JP4755788B2 - ヒートシール薄肉軽量缶 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄金属板からなる缶体の開口部にヒートシール蓋を取り付けて密封するヒートシール薄肉軽量缶に関する。
【0002】
【従来の技術】
馬鈴薯粉をポテトチップ状に焼固させたスナック菓子を入れる容器として、紙や金属箔あるいは合成樹脂を螺旋に巻いてコンポジット缶を形成し、その底部を薄金属製蓋で覆い、また先端側の開口端にヒートシール蓋を熱接着させた紙容器が知られている。この種の容器は、いわゆる本体部分を金属と紙とによって構成した複合容器であるため、この容器をゴミとして廃棄する場合、可燃物である紙といわゆる資源ゴミに相当する金属部分とに分別する必要があり、廃棄処理が難しい。また、この様な現行品の紙容器で、馬鈴薯粉をポテトチップ状に焼固させたスナック菓子を詰める高さが約9cm程度のコンポジット缶は、その胴部だけの重量が、20gを越えており、軽量化が望まれる。
【0003】
一方、上記の紙容器より軽量なヒートシール缶が、特開昭57−55874号公報や特開昭62−168846号公報に開示されている。これらのヒートシール缶は、薄金属板を素材として絞り加工やしごき加工によって作られたものであり、素材が薄金属板であって材種が単一であるためにリサイクル性が良好であり、また遮光性、酸素バリヤ性に優れている。
【0004】
これらの公報に開示されているヒートシール缶は、缶体の開口端に水平なフランジ部を備え、そのフランジ部の外周端部が外巻きに成形されてカール部となっており、これらのフランジ部とカール部とにヒートシール蓋を熱接着させる構造を備えている。その結果、この構造によって、ヒートシール面積が大きく成り、丈夫な熱接着部を形成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のヒートシール缶は、熱接着部が丈夫であるから密封性に優れている。しかしながら、広い面積で熱接着させているヒートシール蓋の接着強度が高いことが、反面、缶の開封を困難にしており、開封性が必ずしも良好ではない。また、開口端に形成されているフランジ部は、ヒートシール蓋の接着面積を増大させているが、缶体の重量の増大要因にもなっており、軽量化の点では不利な構造となっている。さらに、前記フランジ部は、ヒートシール蓋の熱接着性の向上を主眼に形成されているので、その点での機能が良好であっても、缶全体としての意匠性もしくはファッション性を損なう要因となっている。結局、従来のヒートシール缶は、密封性および開封性、ならびに軽量化および意匠性など、ヒートシール缶に要求される特性を必ずしも充分には満足しておらず、改良の余地が多分にあった。
【0006】
本発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであって、密封性を損なうことなく開け易く、しかも軽量なヒートシール缶を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用】
本発明は、上記の目的を達成するために、薄金属板からなる缶体の開口端に、内面側にヒートシーラント層を備えたヒートシール蓋を熱接着させるヒートシール薄肉軽量缶において、缶体がその円筒形胴部の開口端に外巻きカール部を備え、そのカール部の形状が、先ず、円筒形胴部の開口端にフランジ部を形成し、次に、該フランジ部を前記胴部の半径方向に沿う平面から鋭角にかつ前記開口端から後退する方向に傾斜したハゼ折り部に成形し、しかる後に、そのハゼ折り部が前記胴部の半径方向に沿う平面から鋭角に前記開口端に向かう方向に傾斜した形状を内部に持つ断面円弧形の頂部を備えたカール部に成形して得られた形状であるとともに、前記断面円弧形の頂部を備えたカール部内のハゼ折り部は、前記胴部の半径方向に沿う平面から約60°までの範囲内で、前記開口端側に向けて傾斜した形状であることを特徴とするものである。
