以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔第1実施形態:液体吐出ヘッドの構造〕
図1は本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドの構造を模式的に示した平面図である。図示のヘッド50は、インクジェット記録装置に用いられるフルライン型の印字ヘッドであり(記録ヘッド、或いはプリントヘッドとも呼ばれる)、印字媒体60の搬送方向(副走査方向:矢印S方向)と直交する方向(主走査方向:矢印M方向)に沿って印字媒体60の全幅Wm に対応する長さにわたり多数のノズル51を2次元配列させた構造を有している。図中、符号52は各ノズル51に対応した圧力室である。また、印字媒体60は図の上から下に向かって搬送されるものとする。
図2は1つの液滴吐出素子(1ノズルに対応したインク室ユニット)53の拡大図であり、図3は図2中の3−3線に沿う断面図である。図2に示したように、各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部の一方にノズル51への流出口(ノズル流路)が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)54が設けられている。ただし、本発明の実施に際して、圧力室52の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図3に示したように、圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。共通流路55はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
圧力室52の一部の面(図3において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)56には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されている。個別電極57と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形して圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル51からインクが吐出される。なお、アクチュエータ58には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ58の変位が元に戻る際に、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に再充填される。
また、吐出安定性並びに吐出面(ノズル面50A)のクリーニング性を向上させる等の観点から、ヘッド50のノズル面50Aには撥液層59が設けられている。ノズル面50Aに撥液性を付与する方法(撥液処理方法)は、特に限定されず、例えば、フッ素系の撥液材を塗布する方法や、フッ素系高分子粒子(PTFE)等の撥液材を真空中で蒸着し表面に薄層を形成する方法等がある。
印字データに応じて各ノズル51に対応したアクチュエータ58の駆動を制御することにより、ノズル51からインク滴を吐出させることができる。図1で説明したように、印字媒体60を一定の速度で副走査方向に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル51のインク吐出タイミングを制御することによって、印字媒体60上に所望の画像を記
録することができる。
図3では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ58の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
図4は、図1に示したヘッド50における2次元ノズル配列の拡大図である。図2及び図3で説明した構造を有するインク室ユニット53を図4に示すように2次元配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッド(図1における符号50)が実現されている。図4では、図18で説明した従来の構成との比較を容易にするため、図18と同等の回転誤差量(ヘッド傾斜量或いは媒体の斜行量・蛇行量)を有する場合を示してある。
図4に示したヘッド50の2次元ノズル配列について、説明の便宜上、図4の横方向(主走査方向)を行方向、縦方向(副走査方向)を列方向とし、同図の上から下に向かって順に、第1行、第2行、…第10行と行番号(i=1〜10)を定める。また、列方向(略縦方向)に直線上に並ぶノズル列について左から右に向かって列番号(j=1,2,…J)を定め、ノズル51の位置を行番号iと列番号jの組合せによって「51-ij 」と表記する。ただし、i =10の場合については、表記の都合上「51-Xj 」と記載することにした。
本例では、副走査方向のノズル数(行数)nを「10」としているが、本発明の実施に際して、副走査方向のノズル数(行数)nはn=10に限定されない。ただし、後述する理由により、nは4以上の整数であることを前提とする。
各行内における主走査方向のノズル間隔NLmは一定であるとし(各行の主走査方向ノズル間隔は全て同じNLmとし) 、各行のノズル51-ij は主走査方向に沿って互いのノズル位置を行間で異ならせながら千鳥状に配置される。すなわち、ヘッド50のノズル行数(副走査方向のノズル数)をn(図4の場合、n=10)、印字媒体上で主走査方向に沿って並ぶドットを打滴するノズルの実質的な主走査方向ノズル間ピッチをNm とすると、NLm=n×Nm の関係を満たす。また、副走査方向(ノズル配列の列方向)について各行の行間隔(副走査方向のノズル間距離)Ls は一定であるとし、副走査方向のノズル間最大距離をLとするとき、L=n×Ls である。
図4で示した例では、第1行のノズル51-1j の並びを基準として、第1行→第3行→第5行→第7行→第9行→第10行→第8行→第6行→第4行→第2行の順に各行間で主走査方向のノズル位置が図4の右方向にNm ずつシフトして配置されている。
