特許文献4に示すリニアモータでは、電機子コアに螺子等が貫通する貫通孔を形成している。そして、固定子に対して移動自在な可動ステージに電機子コアを該貫通孔を貫通する螺子等により固定している。しかしながら、特許文献4に示すリニアモータの電機子コアは、複数枚の所定形状の鋼板が可動子の移動方向に積層されて構成されている。そのため、特許文献4に示すリニアモータでは、複数枚の鋼板を積層した後に、鋼板の積層方向と直交する方向に貫通孔を切削等により形成しなければならず、電機子コアの製造が面倒であった。また、特許文献4に示すリニアモータの電機子コアは、隣接する2つの磁極部の間隔(スロットピッチ)に寸法誤差が生じやすくなる。
本発明の目的は、電機子コアに螺子等が貫通する貫通孔を切削等により形成する必要がなく、電機子コアを容易に製造できるリニアモータを提供することにある。
本発明の他の目的は、隣接する2つの磁極部の間隔(スロットピッチ)の寸法誤差を小さくできるリニアモータを提供することにある。
本発明の他の目的は、磁極部の厚み寸法を小さくしても、推力が低下するのを抑制できるリニアモータを提供することにある。
本発明の他の目的は、電機子コアから複数の巻線部の一部が突出しない、または突出する寸法を小さくすることができるリニアモータを提供することにある。
本発明の他の目的は、コギング力を小さくできるリニアモータを提供することにある。
本発明は、固定子と可動子とを有するリニアモータを改良の対象にする。本発明では、複数の永久磁石が列を成すように配置されて構成された磁極列と、電機子コアと複数の巻線部とを備える電機子とを具備している。電機子コアは、巻線が巻装される複数の第1の磁極部と巻線が巻装されない複数の第2の磁極部とを有している。第1の磁極部と第2の磁極部とは、それぞれ固定子と可動子とが対向する対向方向に延び且つ第2の磁極部が可動子の移動方向の両端に位置するように移動方向に所定の間隔をあけて交互に配置されている。複数の巻線部は、複数の第1の磁極部に巻線が巻装されて構成されている。
複数の第1の磁極部は、巻線が巻装される巻線巻装部と、巻線巻装部の両端部に一体に設けられて巻線が巻装されることのない非巻装部と、非巻装部と連結されて磁極列と対向する磁極面形成部とをそれぞれ有している。
複数の第2の磁極部は、隣り合う1以上の第1の磁極部の巻線部に対応する磁極中心部と、磁極中心部の両端に一体に設けられて隣り合う1以上の第1の磁極部の非巻装部に対応する磁極端部と、磁極端部と一体に構成されて磁極列と対向する磁極面形成部とをそれぞれ有している。
隣接する第1の磁極部の磁極面形成部と第2の磁極部の磁極面形成部とは連結部によって連結されている。複数の第1の磁極部の磁極面形成部、複数の第2の磁極部及び連結部は一体に形成されている。複数の第1の磁極部の磁極面形成部の移動方向及び対向方向と直交する直交方向の寸法は、複数の第2の磁極部の直交方向の寸法に等しい。第1の磁極部の巻線巻装部の直交方向の両端面が、第2の磁極部の直交方向の両端面よりも内側に下がっている。電機子コアから複数の第1の磁極部の巻線巻装部及び非巻装部を除いた電機子コアの主要部分が、複数枚の同一所定形状の鋼板を前記直交方向に積層して一体に構成されている。そして、固定子が磁極列及び電機子の一方を備えており、可動子が磁極列及び電機子の他方を備えている。
本発明のリニアモータでは、電機子コアの主要部分の直交方向(可動子の移動方向と、固定子と可動子とが対向する対向方向とに直交する方向)から見た断面が同一形状になる。そのため、電機子コアの主要部分を、複数枚の同一所定形状の鋼板を直交方向に積層して一体に構成することができる。その結果、複数枚の鋼板に螺子等が貫通する貫通孔を形成しておけば、複数枚の鋼板を積層した後に、貫通孔を切削等により形成する必要がなく、電機子コアを容易に製造できる。また、隣接する第1の磁極部と第2の磁極部の間隔(スロットピッチ)を一定にでき、スロットピッチの寸法誤差を小さくできる。
また、本発明のリニアモータでは、複数の第1の磁極部の磁極面形成部の直交方向の寸法が複数の第2の磁極部の直交方向の寸法に等しく、第1の磁極部の巻線巻装部の直交方向の両端面が、第2の磁極部の直交方向の両端面よりも内側に下がっている。そのため、第1の磁極部の磁極面形成部の直交方向の寸法を大きくすることにより、複数の第1の磁極部と磁極列との間を流れる磁束の数が減少しない。そのため、推力が低下するのを抑制することができる。また、第1の磁極部の巻線巻装部の直交方向の両端面が、第2の磁極部の直交方向の両端面よりも内側に下がっているので、電機子コアから複数の巻線部の一部が突出しない、または突出する寸法を小さくすることができる。
また、本発明のリニアモータでは、隣接する第1の磁極部の磁極面形成部と第2の磁極部の磁極面形成部とは連結部によって連結されている。そのため、本発明のリニアモータは、スロットがオープンレスとなり、コギング力を小さくできる。
本発明のリニアモータは、種々のタイプのリニアモータに適用できる。例えば、2つの磁極列と該2つの磁極列の間に配置された電機子とを備えるリニアモータは、下記のように構成すればよい。
複数の第1の磁極部は、巻線が巻装される巻線巻装部と、巻線巻装部の両端部に一体に設けられて巻線が巻装されることのない一対の非巻装部と、一対の非巻装部とそれぞれ連結されて2つの磁極列と対向する一対の磁極面形成部とをそれぞれ有している。複数の第2の磁極部は、隣り合う1以上の第1の磁極部の巻線部に対応する磁極中心部と、磁極中心部の両端に一体に設けられて隣り合う1以上の第1の磁極部の一対の非巻装部に対応する一対の磁極端部と、一対の磁極端部と一体に構成されて2つの磁極列と対向する一対の磁極面形成部とをそれぞれ有している。
1つの磁極列と対向する隣接する第1の磁極部の磁極面形成部と第2の磁極部の磁極面形成部とは連結部によって連結されている。他の1つの磁極列と対向する隣接する第1の磁極部の磁極面形成部と第2の磁極部の磁極面形成部とは連結部によって連結されている。
1つの磁極列と対向する複数の第1の磁極部の磁極面形成部、複数の第2の磁極部及び連結部並びに他の1つの磁極列と対向する複数の第1の磁極部の磁極面形成部、複数の第2の磁極部及び連結部は一体に形成されている。複数の第1の磁極部の磁極面形成部の移動方向及び対向方向と直交する直交方向の寸法が複数の第2の磁極部の直交方向の寸法に等しい。
第1の磁極部の巻線巻装部の直交方向の両端面が、第2の磁極部の直交方向の両端面よりも内側に下がっている。電機子コアから複数の第1の磁極部の巻線巻装部及び非巻装部を除いた電機子コアの主要部分は、複数枚の同一所定形状の鋼板が前記直交方向に積層されて一体に構成されている。そして、固定子が2つの磁極列及び電機子の一方を備えており、可動子が2つの磁極列及び電機子の他方を備えている。
このようにすれば、隣接する第1の磁極部の磁極面形成部と第2の磁極部の磁極面形成部とを連結部によって連結することにより、大きなヨークを用いることなく、複数枚の同一所定形状の鋼板を直交方向に積層して電機子コアの主要部分を一体に構成できるリニアモータを得ることができる。
