画像形成装置全体の小型化のため、記録媒体(用紙、記録シート)を給紙カセット、給紙トレイ等の用紙収容手段から搬送する用紙搬送装置の小型化が望まれている。また、近年、画像形成装置では、多様なサイズや紙種に対応した機種が一般的になりつつある。このような機種では、幾つかのサイズ及び種類の用紙を用紙収容手段に予め収容しておき、この用紙収容手段から使用者が適宜サイズや種類を選択した用紙、又は画像形成装置が自動選択した用紙を給送できるようになっている。このため、用紙収容手段が画像形成装置内のスペースをより多く占めるので、シート搬送装置を小型化する要求がより強まっている。シート搬送の観点からすれば、ADF原稿についても同様の要請がある。
更に、最近、画像形成装置では、シートの片面、両面を選択して画像形成を行うことが可能な機種が一般的になりつつある。シートの両面に画像形成を行うことが可能な画像形成装置においては、片面に画像を定着されたシートが、装置本体に設けられた記録体積載部(排紙トレイ)へ送り出されるか、又は、裏面へ画像形成するために記録体反転部(両面搬送手段)へ搬送される。そのため、選択的にシートの搬送方向を切り替えるための分岐手段が用紙搬送路中に設けられている。片面のみに画像形成する場合でも、定着済みシートをソートして排出する際等に搬送路切り替えが必要である。分岐手段としては、特許文献1に示されるように、簡単で低コストである分岐爪を用いたものが広く採用されている。シート搬送装置内における分岐部に形成される搬送路においても小型化のため、装置の位置関係にもよるが、その搬送方向を大きく変更して、搬送路自体の占有スペースを削減するようになっている。この結果、搬送路上には、その搬送方向を連続的且つスムーズに変更するため所定に湾曲した形状からなる曲率部を設けて、この曲率部の曲率半径を、画像形成装置に通常使用される定型シートが搬送できる程度の比較的小さな半径に設定している。
図7に、分岐手段として分岐爪を用い、分岐搬送路の曲率部の曲率半径を小さくしたシート搬送装置の概略構成を断面的に示す。図7(a)は分岐爪22の爪部材が用紙Pを排紙トレイ側へガイドする第一姿勢を示し、同(b)は用紙Pを両面印刷のためにスイッチバック搬送路、再搬送路側へガイドする第二姿勢を示している。また図6にその分岐装置を斜視的に示す。なお本図では、描写を分かり易くするために、分岐後の搬送路を形成する上側のガイド板23や搬送ローラ対の上側ローラを省いている。
分岐爪22は、複数の爪部材22aを軸22b上に同軸に配置した構成となっている。爪部材22aの先端は、図6で見て左下ガイド板18と右下ガイド板19に設けられた穴(凹形状でもよい)18a,19aに嵌り込むことが可能であり、それによって用紙の搬送方向を分岐させる状態となっている。軸22bには、回転位置を検知するシャッター部22cを固定し、シャッター部22cのエッジをフォトセンサ21で検知することによって分岐爪22が用紙を排紙部側にガイドする第一の姿勢であることを検知できるようになっている。また軸22bには、シャッター部22cと反対側でプーリ22dが固定してあり、タイミングベルト24を介してステッピングモータ20で駆動可能に連結してあり、分岐爪22はこのステッピングモータ20の駆動力で動作するようになっている。
図7において、用紙搬送上流側の定着装置(定着ローラ対25aのみ示す)から用紙が搬入される搬入路26と、分岐爪22を越えて用紙搬送下流側に位置する2つの搬送路27,28とがあり、これら搬送路26,27,28によって分岐搬送路が形成されている。第一分岐搬送路27は用紙を排紙部側へガイドし、第二分岐搬送路28は用紙をスイッチバック搬送路側へガイドするものである。
特開2005−178954号公報
特許第3257712号公報