【0009】
したがって本発明によれば、上記の形状の外巻きカール部の表面にヒートシール蓋が熱接着させられる。その場合に、外巻きカール部に荷重を掛けることになるが、三つの工程を経て外巻きカール部を成形しているので、外巻きカール部の強度が高く、熱接着時の荷重で過度に変形することがなく、外巻きカール部に成形時に歪み等が発生していないためヒートシール蓋が良好に熱接着され、確実に密封される。また、ヒートシール蓋が熱接着される外巻きカール部は、缶体の開口端から外側に滑らかに湾曲した形状であるから、開封する場合には、ヒートシール蓋の端部を摘んで容易に開封することができ、さらに滑らかに湾曲した形状であることにより意匠性あるいはファッション性が良好になる。
【0010】
さらに本発明では、外巻きカール部の先端部に、そのカール部の内側に延びた形状のハゼ折り部を備えているので、これが外巻きカール部の強度を高くしていることに加え、そのエッジ部に指が掛かることがないので、安全性の高いヒートシール缶となっている。
【0011】
【発明の実施の形態】
つぎに本発明を具体例によって更に詳細に説明する。先ず、図1および図2に本発明の一例としてのヒートシール缶1を示した。なお、図1は、そのヒートシール缶1の全体を示す断面図であり、図2は、そのヒートシール缶1の開口端のカール部2を拡大して示す部分断面図である。
【0012】
本発明のヒートシール缶1は、公知の易加工性及び耐腐食性を備えたフィルム又は合成樹脂を片面若しくは両面に備えているか、全くコートしていないアルミニウム製の薄板をカップ状に打ち抜き、そのカップ状の中間材に絞り加工や、絞り加工としごき加工とを施して作られている。したがって、円筒形の胴部4を備えており、その胴部4の下端は、胴部4と一体の底部5と成っており、また胴部4の上端の開口端にカール部2が設けられている。
【0013】
カール部2は、外巻きであって、そのカール部2の先端がヒートシール缶1の内側に入らない構造に成っている。より具体的には、カール部2は、胴部4から滑らかに続いた断面形状がほぼ円弧形の頂部6を備え、その先端は、断面形状がほぼ直線のハゼ折り部7で終わっている。
【0014】
ハゼ折り部7は、水平乃至水平面(すなわち胴部4の半径方向に沿う平面)から約60°の角度上方に(すなわち開口端に向けて)傾斜している。したがって、カール部2の先端が手あるいは指に触るおそれが全く無く、安全な構造となっている。ハゼ折り部7の角度が60°を越えると、ハゼ折り部7の付け根が割れてしまうおそれが有り、その角度は、水平から約60°の範囲内に成るようにするのが好ましい。また、ハゼ折り部7は、カール部2の胴部4側の頂部6には接触しない長さを有していて、カール部2の頂部6の外周側に剛性を付与し、胴部4側の頂部6とその強さをほぼ同程度としている。したがって、ハゼ折り部7は、カール部2が変形することを防止し、頂部6が変形したり、そのためにヒートシール蓋3に剥離力が作用したりすることを防いでいる。
【0015】
上記のカール部2の頂部6には、内面側にヒートシーラント層を備えた金属箔及び/又は合成樹脂から成るヒートシール蓋3が熱接着されており、そのヒートシール蓋3の外周部分が、カール部2の半径方向の幅Tの約76%程度の熱接着幅tでカール部2の頂部6を覆っている。
【0016】
ここで、上記のカール部2の成形方法および成形装置について、その概略を示す図3乃至図6を参照して説明する。
【0017】
カール部2は、先ず、第1工程として、通常の絞り加工や、絞り加工としごき加工とで作られた缶体の円筒形の胴部4の開口端にフランジ部8を形成し、次に、第2工程として、該フランジ部8を水平面から鋭角に下方に傾斜したハゼ折り部7に成形し、しかる後に、最終工程として、該ハゼ折り部7が水平乃至水平面から鋭角に上方に傾斜した形状を内部に持つ円弧形の頂部6を備えたカール部2にカール加工する方法で成形される。