このようなリニアモータでは、固定子が2つの磁極列を備え、可動子が電機子を備えるように構成することができる。そして、電機子コアの主要部分の直交方向の端部に、固定子に対して移動自在な可動ステージを取り付ることができる。その場合、電機子コアの主要部分と可動ステージとを固定する螺子が直交方向に貫通する貫通孔を複数の第2の磁極部にそれぞれ形成する。このようにすれば、複数の第2の磁極部の貫通孔に螺子等を貫通
して、電機子コアの主要部分と可動ステージとをしっかりと固定することができる。
複数の第1の磁極部の一対の非巻装部の形状と、一対の非巻装部に連結される一対の磁極面形成部の形状とは、一対の非巻装部と一対の磁極面形成部とを直交方向に相対的に移動させることにより、一対の非巻装部と一対の磁極面形成部とが嵌合されるように形成することができる。この場合、複数の第1の磁極部の巻線巻装部及び一対の非巻装部からなる磁極主部は、複数枚の所定形状の鋼板を直交方向に積層して構成すればよい。このようにすれば、複数の第1の磁極部の一対の非巻装部と一対の磁極面形成部とを単純な嵌合構造に形成することで、複数の第1の磁極部を電機子コアの主要部に容易に固定することができる。
第1の磁極部の一対の非巻装部の直交方向の両端面は、第1の磁極部の巻線巻装部の直交方向の両端面より外側に出ており、複数の第1の磁極部の巻線巻装部及び一対の非巻装部からなる磁極主部は、複数枚の所定形状の鋼板を移動方向に積層して構成するのが好ましい。このようにすれば、一対の非巻装部の直交方向の寸法を大きくすることにより、複数の第1の磁極部と磁極列との間を流れる磁束が一対の非巻装部の中を流れやすくなる。そのため、推力が低下するのを効果的に抑制することができる。
一対の非巻装部の両端面は、一対の磁極面形成部から巻線巻装部に向かうにしたがって、直交方向の寸法が小さくなるようにそれぞれ傾斜させるのが好ましい。このようにすれば、第1の磁極部の重量を軽減できる。なお、一対の非巻装部の両端面の巻線巻装部近傍は磁束が流れにくいので、磁束が流れが妨げられることはない。
電機子コアの主要部分と可動ステージとを固定する螺子が貫通する貫通孔を一対の磁極端部にそれぞれ形成する場合には、第2の磁極部の一対の磁極端部は、磁極端部を直交方向が垂線となるように切断したときの、磁極端部の切断面の形状が磁極中心部よりも移動方向の両側に膨出する形状にするのが好ましい。このようにすれば、一対の磁極端部の断面積を大きくでき、貫通孔を一対の磁極端部にそれぞれ形成しても、一対の磁極端部の機械的強度を維持できる。
この場合、複数の第1の磁極部の巻線巻装部を対向方向が垂線となるように切断したときの切断面の断面積と、複数の第2の磁極部の磁極中心部を対向方向が垂線となるように切断したときの切断面の断面積とを等しくするのが好ましい。このようにすれば、複数の第1の磁極部の巻線巻装部と複数の第2の磁極部の磁極中心部との磁気抵抗を等しくでき、推力の低下を防止できる。
さらに、第1の磁極部の一対の非巻装部における移動方向に沿って測った幅寸法と、第2の磁極部の一対の磁極端部の2つの磁極列とそれぞれ対向する部分における移動方向の寸法とを等しくするのが好ましい。このようにすれば、第1の磁極部の推力作用面と第2の磁極部の推力作用面とにおける磁気抵抗の変化の周期性を維持でき、コギングを小さくできる。
第1の磁極部の一対の磁極面形成部は、第1の磁極部の一対の非巻装部側に突出して、非巻装部と当接する凸部とをそれぞれ有するように形成できる。この場合、凸部は、一対の非巻装部に向かうにしたがって移動方向に沿って測った幅寸法が徐々に大きくなるように形成するのが好ましい。そして、一対の磁極端部の2つの磁極列とそれぞれ対向する部分における移動方向に沿って測った幅寸法と、凸部の基部の移動方向に沿って測った幅寸法とを等しくする。また、複数の第1の磁極部の巻線巻装部及び一対の非巻装部からなる磁極主部は、複数枚の所定形状の鋼板を直交方向に積層して構成する。このようにすれば、第1の磁極部の一対の磁極面形成部と一対の非巻装部との接合面積を大きくできる。また、一対の磁極面形成部の凸部と、第1の磁極部の磁極面形成部と第2の磁極部の磁極面形成部とを連結する連結部との間に空隙が形成されるため、第1の磁極部と電機子コアの主要部との間に合成樹脂等を充填した場合、空隙部に合成樹脂等が入り込む。そのため、第1の磁極部の一対の磁極面形成部と一対の非巻装部との結合強度を高めることができる。また、一対の磁極端部の2つの磁極列と対向する部分における移動方向に沿って測った幅寸法と凸部の基部の移動方向に沿って測った幅寸法とが等しいので、第1の磁極部の推力作用面と第2の磁極部の推力作用面とにおける磁気抵抗の変化の周期性を維持でき、コギングを小さくできる。
電機子コアは、複数の電機子コア分割体によって構成し、複数の電機子コア分割体は移動方向に並び且つ隣り合う二つの電機子コア分割体を嵌合構造により連結することができる。このようにすれば、電機子コア分割体を適宜に組み合わせることにより、所望の磁極部数の電機子を得ることができる。
本発明のリニアモータを1つの磁極列と該1つの磁極列に対向する電機子とを備えるリニアモータに適応する場合は、下記のように構成すればよい。
電機子は、電機子コアと複数の巻線部とを備えている。電機子コアは、可動子の移動方向に延びるヨークとヨークから磁極列側に延びて巻線が巻装される複数の第1の磁極部とヨークから磁極列側に延びて巻線が巻装されない複数の第2の磁極部とを有している。第1の磁極部と第2の磁極部とは、それぞれ固定子と可動子とが対向する対向方向に延び且つ第2の磁極部が可動子の移動方向の両端に位置するように移動方向に所定の間隔をあけて交互に配置されている。複数の巻線部は、複数の第1の磁極部に巻線が巻装されて構成されている。
複数の第1の磁極部は、巻線が巻装される巻線巻装部と、巻線巻装部に一体に設けられて巻線が巻装されることのない一対の非巻装部と、一対の非巻装部の磁極列側に位置する磁極列側非巻装部と連結されて磁極列と対向する磁極面形成部とを有している。
複数の第2の磁極部は、隣り合う1以上の第1の磁極部の巻線部に対応する磁極中心部と、磁極中心部の両端に一体に設けられて隣り合う1以上の第1の磁極部の一対の非巻装部に対応する一対の磁極端部と、一対の磁極端部の磁極列側に位置する磁極列側磁極端部と一体に構成されて磁極列と対向する磁極面形成部とをそれぞれ有している。
磁極列と対向する隣接する第1の磁極部の磁極面形成部と第2の磁極部の磁極面形成部とは連結部によって連結されている。磁極列と対向する複数の第1の磁極部の磁極面形成部、複数の第2の磁極部及び連結部は一体に形成されている。複数の第1の磁極部の磁極面形成部の移動方向及び対向方向と直交する直交方向の寸法は、複数の第2の磁極部の直交方向の寸法に等しい。第1の磁極部の巻線巻装部の直交方向の両端面は、第2の磁極部の直交方向の両端面よりも内側に下がっている。電機子コアから複数の第1の磁極部の巻線巻装部及び非巻装部を除いた電機子コアの主要部分は、複数枚の同一所定形状の鋼板が直交方向に積層されて一体に構成されている。そして、固定子が磁極列及び電機子の一方を備えており、可動子が磁極列及び電機子の他方を備えている。
