JP4905801B2 - 金属−樹脂コンポジット層をもつ樹脂基板の製造方法 - Google Patents

金属−樹脂コンポジット層をもつ樹脂基板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、配線基板などを製造するのに用いられる金属−樹脂コンポジット層をもつ樹脂基板の製造方法に関する。本発明で製造される配線基板は、液晶ディスプレイ、電子回路基板など、種々の分野に利用することができる。
成形が容易であること、強度などの特性値の自由度が高いこと、軽量であることなどの特徴から、従来の金属分野への樹脂の進出が目覚ましい。ところが樹脂は、導電性を有しないこと、硬度が低いこと、などの短所も有するために、金属などと複合化することでこれらの短所を解消することが行われている。
例えば樹脂に導電性を付与する方法として、樹脂中に導電性金属あるいは炭素繊維などの粉末を混合する方法がある。しかし高い導電性を付与するためには、導電性物質の添加量を多くする必要があり、物性面での不具合やコストが高くなるという不具合がある。そこで、樹脂の表面に金属あるいは ITOなどの導電性酸化物の皮膜を形成する方法などが知られている。導電皮膜の形成には、蒸着、スパッタリングなどの物理的方法、あるいは化学めっき(無電解めっき)などの化学的方法が知られている。しかし物理的方法では、真空槽が必要になるなど、装置が大掛かりになるためスペース面あるいは生産性における制約が大きいという問題があり、その結果コストが上昇するという欠点がある。
また樹脂表面に化学めっきにより金属皮膜を形成した場合には、金属皮膜と樹脂との密着強度が低く、金属皮膜が剥離し易いという問題があった。そのため樹脂素材に対して化学的エッチング処理を行って表面を粗面化し、その後に化学めっき処理する工程が一般に行われている。しかしエッチングによって粗面化する方法では、表面平滑性が低下するとともに、クロム酸、過マンガン酸、硫酸などの毒劇物を用いる必要があり、廃液処理などに問題がある。
そこで特開2002−309377号公報には、樹脂素材をオゾン溶液に接触させた後、界面活性剤とアルカリ成分とを含む溶液で処理し、その後に化学めっきを行うことが記載されている。この方法によれば、オゾンによる酸化によって樹脂素材表面の二重結合が切断され、極性基が生成される。またアルカリ成分によって脆化層が除去され、界面活性剤が極性基に吸着する。そして化学めっきに先立つ触媒処理時には、極性基に吸着している界面活性剤に触媒が吸着するため、化学めっき時に金属が極性基に結合しやすくなり、めっき皮膜の密着強度が向上する。
さらに特開2005−042029号公報には、樹脂基板と、樹脂基板の表面に一体的に形成され樹脂マトリックス中に微細な金属粒子が均一に分散してなる樹脂−金属コンポジット層と、からなる樹脂−金属コンポジット層をもつ樹脂基板とその製造方法が提案されている。
この樹脂−金属コンポジット層をもつ樹脂基板によれば、樹脂−金属コンポジット層によって導電性、耐摩耗性、耐光性、難燃性などの特性を付与することができ、また樹脂−金属コンポジット層を透明あるいは半透明とすることができるため、液晶ディスプレイ、電子回路基板など、種々の用途に用いることができる。そしてこの製造方法によれば、真空槽などの設備を不要として樹脂−金属コンポジット層を容易に形成することができるので、工数が小さく短時間で製造できる。
ところで一般的な配線基板においては、基板上における配線どうしの間隔は 100μm以上存在しているが、小型高密度部品の配線基板は、基板上における配線どうしの間隔を 100μm以下とする必要がある。
特開2005−042029号公報に記載の技術を用いて樹脂−金属コンポジット層を形成し、その表面に化学めっきによってこのように間隔の狭い配線を形成した場合には、配線どうしの間に存在する樹脂−金属コンポジット層を後工程のエッチングで除去する必要がある。
