JP4772195B2 - 液体材料保持容器 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、液体材料を使用して行う臨床検査、生化学検査、その他各種検査分野において使用される液体材料保持容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
臨床検査をはじめとする各種検査、測定、分析のために、数多くの液体材料、試薬を取扱う日常操作がなされており、いくつかの手順の繰り返し操作も多数行われている。また、これらの操作を自動的に行う自動分析機器も日常的に使用されている。このような、各種検査等を行う分野では、例えば試薬用容器に関し、試薬液面の揺れを抑える工夫、試薬容器内でのコンタミネーション発生や試薬の蒸散を防ぐ工夫、他各種工夫を重ねた容器についての報告がある(特開2000-275251号公報、特開平8-313535号公報、等)。
【0003】
しかし、保持される液体が例えばタンパク質や界面活性剤等のように泡を生じやすい溶液、例えば粘性を有する場合には、容器に該溶液を注入する際に、注入口下方と容器内上壁面との交差部分、すなわち注入口の付根付近に液体に由来する薄膜が形成される場合があった。この薄膜により、液体注入の際に、液体が容器内に入っていないにもかかわらず液体が注入口から溢れてしまうという問題があり、液体の注入がスムーズでなかった。
【0004】
液体が注入口から溢れないようにするために、注入口を大きくするには限界があり、また常識的な大きさの注入口から注入する場合には、液体を少しずつ慎重に容器に移す等の操作を必要としていた。
【0005】
また、液体を注入した後も、注入口の付根付近に液体に由来する薄膜が形成され、自動分析装置等で自動的に液体を採取する等の場合に、ピペット等が該形成された膜を自動的に感知してしまい、正確に液体を採取できない場合があった。
【0006】
さらに、粘性を有する液体を容器に注入した直後や、溶液に薬剤等を均一に混ぜる操作、液体が保持された容器を輸送したり、移動した場合、または繰り返しのピペッティング操作等、液体に物理的振動を与えた場合に検査上望ましくない泡が生じることがあった。ピペット等で液体材料を採取する際にこのような泡を吸い込んだり、自動分析装置等で自動的に液体を採取する際に、ピペット等が形成された泡を自動的に感知してしまい、正確な液体の採取が困難となり、正確な検査値が得られない等の問題があった。
【0007】
このような問題を解決するため、液体材料に泡が生じた場合は、容器を適当な時間静置しておくなどの措置をとっており、検査に時間を要していた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
解決しようとする課題は、検査等に使用する液体材料保持容器であって、液体から生じた膜および/または泡の影響を受けずに液体材料を採取可能な容器を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、液体から生じた泡は壁面や物理的に狭い間隙の部分に移動しやすい特性を有することに着目し、容器内にそのような間隙を設けることによって液体材料の採取部分から泡を移動させ得ることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、
1.分析装置によって採取される液体を収容するための液体材料保持容器であって、
液体を収容する収容部と、
収容部の上面を覆い、その長手方向の端部近傍に液体を採取するための開口部を備えた上壁部と、
前記端部の逆側の開口部縁から下方に向かって突出するように設けられ、収容部を、開口部の下方の第1領域とそれに隣接する第2領域とに区分けすると共に、第1領域と第2領域との間を液体が相互に流通可能なように設けられた第1突出部と、を備え、
前記上壁部が、略三角形状を有しており、前記開口部がこの三角形の底辺近傍に設けられており、前記収容部が三角形の底辺に接続される第1壁部と、この底辺以外の2辺のそれぞれに接続される2つの側壁部とを備えており、
前記第1領域の収容部の少なくとも一方の側壁から内側へ向かって突出した板状の第2突出部を備え、この板状の第2突出部が第1壁部と平行に設けられた液体材料保持容器、
2.前記第1突出部が、板状である前項1に記載の液体材料保持容器、