このようにすれば、隣接する第1の磁極部の磁極面形成部と第2の磁極部の磁極面形成部とが連結部によって連結されていることにより、複数枚の同一所定形状の鋼板を直交方向に積層して電機子コアの主要部分を一体に構成できるリニアモータを得ることができる。
このようなリニアモータでは、固定子が磁極列を備え、可動子が電機子を備えるように構成することができる。そして、電機子コアの主要部分の直交方向の端部に、固定子に対して移動自在な可動ステージを取り付ることができる。その場合、電機子コアの主要部分に電機子コアの主要部分と可動ステージとを固定する螺子が直交方向に貫通する貫通孔を電機子コアの主要部分に形成する。このようにすれば、電機子コアの主要部分の貫通孔に螺子等を貫通して、電機子コアの主要部分と可動ステージとをしっかりと固定することができる。
複数の第1の磁極部のそれぞれの一対の非巻装部のヨーク側に位置するヨーク側非巻装部の形状と、ヨークの形状とは、ヨーク側非巻装部とヨークとを直交方向に相対的に移動させることにより、ヨーク側非巻装部とヨークとが嵌合されるように形成することができる。さらに、複数の第1の磁極部のそれぞれの磁極列側非巻装部の形状と、磁極面形成部の形状とは、磁極列側非巻装部と磁極面形成部とを直交方向に相対的に移動させることにより、磁極列側非巻装部と磁極面形成部とが嵌合されるように形成することができる。この場合、複数の第1の磁極部の巻線巻装部及び一対の非巻装部からなる磁極主部は、複数枚の所定形状の鋼板を直交方向に積層して構成すればよい。このようにすれば、複数の第1の磁極部の非巻装部とヨーク及び磁極面形成部とを単純な嵌合構造に形成することで、複数の第1の磁極部を電機子コアの主要部に容易に固定することができる。
第1の磁極部の磁極列側非巻装部の直交方向の両端面が、第1の磁極部の巻線巻装部の直交方向の両端面より外側に出ており、複数の第1の磁極部の巻線巻装部及び一対の非巻装部からなる磁極主部を、移動方向に複数枚の所定形状の鋼板が積層されて構成するのが好ましい。このようにすれば、磁極列側非巻装部の直交方向の寸法を大きくすることにより、複数の第1の磁極部と磁極列との間を流れる磁束が磁極部側非巻装部の間を流れやすくなる。そのため、推力が低下するのを効果的に抑制することができる。
磁極列側非巻装部の両端面は、磁極面形成部から巻線巻装部に向かうにしたがって、直交方向の寸法が小さくなるようにそれぞれ傾斜させるのが好ましい。このようにすれば、第1の磁極部の重量を軽減できる。なお、磁極列側非巻装部の両端面の巻線巻装部近傍は磁束が流れにくいので、このような傾斜を形成しても磁束が流れが妨げられることはない。
電機子コアの主要部分と可動ステージとを固定する螺子が貫通する貫通孔を磁極列側磁極端部に形成する場合には、磁極列側磁極端部を直交方向が垂線となるように切断したときの、磁極列側磁極端部の切断面の形状が磁極中心部よりも移動方向の両側に膨出する形状を有しているのが好ましい。このようにすれば、磁極列側磁極端部の断面積を大きくでき、貫通孔を磁極列側磁極端部に形成しても、磁極列側磁極端部の機械的強度を維持できる。
この場合、複数の第1の磁極部のそれぞれの巻線巻装部を対向方向が垂線となるように切断したときの切断面の断面積と、複数の第2の磁極部のそれぞれの磁極中心部を対向方向が垂線となるように切断したときの切断面の断面積とを等しくするのが好ましい。このようにすれば、複数の第1の磁極部の巻線巻装部と複数の第2の磁極部の磁極中心部との磁気抵抗を等しくでき、推力の低下を防止できる。
さらに、複数の第1の磁極部のそれぞれの磁極列側非巻装部における移動方向に沿って測った幅寸法と、複数の第2の磁極部のそれぞれの磁極列側磁極端部の磁極列とそれぞれ対向する部分における移動方向に沿って測った幅寸法とを等しくするのが好ましい。このようにすれば、第1の磁極部の推力作用面と第2の磁極部の推力作用面とにおける磁気抵抗の変化の周期性を維持でき、コギングを小さくできる。
複数の第1の磁極部のそれぞれの磁極面形成部は、複数の第1の磁極部のそれぞれの磁極列側非巻装部側に突出して磁極列側非巻装部と当接する凸部を有するように形成できる。この場合、凸部は、磁極列側非巻装部に向かうにしたがって移動方向に沿って測った幅寸法が徐々に大きくなるように形成するのが好ましい。そして、磁極列側磁極端部の磁極列と対向する部分における移動方向に沿って測った幅寸法と凸部の基部の移動方向に沿って測った幅寸法とを等しくする。また、複数の第1の磁極部の巻線巻装部及び一対の非巻装部からなる磁極主部を複数枚の所定形状の鋼板を直交方向に積層して構成する。このようにすれば、第1の磁極部の磁極面形成部と磁極列側非巻装部との接合面積を大きくできる。また、磁極面形成部の凸部と、第1の磁極部の磁極面形成部と第2の磁極部の磁極面形成部とを連結する連結部との間に空隙が形成されるため、第1の磁極部と電機子コアの主要部との間に合成樹脂等を充填した場合、空隙部に合成樹脂等が入り込む。そのため、第1の磁極部の磁極面形成部と磁極列側非巻装部との結合強度を高めることができる。また、磁極列側磁極端部の磁極列と対向する部分における移動方向に沿って測った幅寸法と凸部の基部の移動方向に沿って測った幅寸法とが等しいので、第1の磁極部の推力作用面と第2の磁極部の推力作用面とにおける磁気抵抗の変化の周期性を維持でき、コギングを小さくできる。
電機子コアは、複数の電機子コア分割体によって構成し、複数の電機子コア分割体は移動方向に並び且つ隣り合う二つの電機子コア分割体を嵌合構造により連結することができる。このようにすれば、電機子コア分割体を適宜に組み合わせることにより、所望の磁極部数の電機子を得ることができる。
本発明のリニアモータでは、電機子コアの主要部分の直交方向(可動子の移動方向と固定子と可動子とが対向する対向方向とに直交する方向)から見た断面が同一形状になる。そのため、電機子コアの主要部分を、複数枚の同一所定形状の鋼板を直交方向に積層して一体に構成することができる。その結果、複数枚の鋼板に螺子等が貫通する貫通孔を形成しておけば、複数枚の鋼板を積層した後に、貫通孔を切削等により形成する必要がなく、電機子コアを容易に製造できる。また、隣接する第1の磁極部と第2の磁極部の間隔(スロットピッチ)を一定にでき、スロットピッチの寸法誤差を小さくできる。
また、本発明のリニアモータでは、複数の第1の磁極部の磁極面形成部の直交方向の寸法が複数の第2の磁極部の直交方向の寸法に等しく、第1の磁極部の巻線巻装部の直交方向の両端面が、第2の磁極部の直交方向の両端面よりも内側に下がっている。そのため、第1の磁極部の磁極面形成部の直交方向の寸法を大きくすることにより、複数の第1の磁極部と磁極列との間を流れる磁束の数が減少しない。そのため、推力が低下するのを抑制することができる。また、第1の磁極部の巻線巻装部の直交方向の両端面が、第2の磁極部の直交方向の両端面よりも内側に下がっているので、電機子コアから複数の巻線部の一部が突出しない、または突出する寸法を小さくすることができる。