上述のように構成した用紙搬送装置では、厚紙等の腰の強い、つまり高剛性の用紙や封筒のような特殊紙を搬送しようとすると、曲率部の曲率半径が小さいために、用紙Pの先端が曲率部の壁面に接触して摩擦抵抗が大きくなる。このため、高剛性の用紙や特殊紙では曲率部で形成された搬送経路に沿って進行することができず、ジャムや搬送不良を生じて安定した搬送動作ができないという問題があった。このような問題を防止するために、エアーを用いた吸引方式の搬送手段を用いることが考えられるが、吸引装置を必要とするため、装置が複雑で大型化すると共に、大幅なコストアップになるというデメリットがあった。
そこで本出願人は、装置の高速化に対応して用紙を非常に小さな用紙間隔で搬送路上を搬送しても、それを目的とする各搬送路に確実に送り込める装置を低コストで実現することを課題として、特許文献2の提案を行った。その提案の一つの構成を用いて用紙搬送路を切り替えることを考えると、図8に示すように、ローラ対31のニップを通る用紙Pの用紙搬送方向の延長線上にあって正逆回動が可能な切替ベルト41を設け、その切替ベルト41の回動方向を変更することによってローラ対31によって搬送された用紙Pの搬送方向を切り替えることになる。
図8(a)は、用紙Pの先端が、ローラ対31によってそのローラ対のニップを通る用紙の搬送方向の延長線上に若干押し出された状態を示している。このとき切替ベルト41は、用紙Pを搬送路27側に送るため、既に矢示の反時計回り方向に回動している。用紙Pの先端Paが切替ベルト41に当接すると、図8(b)に示すように用紙P1の先端Paが切替ベルト41の矢示方向への回転により搬送路27側にガイドされる。その後、用紙Pは、図8(c)に示すようにガイド板36,37に案内され、搬送ローラ対33に挾持されて搬送路27内を上昇する。
別の分岐搬送路28への用紙搬送では、図9(a)に示すように用紙Pの先端がローラ対31によって挟持される一方、切替ベルト41は、用紙Pを搬送路28側へ送るため、矢示の時計回りに回動する。用紙Pが切替ベルト41に達してその先端Paがベルトに当接すると、図9(b)に示すように用紙の先端Paは切替ベルト41の矢示の回転方向にガイドされる。したがって、用紙Pはガイド板36,38に案内されて進み、図9(c)に示すように搬送ローラ対35に挾持されながら搬送路28内を図で下方へ搬送される。
このような切替ベルトを用いた用紙搬送装置は、用紙搬送転向部において用紙に搬送力を与えることができ、曲率半径の小さな固定湾曲案内路に比べて、腰の強い用紙であってもスムーズな搬送を可能とする。しかしながら、図8,9に示した構成では、用紙を所望の分岐搬送路に送り込む際に、用紙先端が切替ベルト41の所望分岐搬送路側に当接することが保証されず、異なる分岐搬送路側の切替ベルト部分に当接して、しかる後に用紙先端が所望の分岐搬送路へ押し戻される事態を発生する可能性がある。即ち、特に定着後の用紙には反り乃至くせがつき、例えば図8において用紙Pに下向きの反りがついている場合、用紙先端が先ず切替ベルト41の右下の斜め辺に当接した上で、用紙Pがローラ対31で送り込まれながら用紙先端が持ち上げられて搬送路27側へ押し戻される挙動となるので、ジャムを発生する危険性が高くなる。
本発明は、上記背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、通常使用される定型用紙に加え、高剛性の用紙や特殊紙も安定して分岐搬送することのでき、反りのついた用紙であっても確実に分岐搬送のできる、簡易且つ安価な小型のシート搬送装置及び画像形成装置を提供することにある。