ところが特開2005−042029号公報に記載の技術では、樹脂−金属コンポジット層の厚さが20〜 200nm程度と薄い場合には、めっき皮膜の密着強度が低いという問題があった。そこで樹脂−金属コンポジット層の厚さを 200nmを超える厚さとする必要がある。しかしこの技術においては、化学めっき後にはめっき皮膜が樹脂間に入り込んだ構造となっている。そのため 200nmを超える厚さの樹脂−金属コンポジット層が形成された場合には、エッチングによっても配線間のめっき皮膜及び樹脂−金属コンポジット層を完全に除去することが困難であり、配線基板においては絶縁不良の問題が生じる。
特開2002−309377号公報 特開2005−042029号公報
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、例えば特開2005−042029号公報などに記載の技術を用いて樹脂基板に樹脂−金属コンポジット層を形成し、それにめっき皮膜を形成するにあたって、樹脂−金属コンポジット層の厚さが10〜 200nmと薄い場合でもめっき皮膜の密着強度を向上させることを解決すべき課題とする。
上記課題を解決する本発明の金属−樹脂コンポジット層をもつ樹脂基板の製造方法の特徴は、樹脂基板を処理して表面に改質層を形成する前処理工程と、改質層に触媒金属のコロイド及びイオンの少なくとも一方を吸着させ触媒金属微粒子を分散させて樹脂−金属コンポジット層を形成する触媒吸着工程と、樹脂−金属コンポジット層に化学めっき処理を行いめっき皮膜を形成するめっき工程と、を含み、
触媒吸着工程とめっき工程との間に、樹脂−金属コンポジット層の内部におけるめっき析出を促すめっき析出調整工程を行うことにある。
めっき析出調整工程は、樹脂−金属コンポジット層の表面における触媒金属の濃度を低減する工程とすることができる。また、樹脂−金属コンポジット層の内部にめっき工程で析出する金属のイオンを供給する工程としてもよいし、この二つの工程の両方を行ってもよい。
前処理工程は、樹脂基板をオゾン溶液で処理するオゾン処理工程とすることが特に好ましい。
一般のめっき工程においては、例えば図3(b) に示すように、樹脂基板の表面がめっき皮膜で覆われると、樹脂基板の内部にはそれ以上のめっき析出は困難となる。こうなると、樹脂基板の内部のめっき金属と表面のめっき皮膜との連結が少なく、アンカー効果による密着強度の向上には寄与できない。
そこで本発明の金属−樹脂コンポジット層をもつ樹脂基板の製造方法によれば、めっき工程の前に樹脂−金属コンポジット層の内部におけるめっき析出速度を促進させるめっき析出調整工程を行っている。このめっき析出調整工程を行うことにより、めっき工程の初期に樹脂−金属コンポジット層の内部に十分なめっき金属を析出させることができる。したがって、表面のめっき皮膜と内部のめっき金属との連結によるアンカーが十分に形成され、そのアンカー効果によってめっき皮膜の密着強度が飛躍的に向上する。
本発明に用いられる樹脂基板としては、ABS,AS, AAS,PS, EVA,PMMA, PBT, PET, PPS,PA, POM,PC,PP,PE,エラストマーとPPを含むポリマーアロイ,変成PPO ,PTFE,ETFEなどの熱可塑性樹脂、あるいはフェノール樹脂,エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂からなるものを用いることができる。その形状は特に制限されない。
また熱処理によって収縮する樹脂基板とすることも好ましい。このような樹脂基板としては、硬化温度の異なる少なくとも二種の熱硬化性樹脂の混合物からなるもの、あるいは熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との混合物からなるものを用いることができる。このような樹脂基板を用い、めっき工程後に熱処理工程を行うことによって、樹脂基板の樹脂マトリックスが収縮する。これによって微細な細孔に形成されためっき金属が収縮した樹脂に取り囲まれ、めっき皮膜の密着強度がさらに向上する。
硬化温度の異なる少なくとも二種の熱硬化性樹脂の混合物としては、例えばシアナト基を有する芳香族系シアネート化合物と、エポキシ基を有する芳香族エポキシ樹脂と、を含む樹脂を用いることができる。硬化温度の差によって、熱処理時に樹脂マトリックスを収縮させることができる。
