JP4761284B2 - 排ガス処理装置とその運用方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、排ガス処理装置(排煙処理装置とも称する)とその運用方法に係り、特に煙突から排出される排ガス中のSO3ミスト濃度を低減するために湿式排ガス処理装置から排出される排ガスを再加熱するための熱回収器をバグフィルターや電気集塵器などの集塵器の上流側に配置して集塵器の出口排ガス温度を低く抑えた排ガス処理装置とその運用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
石炭を燃焼すると石炭中の硫黄(S)が酸素と反応して亜硫酸ガス(SO)を発生し、その一部は燃焼装置排ガスダクトの上流部に設けられる脱硝装置で脱硝触媒などにより酸化されてSO3となる。SOは脱硝装置後流側の排ガスダクトに配置される脱硫装置で除去可能であるが、SO3は排ガス温度が下がると排ガス中の水分と反応して硫酸ミスト(HSO)となる。排ガス温度が硫酸の露点以下になると、液化した硫酸ミスト(HSO)により機器材料が腐食する原因となる。
【0003】
このため、排ガスの温度を集塵器出口まで、硫酸露点+αの温度(通常10〜20℃)以上に維持する必要がある。硫酸露点を考慮して、空気予熱器、乾式電気集塵機及びGGH(ガスガスヒータ)に耐硫酸腐食性の優れたチタン合金、タンタル合金、インコネル625やハステロイCと称されるNi基の高Cr高Mo合金の使用が考えられるが、これらの材料は、汎用性ステンレス鋼に比べ5〜20倍のコストになり、経済上の理由から使用し難い。
【0004】
一方、排ガスの温度を集塵器出口まで、硫酸露点+α(通常10〜20℃)以上に維持することで、各種機器の腐食は防止可能であるが、排ガス温度は集塵器の後流側の排ガスダクトに設置された湿式脱硫装置で50〜60℃程度まで低下するため、湿式脱硫装置内で露点以下になり硫酸ミストとなる。硫酸ミストは粒径が小さいために湿式脱硫装置ではあまり除去できない。その除去率は硫酸ミストの濃度や粒径、さらには湿式脱硫装置の構造や吸収液と排ガスの比率(L/G)によっても異なるが、10〜50%程度である。
【0005】
このため、集塵器で除去されなかった煤塵とともに硫酸ミストが煙突から排出され、紫煙の原因となる。さらに、当然のことながら、煙突から排出された硫酸ミストは酸性雨の原因となるなど環境への悪影響も大きい。硫酸ミストを除去する方法としては、湿式脱硫装置の後流側の排ガスダクトに湿式集塵器を設置することも可能であるが、この場合には装置コストが高くなる。
【0006】
このように、前記従来技術では、経済的に硫酸ミストを除去し、紫煙を防止することが困難であり、また、排ガス処理装置の機器材料の腐食が避けられなかった。
【0007】
なお、前記熱回収器の出口排ガス温度を制御することは、特開平09−122438号公報や特開平11−347332号公報に記載されている。
【0008】
【特許文献1】
特開平09−122438号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平11−347332号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来技術では、高価な材料を使用しないと機器の腐食が防止できず、さらに高価な装置を使用しないと硫酸ミストを除去することができなかった。
【0011】
本発明の課題は、排ガス中の硫酸ミストを効果的に除去し、排ガス処理装置の機器材料の腐食を防止する排ガス処理装置と方法を提案することにある。
【0012】
本発明の上記課題は、次の手段により解決することができる。
