JP4765623B2 - 2−クロロ−5−フルオロ−3−置換ピリジンまたはその塩の製造方法 - Google Patents
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Description
(1)2,6−ジクロロ−5−フルオロニコチン酸を出発原料として、これを2,6−ジクロロ−5−フルオロニコチン酸エチルエステルに変換し、つぎにナトリウムチオメトキシドと反応させて2−クロロ−5−フルオロ−6−メチルチオニコチン酸エチルとし、さらにラネーニッケル触媒下に6位のメチルチオ基を還元して2−クロロ−5−フルオロ−ニコチン酸エチルを得る方法(特許文献1参照。)。
(2)2−ヒドロキシニコチン酸を出発原料として、5位をニトロ化し、つぎに2位を塩素化し、つぎに塩酸中で塩化スズ(II)を用いて5位のニトロ基を還元して5−アミノ−2−クロロニコチン酸塩酸塩とし、つぎにテトラフルオロホウ酸および亜硝酸ナトリウムを用いてジアゾ化することによって、5位をジアゾニウムテトラフルオロボレートとし、さらに1,2−ジクロロベンゼン中で熱分解して2−クロロ−5−フルオロニコチン酸を製造する方法(特許文献2参照。)。
(3)2−クロロ−3−メチル−5−ニトロピリジンを出発原料として、ニトロ基を還元し、つぎにHPF6中でジアゾ化することによって5位をジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートに変換し、つぎに熱分解によって2−クロロ−5−フルオロ−3−メチルピリジンとし、さらに過マンガン酸カリウムによって酸化して2−クロロ−5−フルオロニコチン酸を製造する方法(非特許文献1参照。)。
(1)の方法におけるメチルチオ基の導入反応は、悪臭を伴う反応である。また該方法においては、水素原子をメチルチオ基に置換した後に、還元反応で該メチルチオ基を再び水素原子に置換するため非効率的な製法である。また、この還元反応の収率も30%と低い欠点がある。(2)の方法は反応工程が長い欠点がある。また、不安定なジアゾニウム塩を合成した後に、該ジアゾニウム塩を高温で熱分解する方法であるために総合収率が低い欠点がある。(3)の方法も反応工程が長い欠点がある。また酸化反応の収率も低く、実用性に乏しい欠点がある。
<1>下式(1)で表される化合物またはその塩に、亜鉛の存在下でプロトン性溶媒を作用させることによって、6位の塩素原子を選択的に還元することを特徴とする下式(2)で表される化合物またはその塩の製造方法。
ただし、下式中のZ1は、−CO2R1、−CONR2R3、または−CNで表される基を示す。ここで、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルアルキル基、またはシクロアルキル基を示す。
ただし、下式中のZ1は、−CO2R1、−CONR2R3、または−CNで表される基を示す。ここで、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルアルキル基、またはシクロアルキル基を示す。
<4><1>〜<3>のいずれかに記載の製造方法により、式(2)で表される化合物またはその塩を製造し、得られた式(2)で表される化合物またはその塩の置換反応を行うことにより、3位のZ1基をZ2基に置換して下式(4)で表される化合物またはその塩を得ることを特徴とする下式(4)で表される化合物またはその塩の製造方法。
ただし、下式中のZ2はZ1とは異なる基であり、−CO2R5、−CONR6R7、または−CNで表される基を示す。ここで、R5はアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルアルキル基、またはシクロアルキル基を示し、R6およびR7は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルアルキル基、またはシクロアルキル基を示す。
本明細書において、「アルキル基」は、直鎖であっても分岐であってもよい。アルキル基としては、特に記載しないかぎり炭素数1〜6の低級アルキル基が好ましい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、またはヘキシル基等が挙げられる。
「アルケニル基」は、直鎖であっても分岐であってもよい。アルケニル基は、特に記載しないかぎり炭素数2〜6のアルケニル基が好ましい。アルケニル基の例としては、アリル基、イソプロペニル基、または3−ブテニル基等が挙げられる。