シアナト基を有する芳香族系シアネート化合物の好ましい例としては、例えばビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4'-メチレンビス( 2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4'-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、それらが一部トリアジン化したプレポリマー等を挙げることができる。これらのシアネート化合物は各々単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
エポキシ基を有する芳香族系エポキシ樹脂とは、分子中にエポキシ基を有し、かつ分子中に芳香環骨格を有するエポキシ樹脂をいう。エポキシ基を有する芳香族系エポキシ樹脂の好ましい例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、さらにはこれらの臭素化エポキシ樹脂やリン変性エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は各々単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記した樹脂基板は、完全硬化しない程度の半硬化状態として用いることもできる。半硬化状態とするには、上記した樹脂基板を 150℃で30分間加熱する半硬化熱処理工程を行う。この程度の加熱によって、シアナト基とエポキシ基との反応がある程度進行してオキサゾリンあるいはトリアジン環が生成する。半硬化状態とすることで、オゾン溶液による浸食度合いが変化し、樹脂−金属コンポジット層の厚さと密着性との関係が変化してより好ましい範囲となる場合がある。
本発明にいう樹脂基板としては、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との混合物からなるものを用いることもできる。熱処理時に熱可塑性樹脂が可塑化した状態で熱硬化性樹脂が硬化することで、樹脂マトリックスを収縮させることができる。
この場合の熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが例示され、熱可塑性樹脂としてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS 、AS、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
樹脂基板には、無機充填材を添加してもよい。無機充填材としては、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。特にシリカが好ましい。無機充填材は平均粒径5μm以下のものが好ましい。平均粒径が5μmを超える場合、回路パターンを形成する際にファインパターンの形成を安定的行うのが困難になる場合がある。また無機充填材は耐湿性を向上させるため、またはマトリックス樹脂との密着性を高めるため、シランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理してあるものが好ましい。
更に樹脂基板には上記成分の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じて各種添加剤が含まれていてもよい。
前処理工程は、樹脂基板を処理して表面に改質層を形成する工程である。改質層を形成するには、紫外線照射処理、プラズマ処理、光触媒を塗布した後に紫外線照射を行う処理、オゾン処理などを用いることができるが、オゾン溶液を用いたオゾン処理が特に好ましい。
オゾン処理工程では、樹脂基板をオゾン溶液で処理して表面に極性基をもつ改質層を形成する。この改質層は、樹脂基板の表面に形成されるナノ(nm)レベル以下の細孔を有する層である。オゾン溶液で処理するには、オゾン溶液中に樹脂基板を浸漬する方法、樹脂基板にオゾン溶液をスプレーする方法などがある。樹脂基板をオゾン溶液中に浸漬する方法によれば、スプレーによる接触に比べてオゾン溶液からオゾンが離脱し難いので好ましい。