図示のノズル配列において、印字媒体の搬送に同期して、ノズル51-ij からの打滴タイミングを制御し、第1行→第2行→第3行→…第10行目の順に各行のノズル51-ij を順次駆動することによって、印字媒体の幅方向(主走査方向)に沿ってドット64が直線上に並ぶ1ラインのドット列(主走査方向ドットライン)66が印字される。
印字媒体上で主走査方向に沿って互いに隣接しながら並ぶように形成される各ドット64の並び順を図4の左から右に追って、各ドット64に対応するノズル番号を追跡すると、51-X1 →51-81 →51-61 →51-41 →51-21 →51-12 →51-32 →51-52 →51-72 →51-92 →51-X2 →51-82 →51-62 →51-42 →51-22 →51-13 →51-33 →…になる。こうして主走査方向ドットライン66の各ドット64に対応するノズル51-ij をドット64の並び順を追って順次結んで描かれるノズル配列パターンは、「W」字型(三角波形型)の折れ線状となる。すなわち、印字媒体上で主走査方向に隣接して並ぶドット64を打つノズル51-ij のノズル面50A内での実質的な配列形態は、W文字型(三角波形型)の折れ線状ノズル列となっている。
このノズル配列は主走査方向に周期性を有している。第1行目のノズル51-1j を始点として、主走査方向ドットライン66の各ドット64の並び順に対応するノズル51-ij の行番号に注目すると、第1行→第3行→第5行→第7行→第9行→第10行→第8行→第6行→第4行→第2行→第1行…の繰り返しとなる。
印字媒体上に印字される主走査方向ドットライン62を見ると、第1行→第3行→第5行→第7行→第9行→第10行→第8行→第6行→第4行→第2行…の各行のノズルから打滴されたn個のドット64が印字媒体上で互いに隣接しながら直線上に並んだドット群(n個の連続するドットによるライン状のドット群)67を繰り返しの単位として、当該繰り返し単位のドット群67が主走査方向につながったものになっている。
ドット群67に対応するノズル配置上の繰り返し単位(1周期分)を考えると、第1行→第3行→第5行→第7行→第9行→第10行の各ノズルを順に結ぶ線(繰り返し単位の前半のノズル列に相当し、図4において右肩下がり方向の略直線上に並ぶノズル列)が第10行のノズル位置でV字状に折り返され、折り返し後に第10行→第8行→第6行→第4行→第2行→第1行の各ノズルを順に結ぶ線(繰り返し単位の後半のノズル列に相当し、図4において右肩上がり方向の略直線上に並ぶノズル列)とつながっている。かかるV字型の繰り返し単位が主走査方向に複数繰り返されることにより、W字型のノズル列が形成されている。
図4に示したノズル配列によれば、印字媒体上で主走査方向に隣接して並ぶドットを打つノズル対の副走査方向のノズル間距離L_pitch の最小値はLs 、最大値は2Ls となる。ここで、Ls はヘッド内で副走査方向に隣接して並ぶ圧力室同士間の副走査方向のノズルピッチである。
これに対し、図17乃至図19で説明した従来の構成では、印字媒体上で主走査方向に隣接して並ぶように打滴されるドットの並び順を追って、各ドットに対応するノズルを追跡すると、吐出面内で第1行から第10行までのノズルが斜め方向(図18において右肩上がり)の一直線上に並んで配置されており、第10行のノズルから第1行のノズルへと急激にノズル列が折り返される。このような、鋸波形状に並ぶ従来のノズル配列では、印字媒体上で主走査方向に隣接して並ぶドットを打つノズル対の副走査方向ノズル間距離の最小値はLs であるが、最大値は10Ls となり、両者の差異は大きい。このため、従来のヘッドでは、ヘッドの面内回転取り付け位置誤差、或いは媒体の斜行等が発生した場合に、当該最大値のノズル対(折り返し部のノズル対)に対応する印字媒体上の位置でムラが発生していたことは、既に説明したとおりである。
この点、図1乃至図4で説明した実施形態によれば、印字媒体上で主走査方向に隣接して並ぶドットを打つノズル対の副走査方向ノズル間距離のばらつき(最小値と最大値の差)が小さいため、ヘッドの面内回転取り付け位置誤差、或いは媒体の斜行等が発生した場合でも、ドット間ピッチの変化が小さく、ムラの発生が抑制される。
図5は、図4に示した主走査方向ドットライン66の拡大図である。図5に示した主走査方向ドットライン66の拡大図と、図19の従来の主走査方向ドットラインを比較すると明らかなように、本実施形態によれば、図19と比較して、ドット間距離が著しく広がることがなく濃度ムラの発生が抑えられていることが分かる。
本実施形態に係る液体吐出ヘッド50のノズル配列の条件を以下にまとめる。
2次元配列されたノズル51を有する液体吐出ヘッド50において、印字媒体上に打滴されたドットが主走査方向に隣接する関係にあるノズル対について、ノズル面上での副走査方向ノズル間距離をL_pitch とすると、ノズル面内における全ノズルの副走査方向ノズル間最大距離Lとしたとき、下記式(式1)を満たす条件にてノズル51が配置される。
L_pitch =L×k/(n−1) …(式1)
k≦m+1
各パラメータの意味は下記のとおりである。
L_pitch :印字媒体上で隣接する関係となるドットを打つノズルのノズル面内での副走査方向への距離
m:副走査方向のノズル飛ばし数(ただし、1≦m≦n/2を満たす整数)
n:副走査方向へのノズル数(行数)
k:1以上の整数
L:副走査方向のノズル間最大距離
なお、「ノズル飛ばし数」とは、印字媒体上で隣接するドットを打滴するノズル対に対して、その間に挟む「圧力室等のノズル構成要素」の数を表す。図4の場合、例えば、第8のノズル51-81 と第10行のノズル51-X1 は、印字媒体上で隣接するドットを打滴するノズル対の関係にあるが、当該ノズル対の副走査方向の距離間(L_pitch =2Ls )に、1行(m=1)のノズル列(第9行目のノズル列)が挟まれて配置されている。このような配置関係を一般的に記述するためにパラメータ「m」の概念を導入した。本例の場合の「ノズル構成要素」は、図3で説明した液滴吐出素子(インク室ユニット53)であり、ノズル51、圧力室52、アクチュエータ58及びアクチュエータ58の個別電極57を含んだ記録素子単位である。
また、上記の(式1)の条件は、n≧4の場合に適用する。その理由は、n=3では(式1)が、
L_pitch =L×k/2
k≦2