請求項1記載の発明は、石炭を燃焼させる燃焼装置から排出する排ガスにより燃焼装置の燃焼用空気を予熱する空気予熱器と、該空気予熱器出口の排ガスの熱を熱媒に回収する伝熱管群からなる熱回収器と、該熱回収器出口の排ガス中のばい塵を回収する集塵器と、該集塵器出口の排ガス中の硫黄酸化物を除去する湿式脱硫装置と、該湿式脱硫装置出口の排ガスを前記熱回収器から供給される熱媒で加熱する伝熱管群からなる再加熱器とを燃焼装置の排ガスダクトの上流側から下流側に順次配置し、熱回収器と再加熱器にそれぞれ設けられた伝熱管を連絡し、その内部に熱媒を循環させる熱媒循環ラインを設けた排ガス処理装置において、前記熱回収器出口から前記集塵器出口の排ガス温度を、排ガス中の硫酸(SO 3 )ミストを石炭灰粒子と反応させるために排ガス中の硫酸(SO3)ミストの露点よりも低い温度にする前記集塵器の出口排ガス温度制御手段を設けた排ガス処理装置である。
【0013】
請求項2記載の発明は、前記熱回収器出口から前記集塵器出口の排ガス温度を排ガス中の硫酸(SO3)ミストの露点よりも30℃以上低い温度にする前記集塵器の出口排ガス温度制御手段を設けた請求項1記載の排ガス処理装置である。
【0014】
請求項3記載の発明は、前記集塵器の出口排ガス温度制御手段は、前記再加熱器と前記熱回収器との間の熱媒循環ラインの熱媒循環流量調整手段又は前記熱媒を冷却する手段、前記熱媒を加熱する手段のいずれか1つ以上である請求項1又は2記載の排ガス処理装置である
【0015】
請求項4記載の発明は、前記再加熱器と前記熱回収器との間の熱媒循環ラインから分岐して前記熱回収器の伝熱管内を通る熱媒循環ラインをバイパスして前記再加熱器の熱媒出口から該再加熱器の熱媒入口に戻り該再加熱器の伝熱管内にのみ熱媒を循環させるイパスラインを設け、前記集塵器の出口排ガス温度制御手段は、前記バイパスラインの熱媒流量を調整する手段である請求項1ないし3のいずれかに記載の排ガス処理装置である。
【0016】
請求項5記載の発明は、石炭を燃焼させる燃焼装置から排出する排ガスにより燃焼装置の燃焼用空気を予熱する空気予熱器と、該空気予熱器出口の排ガスの熱を熱媒に回収する伝熱管群からなる熱回収器と、該熱回収器出口の排ガス中のばい塵を回収する集塵器と、該集塵器出口の排ガス中の硫黄酸化物を除去する湿式脱硫装置と、該湿式脱硫装置出口の排ガスを前記熱回収器から供給される熱媒で加熱する伝熱管群からなる再加熱器とを燃焼装置の排ガスダクトの上流側から下流側に順次配置し、熱回収器と再加熱器にそれぞれ設けられた伝熱管を連絡し、その内部に熱媒を循環させる熱媒循環ラインを設けた排ガス処理装置において、前記集塵器出口に排ガス中の硫酸(SO3)ミスト濃度を測定する硫酸(SO3)ミスト濃度計を設け、該硫酸(SO3)ミスト濃度計の測定値に基づき、前記熱回収器出口から前記集塵器出口の排ガス温度を、排ガス中の硫酸(SO 3 )ミストを石炭灰粒子と反応させるために排ガス中の硫酸(SO3)ミストの露点よりも低い温度にする前記集塵器の出口排ガス温度制御手段を設けた排ガス処理装置である。
【0017】
請求項6記載の発明は、前記硫酸(SO3)ミスト濃度計の測定値に基づき、前記熱回収器出口から前記集塵器出口の排ガス温度を排ガス中の硫酸(SO3)ミストの露点よりも30℃以上低い温度にする前記集塵器の出口排ガス温度制御手段を設けた請求項5記載の排ガス処理装置である
【0018】
請求項7記載の発明は、前記集塵器の出口排ガス温度制御手段は、前記再加熱器と前記熱回収器との間の熱媒循環ラインの熱媒循環流量調整手段又は前記熱媒を冷却する手段、前記熱媒を加熱する手段のいずれか1つ以上である請求項5又は6記載の排ガス処理装置である
【0019】