オゾン溶液中のオゾン濃度は、樹脂基板表面の活性化に大きく影響を及ぼし、 10ppm程度から活性化の効果が見られるが、20ppm 以上とすればその活性化の効果が飛躍的に高まり、より短時間の処理が可能である。また濃度が低いと劣化が先行する場合があるので、オゾン濃度は高い方が好ましい。オゾン溶液中のオゾンによる酸化によって、改質層にはOH基、 C=O基、COOH基などの極性基が生成する。
オゾン溶液は、通常は水を溶媒とするが、有機又は無機の極性溶媒を溶媒とすることも好ましい。これにより処理時間をさらに短縮することが可能となる。有機極性溶媒としては、メタノール,エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、蟻酸,酢酸などの有機酸類、あるいはこれらを水やアルコール系溶媒と混合したものが例示される。また無機極性溶媒としては、硝酸、塩酸、フッ化水素酸などの無機酸が例示される。
なおオゾン処理工程における処理温度は、原理的には高いほど反応速度が大きくなるが、温度が高くなるほどオゾン溶液中のオゾンの溶解度が低くなり、40℃を超える温度においてオゾン溶液中のオゾン濃度を40ppm 以上とするには、処理雰囲気を大気圧以上に加圧する必要があり、装置が大がかりなものとなる。処理温度は、室温程度でも可能である。
オゾン処理工程におけるオゾン溶液と樹脂基板との接触時間は、樹脂種によって異なるが、2〜30分とするのが好ましい。2分未満では、オゾン濃度を20ppm 以上としてもオゾン処理による効果の発現が困難となり、30分を超えると樹脂基板の劣化が生じるようになる。
またオゾン処理工程において、高濃度オゾン溶液を樹脂基板表面に接触させた状態で紫外線を照射することも好ましい。照射される紫外線は、 310nm以下の波長のものが好ましく、 260nm以下、さらには 150〜 200nm程度のものが望ましい。また紫外線照射量は、50mJ/cm2 以上とすることが望ましい。このような紫外線を照射できる光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、エキシマレーザー、バリア放電ランプ、マイクロ波無電極放電ランプなどを用いることができる。
樹脂基板をオゾン溶液中に浸漬した状態で紫外線を照射するには、紫外線光源をオゾン溶液中に入れた状態で照射してもよいし、オゾン溶液の液面上方から照射してもよい。またオゾン溶液の容器を透明石英など紫外線透過性の材料から形成したものとすれば、オゾン溶液の容器外部から照射することもできる。
オゾン処理工程の後に、改質層に少なくともアルカリ成分を含むクリーナコンディショナ溶液を接触させるC/C処理工程をさらに行うことが望ましい。アルカリ成分は、改質層の表面を分子レベルで水に可溶化する機能をもち、改質層表面の脆化層を除去して極性基をより多く表出させるため、吸着工程において金属微粒子をより多く生成することができる。このアルカリ成分としては、改質層の表面を分子レベルで溶解して脆化層を除去できるものを用いることができ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどを用いることができる。
クリーナコンディショナ溶液と改質層との接触時間は特に制限されないが、10℃で1分以上とするのが好ましい。接触時間が短すぎると、極性基に吸着する界面活性剤量が不足する場合がある。しかし接触時間が長くなり過ぎると、極性基が表出した層まで溶解する場合がある。1〜10分間程度で十分である。また温度は高い方が望ましく、温度が高いほど接触時間を短縮することが可能であるが、10〜70℃程度で十分である。
吸着工程は、改質層に金属化合物溶液を接触させ触媒金属のコロイド及びイオンの少なくとも一方を含む金属化合物溶液を改質層に浸入させて樹脂−金属コンポジット層を形成する工程である。改質層では樹脂の分子鎖の切断などによって極性基が形成されているので、その極性基に触媒金属のコロイドあるいはイオンが吸着することで、樹脂−金属コンポジット層が形成される。