上記課題は、本発明にしたがって、シート搬入路と切替分岐爪を有するシート搬送路切替装置において、当該切替分岐爪の下流側に複数存する分岐搬送路のうち分岐爪に近い2つの分岐搬送路の外郭を、単一のエンドレスベルトの可動ベルト面で構成し、ベルトを張架するベルト張架回転部材に対向する回転部材を分岐搬送路の内郭に配置し、対向回転部材とベルト張架回転部材に掛け回されるベルト面とでシートを挟持搬送することで、解決される。図面に関連した下記の実施形態の場合、下流側分岐搬送路は2本だけであるが、3本以上の分岐搬送路にも適用可能であり、可動ベルト面は、そのうちの分岐爪に近い2つの分岐搬送路の外郭を構成する。
ベルト張架回転部材に直接駆動を与えてもよいが、これに対向する回転部材を駆動することによって、正逆回転可能なベルトが従動的に駆動されるようになっていてもよい。ベルト張架回転部材の一つが排紙ローラ対の一方を兼ねていれば、好ましい。
ベルト張架回転部材に対向する回転部材にトルクリミッタを設けること、ベルトが導電性であることも、好都合である。
切替分岐爪を固定案内部と可動な先端切替爪片とで構成するのが、好適である。固体案内部の底辺部分が分岐搬送路の外郭を構成するベルト面に可能な限り接近しているのがよい。しかしながら、エンドレスベルトが用紙搬送方向に直交する方向で複数に分割されたベルト部分から構成されていてもよい。その場合には、固定案内部の底辺部分が分岐搬送路の外郭を構成するベルト面よりもエンドレスベルト領域内に入り込んでいるのが好都合である。
分岐爪の切替動作は、ベルトの回転方向切替動作に先行して切り替わるようになっているのが、よい。
シート搬入路と切替分岐爪と当該切替分岐爪の下流側に複数存する分岐搬送路とを有するシート搬送路切替装置において、切替分岐爪を固定案内部と可動な先端切替爪片とで構成することでも、上記課題を解決できる。その場合、固定案内部の底辺両端近傍に挟持ローラ対を配置し、底辺頂角部が挟持ローラ対のうち分岐搬送路の外郭を構成するローラに向いているのが、一層効果的である。
請求項1に係る発明によれば、シート搬入路と切替分岐爪を有するシート搬送路切替装置において、当該切替分岐爪の下流側に複数存する分岐搬送路のうち分岐爪に近い2つの分岐搬送路の外郭を、単一のエンドレスベルトの可動ベルト面で構成するので、通常使用される定型用紙に加え、高剛性の用紙や特殊紙も安定して分岐搬送することのでき、反りのついた用紙であっても確実に分岐搬送できる。
そして、ベルト張架回転部材に対向する回転部材を分岐搬送路の内郭に配置し、対向回転部材とベルト面とでシートを挟持搬送するようになっているので、ベルトの張力に頼ることなくベルトへの加圧力を調節でき、しいては摩擦抵抗力を調節でき、用紙搬送が確実になる。ベルト張架回転部材に直接駆動を与えてベルト駆動の安定を図ってもよいが、請求項2に係る発明のように、対向回転部材を駆動することによって、正逆回転可能なベルトが従動的に駆動されるようになっていれば、シート搬送路の外郭に位置するベルト回転軸まで駆動用部材を配置する必要がなくなり、レイアウト上のメリットをあるだけでなく、部品点数を減らすことができる。請求項3に係る発明によれば、ベルト張架回転部材の一つが排紙ローラ対の一方を兼ねているので、ベルト長を伸ばすだけで用紙排紙搬送における用紙搬送性が確実に向上する。
請求項4に係る発明によれば、対向回転部材にトルクリミッタを設けるので、ジャム等により搬送路切替装置内に設けられた各搬送部材に仕様を超える加重が働く場合に対向回転部材の駆動を止めることで、ベルトに加わる加重を仕様内に収めて、ベルトダメージを回避でき、故障の少ないシート搬送装置を提供できる。請求項5に係る発明によれば、ベルトが導電性なので、当接面での摩擦帯電の発生を防止でき、第2面印字時の異常画像発生を防止できる。
