JP4766833B2 - 燃料電池システムおよび該システムの組立方法 - Google Patents
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Description
固体高分子形燃料電池発電装置は、天然ガス、都市ガス、メタノール、LPG、ブタンなどの燃料ガスを水素に改質する改質器と、一酸化炭素を変成するCO変成器と、一酸化炭素を除去するCO除去器と、起動時に各反応器が安定するまで水素を燃焼するプロセスガスバーナと、このようにして得られた水素と空気中の酸素とを化学反応させて発電する燃料電池と、燃料電池の電極部を冷却するとともに反応空気の加湿のためのイオン交換樹脂などの水処理装置で処理された水(純水)を収納した水タンクと、前記改質器、燃料電池、プロセスガスバーナなどの排ガスの熱を回収して温水とする熱交換器と、この温水を蓄える貯湯タンクなどを備えた小型電源として提案されている。
特に、LPGを燃料ガスとして用いる場合、LPGには着臭剤以外に石油由来の硫黄分が含まれている一方、燃料電池に供給されるLPG中の硫黄を所定濃度に制限する必要があるため、脱硫装置の脱硫条件が厳しいものになっている。
このため、時間経過とともに液体LPG中の硫黄濃度が上昇し、ボンベ消費率80ないし90%以上で急激に増加し、その際脱硫装置の許容濃度を超えた濃度の硫黄が、脱硫装置に供給され、脱硫装置の寿命を短命化し、ひいては燃料電池に高濃度硫黄が送られ、改質器の改質機能を損なって燃料電池自体を壊すことがある。
このような状況下、燃料電池メーカは、高濃度の硫黄に対して対処可能な脱硫装置あるいは改質器の開発に取り組んでいる。
本発明の目的は、LPGを燃料電池に供給する際、LPG中の硫黄濃度の変化を制限することが可能な、燃料電池システム及び燃料電池システムの組立方法を提供することにある。
以上の目的を達成するために、本発明の燃料電池システムは、
LPG流れの上流から下流に向かって、気液2相混合状態でLPGを蓄えるLPG貯蔵容器と、該LPG貯蔵容器からのLPG中の硫黄を脱硫する脱硫装置と、該脱硫装置により脱硫されたLPGを燃料とする燃料電池とを有する、燃料電池システムにおいて、
前記LPG貯蔵容器は、下端流入開口が液相に浸された、前記LPG貯蔵容器内の液体LPGを外部に取り出すためのサイフォン管を有し、
該サイフォン管により外部に取り出された液体LPGを気化させるためのベーパライザを前記脱硫装置の上流側にさらに有し、
それにより、前記脱硫装置に供給されるLPG中の硫黄を所定濃度に制限する構成としている。
また、前記LPG貯蔵容器は、前記LPG貯蔵容器内のLPGが連通するガス取出口と、前記LPG貯蔵容器内の液体LPGが連通する液取出口とを有し、
さらに、前記脱硫装置を前記ガス取出口或いは前記液取出口に連通切替する連通切替手段を有し、
それにより、前記LPG供給器内のLPG中の硫黄濃度に応じて、前記脱硫装置を前記液取出口或いは前記ガス取出口に連通切替を行ってもよい。
さらに、前記ベーパライザは、前記燃料電池により発生する熱を利用して、液体LPGを気化するのがよい。
LPG流れの上流から下流に向かって、気液2相混合状態でLPGを蓄えるLPG貯蔵容器と、該LPG貯蔵容器から供給されたLPG中の硫黄を脱硫する脱硫装置と、該脱硫装置により脱硫されたLPGを燃料とする燃料電池とを配置し、該LPG貯蔵容器、該脱硫装置、該燃料電池をこの順にそれぞれLPG用配管により接続する、燃料電池システムの組立方法において、
前記LPG貯蔵容器の下流側且つ前記脱硫装置の上流側に、液体LPGを気化するためのベーパライザを設置して、該ベーパライザと前記LPG貯蔵容器の液取り出し口とをLPG用配管により接続する段階と、
前記ベーパライザと前記脱硫装置とをLPG用配管により接続する段階とを有し、
