JP4758962B2 - 多孔質粉体の製造方法 - Google Patents
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Description
かかる増大する汚泥を処理するために、汚泥を減量化(減容化)することが行われており、そのため汚泥を焼却処理したり、汚泥を溶融処理したりすることが実施されている。
特に汚泥の焼却処理が積極的に行われており、それに伴い焼却灰の発生量も増加している。
そのため、例えば汚泥の焼却灰を加圧成形した後焼成してレンガを製造したり、前記焼却灰を加圧造粒して人造骨材にしたり、また、当該焼却灰を溶融して得られたスラグを路盤材に利用する技術等が提案されているが、その適用には限界がある。
かかる居住空間の気密性を高めた結果、屋外と屋内で温度差が生じ、特に冬期の結露により、カビ、ダニが発生し、室内の汚れだけでなく、人体に対してもアレルギーを引き起こす等の問題が生じている。
従来より、吸放湿性材料、例えば調湿性を有する材料として、木質系の建材を使用することによりこれらの問題を緩和してきたが、近年木材資源の高騰により、かかる木質系建材は非常にコスト高の材料となっており、使用が難しくなっている。
また、例えば、無機質系建材では、珪藻土、ゾノトライト、トバモライト等を主成分とするものが開発されているが、より安価に製造でき、所望する高い調湿性を得ることは難しく、より調湿性の高い材料の開発が望まれている。
更に、特開2002−79081号公報には、汚泥焼却灰に、塩酸水溶液又は硝酸水溶液を添加後、乾燥することにより、BET比表面積が7m2/g以上の多孔質粉体を製造する方法が開示されており、かかる方法は、更に中和処理(水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム又は消石灰)をすることにより、製造設備の耐酸性対策が不要となり、また弱アルカリ性とすることでカビの発生を抑制できることが記載されている。
かかる方法により得られた多孔質粉体は、調湿材料または脱臭剤として利用することができることも記載されている。
更に本発明の目的は、上記目的に加えて、多孔質粉体を製造する際の乾燥工程で用いる乾燥設備を腐食させることなく、また、乾燥工程の時間を短くして乾燥コストを低減させることを可能とする、多孔質粉体の製造方法を提供することである。
すなわち、本発明の多孔質粉体の製造方法は、汚泥焼却灰と塩酸水溶液との接触による酸処理工程、粉体中和剤による中和処理工程、次いで該中和処理後の該焼却灰を常温常圧の大気中で1〜7日間静置して残留する前記酸を蒸発させる風乾処理工程を行い、該風乾処理工程を経た後に90〜300℃で乾燥処理工程を実施することを特徴とする、多孔質粉体の製造方法である。
また、風乾処理によりかかる残留酸の中和反応時間を確保することも可能となる。
更に、該風乾工程を設けることで、含水率が低減でき、乾燥工程での乾燥時間が短縮されて、乾燥コストの低減、更には多孔質粉体を製造するコストの低減が図れることとなる。
本発明の多孔質粉体の製造方法は、汚泥焼却灰と酸水溶液との接触による酸処理工程、粉体中和剤による中和処理工程、次いで風乾処理工程を行い、該風乾処理工程を経た後に乾燥処理工程を実施するものである。
このように、中和工程後、乾燥工程前に、風乾処理工程を設けることで、残留酸成分や水分を蒸発させることができるとともに、残留酸の中和反応時間も確保できることとなる。
本発明においては、これらの焼却灰をいずれも使用でき、1種または混合して用いてもよい。
特に、下水処理場で発生する汚泥量は、前記したように年々下水道の普及とともに増加しているので、本発明の方法は、汚泥の有効な再利用として極めて有用である。
汚泥焼却灰の形態は、酸添加により十分な溶解反応が行われ、最終的に均質な多孔質粒状体が得られれば特に制限はされず、粉末等の成形されていないものに限らず、ペレット状、板状、錠剤状等に成形されたものでも酸添加による接触処理が可能であり、本発明の方法において使用することができる。
ここで、汚泥焼却灰に添加される酸水溶液としては、硫酸水溶液、塩酸水溶液、硝酸水溶液等の鉱酸を用いることが好ましく、これらの硫酸水溶液、塩酸水溶液又は硝酸水溶液としては、市場で入手しうる市販品や、金属精錬工業等から発生する廃硫酸、廃塩酸、廃硝酸等の水溶液も使用することもできる。特に本発明においては、塩酸水溶液を用いる。
使用する酸水溶液の濃度としては、特に限定されないが、0.1〜13規定程度とするのが通常である。
これは、かかる範囲で混合すると、溶解反応も十分であり、得られる多孔質粉体の調湿性能や消臭性能が良好となるからである。
なお、添加混練時の温度は10〜90℃程度が、反応を促進する面から望ましい。
焼却灰と酸水溶液との混練時間は、汚泥焼却灰の特性に応じて、任意に設定することができる。