となり、L_pitch が最大値Lをとる場合が存在してしまうため、本発明の特性が活かされないからである。n=2,n=1の場合も同様である。
上述したとおり、本実施形態による液体吐出ヘッド50を用いれば、従来型のマトリクス配列ヘッド300の印字結果に比べて、スジ部の濃度が下がり、視認性を低下させることができる。
また、上述した実施形態では、各ノズル51に対応する圧力室52は、ノズル面50Aと平行な平面上に2次元配置されているものとしたが、本発明の実施に際しては、各ノズルに対応する圧力室の配置構造は特に限定されない。つまり、本発明では、吐出口(ノズル)の配列形態について上記2次元配列となっていることが必要であるが、圧力室については、印字媒体から離れる方向に階層的に配置されていてもよい。
〔打滴制御との組合せ〕
上記した実施形態に係る液体吐出ヘッド50と打滴制御(吐出制御)とを組み合わせることによって、更なるムラの低減効果を得ることができる。例えば、ノズル面50A上において略副走査方向に沿って略直線上に配置されたノズル列を1つのノズルグループと見なし、各ノズルグループ毎に後述のような制御を行うことにより、一層のムラ低減を図る
ことができる。
すなわち、図4で説明したW字型折り返しノズル配列において、ノズル番号{51-X1 ,51-81 ,51-61 ,51-41 ,51-21 }を一つのグループ、ノズル番号{51-12 ,51-32 ,51-52 ,51-72 ,51-92 }を他のグループ、ノズル番号{51-X2 ,51-82 ,51-62 ,51-42 ,51-22 }を更に他のグループ、…という具合に、「W」字型折り返しノズル配列の各線分(副走査方向に対する線分の傾き方向が同じ略直線部分)に対応するノズル列単位でノズル群をグループ化する。
図4において、右肩下がり方向の線分に沿って並ぶノズルの列(行番号で言うと、第1行→第3行→第5行→第7行→第9行→第10行のノズル列)と、右肩上がり方向の線分に沿って並ぶノズルの列(行番号で言うと、第10行→第8行→第6行→第4行→第2行→第1行のノズル列)と、にグループ分けされる。このとき、グループの境界のノズル(第1行のノズル及び第10行のノズル)については、どちらのグループに含めてもよい。
かかるグループ分けを別の表現で記述すると、あるノズルから次の隣接ドット(図4において右隣のドット)を打つノズルを考えたときに、副走査方向の上流側に配置されているか、下流側に配置されているかでグループ分けをしていることに相当している。
図4のW字型折り返しノズル配列において、右肩下がり方向の略直線上に並んで配置されるノズル列では、当該ノズル列内の注目ノズルで打滴したドットに対して印字媒体上で主走査方向の右隣に接するドットを打つノズルが注目ノズルよりも副走査方向の下流側に配置されている。これに対し、図4のW字型折り返しノズル配列において、右肩上がり方向の略直線上に並んで配置されるノズル列では、当該ノズル列内の注目ノズルで打滴したドットに対して印字媒体上で主走査方向の右隣に接するドットを打つノズルが注目ノズルよりも副走査方向の上流側に配置されている。
このような観点で、主走査方向ドットラインの並び順で次のドットを打つノズルがノズル面上で副走査方向の上流側に配置されているノズルグループと、下流側に配置されているノズルグループとを分ける。
W字型折り返しノズル配列における繰り返しノズル列単位(V字型配列)の前半のノズル列(図4において右肩下がり方向の線上に並んで配置されるノズル列)のグループと、後半のノズル列(図4において右肩上がり方向の線上に並んで配置されるノズル列)のグループとでは、ヘッドの面内回転方向の取り付け角度誤差、或いは、ヘッドに対する印字媒体の斜行,蛇行による傾き、若しくはこれらの組合せによる相対的な傾き誤差(以下、これらを総称して、「回転誤差」という。)による影響が異なる(逆になる)。
例えば、図4の紙面上でヘッドが反時計回り方向に回転した角度誤差を持って設置された場合、前者のグループは主走査方向の隣接ドット間隔が広がるのに対し、後者のグループは主走査方向の隣接ドット間隔が狭くなる。このため、回転誤差による影響が同じノズル群の列を単位にノズルブロックとしてグループ化し、グループ毎に回転誤差による影響を考慮した打滴制御(濃度補正)を行う態様が好ましい。
打滴制御の例としては、(1)ドットサイズを大きく又は小さくする態様、(2)打滴数を増減する(追加ドット、間引きドットを設ける)態様、などがある。グループ内の全てのノズルについて、上記の制御を行ってもよいし、グループ内から抽出(又は選択)した一部のノズルについて制御を行ってもよい。更に、グループ全体の傾向(補正後の結果)が、目標の結果(記録濃度を高める、或いは記録濃度を下げるなどの補正傾向)となるようにできれば、グループ内の任意のノズル(一部のノズル)が逆方向の補正となってもかまわない。すなわち、グループ内のノズルを必ず同じ方向に補正することにすると、極端な補正(過補正)により、補正による効果がかえって目立ってしまうという弊害(悪影響)も起こり得るため、かかる弊害を防止する観点から、グループ内の一部のノズルについて逆方向の補正を行い、グループ全体として適度な補正を実現することも考えられる。
図6は、グループ毎にドットサイズを変更する制御を行った場合の打滴結果の例である。図示のように、回転誤差に起因して主走査方向の隣接ドット間隔が広がる傾向を示すノズルグループに対してはドットサイズを基準値よりも大きくする補正を行い、逆に、回転誤差に起因して主走査方向の隣接ドット間隔が狭まる傾向を示すノズルグループに対してはドットサイズを基準値よりも小さくする補正を行うことにより、グループ間の濃度バラツキを略均一に調整することができる。
図7は、グループ毎に打滴数を増減させる制御を行った場合の打滴結果の例である。図の破線で示した区切りが各グループの境界(区切り)を表している。また、図中の破線円で示したドット位置は打滴が休止される間引きドット(非打滴ドット)であり、図中黒塗りの丸(●)は追加的に打滴される追加ドット(追加打滴ドット)である。
図示のように、回転誤差に起因して主走査方向に並ぶドット列の隣接ドット間距離が狭まる区間に対応するグループについて、適宜、ドットの間引きを行い記録濃度を下げる。その一方で、隣接ドット間距離が広がる区間に対応するグループについては、追加ドットを打滴して濃度を高める。こうすることで、グループ間の濃度バラツキを略均一に調整することができる。