また、本発明のリニアモータでは、隣接する第1の磁極部の磁極面形成部と第2の磁極部の磁極面形成部とは連結部によって連結されている。そのため、本発明のリニアモータは、スロットがオープンレスとなり、コギング力を小さくできる。
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態のリニアモータの斜視図である。図1に示すように、本例のリニアモータは、固定子1と可動子3とを具備している。固定子1は、2つのベース5上に2つの磁極列7A,7Bをそれぞれ備えた構造を有している。磁極列7A,7Bは、複数のN極の永久磁石7aと複数のS極の永久磁石7bとが交互に並ぶように配置されてそれぞれ構成されている。2つの磁極列7A,7Bは、永久磁石7aと永久磁石7bとが対向するように並んで配置されている。
可動子3は、図2の分解斜視図に示すように、固定子1に対して移動自在な可動ステージ9に電機子10が固定された構造を有しており、電機子10が2つの磁極列7A,7Bの間に位置するように配置されている。
可動ステージ9は、ステージ本体11と取付板13と2つのスライダ15とを有している。ステージ本体11は、矩形の板形状を有しており、厚み方向に貫通する8つの貫通孔11aが形成されている。取付板13には、8つのステージ本体取付用螺子孔13aと8つの電機子取付用螺子孔13bとが形成されている。ステージ本体11と取付板13とは、貫通孔11aを貫通し、ステージ本体取付用螺子孔13aに螺合する螺子により相互に固定されている。取付板13には、後述する方法により、螺子39により、電機子10が固定されている。図1に示すように、可動ステージ9は、2つのベース5の両側に配置された2つのレール17に摺動可能に支持されている。本例では、ステージ本体11に設けた2つのスライダ15をレール17の上方に配置している。これにより、電機子10は、2つの磁極列7A,7Bが延びる方向に往復運動を行なう。このため、2つの磁極列7A,7Bが延びる方向が可動子3の移動方向D1になる。
図2に示すように、電機子10は、電機子コア18と3つの巻線部31とを有している。電機子コア18は、3つの第1の磁極部20A〜20Cと4つの第2の磁極部25A〜25Dと有している。本例では、電機子10は、電機子コア主要部分19と3つの第1の磁極構成部分21A〜21Cと閉塞部分23とを有している。主要部分19は、4つの第2の磁極部25A〜25Dと6つの磁極連結体27とを有しており、移動方向D1と、固定子と可動子とが対向する対向方向D2とに直交する直交方向D3(図1参照)に複数枚の所定形状の鋼板が積層されて構成されている。第2の磁極部25A〜25Dは、巻線が巻装されない磁極部を構成している。4つの第2の磁極部25A〜25Dは、対向方向D2に延び且つ移動方向D1に間隔をあけて配置されている。4つの第2の磁極部25A〜25Dの内、両端に位置する第2の磁極部25A,25Dは、移動方向D1の外側に向かうにしたがって、対向方向D2の寸法が小さくなる形状を有している。図3(可動ステージ9を除いた可動子3の平面図)において、第2の磁極部25A及び25Bに符号を付して説明すると、第2の磁極部25A〜25Dは、後述する隣り合う第1の磁極部(20A〜20C)の巻線部31に対応する磁極中心部25aと、磁極中心部25aの両端に一体に設けられて隣り合う第1の磁極部(20A〜20C)の非巻装部29bにそれぞれ対応する一対の磁極端部25bと、一対の磁極端部25bと一体に構成されて2つの磁極列7A,7Bと対向する一対の磁極面形成部25cとをそれぞれ有している。第2の磁極部25A〜25Dの一対の磁極面形成部25c近傍には、直交方向D3に貫通する貫通孔25dが形成されている。
6つの磁極連結体27は、第2の磁極部25A〜25Dの隣接する2つの第2の磁極部の両端をそれぞれ連結している。図4の部分拡大図に示すように、相互に対向する一対の磁極連結体27の一つの磁極連結体27は、第1の磁極部20A〜20Cの磁極面形成部27aと2つの連結部27bとをそれぞれ有している。磁極面形成部27aの第1の磁極構成部分21側の面は、2つの連結部27bの第1の磁極構成部分21側の面より第1の磁極構成部分21側に突出している。また、磁極面形成部27aは、第1の磁極構成部分21側に突出して直交方向D3に延びる嵌合突出部27cを有している。2つの連結部27bのそれぞれは、隣接する第1の磁極部(20A〜20C)の磁極面形成部27aと第2の磁極部の磁極面形成部25cとを連結している。
図2に示す磁極構成部分21Aに符号を付して説明すると、3つの第1の磁極構成部分21A〜21Cは、磁極主部29と巻線部31とをそれぞれ有している。磁極主部29は、複数枚の所定形状の鋼板が直交方向D3(主要部分19の鋼板が積層される直交方向D3と同じ方向)に積層されて構成されている。磁極主部29は、巻線が巻装される巻線巻装部29aと、巻線巻装部の両端部に一体に設けられて巻線が巻装されることのない一対の非巻装部29bとを有している。第1の磁極構成部分21A〜21Cの巻線巻装部29aの直交方向D3の両端面は、第2の磁極部25A〜25Dの直交方向D3の両端面よりも内側に下がっている。即ち、第1の磁極構成部分21A〜21Cの巻線巻装部29aの直交方向D3の寸法L1は、第2の磁極部25A〜25Dの直交方向D3の寸法L2より小さくなっている。一対の非巻装部29bの端部には、一対の磁極面形成部27a側に開口し、直交方向D3に延びる嵌合凹部29cがそれぞれ形成されている。一対の非巻装部29bと一対の磁極面形成部27aとを直交方向D3に相対的に移動して、主要部分19の嵌合突出部27cを嵌合凹部29cに嵌合し、主要部分19と第1の磁極構成部分21A〜21Cとの間の空隙部に合成樹脂30を充填することにより、3つの第1の磁極構成部分21A〜21Cは、主要部分19に固定される。これにより、3つの第1の磁極構成部分21A〜21Cのそれそれの磁極主部29と一対の磁極面形成部27aとにより、第1の磁極部(20A〜20C)が構成される。また、巻線が巻装される3つの第1の磁極部20A〜20Cと巻線が巻装されない4つの第2の磁極部25A〜25Dとが、第2の磁極部25A,25Dが可動子3の移動方向D1の両端に位置するように移動方向D1に所定の間隔をあけて交互に配置される。また、本例では、主要部分19と第1の磁極構成部分21A〜21Cのそれぞれの磁極主部29とにより電機子コアが構成されている。
巻線部31は、磁極主部29の巻線巻装部29aに巻装されている。本例では、第1の磁極構成部分21A〜21Cのそれぞれの巻線部31にU相、V相、W相の電流が流れている。
