JP4769934B2 - プラスチック表面の改質方法、プラスチック表面のメッキ方法およびプラスチック - Google Patents
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しかし、それでも最近の小型電子機器のフレキシブル基盤などとして使うために、ポリイミド系プラスチックにメッキ(金属被膜)を施したいという要望は強い。
(1)表面改質剤を使用する技術(湿式エッチング)
特許文献1(特開2003−192811号公報)には、アミノアルコールおよびアンモニウム塩を含む表面改質剤をポリイミド樹脂表面に塗布して、接着性を向上する技術が記載されている。
特許文献2(特開2003−239423号公報)には、スパッタリングやサンドブラスト、プラズマ処理、コロナ処理等の物理的処理を行った後、シランカップリング剤等の表面改質剤を塗布して、ポリイミド樹脂表面の接着性を向上させる技術が記載されている。
特許文献3(特開平8−283411号公報)には、ポリイミドフィルムをアセトンに浸漬し、乾燥させる前処理をした後、KrF(248nm)のエキシマレーザーを照射して、ポリイミド樹脂の表面を改質する(接着性を向上する)技術が記載されている。
特許文献4(特開平11−293009号公報)には、ポリイミド樹脂に過酸化水素水や次亜塩素酸等による湿式エッチングを行った後、波長170nm〜360nmの紫外線を照射して、ポリイミド樹脂を改質する技術が記載されている。
特許文献5(特開2001−217554号公報)には、ポリイミドを表面に塗布したシリコン基板をアンモニア水溶液中に浸漬した後、KrFエキシマレーザー光を照射して、ポリイミド表面を改質する技術が記載されている。
特許文献6(特開平9―157417号公報)には、酸素、オゾン等の第1酸化剤の存在下で波長250nm程度のKrFエキシマレーザーを照射した後、過マンガン酸塩等の第2酸化剤でエッチング処理を行ってポリイミド樹脂の表面を改質する技術が記載されている。
(3)プラスチック表面に直接金属被膜を形成する技術
特許文献7(特開2001−73159号公報)には、アルカリ水溶液で処理された後中和されたポリイミド樹脂を、銅とパラジウムを含む溶液で処理した後に、金属塩を還元剤で還元することにより、ポリイミド樹脂表面に金属皮膜(触媒核)を作成し、触媒核のさらに表面にメッキを施す技術が記載されている。
前記従来技術(2)のようなエッチング等の処理と紫外線照射の処理とを組み合わせる技術では、メッキを行う前に、エッチング等の薬品処理の工程と、紫外線を照射する工程の2工程が必要となり、工程が複雑になるという問題がある。また、多くの電子機器への応用を考えた場合、ポリイミド樹脂に接着する金属として最も需要が高いのは銅であるが、種々金属の中で、無電解銅メッキについては付着性の向上が顕著であるとは言えない。
前記従来技術(3)では、触媒核を作成した後、銅等の金属皮膜(メッキ)を施しているが、実用化を考えた場合、触媒核を介して銅メッキを施すのではなく、直接ポリイミド樹脂表面に実用強度の銅メッキを施したいという要求があり、また、従来技術(3)では、手間やコストがかかるという問題もある。
また、前記従来技術(2)では、プラスチックを液体中に浸漬した状態で紫外光を照射するとあるが、実際には波長が短くなるほど紫外光は急激に液体中を透過しなくなり、プラスチック表面に到達させることが極めて困難であることを本発明者は確認した。さらに、使用する液体が特殊な化学薬品であり、取り扱いや後処理に注意しなければならないという問題がある。
さらに、前記従来技術(1)〜(3)では、処理後のポリイミド樹脂表面に直接メッキ処理を行っても、現実には接着力が非常に弱く、実用に耐えない程度のメッキしかできていない。
また、本発明は、プラスチック内部の変質を起こさずに、接着性を向上させることを第2の技術的課題とする。
前記技術的課題を解決するために、第1発明のプラスチック表面の改質方法は、
真空排気後に水蒸気のみが導入された雰囲気中で波長172〜126nmの真空紫外光を、化学エッチング処理および真空紫外光の照射のいずれもが行われておらず且つジフェニルテトラカルボン酸とP−フェニレンジアミンとからなるポリイミド化合物により構成されたプラスチック表面に照射することにより、前記プラスチック表面の接着性を改良することを特徴とする。
前記構成要件を備えた第1発明のプラスチック表面の改質方法は、真空排気後に水蒸気のみが導入された雰囲気中で波長172〜126nmの真空紫外光を、化学エッチング処理および真空紫外光の照射のいずれもが行われておらず且つジフェニルテトラカルボン酸とP−フェニレンジアミンとからなるポリイミド化合物により構成されたプラスチック表面に照射することにより、前記プラスチック表面の接着性を改良するので、簡便な方法でプラスチック表面の接着性を向上させることができる。
