JP4761067B2 - エアーバッグ用コーティング布 - Google Patents

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Description

本発明は、エアーバッグ用コーティング布の基布上に、少なくとも外部に暴露される部分が表面改質されたシリコーン成形物層が形成されたエアーバッグ用コーティング布に関する。
近年、シリコーン成形物は、その特異的な物性のためにあらゆる産業界において益々需要を伸ばしている。更に詳しくは、従来の工業材料では耐久性が著しく劣化するような冷熱、高温多湿、高圧、紫外線又はオゾン雰囲気の環境下においても、シリコーン成形物はその物性を維持することが可能なことから、特殊材料、汎用材料としてのシェアを広げている。シリコーン成形物は単体製品としての利用もあるが、住陶、自動車業界、電子・電気業界では基材との組み合わせとして、言い換えれば基材と一体に成形された複合体による利用も多い。これらシリコーン成形物単体製品やシリコーン成形物と基材からなる一体成形複合体では、成形後の保管中や最終製品への組み込み後に他部位のシリコーン成形物や基材との接触による好ましくない密着(ブロッキング)や、塵や埃を嫌うリレースイッチ装置やLED装置などの電子・電気部品に用いられるシリコーン成形物の表面にゴミ等の付着が起こる可能性が非常に高い。それらの防止策として、個別の部品を接触しないように間隔を空けての保管、ライナーの使用や最終製品中での取り付け、また防塵のための個別包装やケースの使用による防塵などが行われている。しかしながら、それらの方法では包装材・ライナー、保管中のスペースの確保などが必要でコスト的にも不利であり、しかも装置内設計上の制限が加わり、部品のコンパクト化という技術的な流れにおいて問題があった。
なお、本発明に関する先行文献としては下記のものが挙げられる。
特開2002−53982号公報 特開2003−238710号公報 特開2006−159819号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、シリコーン成形物同士及び目的外基材との接触により起こり得るブロッキングが防止され、またシリコーン成形物の表面のゴミ付着が防止されたエアーバッグ用コーティング布を提供することを目的とする。
本発明者らは、前述した問題を解決するに当たり、鋭意研究を進めた結果、シリコーン成形物の少なくとも外部に暴露される表面部分において有機珪素化合物を燃焼させて、燃焼により生じた酸化珪素粒子及び/又は酸化珪素被膜を表面部分に形成させることで他部位のシリコーン成形物との接触により起こる密着(ブロッキング)やゴミ等の付着の防止が可能であることを見出した。
従って、本発明は下記のエアーバッグ用コーティング布を提供する。
請求項1:
エアーバッグ用コーティング布の基布上にシリコーン組成物の硬化物よりなるシリコーン成形物層が形成され、このシリコーン成形物の少なくとも外部に暴露される部分が有機珪素化合物の燃焼により形成された酸化珪素粒子及び/又は酸化珪素被膜により被覆されてなることを特徴とするエアーバッグ用コーティング布。
請求項2:
シリコーン組成物は、付加反応硬化型、縮合硬化型、有機過酸化物硬化型、紫外線硬化型、又は電子線硬化型シリコーン組成物である請求項1記載のエアーバッグ用コーティング布。
請求項3:
シリコーン組成物が、
(1)一分子中に少なくとも2個の珪素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(2)一分子中に少なくとも2個の珪素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.1〜30質量部、
(3)付加反応触媒 触媒量
を含有する常温下で液状又は生ゴム状の付加反応硬化型シリコーンゴム組成物である請求項2記載のエアーバッグ用コーティング布。
請求項4:
シリコーン組成物が、
(5)一分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン
100質量部、
(6)有機過酸化物 触媒量
を含有する常温下で液状又は生ゴム状の有機過酸化物硬化型シリコーンゴム組成物である請求項2記載のエアーバッグ用コーティング布。
請求項5:
エアーバッグ用コーティング布の基布が、6−ナイロン、6,6−ナイロン、ポリエステル繊維、ポリアラミド繊維、ポリアミド繊維、炭素繊維から選ばれる基材から形成されたものである請求項1〜4のいずれか1項記載のエアーバッグ用コーティング布。
本発明のシリコーン成形物は、その露出する表面部において、シリコーン成形物同士或いは目的外の基材との接触によるブロッキングが生じ難く、またゴミの付着が生じ難いものである。
本発明において、シリコーン成形物を得るためのシリコーン組成物としては、付加反応硬化型、縮合硬化型、有機過酸化物硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型シリコーン組成物等のいかなるものでもよいが、特に付加反応硬化型又は有機過酸化物硬化型のシリコーンゴム組成物が好ましい。
ここで、付加反応硬化型のシリコーンゴム組成物としては、