かかる酸処理混練時間を変化させることにより細孔径分布を変化させることが可能である。すなわち、混練時間を長くすることにより、例えば、10nm以下、特に6nm以下の微細な細孔容積を更に増加させることが可能であり、これらの微細な細孔容積が増加するほど、水蒸気等の吸放湿性能を高めることができる。
通常、酸水溶液添加後、0.1時間〜10日程度、好ましくは、0.1時間〜1日程度とするのが適当である。
これは、多孔質の粉体とする場合、そのままでは、粉体製造設備の厳しい耐酸性対策が必要となるからである。
該粉体中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、消石灰、アンモニア、CaCO3を主成分とするライムストーン(石灰岩)、コーラルサンド等のアルカリ性の材料を挙げることができ、特に、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、消石灰等が好適である。
また、中和剤の添加量は、処理物がpH5.5〜9.0となるように添加する。
このように、酸処理物に、中和剤を添加して混合又は混練することにより、粉体製造設備の厳しい耐酸性対策が不必要となり、多孔性が良好な粉体を得ることができる。
該風乾工程は、常温常圧の大気中で、上記中和処理工程を経た後の灰を、攪拌または静置することで実施される。
このように常温常圧下の大気中で攪拌または静置することで、残留酸や水分を蒸発させることができ、更には、残留酸の中和反応時間が確保できる。
通常、風乾処理は、常温常圧の大気中に放置する方法で、1日〜7日、好ましくは、1日〜2日程度とするのが適当である。このように、乾燥工程前に風乾工程を設けることで、乾燥設備を腐食させることもなく、該設備の耐酸性対策が不必要となり、多孔性が良好な粉体を得ることができる。
乾燥方法としては、特に制限はないが、例えば、回転ドラム式乾燥機、パドル式乾燥機、流動層式乾燥機、気流乾燥機、遠心薄膜式乾燥機等を用いた乾燥方法が挙げられ、下水処理場で現状使用している乾燥機を用いた乾燥方法でも十分に対応可能である。また、乾燥温度は、90〜300℃とする。
本発明において乾燥工程の前に風乾工程を設けているため、これらの乾燥装置を酸で腐食させることを防止できるとともに、含有される水分量を減少させることができるため、乾燥工程を短くすることが可能となる。
ここで、含水率は、「下水試験方法(1997年度版)第4章第6節蒸発残留物及び含水率」に準拠して、乾燥前の試料質量と、105〜110℃で2時間乾燥後の試料質量とを測定し、(乾燥前の質量−乾燥後の質量)/(乾燥前の質量)に対する百分率で表される値である。
また、図2は、本発明の多孔質粉体の製造方法の一例を模式的に示す図である。
より良質な多孔質粉体を製造するには、汚泥焼却灰と酸水溶液との混合・混練作業、酸処理された汚泥焼却灰(酸処理物)と中和剤との混合・混練作業を、十分に行うと共に連続的に処理することが望ましい。
また、酸処理効果の低減を防止し、作業環境を良好に保つためには、混練時に発生する水蒸気および酸性ガスが大気中に多量に拡散することを抑制する必要がある。
好適な二軸押し出し混練機の具体的構成としては、スクリュー本数が2本または3本であり、二本軸は、平行なタイプあるいはコニカルなタイプでスクリューが軸を斜交させたもののいずれでも可能である。
また、スクリューフライトは、かみ合い型又は非かみ合い型のいずれでも可能であるが、前者の方が混練効果が大きいので好ましい。
スクリュー回転方向は、同方向又は異方向のいずれでも可能であるが、前者の方が混練効果が大きいので好ましい。
本発明の方法においては、各前記処理を密閉状態で連続して実施して、混練機全体の密閉度を高めることが必要であり、このため、各投入部には以下のような構造を採用する。
汚泥焼却灰投入部では、汚泥焼却灰をサークルフィーダーやロータリーフィーダーなどの定量供給機により、二軸押し出し混練機に投入する。
また、中和剤投入部では、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カルシウム又は消石灰のスラリーなどの中和剤を定量ポンプで注入する。
なお、これらの投入部の機構は、全て自動化することが可能であり、これらの機構を用いて、二軸押し出し混練機を含む多孔質粉体の製造工程全体を自動化することも可能となる。
二軸押し出し混練機に対する酸水溶液投入部及び中和剤投入部の配置位置は、汚泥焼却灰及び酸処理物である搬送物の送出密度が最も高い位置に配置されることが好ましい。
このような場所では、投入される液体(スラリー状を含む)や固体は、搬送物に強く押し付けられ、搬送物と均一に混じり合うことが可能となる。
また、シリンダーの周囲からこれらの酸水溶液や中和剤が投入されるため、搬送物とシリンダーとの隙間にこれらの投入物が入り込み、搬送物とシリンダーとの摩擦力を緩和し、円滑な搬送を実現するための潤滑作用も期待できる。