第1発明の形態1のプラスチック表面の改質方法は、前記第1発明のプラスチック表面の改質方法において、
前記プラスチックがポリイミドフィルムであることを特徴とする。
(第1発明の形態1の作用)
したがって、薄く可撓性のあるフィルム状のプラスチックの表面を改質することができる。この結果、フレキシブルプリント基盤を容易に作成することもできる。
前記技術的課題を解決するために、第2発明のプラスチック表面のメッキ方法は、
前記第1発明および第1発明の形態1のいずれかのプラスチック表面の改質方法により前記プラスチック表面を改質してから、前記プラスチック表面に金属メッキ膜を形成することを特徴とする。
(第2発明の作用)
前記構成要件を備えた第2発明のプラスチック表面のメッキ方法では、前記第1発明および第1発明の形態1のいずれかのプラスチック表面の改質方法により前記プラスチック表面を改質してから、前記プラスチック表面に金属メッキ膜を形成する。したがって、接着性が高まったプラスチック表面に金属メッキ膜が形成されるので、接着性が高く、はがれにくい金属メッキ膜を形成することができる。
第2発明の形態1のプラスチック表面のメッキ方法は、前記第2発明において、
前記改質されたプラスチック表面に、触媒を付与した状態で無電解メッキにより金属を析出させることにより、金属メッキ膜を形成することを特徴とする。
(第2発明の形態1の作用)
前記構成要件を備えた第2発明の形態1のプラスチック表面のメッキ方法では、改質されたプラスチック表面に、触媒を付与した状態で無電解メッキにより金属を析出させることにより、金属メッキ膜を形成することができる。
第3発明のプラスチックは、前記第1発明および第1発明の形態1のいずれかのプラスチック表面の改質方法により改質されたプラスチック表面を有することを特徴とする。
(第3発明の作用)
前記構成要件を備えた第3発明のプラスチックでは、前記第1発明および第1発明の形態1のいずれかのプラスチック表面の改質方法によりプラスチック表面が改質されているので、プラスチック表面の接着性が高い。
前記技術的課題を解決するために、第4発明のプラスチックは、前記第2発明または第2発明の形態1のメッキ方法によりメッキ膜が形成されたことを特徴とする。
(第4発明の作用)
前記構成要件を備えた第4発明のプラスチックでは、前記第2発明または第2発明の形態1のメッキ方法によりメッキ膜が形成されるので、プラスチック表面にはがれにくいメッキ膜を形成できる。
第4発明の形態1のプラスチックは、前記第4発明のプラスチックにおいて、
ポリイミド系プラスチックの表面に銅メッキ膜が形成されたことを特徴とする。
(第4発明の形態1の作用)
前記構成要件を備えた第4発明の形態1のプラスチックでは、ポリイミド系プラスチックの表面に銅メッキ膜が形成される。したがって、接着性が高く、はがれにくい銅メッキ膜が形成されたプラスチックを作製できる。
また、本発明は、プラスチック内部の変質を起こさずに、接着性を向上させることができる。
さらに、接着性が高く、はがれにくい金属被膜を形成することができる。
(実施の形態1)
(プラスチック表面改質装置の説明)
図1は本発明のプラスチック表面改質装置の実施の形態1の説明図である。
図1に示す実施の形態1のプラスチック表面改質装置Uは、試料Sが収容される試料収容室Aを有する。前記試料収容室Aには、内部の空気を真空排気する真空排気装置F1と、内部に気体状の酸化剤を供給する酸化剤供給装置F2とが接続されている。
試料収容室Aの内部にはホルダ支持部材1が配置されており、ホルダ支持部材1の上面には試料ホルダ(プラスチック支持部材)Hが着脱可能に支持される。試料ホルダHの上部には試料(プラスチック)Sが着脱可能に支持されている。
試料収容室Aの外壁には図示しない開口が形成されており、前記開口を外部連通状態とすることにより、前記試料収容室A内と外部との間で試料ホルダHおよび試料Sの交換作業を行うことができる。
前記連結部材8の上面には、前記試料ホルダHに保持された試料S表面に真空紫外光を照射するための真空紫外光ランプ(真空紫外光源、真空紫外光照射装置)11が支持されている。真空紫外光ランプ11は、円筒壁12と、円筒壁12の上部に支持された円形の放電電極13と、前記放電電極13および円筒壁12の上面に支持されたドーナツ状のカバープレート14と、前記カバープレート14を貫通する絶縁性の電極保持部材15とを有している。
前記円筒壁12には、エキシマガス供給装置F3により供給されるエキシマガス(真空紫外光発生用ガス)をランプ室Gに流入させるためのガス流入路12aと、前記ランプ室Gに流入したエキシマガスを外部に流出させるためのガス流出路12bとが形成されている。