(1)一分子中に少なくとも2個の珪素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(2)一分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上の珪素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.1〜30質量部、
(3)付加反応触媒 触媒量
を主成分とする常温下で液状又は生ゴム状の組成物であり、常温下又は加熱により硬化するものである。
(1)成分のオルガノポリシロキサンは、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物のベースポリマーであり、このオルガノポリシロキサンの珪素原子に結合する有機基は、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、具体的にはメチル、エチル、プロピル等のアルキル基などの脂肪族飽和炭化水素基、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル等のアルケニル基などの脂肪族不飽和炭化水素基、フェニル、キシリル等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換、シアノ基置換一価炭化水素基などから選ばれ、全有機基のうち70モル%以上がメチル基であることが好ましい。珪素原子に結合する各有機基は異なっていても同一であってもよいが、分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を含んでいることが必要である。
この(1)成分のオルガノポリシロキサンは、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖され、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状であることが好ましいが、一部分岐していてもよい。このオルガノポリシロキサンは当業者にとって公知の方法によって製造される。例えば、その製造方法は、オルガノシクロポリシロキサンとヘキサオルガノジシロキサンとをアルカリ又は酸触媒の存在下に平衡化反応を行うことによって得ることができる。
この(1)成分のオルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(1)
1 aSiO(4-a)/2 (1)
で示されるものが用いられる。
この場合、R1は上述した炭素数1〜12,特に1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、aは1.8〜2.2、好ましくは1.95〜2.05の正数である。R2は上述した通り、少なくとも2個はアルケニル基、特にビニル基であるが、好ましくはR1中0.001〜10モル%、より好ましくは0.005〜5モル%、特に0.01〜2モル%がアルケニル基であることが好ましい。その25℃における粘度は、回転粘度計による測定で100〜1,000,000mPa・s、特に500〜500,000mPa・sであることが好ましい。
(2)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、架橋剤として作用するものであり、分子中に少なくとも2個(通常、2〜300個)、好ましくは3個以上(例えば、3〜150個程度)の珪素原子に結合した水素原子(SiH基)を有するものであれば、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状などいずれの分子構造のものであってもよい。
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(2)
b2 cSiO(4-b-c)/2 (2)
で示されるものが好ましい。
この場合、R2は上記のR1の炭素数1〜12,特に1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基と同様のものが挙げられるが、脂肪族不飽和結合を有さないものが好ましい。b,cは、0<b<3、0.8≦c≦2で、0.8<b+c≦3となる正数、好ましくは0.01≦b≦1.1、0.9≦c≦2で、1≦b+c≦3となる正数、より好ましくは0.05≦b≦1、1.5≦c≦2で、1.8≦b+c≦2.7となる正数である。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度は、回転粘度計による測定で0.5〜1,000mPa・s、特に1〜500mPa・sであることが好ましく、又、一分子中の珪素原子数(又は重合度)が2〜300個、特に3〜200個程度のものが好ましい。
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体、(CH33SiO1/2単位と(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体や、これら各例示においてメチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基等の他のアルキル基やフェニル基によって置換されたものなどが挙げられる。