請求項6に係る発明によれば、切替分岐爪を固定案内部と可動な先端切替爪片とで構成するので、搬送路切替とシート搬送方向の転向という各機能を部片毎で分けることができ、固定案内部の側辺の曲率を大きくして、コンパクトにシート搬送路を切り替えても、シートの先端が固定案内部の側片を滑り、搬送不良を抑えることができる。請求項7に係る発明によれば、固体案内部の底辺部分が分岐搬送路の外郭を構成するベルト面に可能な限り接近しているので、固定案内部の側辺からベルト面へのシート搬送の橋渡しがスムーズとなる。請求項8に係る発明によれば、エンドレスベルトをシート搬送方向に直交する方向で複数に分割されたベルト部分から構成するので、部材費用を抑えることができるだけでなく、請求項9に係る発明のように、固定案内部の底辺部分が分岐搬送路の外郭を構成するベルト面よりもエンドレスベルト領域内に入り込ませることができ、固定案内部の側辺からベルト面へのシート搬送の橋渡しが一層スムーズとなる。
請求項10に係る発明によれば、分岐爪の切替動作が、ベルトの回転方向切替動作に先行して切り替わるようになっているので、シートが連続的に搬入路へ入る状態で、シートの間隔が小さい場合においても搬入路から分岐搬送路のいずれかへ確実にシートを導くことが可能で、生産性の優れたシート搬送装置を提供できる。
請求項11に係る発明によれば、シート搬入路と切替分岐爪と当該切替分岐爪の下流側に複数存する分岐搬送路とを有するシート搬送路切替装置において、切替分岐爪を固定案内部と可動な先端切替爪片とで構成するので、通常使用される定型用紙に加え、高剛性の用紙や特殊紙も安定して分岐搬送することのでき、反りのついた用紙であっても確実に分岐搬送できる。その場合、請求項12に係る発明のように、固定案内部の底辺両端近傍に挟持ローラ対を配置し、底辺頂角部が挟持ローラ対のうち分岐搬送路の外郭を構成するローラに向いていれば、ジャム発生の可能性を一段と抑えることができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る画像形成装置の一例であるフルカラープリンタ(以下、「プリンタ」という)100の概略を示す断面構成図である。図1に示すプリンタ100は、潜像担持体としてのベルト状の感光体1を具備している。感光体1の周りには、不図示の帯電装置と、露光装置としての書き込み光学ユニット2と、現像装置としての多段現像ユニット3と、転写装置としての中間転写ベルト11と、不図示のクリーニング等が配設されている。多段現像ユニット3は、下方から順にブラック、シアン、マゼンタ、イエローの現像剤を収納する現像装置3K,3C,3M,3Yを、それぞれ着脱自在で多段に備えている。ここで、各符号の添字K,C,M,Yは、それぞれ黒用、シアン用、マゼンダ用、イエロー用の部材であることを示す。更に感光体1に対向する位置(図の右側)で中間転写ベルト11の内側に、一次転写手段としての1次転写ローラ12が設けられている。また、プリンタ100の下部には、用紙を収納した3段の給紙カセット45a,45b,45cが設けられている。各給紙カセット45a,45b,45cに対応して分離給送手段46a,46b,46cが設けられている。また、プリンタ100の右側面には手差しトレイ63が引き出し・収納可能に設けられている。図1では、手差しトレイ63を引き出した状態を示している。この手差しトレイ63から用紙を給送するために分離給送手段46dが設けられている。これらの分離給送手段46a,46b,46c,46dによって給送される用紙を搬送するために、グリップローラ対47が設けられている。グリップローラ対47の上方(用紙搬送方向の下流側)にはレジストローラ対48が設けられている。そのレジストローラ対48の上方には、2次転写手段としての2次転写ローラ49が、中間転写ベルト11が掛け渡されるローラの一つである転写対向ローラ13に対向して設けられている。なお、分離給送手段46、グリップローラ対47及びレジストローラ対48等は、それぞれクラッチ、ステッピングモータ等により単独で駆動できるように構成されている。
