特許文献1のようなクリップ取付け構造では、解放された鍵穴状のクリップ取付け孔14を備えるクリップ着座部11を形成する際に、金型にスライドコアが必要となるため、金型のコストが大きくなり、成形工数も増加する。また、クリップ着座部11にクリップを挿入して係合させる際に、車体パネルと水平方向に沿ってクリップを水平に移動して取付け孔14に挿入する必要があるため、取付け工程の煩雑さが増す一方、取付け作業の効率が低下する。さらに、取付け孔14が開放された鍵穴状であるため、一旦取り付けられたクリップは、外力により再び解放端から脱出する可能性があり、クリップ取付け構造の機械強度及び確実性等が十分とは言えない。
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、取付け簡単かつ高い機械強度を有するクリップ取付け構造を提供することを課題とする。
(1)本発明のクリップ取付け構造は、成形品本体から突出し、一端に開口を持つ第1筒状部材と、両端に開口を有し、その外周面に外周方向に沿って略リング状に形成された歯部を持ち、外径が縮拡径可能な第2筒状部材と、一端に前記第2筒状部材に挿入可能な棒状部を持つサポータと、前記サポータの他端に係合保持されたクリップと、を備え、前記第2筒状部材は、前記第1筒状部材の開口から、前記第1筒状部材の内部に同軸的に圧入され、前記サポータは、前記棒状部が前記第2筒状部材の一端の開口から、前記第2筒状部材の内部に同軸的に圧入されて前記第2筒状部材の縮径を規制し、前記第2筒状部材の前記歯部が前記第1筒状部材の内周面に食い込むことにより、前記クリップが前記成形品本体に保持されることを特徴とする。
本発明のクリップ取付け構造によれば、第2筒状部材を第1筒状部材に圧入し更に第2筒状部材の内部にサポータを圧入することで、歯部を介して第2筒状部材が第1筒状部材に係合され、サポータの他端に保持されたクリップを確実に成形品本体に取り付けることができる。また、第2筒状部材及びサポータが同軸に第1筒状部材に圧入して一体となり、高い機械強度を実現しながらも、安定かつ確実にクリップを成形品本体に取り付けることができる。そして、第1筒状部材、第2筒状部材及びサポータは成形品本体に対して垂直的に、そして順番に同軸に圧入して取り付けられるため、取付け作業が簡単化され、取付け効率が向上する。また、本発明のクリップ取付け構造を形成する際に、金型にスライドコアの必要がなくなり、金型のコストを抑えることができ、成形工数を削減することができる。
(2)本発明のクリップ取付け構造の前記第2筒状部材は、前記第1筒状部材よりも高い硬度を有する材料で構成されることが好ましい。
これにより、第2筒状部材の歯部は、第1筒状部材に食い込みやすくなり、より確実に取り付けることができる。
(3)本発明のクリップ取付け構造の前記第2筒状部材は、周方向に近接、離間可能な複数の分離体からなることが好ましい。
これにより、第2筒状部材を構成する複数の分離体は、周方向に近接、離間することができる。即ち、第2筒状部材を第1筒状部材に圧入する際に、分離体の相対移動(近接)により、第2筒状部材が縮径することができ、容易に第1筒状部材の内部に挿入することができる。また、サポータを第2筒状部材に圧入する際に、分離体の相対移動(離間)により、第2筒状部材が拡径することができ、容易にサポータを挿入することができる。よって、取付ける作業を簡単にすると同時に、確実にクリップを形成品本体に取り付けることができる。なお、本発明では、「近接」とは、分離体同士が近づくことをいう。また、「離間」とは、分離体同士が離れることをいう。分離体同士が近接することにより、第2筒状部材の径が小さくなる(縮径する)。また、分離体同士が離間することにより、第2筒状部材の径が大きくなる(拡径する)。
(4)本発明のクリップ取付け構造の前記サポータは、前記棒状部の先端に前記棒状部の外径よりも大きい外径を持つ頭部を備え、前記頭部は、前記第2筒状部材の内部を通り抜けた後、前記第2筒状部材の他端の開口から突出して他端面と係合されることが好ましい。