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(1)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜30質量部、特に0.2〜20質量部とすることが好ましい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(1)成分中の珪素原子に結合したアルケニル基に対する(2)成分中の珪素原子に結合した水素原子(SiH基)がモル比で0.1〜10、好ましくは0.5〜5程度となるように配合することもできる。
(3)成分の付加反応触媒としては白金族金属系触媒が挙げられるが、この付加反応触媒は、前記の(1)成分のアルケニル基と(2)成分の珪素原子に結合する水素原子(SiH基)との付加反応を促進するための触媒であり、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒として周知の触媒が挙げられる。その具体例としては、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;H2PtCl4・nH2O、H2PtCl6・nH2O、NaHPtCl6・nH2O、KHPtCl6・nH2O、Na2PtCl6・nH2O、K2PtCl4・nH2O、PtCl4・nH2O、PtCl2、Na2HPtCl4・nH2O(但し、nは0〜6の整数であり、好ましくは0又は6である。)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書参照);塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス(米国特許第3,159,601号明細書、同第3,159,662号明細書、同第3,775,452号明細書参照);白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム−オレフィンコンプレックス;クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、特にビニル基含有環状シロキサンとのコンプレックスなどが挙げられる。
本発明で使用される(3)成分の配合量は触媒量でよく、通常(1)、(2)成分の合計量に対する白金族金属の質量換算で0.1〜500ppm、更には1〜200ppm程度でよい。配合量が500ppmより多い場合は、硬化に必要十分過ぎるため、経済的に不利であり、0.1ppm未満の場合は、必要な硬化性が得られない。
また、前記のシリコーン組成物に対し、(4)成分としてオルガノポリシロキサンレジン(即ち、分子中にSiH基を含まない三官能性シロキサン単位及び/又はSiO4/2単位を含有する、三次元網状構造のオルガノポリシロキサン樹脂)を配合することが好ましい。特に(4)成分を配合することで得られるシリコーン組成物の強度が高くなり、好ましいものとなる。
このようなオルガノポリシロキサンレジンとしては、例えば、(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位からなるレジン、(CH33SiO1/2単位と(CH2=CH)SiO3/2単位とSiO4/2単位からなるレジン、(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位とSiO4/2単位からなるレジン、(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位と(CH2=CH)SiO3/2単位とSiO4/2単位からなるレジン、(CH33SiO1/2単位、(CH2=CH32SiO1/2単位とSiO4/2単位からなるレジンや、上記の各例示においてメチル基の一部又は全部がフェニル基で置換されたレジンなどが示される。特にビニル基等のアルケニル基を持つものは本発明組成物中の架橋構造中に取り込まれることでその強度を向上させる。
このオルガノポリシロキサンレジンは必要に応じて配合される任意成分であり、通常、(1)成分100質量部に対して500質量部以下程度(即ち、0〜500質量部)配合されるものであるが、このオルガノポリシロキサンレジンを配合する場合、その配合量は、(1)成分100質量部に対して0.5〜500質量部、好ましくは1〜400質量部、より好ましくは3〜200質量部程度とすることができる。この配合量が少なすぎるとシリコーン硬化物に十分な強度が得られない場合があり、一方、多すぎると、シリコーン硬化物の硬度が大きすぎて脆くなってしまう場合がある。
有機過酸化物硬化型のシリコーンゴム組成物としては、
(5)一分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン
100質量部、
(6)有機過酸化物 触媒量
を主成分とする常温下で液状又は生ゴム状の組成物であり、加熱により硬化するものである。