図6及び図7で説明した打滴制御を実施する場合には、ヘッド50の面内回転方向の取り付け角度、印字媒体60の斜行量(蛇行による斜行量も含む)を検出して、両者の相対的な関係に基づいて打滴制御の補正量を制御することが好ましい。すなわち、図6及び図7で例示した打滴制御は、回転誤差を特定し、その特定した回転誤差に応じて補正量(ドットサイズの変更や打滴数の追加による濃度の補正量)が決定される。
図8は、回転誤差を把握するための手段の例を示した図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
ヘッド50の面内回転方向Aの傾き(取り付け角度誤差)については、ヘッド50をインクジェット記録装置に取り付けた後に図示せぬ測定装置を用いて、印字媒体60の搬送方向に対するヘッド50の傾き角度を計測することによって把握する。この計測に用いるセンサには、レーザダイオード(LD)、発光ダイオード(LED)等を光源とし、フォトトランジスタ、又はCCDなどのフォトディテクタを有する位置センサを用いることができる。
或いはまた、ヘッド50の傾きは、取り付け後に基準プリント(テストプリント)を行い、プリントされた印字媒体(印字結果)を測定することで計測してもよい。
上述のような計測によって得られたヘッド50の取り付け角度誤差の情報をEEPROMなどの不揮発性の記憶手段に格納しておき、必要に応じてその情報を読み出すことにより、ヘッド50の取り付け角度の情報を得る。
また、印字媒体60の斜行量を把握するために、斜行量を計測するための少なくとも1つのセンサ71〜74を備える。図8では、印字媒体60の表面(記録面又は裏面)にて媒体の移動方向を計測するセンサ71〜73と、印字媒体60の端面にて媒体の移動方向を計測するセンサ74を例示したが、本発明の実施に際しては、少なくとも1つのセンサ
を備えていればよい。また、センサの設置位置についても、図示の例に限定されず、ヘッド50の副走査方向直前(上流側)、ヘッド50の副走査方向直後(下流側)、或いは、印字媒体60を挟んでヘッド50の直下(ノズル面50Aと対向する位置)など、適宜の場所に設置することができる。
斜行量を計測するセンサ71〜74としては、レーザダイオード(LD)、発光ダイオード(LED)等を光源とし、フォトトランジスタ、又はCCDなどのフォトディテクタを有する位置センサを用いることができる。例えば、印字媒体60の表面を計測するセンサ71〜73は、LD等の光源(投光部)から印字媒体60面に光を照射し、CCDなどで表面粗さの移動を観測することにより、印字媒体60の斜行量を測定する。
図9は、ヘッド50の駆動を制御する制御系の構成を示したブロック図である。画像入力部76は、印刷用の画像データを取り込む手段であり、通信インターフェースや外部記憶媒体(メモリカードや光ディスクなど)のメディアインターフェースがこれに該当する。画像入力部76から入力された画像データは、画像処理部78に送られる。画像処理部78は、色変換部78A,ハーフトーニング処理部78B,打滴データ生成部78Cを含んで構成される。
色変換部78Aは、入力された画像データ内の各画素のRGBデータをこれに対応するKCMYデータに変換する処理を行う。色変換部78Aで生成されたKCMYデータは、階調補正等の処理が行われた後、デジタルハーフトーニング部78Bへ送られる。
デジタルハーフトーニング部78Bは、多値のKCMYデータをより低階調の画像データ(2値或いはドットサイズの変更を考慮した多値のドットデータ)に変換する処理部である。インクジェット記録装置では、インク(色材) による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。デジタルハーフトーニング部78Bは、ディザ法、誤差拡散法、ブルーノイズマスク法などに代表されるデジタルハーフトーニングの手法を用いて多値データを量子化して各色のドットデータを生成する。
デジタルハーフトーニング部78Bで得られた結果は、打滴データ生成部78Cに送られ、ここでヘッド50のノズル配列を考慮した各ノズルの打滴データ(インク吐出の駆動制御に用いられる吐出データ)に変換される。こうして、補正前の打滴データが生成される。
図9に示した媒体角度検出部80は、図8で説明したセンサ71〜74に相当するものであり、印字媒体60の斜行量を検出する手段である。図9の媒体角度検出部80で得られた検出信号は媒体角度算出部81に送られ、当該検出信号に基づき媒体角度算出部81において印字媒体60の斜行量(媒体角度)が求められる。こうして求めた媒体角度の情報はムラ補正コントロール部82に与えられる。
同様に、ヘッド角度検出部84から得られた信号に基づきヘッド角度算出部85においてヘッド50の取り付け角度誤差が求められ、その情報がムラ補正コントロール部82に与えられる。なお、ヘッド角度検出部84は、インクジェット記録装置に備えられたセンサであってもよいし、図8で説明したように、製造工程などにおいてヘッド取り付け後に使用する測定装置であってもよい。或いはまた、図9のヘッド角度検出部84及びヘッド角度算出部85に代えて、予めヘッドの取り付け角度誤差の情報を格納しておいた記憶部を用いることも可能である。
ムラ補正コントロール部82は、取得した媒体角度の情報と、ヘッド取り付け角度誤差の情報から、角度補正データ記憶部87内のテーブルを参照して各ノズルの補正量を決定する。角度補正データ記憶部87には、媒体角度及びヘッド取り付け角度と補正量を関連付けるテーブルデータが保持されている。それぞれの角度に対して補正量をいくつに取るかのパラメータを持っている。例えば、ノズル間の距離を含むノズル配置データをもってもよいし、打滴する液体の濃度、粘度との相関係数を持っていてもよい。打滴の重なり度などによってムラの見え方が影響するため、かかるパラメータを考慮する態様が好ましい。