閉塞部分23は、電機子10の可動ステージ9が固定された端部と反対側の端部に固定されている。閉塞部分23は、底板部33と底板部33の縁から立ち上がる側壁部35と側壁部35から延びる8つのリブ部37とを有している。8つのリブ部37には、電機子10の貫通孔25dに連通する8つの貫通孔37aがそれぞれ形成されている。閉塞部分23の貫通孔37a及び電機子10の貫通孔25dを貫通して可動ステージ9の取付板13の電機子取付用螺子孔13bに螺合される螺子39により、電機子10は可動ステージ9の取付板13に固定されている。また、閉塞部分23には、底板部33と側壁部35と8つのリブ部37とに囲まれた凹部23aが形成されており、側壁部35には、切欠孔35aが形成されている。凹部23aには、切欠孔35aから導入されて、3つの巻線部31にそれぞれ接続される導電線41が配置されている。そして、導電線41が配置された状態で、凹部23aには合成樹脂30が充填されている。
本例のリニアモータでは、電機子コアの主要部分19の直交方向D3から見た断面が同一形状になる。そのため、主要部分19を、複数枚の同一所定形状の鋼板を直交方向D3に積層して一体に構成することができる。その結果、複数枚の鋼板に螺子39が貫通する貫通孔25dを形成することにより、複数枚の鋼板を積層した後に、貫通孔を切削等により形成する必要がなく、電機子コアを容易に製造できる。また、隣接する第1の磁極構成部分(21A〜21C)と第2の磁極部(25A〜25D)との間隔(スロットピッチ)を一定にでき、スロットピッチの寸法誤差を小さくできる。また、第1の磁極部(20A〜20C)の磁極面形成部27aの直交方向D3の寸法が第2の磁極部(25A〜25D)の直交方向D3の寸法に等しく、第1の磁極構成部分21A〜21Cの巻線巻装部29aの直交方向D3の両端面は、第2の磁極部25A〜25Dの直交方向D3の両端面よりも内側に下がっている。即ち、第1の磁極構成部分21A〜21Cの巻線巻装部29aの直交方向D3の寸法L1は、第2の磁極部25A〜25Dの直交方向D3の寸法L2より小さい。そのため、図5(図3のIV-IV線断面図)に示すように、第1の磁極部20A〜20Cの磁極面形成部27aの直交方向D3の寸法を大きくすることにより、第1の磁極部20A〜20Cと2つの磁極列7A,7Bとの間を流れる磁束Mの数が減少しない。そのため、リニアモータの推力が低下するのを抑制することができる。また、第1の磁極構成部分21A〜21Cの巻線巻装部29aの直交方向D3の両端面は、第2の磁極部25A〜25Dの直交方向D3の両端面よりも内側に下がっているので、電機子コアから巻線部31の一部が突出しない、または突出する寸法を小さくすることができる。
図6は、本発明の第2の実施の形態のリニアモータに用いる可動子103の分解斜視図である。なお、図6は理解を容易にするため、上下方向(直交方向D3)を逆にした状態で描いている。本例のリニアモータは、電機子110と可動ステージ109の取付板113と閉塞部分123とを除いて、第1の実施の形態のリニアモータと同じ構造を有している。本例のリニアモータの可動ステージ109の取付板113には、8つのステージ本体取付用螺子孔113aと8つの電機子取付用螺子孔113bとが形成されている。取付板113の中央には、可動子103の移動方向D1に延びて電機子110側に開口する溝部113cが形成されている。
電機子コアの主要部分119は、4つの第2の磁極部125A〜125Dと6つの磁極連結体127とを有しており、移動方向D1と、固定子と可動子とが対向する対向方向D2とに直交する直交方向D3に複数枚の同一所定形状の鋼板が積層されて一体に構成されている。4つの第2の磁極部125A〜125Dの内、両端に位置する第2の磁極部125A,125Dは、移動方向D1の外側に向かうにしたがって、対向方向D2の寸法が小さくなる形状を有している。第2の磁極部125A,125Dの内、一方の第2の磁極部125Aの移動方向D1の外側部分には、直交方向D3に貫通する2つの空洞部125gが形成されている。また、他方の第2の磁極部125Dには、移動方向D1の外側と直交方向D3の両側とに開口して取付板113の溝部113cに連通する凹部125eが形成されている。第2の磁極部125Dの凹部125eの移動方向D1側の開口部の両側には、直交方向D3に延びる一対の溝125fがそれぞれ形成されている。一対の溝125fには、遮蔽板126の縁部が嵌合されている。遮蔽板126は、凹部125eの移動方向D1側の開口部を遮蔽する形状及び寸法を有しており、中央に後述する導電線141が導入される貫通孔126aが形成されている。可動ステージを除いた可動子103の図7の平面図において、第2の磁極部125A及び125Bに符号を付して説明すると、第2の磁極部125A〜125Dは、後述する第1の磁極構成部分121の巻線部131にそれぞれ隣接する磁極中心部125aと、第1の磁極構成部分121の一対の非巻装部129bにそれぞれ隣接する一対の磁極端部125bと、一対の磁極端部125bと一体に構成されて2つの磁極列と対向する一対の磁極面形成部125cとをそれぞれ有している。一対の磁極端部125bの移動方向D1及び対向方向D2に切断した断面は、移動方向D1の両側に膨出する形状を有している。そして、一対の磁極端部125bには、直交方向D3に貫通する貫通孔125dがそれぞれ形成されている。
6つの磁極連結体127は、第2の磁極部125A〜125Dの隣接する2つの第2の磁極部の両端をそれぞれ連結している。相互に対向する一対の磁極連結体127の一つの磁極連結体127は、第1の磁極部120A〜120Cの磁極面形成部127aと2つの連結部127bとを有している。磁極面形成部127aの第1の磁極構成部分121側の面は、2つの連結部127bの第1の磁極構成部分121側の面より第1の磁極構成部分121側に突出している。2つの連結部127bのそれぞれは、隣接する第1の磁極部(120A〜120C)の磁極面形成部127aと第2の磁極部の磁極面形成部125cとを連結している。
図6に示す磁極構成部分121Aに符号を付して説明すると、3つの第1の磁極構成部分121A〜121Cは、磁極主部129と巻線部131とをそれぞれ有している。磁極主部129は、複数枚の所定形状の鋼板が移動方向D1(主要部分119の鋼板が積層される直交方向D3と直交する方向)に積層されて構成されている。また、磁極主部129は、巻線が巻装される巻線巻装部129aと、巻線巻装部の両端部に一体に設けられて巻線が巻装されることのない一対の非巻装部129bとを有している。第1の磁極構成部分121A〜121Cの巻線巻装部129aの直交方向D3の両端面は、第2の磁極部125A〜125Dの直交方向D3の両端面よりも内側に下がっている。また、第1の磁極部120A〜120Cの一対の非巻装部129bの直交方向D3の両端面は、第1の磁極部120A〜120Cの巻線巻装部129aの直交方向の両端面D3より外側に出ている。そして、第1の磁極部120A〜120Cの一対の非巻装部129bの直交方向D3の寸法L3は、第2の磁極部125A〜125Dの直交方向D3のlL4と等しくなっている。