ここで、(5)成分のオルガノポリシロキサンは、有機過酸化物硬化型シリコーンゴム組成物のベースポリマーであり、このオルガノポリシロキサンの珪素原子に結合する有機基は、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、具体的にはメチル、エチル、プロピル等のアルキル基などの脂肪族飽和炭化水素基、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル等のアルケニル基などの脂肪族不飽和炭化水素基、フェニル、キシリル等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換、シアノ基置換一価炭化水素基などから選ばれ、全Rのうち0.01〜10モル%はアルケニル基であり、特にアルケニル基とメチル基との合計が全有機基の70モル%以上であることが好ましい。珪素原子に結合する各有機基は異なっていても同一であってもよいが、分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を含んでいることが必要である。
この(5)成分のオルガノポリシロキサンは主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状であることが好ましいが、一部分岐したものであってもよい。このオルガノポリシロキサンは当業者にとって公知の方法によって製造される。例えば、その製造方法は、オルガノシクロポリシロキサンとヘキサオルガノジシロキサンとをアルカリ又は酸触媒の存在下に平衡化反応を行うことによって得ることができる。
この(5)成分のオルガノポリシロキサンとしては、上記式(1)の平均組成式で示される室温で液状又は(自重によって流動性のない)生ゴム(ガム)状のもの、特に生ゴム状のものが好ましいが、重合度(又は分子中の珪素原子数)が、3,000〜10,000、特に4,000〜8,000程度のものが好ましい。
(6)成分の有機過酸化物は、(5)成分の架橋反応を促進するための触媒として使用されるもので、従来公知のものとすればよいが、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシカルボキシ)ヘキサン等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
なお、添加量は、硬化速度に応じて適宜選択すればよいが、通常は(5)成分に対し、0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜2質量部の範囲とすればよい。
更に、上記の成分に加え基材との接着性をより強固にさせる目的で、カーボンファンクチョナルシランや各種SiH基等を含有する有機珪素化合物等の接着促進剤を加えてもよい。これら接着促進剤は基材に対する接着性を向上させるための成分であり、アルコキシ基及びビニル基を有するエポキシ基含有オルガノポリシロキサン、珪素原子結合水素原子を持つエポキシ基含有オルガノポリシロキサン、珪素原子結合水素原子とアルコキシ基を有するエポキシ基含有オルガノポリシロキサン等のエポキシ基含有オルガノポリシロキサンや、珪素原子結合水素原子を有するアルコキシ基含有オルガノポリシロキサン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のアルコキシ基含有オルガノシランが挙げられる。これら接着促進剤の配合量は、(1)成分又は(5)成分100質量部に対し、通常、20質量部以下(0〜20質量部)、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.3〜10質量部程度とすることができる。
上述した成分の他、本発明のシリコーン組成物に微粉末シリカを充填してもよい。微粉末シリカは硬化物の機械的強度を補強するためのもので、従来シリコーン組成物に使用されている公知のものでよく、例えば、煙霧質シリカ、沈降シリカ、焼成シリカ、石英粉末、珪藻土などがある。これら1種又は2種以上併用してもよい。これらのシリカ粒子は、通常BET法による比表面積が50m2/g以上、特に50〜500m2/g程度のものが一般的である。このような微粉末シリカはそのまま使用してもよいが、本発明組成物に良好な流動性を付与させるため、メチルクロロシラン類、ジメチルポリシロキサン、ヘキサメチルジシラザンなどの有機珪素化合物で処理したものを使用することが好ましい。この微粉末シリカは必要に応じて配合される任意成分であって、通常、(1)成分又は(5)成分100質量部に対して100質量部以下(0〜100質量部)程度で配合すればよいものであるが、この微粉末シリカを配合する場合には、微粉末シリカの配合量は、(1)成分又は(5)成分100質量部に対し、1〜100質量部、好ましくは3〜50質量部、より好ましくは5〜30質量部程度とすることができる。
その他として、ヘキサメチルジシラザン、シラノール基含有の重合度が100以下の低分子量ジメチルシロキサン、シラノール基含有シラン、アルコキシ基含有シラン、ヘキサアルキルジシラザン等の分散助剤、珪藻土、石英粉末、溶融石英粉末、クレー、アルミナ、タルク等の無機充填剤、ベンガラ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム等の耐熱・耐油向上剤、カーボンブラック、着色のための顔料及び染料、離型剤、その他通常のシリコーンゴム組成物に添加される添加剤を用途等に応じ、適宜配合することができる。
硬化条件としては、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物では公知のシリコーンゴム組成物と同様でよく、例えば常温でも十分硬化するが、必要に応じて加熱してもよく、通常、23〜200℃で30秒〜2時間である。有機過酸化物硬化型シリコーンゴム組成物の場合、60〜230℃で5秒〜2時間、好ましくは80〜210℃で10秒〜1時間である。60℃未満では、硬化に時間がかかりすぎ、230℃を超えると、シリコーンゴム組成物が劣化してしまうおそれがある。