前記電極保持部材15の内部には棒状の給電用電極部材16が埋設されている。前記円形電極13bには給電装置Eから給電用電極部材16を介して高電圧が印加されている。
前記放電電極13の下方にはランプ室Gが形成されている。
なお、前記放電電極13の構成は前記構成に限定されず、例えば、誘電体内部に複数の棒状電極を並行に配置して、隣接する棒状電極に互いに異なる極性の電圧を印加して放電させる構成の電極等の、従来公知の真空紫外光用の電極の構成を使用可能である。
前記ランプ室Gにエキシマガスを流しながら、前記放電電極13を放電させると、網目状電極13c部分に放電が生じる。前記放電電極13の放電時にランプ室G内のエキシマガス(真空紫外光発生用ガス)は真空紫外光を発生する。この真空紫外光は、真空紫外光透過部材7を透過して試料収容室Aに配置された試料Sに照射される。
なお、実施例1では、図1に示す構成の真空紫外光を照射するプラスチック表面改質装置Uを使用したが、このような構成に限定されず、市販の種々の真空紫外光ランプを使用することも可能である。
また、前記試料Sは、フィルム状のポリイミドフィルムを使用することが好ましいが、形状、形態は任意のものを使用可能である。
前記酸化剤は真空紫外光源11により照射される真空紫外線により活性化されて、酸素ラジカルやOHラジカルを生成する。また、ポリイミド自身も真空紫外線により一部分解されて表面形状に粗面に変えつつ、前記ラジカルと化学反応を起こす。この化学反応は、特に水蒸気存在下で顕著に起こり、この現象がメッキの接着特性の向上に関与していると考えられる。
また、一般にポリイミド樹脂は撥水性が強いため、従来は苛性ソーダ水溶液のような濡れ性を付与する性質の薬品での前処理が行われたが、前記真空紫外線の照射により濡れ性は飛躍的に向上するので、省略することができる。
さらに、これらの光化学反応は常温〜200℃程度で行うことができる。高温であるほど反応は早く進むが、常温で行う場合は、特別な設備が不必要になるため、コスト低減による経済的効果は大きい。
なお、高エネルギーを持っている真空紫外線を照射する場合においては、過剰な照射を行った場合には、ポリイミドそのものの分解が進んでしまうことに注意が必要となる。使用する真空紫外光源にもよるが、例えば、Arエキシマランプを使用した場合、水蒸気存在下で10〜20分の照射が好ましい。
このような処理を施した試料Sとしてのポリイミドフィルムは、例えば、その樹脂表面に無電解で各種金属メッキを施して用いる事ができる。たとえば、従来より特別な前処理なしでもポリイミドに比較的良く接着する無電解ニッケルメッキなどは、密着性、均一性が増し、またこれまで、特別で複雑な前処理なしには実用強度のメッキが困難であった無電解銅メッキは、実用強度で接着させて用いる事ができる。また無電解ニッケルメッキが均一に形成される事を利用して、さらにその上に運常の電解銅メッキなどの各種電解メッキを施すことも可能になる。十分な接着強度を有するためフレキシブルプリント基板などへの応用が可能となる。
図3は本発明の実施例における真空紫外線照射後の試料表面の説明図であり、真空紫外光を未照射の状態と照射後の状態の説明図である。
図4は本発明の実施例におけるメッキ後の試料の外観の説明図である。
(実施例1)
実施例1では、試料Sとして、宇部興産株式会社製のポリイミドフィルムである「ユーピレックス(登録商標)S」の試料S(試験片)2cm×2cm(厚さ40μm)、室温で0.5Paの水蒸気存在下のもと、波長126nmのArエキシマランプ(真空紫外光源)を用いて約2mW/cm2の照度で、0分、1分、3分、5分、10分、20分、60分間真空紫外光を照射した。この処理のみで、もともと疎水性(水滴接触角70°〜80°)であったポリイミドの表面の濡れ性が、図2に示すように(60分のデータは図示省略)、飛躍的に向上した(水滴接触角約25°)。また原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)で、10分照射した状態の試料S表面を観察すると、図3に示すように、微細な凹凸が観察されるようになった。
実施例1では、実施例1の試験片(試料)と同じ試験片を、水蒸気の存在しない真空中で実施例1と同様に1分、3分、5分、10分、15分、20分、60分間真空紫外光を照射した。続けて、この試験片に実施例1と同条件で無電解Niメッキの処理行ったところ、図4に示すように、1分から10分にかけては周辺部に付着が不十分な部分が確認されたが、メッキは析出した。また、実施例2では、1分から10分にかけては照射時間が長くなるにつれてメッキの析出量が減り、15分では部分的にしか析出せず、照射時間が20分以上になると全く析出しなくなった。