3.前記第1突出部が、円筒状の突起物を斜めに切断した形状である前項1に記載の液体材料保持容器、
4.前記第2突出部と第1壁部との間隙が0.1〜10mmである前項1〜3の何れか1項に記載の液体材料保持容器、
5.前記第2領域の収容部の少なくとも一方の側壁から内側へ向かって突出した板状の第3突出部を備え、この板状の第3突出部が第1壁部と平行に設けられた前項1〜4の何れか1項に記載の液体材料保持容器、
6.前記第3突出部と所定の間隔を介して平行に設けられた板状の第4突出部を第2領域の収容部に設けた前項5に記載の液体材料保持容器、
7.前記間隔が、0.1mm〜50mmとなるように構成された前項6に記載の液体材料保持容器、
8.前記第3突出部の下方に所定の間隔を介して第5突出部を設け、第3突出部と第5突出部とが列状に配置される前項5〜7の何れか1項に記載の液体材料保持容器、
からなる。
【0011】
本発明の容器は、臨床検査、生化学検査、その他各種検査分野において使用される液体材料保持容器であって、検査試薬、緩衝液、被検材料、その他あらゆる液体材料を保持し得るものである。この容器は、保持される液体材料がタンパク質を含む溶液、界面活性剤等のように粘性を有する場合に特に効果的に使用することができる。
【0012】
本発明の、液体材料の採取部分とは、例えば容器の液体採取口からピペット等の器具により液体を採取する際の、液面にピペットが差し込まれる部分をいう。このような箇所から泡を除去することにより、ピペット操作の際に泡を吸い込むことなく正確な量の液体材料を採取することが可能となる。
【0013】
液体表面に生じた泡は、長時間静置しておくと自然に消失する場合もあり、また容器内の壁面付近に移動している場合もある。そこで、本発明者らは泡が容器壁面付近に移動する点に着目し、いわゆる液体採取部分から採取部分でないところに泡がスムーズに移動し、かつ液体の注入または採取等の際に、液体がスムーズに移動しうる物理的構造を有する容器を開発するために検討を行った。
【0014】
このような物理的構造とは、容器内に突起部を設けてなる構造をいい、壁面の他に泡が移動しうる部分を設けることで、泡がスムーズに移動させることができるものである。本発明の突起物の位置、大きさ、形状等は、泡が移動しやすく、かつ液体の注入または採取等の際に、液体がスムーズに移動しうる構造を選択すべきである。
【0015】
突起物の位置は、いわゆる液体採取部分でないところに設けることが必要である。液体採取部分から泡を移動させるためのものだからである。その位置は、いわゆる液体採取部分から外れていれば、液体採取部分付近であっても良いし、離れた箇所であっても良い。例えば、突起物を採取口の開口部淵から下方面に突出した構造にすることもできる。また、突起物は容器内の上部、側部の壁面いずれの箇所から突出させても良い。例えば、容器壁面に平行して板状に突起物を突出させることもできる。
【0016】
泡は、壁面や物理的に狭い間隙に移動しやすい性質があることから、容器壁面に平行して設けられた板状の突起物は、壁面から0.1mm〜10mm、好ましくは0.1mm〜5mm、より好ましくは0.1mm〜2mmの位置に設けることで、泡が壁面と突起物の間隙に移動しやすくなる。また、複数の突起物の場合には、突起物と突起物の間隔が0.1mm〜50mm、好ましくは5mm〜50mm、より好ましくは5mm〜20mmとなるように設けるとより効果的に泡が移動しやすくなる。
【0017】
突起物の数は限定されず、1であっても良く、複数設けても良い。突起物の数または突起物の表面面積が大きいほど泡は突起物側にスムーズに移動する。例えば、突起物の表面面積が同じ場合では、突起物の数を複数にして断片化したほうが、泡の移動のほか液体の分注、液体の採取時の液の移動が容易に行われる。
【0018】
突起物の大きさは、容器内で液体がスムーズに移動しうる大きさとすることが必要である。例えば、突起物が一方の壁面から他方の壁面に到達する場合は、該突起物が障害となって液の移動がスムーズでなくなるおそれがある。このような障害を避けるために、突起物は液体が移動しうる隙間を残す大きさ、形状とすることが好ましい。例えば、突起物は、向かい合う壁面から交互に突出させ、他方の壁面に到達しない形状とするのが好ましい。他の例として突起物を採取口の開口部淵から下方面に円筒状に突出させた場合には、該突起物が底面付近まで到達すると、該突起物が障害となって液体が容器内にスムーズに注ぐことが困難となるおそれがある。この障害を解決するために、後述するように円筒を適当な位置で切断する等の工夫することが好ましい。