これにより、摩擦抵抗によって第2筒状部材の内部に固定保持されたサポータの棒状部は、更に頭部を介して第2筒状部材の他端の開口(他端面)と係合することができる。よって、サポータの他端に保持されたクリップは、より確実に第2筒状部材と係合することができる。結果的に、クリップを安定かつ確実に成形品本体に取り付けることができる。
(5)本発明のクリップ取付け構造の前記第1筒状部材は、その内周面の少なくとも一部に形成され、該内周面より突出する突出部を備え、前記突出部は、前記第2筒状部材の前記歯部に当接し、食い込み変形により前記歯部と係合されることが好ましい。
これにより、第2筒状部材の外周面に形成された歯部は、第1筒状部材の内表面に形成された突出部と係合することができる。よって、第1筒状部材と第2筒状部材の係合性が一層高まり、結果的により安定かつ確実にクリップを形成品本体に取り付けることができる。
(6)本発明のクリップ取付け構造の前記第1筒状部材及び前記第2筒状部材に形成され、前記第2筒状部材を前記第1筒状部材に圧入する際に、前記第1筒状部材と前記第2筒状部材の相対移動をガイドするガイド部を備えることが好ましい。
これにより、本発明のクリップ取り付け構造の取り付け作業がより簡単になり、取付け効率が向上する。また、ガイド部を軸方向に形成した際、第1筒状部材と第2筒状部材の周方向における相対移動を防ぐことができる。
(7)本発明のクリップ取付け構造の前記第2筒状部材の前記歯部は、先端側から後端側に向かうにつれて径が大きくなり断面で鋸刃形状であることが好ましい。
これにより、歯部が第1筒状部材に食い込みやすくなると同時に、有効に第2筒状部材を第1筒状部材に固定することができる。また、歯部が先端側から後端側に向かうにつれて径が大きくなるように設定されているため、第2筒状部材は、第1筒状部材に挿入しやすく、第1筒状部材から脱出しにくくなる。よって、安定かつ確実にクリップを成形品本体に取り付けることができる。
(8)本発明のクリップ取付け構造の前記第2筒状部材と、前記サポータとは、一体成形により形成されることが好ましい。
これにより、本発明のクリップ取付け構造は、部品点数が少なくなるため、簡単に製造、取り付けることができる。
(9)本発明のクリップ取付け構造の前記第2筒状部材と、前記サポータと、前記クリップとは、一体成形により形成されることが好ましい。
これにより、本発明のクリップ取付け構造は、更に部品点数が少なくなり、簡単に製造、取り付けることができる。
(10)本発明のクリップ取付け構造の前記サポータの前記他端には、前記クリップを前記サポータに相対移動可能に係合保持する係合部を備えることが好ましい。
これにより、クリップ取付け構造の取付け位置が調整可能となり、車体パネルへの内装部品などの取り付作業がより容易になる。
(11)本発明のクリップ取付け構造は、自動車の内外装部品に使用されることが好ましい。
本発明のクリップ取付け構造によれば、成形品本体の鍵穴状のクリップ取付け孔が不要のため、金型にスライドコアの必要がなくなり、金型費用を含む成形コストを削減することができる。また、本発明のクリップ取付け構造は、高い機械強度を実現しながらも、安定かつ確実にクリップを成形品本体に取り付けることができる。更に、部品を同軸に一体形成することにより、ワンプッシュ(一回の押す作業)でクリップの取り付けを完了させることができ、取付け作業が簡単化され、取付け効率が向上する。
本実施形態のクリップ取付け構造は、第1筒状部材と、第2筒状部材と、サポータと、クリップとからなる。
第1筒状部材は、円筒状であり、成形品本体と一体に形成される。なお、円筒状以外に、例えば、三角筒状などの形状とすることもできる。
また、第1筒状部材は成形品本体の表面から垂直的に突出するように形成される。なお、機械強度等を配慮した上、第1筒状部材の形成角度等を調整することができる。つまり、成形品本体の表面に対して、垂直方向以外に突出するように第1筒状部材を形成することもできる。