2次転写ローラ49の上側には定着装置25が設けられており、この定着装置25の上方には、選択的に搬送方向を分岐する搬送路切替装置51が設けられている。また、符号64〜70は、用紙搬送路中に適宜配置された用紙センサである。なお、用紙は、用紙搬送路に設けられたガイド板等のガイド部材(符号付さず)により適宜ガイドされている。プリンタ100本体の上面は排紙トレイ62として構成されており、この排紙トレイ62に用紙を排出するための排紙ローラ対61が、定着装置25の左上方に位置して設けられている。
また、プリンタ100本体の右側には用紙を反転させる反転装置80が備えられている。反転装置80は、スイッチバック路としての反転往路81と、反転復路82とを備えている。また、反転往路81に送り込まれた用紙を挟持するスイッチバックローラ対83と、スイッチバックローラ対83の上流側に設けられた入口センサ84と、反転ユニット切替爪85とが備えられている。
次に、上記プリンタの動作を説明する。プリンタがフルカラーの画像データを受け取ると、感光体1が図1において時計方向(右回り)に回転し、その表面が帯電装置により一様に帯電される。次いで、感光体1は、書込み光学ユニット2により各色画像に対応するレーザ光をそれぞれ照射され、画像データに対応した潜像がそれぞれ感光体表面上に形成される。感光体1が回転することで多段現像ユニット3の位置に潜像が達するに合わせて、形成された色に対応する現像装置3K,3C,3M,3Yを選択的に感光体1に対向させる。そして対向した現像装置3K,3C,3M,3Yのいずれかより感光体1上にトナーが供給され、トナー像が形成される。感光体1上のトナー像は1次中間転写ローラ12により、一旦中間転写ベルト11上に転写される。一方、トナー像転写後の感光体1の表面は、不図示のクリーニング装置によりクリーニングされる。このようなサイクルを各色で繰り返し、中間転写ベルト上でイエロー、マゼンタ、シアン、及び黒色の各トナー像が順次転写されていき、4色重ね合わせのフルカラーのトナー画像が形成される。
一方、トナー画像形成のタイミングに合わせて給紙指令が発せられると、給送カセット45a,45b,45cあるいは手差しトレイ63から用紙が選択的に分離給送手段46a,46b,46c,46dのいずれかによって1枚ずつ給送され、グリップローラ対47を通過して、レジストローラ対48に達して一時停止する。そして、レジストローラ対48によって、中間転写ベルト11上に担持されたトナー像とのタイミングを取って二次転写位置に向けて送出される。二次転写位置では、2次転写ローラ49により中間転写ベルト11表面のトナー像を用紙上に一括して転写される。トナー像を転写された用紙は、定着装置25を通過するとき、熱と圧力によってトナー像が用紙に溶融定着される。一方、トナー像転写後の中間転写ベルト11は不図示の中間転写ベルトクリーニング装置によりクリーニングされ、次の静電潜像の形成に備えられる。
搬送路切替装置51は、定着装置25によりトナー像を定着した後の用紙を排紙トレイ62又は反転装置80のいずれかに向かうように搬送方向を切り替える。図2に搬送路切替装置51の拡大概略構成を示す。搬送路切替装置51は、用紙搬送方向分岐手段としての分岐爪22を有しており、分岐爪22は図中左右へソレノイド等のアクチュエータ(図示せず)により切り替えられる。また、搬送路27は用紙を排紙トレイ62側に搬送し、搬送路28は用紙を反転装置80側に搬送するものである。定着装置25によりトナー像を定着した後の用紙は、搬入路26より分岐爪22の位置まで導入され、分岐爪22により搬送路27,28のいずれかに向かって搬送される。