こうして、ムラ補正コントロール部82において回転誤差に応じた補正量が決定され、その補正量に従って打滴データが補正される。ヘッド吐出制御部88は、補正後の打滴データに基づいてヘッドドライバ89を制御し、ヘッド50からのインク吐出動作を制御する。上記の構成により、図6乃至図7で説明した打滴制御が実現される。なお、図9中、一点鎖線で囲んだ範囲は、CPU及びメモリ等の周辺回路を含むプロセッサとソフトウエアの組合せによって実現することができる。
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドの構造について説明する。図10は、本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列を模式的に示した拡大図である。図10の記載において、図4と同様の記載方法を採用した。ただし、図10では、副走査方向のノズル数(行数)nを「12」とした。このため、ノズル位置の表記に際して、第11行目(i =11)のノズルを「51-Yj 」と記載し、第12行目のノズルを「51-Zj 」と記載することにした。
図10において、各行内における主走査方向のノズル間隔NLmは一定であるとし(各行の主走査方向ノズル間隔は全て同じNLmとし) 、各行のノズル51-ij は主走査方向に沿って互いのノズル位置を行間で異ならせながら千鳥状に配置される。印字媒体上で主走査方向に沿って並ぶドットを打滴するノズルの実質的な主走査方向ノズル間ピッチをNm とすると、NLm=n×Nm の関係を満たす。また、副走査方向(ノズル配列の列方向)について各行の行間隔(副走査方向のノズル間距離)Ls は一定であるとし、副走査方向のノズル間最大距離をLとするとき、L=n×Ls である。この点は、図4で説明した例と同様である。
図10に示した例では、第1行のノズル51-1j の並びを基準として、第1行→第5行→第9行→第11行→第7行→第3行→第2行→第6行→第10行→第12行→第8行→第4行の順に各行間で主走査方向のノズル位置が図10の右方向にNm ずつシフトして配置されている。
図示のノズル配列において、印字媒体の搬送に同期して、ノズル51-ij からの打滴タイミングを制御し、第1行→第2行→第3行→…第12行目の順に各行のノズル51-ij を順次駆動することによって、印字媒体の幅方向(主走査方向)に沿ってドットが直線上に並ぶ1ラインのドット列(主走査方向ドットライン)が印字される。
当該主走査方向ドットラインの並び順を追って、各ドットに対応するノズル番号を追跡すると、図の「51-12 」のノズルを始点とすれば、51-12 →51-52 →51-92 →51-Y2 →51-72 →51-32 →51-22 →51-62 →51-X2 →51-Z2 →51-82 →51-42 →51-13 →…になる。
かかるW字型の折れ線状ノズル列は、印字媒体上で主走査方向に隣接して並ぶドットを打つノズル対の副走査方向のノズル間距離L_pitch の最小値はLs 、最大値は4Ls と
なる。
図17乃至図19で説明した従来の構成では、印字媒体上で主走査方向に隣接して並ぶドットを打つノズル対の副走査方向ノズル間距離の最小値はLs、最大値は10Ls であり、これを12行に適用した場合には、最大値が12Lsとなり、両者の差異は大きい。
この点、図10に示した実施形態によれば、印字媒体上で主走査方向に隣接して並ぶドットを打つノズル対の副走査方向ノズル間距離のばらつき(最小値と最大値の差)が小さいため、ヘッドの面内回転取り付け位置誤差、或いは媒体の斜行等が発生した場合でも、ドット間ピッチの変化が小さく、ムラの発生が抑制される。
なお、図10の構成と、図4の例と比較すると、図10の構成は、印字媒体上で主走査方向に隣接して並ぶドットを打つノズル対の副走査方向ノズル間距離のばらつき(最小値と最大値の差)は大きくなるが、繰り返し単位内での折り返し回数が多くなっている(折り返し周波数が2倍になっている)。ノズル面上におけるノズル列の折り返し周波数を高周波化することにより、印字媒体上のムラの視認性が低下するため、主走査方向の隣接ドットを打滴するノズル対の副走査方向ノズル間距離の変動量の抑制と相まって、ムラが目立ち難くなる。
図11は、スジ状のムラの繰り返し周波数(空間周波数)と、ムラとして視認される濃度差ΔDとの関係を示す視認曲線のグラフである。同図の横軸は、ムラの繰り返し周波数(空間周波数) [単位:本/mm] を表し(ただし、対数目盛)、縦軸は視認される濃度差を表す。
視認曲線gよりも下の領域はムラとして視認されない領域であり、視認曲線gよりも上の領域はムラとして視認される領域である。
図示のように、ムラの空間周波数を高周波とすると(好ましくは、3本/mm以上、より好ましくは4本/mm以上とすると)、ムラは視認されにくい。
印字媒体60上でのスジの発生位置は、ノズル面50A上におけるノズル列の折り返し点(特異点)の位置に対応しているため、ノズル列の折り返し点の周期を、視認されにくい3〜数本/mm以上の高周波とすることで、ムラの視認性を低減できる。
図17で説明した従来のマトリクス配列において、仮に、主走査方向の記録密度2400dpi を実現すべく、ノズル面上で副走査方向に48行のノズル列を配置した場合、ノズル列の折り返し点の周期は、2400dpi ×48ノズル=0.5mm ピッチとなり、スジムラの周波数は2本/mmとなって、視認されやすい。
これに対し、図4で説明したW字型折れ線状ノズル配列では、同条件(2400dpi ,48行)でスジムラの周波数は4本/mm、図10で説明したW字2倍周波数型の折れ線状ノズル配列では、同条件(2400dpi ,48行)スジムラの周波数は8本/mmとなり、図11で説明した視認曲線の観点からも、従来と比較してムラの視認性は低下する。
なお、図10のノズル配列についても、グループ毎に打滴制御(濃度補正)を行うことで、一層のムラ低減が可能である点は、図1乃至図9で説明した例と同様である。
図1乃至図4で説明した第1実施形態の構成、図10で説明した第2実施形態の構成、及び図17乃至図19で説明した従来型の構成の3種類のノズル配列に関する特徴を比較するために、同一条件(2400dpi ,副走査方向に48行,回転誤差β)で印字媒体上の主
走査方向隣接ドット間のピッチ誤差を示したグラフを図12〜図14に示す。なお、回転誤差βは、図1の紙面上でヘッド50が正規の取り付け位置から時計回り方向に角度βだけ傾いて取り付けられたものとしている。
