、レーザ光源の出力、印字座標、高さ範囲を設定する。図31の画面は、離間ブロックを選択するための離間ブロック選択欄332が設けられており、ここから設定する離間ブロックを選択する。この例では、1つ目の離間ブロック(No1)を選択している。各離間ブロックについて、同様の手順で加工条件を設定する。なお、この例では同一直線上にない3点を指定することで平面の傾きを検出しているが、4点以上を設定して傾き検出の精度を高めることも可能であることはいうまでもない。
図31の例では、レーザパワーとしてレーザパワー設定欄312で最大出力の50%、スキャンスピードとしてスキャンスピード設定欄314で1000mm/sを指定している。この値はすべてのセル、離間ブロックにおいて一定値とする。また始点・終点設定欄316で始点及び終点のX座標、Y座標を指定する。ここでは始点及び終点の座標は、各離間ブロックを構成するマトリックスの対角線上の座標(例えば左上と右下の隅部)である。さらに高さ情報は、この離間ブロックにおいて変化させる範囲を高さ範囲指定欄318から指定する。離間ブロックNo1では、最小値−5mm〜5mmまでの範囲で、9段階(9セル)に高さを変化させる。このような範囲の指定は、最大値、最小値を指定する他、中心値や間隔を指定するなど、所望の項目に直接数値を入力する。例えば最大値、最小値の高さを入力すると、印字個数(セル数)で除算して間隔が自動的に演算される。あるいは、中心値の高さと最大値/最小値のいずれかを指定すると、この差を印字個数の半分で除算して間隔を求める。さらに間隔で指定する他、変化後/変化前等の変化率で指定することもできる。
次にステップS22で、テスト印字を行う。テスト印字の実行に先立ち、必要に応じてガイド光を走査して印字位置を確認する。図31の画面で、レーザ選択欄320からガイドレーザ(ガイド用光源60)を選択し、印字開始ボタン322を押下すると、図32に示すような走査が開始され、各離間ブロックのセルが印字面上で描画される。この工程では、未だ実際の印字をしないため、レーザの詳細な焦点位置(高さデータ)が合ってなくてもよく、印字位置がどの部分になるかをワーク上で確認できれば足りる。ガイド光が描画するパターンは、図32のように四角形状とする他、文字や数字のパターンを描画することもできる。
次にワークをセットしてテスト印字を行う。図33の画面で、レーザ選択欄320からガイドレーザから印字レーザ(加工用レーザ)に切り替えて印字開始ボタン322を押下すると、図34に示すような印字が行われる。
(座標補正)
傾き補正モードにおける印字は、同一セル内では高さが均一になるように行う。ただ、上述の通り、レーザ光の光学特性により印字位置によって高さの情報が異なるので、レーザ光の光学特性を考慮し、高さの変化を一定にし、同セル内では高さが均一になるように座標補正手段80Hが座標を補正する。すなわち、図35に示すように、高さの変化が一定のデータを入力した場合に、光学特性により出力される座標が太線で示すように上向きに湾曲した曲線を示すため、細線で示すような座標に変換する。この細線は、出力の高さの変化が同一セル内で一定となるように、光学特性を考慮して補正したデータを示す。このような補正データを使用する結果、レーザ光の光学特性によっても図35において破線で示すような一定の座標が得られ、位置によらずに正しい高さの情報が得られる。
このような座標補正を行った後印字を行い、その結果図34のような印字結果が得られたとする。図34の例では、離間ブロックNo1として横にA、B、C、縦に1、2、3の文字及び数字を付した9個の文字列を行列状に配置している。すなわち、行列の要素は1行目でA1、B1、C1、2行目でA2、B2、C2、3行目でA3、B3、C3となる。同様に離間ブロックNo2では、横にD、E、F、縦に1、2、3を付した行列状、離間ブロックNo3では、横にG、H、I、縦に1、2、3を付した行列状に印字される。