分岐搬送路27,28の各外郭の一部をエンドレスベルト53のベルト表面によって担っている。ちなみにエンドレスベルト53を二つに分けて、分岐搬送路27用のエンドレスベルトと分岐搬送路28用のエンドレスベルトとすることも可能である。搬入路26と分岐搬送路27,28により略Y字状の搬送路が形成される。例えば、片面印字が選択されている場合は、搬送路切替装置51の分岐爪22の切り替えにより用紙は排紙トレイ62方向の搬送路27へ搬送され、排紙ローラ対61によりプリンタ100本体の上面に構成された排紙トレイ62に排出される。図1中の太実線は、片面印字時の用紙搬送経路(ただし、給送カセット45a,45b,45c又は手差しトレイ63から給送した場合)を示している。また、両面印字が選択されている場合は、搬送路切替装置51の分岐爪22の切り替えにより用紙は反転装置80方向側の搬送路28へ搬送される。搬送路切替装置51の切り替えにより反転装置80の反転往路81に送り込まれた用紙は、スイッチバックローラ対83に挟持され、その反転動作により反転復路82に送られる。反転往路81では、スイッチバックローラ対83の上流側に設けられた入口センサ84が用紙の後端を検知すると、その検知をトリガとしてスイッチバックローラ回転方向が反転し、スイッチバックローラ対83を逆転方向に駆動させ、用紙は後端が前端となって進入方向と逆方向へ搬送される。スイッチバックローラ対83に挟持された用紙は、その搬送作用により搬送され、不図示のソレノイドにより反転ユニット切替爪85が駆動されることにより、反転復路82に進入可能となる。反転復路82を経由し反転された用紙は裏面印字のため反転出口86よりレジストローラ対48に搬送される。図1中の破線は、両面印字時の反転装置80内での用紙搬送経路を示している。そして、レジストローラ対48によりトナー像に同期して中間転写ベルト11の転写位置に再搬送され、トナー像を転写される。転写を終えた用紙は、定着装置25に搬送され、ここでトナー像が用紙に定着される。第二面の画像形成を終えた用紙は、搬送路切替装置51により太実線が示す経路にて排紙ローラ61に搬送されて機外の排紙トレイ62上に排出される。
搬送路切替装置51の更に詳細な構成と動作について説明する。本実施形態のプリンタ100では、分岐爪22により2つの搬送路27,28のいずれかに導かれ後、排紙トレイ62又は反転装置80へ搬送するにあたって用紙先端が駆動するベルト53表面に接触して該当の搬送方向へ転向するように、2つのローラ29,30で架張したエンドレスベルト53が設けられている。より具体的には、搬送路切替装置51は、用紙先端がエンドレスベルト53表面にグリップされ、下流の挟持部に向けて用紙先端を移動案内している。このベルト53は正逆回転切り替え自在に構成され、排紙トレイ62又は反転装置80への所定搬送方向に合わせて回転させるので、用紙の先端が接触する際の抵抗を小さくできる。このため、通常使用される定型用紙だけでなく、高剛性の用紙や特殊紙でもジャムや搬送不良を生じずに安定して搬送することができる。また、このような架張したベルトを設けるだけで用紙の搬送方向を変更するために要するスペース(曲率半径)も小さくて済み、コンパクトにできコストアップも抑えられる。図示の例では正逆回転切り替え自在な1つのベルト53によって、排紙トレイ62方向と反転装置80方向、両方向搬送のための回転搬送手段を構成しているが、ローラ29,30のそれぞれの領域に小さめのエンドレスベルトを配設して、排紙トレイ62方向と反転装置80方向のそれぞれの搬送を分担させることも当然ながら可能である。ベルト張架回転部材29が排紙ローラ対61の一方であるように構成することも可能である。この場合、対向回転部材54を削減し、排紙ローラ対61を図中右側にシフトすることができるので、排紙トレイ62の載置面積を多く確保することができる。