【0018】
第1工程のフランジ部8の成形方法として、図3に示したダイ方式と図4に示したロール方式がある。
【0019】
ダイ方式は、鉛直面から1.5Rのアール面を備えかつそのアール面に続けて水平面から10°程度上方に向かって傾斜した成形面11を備えたダイ12を使用し、そのダイ12を、缶体の開口端に被せ、エアーを缶体内に吹き込んで缶体の挫屈の発生を防ぎながら、ダイ12を下降させ、若しくは、缶体を上昇させて、フランジ部8を形成する方式である。
【0020】
また、ロール方式は、鉛直面から1.5Rのアール面を備えかつそのアール面に続く水平面から10°程度上方に向かって傾斜した成形面13を備えている自由回転可能な複数のロール14を、缶体の開口端に被せ、また一方、自由回転する中子15を缶体に挿入してその開口端の半径方向の変形を防止しながら、缶体を回転させ、同時にロール14群を下降させ、若しくは、缶体を上昇させて、フランジ部8を形成する方式である。
【0021】
次に、カール部2を成形する第2工程では、如上のいずれかの方式で成形したフランジ部8を備えた缶体の内側に、ダイ18を挿入する一方、鉛直面に対して45°の角度で下方外方に向かって傾斜している成形面16を備えかつダイ18の外壁との間に隙間19を形成するリングダイ17をダイ18の外側から被せ、エアーをダイ18から缶体内に吹き込んで缶体の挫屈の発生を防ぎながら、リングダイ17とダイ18を下降させ、若しくは、缶体を上昇させて、フランジ部8を成形面16で傾斜させながらダイ18とリングダイ17との間の隙間19に嵌入させ、こうすることにより水平面から鋭角に下方に傾斜したハゼ折り部7を形成する。したがって、ハゼ折り部7は、予め、フランジ部8を成形した後に成形されるため、歪みや偏りの無い状態で成形される。
【0022】
しかる後、最終工程では、鉛直面から1.25Rのアール面を備えかつそのアール面に続く水平面から10°程度上方に向かって傾斜した成形面20を備えたダイ21を、ハゼ折り部7を形成させた缶体の開口端に被せ、エアーを缶体内に吹き込んで缶体の挫屈の発生を防ぎながら、ダイ21を下降させ、若しくは、缶体を上昇させて、カール部2を形成する。
【0023】
このとき、水平面から鋭角に下方に傾斜したハゼ折り部7は、ほぼ反転して、水平乃至水平面から約60°上方に傾斜した状態に成形され、成形途中に、先端部が歪んだり、カール部2の円弧形の頂部6に歪みが生じたりしない様に作用する。
【0024】
この様に、カール部2は三つの工程を経て成形されるため、カール部2の頂部6には歪みなどが全く無く、従って、ヒートシール蓋3が接着不良箇所を発生させることもなく確実に熱接着され、その結果、ヒートシール缶1が極めて良好にシールされる。また、カール部2が滑らかに湾曲している形状であり、かつその剛性が高いために、スムースに開封でき、さらにカール部2の先端は、ハゼ折り部7としてカール部2の内部に納められているため、カール部2の先端で指を切るようなおそれも全く無い。
【0025】
【実施例】
本発明の実施例を以下に示す。
【0026】
先ず、板厚が約0.3mmの無塗装のアルミニウム合金板に、絞り加工としごき加工とを施して、直径約66mm、高さ約104mmで、胴部4の最薄板厚が約0.1mmの缶体を作り、内面にエポキシフェノール樹脂を通常の方法で塗布して乾燥し、重さが約11gの薄肉で軽量な缶体を作った。その缶体の円筒形の胴部4の開口端に、幅が約1.87mmのフランジ部8を形成し、高さが約102mmの缶体に成形し、該フランジ部8を、ダイ18とリングダイ17との隙間19が0.6mmの装置で、幅が約1.28mmのハゼ折り部7に形成し、高さが約101mmの缶体とした。さらに最終工程で、この缶体のハゼ折り部7を水平面から約40°上方に傾斜した状態に成形し、幅が約2.1mmのカール部2を形成し、高さが約98mmの薄肉軽量缶に成形した。