本発明においては、上記シリコーン組成物を硬化して得られるシリコーン成形物の少なくとも外部に暴露される部分が、有機珪素化合物の燃焼により形成された酸化珪素粒子及び/又は酸化珪素被膜により被覆されるもので、この場合、酸化珪素粒子及び/又は酸化珪素被膜の形成は、好適にはシリコーン成形物の表面を有機珪素化合物を含む燃料ガスの火炎で吹き付け処理することにより、シリコーン成形物の表面部分の改質を行う方法が好ましいが、改質されるシリコーン成形物は、未硬化状態、半硬化状態、硬化状態のいずれでもよく、作業性に有利な方法を選択することが可能であり、シリコーン成形物は基材との一体形成後に改質してもよく、また事前に改質した後に基材と一体形成してもかまわない。なお、前記基材に対し未硬化の状態であるシリコーン成形物の設置方法は、具体的にはコーティング、ポッティング、シーリング、スタンピング、ディッピング、フィーリング、ブローイングなどが挙げられ、必要に応じた方法を用いることが可能であり、更に必要な場合は、溶剤等で目的とする粘度まで希釈し、前記の方法により基材に設置してもかまわない。
ここで、一体成形複合体の基材としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の有機樹脂、金属、ガラス、無機物質が挙げられる。有機樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよく、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフェニレンスルヒド(PPS)樹脂、ポリフェニレンオキサイド(PPO)樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニル樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、エチレンポリトリフルオロクロロエチレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。金属としては鉄、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、クロム、金、銀、銅、亜鉛、ステンレス、チタニウムや金属混合物等であり、無機物質としては陶器、磁器、酸化アルミニウム、酸化チタン等が挙げられる。
この場合、前記基材が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属、ガラス、無機物質からなる群より少なくとも1つは選ばれるものが好ましいが、前記基材が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属からなる群より少なくとも1つは選ばれる原料を基に作製されたフィルム、或いは前記基材が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属、ガラスからなる群より少なくとも1つは選ばれる原料を基に作製された繊維を用いて紡織された布状物とすることができる。
本発明のシリコーン成形物は、上述したように、少なくとも外部に暴露される部分が、有機珪素化合物の燃焼により形成された実質的に二酸化珪素(SiO2)からなる酸化珪素粒子及び/又は酸化珪素被膜(即ち、該酸化珪素粒子が二次元的に凝集して形成された被膜)により被覆されてなるものであるが、このような有機珪素化合物としては、テトラメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、テトラメトキシシラン、トリメトキシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等が挙げられる。なお、これら有機珪素化合物に加え、火炎のコントロールを容易にするために、プロパンガスや天然ガス等の炭化水素ガス、水素、酸素、空気等の引火性ガスを混合してもよい。
上記燃焼ガスの火炎をシリコーン成形物の表面部分に吹き付ける時間としては、0.1〜50秒の範囲、好ましくは、0.3〜30秒の範囲である。0.1秒未満では、表面部分の処理が不十分かつ不均一であり、50秒を超えると、改質するシリコーン成形物にダメージを与えてしまうおそれがある。この場合、形成される酸化珪素粒子の大きさは外観上やシリコーン成形物又は一体成形複合体として要求される特性に対し影響が無い程度ならば特に制限はなく、平均粒径として50μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下程度がよい。平均粒径として50μmを超えると外観上好ましくなく、また粒子が粗すぎるために機械的摩擦により改質されたシリコーン成形物と接触するものに対して傷をつけてしまうおそれがある。また、平均粒径の下限は、適宜選定されるが、0.1μm以上、特に0.5μm以上である。ここでの平均粒径は、光学顕微鏡による測定やレーザー光回折による粒度分布測定における累積重量平均値D50(又はメジアン径)などの測定法に基づくものである。