金属化合物溶液としては、金属錯イオンを含むアルカリ性のもの、あるいは金属コロイドを含む酸性のものが知られ、いずれも用いることができるが、金属粒径が小さいアルカリ性のものが好ましい。改質層への浸透性、分散性が良いため、めっき皮膜の密着強度がより向上するからである。なお触媒金属とは、無電解めっき時の触媒となるものであり、Pdが一般的であるがAgなども用いることができる。
改質層に金属化合物溶液を接触させるには、改質層が形成されている樹脂基板の表面に金属化合物溶液をスプレーなどで塗布してもよいし、金属化合物溶液中に樹脂基板を浸漬することもできる。これによって金属化合物溶液が改質層の表面から内部に拡散浸透し、極性基に金属化合物のイオンあるいはコロイドが吸着し、還元反応により金属化合物がナノレベルの微細な金属粒子となって樹脂−金属コンポジット層が形成される。
樹脂−金属コンポジット層の厚さは10〜 200nmの範囲が好ましい。厚さが10nm未満では導電性の発現が困難となり、 200nmを超えるとエッチング時に配線間の樹脂−金属コンポジット層を除去することが困難となり絶縁不良の問題が生じる。10〜 200nmの範囲とすることで、エッチングによって樹脂−金属コンポジット層を容易に除去することができ、L/S=10/10μm以下の微細配線形成が可能となる。
めっき工程では、樹脂−金属コンポジット層に化学めっき処理を行うことによりめっき皮膜を形成する。配線基板の場合には、所定パターンの配線部が形成される。この所定パターンを形成するには、先ずレジストを形成しその後にめっき処理を行えばよい。また配線部はCuをめっきしてもよいし、Niなどをめっきしてもよい。Niなどをめっきした場合は、さらにCuをめっきする工程を行う。
配線部を形成するには、予め樹脂基板にレジストでパターンを形成し配線部のみに樹脂−金属コンポジット層を形成することができる。この場合はレジストを残した状態で配線基板を製造することができる。また、樹脂基板に樹脂−金属コンポジット層を全面に形成し、化学めっきを行い、レジスト工程でパターンを形成してさらに電解めっきを行い、レジストを除去し配線部以外の化学めっき皮膜を除去する方法、あるいは樹脂−金属コンポジット層を全面に形成し、化学めっき、電解めっきを行いその後、レジスト工程でパターンを形成しレジストのない部分のめっき皮膜を除去し、その後レジストを除去する方法も可能である。これらの場合でも、本発明によれば樹脂−金属コンポジット層が薄いので、エッチングによってパターンの不要部の樹脂−金属コンポジット層を容易に除去することができ、絶縁不良を未然に防止することができる。
めっき処理の条件は制限されず、従来のめっき処理と同様に行うことができる。またエッチングには、研磨など物理的な除去法、酸エッチング、逆電解法で溶解する方法などを利用することができる。
めっき工程では、吸着している触媒金属を核としてめっき金属が析出する。一般の触媒吸着工程では、触媒金属は樹脂基板の表面に多く吸着するので、めっき金属の析出速度は金属−樹脂コンポジット層の表面で大きく内部で小さい。
そこで本発明では、樹脂−金属コンポジット層の内部におけるめっき析出を促すめっき析出調整工程を行う。めっき析出調整工程は、樹脂−金属コンポジット層の表面における触媒金属の濃度を低減する工程とすることができる。この工程を行うことで、金属−樹脂コンポジット層の内部におけるめっき析出が促進されるため、アンカーが多く形成されることになり、めっき皮膜の密着強度が向上する。
このように樹脂−金属コンポジット層の表面における触媒金属の濃度を低減するには、一般的な方法で触媒吸着工程を行った後に、樹脂−金属コンポジット層の表面の触媒金属を除去する方法がある。これによって樹脂−金属コンポジット層では、表面における触媒金属の濃度が低減される。なお樹脂基板の表面の触媒金属を除去するには、表面の触媒金属を王水などで溶解して洗い流す方法がある。