「アリール基」とは、1価の芳香族炭化水素基をいい、フェニル基が好ましい。
「アルアルキル基」とは、アリール基で置換されたアルキル基をいう。アリール基部分としては、フェニル基が好ましい。またアルアルキル基中のアルキル基部分は、炭素数は1〜4のアルキル基が好ましい。アルアルキル基の例としては、ベンジル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、またはフェニルエチル基等が挙げられる。
「シクロアルキル基」とは3員環以上の環状のアルキル基をいい、3〜8員環のシクロアルキル基が好ましい。シクロアルキル基の例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
本発明における出発原料である化合物(1)は市販されており、また通常の合成方法で入手できる。たとえば、欧州特許第333020号公開公報、米国特許第5204478号公報などに記載の方法により製造できる。化合物(1)は、通常入手できる純度のものを、精製等を行わずにそのまま使用してもよい。化合物(1)の塩も市販されているか、または通常の合成方法で入手できる。該塩は、通常入手できる純度のものを、精製等を行わずにそのまま使用してもよい。
2,6−ジクロロ−5−フルオロニコチン酸、2,6−ジクロロ−5−フルオロニコチン酸メチル、2,6−ジクロロ−5−フルオロニコチン酸エチル、2,6−ジクロロ−5−フルオロニコチン酸イソプロピル、2,6−ジクロロ−5−フルオロニコチン酸ブチル、2,6−ジクロロ−5−フルオロニコチノニトリル、2,6−ジクロロ−5−フルオロニコチン酸アミド、2,6−ジクロロ−5−フルオロニコチン酸ジメチルアミド、2,6−ジクロロ−5−フルオロニコチン酸ジエチルアミド、2,6−ジクロロ−5−フルオロ−3−シアノピリジン。化合物(1)としては、入手および取り扱いが容易であることから2,6−ジクロロ−5−フルオロニコチン酸が好ましい。
化合物(1)の塩としては、前記の化合物の塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩等が挙げられる。
該方法1において、金属還元触媒の量は、化合物(1)またはその塩に対して0.1〜100質量%が好ましく、特に1〜30質量%が好ましい。また水素量は化合物(1)に対して1倍モル以上であるのが好ましく、1〜100倍モルが特に好ましく、1〜10倍モルであるのがとりわけ好ましい。
方法2においては金属を用いるのが好ましく、粉末の形状である該金属を用いるのが好ましい。さらに金属としては、スズ、銅、亜鉛、鉄などが好ましく、亜鉛が特に好ましい。
該方法2において、金属または金属塩の量は、化合物(1)またはその塩に対して0.1〜1000質量%であるのが好ましく、0.2〜300質量%であるのが特に好ましい。またプロトン性溶媒の量は、化合物(1)またはその塩を溶解、分散、または懸濁できる量であるのが好ましく、化合物(1)またはその塩に対して0.5〜100倍質量であるのが好ましく、特に1〜10倍質量であるのが特に好ましい。
プロトン性溶媒として、2種類以上の溶媒を混合した混合溶媒を用いる場合、あらかじめ混合しておいてもよく、各々の溶媒を別々に反応系に加え、反応系中で混合することによって混合溶媒としてもよい。混合溶媒がアルコール系溶媒と酸(A)との混合溶媒である場合には、操作性が良好であることから、酸(A)は最後に反応系に添加して混合溶媒とするのが好ましい。
プロトン性溶媒の量は化合物(1)またはその塩に対して0.5〜50倍質量が好ましく、特に2〜10倍質量が好ましい。混合溶媒としてアルコール系溶媒と酸(A)との混合溶媒を用いる場合の酸(A)の量は、化合物(1)またはその塩に対して、0.1〜10倍モルが好ましく、0.5〜2倍モルが特に好ましく、1.0倍モル〜1.3倍モルがとりわけ好ましい。
(方法2−1):化合物(1)またはその塩を、プロトン性溶媒に溶解、分散、または懸濁させ、つぎに金属または金属塩を添加して反応させる方法。該方法においては、金属または金属塩は、反応の初期に一度に添加しても、複数回に分けて添加してもよい。
(方法2−2):金属または金属塩を、プロトン性溶媒に溶解、分散、または懸濁させ、つぎに化合物(1)またはその塩を滴下して反応させる方法。該方法においては、反応熱を抑制できることから、化合物(1)またはその塩は、プロトン性溶媒で希釈した溶液または懸濁液として滴下するのが好ましい。