図12は第1実施形態の構成によるもの、図13は第2実施形態の構成によるもの、図14は従来型の構成によるものである。各図において、横軸は主走査方向ノズル番号を示し、縦軸は主走査方向の隣接ドット間のピッチ誤差を示している。それぞれのノズル配置において、行内の主走査方向のノズル間隔NLmは480 μm、印字媒体上で主走査方向に沿って並ぶドットを打滴するノズルの実質的な主走査方向ノズル間ピッチNm は10μm、副走査方向のノズル間距離Ls は500 μmとなっている。
各図において、縦軸のプラス領域は、隣接ドット間距離が広がることを意味しており、その値が大きいほど、印字結果としては濃度が低くなる。逆に縦軸のマイナス領域は、隣接ドット間距離が狭くなることを意味しており、その絶対値が大きいほど、印字結果としては濃度が高くなる。
図12に示したとおり、第1実施形態の構成によれば、ノズル列の折り返し点の位置でドット誤差の符号が反転しており、ドット誤差の絶対値は非常に小さい値に収まっている。すなわち、折り返し点の位置で発生するスジの濃度差を非常に小さくすることができ、濃度ムラの発生が抑制されていることがわかる。
図13に示した第2実施形態の構成によれば、ノズル列の折り返し点の位置でドット誤差の符号が反転している点は図12と同様であるが、その周期は短くなっている(周波数は高くなっている)。これは、ノズル列の折り返し回数が増加していることによるものである。また、ドット誤差の絶対値は図12の場合と比較すると大きくなっているが、既に説明したとおり、視認曲線との関係で濃度ムラは視認されにくいものになっている。
図14に示した従来の構成によれば、ノズル列の折り返し点の位置でドット誤差が急激に変化し、その絶対値も非常に大きいものとなっている。このため、周辺部との濃度差が大きく、ムラが視認され易いものとなっている。
〔インクジェット記録装置の構成〕
次に、上記の第1実施形態及び第2実施形態で説明した液体吐出ヘッドを用いたインクジェット記録装置の構成について説明する。
図15は、本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示すインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すように、このインクジェット記録装置110は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のインクジェット記録ヘッド(以下、ヘッドという。)112K,112C,112M,112Yを有する印字部112と、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部114と、記録媒体たる記録紙116を供給する給紙部118と、記録紙116のカールを除去するデカール処理部120と、前記印字部112のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙116の平面性を保持しながら記録紙116を搬送するベルト搬送部122と、印字部112による印字結果を読み取る印字検出部124と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部126とを備えている。
印字部112の各ヘッド112K,112C,112M,112Yについて、上記の第1実施形態或いは第2実施形態で説明した液体吐出ヘッド50が用いられる。
インク貯蔵/装填部114は、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所要の管路を介してヘッド112K,112C,112M,112Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部114は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
図15では、給紙部118の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録媒体(メディア)を利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部118から送り出される記録紙116はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部120においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム130で記録紙116に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図15のように、裁断用のカッター(第1のカッター)128が設けられており、該カッター128によってロール紙は所望のサイズにカットされる。なお、カット紙を使用する場合には、カッター128は不要である。
デカール処理後、カットされた記録紙116は、ベルト搬送部122へと送られる。ベルト搬送部122は、ローラ131、132間に無端状のベルト133が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト133は、記録紙116の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図15に示したとおり、ローラ131、132間に掛け渡されたベルト133の内側において印字部112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ134が設けられており、この吸着チャンバ134をファン135で吸引して負圧にすることによって記録紙116がベルト133上に吸着保持される。なお、吸引吸着方式に代えて、静電吸着方式を採用してもよい。
ベルト133が巻かれているローラ131、132の少なくとも一方にモータ(図16中符号188)の動力が伝達されることにより、ベルト133は図15上の時計回り方向に駆動され、ベルト133上に保持された記録紙116は図15の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト133上にもインクが付着するので、ベルト133の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部136が設けられている。ベルト清掃部136の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組合せなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、ベルト搬送部122に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