なお、平均粒径を上記50μm以下にする方法としては、有機珪素化合物の種類や供給量、燃焼温度、改質しようとする目的物の表面に対して火炎の接触する時間などの各要因を適宜選定すればよい。また、酸化珪素被膜の厚さは、シリコーン成形物の表面が被覆される程度であれば特に制限はなく、通常10μm以下、好ましくは5μm以下の被膜で十分であり、10μmを超えるような厚い被膜を形成する必要はない。なお、厚さの下限も適宜選定されるが、通常0.1μm以上、特に0.3μm以上である。
このような有機珪素化合物の燃焼による表面部分の改質方法としては、特に特開2003−238710号公報で開示されているような方法が効果的である。
本発明の一体成形複合体は、種々の用途に使用されるが、特にエアーバッグ用コーティング布として好適に用いられる。このエアーバッグ用コーティング布としては、基材としての6−ナイロン、6,6−ナイロン、ポリエステル繊維、ポリアラミド繊維、各種ポリアミド繊維、炭素繊維等の基布上に本発明に係る表面改質シリコーン成形物層が形成されたものとすることができる。この場合、シリコーン成形物層の厚さは5〜150μm、特に10〜80μmとすることが好ましく、その表面全面に好ましくは0.1〜10μm、特に0.5〜5μmの平均粒径の酸化珪素粒子又は0.1〜10μm、特に0.3〜3μmの厚さの酸化珪素被膜を形成したものが好ましい。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
参考例1]
分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖されたビニル基含有量0.32質量%である25℃における粘度が1,000mPa・sのジメチルポリシロキサン84質量部、トリメチルシリル基で処理された比表面積が130m2/gの疎水性シリカ30質量部をニーダー中に投入し、よく撹拌しながらヘキサメチレンジシラザン5質量部と水1.5質量部を添加し、無加熱で均一になるまで混合を行った。この後、温度を170℃に昇温し、引き続き4時間の混合を行い、その後室温まで降温した。このようにして得られた混合物60質量部に分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖されたビニル基含有量0.32質量%である25℃における粘度が1,000mPa・sのジメチルポリシロキサン40質量部を加えたベース100質量部に、接着促進剤としてビニルトリメトキシシランを0.5質量部とγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを1質量部、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体を分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖された23℃での粘度が約600mPa・sのジメチルポリシロキサンで希釈した白金触媒溶液(ビニル基含有量0.4質量%、白金原子含有量1質量%)として0.3質量部、制御剤として1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルテトラシロキサン1質量部、シリコーン組成物を目視で確認できるようにベンガラを0.5質量部加え、均一に混合し、調製液を調合した。次いで、この調合液に下記の平均分子式を持つオルガノハイドロジェンポリシロキサンを8質量部添加後、均一混合し、液状シリコーンゴム組成物を調製した。
Me3SiO(MeHSiO)20(Me2SiO)18SiMe3
(ここで、Meはメチル基を表す。)
次に、この調合液(液状シリコーンゴム組成物)を厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、塗布量が約25g/m2になるように均一にコーティングし、150℃の温度で3分間加熱し、硬化せしめ、シリコーンコーティングフィルムを作製した。
このコーティングフィルム上のシリコーン成形物について、テトラメチルシラン、テトラメトキシシランと空気の混合ガス(モル比=0.00001:0.000001:1、即ち、テトラメチルシランを0.001モル%、テトラメトキシシランを0.0001モル%濃度で含有する空気混合ガス)を基材表面上でガス流量:1m3/hrで約0.5秒間燃焼処理を1回実施した複合体の成形を行った。なお、シリコーン成形物表面に形成された酸化珪素微粒子(SiO2)の凝集体からなる被膜の厚さは、光学顕微鏡による測定から約0.8μm程度であった。
[実施例
参考例1で調合した液状シリコーンゴム組成物を6,6−ナイロン(420デニール)繊維により紡織した布上に塗布量が約40g/m2になるように均一にコーティングし、180℃の温度で1分間加熱し、硬化せしめ、シリコーンコーティング基布を作製した。このコーティング基布上のシリコーン成形物について参考例1と同様の処理を実施した複合体の成形を行った。なお、シリコーン成形物の表面に形成された酸化珪素微粒子(SiO2)の凝集体からなる被膜の厚さは、光学顕微鏡による測定から約0.8μm程度であった。
参考