請求項8記載の発明は、前記再加熱器と前記熱回収器との間の熱媒循環ラインから分岐して前記熱回収器の伝熱管内を通る熱媒循環ラインをバイパスして前記再加熱器の熱媒出口から該再加熱器の熱媒入口に戻り該再加熱器の伝熱管内にのみ熱媒を循環させるイパスラインを設け、前記集塵器の出口排ガス温度制御手段、前記バイパスラインの熱媒流量を調整する手段である請求項5ないし7のいずれかに記載の排ガス処理装置である。
【0020】
請求項9記載の発明は、石炭を燃焼させる燃焼装置から排出する排ガスにより燃焼装置の燃焼用空気を予熱する空気予熱器と、該空気予熱器出口の排ガスの熱を熱媒に回収する伝熱管群からなる熱回収器と、該熱回収器出口の排ガス中のばい塵を回収する集塵器と、該集塵器出口の排ガス中の硫黄酸化物を除去する湿式脱硫装置と、該湿式脱硫装置出口の排ガスを前記熱回収器から供給される熱媒で加熱する伝熱管群からなる再加熱器とを燃焼装置の排ガスダクトの上流側から下流側に順次配置し、熱回収器と再加熱器にそれぞれ設けられた伝熱管を連絡し、その内部に熱媒を循環させる熱媒循環ラインを設けた排ガス処理装置の運用方法において、前記熱回収器出口から前記集塵器出口の排ガス温度が、排ガス中の硫酸(SO 3 )ミストを石炭灰粒子と反応させるために排ガス中の硫酸(SO3)ミストの露点よりも低い温度になるように前記集塵器の出口排ガス温度を制御する排ガス処理装置の運用方法である。
【0021】
請求項10記載の発明は、前記熱回収器出口から前記集塵器出口の排ガス温度が排ガス中の硫酸(SO3)ミストの露点よりも30℃以上低い温度なるように前記集塵器の出口排ガス温度を制御する請求項9記載の排ガス処理装置の運用方法である。
【0022】
請求項11記載の発明は、前記集塵器の出口排ガス温度制御は、前記再加熱器と前記熱回収器との間の熱媒循環ラインの熱媒循環流量の調整、前記熱媒の冷却又は前記熱媒の加熱により行う請求項9又は10記載の排ガス処理装置の運用方法である。
【0023】
請求項12記載の発明は、前記再加熱器と前記熱回収器との間の熱媒循環ラインから分岐して前記熱回収器の伝熱管内を通る熱媒循環ラインをバイパスして前記再加熱器の熱媒出口から該再加熱器の熱媒入口に戻り該再加熱器の伝熱管内にのみ熱媒を循環させるバイパスラインを設け、前記集塵器の出口排ガス温度制御は、前記バイパスラインの熱媒流量を調整することで行う請求項9ないし11のいずれかに記載の排ガス処理装置の運用方法である。
請求項13記載の発明は、石炭を燃焼させる燃焼装置から排出する排ガスにより燃焼装置の燃焼用空気を予熱する空気予熱器と、該空気予熱器出口の排ガスの熱を熱媒に回収する伝熱管群からなる熱回収器と、該熱回収器出口の排ガス中のばい塵を回収する集塵器と、該集塵器出口の排ガス中の硫黄酸化物を除去する湿式脱硫装置と、該湿式脱硫装置出口の排ガスを前記熱回収器から供給される熱媒で加熱する伝熱管群からなる再加熱器とを燃焼装置の排ガスダクトの上流側から下流側に順次配置し、熱回収器と再加熱器にそれぞれ設けられた伝熱管を連絡し、その内部に熱媒を循環させる熱媒循環ラインを設けた排ガス処理装置の運用方法において、前記集塵器から排出される排ガス中の硫酸(SO3)ミスト濃度を測定し、該硫酸(SO3)ミスト濃度の測定値に基づき、前記熱回収器出口から集塵器出口の排ガス温度が、排ガス中の硫酸(SO 3 )ミストを石炭灰粒子と反応させるために排ガス中の硫酸(SO3)ミストの露点よりも低い温度になるように前記集塵器の出口排ガス温度を制御する排ガス処理装置の運用方法である。
【0024】
請求項14記載の発明は、前記集塵器から排出される排ガス中の硫酸(SO 3 )ミスト濃度を測定し、該硫酸(SO 3 )ミスト濃度の測定値に基づき、前記熱回収器出口から前記集塵器出口の排ガス温度が排ガス中の硫酸(SO 3 )ミストの露点よりも30℃以上低い温度になるように前記集塵器の出口排ガス温度を制御する請求項13記載の排ガス処理装置の運用方法である。
【0025】