また、第1筒状部材は一端に開口を備える。この開口から、第2筒状部材を第1筒状部材の内部に圧入する。
第2筒状部材は、両端に開口を備える。また、第2筒状部材の外周面には、外周方向に沿って歯部が略リング状に形成される。
歯部は、先端側から後端側に向かうにつれて径が大きくなり断面で鋸刃形状に形成されることが望ましい。これにより、歯部が第1筒状部材に食い込みやすくなり、有効に第2筒状部材を第1筒状部材に固定することができる。よって、安定かつ確実にクリップを成形品本体に取り付けることができる。
また、第2筒状部材は第1筒状部材よりも高い硬度を有する材料で構成されることが望ましい。第1筒状部材を構成する材料としては、PP樹脂などを例示することができる。また、第2筒状部材を構成する材料としては、POM樹脂などを例示することができる。
これにより、第2筒状部材の歯部は、第1筒状部材に食い込みやすくなり、より確実に取り付けることができ、機械強度等の向上に有利である。
また、第2筒状部材は周方向に近接、離間可能な複数の分離体から形成することが望ましい。本実施形態では、分離体同士の間には、スリットが形成されており、分離体同士が互いに相対的に移動して第2筒状部材の径を変更することができる。これにより、第2筒状部材を第1筒状部材に圧入する際に、分離体の相対移動(近接)により、第2筒状部材が縮径可能になり、容易に第1筒状部材の内部に挿入することができる。また、サポータを第2筒状部材に圧入する際に、分離体の相対移動(離間)により、第2筒状部材が拡径可能になり、容易にサポータを挿入することができる。よって、クリップの取付ける作業を簡単化すると同時に、確実にクリップを形成品本体に取り付けることができる。なお、分離体同士の間にスリットを形成し、「近接」又は「離間」により縮径、拡径を実現する方法のほかには、外力に応じて変形可能な弾力性部材を用いて分離体の少なく一部を形成し、弾力性部材の変形により第2筒状部材の縮径、拡径を実現する方法も挙げられる。
サポータは一端に棒状部を備え、棒状部は第2筒状部材の内径よりも大きい外径を有する。また、サポータの他端には、クリップが係合保持される。
また、棒状部の先端には頭部を備えることができる。頭部は棒状部の外径よりも大きい外径を有する。棒状部と同時に第2筒状部材の内部に圧入された頭部は、第2筒状部材の内部を通り抜けた後、第2筒状部材の他端の開口から突出して第2筒状部材の他端面と係合される。棒状部に頭部を備えることより、摩擦抵抗によって第2筒状部材の内部に固定保持されたサポータは、更に頭部を介して第2筒状部材の他端の開口(他端面)と係合される。従って、サポータの他端に保持されたクリップは、より確実に第2筒状部材に係合保持することができる。結果的に、クリップを安定かつ確実に成形品本体に取り付けることができる。
このように、第2筒状部材は、第1筒状部材の開口から、第1筒状部材の内部に同軸的に圧入される。そして、サポータは、棒状部が第2筒状部材の一端の開口から、第2筒状部材の内部に同軸的に圧入される。また、第2筒状部材の内部にサポータを圧入することで、第2筒状部材の歯部が拡径して第1筒状部材の内周面に食い込むことにより、クリップが成形品本体に保持される。
本実施形態のクリップ取付け構造をこのような構成とすることより、第2筒状部材を第1筒状部材に圧入し更に第2筒状部材の内部にサポータを圧入することで、歯部を介して第2筒状部材が第1筒状部材に係合され、確実にサポータの他端に保持されたクリップを成形品本体に取り付けることができる。また、第2筒状部材及びサポータが同軸に第1筒状部材に圧入して一体となり、高い機械強度を実現しながらも、安定かつ確実にクリップを成形品本体に取り付けることができる。そして、第1筒状部材、第2筒状部材及びサポータは成形品本体に対して垂直的に、そして順番に同軸に圧入して取り付けられるため、取付け作業が簡単化され、取付け効率が向上する。