このため、第1の磁極構成部分121A〜121Cの磁極主部129は、図8に示すように、移動方向D1から見た形状がH形の形状を有している。また、一対の非巻装部129bの両端面129dは、巻線巻装部129aから対向方向D2の外側に向かうにしたがって、直交方向D3の寸法が大きくなるように傾斜している。言い換えるならば、一対の非巻装部129bの両端面129dは、一対の磁極面形成部127aから巻線巻装部129aに向かうにしたがって、直交方向D3の寸法が小さくなるようにそれぞれ傾斜している。そして、図7に示すように、一対の非巻装部129bと相互に対向する一対の磁極面形成部127aとが当接し、主要部分119と第1の磁極構成部分121A〜121Cとの間の空隙部に合成樹脂130が充填されることにより、3つの第1の磁極構成部分121A〜121Cは、主要部分119に固定される。これにより、3つの第1の磁極構成部分121A〜121Cのそれそれの磁極主部129と一対の磁極面形成部127aとにより、第1の磁極部120A〜120Cが構成される。また、巻線が巻装される3つの第1の磁極部120A〜120Cと巻線が巻装されない4つの第2の磁極部125A〜125Dとが、第2の磁極部125A,125Dが可動子103の移動方向D1の両端に位置するように移動方向D1に所定の間隔をあけて交互に配置される。
巻線部131は、磁極主部129の巻線巻装部129aに巻装されている。本例も、第1の実施の形態と同様に、第1の磁極構成部分121A〜121Cのそれぞれの巻線部131にU相、V相、W相の電流が流れている。
閉塞部分123は、板形状を有しており、電機子110の貫通孔125dに連通する8つの貫通孔137aが形成されている。
本例のリニアモータでは、図9に示すように、第2の磁極部125Dの凹部125eと取付板113の溝部113cとに、遮蔽板126の貫通孔126aから導入されて、3つの巻線部31にそれぞれ接続される導電線141が配置されている。そして、凹部125e及び溝部113c内に合成樹脂130が充填されている。
本例のリニアモータによれば、図10に示すように、第1の磁極部120A〜120Cの一対の非巻装部129bの直交方向D3の両端面は、第1の磁極部120A〜120Cの巻線巻装部129aの直交方向D3の両端面より外側に出ているので、第1の磁極部120A〜120Cと磁極列との間を流れる磁束Mが一対の非巻装部129bの間を流れやすくなる。そのため、推力が低下するのを効果的に抑制することができる。また、一対の磁極端部125bの移動方向D1及び対向方向D2に切断した断面は、移動方向D1の両側に膨出する形状を有しているので、一対の磁極端部125bの断面積を大きくでき、貫通孔125dを一対の磁極端部125bにそれぞれ形成しても、一対の磁極端部125bの機械的強度を維持できる。
図11は、本発明の第3の実施の形態のリニアモータの可動ステージを除いた平面図である。本例のリニアモータでは、電機子コアが移動方向D1に嵌合構造により連結された4つの電機子コア分割体212A〜212Dから構成されている。そして、1つの電機子コア分割体(212A〜212D)は、主要部分219を除いて、第2の実施の形態のリニアモータの電機子110と同じ構造を有している。なお、図11では、可動ステージを除いた状態で描いている。また、4つの電機子コア分割体212A〜212Dの内、移動方向D1の両端に位置する電機子コア分割体212A,212Dと移動方向D1の内部に位置する電機子コア分割体212B,212Cとは、連結していない状態で描いており、電機子コア分割体212Bと電機子コア分割体212Cとは、連結した状態で描いている。移動方向D1の両端部に位置する電機子コア分割体212Aと電機子コア分割体212Dとは、同じ構造を有している。図12の電機子コア分割体212Aに符号を付して説明すると、電機子コア分割体212A,212Dは、電機子コアの主要部分219と3つの第1の磁極構成部分221A〜221Cと図示しない閉塞部分とを有している。主要部分219は、3つの第2の磁極部225A〜225Cと1つの第2の磁極部半部226と6つの磁極連結体227とを有しており、直交方向D3に複数枚の同一所定形状の鋼板が積層されて構成されている。3つの第2の磁極部225A〜225Cの内、端部に位置する第2の磁極部225Aは、移動方向D1の外側に向かうにしたがって、対向方向D2の寸法が小さくなる形状を有している。図12において、第2の磁極部225A及び225Bに符号を付して説明すると、第2の磁極部225A〜225Cは、後述する隣り合う第1の磁極部(220A〜220C)の巻線部231に対応する磁極中心部225aと、磁極中心部225aの両端に一体に設けられて隣り合う第1の磁極部(220A〜220C)の一対の非巻装部229bに対応する一対の磁極端部225bと、一対の磁極端部225bと一体に構成されて2つの磁極列207A,207Bと対向する一対の磁極面形成部225cとをそれぞれ有している。図13の部分拡大図に示すように、一対の磁極端部225bは、磁極端部225bを直交方向D3が垂線となるように切断したときの、磁極端部225bの切断面の形状が磁極中心部225aよりも移動方向D1の両側に膨出する形状をしている。そして、一対の磁極端部225bには、直交方向D3に貫通する貫通孔225dがそれぞれ形成されている。また、後述する第1の磁極部220A〜220Cの巻線巻装部229aを対向方向D2が垂線となるように切断したときの切断面の断面積と、第2の磁極部225A〜225Cの磁極中心部225aを対向方向D2が垂線となるように切断したときの切断面の断面積とが等しくなるように、第2の磁極部225A〜225Cの磁極中心部225aにおける移動方向D1に沿って測った幅寸法L5は、第1の磁極部220A〜220Cの一対の非巻装部229bにおける移動方向D1に沿って測った幅寸法L6より小さくなっている。さらに、第2の磁極部225A〜225Cの一対の磁極端部225bの2つの磁極列207A,207Bと対向する部分における移動方向D1に沿って測った幅寸法L7は、第1の磁極部220A〜220Cの前述の幅寸法L6と等しくなっている。
第2の磁極部半部226は、第1の磁極構成部分221の巻線部231に対応する磁極中心部半部226aと、第1の磁極構成部分221の一対の非巻装部229bにそれぞれ対応する一対の磁極端部半部226bと、一対の磁極端部226bと一体に構成されて2つの磁極列207A,207Bと対向する一対の磁極面形成部半部226cとをそれぞれ有している。磁極中心部半部226aには、電機子コア分割体212B側に突出する凸部226dと、電機子コア分割体212Bと直交方向D3の両側とに開口する凹部226eとが形成されている。凸部226dと凹部226eとは対向方向D2に並んで形成されている。凸部226dは、隣接する電機子コア分割体212B側に向かうにしたがって、対向方向D2の寸法が大きくなる形状を有している。凹部226eは、隣接する電機子コア分割体212B側に向かうにしたがって、対向方向D2の寸法が小さくなる形状を有している。