請求項15記載の発明は、前記集塵器の出口排ガス温度制御は、前記再加熱器と前記熱回収器との間の熱媒循環ラインの熱媒循環流量の調整、前記熱媒の冷却又は前記熱媒の加熱により行う請求項13又は14記載の排ガス処理装置の運用方法である。
【0026】
請求項16記載の発明は、前記再加熱器と前記熱回収器との間の熱媒循環ラインから分岐して前記熱回収器の伝熱管内を通る熱媒循環ラインをバイパスして前記再加熱器の熱媒出口から該再加熱器の熱媒入口に戻り該再加熱器の伝熱管内にのみ熱媒を循環させるイパスラインを設け、前記集塵器の出口排ガス温度制御は、前記バイパスラインの熱媒流量を調整することで行う請求項13ないし15のいずれかに記載の排ガス処理装置の運用方法である。
【0027】
なお、前記熱回収器の出口排ガス温度を制御するこれらの手段は、特開平09−122438号公報や特開平11−347332号公報に記載されている方法を用いることができる。
【0028】
【作用】
石炭を燃焼した際に発生する亜硫酸ガス(SO2)の一部は脱硝触媒などの触媒作用により排ガス中の酸素と反応してSO3となる。SO2からSO3への転換率は条件により異なるが、1〜3%程度である。石炭焚きボイラから排出されるSO2濃度は、一般的に300〜3000ppm程度であるので、SO3濃度は3〜90ppm程度である。SO3は排ガス温度が下がると排ガス中の水分と反応して硫酸ミスト(H2SO4)となり、排ガス処理装置の低温部では硫酸が結露する。
【0029】
図4に硫酸露点温度に及ぼすSO3濃度並びに排ガス温度の影響を示す。硫酸露点は、図中に示したように大塚の式又はMullerの式で計算することができ、SO3濃度が3〜90ppmでは、水分量にも依存するが露点は120〜160℃となる。
【0030】
図5は、50ppmのSO3および水分10%を含むガス(硫酸露点:約150℃)と石炭灰粒子の反応性を本発明者らが調べた試験結果である。硫酸露点よりも30℃低くすることで、硫酸ミストはほぼ100%灰粒子に付着した。すなわち、熱回収器入口から集塵器出口までの排ガス中の灰粒子濃度が高い領域で排ガスを冷却し、硫酸露点よりも30℃低い条件にすることで硫酸ミストは灰粒子とほぼ100%反応する。
【0031】
灰粒子は強いアルカリ性を示すので、硫酸ミストを中和して無害化し、機器の腐食を防止することができる。さらに、硫酸ミストと反応した灰粒子のほとんど(99.9%程度)は集塵器で回収されるので、超微粒子である硫酸ミストが集塵器後流側の排ガスダクトに配置される排ガス脱硫装置に入ることが無く、煙突から紫煙が大気中に放出されることを防止できる。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、図面と共に説明する。
【0033】
【実施例1】
図1に本発明の一実施例の排ガス処理システムの構成図を示す。
図1に示すように、本実施の形態の排ガス処理システムにおいて、ボイラ1からの排出される排ガスは排ガスダクト25に設置される脱硝装置2に導入され、脱硝装置2において排ガス中の窒素酸化物が除去された後、空気予熱器3に導かれる。空気予熱器3に導かれた排ガスは、ボイラ1へ供給される燃焼用空気と熱交換され、例えば、120〜170℃に冷却されて熱回収器11に導入される。熱回収器11に導入された排ガスの熱は、熱交換により伝熱管内を流れる熱媒に回収され、例えば75〜110℃に冷却されて電気集塵器4に導かれ、ここで排ガス中の煤塵の大半が捕集される。
【0034】