【0019】
突起物の形状は特に限定されないが、例えば板状、円筒状、棒状、櫛状、網目状のものが挙げられる。突起物が板状の場合は、平らであっても良いし、湾曲していても良い。また、該板面に孔があるものでも良いし、板表面に凹凸の構造を有していても良い。突起物が円筒状の場合には、該円筒が斜めに切断された構造をとっていても良い。
【0020】
突起物を採取口の開口部淵から下方面に突出した構造とする場合には、例えば板状または円筒状に突出させることができる。突起物の長さは特に限定されず、液体の粘度に応じて適宜選択することができる。例えば、該突起物を容器底辺近くまで伸ばすことで、液体を注入する際に突起物にそって液体が容器内に入っていくため、注入口の付根付近に薄膜が生じるのを防ぎ、スムーズに液体を容器内に注ぐことが可能となる。さらに、突起物が円筒状の場合には、円筒を斜めに切り、切り口面の面積を広げることが好ましい。切り口面を広くすることで、切り口部に膜が生じるのを防ぎ、液体を容易に容器内に注ぐことが可能となる。このような突起物を有する構造の容器は、液体採取部分に泡が生じた場合も、下方に突出した突起物付近に泡が移動するので液体採取の際に泡の影響を受けることもない。
【0021】
本発明の容器の素材は、このような構造を有する容器を形成しうるものであれば良く、特に限定されず、例えば検査目的等、使用の目的に応じて選択をすることができる。一般的に使用される素材の例として、アセタル、アクリル、セルローズアセテート、セルローズニトレート、シリコンサーモプラスチックエラストマー、ヘイラー、テフゼル、テフロン、フッソ加工ポリエチレン、繊維ガラス強化ポリエステル、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン、ナイロン、ポリカーボネート、ポリグリコール、ポリエチレン、ポリエチルミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンテレフタレートコポリエステル、ポリメチールメタクリレート、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリプロピレンコポリマー、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン、ポリサルフィン、ポリウレタン、塩化ビニール、ポリビニリデンフッ素樹脂、スチレンアクリルニトリル、無界面活性剤セルローズアセテート、サーモプラスチックエラストマー、クロスリンク高密度ポリエチレン等が挙げられる。
【0022】
本発明は、本発明の容器を利用可能な検査装置にも及ぶ。
【0023】
【実施例】
以下に、実施例を図面を用いて具体的に説明するが、これらは単なる例示であって本発明を限定するものではない。
【0024】
【実施例1】
図1は、本発明の容器を側面から見た図である。図中▲1▼は容器の注入口および/または採取口として使用される開口部である。図中▲2▼は、該開口部から下方に突出した突起物であって板状のものを示す。本実施例の構造は、▲1▼’部分に液体由来の膜が生じるのを防ぎ、液体の注入がよりスムーズに行われる。図中▲3▼は、突起物を図1の容器前面壁または後面壁から容器内に突出させ、右側の容器内壁と平行に伸ばしたものである。▲3▼と右側の容器内壁の間隙を設けることで、泡が該間隙に移動する。図中▲4▼は、容器壁面から内部に突起物を突出させたものを示す。本実施例では、▲3▼および▲4▼の突起物は、板状の構造からなる。これらの突起物を、容器の上部、中央部、下方部に設けることで、保持する溶液の液量が多い場合でも少ない場合でも、液面の泡を移動させることができる。
【0025】
図2は、本発明の容器を図1の右側面から見た図であって、特に開口部(▲1▼)から下方に突出した突起物(▲2▼)を示す図である。
【0026】
図3は、本発明の容器を図1の上部から見た図である。図中▲1▼は、上記説明したとおりである。
【0027】
