JP4754320B2 - 水素製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、水素を製造して供給するための装置に関する。
貯蔵を含めて高圧の水素を製造する装置として、従来では水素発生器と水素貯蔵器とを接続部材で接続したうえで、水素発生器内で発生させた水素を水素貯蔵器に導入し、導入後は接続部材の接続を解除する技術が知られている(例えば特許文献1を参照)。この技術では、アルカリ金属(1族元素;化合物を含む)と水との反応で水素を発生させる。
特開2004−107146号公報(第3頁,図1)
また、高圧の水素を発生させる装置としては、水電解セルを備えた高圧容器内で電気分解を行う技術(例えば特許文献2を参照)や、電極間をプロトン導電体で接続したうえで電気化学的に水素を移動させる技術が知られている(例えば特許文献3を参照)。
特開2004−18982号公報(第8−9頁,図1) 特開2004−311159号公報(第7−8頁,図6)
しかし、特許文献1の技術で用いるアルカリ金属やその化合物は高価であるため、コスト高になる。例えば水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)は、金属水素化物とホウ酸エステルとの反応や、アルカリ金属と四ホウ酸ナトリウムとの反応によって製造している。水素化ホウ素ナトリウムを1モル製造するには、金属ナトリウムが4モル必要となるために高価となる。また、直接的な化学反応(例えばアルカリ金属と水との反応など)に比べると、特許文献2の技術で行う電気分解では所望の圧力からなる水素を得るのに時間が掛かる。このことは、特許文献3の技術で行う水素の移動についても同様である。
本発明はこのような点に鑑みてなしたものであり、コストを安く抑えるだけでなく、従来の技術よりも短時間で所望の圧力からなる水素が得られる水素製造装置を提供することを目的とする。
(1)課題を解決するための手段(以下では単に「解決手段」と呼ぶ。)1は、圧力容器を有し、水素を製造する水素製造装置であって、水素を供給し、この水素と金属酸化物とを反応させて金属と水蒸気とに分離する還元手段と、圧力容器を加熱する加熱手段と、圧力容器に水を供給して加熱手段により加熱し、この水または水蒸気と金属とを反応させて水素と金属酸化物とに分離する酸化手段と、酸化手段によって分離された水素の圧力を制御する圧力制御手段と、酸化手段によって分離された水素の圧力を計測する第1圧力セン サと、供給対象に供給された水素の圧力を計測する第2圧力センサと、第1圧力センサに よって計測された水素の圧力と、第2圧力センサによって計測された水素の圧力との差圧 に基づいて加熱手段による加熱量を変化させ、酸化手段による水素の発生量を制御する発 生量制御手段とを備えたことを要旨とする。
解決手段1によれば、還元手段では所定温度(例えば350℃)で水素と金属酸化物とを反応させると、金属と水蒸気とに分離できる。分離できた金属は圧力容器内に留まる。酸化手段では、還元された金属が入った状態の圧力容器に水を入れて加熱することにより、この水または水蒸気と金属とが反応して水素と金属酸化物とに分離する。この分離によって発生した水素は圧力容器内に留まって高圧化するとともに、加熱によって水が水蒸気化するために容易に高圧の水素を得ることができる。さらに圧力制御手段は酸化反応によって発生した水素の圧力を制御するので、所望の圧力で水素を製造することができる。従来のようなアルカリ金属やその化合物に代えて酸化可能な金属(例えば鉄など)を用いるので、コストを安く抑えることができる。水または水蒸気と金属との反応によって水素を発生させるので、電気分解や水素の移動に比べると短時間で水素を得ることができる。
さらに、水素製造装置が発生量制御手段を備えたことにより、第1圧力センサおよび第 2圧力センサによって計測された各圧力間の差圧が小さく、供給対象に供給可能な水素量 が少ないときには、加熱手段による加熱量を減らして水素の発生量を抑制する制御が行わ れる。これに対して、上記差圧が大きく、供給対象に供給可能な水素量が多いときには、 加熱手段による加熱量を増やして水素の発生量を増大する制御が行われる。したがって、 供給対象の状態に応じて水素の発生量を適切に増減させることができるので、水素製造の 時間短縮を図ることができる。