電気集塵器4を通った排ガスは、誘引ファン5により昇圧されて湿式排ガス処理装置の一例であるスプレ式石灰石−石膏法の湿式脱硫装置6に導入され、気液接触により排ガス中のSOxが除去される。湿式脱硫装置6において飽和ガス温度にまで冷却された排ガスは、再加熱器13により昇温した後、脱硫ファン7を介して煙突8から大気中に排出される。再加熱器13は、熱回収器11と同様に熱媒が通流される伝熱管を備えた熱交換器であり、排ガスは伝熱管内を流れる熱媒と熱交換により、例えば90〜110℃に昇温する。また、熱回収器11と再加熱器13の伝熱管は、熱媒循環管路15−1、15−2によって連通し、ポンプ10により熱回収器11と再加熱器13との間に熱媒が循環されるようになっている。
【0035】
図1に示す排ガス処理システムでは、電気集塵器4出口の排ガス温度を制御することにより、排ガス中の硫酸ミストの除去効率を高くすることができる。
【0036】
図2に、本実施例の特徴部に係る熱回収器11と再加熱器13の熱媒循環系統の詳細図を示す。熱回収器11と再加熱器13のそれぞれの伝熱管12と伝熱管14は、熱媒循環管路15−1、15−2により環状に連結され、その管路の途中に設けられた循環ポンプ10により、それらの伝熱管12、14内に熱媒が循環されるようになっている。伝熱管12、14は、熱交換の効率を向上させるために、フィンチューブ等が用いられる。熱媒循環管路15−2には、管路の熱媒の膨張を吸収するために熱媒タンク26が設置されている。
【0037】
電気集塵器4出口の排ガス温度を制御する具体的な方法は下記のものが挙げられる。
熱回収器11の出口排ガス温度を制御するために、熱回収器11をバイパスして再加熱器13の熱媒出口から入口に戻る熱媒バイパスライン16が設けられ、電気集塵器4の出口排ガス温度を計測する温度計17の信号により、電気集塵器4の出口排ガス温度が設定範囲となるように、熱媒バイパスライン16に設けられた流量調整弁18の開度を調整して熱媒による熱回収器11での熱回収量を制御している。また、熱媒循環管路15−2には熱交換器19が接続され、ここに蒸気または冷却水を供給管20から流量調整弁21の開度を調整して流すことにより熱回収器11の出口排ガス温度を制御する。その結果、電気集塵器4出口の排ガス温度を制御することができる。
【0038】
ポンプ10の流量を調整することにより電気集塵器4の出口排ガス温度を制御することも可能である。例えば、温度計17により測定された電気集塵器4の出口排ガスダクト25内の排ガス温度が所定の値より高い場合は、ポンプ10の流量を増加して熱回収器11と再加熱器13との間の熱交換量を増加し、電気集塵器4の出口の排ガス温度を下げる。しかし、逆にポンプ10の流量を減少させて熱回収器11と再加熱器13との間の熱交換量を減少させると、再加熱器13出口の排ガス温度が低下し、伝熱管14の表面に湿式脱硫装置のミストが飛散して付着し、腐食の原因となることもあるので注意が必要である。
【0039】
図1および図2に示した実施例で電気集塵器4出口の排ガス温度を所定の値に調整し、煙突8入口での排ガス中の硫酸ミスト濃度を測定した。表1にその結果を示す。ただし、硫酸ミスト濃度は、150℃での値をベース100として、相対値で示す。
【0040】
【表1】
Figure 0004761284
【0041】
【実施例2】
図1に示した排ガス処理システムにおいて、硫酸ミスト濃度を測定し、該硫酸ミスト濃度測定値に基づき電気集塵器4出口の排ガス温度を制御する(図4参照)ことも可能である。
【0042】
図3に、本実施例に係る熱回収器11と再加熱器13の熱媒循環系統の詳細図を示す。熱回収器11と再加熱器13のそれぞれの伝熱管12と伝熱管14は、熱媒循環管路15−1、15−2により環状に連結され、その管路の途中に設けられた循環ポンプ10により、それらの伝熱管12、14内に熱媒が循環されるようになっている。伝熱管12、14は、熱交換の効率を向上させるために、フィンチューブ等が用いられる。熱媒循環管路15−2には、管路の熱媒の膨張を吸収するために熱媒タンク26が設置されている。