次に、この印字結果に基づき、各離間ブロックの高さ情報が決定可能かどうかを判定する。決定できない場合は、ステップS24で印字条件の再設定を行い、ステップS22のテスト印字を繰り返す。一方、決定可能な場合はステップS25に進み、加工面の傾斜を演算する。この例では、図34のように、3つの離間ブロックNo1〜No3で印字を行っているため、各々の離間ブロック中で強く印字された位置を選択する。ここでは上記と同様に、最大値、最小値、間隔等を数値欄318Aから数値で直接入力しても良いし、印字結果を参照して文字列選択欄318Bから文字列を選択しても良い。印字結果を選択した場合は間隔等を自動的に演算して設定することもできる。図36は、離間ブロックNo1の加工パラメータ設定画面303の一例を示す。ここでは、図34の結果からA1のセルが最も濃い印字を示しているので、高さ範囲指定欄318の中心値欄318aの文字列選択欄318Bに「A1」を指定する。すると、「A1」に対応した高さデータが中心値欄318aの数値欄318Aに自動的に入力される。またこの数値を参照しながら、ユーザは必要に応じて間隔及び/又は最小値・最大値を数値で指定する。同様に図37は離間ブロックNo2の加工パラメータ設定画面303の一例を示している。ここでは、図34の印字結果を参照しながら、妥当な高さ範囲をユーザが数値で直接指定している。例えば、最も濃く印字されそうな高さを中心値(ここでは7mm)として数値欄318Aに入力すると共に、高さを段階的に変化させる間隔(ここでは0.5mm)を指定する。さらに図38は離間ブロックNo3の加工パラメータ設定画面303の一例を示しており、ここではセルの文字列から高さ範囲を指定している。すなわち、図34の印字結果から、最小値を「H3」、最大値を「I1」として高さ範囲指定欄318の文字列選択欄318Bから選択すると、これに対応する高さデータが数値欄318Aに自動的に入力される。このようにして各離間ブロックの加工パラメータ設定が終了すると、印字開始ボタン322を再び押下してテスト印字を行う。ユーザはさらに印字結果を参酌しながら、必要に応じて加工パラメータを再設定してテスト印字を繰り返す。この作業を繰り返すことによって、最終的に最も濃く印字されたパターンを各離間ブロック毎に指定して、各離間ブロックにおける高さを確定する。この様子を図39に基づいて説明すると、ある加工パラメータでのテスト印字結果では離間ブロックNo1において文字列B1が最も濃く印字された場合、パターン選択324で「B1」を選択して「確定」ボタンを押下し、離間ブロックNo1における焦点位置をB1に対応する位置として確定する。
その後、ステップS25において、最終決定された高さ情報に基づき、演算部80の傾斜演算手段80Fで加工面の傾斜を演算して出力する。この例を、図40の加工パラメータ設定画面303に基づいて説明する。ここでは、各離間ブロックについて、離間ブロックNo1では上述の通り文字列B1のセル、離間ブロックNo2ではD2、離間ブロックNo3ではG3がそれぞれ選択されたとする。このように各離間ブロックのセルを確定することで各々の高さが算出される。よって、傾斜した平面上で同一直線上にない3点の高さが得られるので、この平面の傾きを演算部80の傾斜演算手段80Fで算出できる。図40の例では、演算結果として、傾斜の基準となる方向を示す傾斜方向を基準となる軸との角度α(この例では100°)で示すと共に、傾斜方向の水平位置からの傾斜角θ(この例では12°)を示している。また上記と同様に、この演算結果を反映させるリンク先をリンク先設定欄330にて指定する。この例では、「ブロックの平面条件」として、複数ブロックが存在する場合にブロック毎に平面の傾斜情報を登録可能である。ブロックの選択は、ブロック選択欄334から選択でき、この選択にはドロップダウンリスト等が利用できる。
図41に、傾斜方向と傾斜角について説明する。図41(a)は作業領域WSの平面図を示しており、一点鎖線で示す方向を軸として傾斜している。この軸を、平面図における水平位置からの回転角度αで表示する。一方、図41(b)は、(a)の軸(線B−B’)における断面図を示しており、この断面図における水平位置からの傾斜角θでもって傾斜を表している。
なお、各離間ブロックにおいて最も濃く印字されるセルは、各セルで高さを変更する以上いずれか一のセルとなるはずであるが、印字面の傾斜と各セル間の高さの間隔によっては、複数のセルが同一の濃度で印字されることがある。この様子を、図42に基づいて説明する。例えば、図42(a)に示すように、ワークの印字面が水平である場合は、印字面の高さに最も近いセル(図42(a)の例ではB1)を指定すればよい。一方、図42(b)に示すように印字面が傾斜しており、かつこの傾斜面上に、高さ方向に離間するセルが位置する場合は、複数のセルが同一の濃度で印字されることになる。このような場合は、いずれのセルを指定してもよい。図42(b)の例では、A1、B1、C1のどのセルを選択しても傾斜演算手段80Fでの演算結果は同じとなる。