実施例2では、実施例1の試料Sと同じ試験片を、実施例1と同一条件で0分、1分、
5分、10分、20分、30分間真空紫外光を照射した。続いてこの試験片に通常の無電解銅メッキの処理に従い表面調整(奥野製薬株式会社製ATSプリコンディションPIW−1を使用)、脱脂・コンディショナ(奥野製薬株式会社製ATSコンデクリンCIW−2を使用)、Pd触媒を付与(奥野製薬株式会社製OPC−SALM,OPC−80キャタリスト、OPC−555アクセレーターMを使用)し、無電解Cuメッキ(奥野製薬株式会社製ATSアドカッパーIWを使用)を約0.4μm行った。この結果、従来析出すら困難であった銅メッキがすべての試験片にほぼ全面に析出するようになった。ただし0分(無処理)のものは黙視でまだらな析出が確認できた。前記得られたメッキ層について、JIS K5600−5−6に準じ、クロスカット法で評価した結果を表1に示す。照射時間10分と20分のものについて分類0〜1の良好な付着性が得られ、5分、30分のものは分類3〜4、0分や1分は分類5となった。
比較例2では、実施例1の試験片と同じ試験片を、実施例1と水蒸気(気体状酸化剤)を存在させない以外は同一条件で1分、5分、10分、20分、30分間真空紫外光を照射した。続いて、この試験片に実施例2と同じく無電解銅メッキを約0.4μm行った。この結果、全てのサンプルにほぼ全面に析出した。しかし、これらに対して、JIS K5600−5−6に準じ、クロスカット法で評価した結果、全ての膜がほぼ完全に剥離してしまった。すなわち、表1に示すように、全ての場合において、分類5に分類された。
(実施例3)
実施例3は、試料Sとして東レデュポン株式会社製の「カプトン(登録商標)H」を使用し、試験片は実施例1と同様のサイズのものを使用し、実験環境は実施例1と同じ条件で5分、10分、20分、60分真空紫外光を照射した。この結果、表1に示すように、10分のもの分類0という非常に良好な付着性が得られ、20分、60分のものも分類0〜1という良好な付着性が得られた。また、5分のものは分類2という比較的良好な付着性が得られた。
(比較例3)
比較例3では、真空環境下で真空紫外光の照射を行ったこと以外は、実施例3と同様の条件で実験を行った。この結果、表1に示すように、5分、10分、20分で分類3という若干の付着性の改善が見られ、60分では分類5という結果となった。
また、前記実施の形態1では、表面改質のための化学エッチング処理を行わなかったが、必要に応じて、真空紫外光の照射の前後に化学エッチングを行うことも可能である。
7…真空紫外光透過部材、
8…連結部材、
11…真空紫外光源、
12…円筒壁、
12a…ガス流入路、
12b…ガス流出路、
13…放電電極、
13a…円板状誘電体、
13b…円形電極、
13c…網目状電極、
14…カバープレート、
15…電極保持部材、
16…給電用電極部材、
A…試料収容室、
A2…上壁開口、
E…給電装置、
F1…真空排気装置、
F2…酸化剤供給装置、
F3…エキシマガス供給装置、
G…ランプ室、
H…試料ホルダ、
S…試料、
U…プラスチック表面改質装置。
Claims (7)
- 真空排気後に水蒸気のみが導入された雰囲気中で波長172〜126nmの真空紫外光を、化学エッチング処理および真空紫外光の照射のいずれもが行われておらず且つジフェニルテトラカルボン酸とP−フェニレンジアミンとからなるポリイミド化合物により構成されたプラスチック表面に照射することにより、前記プラスチック表面の接着性を改良することを特徴とするプラスチック表面の改質方法。
- 前記プラスチックがポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック表面の改質方法。
- 前記請求項1または2に記載の前記プラスチック表面の改質方法により前記プラスチック表面を改質してから、前記プラスチック表面に金属メッキ膜を形成することを特徴とするプラスチック表面のメッキ方法。
- 前記改質されたプラスチック表面に、触媒を付与した状態で無電解メッキにより金属を析出させることにより、金属メッキ膜を形成することを特徴とする請求項3に記載のプラスチック表面のメッキ方法。
- 前記請求項1または2に記載の改質方法により改質されたプラスチック表面を有することを特徴とする前記プラスチック。
- 前記請求項3または4に記載のメッキ方法によりメッキ膜が形成されたことを特徴とするプラスチック。
- ポリイミド系プラスチックの表面に銅メッキ膜が形成されたことを特徴とする請求項6に記載のプラスチック。
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