JP4771623B2 - 掘削用バケットのツース固定構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として油圧ショベルのバケットに装着されるツースの固定構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、油圧ショベルのバケットに装着される掘削歯(ツース)をアダプタに固定するための構造として、例えば特開2000−104293号公報にて開示された構造のものが知られている。この公報には、図4(a)に示されるように、バケットのエッジ51に固着されるアダプタ52の先端部にツース53が被嵌され、両者を貫通するピン54にてアダプタ52にツース53が固定されるとともに、前記ピン54の溝部54aがアダプタ52の横方向穴52aと同心でそのアダプタ52の一側端面に形成される端ぐり部52bに配置される割り部付きリング55の内周縁に嵌合されることで前記ピン54が保持される構造のものが開示されている。なお、図中符号56は、ゴム製の弾性リングである。一方、他の従来構造として、図4(b)に示されるように、バケットのエッジ61に固着されるアダプタ62の先端部にツース63が被嵌され、両者を貫通するピン64にてアダプタ62にツース63が固定されるとともに、ピン本体65の中央部に装着される断面C形スプリング66が前記アダプタ62の横方向穴62aの内周面に摩擦係合することで前記ピン64が保持される構造のものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開2000−104293号公報にて開示された構造のものでは、前記端ぐり部52bを形成するための機械加工が必要であり、コスト高になるという問題点がある。また、ツース53をアダプタ52に装着する際、端ぐり部52b内に割り部付きリング55が嵌め込まれた状態を保持しつつ、ツース53をアダプタ52の先端部に被嵌させなければならず組付性が悪いという問題点がある。一方、前記図4(b)に示される他の従来構造では、それらの問題点は有しないものの、ピン本体65と横方向穴62aとの間に泥等が詰って固まると、ピン64を抜き取るのが非常に困難になるという問題点がある。
【0004】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたもので、ツースをアダプタに固定するためのピンの抜き差しを容易に行うことができ、これによりツースの着脱交換作業の効率を向上させることができる掘削用バケットのツース固定構造を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
前記目的を達成するために、本発明による掘削用バケットのツース固定構造は、
ツースとこのツースを保持するアダプタとにそれぞれ貫通穴が穿設され、これら貫通穴に挿通されるピンにて前記アダプタに前記ツースが固定される掘削用バケットのツース固定構造において、
前記ピンの抜取および差込側に近接する端部寄りの位置に設けられた環状溝に輪状スプリングが装着され、この輪状スプリングが前記アダプタの貫通穴の長手方向における端部寄りの位置の内周面に摩擦係合するように構成されることを特徴とするものである。
【0006】
本発明によれば、前記輪状スプリングが前記アダプタの貫通穴の長手方向における一側端部に配置されるので、前記ピンの抜取作業時には前記ピンをその輪状スプリングが装着される側の方向に抜き取ることにより、また前記ピンの差込作業時には前記ピンをその輪状スプリングが装着される側とは逆の方向に沿って差し込むことにより、その輪状スプリングと前記アダプタの貫通穴との間に生じる摩擦力に抗して前記ピンを移動させる距離が著しく短縮化され、前記ピンの抜き差しを効率よく行なうことができる。また、前記ピンの抜取作業時に抜き抵抗となる泥等の詰まり量が減量化され、これによりその抜き抵抗となる泥等を輪状スプリングでアダプタの貫通穴の外部に容易に押し出すことができる。したがって、泥等の詰まりが原因で前記ピンの抜取作業が非常に困難になるといった不具合を回避することができる。以上のことから、本発明によれば、前記ピンの着脱作業の効率を向上させることができ、もってツースの着脱交換作業の効率を向上させることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に、本発明による掘削用バケットのツース固定構造の具体的な実施の形態につき、図面を参照しつつ説明する。