)解決手段は、圧力容器を有し、水素を製造する水素製造装置であって、水素を供給し、この水素と金属酸化物とを反応させて金属と水蒸気とに分離する還元手段と、圧力容器を加熱する加熱手段と、圧力容器に水を供給して加熱手段により加熱し、この水または水蒸気と金属とを反応させて水素と金属酸化物とに分離する酸化手段と、酸化手段によって分離された水素の流量を制御する流量制御手段と、酸化手段によって分離された水素 の流量を計測する流量センサと、流量センサによって計測された水素の流量に基づいて加 熱手段による加熱量を変化させ、酸化手段による水素の発生量を制御する発生量制御手段 を備えたことを要旨とする。
解決手段によれば、上述した解決手段1と同様に水素を発生させることができる。 解決手段1と異なるのは、酸化反応によって発生した水素の流量を流量制御手段によって制御する点である。流量による制御では必要な容量の水素を得ることができ、しかも従来のようなアルカリ金属やその化合物に代えて酸化可能な金属を用いるのでコストを安く抑えることができる。水または水蒸気と金属との反応によって水素を発生させるので、電気分解や水素の移動に比べると短時間で水素を得ることができる。
また、供給先の状況に応じて水素の供給量を制御する必要がある場合がある。解決手段 2の発生量制御手段は、流量センサによって計測された水素の流量に基づいて加熱手段に よる加熱量を変化させて、圧力容器内の温度を変化させる。酸化反応は圧力容器内の温度 に応じて水素の発生量が変わるので、結果的には加熱量の変化によって水素の発生量を制 御することができる。したがって、供給先の状況に応じて水素の発生量を制御し、適切な 供給量を維持することができる。
)解決手段は、解決手段1または2に記載した水素製造装置であって、金属またはその酸化物として、ナノサイズ微粒子のものを用いることを要旨とする。
解決手段によれば、金属またはその酸化物としてナノサイズ微粒子(すなわち粒径が数ナノメートルから数十ナノメートルの粒子)のものを用いる。同じ重量でマイクロサイズやこれより大きな金属酸化物と比べると、ナノサイズ微粒子は全体の表面積が格段に大きくなり、しかも金属内部まで全て酸化還元反応が可能となるので、金属内に貯蔵できる水素や発生させる水素の容量も格段に大きくなる。一定容量の水素に対して必要な金属の量を少なくできるので、圧力容器の容積をコンパクトにできる。
)解決手段は、解決手段1からのいずれか一項に記載した水素製造装置であって、金属酸化物として酸化鉄を用いることを要旨とする。
解決手段によれば、鉄自体が安価に提供されているので、この鉄を酸化した酸化鉄も安価である。そのため、水素を製造するのに必要なコストを安く抑えることができる。
本発明によれば、酸化反応によって分離できた水素が圧力容器内に留まるので、容易に高圧の水素が得られる。また、酸化可能な金属を用いるのでコストが安く抑えられ、直接的な化学反応によって水素を発生させるので短時間で所望の水素が得られる。
本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書における「水素」は、特に明示しない限り、「水素ガス」を意味する。また、本形態における水素の供給対象は、燃料電池自動車とする。
まず図1には、水素製造装置に相当する水素製造ステーションの構成例を模式的に表す。この水素製造ステーション10は、制御盤12、温度センサ16、圧力容器28、ヒーター25,34、制御弁38、冷却器20,32、ブロア15、分離器22,36、貯水槽40、ポンプ24、圧力センサ35,39、流量センサ44、ディスペンサー42などを有する。
圧力容器28は、内部に鉄または酸化鉄を有し、鉄にかかる還元反応と酸化反応とを行う容器である。この鉄は、全体の表面積を大きくして反応を促進させるとともに、鉄内部に貯蔵する水素量も大きくするために、ナノサイズ微粒子のものを用いる。