また化学めっきにおいては、金属イオン及び還元剤は樹脂−金属コンポジット層の表面とは接触しやすいが樹脂−金属コンポジット層の内部とは接触しにくい。そして樹脂−金属コンポジット層の表面がめっき皮膜で覆われると、樹脂−金属コンポジット層の内部への金属イオン及び還元剤の供給はその時点で停止する。
そこでめっき析出調整工程としては、樹脂−金属コンポジット層の内部にめっき工程で析出する金属のイオンを供給する工程とすることも好ましい。これによりめっき工程においては、予め金属−樹脂コンポジット層内部に金属イオンが供給されているので、金属−樹脂コンポジット層の内部におけるめっき析出が促進される。
例えばめっき工程でCuを析出させる場合に、Cuイオンの濃度を樹脂−金属コンポジット層内部に供給するには、Cuイオンが溶解している溶液中に樹脂基板を浸漬する方法がある。このようにすれば、樹脂−金属コンポジット層に吸着している触媒金属にCuイオンが吸着し、樹脂−金属コンポジット層の表面から内部までCuイオンが含まれた状態となる。その状態で化学Cuめっき工程を行うと、樹脂−金属コンポジット層の表面に吸着しているCuイオンはめっき液中に溶解して拡散するものの、樹脂−金属コンポジット層内部に吸着しているCuイオンはその状態を維持する。したがってめっき液中の還元剤が樹脂−金属コンポジット層の内部に拡散することで、樹脂−金属コンポジット層の内部に吸着しているCuイオンが還元されて金属Cuが析出し、樹脂−金属コンポジット層の内部にめっき金属を析出させることができる。
例えばCuイオンが溶解している溶液中に樹脂基板を浸漬する場合、溶液中のCuイオン濃度は高いほど望ましく、Cuイオンの飽和溶液を用いることが望ましい。また浸漬時間は長いほど好ましく、飽和に満たない溶液の場合でも浸漬時間を十分にとれば飽和溶液に短時間浸漬した場合と同等の効果が得られる。
なお、めっき工程において樹脂−金属コンポジット層の内部に吸着しているCuイオンなどがめっき液中に溶出する場合がある。このような場合には、めっき工程において樹脂−金属コンポジット層の表面をめっき皮膜が完全に覆う前に、めっき析出調整工程とめっき工程とを交互に繰り返すことが望ましい。これにより樹脂−金属コンポジット層の内部に十分な量のCuイオンなどを供給することができ、アンカー効果を最大に発現させることができる。
さらにめっき工程におけるめっき液中の還元剤濃度を 0.5g/L〜10g/Lとすれば、金属−樹脂コンポジット層の表面におけるめっき析出を抑制することで内部のめっき析出量を十分な量とすることができ、アンカーをさらに多くすることができるので、めっき皮膜の密着強度がさらに向上する。
めっき液中の還元剤濃度が 0.5g/L未満では、めっきの未析出が発生する場合がある。まためっき液中の還元剤濃度が10g/Lを超えると、金属−樹脂コンポジット層の表面におけるめっき析出速度が高まるので、金属−樹脂コンポジット層内部のめっき析出が不十分な状態でめっき析出が停止する。したがってアンカーが少なくなりめっき皮膜の密着強度の向上が望めない。
そして前処理工程をオゾン溶液で処理する工程とすれば、前処理工程において樹脂基板の表面にナノ(nm)レベル以下の細孔が生じる。吸着工程では、触媒金属のコロイド及びイオンの少なくとも一方がこの細孔に浸入するため、めっき工程においてめっき処理液が細孔に入り込み、細孔にもめっき皮膜が形成される。したがって上記しためっき析出調整工程を行うことによる効果と相まって、樹脂−金属コンポジット層の厚さが10〜 200nmと薄くても、アンカー効果によってめっき皮膜の密着強度が向上する。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
(1)<準備工程>
芳香族シアネート化合物(「BA230S75]ロンザジャパン社製)と、芳香族系エポキシ樹脂を含む樹脂(「エピュート828EL」ジャパンエポキシレジン社製)、球状シリカ及び溶媒としてメチルエチルケトンからなる樹脂基板を用意し、 150℃で30分間加熱して半硬化状態とした。
(2)<オゾン処理工程>