また、本実施形態のクリップ取付け構造の第1筒状部材は、その内周面の少なくとも一部に形成され、該内周面より突出する突出部を備えることが望ましい。また、突出部は、第2筒状部材の歯部に当接し、食い込み変形により歯部と係合される。突出部を設けることにより、第2筒状部材の外周面に形成された歯部は、第1筒状部材の内表面との係合性が一層高まり、より安定かつ確実にクリップを形成品本体に取り付けることができる。
また、本実施形態のクリップ取付け構造の第1筒状部材及び第2筒状部材にガイド部が形成されることが望ましい。ガイド部は、第2筒状部材を第1筒状部材に圧入する際に、第1筒状部材と第2筒状部材の相対移動をガイドするものである。具体的に、ガイドは、例えば第1筒状部材の内周面に軸方向に沿って形成される突条と、第2筒状部材の外周面にこの突条に合わせて形成される溝とからなることができる。第2筒状部材の外周面に形成された溝に、第1筒状部材の内周面に形成された突条を導入し、溝と突条の組合せにより、第2筒状部材を第1筒状部材の内部にガイドすることができる。なお、ガイド部は、軸方向に延びる直線形とすることが好ましい。
ガイド部を設けることにより、本実施形態のクリップ取り付け構造の取り付け作業がより簡単になり、取付け効率が向上する。また、軸方向に沿ってガイド部を形成することで、第1筒状部材と第2筒状部材との相対位置を周方向において固定することができる。これにより、第1筒状部材の内部に圧入された第2筒状部材の相対的な(回転)移動を抑制することができ、より安定したクリップ取り付け構造を実現することができる。
また、第1筒状部材と同様に、第2筒状部材及びサポータは、基本的に円筒状(円形の断面形状)として形成されるが、その他の筒状形状(例えば三角筒状、断面形状は三角形である)とすることもできる。
また、第2筒状部材とサポータは一体成形により形成されることが望ましく、場合によっては、第2筒状部材とサポータとクリップとを一体成形により形成することもできる。第2筒状部材とサポータとは、薄肉部等の破断部を介して一体化することができる。また、圧入の際に破断部が破断する。第2筒状部材とサポータとクリップを一体形成とすることにより、本実施形態のクリップ取付け構造を簡単に製造、取り付けることができる。また、部品点数を低減することができ、製造工数を削減することができる。
また、サポータの他端には、クリップをサポータに相対移動可能に係合保持する係合部を備えることが望ましい。係合部は、クリップをサポータの他端に係合保持しながらも、クリップとサポータとの間に所定の相対移動を可能とすることができる。これにより、クリップ取付け構造の取付け位置が調整可能となり、車体パネルへの取り付作業がより容易になる。また、クリップ取付け構造において、相対移動を可能にする係合部を備えることにより、取付け部品の精度や、車体パネルの取り付け孔の位置などによる取付け位置の変動を吸収することができ、安定かつ高い機械強度を有しながらも、容易に取り付け可能なクリップ取付け構造を実現することができる。
また、本実施形態のクリップ取付け構造は、好ましくは自動車の内外装部品に使用される。
以下、図面を用いて、本発明のクリップ取付け構造の実施例を説明する。
(実施例1)
図1は、本実施例のクリップ取付け構造の斜視概念図を示す。また、図2は、本実施例のクリップ取付け構造の平面概念図を示す。より具体的に本実施例を説明するために、クリップ取付け構造の取り付ける前の状態を図3に示す。なお、図3は、図2に示すA−A位置の取り付ける前のクリップ取付け構造の断面概念図である。
図1又は図3に示すように、本実施例のクリップ取付け構造は、第1筒状部材10と、第2筒状部材20と、サポータ30と、クリップ40とを備えている。
(第1筒状部材)