また、傾き補正モードの例では上述した連続線の印字と異なり、完全に焦点の合った印字結果が得られるかどうかは不明である。すなわち、連続線による印字では、連続的に高さを変化させる結果、必ず焦点位置を通るため、所定の範囲内にジャストフォーカス位置を含めることができ(区切り線K上には位置しないことがあるにしても)、その結果正確な高さを検出可能である。加えて、正確な高さを検出できることから、意図的にデフォーカス位置に設定することも可能である。一方、傾き補正モードの例では、所定の範囲内における離散的な高さでの印字となるため、離散的な高さがちょうど焦点位置を含むかどうかは保証されない。このため、複数回の再設定・テスト印字を繰り返すことで高さを絞り込む等して、離散的なセルの高さが焦点位置と一致するように調整する。また、正確な傾斜角などを検出するために、焦点位置のみを指定し、意図的にデフォーカス位置を指定することはしない。これによって、離散的なサンプリングによる測定でも、正確な高さ情報を求めることができる。
(加工条件抽出モード)
加工条件抽出モードは、レーザ光の加工条件を設定するため等に利用される。具体的には、レーザ光の走査速度及びレーザ出力を変化させた複数の加工条件で各々セルを印字する。例えば、図3に示すように、セルを2次元マトリックス状に印字し、各セルの加工条件は横方向にはレーザ出力が徐々に低下するように変化させ、縦方向には走査速度が徐々に高速になるように変化させる。この結果、左上から右下に進むに従い、印字結果が薄くなるように印字される。ユーザはこのマトリックスから所望の印字結果の得られているセルを選択して、対応するレーザ光の走査速度及びレーザ出力を設定する。この動作モードは2次元印字などで従来より利用されており、例えば特許文献1で説明される技術が利用できる。
(複合テスト印字モード)
最後に、マーキング条件の抽出及び焦点位置合わせモードを共に行う複合テスト印字モードについて、図43のフローチャート及び図44〜図56に基づいて説明する。このモードは、上記の加工条件抽出モードにおいてレーザ光走査速度及び出力を変更した2次元マトリックスの印字に加えて、高さの加工パラメータも変更してテスト印字を行うモードである。このモードは、ブロック設定の際のレーザ光の走査速度、出力、高さの加工パラメータを一括して設定する。以下、図43のフローチャートに従い順に説明する。
まず、ステップS31で印字条件を設定する。上記焦点位置合わせモード及び傾き補正モードの例では、レーザ光の出力及び走査速度は一定であったが、複合テスト印字モードにおいてはレーザ光の出力、走査速度も含めて所定の範囲で変化させる。図44に、複合テスト印字における加工パラメータ設定画面304の一例を示す。この図に示すように、加工パラメータ設定欄310にて「複合(パワー、スピード、高さ)」を選択すると、これに応じて図44に示すようにレーザ光の出力、走査速度の範囲指定も含めた印字条件の設定画面が表示される。レーザ光の出力の変化を設定するレーザパワー設定欄312B、及びレーザ光の走査速度の変化を設定するスキャンスピード設定欄314Bは、いずれも上記の高さ範囲指定欄等と同様、範囲で指定する。例えば最大値、最小値、間隔あるいは中心値などで変化幅を設定する。ここでは、レーザ出力(パワー)は最大値を100%とするパーセントで指定し、図44の例では最小値30%、最大値70%、間隔10%としている。またレーザ光の走査速度(スピード)は最小値1000mm/s、最大値4000mm/s、間隔500mm/sとしている。さらに高さ範囲指定欄318では、上記傾き補正モードと同様に最小値−20mm、最大値10mm、間隔5mmなどと指定している。
これらの範囲指定は、ここでは数値を直接入力しているが、後述するように英文字などでの指定も可能であり、さらに加工パラメータを変化させる回数も、適宜規定できる。この例では、パワーを5段階、スピードを7段階、高さを7段階にそれぞれ変化させ、計245の加工条件が生成される。さらに、印字の始点及び終点も同様にX座標、Y座標で指定する。また加工条件数に応じて印字の始点から終点までの領域内に入る大きさに、各セルの大きさを自動調整する機能や、一のワーク内に収まりきらない場合に印字ページを自動的に増やす方法、あるいは加工条件数を表示して使用者に確認させる等の手法も適宜利用できる。