6つの磁極連結体227は、第2の磁極部225A〜225Cの隣接する2つの第2の磁極部の両端をそれぞれ連結している。相互に対向する一対の磁極連結体227の一つの磁極連結体227は、第1の磁極部220A〜220Cの磁極面形成部227aと2つの連結部227bとをそれぞれ有している。磁極面形成部227aの第1の磁極構成部分221側の面は、2つの連結部227bの第1の磁極構成部分221側の面より第1の磁極構成部分221側に突出している。2つの連結部227bのそれぞれは、隣接する第1の磁極部(220A〜220C)の磁極面形成部227aと第2の磁極部の磁極面形成部225cとを連結している。
3つの第1の磁極構成部分221A〜221Cは、磁極主部229と巻線部231とをそれぞれ有している。磁極主部229は、複数枚の所定形状の鋼板が移動方向D1(主要部分219の鋼板が積層される直交方向D3と直交する方向)に積層されて構成されている。また、磁極主部229は、巻線が巻装される巻線巻装部229aと、巻線巻装部の両端部に一体に設けられて巻線が巻装されることのない一対の非巻装部229bとを有している。一対の非巻装部229bと相互に対向する一対の磁極面形成部227aとが当接し、主要部分219と第1の磁極構成部分221A〜221Cとの間の空隙部に合成樹脂230が充填されることにより、3つの第1の磁極構成部分221A〜221Cは、主要部分219に固定される。これにより、3つの第1の磁極構成部分221A〜221Cのそれそれの磁極主部229と一対の磁極面形成部227aとにより、第1の磁極部220A〜220Cが構成される。また、巻線が巻装される3つの第1の磁極部220A〜220Cと巻線が巻装されない4つの第2の磁極部225A〜225Dとが、第2の磁極部225A及び第2の磁極部半部226が可動子203の移動方向D1の両端に位置するように移動方向D1に所定の間隔をあけて交互に配置される。
巻線部231は、磁極主部229の巻線巻装部229aに巻装されている。本例も、第1の磁極構成部分221A〜221Cのそれぞれの巻線部231にU相、V相、W相の電流が流れている。
移動方向D1の内部に位置する電機子コア分割体212Bと電機子コア分割体212Cとは、同じ構造を有している。電機子コア分割体212B,212Cは、第2の磁極部225Aの代わりに第2の磁極部半部226が配置されるように構成されており、その他は、電機子コア分割体212Aと同じ構造を有している。即ち、電機子コア分割体212B,212Cは、移動方向D1の両側に第2の磁極部半部226が配置されるように構成されており、その他は、電機子コア分割体212Aと同じ構造を有している。
電機子コア分割体212A〜212Dは、電機子コア分割体212Aの第2の磁極部225Aと電機子コア分割体212Dの第2の磁極部225Aとが移動方向D1の両端に位置するように、隣接する2つの電機子コア分割体の凸部226dと凹部226eとが嵌合されて連結されている。
本例のリニアモータによれば、電機子210を、移動方向D1に嵌合構造により連結された4つの電機子コア分割体212A〜212Dから構成するので、電機子コア分割体を適宜に組み合わせることにより、所望の磁極部数の電機子を得ることができる。また、第1の磁極部220A〜220Cの巻線巻装部229aの断面積と第2の磁極部225A〜225Cの磁極中心部225aの断面積とが等しいので、第1の磁極部220A〜220Cの巻線巻装部229aと第2の磁極部225A〜225Cの磁極中心部225aとの磁気抵抗を等しくでき、推力の低下を防止できる。
さらに、第2の磁極部225A〜225Cの一対の磁極端部225bの2つの磁極列207A,207Bとそれぞれ対向する部分の移動方向D1の寸法L7は、第1の磁極部220A〜220Cの一対の非巻装部229bの移動方向D1の寸法L6とが等しいので、第1の磁極部220A〜220Cの推力作用面と第2の磁極部225A〜225Cの推力作用面とにおける磁気抵抗の変化の周期性を維持でき、コギングを小さくできる。
図14及び図15は、本発明の第4の実施の形態のリニアモータの正面図及び可動ステージ309を除いた側面図である。両図に示すように、本例のリニアモータは、固定子301と可動子303とを具備している。なお、図15は、閉塞部分323を除いた状態で描いている。固定子301は、ベース305上に磁極列307を備えた構造を有している。磁極列307は、複数のN極の永久磁石307aと複数のS極の永久磁石307bとが交互に並ぶように配置されて構成されている。
可動子303は、図14に示すように、固定子301に対して移動自在な可動ステージ309に電機子310が固定された構造を有しており、電機子310が磁極列307と対向するように配置されている。
可動ステージ309は、板状のステージ本体311と取付板313と2つのスライダ315とを有している。ステージ本体311は、矩形の板形状を有しており、側面に開口する複数(8つ)の螺子孔311aが形成されている。取付板313は、厚み方向がステージ本体311と直交するようにステージ本体311に取付けられている。取付板313には、8つの貫通孔313aが形成されている。ステージ本体311及び取付板313には、後述する方法により、螺子339を用いて、電機子310が固定されている。この可動ステージ309は、ベース305に固定された基台317の2つのレール317aに摺動可能に支持されている。本例では、ステージ本体311に設けた2つのスライダ315を2つのレール317aの上方にそれぞれ配置している。これにより、電機子310は、磁極列307が延びる方向に往復運動を行なう。このため、磁極列307が延びる方向が可動子303の移動方向D1になる。また、本例のリニアモータでは、可動ステージ309は、移動方向D1と、固定子301と可動子303とが対向する対向方向D2とに直交する直交方向D3に電機子310に隣接して配置されることになる。さらに、ステージ本体311には、リニアセンサ314のセンサヘッド314aが取り付けられており、基台317には、センサヘッド314aに対向するようにセンサスケール314bが取り付けられている。