この樹脂基板を、 40PPMのオゾンを含有するオゾン水溶液に浸漬し、室温で12分間浸漬するオゾン処理工程を行った。処理工程前後の樹脂基板の表面をFT−IRで分析したところ、処理工程後の樹脂基板の表面には、カルボニル基(-C=O)及びヒドロキシル基(−OH)に起因する吸収ピークが観察された。
(3)<C/C処理工程>
オゾン処理工程後の樹脂基板を、65℃に加温されたクリーナコンディショナ溶液(「OPC370コンディクリーンM」奥野製薬工業社製)に5分間浸漬した。
(4)<ソフトエッチング処理>
オゾン処理後の樹脂基板を、過硫酸ソーダと硫酸の混合水溶液にて処理した。
(5)<触媒吸着工程>
ソフトエッチング処理後の樹脂基板を水洗・乾燥後、Pd錯イオンを含むアルカリ性のキャタリスト(「OPC50インデューサA及びC」奥野製薬工業社製)に40℃で5分間浸漬し、次いでPd還元液(「OPC150クリスターMU」奥野製薬工業社製)に室温で6分間浸漬した。
得られた配線基板の断面をTEMにより分析したところ、表面から70nmの深さの範囲にPdが集中して分布していることが認められ、図1(a) に示すように、厚さ70nmの樹脂−金属コンポジット層が形成されていることが確認された。
(6)<めっき析出調整工程>
触媒吸着工程後の樹脂基板を王水で処理し、図1(b) に示すように、樹脂−金属コンポジット層の表面のPdをある程度溶出させて除去した。
(7)<化学めっき工程>
上記で得られた基板を32℃に保温された市販(「ATSアドカッパーIW」奥野制約工業(株)社製、還元剤:ホルムアルデヒド、還元剤濃度: 2.2g/L)のCu化学めっき浴中に浸漬し、20分間Cuめっき皮膜を析出させた。析出したCuめっき皮膜の厚さは 0.5μmである。
このとき、樹脂−金属コンポジット層の表面ではPdが少なくなっているため、図1(c) に示すように、樹脂−金属コンポジット層の内部においても十分な量でめっき金属が析出すると考えられる。
(8)<熱処理工程>
上記で得られた樹脂基板を 105℃で30分間加熱し、その後 150℃で30分間加熱した。
(9)<パターン形成工程>
次いでフォトレジスト、露光、現像処理でパターン形成した。
(10)<電気めっき工程>
次いで銅めっき浴中にて、電流密度3A/dm2を45分間印加し、配線パターン上にさらに厚さ25μmのCuめっき皮膜を形成した。その後フォトレジストを薬剤にて除去した後に、 180℃で 120分間加熱し、基板を完全硬化させプリント配線基板を得た。その後、エッチング液を使い配線間などの不要な化学Cuめっき部分を除去した。このプリント配線基板には、L/S=10/10μmの微細配線パターンが形成された。
(実施例2)
(1)<準備工程>
実施例1と同様である。
(2)<オゾン処理工程>
実施例1と同様である。
(3)<C/C処理工程>
実施例1と同様である。
(4)<ソフトエッチング処理>
実施例1と同様である。
(5)<触媒吸着工程>
実施例1と同様である。
(6)<めっき析出調整工程>
触媒吸着工程後の樹脂基板を、硫酸銅が 200g/L溶解し32℃に保温された硫酸銅水溶液中に3分間浸漬した。これにより、図2(b) に示すように、Cu2+イオンが樹脂−金属コンポジット層の内部まで浸透してPdに吸着する。
(7)<化学めっき工程>
次いで還元剤濃度が 1.5g/Lであること以外は実施例1と同様のCu化学めっき浴中にCu化学めっき浴中に5分間浸漬した。
このとき、還元剤が樹脂−金属コンポジット層の内部まで浸透し、図2(c) に示すように、樹脂−金属コンポジット層の内部においても十分な量でめっき金属が析出すると考えられる。
(8)<めっき析出調整工程>
次いで樹脂基板を、硫酸銅が 200g/L溶解し32℃に保温された硫酸銅水溶液中に3分間浸漬した。
(9)<化学めっき工程>
さらに還元剤濃度が 1.5g/Lであること以外は実施例1と同様のCu化学めっき浴中に15分間浸漬した。
(10)<熱処理工程>
実施例1と同様である。
(11)<パターン形成工程>
実施例1と同様である。
(12)<電気めっき工程>
実施例1と同様である。
(比較例)
実施例1と同様の樹脂基板を用い、めっき析出調整工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様の工程を行った。