このようにして印字条件の設定が終了すると、ステップS32でテスト印字を行う。実際の印字に先立ち、必要に応じてガイドレーザ光を走査させて印字位置を確認する。具体的にはワークをセットした状態で、図44の画面からレーザ選択欄320でガイドレーザを選択して印字開始ボタンを押下すると、ガイドレーザ光が実際にワーク上に走査されて、ガイドレーザ光の残像効果によって印字位置が確認される。図45に、ガイドレーザ光を走査させてワークの作業領域WS上にマトリックス状のテスト加工パターンMを描画させる例を示す。このように、テスト加工パターンMを表示させることで、実際の印字位置を確認でき、必要に応じてワークの位置決めや調整を行うことができる。なおガイドレーザで走査する場合は実際の印字は行われず、印字位置の確認ができれば足りるので、高さ(焦点位置)のデータが詳細に設定されていなくともよい。
そしてワークをセットしてテスト印字を行う。具体的には図46に示す加工パラメータ設定画面304のレーザ選択欄320において、ラジオボタンで印字レーザを選択して印字開始ボタン322を押下する。これによりレーザ光の照射が開始され、加工パラメータ設定画面304で指定された加工条件に従って、レーザ出力や走査速度、焦点位置等の異なる加工条件毎にセルが、マトリックス状に印字されていく。この際も、上述のように演算部80の座標補正手段80Hで座標変換を行う。すなわち、図47に示すように、レーザ光の光学特性により、印字位置によって高さ(焦点位置)の情報が異なることを考慮し、同じ高さの条件でも場所毎にデータを変えて、すなわち位置座標を調整して、結果的に同じ高さでの印字になるように制御する。
(テスト加工パターンMの変形例)
ここで、ガイドレーザあるいは印字レーザでセルを表示する複合テスト印字において、3つの印字条件をセル毎に各々変化させて複数のセルを配列したテスト加工パターンMを形成する例について検討する。上記図45の例では、印字条件を変化させて印字する複数のセルをマトリックス状に配置している。この場合、単に縦又は横方向に、セルを並べて印字する配置であれば、印字は容易である反面、すべての加工パラメータの変化をマトリックスの縦横に対応させることができない。
従来の加工条件抽出モードにおいては、例えば図3に示すようにレーザ出力と走査速度の2パラメータのみを変化させる場合は、縦横にそれぞれの加工パラメータの変化させたマトリックス状にセルを配置すれば、加工パラメータの変化と印字の濃度の変化との関係を把握しやすい。図3の例においては、マトリックスの縦軸に走査速度を、下に向かうほど高速に変化させ、横軸にレーザ出力を、右に向かうほど低く変化させている結果、行列の左上から右下に向かうに従い、印字の濃度が薄くなる。
一方、本実施の形態に係る複合テスト印字においては、3つの加工パラメータを変化させる必要があるため、図48に示すように本来的には縦・横・高さの3軸で立体的に表現することで、印字濃度の変化が隣接するセル間で比較でき、各パラメータの増減と印字の濃度の関係が視覚的に把握しやすい。図48は、直方体状にセルを配置し、縦方向にパワー(A〜Eの5段階)、横方向にスピード(a〜gの7段階)、高さ方向に高さ(1〜7の7段階)の加工パラメータをそれぞれとって加工条件を変化させて、各加工条件に対応する印字文字を表示している。
しかしながら、実際に印字するワークは平面状であるため、セルを3次元状に配置することができない。そこで、2次元平面上に擬似的に3次元状のセル配置を表現することによって、ユーザが印字濃度の変化を視認しやすくしたセルの配置が利用できる。例えば図49は、直方体を水平面でスライスし、高さ毎に2次元平面を描画してこれを複数枚上下に並べることで、3次元の直方体を縦方向に分解してすべての要素を2次元状で表現することができる。しかも、各平面を擬似的に3次元状に配置しているため、縦・横のパラメータの変化のみならず、縦方向のパラメータの変化も、対応するセルの位置関係が視覚的に把握しやく、相対的な変化の対比が容易となる。同様に、このような分解は高さ方向に限られず、縦方向、横方向とすることでも実現できる。例えば図50は直方体を横方向に分解した平面で表現した例を示し、レーザ光のスピード(走査速度)毎に一平面にセルをマトリックス状に配置している。これによっても、ユーザはスピードの変化も含めた各パラメータの変化と印字の濃度との関係を視覚的に把握できる。さらに図51は、レーザ光のパワー毎に一平面を構成した例を示し、パワーの変化を平面毎に対比できる。これらの分解表示では、平面を構成する枠線や座標軸、その加工パラメータなども適宜印字させてもよく、これによってテスト印字の情報をユーザにさらに判り易くできる。例えば「パワー」、「スピード」、「高さ」などの軸や軸上の目盛り等を一緒に印字することもできる。