それにより液取り式で前記LPG貯蔵容器からLPGを外部に取り出して、前記ベーパライザにより気化させたLPG燃料を前記燃料電池に供給可能とする構成としている。
図1は、従来の固体高分子形燃料電池発電装置(PEFC装置GS)の系統図である。図2は、図1に示したLPGボンベの説明図である。
図1に示すように、燃料電池システム10は、LPGボンベ100と、ベーパライザー110と、固体高分子形燃料電池発電装置120と、LPGボンベ100、ベーパライザー110及び固体高分子形燃料電池発電装置120をそれぞれLPGが流通可能に接続するLPG配管130とから概略構成されている。
図2に示すように、LPGボンベ100は、鋼板或いはアルミニウムを成形し、これを溶接して製造されたものであり、高圧ガス保安法(容器保安規則)に基づく検査合格刻印が付されたもの等でなければ使用することができない。ボンベの種類としては、10kg型、20kg型、50kg型に大別され、種別に応じて基準内容積、充填質量、基準外径、ボンベの肉厚、ボンベの質量、ボンベの全長等が定められている。
LPGボンベ100には、安全弁、液面計、過充填防止装置、液取入バルブ、液取出バルブ、ガス取出バルブ(ともに図示せず)、サイフォン管140から構成される付属品及び機器の取り付けが義務つけられている。現時点でサイフォン管140が設置されているのは、50kg型である。液取出バルブ及びガス取出バルブはそれぞれ、ボンベの外表面に、サイフォン管140を通じてボンベの内部に連通した液取出口150、ガス取出口160を有する。LPGは、常温で気液2層混合状態であり、ボンベ内に貯蔵された液体LPGを下端開口170からサイフォン管140、液取出口150を通して取出す方式(液取り方式)と、ボンベ内に貯蔵された気体LPGをガス取出口160を通して取り出す方式(気取り方式)のいずれかが選択可能に構成されている。下端開口170は、LPGボンベ100の底に届かない範囲で、なるべく底に近いレベルに設定するのが好ましい。これにより、LPGの消費に伴いボンベ内の液面が下がっても下端開口170より上の液面までは、液取り式により液体LPGを外部に取り出すことが可能である。
ベーパライザー110は、LPGボンベから給送された液体LPを気化する通常の熱交換器であり、液体LPを気化するための気化熱として、特に後に説明する燃料電池から排出される排熱を利用している。より詳細には、後に説明する貯湯タンク50からの湯を配管101を介してベーパライザー110に戻している。なお、本燃料電池システムを温暖地域で使用する場合には、気化熱として大気熱を利用し、それでは熱量が不足する場合に、補充的に燃料電池からの排熱を利用してもよい。ベーパライザー110によって気化されたLPGは、後に説明する燃料電池6の脱流装置2に送られるようにしている。
燃料電池6を用いたPEFC装置GSは、例えば、燃料電池6の他に熱回収装置RDを含んでいる。この熱回収装置RDは、貯湯タンク50、熱交換器32、46、71、ポンプ33、47、72とを備えた温水の循環路などで連結されている。
燃料電池6は、脱硫器2、改質器3、CO変成器4、CO除去器5などからなる燃料ガス供給装置および空気ポンプ11、水タンク21などからなる反応空気供給装置ならびに燃料極6a、空気極6kなどの電極および水タンク21、ポンプ48、冷却部6cなどからなる燃料電池6の冷却装置を備えている。
燃料電池6で発電された電力は図示しないDC/DCコンバータで昇圧され、図示しない配電系統連系インバータを介して商用電源に接続される、一方、ここから家庭や事務所などの照明や空調機などの他の電気機器用の電力として供給される。
上記のPEFC装置GSの燃料ガス供給装置では、LPGの原燃料1が脱硫器2に供給され、ここで原燃料から硫黄成分が除去される。脱硫器2は、内部に吸着剤を充填したもので、吸着剤としては、石油系燃料の脱硫に有効である金属系脱硫剤、或いはゼオライト系脱硫剤が好ましい。