ベルト搬送部122により形成される用紙搬送路上において印字部112の上流側には、加熱ファン140が設けられている。加熱ファン140は、印字前の記録紙116に加熱空気を吹き付け、記録紙116を加熱する。印字直前に記録紙116を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部112の各ヘッド112K,112C,112M,112Yは、当該インクジェット記録装置110が対象とする記録紙116の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図1参照)。
図15において、ヘッド112K,112C,112M,112Yは、記録紙116の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド112K,112C,112M,112Yが記録紙116の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
ベルト搬送部122により記録紙116を搬送しつつ各ヘッド112K,112C,112M,112Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙116上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド112K,112C,112M,112Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙116と印字部112を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙116の全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
図15に示した印字検出部124は、印字部112の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ又はエリアセンサ)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりや着弾位置ずれなどの吐出不良をチェックする手段として機能する。また、この印字検出部124を利用してヘッドの取り付け回転誤差を計測することも可能である。
各色のヘッド112K,112C,112M,112Yにより印字されたテストパターン又は実技画像が印字検出部124により読み取られ、各ヘッドの吐出判定が行われる。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。
印字検出部124の後段には後乾燥部142が設けられている。後乾燥部142は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部142の後段には、加熱・加圧部144が設けられている。加熱・加圧部144は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ145で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして生成されたプリント物は排紙部126から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置110では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部126A、126Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)148によってテスト印字の部分を切り離す。また、図15には示さないが、本画像の排出部126Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
〔制御系の説明〕
図16は、インクジェット記録装置110のシステム構成を示すブロック図である。同図に示したように、インクジェット記録装置110は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、画像メモリ174、ROM175、モータドライバ176、ヒータドライバ178、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ89等を備えている。なお、図16では、図示の簡略化のため、符号150によって各色のヘッドを代表的に示している。
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース170にはUSB、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。なお、この通信インターフェース部170は、図9で説明した画像入力部76に相当している。
図16に示したホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置110に取り込まれ、一旦画像メモリ174に記憶される。画像メモリ174は、通信インターフェース170を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システムコントローラ172を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ174は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置110の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ172は、通信インターフェース170、画像メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178等の各部を制御し、ホストコンピュータ186との間の通信制御、画像メモリ174及びROM175の読み書き制御等を行うとともに、