【0043】
電気集塵器4出口の排ガス温度を制御する具体的な方法は下記のものが挙げられる。
熱回収器11の出口排ガス温度を制御するために、熱媒バイパスライン16が設けられ、電気集塵器4の出口排ガス温度を計測するミスト濃度計22の信号により算出される電気集塵器4の出口でのミスト濃度が設定範囲となるように、熱媒バイパスライン16に設けられた流量調整弁18の開度を調整して熱回収量を制御している。また、熱媒循環管路15−2には熱交換器19が接続され、ここに蒸気または冷却水を供給管20から流量調整弁21の開度を調整して流すことにより熱回収器11の出口排ガス温度を制御して、電気集塵器4の出口でのミスト濃度を制御する。
【0044】
なお、上記実施例1では電気集塵器4の出口排ガス温度を測定しているが、電気集塵器4での排ガス温度低下が小さい場合は、熱回収器11出口や電気集塵器4入口での排ガス温度を代わりに測定することも可能である。また、実施例2では電気集塵器4の出口でのミスト濃度の代わりに煙突8入口でのミスト濃度を測定することも可能である。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、経済的に煙突から排出される排ガス中の硫酸ミスト濃度を低減することができる。また、アルカリ性が高い石炭灰で硫酸ミストを中和して無害化するため、機器の腐食を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態の排ガス処理システムの基本系統図である。
【図2】 本発明の実施例1の排ガス処理システムの部分詳細構造図である。
【図3】 本発明の実施例2の排ガス処理システムの部分詳細構造図である。
【図4】 本発明の排ガス処理システムに関する排ガス中のSO3濃度と排ガス中の硫酸の露点温度との関係図である。
【図5】 SO3含有ガスと石炭灰の反応性を示す図である。
【符号の説明】
1:ボイラ 2:脱硝装置 3:空気予熱器 4:電気集塵器 5:誘引ファン 6:湿式脱硫装置 7:脱硫ファン 8:煙突 10:ポンプ 11:熱回収器 12:伝熱管 13:再加熱器 14:伝熱管
15:熱媒循環管路 16:熱媒バイパスライン 17:温度計 18:流量調整弁 19:熱交換器 20:供給管 21:流量調整弁 22:ミスト濃度計 25:排ガスダクト 26:熱媒タンク

Claims (16)

  1. 石炭を燃焼させる燃焼装置から排出する排ガスにより燃焼装置の燃焼用空気を予熱する空気予熱器と、
    該空気予熱器出口の排ガスの熱を熱媒に回収する伝熱管群からなる熱回収器と、
    該熱回収器出口の排ガス中のばい塵を回収する集塵器と、
    該集塵器出口の排ガス中の硫黄酸化物を除去する湿式脱硫装置と、
    該湿式脱硫装置出口の排ガスを前記熱回収器から供給される熱媒で加熱する伝熱管群からなる再加熱器と
    を燃焼装置の排ガスダクトの上流側から下流側に順次配置し、
    熱回収器と再加熱器にそれぞれ設けられた伝熱管を連絡し、その内部に熱媒を循環させる熱媒循環ラインを設けた排ガス処理装置において、
    前記熱回収器出口から前記集塵器出口の排ガス温度を、排ガス中の硫酸(SO 3 )ミストを石炭灰粒子と反応させるために排ガス中の硫酸(SO3)ミストの露点よりも低い温度にする前記集塵器の出口排ガス温度制御手段を設けたことを特徴とする排ガス処理装置。
  2. 前記熱回収器出口から前記集塵器出口の排ガス温度を排ガス中の硫酸(SO3)ミストの露点よりも30℃以上低い温度にする前記集塵器の出口排ガス温度制御手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の排ガス処理装置。