制御盤12は、還元手段,酸化手段,発生量制御手段にそれぞれ相当する。当該制御盤12は、圧力容器28内で還元反応と酸化反応とを交互に行う運転を実現するため、電磁弁14,18,26,30の開閉や制御弁38の開口度などを個別に制御する。加熱手段に相当するヒーター34は圧力容器28を加熱し、加熱量に応じて当該圧力容器28内の温度を調整する。温度センサ16は、圧力容器28内の温度を計測して制御盤12に伝達する。冷却器20,32は、圧力容器28から出た物質(具体的には水蒸気や水素)を冷やす。分離器22は水と水素とに分離し、分離した水を貯水槽40に送り、分離した水素をブロア15およびヒーター25を経て圧力容器28に戻す。分離器36は水素と水とに分離し、水素を制御弁38に送り、水を貯水槽40に送る。分離器22で分離された水は、必要に応じて他から供給された水とともに、貯水槽40に貯められる。こうして貯水槽40に貯められた水は酸化反応に用いるため、ポンプ24で揚水されて圧力容器28に送られる。
制御弁38は、圧力制御手段と流量制御手段にそれぞれ相当し、圧力容器28から燃料電池自動車46に供給する水素の圧力や流量を制御する。圧力センサ35は第1圧力センサに相当し、圧力容器28内の水素の圧力を計測して制御盤12に伝達する。圧力センサ39と流量センサ44は、ディスペンサー42内に備えられている。圧力センサ39は第2圧力センサに相当し、燃料電池自動車46に供給した水素の圧力を計測して制御盤12に伝達する。流量センサ44は、燃料電池自動車46に供給する水素の流量(すなわち単位時間当たりの供給量)を計測して制御盤12に伝達する。
上述した各要素を繋ぐ配管の構成例を簡単に説明する。まず、供給源から供給される水素はヒーター25で熱せられた後、電磁弁26を経て圧力容器28に送られるように配管する。圧力容器28と貯水槽40との間は、圧力容器28から貯水槽40に向かう第1系統と、貯水槽40から圧力容器28に向かう第2系統とに分かれる。第1系統では、圧力容器28で発生した水蒸気等が電磁弁18,冷却器20,分離器22を経て、貯水槽40に送られるように配管する。第2系統では、貯水槽40に貯まっている水がポンプ24で揚水され、電磁弁14を経て圧力容器28に送られるように配管する。
一方、圧力容器28と燃料電池自動車46との間は、圧力容器28で発生した水素等が順番に電磁弁30,冷却器32,圧力センサ35,分離器36,制御弁38およびディスペンサー42を経て燃料電池自動車46に供給できるように配管する。
次に図2,図3を参照しながら、供給源から供給される水素を水素製造ステーション10で貯蔵し、燃料電池自動車46に供給するまでの工程について説明する。なお、図2では圧力容器28中に表す「(還元)」のように還元反応を行う工程であり、図3では圧力容器28中に表す「(酸化)」のように酸化反応を行う工程である。
図2において、制御盤12は還元反応を行わせるにあたって電磁弁18,26を開け、電磁弁14,30を閉めるように制御する。供給源から供給される水素は、太線で表すようにヒーター25から電磁弁26を経て圧力容器28に送り込まれる。水素が送り込まれているときの圧力容器28の内部は、低圧(例えば大気圧程度)かつ高温(例えば350℃程度)の雰囲気に調整されている。圧力容器28内に貯蔵されている酸化鉄(具体的には四酸化三鉄)に対して送り込まれてきた水素を接触させると、次に示す還元反応式に従って鉄(鉄元素)と水蒸気とに分かれる。
〔還元反応式〕
4H2+Fe34→3Fe+4H2
この工程における圧力容器28は、酸化鉄を鉄に還元する点で制御盤12とともに還元手段に相当する。還元反応式に従って発生した水蒸気は、太線で表すように電磁弁18,冷却器20および分離器22を経て、後述する酸化反応で再利用を可能とするために水の状態で貯水槽40に貯められる。よって、水素は水の構成要素として貯水槽40に貯蔵されることになる。
なお、圧力容器28から排出される水蒸気には水素が混じることがあるため、当該水素を分離器22で分離してブロア15で送り出し、ヒーター25の前(すなわち供給源とヒーター25との間)に戻す。こうして戻した水素は酸化鉄との反応に用いることができるので、無駄を少なく抑えることができる。