エンドレスベルト53には、シリコーンゴムにカーボンブラックを分散させたもののように公知の導電性材料が用いられている。導電性部材を用いることで、用紙との当接面での摩擦帯電の発生を防止でき、特に第二面の印画時の異常画像発生を防止することができる。また、エンドレスベルト53をベルト張架回転部材29,30に取り付けるにあたり、ベルト張架回転部材29,30に掛け回す構成としてもよい。この場合、用紙先端が確実にベルト表面にグリップできるような伸張率、対向回転部材54,55との線速と等しくなるような伸張率(ベルト側が従動の場合)、又は分岐爪の底辺と干渉しない程度の伸張率とすることが好ましい。
また、正逆両方向に回転駆動可能とするベルト駆動部(図示せず)からベルト張架回転部材29,30の少なくとも一方に駆動力を与えることでベルト53を正逆回転切り替え可能とする。具体的には、用紙を排紙トレイ62側の搬送路27に分岐搬送する際は、ベルト53の回転方向を図中右回り(CW)とし、反転装置80側の搬送路28に分岐搬送する際は図中左回り(CCW)とする。代替的に、駆動部によって、ベルト53を介してベルト張架回転部材29,30に対向する回転部材54,55に駆動力を与えることによってベルト53を従動回転するようにしてもよい。そのような回転部材駆動部若しくは対向回転部材54,55にトルクリミッタ56,57を設けるようにしてもよい。このようにすることで、ベルト53の異なる搬送路への切り替えを確実に行うことができ、更にジャム等の不具合発生時においてもベルト53へのダメージを防止することもできる。更に、ベルト53と対向回転部材54,55の挟持状態を解除するように搬送路を開放する構成も容易にできる。なお、ベルト53の回転軸に対向する位置に回転部材54,55を配置することで、ベルト張架ローラ29,30、対向回転部材54,55のいずれに駆動力を与えるかにかかわらず、用紙を挟持搬送することになるので、ベルト53と用紙との摩擦抵抗が増し、用紙の搬送性能が向上する。
分岐爪22は、可動先端切替爪片22aと固定案内部22bとで構成されている。このように可動部と固定部とに分けることによって、固定案内部22bの底辺部分をベルト51に極めて接近させても用紙搬送経路を切り替える際に分岐爪の底辺部分がベルト表面に接触することがなく、用紙のガイドを確実なものとすることができる。固定案内部22bの側辺を湾曲させて分岐搬送路の曲率部を形成すれば、用紙搬送をスムーズにできる。
図3に示すように、ベルト51を用紙搬送方向に直交する方向で複数に分割するようにしてもよい。ベルトを分割することで、部分ベルト51a,51b,51c(図面上は3つのベルト片のみを示すが、数は2つも4つ以上も可能である)の間に固定案内部22b’,22b”を配設でき、このような配置によって固定案内部の底部分(図3に見える固定案内部の平坦部分)を部分ベルト51a,51b,51cの下側面より上方に位置させ、分岐爪22をエンドレスベルトの領域内に入り込むように構成することができる。このような構成は、固定案内部の側辺からベルト表面にかけて用紙のガイドをスムーズとする。
分岐爪22(可動先端切替爪片22a)の切り替え動作を、ベルト53の回転方向の切り替え動作により先行して行うようにする。このようにすることで、用紙の搬送間隔を大きく取ること無く、異なる搬送路に確実に用紙を導くことができるようになる。図4は分岐爪22とエンドレスベルト53の動作例に関するフローチャートである。プリンタ100本体内の制御部(図示せず)において、両面印刷指令が入力される(ステップ1)と、分岐爪におけるフォトセンサ(図示せず、図6の符号21に対応)の検知状態を確認し(ステップ2)、検知がオフならば先端切替爪は反転装置80への分岐搬送路28を開放しているので、その位置を維持しつつ(例えばステッピングモータ励磁)、エンドレスベルト53を図2において左回りに回転させ(ステップ3)、しかる後に印刷動作を開始する(ステップ4)。