図3に示すように、第1筒状部材10は、ピラーガーニッシュなどの成形品本体99の裏側の表面991から垂直的に突出して円筒状に形成されるものである。また、第1筒状部材10は、一端に開口101を持っている。開口101と成形品本体99との間に、側壁部102が形成されている。側壁部102は、内周面1021と、外周面1022とを備えている。また、開口101側には、端面1011が形成されている。
また、図1又は図2に示すように、第1筒状部材10の外周面1022と成形品本体99の表面991との間に、表面991と外周面1022をそれぞれ垂直的に連結する板状のリブ103が形成されている。リブ103は、複数個(四つ)で第1筒状部材10の周方向に沿って均等に配置されている。
成形品本体99と第1筒状部材10とリブ103とは一体形成されており、側壁部102は、リブ103により補強される。
また、図1に示すように、第1筒状部材10の内周面1021(図2を参照)には、内周面面1021から突出し、軸方向に沿って延びる突出部104と、ガイド部105とをそれぞれ備えている。
図1に示すように、突出部104は、内周面1021において均等に複数個(4つ)で形成されている。また、突出部104は、後述する第2筒状部材20の歯部203と食い噛むことにより係合することができる。なお、突出部104は、一個でも「係合する」役割を果たせるが、第2筒状部材20をより安定的に第1筒状部材10の内部に支持して係合するために、突出部104は3個以上が好ましい。
ガイド部105は、内周面1021において均等に複数個(4つ)で形成されている。また、ガイド部105は、第2筒状部材20に形成され後述するガイド相手部材1051と嵌合し、第2筒状部材20を第1筒状部材10の内部に挿入する際にガイドする役割を担って相対位置を決める。なお、本実施例では、ガイド部105は複数個で設けられているが、これに限らず、ガイド部105は1個でもよい。
(第2筒状部材)
図3に示すように、第2筒状部材20は、略筒状部204と扁平部205により構成される。また、略筒状部204と扁平部205の内部には、共通の内周面2041が形成される。なお、略筒状部204は、薄肉部2043を介して扁平部205に接続されている。
また、図3に示すように、第2筒状部材20は、略筒状部204側に開口201を、扁平部205側に開口202をそれぞれ備えている。開口201側には、端面2011と台形面2044が形成されている。扁平部205は、端面2051、2052をそれぞれ備えている。第2筒状部材20の開口201側に、台形面2044を備えることにより、開口101から第2筒状部材20を第1筒状部材10の内部に圧入する際の作業がより容易に行える。
略筒状部204は、台形面2044と扁平部205とを接続する外周面2042を形成している。更に、外周面2042には、断面で鋸刃状の歯部203が形成されている。また、図1から理解できるように、歯部203は、複数個で第2筒状部材20の外周方向に沿って、リング状に形成されている。また、図3に示すように、歯部203は、先端側(開口201側)から後端側(開口202側)に向かうにつれ、経が大きくなる断面で鋸刃状とされている。
歯部203は先端側から後端側に向かうにつれ経が大きくなっているため、開口201端を先端として、第2筒状部材20を開口101から第1筒状部材10の内部に圧入する際に、歯部203を持つ第2筒状部材20の外周面2042をよりスムーズに第1筒状部材10の内周面1021に摺動しながら圧入することができる。また、一旦第2筒状部材20が第1筒状部材10の内部に圧入された後、歯部203の上記傾き具合により、第2筒状部材20が第1筒状部材10から脱出しにくい。
図4は、第2筒状部材20の(図3に示すB方向視)平面図を示す。図4に示すように、第2筒状部材20の略筒状部204は、断面が扇形の複数個(四つ)の分離体200からなる。四つの分離体200は、均等にリング状に配置されており、分離体200同士の間にスリットSが形成されている。