次に図3において、制御盤12は酸化反応を行わせるにあたって電磁弁14,30を開け、電磁弁18,26を閉めるように制御する。制御弁38については、始めは閉じるが、圧力センサ35で計測した圧力が所望の圧力(例えば10メガパスカル等)に達すると開け、かつ当該所望の圧力を維持するように弁開度を制御する。このとき、水素は所望の圧力を超えた分が制御弁38やディスペンサー42等を経て燃料電池自動車46に供給されることになる。また、この際に流量センサ44で計測される水素の流量は、燃料電池自動車46のタンクが空であるときに最も大きくなり、満杯に近づくにつれて小さくなってゆく。
貯水槽40に貯められている水は、太線で表すようにポンプ24で揚水されて圧力容器28に送られる。水が送り込まれているとき、制御盤12は温度センサ16によって計測された温度に基づいて、酸化温度(例えば300℃程度)になるようにヒーター34の加熱量を制御する。還元された鉄と送り込まれてきた水とを接触させると、次に示す酸化反応式に従って酸化鉄と水素とに分かれる。
〔酸化反応式〕
3Fe+4H2O→4H2+Fe34
この工程における圧力容器28は、鉄を酸化鉄に酸化する点で制御盤12とともに酸化手段に相当する。制御弁38が閉じられているので、酸化反応式に従って発生した水素は圧力容器28内に留まるとともに、水が圧力容器28内で水蒸気になる。水が水蒸気化することで水素の圧力も高まる。こうして圧力容器28内で高圧化された水素は、制御弁38の開閉制御によって圧力容器28内の圧力が所望の圧力を超える分について、太線で表すように圧力容器28からディスペンサー42を経て燃料電池自動車46に供給される。単位時間当たりの水素の供給量を増やすには、ヒーター34による加熱を行って酸化温度を高めたり、圧力容器28内に送り込む水の量を増やせばよい。
これに対して、圧力センサ35で計測した圧力と圧力センサ39で計測した圧力との差圧が基準圧力値以下である場合、もしくは流量センサ44によって計測された流量が基準流量値を下回る場合には、既に燃料電池自動車46内のタンクがほぼ満杯に至っていると推測できる。この場合には制御弁38を閉じるとともに、ヒーター34による加熱をやめて圧力容器28内の温度を低下させるように制御する。圧力容器28内の温度が下がれば、酸化反応による水素の発生量も減る。したがって、必要な時期に必要な容量の水素を製造して供給する制御が行える。
なお、圧力容器28から排出される水素には水蒸気が混じることがあるため、当該水蒸気を冷却器32で冷やして水にし、分離器36で分離して貯水槽40に送る。こうして戻した水は鉄との反応に用いることができるので、無駄を少なく抑えることができる。
上述した実施の形態によれば、以下に表す各効果を得ることができる。
(1)水素を供給し、当該水素と酸化鉄とを反応させて鉄と水蒸気とに分離した(還元手段;図2を参照)。圧力容器28内で還元された鉄を用い、当該圧力容器28に水を供給してヒーター34で加熱し、当該水と還元された鉄とを反応させて水素と酸化鉄とに分離した(酸化手段;図3を参照)。この酸化反応によって発生した水素は圧力容器28内に留まって圧力が上がり、酸化温度の下で水が水蒸気化するために容易に高圧の水素を得ることができる。酸化反応によって発生した水素の圧力を制御する制御弁38(圧力制御手段に相当)を備えたので(図1を参照)、所望の圧力で水素を製造することができる。そのため、水素を圧縮するための圧縮機が不となる。従来のようなアルカリ金属やその化合物に代えて、酸化可能で安価な金属として鉄を用いたので、コストを安く抑えることができる。また、水または水蒸気と鉄との反応によって水素を発生させるので、電気分解や水素の移動に比べると短時間で所望の圧力からなる水素を得ることができる。
なお、本例では圧力容器28で還元反応と酸化反応とを交互に行う構成としたが、外部から圧力容器28に供給された鉄(酸化されていないもの)を用いて酸化反応のみを行わせる構成としてもよい。この場合でも酸化反応によって水素を発生させることができるので、上記作用効果と同様の作用効果が得られる。
(2)圧力容器28で分離された水素の圧力を計測する圧力センサ35(第1圧力センサに相当)と、燃料電池自動車46(供給対象)に供給された水素の圧力を計測する圧力センサ39(第2圧力センサ)とを備えた。圧力センサ35,39によって計測された各圧力の差圧が小さくなれば、燃料電池自動車46に供給可能な水素量も少なくなるので、ヒーター34による加熱量を減らした。したがって、燃料電池自動車46の状態に応じて水素の発生量を適切に増減させることができるので水素製造の無駄を少なく抑えることができる。