二軸混練機は混練容器内に混練羽根が2本あり、その混練羽根の回転により、混練容器内に投入された材料が均一に混練される。混練物の排出については容器底部が開放するタイプや容器自体が傾動するタイプなどがある。
このような二軸混練機を用いて、汚泥焼却灰に対して酸水溶液を投入後、混練して酸処理を行い、続いて中和剤を投入後、混練して中和処理を行い、その中和処理物を混練容器より排出する。
酸水溶液については、硫酸水溶液、塩酸水溶液または硝酸水溶液などの酸水溶液をポンプなどを用いて投入する。
また、中和剤については、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム又は消石灰を水溶液もしくはスラリー状または粉体のまま投入する。
具体的には、押し出された処理物を成形機に入れ、ペレット状等に成形後、上記風乾工程に課して、その後乾燥して使用することも可能である。
また、成形することなく直接、風乾工程・乾燥工程に課しても良いし、一旦水洗後濾過しその残留物を風乾工程・乾燥工程に課しても良い。
一旦水洗後に風乾工程・乾燥工程を経ることで、処理物表面の不純物等を除去することが可能であり、吸着性能も向上する。
(実施例及び試験例)
下水汚泥焼却灰として、高分子凝集剤を添加後脱水した汚泥を、流動床型焼却炉にて焼却したものを使用した。
ニーダー(KDAJ−200型:不二パウダル社製)を用いて、当該下水汚泥焼却灰(乾燥灰)100質量部(30kg)に対して、水道水を30質量部(9kg)添加して、混錬した後、11Nの塩酸(和光純薬 製品コード085−01077)を20質量部(6kg)添加し、十分に混練して酸処理を施した。
該送出混錬物を直ちに造粒機(F−5−S/11−175D型:不二パウダル社製)により造粒し(φ3mm、長さ10mm程度)、該造粒物を風乾工程に供した。
ここで、静置日数と、風乾処理物中の塩素濃度または水分量との関係を表1及び図3、表2及び図4に示す。
なお、表1中、中和処理直後(風乾処理直前)の灰中に含まれる塩素を100として、各風乾日数と残留塩素の含有率を相対評価で表した。
具体的には、まず、風乾処理物は密閉容器内に入れ、キャリアガスとして空気を流しながら、マントルヒーターにより150℃に加熱し、発生した水蒸気および塩化水素ガスを0.1質量%水酸化ナトリウム水溶液に吸収させ、その吸収液中の塩素濃度を電位差滴定(三菱化学社製 自動滴定装置GT−100)により測定し、風乾処理物中の残留塩酸濃度を算出した。
また風乾処理を4日実施すると、含水率も、風乾処理を開始する中和処理直後の含水率22.7%から14.2%に減少することがわかる。
なお、含水率は、乾燥前の試料質量と105℃で2時間乾燥後の試料質量とを測定し、(乾燥前の質量−乾燥後の質量)/(乾燥前の質量)に対する百分率で表される値である。
各多孔質粉体の含水率は、全て0質量%であった。
含水量が0%となるまでの上記乾燥工程(温度105℃)における乾燥時間は、上記風乾処理を経ていないものは5時間、上記風乾処理を1日実施したものは4時間、上記風乾処理を4日実施したものは3.5時間、上記風乾処理を7日実施したものは3時間であった。
これより、風乾処理を実施したもののほうが、乾燥工程時間が短くなり、乾燥工程の省力化ができたことが確認され、更に、乾燥装置の腐食も少ないことが明らかとなった。
シャーレに入れた各多孔質粉体試料10gを、恒温恒湿器(エスペック社製 LHL−113)内に静置して行った。
具体的には、恒温恒湿器を20℃、50%RHに設定し、水分吸着量がほぼ平衡に達する24時間後の質量(事前調湿)Aを測定した。
該2サイクル目の吸湿時試料質量Bと放湿時試料質量Cを秤量して、吸放湿量(%)を以下の式により求めた。
吸放湿量(%)=(B−C)/A×100
但し、最初に試料を20℃の恒温室において相対湿度50%の環境を設定して24時間静置した事前調湿後の試料の質量を質量変化率100%として表して、各吸湿過程及び放出過程における各試料の質量の変化率で表示した。
Claims (3)
- 汚泥焼却灰を塩酸水溶液と接触させることによる酸処理工程、粉体中和剤による中和処理工程、次いで該中和処理後の該焼却灰を常温常圧の大気中で1〜7日間静置して残留する前記酸を蒸発させる風乾処理工程を行い、該風乾処理工程を経た後に90〜300℃で乾燥処理工程を実施することを特徴とする、多孔質粉体の製造方法。
- 請求項1記載の多孔質粉体の製造方法において、前記中和処理工程後、該処理物を成形する工程を備えることを特徴とする、多孔質粉体の製造方法。
- 請求項1または2記載の多孔質粉体の製造方法において、汚泥焼却灰は5〜40質量%の水分を含むことを特徴とする、多孔質粉体の製造方法。
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