【0008】
図1には、本発明の一実施形態に係る掘削用バケットの全体斜視図が示されている。図2には、ツースをアダプタに固定するための構造説明図が示されている。
【0009】
本実施形態に係る掘削用バケット1は、図示されない油圧ショベルの作業機の先端部に装備されるバケットであって、バケットリップ2に溶接固着される複数のアダプタ10と、各アダプタ10の先端部に被嵌される掘削歯(以下、「ツース」と称する。)11とを備えて構成されている。
【0010】
本実施形態において、図2(a)に示されるように、前記アダプタ10の先端部には横方向穴(本発明のアダプタの貫通穴に対応する)10aが、前記ツース11には側面部穴(本発明のツースの貫通穴に対応する)11a,11aがそれぞれ穿設され、その横方向穴10aと側面部穴11a,11aとに挿通される固定ピン12によって、ツース11がアダプタ10の先端部に着脱可能に固定されている。なお、前記横方向穴10aは、固定ピン12に装着されるC形スプリング(後述する)とこの横方向穴10aの内周面との間にそのC形スプリングによる弾性拡張力によって摩擦力を発生させ、この摩擦力により固定ピン12が横方向穴10aに固定されるようにそのC形スプリングが嵌め合わされる径とされている。一方、前記側面部穴11a,11aは、C形スプリングが干渉することなく固定ピン12が挿通される径とされている。
【0011】
前記固定ピン12は、図2(a)(b)に示されるように、環状溝13aを有するピン本体13と、その環状溝13aに装着される断面C形で所要幅を有するC形スプリング(本発明の輪状スプリングに対応する)14とで構成されている。本実施形態では、前記横方向穴10aと前記側面部穴11a,11aとにこの固定ピン12が挿通された状態で、前記C形スプリング14の外周面がその横方向穴10aの長手方向における一側端部(図では左側端部)の内周面に摩擦係合するようにされている。以後、説明の都合上、この固定ピン12において、C形スプリング14が装着される側の端部をヘッド側端部12aとし、その反対側の端部をテール側端部12bとする。また、この固定ピン12をヘッド側端部12aからテール側端部12bへ向かう方向に沿って移動させる方向を差込方向Qとし、これに対して固定ピン12をテール側端部12bからヘッド側端部12aへ向かう方向に沿って移動させる方向を抜取方向Pとする。
【0012】
こうして、固定ピン12の抜取作業および差込作業に伴い固定ピン12をそれぞれ抜取方向Pおよび差込方向Qに沿って移動させる場合において、C形スプリング14による横方向穴10aとの間に生じる摩擦力に抗して移動させる距離Dの短縮化が図られている。また、C形スプリング14におけるヘッド側端部12a側の側壁14aから抜取方向Pに向かって横方向穴10aの一端までの距離L1がC形スプリング14におけるテール側端部12b側の側壁14bから差込方向Qに向かって横方向穴10aの他端までの距離L2よりも大幅に短くされ、固定ピン12を抜取方向Pに沿って移動させる際における抜き抵抗となる泥等の詰まり量の減量化が図られている。
【0013】
次に、ツース11の着脱交換に伴う固定ピン12の抜取作業および差込作業について説明する。
【0014】
固定ピン12の抜取作業を行なう場合には、横方向穴10aおよび側面部穴11a,11aに固定ピン12が挿通された状態(図2参照)において、その固定ピン12のテール側端部12bの端面を例えば図示省略されるハンマーで叩いて固定ピン12に抜き力を付与し、その固定ピン12を抜取方向Pに沿って移動させる。この抜取作業においては、C形スプリング14の外周面が横方向穴10aの内周面と摩擦係合しながら固定ピン12が移動される間(距離D)は、両者間の摩擦力に抗して固定ピン12を移動させることとなる。この際、ピン本体13と横方向穴10aとの間であってC形スプリング14の側壁14aと横方向穴10aの一端との間(図2中矢印Aで示される部分)に詰まった泥等は、ハンマー等による打撃により付与される衝撃力等によって破砕されるとともに、固定ピン12の抜取方向Pへの移動に伴い順次横方向穴10a内部からその外部へと押し出される。こうして、図3(a)に示されるように、固定ピン12がC形スプリング14の外周面と横方向穴10a内周面との摩擦係合が解除される位置まで抜取方向Pに沿って移動される。この後、ピン本体13と横方向穴10aとの間の泥等との接触摩擦は在るもののそれは微少であり、殆ど抵抗なく固定ピン12は抜取方向Pに沿って移動され、図3(b)に示されるように、横方向穴10aおよび側面部穴11a,11aから完全に抜き取られる。