なお、スリットSは、ガイド相手部材1051を構成する。つまり、第1筒状部材10の内周面1021に形成されたガイド部105と、第2筒状部材20の略筒状部204に形成されたガイド相手部材1051(スリットS)との嵌合関係により、第2筒状部材20を第1筒状部材10の内部の所定相対位置に、容易に圧入することができる。また、第1筒状部材10と第2筒状部材20間の相対移動(相対回転)を防ぐこともできる。
第2筒状部材20は、弾力性を有する樹脂(POM樹脂)で構成され、更に分離体200と扁平部205との間に薄肉部2043が形成されているため、外力が加えられた時、分離体200は、薄肉部2043を支点とし開口201端が径方向に沿って一定範囲内に動く(拡径または縮径する方向に搖動する)ことができる。
また、図4から理解できるように、略筒状部204の外周面2042に形成された歯部203は、略リング状に配置されている。そして、分離体200と同様に、歯部203も径方向に沿って移動(拡径または縮径する方向に搖動する)可能になっている。
(サポータ)
図3に示すように、サポータ30は、一端に形成された棒状部301と、他端に棒状部301と一体的に形成された扁平部302により構成される。棒状部301は、先端に略円錐状に形成された先端部303と、外周面3011とを備えている。サポータ30の他端に形成された扁平部302は、端面3021、3022を備えている。また、端面3022には、クリップ40が一体的に形成され、サポータ30に係合して保持されている。
また、サポータ30の先端部303と第2筒状部材20の開口202との間には、一体成形加工するための連結部Lが形成されている。つまり、第2筒状部材20とサポータ30はこの連結部Lを介して一体成形を実現している。また、連結部Lは、取り付ける際に容易に切断可能に形成されている。
また、図3から理解できるように、サポータ30の他端に形成された扁平部302の端面3022には、係合部304が形成されている。係合部304は、端面3022に直交し、互いに平行する2つの同形状の板状部材3041を備えている。この2つの板状部材3041の中心部には、それぞれ通孔(係合口)3042を備えている。また、板状部材3041の間には、係合空間3043が形成されている。
(クリップ)
図3に示すように、クリップ40はクリップ本体401と、軸方向に伸びる板状連結部材402と、板状連結部材402の一端に形成され該板状連結部材402と直交する係合相手部403と、を備えている。即ち、クリップ本体401は、板状連結部材402を介して係合相手部403と連結している。
また、係合相手部403は、板状連結部材402を介して上記係合空間3043に挿入され、さらに板状部材3041の係合口3042に挿入されている。つまり、係合空間3043内において、板状連結部材402が移動しても係合相手部403が係合口3042から脱出しないように、クリップ40とサポータ30が一体に形成されている。このため、クリップ40は、サポータ30に対して相対移動可能に係合保持されている。
次に、本実施例のクリップ取付け構造の取り付け手順(方法)について説明する。
(1)第1筒状部材10の内部に第2筒状部材20を圧入する。
図5は、本実施例のクリップ取付け構造の第1筒状部材10に第2筒状部材20を圧入した状態を示す。図5に示すように、形成品本体99の表面991に一体形成された第1筒状部材10の開口101から、第2筒状部材20の開口201側を同軸的に挿入する。
このとき、図1に示すように、ガイド部105とガイド相手部材1051(スリップS)とを合わせることで、第2筒状部材20が、より容易に第1筒状部材10の内部に圧入することができる。また、第2筒状部材20と第1筒状部材10の周方向における相対位置を固定(ロック)することができる。
第2筒状部材20を第1筒状部材10側に押し付けることにより、第2筒状部材20の歯部203が第1筒状部材10の内周面1021に摺接しながら、第2筒状部材20が第1筒状部材10の内部に同軸的に圧入される。第2筒状部材20の扁平部205の端面2051が第1筒状部材10の端面1011に接触して停止する。