この脱硫器2を経た原燃料は、昇圧ポンプ102で昇圧されて改質器3に供給される際に、水タンク21から水ポンプ22を経て温水が送られ、熱交換器17で加熱されて生成した水蒸気と合流して、供給される。改質器3では、水素、二酸化炭素、および一酸化炭素を含む改質ガスが生成される。この改質器3を経たガスは、CO変成器4に供給され、ここでは改質ガスに含まれる一酸化炭素が二酸化炭素に変成される。このCO変成器4を経たガスは、CO除去器5に供給され、ここではCO変成器4を経たガス中の未変成の一酸化炭素が例えば10ppm以下に低減され、水素濃度の高いガス(改質ガス)がパイプ64を経て燃料電池6の燃料極6aに供給される。
このとき、水タンク21から改質器3へ供給される温水の量を調節することにより改質ガスへの水分の添加量が調節される。より詳細には、空気ポンプ11から水タンク21に、空気を供給し、水タンク21内の温水中に反応空気を泡立てつつ気相部53に送出することによって加湿が行われる。このようにして、燃料電池6における反応が適度に維持されるように水分を与えられた後の反応空気が水タンク21からパイプ25を経て燃料電池6の空気極6kに供給される。
改質器3における化学反応は吸熱反応であるので、加熱しながら化学反応を継続させるためのバーナ12を有し、ここにはパイプ13を介して原燃料が供給され、ファン14を介して空気が供給され、パイプ15を介して、燃料極6aを経た未反応水素が供給される。本PEFC装置GSの始動時には、バーナ12にパイプ13を介して原燃料が供給されて燃焼が行われ、起動後に、燃料電池6の温度が安定したときには、パイプ13からの原燃料の供給が断たれ、替わりにパイプ15を介して燃料極6aから排出される未反応水素(オフガス)が供給されて燃焼が継続される。
一方、CO変成器4、CO除去器5で行われる化学反応は発熱反応である。運転中は、発熱反応の熱により反応温度以上に昇温しないように冷却制御が行われる。このようにして改質器3、CO変成器4、CO除去器5および燃料電池6では所定の化学反応と発電が継続される。
次いで、取り出された液体LPGは、ベーパライザ110に送られ、ここで加熱されて液体LPGは気化される。次いで、気化されたLPGは、燃料電池6の脱硫装置2に送られ、ここでLPG中の硫黄が所定濃度まで低減される。このように、液取り方式により液体LPGを取り出すことにより、気取り方式と異なり、取出しの最初から最後まで取り出されるLPGの硫黄濃度変化、特に最終段階において脱硫装置2の限界を超える高濃度の硫黄が脱硫装置に供給されて、脱硫装置2に悪影響を与えたり、或いは脱硫装置2では硫黄濃度を抑制できずに、燃料電池6に高濃度の硫黄を含有するLPGが供給されて、燃料電池6、特に改質触媒を機能不全にすることを有効に回避することが可能となる。
この場合、LPGボンベ100の使用態様に応じて、使用方法を使い分けるのがよい。LPGボンベ100内のLPGを頻繁に消費する場合には、ガスコンロ或いは給湯器へ供給するには、硫黄濃度の高いLPGを用い、一方燃料電池6には、硫黄濃度の低いLPGを用いればよい。一方LPGボンベ100内のLPGを長期間に亘って(例えば、数週間ないし数ヶ月)消費しない場合には、消費再開の当初は、ボンベ底部の硫黄濃度が高いのでガスコンロ或いは給湯器へ供給し、一方消費が進んだ場合には、燃料電池6に使用すればよい。
試験条件 サンプリングボンベ;50kgサイフォン付ボンベ
サンプリング方法;ボンベの液取出口から気化装置を通してガスサンプリング袋により LPGを採取
濃度測定方法 ;JIS K 2240 5.5.6微量電量滴定式酸化法
結果を以下に示す。
20%消費 80%消費
LPGボンベ1 5.87ppm 4.21ppm