【0015】
一方、固定ピン12の差込作業を行なう場合には、図3(b)に示されるように、横方向穴10aと側面部穴11a,11aとを一致させた状態で、それら両穴に向かって固定ピン12のテール側端部12bを先頭にC形スプリング14の側壁14bが横方向穴10aの一端縁に当接されるまで固定ピン12を差込方向Qに沿って移動させ(図3(a)参照)、次いで固定ピン12がそれら両穴に挿通されるまでその固定ピン12に例えばハンマー等でヘッド側端部12aの端面を打撃するなどによる押込み力を付与し固定ピン12を挿嵌する(図2(a)参照)。この差込作業においては、テール側端部12b側におけるC形スプリング14の側壁14bが横方向穴10aの一端縁に当接されるまで何ら抵抗なく差込方向Qに沿って移動されてツース11およびアダプタ10内部に固定ピン12の大部分が挿入される(図3(b)に示される状態から図3(a)に示される状態)。これにより、固定ピン12をハンマー等で打ち込む際の打込み代が短くされるとともに、ツース11側面からの固定ピン12のヘッド側端部12aの突出代が短くされ、これらのことから、ハンマー等による打ち込み労力が低減されるとともに、ハンマー等を振る際に必要なスペースが十分に確保され、差込作業の容易化が図れる。
【0016】
本実施形態によれば、固定ピン12の差込作業および抜取作業のいずれの場合においても、C形スプリング14による横方向穴10aとの間に生じる摩擦力に抗して移動させる距離Dの短縮化が図られているので、それらの作業を容易かつ迅速に行なうことができ、これによりツースの着脱交換作業の効率を向上させることができる。また、図2(a)に示されるように前記距離L1が前記距離L2よりも大幅に短くされることで固定ピン12の抜取方向Pにおける抜き抵抗となる泥等の詰まり量の減量化が図られているので、泥等の詰まりが原因で固定ピン12の抜取作業が非常に困難になるといった不具合を回避することができる。
【0017】
本実施形態は、固定ピン12の抜取方向Pにおける抜き抵抗となる泥等の減量化およびC形スプリングにより発生される横方向穴10aの内周面との間の摩擦力に抗して固定ピン12を移動させる距離(図2(a)中記号D)の短縮化の観点から成された態様であるとともに、図4(b)に示される構造、すなわち前記従来技術における後者に係る構造のものとの互換性をも考慮して成された態様でもある。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る掘削用バケットの全体斜視図である。
【図2】図2は、ツースをアダプタに固定するための構造説明図で、要部断面図(a)および(a)のX−X視断面における固定ピンの断面図(b)である。
【図3】図3(a)(b)は、固定ピンの抜取作業および差込作業の説明図である。
【図4】図4(a)(b)は、従来のツース固定構造の説明図である。
【符号の説明】
1 掘削用バケット
10 アダプタ
10a 横方向穴
11 掘削歯(ツース)
11a 側面部穴
12 固定ピン
14 C形スプリング
Claims (1)
- ツースとこのツースを保持するアダプタとにそれぞれ貫通穴が穿設され、これら貫通穴に挿通されるピンにて前記アダプタに前記ツースが固定される掘削用バケットのツース固定構造において、
前記ピンの抜取および差込側に近接する端部寄りの位置に設けられた環状溝に輪状スプリングが装着され、この輪状スプリングが前記アダプタの貫通穴の長手方向における端部寄りの位置の内周面に摩擦係合するように構成されることを特徴とする掘削用バケットのツース固定構造。
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