分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖された23℃での粘度が約10Pa・sのビニル基含有量が0.14質量%であるジメチルポリシロキサン60質量部、同じく分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖された23℃での粘度が約5Pa・sのビニル基含有量が0.16質量%であるジメチルポリシロキサン20質量部、CH2=CH(CH32SiO1/2単位とSiO4/2単位からなるビニル基含有メチルポリシロキサンレジン(ビニル基含有量2.3質量%)20質量部、接着促進剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを1質量部、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体を分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖された23℃での粘度が約600mPa・sのジメチルポリシロキサンで希釈した溶液(ビニル基含有量0.4質量%、白金原子含有量1質量%)0.3質量部、硬化制御剤として1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルテトラシロキサン1質量部、シリコーン組成物を目視で確認できるようにベンガラ0.5質量部を加え、均一に混合し、調製液を調合した。次いで、この調合液に下記の平均分子式を持つオルガノハイドロジェンポリシロキサンを4.9質量部添加後、均一混合し、液状シリコーンゴム組成物を調製した。
Me3SiO(MeHSiO)10SiMe3
(ここで、Meはメチル基を表す。)
この調製した液状シリコーンゴム組成物を用いる以外は参考例1と同様にしてコーティング基布の作製及び燃焼処理を行った複合体の成形を行った。なお、シリコーン成形物の表面に形成された酸化珪素微粒子(SiO2)の凝集体からなる被膜の厚さは、光学顕微鏡による測定から約0.8μm程度であった。
[実施例
参考で調合した液状シリコーンゴム組成物を用いる以外は実施例と同様のコーティング基布の作製及び燃焼処理を行った複合体の成形を行った。なお、シリコーン成形物の表面に形成された酸化珪素微粒子(SiO2)の凝集体からなる被膜の厚さは、光学顕微鏡による測定から約0.8μm程度であった。
[比較例1]
参考例1において燃焼処理を行わない以外は参考例1と同様に複合体の成形を行った。
[比較例2]
実施例において燃焼処理を行わない以外は実施例と同様に複合体の成形を行った。
[比較例3]
参考において燃焼処理を行わない以外は参考と同様に複合体の成形を行った。
[比較例4]
実施例において燃焼処理を行わない以外は実施例と同様に複合体の成形を行った。
測定については、通常のブロッキング試験方法に従い評価を行った。即ち、コーティングフィルム及びコーティング基布を一辺が5cmとなる正方形に裁断したものを準備した。このコーティングフィルム及びコーティング基布のシリコーン成形物が塗布されている面同士を張り合わせ、その張り合わせ面に対し、1cm2当たりの面積に対する加重が約362gとなるように均一に荷重をかけ、105℃の雰囲気下の乾燥機内に静置し、14日経過後に取り出した。この張り合わせ面の端部をわずかに剥がし、そこに50gの錘をつるし、全面が剥がれるまでの時間の計測を行った。全面剥離までの時間が30秒未満は合格、30秒以上は不合格とした。
結果を表1に示す。
Figure 0004761067

Claims (5)

  1. エアーバッグ用コーティング布の基布上にシリコーン組成物の硬化物よりなるシリコーン成形物層が形成され、このシリコーン成形物の少なくとも外部に暴露される部分が有機珪素化合物の燃焼により形成された酸化珪素粒子及び/又は酸化珪素被膜により被覆されてなることを特徴とするエアーバッグ用コーティング布。
  2. シリコーン組成物は、付加反応硬化型、縮合硬化型、有機過酸化物硬化型、紫外線硬化型、又は電子線硬化型シリコーン組成物である請求項1記載のエアーバッグ用コーティング布。
  3. シリコーン組成物が、
    (1)一分子中に少なくとも2個の珪素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
    (2)一分子中に少なくとも2個の珪素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.1〜30質量部、
    (3)付加反応触媒 触媒量
    を含有する常温下で液状又は生ゴム状の付加反応硬化型シリコーンゴム組成物である請求項2記載のエアーバッグ用コーティング布。
  4. シリコーン組成物が、
    (5)一分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン
    100質量部、
    (6)有機過酸化物 触媒量
    を含有する常温下で液状又は生ゴム状の有機過酸化物硬化型シリコーンゴム組成物である請求項2記載のエアーバッグ用コーティング布。
  5. エアーバッグ用コーティング布の基布が、6−ナイロン、6,6−ナイロン、ポリエステル繊維、ポリアラミド繊維、ポリアミド繊維、炭素繊維から選ばれる基材から形成されたものである請求項1〜4のいずれか1項記載のエアーバッグ用コーティング布。
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