LPGボンベ2 6.18ppm 4.34ppm
以上の結果が示すように、気取り方式の場合と異なり、液取り方式の場合には、LPGボンベ内のLPGが80%消費された時点において、LPG中の硫黄濃度は20%消費時に比べてむしろ低下しており、このことから気取り方式の場合に問題であるLPGボンベ内のLPGの残量が少なったときの硫黄濃度の上昇を防止可能であることを確認できた。
以上説明したように、本発明の燃料電池システム及び燃料電池システムの組立方法によれば、LPG中の硫黄により燃料電池の健全性を損なうことを防止することができる。
本発明の燃料電池システム及び燃料電池システムの組立方法によれば、LPGを燃料電池に供給する際、LPG中の硫黄濃度の変化を制限することが可能である。
100 LPGガスボンベ
110 ベーパライザ
120 固体高分子燃料電池発電装置
130 LPG配管
140 サイフォン管
150 液取出口
160 ガス取出口
2 脱硫器
3 改質器
4 CO変成器
5 CO除去器
6 燃料電池
10、23〜24、28、43、47 ポンプ
21 水タンク
34 プロセスガスバーナ
17、32、71 熱交換器
37 プロセスガスバーナに燃焼用空気を送るファン
46 プロセスガスバーナに連結された熱交換器
50 貯湯タンク
Claims (3)
- LPG流れの上流から下流に向かって、気液2相混合状態でLPGを蓄えるLPG貯蔵容器と、該LPG貯蔵容器からのLPG中の硫黄を脱硫する脱硫装置と、該脱硫装置により脱硫されたLPGを燃料とする燃料電池とを有する、燃料電池システムにおいて、
前記LPG貯蔵容器は、下端流入開口が液相の底近傍に浸された、前記LPG貯蔵容器内の液体LPGを外部に取り出すためのサイフォン管と、前記LPG貯蔵容器は、前記LPG貯蔵容器内のLPGが連通するガス取出口と、前記LPG貯蔵容器内の液体LPGが連通する液取出口とを有し、
前記燃料電池システムは、前記脱硫装置の上流側に配置され且つ該サイフォン管により外部に取り出された液体LPGを気化させるためのベーパライザと、
前記脱硫装置に供給されるLPG中の硫黄を、前記燃料電池の健全性を損なわない所定濃度に制限するように、前記ガス取出口或いは前記液取出口を、前記LPG貯蔵容器内のLPG中の硫黄濃度に応じて、前記脱硫装置とガスコンロまたは給湯器との間で連通切替する連通切替手段とを更に有し、
前記燃料電池システムは、前記LPG貯蔵容器が、不使用のために前記LPG貯蔵容器内の硫黄濃度が高くなった後に使用される場合、前記液体LPGを前記ガスコンロまたは給湯器に使用し、その後、前記液体LPGを前記燃料電池に使用するように構成されていることを特徴とする燃料電池システム。 - 前記ベーパライザは、前記燃料電池により発生する熱を利用して、液体LPGを気化する請求項1に記載の燃料電池システム。
- 請求項1または請求項2に記載の燃料電池システムの、前記LPG貯蔵容器、前記連通切替手段、前記脱硫装置、前記燃料電池をこの順にそれぞれLPG用配管により接続する、燃料電池システムの組立方法において、
前記LPG貯蔵容器の下流側且つ前記脱硫装置の上流側に、液体LPGを気化するためのベーパライザを設置して、該ベーパライザと前記LPG貯蔵容器の液取り出し口、及び前記ガスコンロまたは給湯器と前記LPG貯蔵容器の液取り出し口とを、前記連通切替手段を介してLPG用配管により接続する段階と、
前記ベーパライザと前記脱硫装置とをLPG用配管により接続する段階とを有し、
それにより液取り式で前記LPG貯蔵容器からLPGを外部に取り出して、前記ベーパライザにより気化させたLPG燃料を前記燃料電池に供給可能とすることを特徴とする、燃料電池システムの組立方法。
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