第2筒状部材20の外径R21(図3を参照)は、第1筒状部材10の内径R1(図3を参照)よりも大きく設定されているため、第2筒状部材20が第1筒状部材10の内部に圧入される際、第2筒状部材20の略筒状部204を構成する複数の分離体200(図4を参照)は、第1筒状部材10の規制力によりスリットS(図4を参照)の間隙が縮まり、開口202側から開口201側へ縮径方向に変形する(傾く)。即ち、分離体200と扁平部205との間に形成された薄肉部2043及び分離体200同士間に形成されたスリットSを備えることで、外力(挿入される側である第1筒状部材10の規制力)により分離体200が径方向に移動可能になっている。
(2)第2筒状部材20の内部にさらにサポータ30を圧入する。
図6は、本実施例のクリップ取付け構造の第2筒状部材20にサポータ30を圧入した状態を示す。図6に示すように、第1筒状部材10の内部に圧入された第2筒状部材20の開口202から、同軸的に棒状部301の先端部303側を挿入する。このとき、図5に示す連結部Lが破断する。
サポータ30を第2筒状部材20に押し付けることにより、棒状部301の外周面3011が第2筒状部材20の内周面2041に摺接しながら、第2筒状部材20の開口201側へ同軸的に圧入される。サポータ30の扁平部302の端面3021が第2筒状部材20の端面2052に接触して停止する。
サポータ30の棒状部301の外径R3(図3を参照)は、第2筒状部材20の略筒状部204の内径R22(図3を参照)よりも大きく設定されているため、棒状部301が第2筒状部材20の内部に圧入にされる際、略筒状部204を構成する複数の分離体200(図4を参照)は、中心から径方向に押し付けられ、拡径する方向に変形する。
これにより、棒状部301の外周面3011と第2筒状部材20の内周面2041との摩擦抵抗力が増す一方、第2筒状部材20が拡径することで、略筒状部204の外周面2042に形成された歯部203が第1筒状部材10の内周面1021に形成された突出部104(図1を参照)に食い込み係合される。よって、第1筒状部材10と第2筒状部材20の係合性が一層高まり、より安定かつ確実にクリップ40を形成品本体99に取り付けることができる。
サポータ30の棒状部301を第2筒状部材20の内部に同軸的に圧入することにより、第2筒状部材20が拡径し歯部203が第1筒状部材10の突出部104に食い込むことにより、サポータ30が第1筒状部材10に固定される。よって、サポータ30の他端(端面3022)に形成された係合部304を介して、クリップ40が第1筒状部材10に対して相対移動可能に係合保持される。結果的に、クリップ40が成形品本体99に安定的に保持される。
なお、本実施例では、第1筒状部材10の内周面1021に突出部104を設けて、歯部203との食い込み度合を増加させ、係合関係の強化を図っているが、突出部104を設けずに、内周面1021に直接歯部203を食い込ませて係合することも可能である。
このように、本実施例のクリップ取付け構造では、第2筒状部材20を第1筒状部材10に圧入し更に第2筒状部材20の内部にサポータ30を圧入することで、歯部203を介して第2筒状部材20が第1筒状部材10に係合され、サポータ30の他端に保持されたクリップ40を確実に成形品本体99に取り付けることができる。また、第2筒状部材20及びサポータ30を同軸に第1筒状部材10に圧入して一体となり、高い機械強度を実現しながらも、安定かつ確実にクリップ40を成形品本体99に取り付けることができる。そして、第1筒状部材10、第2筒状部材20及びサポータ30は成形品本体99に対して垂直的に、そして、順番に同軸的に圧入して取り付けられるため、取付け作業が簡単化され、取付け効率が向上する。また、係合部304をサポータ30に設けることにより、クリップ40側と車体パネルの取り付け孔との相対位置の変動が吸収され、取付け作業が更に簡単になる。