搬送系のモータ188やヒータ189を制御する制御信号を生成する。
ROM175には、システムコントローラ172のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。ROM175は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。画像メモリ174は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示に従って搬送系のモータ188を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ178は、システムコントローラ172からの指示に従って後乾燥部142等のヒータ189を駆動するドライバである。
プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、画像メモリ174内の画像データ(元画像のデータ) から印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成したドットデータ(打滴データ)をヘッドドライバ89に供給する制御部である。
プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。なお、図16において画像バッファメモリ182はプリント制御部180に付随する態様で示されているが、画像メモリ174と兼用することも可能である。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース170を介して外部から入力され、画像メモリ174に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データが画像メモリ174に記憶される。
画像メモリ174に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ172を介してプリント制御部180に送られ、該プリント制御部180において色変換及びハーフトーン化処理を経てインク色毎のドットデータに変換される。
すなわち、プリント制御部180は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部180で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ182に蓄えられる。
ヘッドドライバ89は、図9でも説明したとおり、図16のプリント制御部180から与えられる打滴データ(すなわち、画像バッファメモリ182に記憶されたドットデータ)に基づき、ヘッド150の各ノズル51に対応するアクチュエータ58を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ89にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
ヘッドドライバ89から出力された駆動信号がヘッド150に加えられることによって、該当するノズル51からインクが吐出される。記録紙116の搬送速度に同期してヘッド150からのインク吐出を制御することにより、記録紙116上に画像が形成される。
上記のように、プリント制御部180における所要の信号処理を経て生成されたドットデータに基づき、ヘッドドライバ89を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現さ
れる。
また、本例のインクジェット記録装置110は、媒体角度検出部80及びヘッド角度検出部84を備えている。媒体角度検出部80及びヘッド角度検出部84の機能については、図9で説明したとおりである。これらの検出部ら得られる情報はプリント制御部180に送られ、各ノズルの打滴制御(吐出状態の補正)に用いられる。
すなわち、図16に示したシステムコントローラ172、又はプリント制御部180若しくはこれらの組合せによる構成が、図9の画像処理部78、媒体角度算出部81,ムラ補正コントロール部82、ヘッド角度算出部85、角度補正データ記憶部87、ヘッド吐出制御部88の機能を果たしている。
印字検出部124は、図15で説明したように、イメージセンサを含むブロックであり、記録媒体116に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつき、光学濃度など)を検出し、その検出結果をプリント制御部180に提供する。なお、この印字検出部124に代えて、又はこれと組み合わせて他の吐出検出手段(吐出異常検出手段に相当)を設けてもよい。
他の吐出検出手段としては、例えば、ヘッド150の各圧力室内又はその近傍に圧力センサを設け、インク吐出時或いは圧力測定用のアクチュエータ駆動時などに、この圧力センサから得られる検出信号から吐出異常を検出する態様(内部検出方法)、或いは、レーザ発光素子などの光源と受光素子から成る光学検出系を用い、ノズルから吐出された液滴にレーザ光等の光を照射し、その透過光量(受光量)によって飛翔液滴を検出する態様(外部検出方法)などがあり得る。
プリント制御部180は、必要に応じて印字検出部124或いは図示しない他の吐出検出手段から得られる情報に基づいて、ヘッド150に対する各種補正を行うとともに、必要に応じて予備吐出や吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
上記構成のインクジェット記録装置110によれば、ムラの発生が抑制され、良好な画像形成が可能である。
50…液体吐出ヘッド、50A…ノズル面、51…ノズル、52…圧力室、53…インク室ユニット、60…印字媒体、71〜74…センサ、80…媒体角度検出部、84…ヘッド角度検出部、82…ムラ補正コントロール部、87…角度補正データ記憶部、88…ヘッド吐出制御部、110…インクジェット記録装置、112K,112C,112M,112Y…ヘッド、116…記録紙、118…メディア供給部、112…印字部、1222…ベルト搬送部、124…印字検出部