なお、本例ではディスペンサー42内に圧力センサ39を備えたが、ディスペンサー42とは別個に分離器36とディスペンサー42までの間に備えてもよい。
(3)酸化反応によって発生した水素の流量を制御する制御弁38(流量制御手段に相当)を備えたので(図1を参照)、必要な圧力・容量の水素を製造することができる。
なお、本例で用いた流量センサ44は、単位時間当たりの水素の供給量を計測するものを用いた。これに代えて、燃料電池自動車46に供給した水素の容量(供給量)を積算して計測するものを用いてもよい。燃料電池自動車46のタンク容量が予め分かっている場合には、流量センサ44による供給量が計測できるのでタンクが満杯になるまで水素を供給できる。したがって、過不足無く燃料電池自動車46に水素を供給することができる。また、流量センサ44はディスペンサー42とは別個に設置しても同様の効果を得る。
(4)流量センサ44によって計測された水素の流量に基づいて、すなわちヒーター34(加熱手段に相当)による加熱量を変化させたので、圧力容器28内の温度が変化し、酸化反応で水素の発生量が変わる。こうして加熱量を変化させることにより、水素の発生量を制御することができる。したがって、ディスペンサー42の圧力で燃料電池自動車46の貯蔵量を把握して水素の発生量を制御し、適切な供給量を維持することができる。
なお、本例では流量が基準値を下回ったときにヒーター34の加熱量を抑えたが、流量が基準値以上になったときにヒーター34の加熱量を増やすように構成してもよい。ヒーター34の加熱量が増えれば圧力容器28内の温度が上がって酸化反応による水素の発生量も増えるので、ディスペンサー42に対して迅速に水素を供給することができる。

(5)酸化還元反応で用いる鉄または酸化鉄はナノサイズ微粒子のものであるので、同じ重量でマイクロサイズやこれより大きな鉄と比べると全体の表面積が格段に大きい。鉄と水蒸気(水)との酸化還元反応は当該鉄の表面だけでなく、鉄内部まで全て可能となるので、貯蔵できる水素や発生させる水素の容量も格段に大きくなる。一定容量の水素に対して必要な鉄の量を少なくできるので、圧力容器28の容積をコンパクトにできる。
(6)鉄自体が安価に提供されているので、金属酸化物として酸化鉄を用いた。したがって、貯蔵を含めた水素の製造コストを安く抑えることができる。
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することができる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
(1)上述した実施の形態では、圧力容器28から排出される物質(水蒸気や水素)は、還元反応工程では冷却器20を経てから分離器22で分離し(図2を参照)、酸化反応工程では冷却器32を経てから分離器36で分離した(図3を参照)。この形態に代えて、還元反応工程では冷却器20を経ずに分離器22で分離し、酸化反応工程では冷却器32を経ずに分離器36で分離してもよい。図4には、分離器22に通し、分離器36を経てから冷却器32に通す構成例を表す。分離器22,36にはガス状態の物質(水蒸気や水素)を分離可能なもの、例えばガス分離膜などを用いる。この構成によれば、冷却器で冷却を行わずに高温のまま分離できるので、分離したものを圧力容器28に戻す際に再加熱を行う必要がない。したがって、エネルギーコストを少なく抑えることができる。
なお、図4の例では双方の配管にかかる接続順を逆順で構成したが、一方側の配管にかかる接続順を逆順で構成してもよい。例えば、還元反応工程では分離器22に通すが、酸化反応工程では冷却器32を経てから分離器36を通す構成とする。あるいは、還元反応工程では冷却器20を経てから分離器22に通すが、酸化反応工程では分離器36を経てから冷却器32を通す構成とする。いずれの構成も再加熱を行う必要がないので、エネルギーコストを低減することが可能である。
また、分離器22で分離できた水素は、圧力容器28に戻す形態に代えて(あるいは加えて)、他の工程に用いてもよく、他の用途に利用するために貯蔵してもよい。