また、第2筒状部材20、サポータ30及びクリップ40は同軸かつ一体的に形成されるので、取り付ける際に、軸方向に沿ってワンプッシュ(一回のみ圧入する)で成形品本体99にクリップ40を取り付けることができる。よって、製造及び取り付け簡単、便利なクリップ取り付け構造を実現することができる。
また、本実施例のクリップ取付け構造は、主に自動車の内外装部品の取り付け作業に使用されるが、一般的な取付け作業にも対応できる。
また、本実施例のクリップ取付け構造では、成形品本体99と第1筒状部材10はPP樹脂を用いて一体に形成される。この際に、スライドコアが不要となり、金型の費用を軽減することができ、製造コストを抑えることができる。
第2筒状部材20とサポータ30とクリップ40は、POM樹脂を用いて一体形成される。
このように、本実施例のクリップ取付け構造は、部品を一体形成することで、成形工数を削減することができ、さらに製造コストを低減することができる。
第2筒状部材20を構成するPOM樹脂は、第1筒状部材10を構成するPP樹脂よりも高い硬度を有する。このため、第2筒状部材20の歯部203は、第1筒状部材10(の突出部104)に食い込みやすくなり、より確実にクリップ40を成形品本体99側に取り付けることができる。
PP樹脂、POM樹脂以外にも、その他の樹脂又は金属材料などを用いてクリップ取付け構造を製造することも可能である。
(第2実施例)
本実施例は、基本的に第1実施例と同様である。以下、異なる部分のみについて説明する。
図7は、本実施例のクリップ取付け構造の組み立て後の(図2に示すC-C位置)断面概念図を示す。
図7に示すように、本実施例のクリップ取付け構造のサポータ30は、棒状部301の先端に、棒状部301の外径R3よりも大きい外径R32を持つ頭部305を備え、頭部305は、第2筒状部材20の内部を通り抜けた後、第2筒状部材20の他端の開口201から突出して他端面2011と係合される。
また、図8は本実施例の第2筒状部材20の(図7に示すD方向)平面図を示す。図9は、本実施例の第2筒状部材20の図8に示すE−E位置の断面概念図を示す。図8、図9から理解できるように、本実施例の第2筒状部材20の開口201側には、軸心に向かって収斂する方向に突出する収斂開口部2012が形成される。収斂開口部2012の内径R23は、第2筒状部材20の内周面2041の内径R22よりも小さい。
図10は、サポータ30(図8に示すE−E位置)の一部の断面概念図を示す。
図10に示すように、頭部305は、半円球状の先端面3051と、棒状部301に接続し外周面3011に直交する環状平面3052と、周方向に沿って形成されたリング状の溝部3053と、を備えている。
頭部305の外径R32は、半円球状の先端面3051の最大径となる。また、頭部305の外径R32は、棒状部301の外径R3よりも大きく設定され、第2筒状部材20の収斂開口部2012の内径R23よりも大きく設定されている。このため、棒状部301が第2筒状部材20の内部に圧入され、扁平部302と扁平部205が接触した時、棒状部301の頭部305が略筒状部204の収斂開口部2012から通り抜け、環状平面3052が第2筒状部材20の開口201の端面2011に係合される。また、第2筒状部材20の収斂開口部2012は、溝部3053と係合される。
図9に示すように、表面摩擦抵抗により第2筒状部材20の内部に固定されたサポータ30の棒状部301は、更に頭部305、溝部3053を介して第2筒状部材20の他端の開口201(他端面2011)と係合することになる。よって、サポータ30の他端に保持されたクリップ40(図7を参照)は、より確実に第2筒状部材20と係合することができる。結果的に、クリップ40を安定かつ確実に成形品本体99(図7を参照)に取り付けることができる。