方法2としては、操作性が良好であり、反応の制御が容易になることから(方法2−2)によるのが好ましい。
該方法3におけるヒドリド反応剤の量は、化合物(1)またはその塩に対して0.6〜10倍モルであるのが好ましく、特に0.8〜5倍モルであるのが好ましい。
還元反応の結果得られた反応粗生成物は必要に応じて精製処理を行ってもよい。精製処理の方法としては、ろ過、溶媒濃縮、抽出、洗浄、高速液体クロマトグラフィー、再結晶、および蒸留等が挙げられる。
化合物(2)またはその塩を化合物(4)またはその塩に変換する方法としては、公知ないし周知の方法が採用でき、Z1およびZ2の種類に応じて適宜選択するのが好ましい。
(方法4−1):化合物(2a−1)またはその塩と、塩素化剤とを反応させて下記化合物(5)またはその塩を得て、該化合物(5)またはその塩と式R5OHで表される化合物(ただし、R5は前記の意味と同じ意味を示す。)とをエステル化反応させる方法。
(方法4−2):化合物(2a−1)またはその塩と、式R5OHで表される化合物(ただし、R5は前記と同じ意味を示す。)とをエステル化反応させる方法。
塩素化反応は溶媒の存在下に行っても不存在下に行ってもよく、溶媒の存在下に行うのが好ましい。溶媒としては、塩素化反応に不活性な溶媒から適宜選択でき、たとえば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、塩化メチレン、HFC−225等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒のうち、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒が好ましい。
また、塩素化反応を円滑に進行させるため、N,N−ジメチルホルムアミドを添加するのが好ましい。N,N−ジメチルホルムアミドの量は、化合物(2a−1)またはその塩に対して0.001〜1倍モルが好ましく、0.001〜0.5倍モルが特に好ましい。
塩素化反応の温度は+20〜+100℃が好ましく、+50〜+90℃が特に好ましい。
塩素化反応の時間は反応の進行状況により適宜変更され、工業的な製造においては1〜24時間が好ましく、5〜15時間が特に好ましい。
エステル化反応は、溶媒の存在下で行っても不存在下で行ってもよく、溶媒の存在下で行うのが好ましい。該溶媒としては、エステル化反応に不活性な溶媒から適宜選択されればよく、たとえばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;HCFC−225、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられ、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒が好ましい。
エステル化反応の温度は+50〜+120℃が好ましく、特に+70〜+90℃が好ましい。
エステル化反応は、前記の塩素化反応の反応粗液から単離した化合物(5)またはその塩を用いても、反応粗液をそのまま用いてもよく、後者の場合には塩素化反応に用いた反応器と同一の反応器を用いて行ってもよい。後者の方法の例としては、たとえば、化合物(2a−1)またはその塩を、溶媒に溶解または懸濁させ、塩素化剤を添加し、つぎに加熱することによって化合物(5)またはその塩を得て、つぎに式R5OHで表される化合物を滴下する方法が挙げられる。
エステル化反応の反応時間は反応の進行状況により適宜変更されればよく、工業的な製造においては、反応時間は3〜20時間が好ましく、4〜15時間が特に好ましい。
エステル化反応を円滑に進行させるためには、副生する水を反応系外へ留去しながら行うのが好ましい。
エステル化反応の時間は反応の進行状況により適宜変更され、工業的な製造においては1〜24時間が好ましく、5〜15時間が特に好ましい。
とを反応させることにより実施でき、方法4−2で記載したエステル化反応と同様の方法で行うことができる。エステル交換反応においては、反応を円滑に進行させるために、副生する式R1OHで表される化合物を反応系外へ留去しながら行うのが好ましい。
エステル交換反応の反応時間は反応の進行状況により適宜変更され、工業的な製造においては1〜24時間が好ましく、5〜15時間が特に好ましい。