この比較例においては、樹脂−金属コンポジット層の表面にPdが多く存在しているため、化学めっき工程では、図3(b) に示すように樹脂−金属コンポジット層の表面に早期にめっき皮膜が形成され、樹脂−金属コンポジット層の内部のめっき析出は表面より遅くなると考えられる。
<試験・評価>
実施例1、2及び比較例のプリント配線基板について、めっき皮膜の密着力をJIS H 8504に規定されるピール強度によって測定した。結果を表1に示す。
Figure 0004905801
表1から、実施例1、2で得られたプリント配線基板は、比較例に比べてめっき皮膜の密着強度が高いことが明らかであり、これはめっき析出調整工程を行ったことによる効果であることが明らかである。
すなわち本実施例の金属−樹脂コンポジット層をもつ樹脂基板の製造方法によれば、樹脂−金属コンポジット層の厚さが 200nm以下であっても、めっき皮膜は実用上十分な密着強度を有している。したがって配線間の不要な樹脂−金属コンポジット層をエッチングによって容易に除去することができ、絶縁不良の問題なく微細配線パターンを形成することができる。
またオゾン処理によるため、実施例の配線基板の配線部における表面粗さは、Ra値で0.10μm、Rz値で 1.5μmであり、平滑性が高いので高周波特性にも優れている。
本発明の一実施例に係る製造方法における樹脂−金属コンポジット層の変化を模式的に示す説明図である。 本発明の第2の実施例に係る製造方法における樹脂−金属コンポジット層の変化を模式的に示す説明図である。 比較例に係る製造方法における樹脂−金属コンポジット層の変化を模式的に示す説明図である。

Claims (6)

  1. 樹脂基板を処理して表面に改質層を形成する前処理工程と、
    該改質層に触媒金属のコロイド及びイオンの少なくとも一方を吸着させ触媒金属微粒子を分散させて樹脂−金属コンポジット層を形成する触媒吸着工程と、
    該樹脂−金属コンポジット層に化学めっき処理を行いめっき皮膜を形成するめっき工程と、を含み、
    該触媒吸着工程と該めっき工程との間に、該樹脂−金属コンポジット層の表面の該触媒金属を溶解して洗い流すことで該樹脂−金属コンポジット層の表面の該触媒金属の濃度を低減して該樹脂−金属コンポジット層の内部におけるめっき析出を促すめっき析出調整工程を行うことを特徴とする金属−樹脂コンポジット層をもつ樹脂基板の製造方法。
  2. 前記めっき析出調整工程では、王水を用いて前記樹脂−金属コンポジット層の表面の前記触媒金属を溶解する請求項1に記載の金属−樹脂コンポジット層をもつ樹脂基板の製造方法。
  3. 樹脂基板を処理して表面に改質層を形成する前処理工程と、
    該改質層に触媒金属のコロイド及びイオンの少なくとも一方を吸着させ触媒金属微粒子を分散させて樹脂−金属コンポジット層を形成する触媒吸着工程と、
    該樹脂−金属コンポジット層に化学めっき処理を行いめっき皮膜を形成するめっき工程と、を含み、
    該触媒吸着工程と該めっき工程との間に、該樹脂基板を該めっき工程で析出する金属のイオンの飽和濃度溶液に浸漬させ該樹脂−金属コンポジット層の内部に該めっき工程で析出する金属のイオンを供給して該樹脂−金属コンポジット層の内部におけるめっき析出を促すめっき析出調整工程を行うことを特徴とする金属−樹脂コンポジット層をもつ樹脂基板の製造方法。
  4. 前記めっき工程におけるめっき液中の還元剤濃度は 0.5g/L〜10g/Lである請求項3に記載の金属−樹脂コンポジット層をもつ樹脂基板の製造方法。
  5. 前記めっき析出調整工程と前記めっき工程とを交互に繰り返し行う請求項3又は請求項4に記載の金属−樹脂コンポジット層をもつ樹脂基板の製造方法。
  6. 前記前処理工程は、前記樹脂基板をオゾン溶液で処理するオゾン処理工程である請求項1〜5のいずれかに記載の金属−樹脂コンポジット層をもつ樹脂基板の製造方法。
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