  3. 前記集塵器の出口排ガス温度制御手段は、前記再加熱器と前記熱回収器との間の熱媒循環ラインの熱媒循環流量調整手段又は前記熱媒を冷却する手段、前記熱媒を加熱する手段のいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の排ガス処理装置。
  4. 前記再加熱器と前記熱回収器との間の熱媒循環ラインから分岐して前記熱回収器の伝熱管内を通る熱媒循環ラインをバイパスして前記再加熱器の熱媒出口から該再加熱器の熱媒入口に戻り該再加熱器の伝熱管内にのみ熱媒を循環させるバイパスラインを設け、前記集塵器の出口排ガス温度制御手段は、前記バイパスラインの熱媒流量を調整する手段であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の排ガス処理装置。
  5. 石炭を燃焼させる燃焼装置から排出する排ガスにより燃焼装置の燃焼用空気を予熱する空気予熱器と、
    該空気予熱器出口の排ガスの熱を熱媒に回収する伝熱管群からなる熱回収器と、
    該熱回収器出口の排ガス中のばい塵を回収する集塵器と、
    該集塵器出口の排ガス中の硫黄酸化物を除去する湿式脱硫装置と、
    該湿式脱硫装置出口の排ガスを前記熱回収器から供給される熱媒で加熱する伝熱管群からなる再加熱器と
    を燃焼装置の排ガスダクトの上流側から下流側に順次配置し、
    熱回収器と再加熱器にそれぞれ設けられた伝熱管を連絡し、その内部に熱媒を循環させる熱媒循環ラインを設けた排ガス処理装置において、
    前記集塵器出口に排ガス中の硫酸(SO3)ミスト濃度を測定する硫酸(SO3)ミスト濃度計を設け、該硫酸(SO3)ミスト濃度計の測定値に基づき、前記熱回収器出口から前記集塵器出口の排ガス温度を、排ガス中の硫酸(SO 3 )ミストを石炭灰粒子と反応させるために排ガス中の硫酸(SO3)ミストの露点よりも低い温度にする前記集塵器の出口排ガス温度制御手段を設けたことを特徴とする排ガス処理装置。
  6. 前記硫酸(SO3)ミスト濃度計の測定値に基づき、前記熱回収器出口から前記集塵器出口の排ガス温度を排ガス中の硫酸(SO3)ミストの露点よりも30℃以上低い温度にする前記集塵器の出口排ガス温度制御手段を設けたことを特徴とする請求項5記載の排ガス処理装置。
  7. 前記集塵器の出口排ガス温度制御手段は、前記再加熱器と前記熱回収器との間の熱媒循環ラインの熱媒循環流量調整手段又は前記熱媒を冷却する手段、前記熱媒を加熱する手段のいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項5又は6記載の排ガス処理装置。
  8. 前記再加熱器と前記熱回収器との間の熱媒循環ラインから分岐して前記熱回収器の伝熱管内を通る熱媒循環ラインをバイパスして前記再加熱器の熱媒出口から該再加熱器の熱媒入口に戻り該再加熱器の伝熱管内にのみ熱媒を循環させるバイパスラインを設け、前記集塵器の出口排ガス温度制御手段は、前記バイパスラインの熱媒流量を調整する手段であることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の排ガス処理装置。
  9. 石炭を燃焼させる燃焼装置から排出する排ガスにより燃焼装置の燃焼用空気を予熱する空気予熱器と、
    該空気予熱器出口の排ガスの熱を熱媒に回収する伝熱管群からなる熱回収器と、
    該熱回収器出口の排ガス中のばい塵を回収する集塵器と、
    該集塵器出口の排ガス中の硫黄酸化物を除去する湿式脱硫装置と、
    該湿式脱硫装置出口の排ガスを前記熱回収器から供給される熱媒で加熱する伝熱管群からなる再加熱器と
    を燃焼装置の排ガスダクトの上流側から下流側に順次配置し、