図4および図5は、容器を縦半分に分解したところを上部から見た図である。図中▲1▼▲3▼および▲4▼は上記説明したとおりである。▲4▼のように容器壁面から、突起物を交互に突出させて、突起物と突起物の間を狭くすることで、泡は突起物間の間隙に移動する。
【0028】
このような形状の容器は、自動分析装置に複数個設置することができ、連続した検査が可能となる。
【0029】
【実施例2】
図6は、本発明の別の容器を側面から見た図である。本実施例に記載の容器は、図中▲2▼の突起物が円筒状で斜めに切られた形状であることの他は、実施例1と同様である。図7は、本発明の容器を図6の右側面から見た図であって、特に開口部(▲1▼)から下方に突出した突起物(▲2▼)を示す図である。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の容器は、液体由来の膜が形成されるのを防ぎ、液体をスムーズに注入でき、膜の影響を受けず液体材料を採取することが可能となった。さらに、液体から生じた泡を容器内部の突起物や壁面に移動させることで、泡の影響を受けずに液体材料を採取可能となった。その結果、検査時間の短縮が図られ、正確な検査値が得られることとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の容器を側面から見た図である。(実施例1)
【図2】本発明の容器を図1の右側面から見た図であって、特に開口部から下方に突出した突起物を示す図である。(実施例1)
【図3】本発明の容器を図1の上部から見た図である。(実施例1)
【図4】本発明の容器を縦半分に分解した1部で、図1の上部から見た図である。(実施例1)
【図5】本発明の容器を縦半分に分解した1部で、図1の上部から見た図である。(実施例1)
【図6】本発明の別の容器を側面から見た図である。(実施例2)
【図7】本発明の容器を図6の右側面から見た図であって、特に開口部から下方に突出した突起物を示す図である。(実施例2)
【符号の説明】
▲1▼ 容器の注入口および/または採取口として使用される開口部である。
▲2▼ 開口部から下方に突出した突起物である。
▲3▼ 突起物を容器前面壁または後面壁から容器内に突出させ、右側の容器内壁と平行に伸ばしたものである。
▲4▼ 容器壁面から内部に突起物を突出させたものである。
Claims (8)
- 分析装置によって採取される液体を収容するための液体材料保持容器であって、
液体を収容する収容部と、
収容部の上面を覆い、その長手方向の端部近傍に液体を採取するための開口部を備えた上壁部と、
前記端部の逆側の開口部縁から下方に向かって突出するように設けられ、収容部を、開口部の下方の第1領域とそれに隣接する第2領域とに区分けすると共に、第1領域と第2領域との間を液体が相互に流通可能なように設けられた第1突出部と、を備え、
前記上壁部が、略三角形状を有しており、前記開口部がこの三角形の底辺近傍に設けられており、前記収容部が三角形の底辺に接続される第1壁部と、この底辺以外の2辺のそれぞれに接続される2つの側壁部とを備えており、
前記第1領域の収容部の少なくとも一方の側壁から内側へ向かって突出した板状の第2突出部を備え、この板状の第2突出部が第1壁部と平行に設けられた液体材料保持容器。 - 前記第1突出部が、板状である請求項1に記載の液体材料保持容器。
- 前記第1突出部が、円筒状の突起物を斜めに切断した形状である請求項1に記載の液体材料保持容器。
- 前記第2突出部と第1壁部との間隙が0.1〜10mmである請求項1〜3の何れか1項に記載の液体材料保持容器。
- 前記第2領域の収容部の少なくとも一方の側壁から内側へ向かって突出した板状の第3突出部を備え、この板状の第3突出部が第1壁部と平行に設けられた請求項1〜4の何れか1項に記載の液体材料保持容器。
- 前記第3突出部と所定の間隔を介して平行に設けられた板状の第4突出部を第2領域の収容部に設けた請求項5に記載の液体材料保持容器。
- 前記間隔が、0.1mm〜50mmとなるように構成された請求項6に記載の液体材料保持容器。
- 前記第3突出部の下方に所定の間隔を介して第5突出部を設け、第3突出部と第5突出部とが列状に配置される請求項5〜7の何れか1項に記載の液体材料保持容器。
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