酸処理工程に用いる化合物(2)は、前記の還元反応の反応粗液から単離した化合物(2)であっても、反応粗液中に含まれるままの化合物(2)であってもよく、操作が簡略化できることから後者が好ましい。後者において、還元工程のプロトン性溶媒と酸処理工程で用いる溶媒が異なる場合は、還元工程終了後の反応粗液において溶媒置換の操作を行った後に、または反応粗液を乾固しない程度に濃縮して、酸処理工程の溶媒を添加した後に、酸を滴下するのが好ましい。また、還元工程のプロトン性溶媒と酸処理工程で用いる溶媒が同一の場合は、反応粗液を乾固しない程度に濃縮してから酸(B)を滴下してもよく、還元工程の反応粗液に酸(B)を滴下してもよい。
酸処理工程において、酸(B)を滴下する際の温度は、+30〜+100℃が好ましく、+40〜+80℃が特に好ましい。
酸処理工程によって得られた化合物(2)の塩は、必要に応じて精製を行うのが好ましい。精製方法としては、化合物(2)の塩の物性によって蒸留、昇華、および結晶化等の方法から適宜選択されうる。
50mLの丸底フラスコに2,6−ジクロロ−5−フルオロニコチン酸(1g)、酢酸(5mL)および水(0.5mL)を仕込み、水冷下に亜鉛粉末(200mg)を加え、室温で3時間撹拌した。つぎに亜鉛粉末(200mg)を加えて1時間撹拌したのち、さらに亜鉛粉末(400mg)を加えて3時間撹拌した。さらに亜鉛粉末(200mg)を加えて1時間撹拌したのち、セライトろ過し、酢酸エチル、エタノールで洗浄した。溶媒を減圧濃縮し、酢酸エチル(20mL)、飽和重曹水(10mL)を加えて分液した。水層を酢酸エチル(20mL)で3回抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮して赤褐色オイル(400mg)を得た。HPLC分析で分析した結果、生成した赤褐色オイルは標記化合物71%、原料27%、および5−フルオロニコチン酸2%を含む混合物であった。収率48%。
1HNMR(CD3OD):δ(ppm)7.86(dd,J=7.8,3.0Hz,1H),8.29(d,J=2.7Hz,1H)。
200mLの丸底フラスコに2,6−ジクロロ−5−フルオロニコチン酸(1g)、メタノール(10mL)、トリエチルアミン(0.96g)、および5%Pd/炭酸カルシウム(鉛で被毒したもの)(107mg)を氷冷下に仕込み、水素雰囲気下、室温で1時間撹拌した。触媒を濾別し、濾液を濃縮し粗生成物(1.3g)を得た。濃縮した濾液をHPLCにより分析した結果、標記化合物26%、2,6−ジクロロ−5−フルオロニコチン酸57%、5−フルオロニコチン酸17%をそれぞれ含む混合物であった。
500mLの4つ口フラスコに2,6−ジクロロ−5−フルオロニコチン酸エチル(20g)を入れて酢酸(190mL)および水(10mL)を加えて溶解させた。水冷下に亜鉛粉末(4g)を加え、室温で0.5時間撹拌した。つぎに亜鉛粉末(4g)を加え0.5時間撹拌したのち、さらに亜鉛粉末(4g)を加え0.5時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、5%重曹水(100mL)、酢酸エチル(100mL)を加えて分液した。水層を酢酸エチル(100mL)で2回抽出した。有機層を5%重曹水(100mL)で洗浄し、飽和食塩水(100mL)で洗浄した。溶媒を濃縮して赤褐色オイル(15.6g)を得た。減圧蒸留により精製し、標記化合物(10.6g、収率62%)を得た。HPLC分析により分析した結果、標記化合物の純度は99%であった。
1HNMR(CDCl3):δ(ppm)1.43(t,J=7.2Hz,3H),4.43(q,J=7.2Hz,2H),7.91(dd,J=7.8,2.7Hz,1H),8.39(d,J=3.0Hz,1H).
19FNMR(CDCl3):δ(ppm)−129.2(d,J=7.6Hz)。
50mLの丸底フラスコに2,6−ジクロロ−5−フルオロニコチノニトリル(1g)、酢酸(5mL)および水(0.5mL)を仕込み、例1と同様に反応および後処理をしたのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=6/1)で精製し、標記化合物(420mg、収率52%)を得た。HPLC分析による分析では、純度は100%であった。
1HNMR(CDCl3):δ(ppm)7.76(dd,J=7.2,3.0Hz,1H),8.49(d,J=3.3Hz,1H).