電機子310は、電機子コアの主要部分319と3つの第1の磁極構成部分321A〜321Cと閉塞部分323とを有している。主要部分319は、移動方向D1に延びるヨーク328と4つの第2の磁極部325A〜325Dと3つの磁極連結体327とを有しており、移動方向D1と、固定子と可動子とが対向する対向方向D2とに直交する直交方向D3に複数枚の同一所定形状の鋼板が積層されて構成されている。第2の磁極部325A〜325Dは、ヨーク328から磁極列307側に延びており、巻線が巻装されない磁極部を構成している。4つの第2の磁極部325A〜325Dは、移動方向D1に間隔をあけて配置されている。4つの第2の磁極部325A〜325Dの内、両端に位置する第2の磁極部325A,325Dは、移動方向D1の外側に向かうにしたがって、第2の磁極部325A,325Dと磁極列307との間のそれぞれの間隔寸法が大きくなる形状を有している。図15において、第2の磁極部325A及び325Bに符号を付して説明すると、第2の磁極部325A〜325Dは、後述する隣り合う第1の磁極部320A〜320Cの巻線部331に対応する磁極中心部325aと、磁極中心部325aの両端に一体に設けられて第1の磁極部320A〜320Cの一対の非巻装部329b,329hに対応する一対の磁極端部325b,325hと、一対の磁極端部325b,325hの磁極列307側に位置する磁極列側磁極端部325bと一体に構成されて磁極列307と対向する磁極面形成部325cとをそれぞれ有している。第2の磁極部325A,325Dの両端部近傍とヨーク328とには、螺子339が貫通する貫通孔325dが直交方向D3に貫通するように形成されている。
図16の部分拡大図に示すように、3つの磁極連結体327は、第2の磁極部325A〜325Dの隣接する2つの第2の磁極部の磁極列307側の端部をそれぞれ連結している。磁極連結体327は、第1の磁極部320A〜320Cの磁極面形成部327aと2つの連結部327bとをそれぞれ有している。磁極面形成部327aの第1の磁極構成部分321側の面は、2つの連結部327bの第1の磁極構成部分321側の面より第1の磁極構成部分321側に突出している。磁極面形成部327aは、板体327dと板体327dから第1の磁極部320A〜320Cの磁極列側非巻装部329b側に突出して磁極列側非巻装部に当接する凸部327eとを有している。凸部327eは、磁極列側非巻装部329bに向かうにしたがって移動方向D1に沿って測った幅寸法が徐々に大きくなるように形成されている。第2の磁極部325A〜325Dの磁極列側磁極端部325bの磁極列307と対向する部分における移動方向D1に沿って測った幅寸法L8と、凸部327eと板体327dとの接合部分(凸部327eの基部)の移動方向D1に沿って測った幅寸法L9とは等しくなっている。2つの連結部327bのそれぞれは、隣接する第1の磁極部(320A〜320C)の磁極面形成部327aと第2の磁極部の磁極面形成部325cとを連結している。
図15に示す磁極構成部分321Aに符号を付して説明すると、3つの第1の磁極構成部分321A〜321Cは、磁極主部329と巻線部331とをそれぞれ有している。磁極主部329は、複数枚の所定形状の鋼板が移動方向D1(主要部分319の鋼板が積層される直交方向D3と直交する方向)に積層されて構成されている。また、磁極主部329は、巻線が巻装される巻線巻装部329aと、巻線巻装部の両端部に一体に設けられて巻線が巻装されることのない一対の非巻装部329b,329hとを有している。一対の非巻装部329b,329hのヨーク328側に位置するヨーク側非巻装部329hはヨーク328の凹部328aに嵌合されている。第1の磁極構成部分321A〜321Cの巻線巻装部329aの直交方向D3の両端面は、第2の磁極部325A〜325Dの直交方向D3の両端面よりも内側に下がっている。また、一対の非巻装部329b,329hの直交方向D3の両端面は、第1の磁極部320A〜320Cの巻線巻装部329aの直交方向の両端面より外側に出ている。このため、第1の磁極構成部分321A〜321Cの磁極主部329は、移動方向D1から見た形状がH形の形状を有している。また、図14に示すように、一対の非巻装部329b,329hの両端面329dは、巻線巻装部329aから対向方向D2の外側に向かうにしたがって、直交方向D3の寸法が大きくなるように傾斜している。そして、図15に示すように、ヨーク側非巻装部329hがヨーク328の凹部328aに嵌合し、磁極列側非巻装部329bと磁極面形成部327aとが当接し、主要部分319と第1の磁極構成部分321A〜321Cとの間の空隙部に合成樹脂330が充填されることにより、3つの第1の磁極構成部分321A〜321Cは、主要部分319に固定される。これにより、3つの第1の磁極構成部分321A〜321Cのそれそれの磁極主部329と磁極面形成部327aとにより、第1の磁極部320A〜320Cが構成される。また、巻線が巻装される3つの第1の磁極部320A〜320Cと巻線が巻装されない4つの第2の磁極部325A〜325Dとが、第2の磁極部325A,325Dが可動子303の移動方向D1の両端に位置するように移動方向D1に所定の間隔をあけて交互に配置される。
巻線部331は、磁極主部329の巻線巻装部329aに巻装されている。本例も、第1の実施の形態と同様に、第1の磁極構成部分321A〜321Cのそれぞれの巻線部331にU相、V相、W相の電流が流れている。
図14に示すように、閉塞部分323は、板形状を有しており、電機子310の貫通孔325dに連通する8つの貫通孔337aが形成されている。貫通孔337a、第2の磁極部325A,325D及びヨーク328の貫通孔325d、並びに取付板313の貫通孔313aを貫通してステージ本体311の螺子孔311aに螺合する螺子339により、ステージ本体311及び取付板313に電機子310が固定されている。本例のリニアモータによれば、1つの磁極列でリニアモータを構成することができる。また、磁極面形成部327aの凸部327eが板体327dから磁極列側非巻装部329bに向かうにしたがって移動方向D1の寸法が大きくなるように形成されている。そのため、第1の磁極部320A〜320Cの磁極面形成部327aと磁極列側非巻装部329bとの接合面積を大きくできる。また、磁極面形成部327aの凸部327eと、第1の磁極部320A〜320Cの磁極面形成部327aと第2の磁極部の磁極面形成部325cとを連結する連結部327bとの間に空隙が形成されるため、第1の磁極部320A〜320Cと電機子コアの主要部319との間に合成樹脂等を充填しすると、空隙部に合成樹脂等が入り込む。そのため、第1の磁極部320A〜320Cの磁極面形成部327aと磁極列側非巻装部329bとの結合強度を高めることができる。また、磁極列側磁極端部329bの磁極列307と対向する部分の移動方向の寸法L8と、凸部327eと板体327dとの接合部分の移動方向D1の寸法L9とを等しいので、第1の磁極部320A〜320Cの推力作用面と第2の磁極部の推力作用面とにおける磁気抵抗の変化の周期性を維持でき、コギングを小さくできる。
なお、上記の第1〜第3の実施の形態では、本発明を2つの磁極列と該2つの磁極列の間に配置された電機子とを備えるリニアモータに適応した例を示しているが、第1〜第3の実施の形態のリニアモータの第1及び第2の磁極部の構成を1つの磁極列と該1つの磁極列に対向する電機子とを備えるリニアモータに適応できるのは勿論である。
また、上記の第4の実施の形態では、本発明を1つの磁極列と該1つの磁極列に対向する電機子とを備えるリニアモータに適応した例を示しているが、第4の実施の形態のリニアモータの第1及び第2の磁極部の構成を2つの磁極列と該2つの磁極列の間に配置された電機子とを備えるリニアモータに適応できるのは勿論である。