【0027】
該薄肉軽量缶は、1763N(ニュートン)の垂直荷重に耐え得るもので、該薄肉軽量缶に、馬鈴薯粉をポテトチップ状に焼固させた塩分と油分を含むスナック菓子を充填し、直ちに液体窒素を充填して、カール部2にヒートシール蓋3を上から1156Nで加圧しながら熱接着させて密封した。
【0028】
ヒートシール蓋3は、外面側から順にポリエチレンテレフタレート層、ドライラミネート接着剤層、9μm厚のアルミニウム箔層、20μm厚のポリエチレン層、ヒートシーラント層であるウレタン系接着剤層から成り、総厚みが75μmのもので、開封性を高めるために、端縁に、蓋と一体の取っ手を付加させたものを使用した。
【0029】
本実施例の評価結果を表1に示した。
【表1】
【0030】
表中、缶内面腐食欄の×印は、開封前に内面腐食が起きてしまったものを示し、△印は、開封後に内面腐食が起きたものを示す。また、フレーバー欄の×印は、油分が酸化したものを示し、△印は、金属臭が内容物に付着してしまったものを示す。
【0031】
この評価結果から、缶内面コートが無いと、塩分によって缶内面が腐食し、内容物に金属臭が付き、内容物の味が悪くなり、通常充填で、缶内に酸素が有ると、内容物の油分が酸化してフレーバーが悪くなることが判る。
【0032】
【発明の効果】
本発明のヒートシール薄肉軽量缶は、カール部が三つの工程を経て成形されるため、カール部の頂部には歪みなどが全く無く、従って、ヒートシール蓋を接着不良箇所を発生させることなく確実に熱接着することができ、その結果、ヒートシール缶を極めて良好にシールでき、またスムースに開封でき、さらにはカール部の先端が隠れているので安全性の高いものとすることができる。また、ヒートシール蓋を熱接着するカール部は、開口端から半径方向外向きに大きく突出させる必要がないので、缶の軽量化を図ることができる。
【0033】
さらに、液体窒素充填をして、缶内を陽圧化させても、カール部の剛性が高いことによってその頂部には歪みなどが全く無いため、ヒートシール蓋が接着不良箇所を発生させることがなく、そのため極めて良好にシールでき、またそのシール状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のヒートシール缶の断面図である。
【図2】 本発明のヒートシール缶のカール部を拡大して示した部分断面図である。
【図3】 カール部成形の第1工程におけるダイ方式によるフランジ部成形を示した概略図である。
【図4】 カール部成形の第1工程におけるロール方式によるフランジ部成形を示した概略図である。
【図5】 カール部成形の第2工程におけるハゼ折り部成形を示した概略図である。
【図6】 カール部成形の最終工程を示した概略図である。
【符号の説明】
1…ヒートシール缶、 2…カール部、 3…ヒートシール蓋、 4…胴部、
6…頂部、 7…ハゼ折り部、 8…フランジ部。
Claims (1)
- 薄金属板からなる缶体の開口端に、内面側にヒートシーラント層を備えたヒートシール蓋を熱接着させるヒートシール薄肉軽量缶において、
缶体がその円筒形胴部の開口端に外巻きカール部を備え、
そのカール部の形状が、先ず、円筒形胴部の開口端にフランジ部を形成し、次に、該フランジ部を前記胴部の半径方向に沿う平面から鋭角にかつ前記開口端から後退する方向に傾斜したハゼ折り部に成形し、しかる後に、そのハゼ折り部が前記胴部の半径方向に沿う平面から鋭角に前記開口端に向かう方向に傾斜した形状を内部に持つ断面円弧形の頂部を備えたカール部に成形して得られた形状であるとともに、
前記断面円弧形の頂部を備えたカール部内のハゼ折り部が、前記胴部の半径方向に沿う平面から約60°までの範囲内で、前記開口端側に向けて傾斜した形状であることを特徴とする。
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