    熱回収器と再加熱器にそれぞれ設けられた伝熱管を連絡し、その内部に熱媒を循環させる熱媒循環ラインを設けた排ガス処理装置の運用方法において、
    前記熱回収器出口から前記集塵器出口の排ガス温度が、排ガス中の硫酸(SO 3 )ミストを石炭灰粒子と反応させるために排ガス中の硫酸(SO3)ミストの露点よりも低い温度になるように前記集塵器の出口排ガス温度を制御することを特徴とする排ガス処理装置の運用方法。
  10. 前記熱回収器出口から前記集塵器出口の排ガス温度が排ガス中の硫酸(SO3)ミストの露点よりも30℃以上低い温度になるように前記集塵器の出口排ガス温度を制御することを特徴とする請求項9記載の排ガス処理装置の運用方法。
  11. 前記集塵器の出口排ガス温度制御は、前記再加熱器と前記熱回収器との間の熱媒循環ラインの熱媒循環流量の調整、前記熱媒の冷却又は前記熱媒の加熱により行うことを特徴とする請求項9又は10記載の排ガス処理装置の運用方法。
  12. 前記再加熱器と前記熱回収器との間の熱媒循環ラインから分岐して前記熱回収器の伝熱管内を通る熱媒循環ラインをバイパスして前記再加熱器の熱媒出口から該再加熱器の熱媒入口に戻り該再加熱器の伝熱管内にのみ熱媒を循環させるバイパスラインを設け、
    前記集塵器の出口排ガス温度制御は、前記バイパスラインの熱媒流量を調整することで行うことを特徴とする請求項9ないし11のいずれかに記載の排ガス処理装置の運用方法。
  13. 石炭を燃焼させる燃焼装置から排出する排ガスにより燃焼装置の燃焼用空気を予熱する空気予熱器と、
    該空気予熱器出口の排ガスの熱を熱媒に回収する伝熱管群からなる熱回収器と、
    該熱回収器出口の排ガス中のばい塵を回収する集塵器と、
    該集塵器出口の排ガス中の硫黄酸化物を除去する湿式脱硫装置と、
    該湿式脱硫装置出口の排ガスを前記熱回収器から供給される熱媒で加熱する伝熱管群からなる再加熱器と
    を燃焼装置の排ガスダクトの上流側から下流側に順次配置し、
    熱回収器と再加熱器にそれぞれ設けられた伝熱管を連絡し、その内部に熱媒を循環させる熱媒循環ラインを設けた排ガス処理装置の運用方法において、
    前記集塵器から排出される排ガス中の硫酸(SO3)ミスト濃度を測定し、該硫酸(SO3)ミスト濃度の測定値に基づき、前記熱回収器出口から集塵器出口の排ガス温度が、排ガス中の硫酸(SO 3 )ミストを石炭灰粒子と反応させるために排ガス中の硫酸(SO3)ミストの露点よりも低い温度になるように前記集塵器の出口排ガス温度を制御することを特徴とする排ガス処理装置の運用方法。
  14. 前記集塵器から排出される排ガス中の硫酸(SO3)ミスト濃度を測定し、該硫酸(SO3)ミスト濃度の測定値に基づき、前記熱回収器出口から前記集塵器出口の排ガス温度が排ガス中の硫酸(SO3)ミストの露点よりも30℃以上低い温度になるように前記集塵器の出口排ガス温度を制御することを特徴とする請求項13記載の排ガス処理装置の運用方法。
  15. 前記集塵器の出口排ガス温度制御は、前記再加熱器と前記熱回収器との間の熱媒循環ラインの熱媒循環流量の調整、前記熱媒の冷却又は前記熱媒の加熱により行うことを特徴とする請求項13又は14記載の排ガス処理装置の運用方法。
  16. 前記再加熱器と前記熱回収器との間の熱媒循環ラインから分岐して前記熱回収器の伝熱管内を通る熱媒循環ラインをバイパスして前記再加熱器の熱媒出口から該再加熱器の熱媒入口に戻り該再加熱器の伝熱管内にのみ熱媒を循環させるバイパスラインを設け、
    前記集塵器の出口排ガス温度制御は、前記バイパスラインの熱媒流量を調整することで行うことを特徴とする請求項13ないし15のいずれかに記載の排ガス処理装置の運用方法。
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