19FNMR(CDCl3):δ(ppm)−126.9(d,J=7.6Hz)。
[例5−1]2−クロロ−5−フルオロニコチン酸の塩の合成例
2Lの丸底フラスコに、亜鉛粉末(847g)およびメタノール(4080mL)を仕込み、撹拌して分散させた。そこに2,6−ジクロロ−5−フルオロニコチン酸(1700g)のメタノール(2720mL)溶液をゆっくり滴下した後、さらに酢酸(535g)を滴下した。内温を35℃まで昇温し、そのまま5時間撹拌した。HPLC分析で原料が3%以下であることを確認した後、亜鉛粉末の残渣をろ過で除去した。メタノールを減圧留去した後、水(3000mL)を加えると、結晶が析出した。つぎに結晶を含む反応粗生成物を、水(3750mL)を用いて20Lの反応器へ移液した。内温を50℃以上まで加熱した後、6mol/Lの塩酸(1960g)を滴下した。そのまま3時間撹拌した後、徐々に室温まで冷却し、析出した固体をろ過し、水で洗浄した。得られた結晶を減圧下で(60℃、30.7Pa、12時間)乾燥し、2−クロロ−5−フルオロニコチン酸の塩(1000g)を得た。
2−ジクロロ−5−フルオロニコチン酸の塩のNMRスペクトル:
1HNMR(CD3COCD3):δ(ppm)8.05(dd,J=2.9,8.2Hz,1H),8.47(d,J=2.9Hz,1H)。
19FNMR(CDCl3):δ(ppm)−130.4(d,J=9.2Hz)。
5Lの4つ口フラスコに、例5−1で得た2−クロロ−5−フルオロニコチン酸の塩(1000g)を入れ、トルエン(3000mL)および塩化チオニル(617g)、N,N−ジメチルホルムアミド(0.95g)を加えて溶解させ、該フラスコを80℃に設定したオイルバスに浸漬して加熱した。6時間後、HPLC分析で2−クロロ−5−フルオロニコチン酸が5%以下になっていることを確認し、エタノール(2173g)を加えた。オイルバスの温度を95℃に昇温して14時間反応させた後、減圧濃縮し、得られた粗液に酢酸エチル(4000mL)、7.5%炭酸ナトリウム水溶液(4000mL)を加えて撹拌した。水層のpHが8以上であることを確認した後、濾過および分液を行い、有機層を回収した。水層を酢酸エチル(2000mL)で抽出し、先の有機層と合わせて、水(2000mL)、次いで5%食塩水(2000mL)で洗浄した。有機溶媒を減圧留去して赤褐色オイル(1234.7g)を得た。減圧蒸留により精製し、2−クロロ−5−フルオロニコチン酸エチル(624.8g)を得た。2,6−ジクロロ−5−フルオロニコチン酸からの収率は66%であった。HPLCで分析した結果、2−クロロ−5−フルオロニコチン酸エチルの純度は99%であった。
6mol/Lの塩酸を滴下する際の内温を60℃以上とし、滴下終了後にさらに内温80℃まで加熱し該温度で30分間撹拌を続ける以外は例5−1と同様に反応および後処理を行い、2−ジクロロ−5−フルオロニコチン酸の塩(1000g)を得た。
200mLのナス型フラスコに2,6−ジクロロ−5−フルオロニコチン酸(1g)、メタノール(10mL)、トリエチルアミン(0.96g)、および5%Pd−C(107mg)を氷冷下に仕込み、水素雰囲気下、室温で4時間撹拌した。撹拌終了後、Pd−Cをろ別し、ろ液を濃縮した。得られた粗生成物をHPLCにより分析した結果、標記化合物98.6%、2−クロロ−5−フルオロニコチン酸1.4%をそれぞれ含む混合物であった。
Claims (5)
- Z1が−CO2R1(ただし、R1は前記と同じ意味を示す。)で表わされる基である請求項1、または2に記載の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法により、式(2)で表される化合物またはその塩を製造し、得られた式(2)で表される化合物またはその塩の置換反応を行うことにより、3位のZ1基をZ2基に置換して下式(4)で表される化合物またはその塩を得ることを特徴とする下式(4)で表される化合物またはその塩の製造方法。
ただし、下式中のZ2はZ1とは異なる基であり、−CO2R5、−CONR6R7、または−CNで表される基を示す。ここで、R5はアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルアルキル基、またはシクロアルキル基を示し、R6およびR7は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルアルキル基、またはシクロアルキル基を示す。
- 前記Z1基が−COOHまたは−COOR10(ただし、R10はアルキル基を示す。)で表される基であり、前記式(2)で表される化合物またはその塩の置換反応を、Z1が−COOH基である場合にはエステル化反応により、Z1が−COOR10基(ただし、R10は前記と同じ意味を示す。)である場合にはエステル交換反応により行って、式(4)で表され、Z2が−COOR5基(ただし、R5は前記と同じ意味を示す。)である化合物を得る請求項4に記載の製造方法。
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