一方、ステップ2においてフォトセンサの検知状態がオンならば先端切替爪は排紙トレイ62への分岐搬送路27を開放し反転装置80への分岐搬送路28を閉鎖しているので、オフ検知になるまでステッピングモータ(図示せず、図6の符号20に対応)を正転させる(ステップ5,6)。そしてタイマー等を用いて計時(ステップ7)し、所定時間内にオフ検知しない場合(ステップ8)は、部品の故障の可能性があるので画像形成装置の動作を停止させ、図示しない操作部等において故障表示をする(ステップ9)。
以上、本実施形態によれば、分岐爪22と2つの搬送路27,28との間で用紙の先端が接触する回転自在なベルト53になるようにすることで、用紙の先端との突入時負荷を大幅に低減できる。このため、通常使用される定型用紙に加え、高剛性の用紙や特殊紙でもジャムや搬送不良を生じずに安定して搬送することができる。
別の実施形態として、図5に示すように、可動先端切替爪片22aと固定案内部22bとで構成される分岐爪22の、固定案内部底辺両端近傍に挟持ローラ対72,74を配置する。しかも固定案内部22bの底辺頂角部22c,22dは挟持ローラ対72,74の挟持部へ用紙先端を案内するような形状をなしている。このような構成によって用紙ガイドがスムーズとなる。
また、分岐爪22を固定案内部22bと可動先端切替爪片22aとで構成したことにより、分岐爪の回動領域を考慮することなく(具体的には、挟持ローラ対72,74に用紙を案内し易くするために、挟持ローラ対72,74の近傍までガイド面を有する従来タイプの分岐爪の場合、回動したときに、爪の下流先端が内郭ガイドと干渉してしまい、用紙搬送路を閉ざしてしまう恐れがある)、固定案内部22bを外郭側の挟持ローラ72,74に限りなく底辺頂角部22c,22dを近づけることが可能となり、用紙をスムーズに案内できる。言い換えれば、従来の構成の場合、切替爪の底辺と外郭ガイド面とに段差が生じていたため、この段差による負荷が発生していたが、上記構成により段差をなくし、その結果、搬送負荷を軽減することができる。
なお、この場合、図6に示すような形態と同様に、用紙搬送方向に直交する方向に複数の固定案内部22bと可動先端切替爪片22aを配置してもよい。この構成であれば、挟持ローラ対72,74と底辺頂角部22c,22dを幅方向に交互になるように配置することが可能である。この構成にすることにより、搬送方向における挟持ローラ対72,74と底辺頂角部22c,22dとの段差がなくなるので、用紙先端が挟持ローラ対72,74の腹に衝突することを防止でき、その結果、挟持ローラ対72,74の挟持部に用紙をスムーズに案内することができる。
また、上記実施形態では、分岐爪の底辺部に近接するように搬送路切替装置51を配置していることから、従来の分岐爪では、分岐爪が回動したときにベルト53と干渉してしまう。そこで、図3に関連して説明した固定案内部22b’,22b”に代えて、同じようにベルト間に従来の分岐爪を配置すれば、ベルトとの干渉を防止できる。
なお、上記実施形態では、定着後の用紙切替位置(排紙トレイと両面反転路)での説明を行ったが、この形態に限られるものではない。例えば、原稿を搬送して読み取る自動原稿搬送装置(ADF)の原稿搬送路切替位置や、画像形成後の用紙を複数の積載部へ排出するときの切替位置、搬送路が2つ以上に分岐する分岐位置等にも適用できる。更に、画像形成装置は、画像読取部と画像形成部の間に積載空間を形成する形態の装置であってもよく、また画像形成部は、電子写真式に限らず、種々の方式にも適用できる。