また、このように斜視図的に配置するのみならず、図52に示すように一方向に分解した各平面をそのまま上下に並べてマトリックス状に配置してもよい。図52の例では、図49と同様にパワーとスピードを変化させた平面を基準とし、高さの異なる各平面を上下に並べることで、高さの変化を平面毎に表現している。この方法でも、縦方向の加工パラメータの変化の対比を比較的判り易くできる。しかも図52のテスト加工パターンMは、図49のように斜視図的な描画が不要であるため、レーザ加工装置でテスト加工パターンMを生成するための演算量が少なく、処理も容易である。加えて、長方形状にセルを配置したマトリックスであれば、限られたスペースにセルを効率よく充填できるので、斜視図での表現では必要となる印字されない部分をなくして、ワークの加工面を効率的に利用できるという利点もある。さらに各平面同士の区切りとして、実線や破線を付すこともでき、これによって平面毎の区分けを確実に行える。
図52の例では、パワーとスピードを変化させた平面を縦方向に並べた例を示したが、図53に示すように横方向に並べてもよいことはいうまでもない。また、図50や図51の例のように、平面を構成する加工パラメータとしてパワー又はスピードに代わって高さを含ませて、これらの平面を縦横に並べても同様の効果が得られることは当然である。さらに、平面を縦横斜めに配列する他、このような平面を構成することなく、各加工パラメータを変化させて印字したセルをそのまま縦横に配列したマトリックス状とすることも可能である。
さらに、図48に示すように、3パラメータの変化を立体的に表現した直方体の斜視図を直接印字してもよい。ただこの場合、直方体を構成する各面の表面に位置するセルは確実に印字されるものの、直方体の内部に位置するセルは他のセルと重複して斜視図では確認できないおそれがある。このため、すべてのセルが斜視図上から確認できるように、斜視図の大きさや、傾斜、回転、拡大・縮小等による観察視点の調整し、あるいはセルを構成する印字文字列の大きさ等を調整する。あるいは、セル同士が重複する部分については、印字を適宜省略することもできる。
なお上記の図では、図44の例に従い、加工条件としてパワーを5段階、スピードを7段階、高さを7段階に変化させた場合を図示したが、各パラメータのサンプル数によって縦・横・高さ等の寸法や形状を変化させてもよいことは当然である。
このように加工パラメータの変化とセルの配置とを関連付けることで、視覚的に隣接するセル同士の濃度を対比でき、どの印字が最も濃いかといった選択を相対的に行えるので、判断が容易となる。さらに次にステップS33で、所望の印字結果が得られているかどうかを判定する。得られていない場合はステップS34で印字条件の再設定を行い、ステップS32でテスト印字を行う。このように所望の印字結果が得られるまで、印字条件の再設定とテスト印字とを繰り返す。そして所望の印字結果が得られると、ステップS35に進み、出力を行う。印字条件の再設定においては、上記と同様に範囲を特定するために最大値、最小値、間隔に数値を直接入力しても良いし、印字結果から文字列を選択しても良い。例えば図54は、このような再設定を行う加工パラメータ設定画面304の一例を示しており、この例ではレーザ光のパワー、高さは印字結果から該当する文字列を選択しており、一方スピード(走査速度)は数値を直接入力している。
この作業を繰り返すことで、最終的にユーザが所望の印字結果を得ることができれば、この加工条件を確定する。例えば図55では、レーザ光のパワー、スピード、高さを、最も濃く印字されたセルの文字列をそれぞれ入力することで、これらに対応する数値が各加工パラメータに設定される。この状態で確定ボタン326を押下すると、図56に示す画面となり、設定された高さ情報がリンク先設定欄330Bに表示される。この状態からユーザは、加工条件出力手段80Eで高さ情報を出力するリンク先を指定できる。この例においても、複数ブロックが存在する場合にブロック毎に高さ情報を「ブロック条件の高さ」として登録可能である。リンク先のブロックの選択は、ブロック選択欄334Bからドロップダウンリスト等で行われる。同様にレーザのパワー、スピードもパワー・スピード表示欄336に表示され、またこのパワー・スピード情報を加工条件出力手段80Eで出力する出力先を指定できる。さらにここでも、複数のブロックが存在する場合にブロック毎にパワー・スピード情報をブロック選択欄334Cから登録可能である。