(2)上述した実施の形態では、金属として鉄を用いた。この形態に代えて、他の金属を適用してもよい。例えば超微粒子の物質としてのアルファ鉄,ガンマ鉄,コバルト・マグネタイト鉄,インジウム・錫(ITO),亜鉛,タングステン,電解二マンガンなどが該当する。このような他の金属を用いた場合であっても、還元反応および酸化反応を行わせることができるので、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
(3)上述した実施の形態では、水素製造ステーション10として一つの圧力容器28のみを備えた。この形態に代えて、貯蔵し供給する水素の容積に合わせて二以上の数の圧力容器を備える構成としてもよい。例えば二つの圧力容器を備えた場合には、一方の圧力容器で還元反応を行わせ、他方の圧力容器で酸化反応を行わせることにより、単位時間当たりに発生させる水素の量を向上させることができる。さらには、制御盤12から電磁弁を制御することによって、使用する圧力容器の数を調整すれば、貯蔵し供給する水素の容積に見合う構成を弾力的に行うことが容易にできる。
(4)上述した実施の形態では、還元反応を450℃程度で行い、酸化反応を170℃程度で行った。この形態に代えて、反応媒体となる金属の材質や量、あるいは圧力容器28の設定圧力によっては、各反応温度を適宜に設定することができる。条件さえ整えば、還元反応と酸化反応とをほぼ同じ温度(例えば300℃程度)で行うことも可能である。酸化還元温度が同じであれば、加熱や冷却を行う必要がないので、エネルギーが少なくなり、水素の製造コストもさらに安くできる。
(5)上述した実施の形態では、製造した水素を供給する供給対象として、燃料電池自動車46(すなわち水素を使用して動力を発生する車両)を適用した。この形態に代えて、水素を供給可能な対象物であれば、任意に適用できる。例えば、燃料電池鉄道車両や燃料電池船舶などの輸送用機器、化学プラントなどのように水素を資源として用いるプラント、水素ボンベなどが該当する。
本発明の構成例を模式的に表す図である。 水素を還元する工程を説明する図である。 水素を発生させて供給する工程を説明する図である。 本発明を実現する他の構成例を模式的に表す図である。
符号の説明
10 水素供給ステーション(水素製造装置)
12 制御盤(還元手段,酸化手段,発生量制御手段)
14,18,26,30 電磁弁
15 ブロア
16 温度センサ
20,32 冷却器(冷却手段)
22,36 分離器(分離手段)
24 ポンプ
28 圧力容器(還元手段,酸化手段)
25,34 ヒーター(加熱手段)
35,39 圧力センサ
38 圧力制御弁(圧力制御手段)
40 貯水槽
42 ディスペンサー
44 流量センサ
46 燃料電池自動車(水素の供給対象)

Claims (4)

  1. 圧力容器を有し、水素を製造する水素製造装置であって、
    水素を供給し、当該水素と金属酸化物とを反応させて金属と水蒸気とに分離する還元手段と、
    前記圧力容器を加熱する加熱手段と、
    前記圧力容器に水を供給して前記加熱手段により加熱し、当該水または水蒸気と金属とを反応させて水素と金属酸化物とに分離する酸化手段と、
    前記酸化手段によって分離された水素の圧力を制御する圧力制御手段と、
    前記酸化手段によって分離された水素の圧力を計測する第1圧力センサと、
    供給対象に供給された水素の圧力を計測する第2圧力センサと、
    前記第1圧力センサによって計測された水素の圧力と、前記第2圧力センサによって計 測された水素の圧力との差圧に基づいて前記加熱手段による加熱量を変化させ、前記酸化 手段による水素の発生量を制御する発生量制御手段とを備えた水素製造装置。
  2. 圧力容器を有し、水素を製造する水素製造装置であって、
    水素を供給し、当該水素と金属酸化物とを反応させて金属と水蒸気とに分離する還元手 段と、
    前記圧力容器を加熱する加熱手段と、
    前記圧力容器に水を供給して前記加熱手段により加熱し、当該水または水蒸気と金属と を反応させて水素と金属酸化物とに分離する酸化手段と、
    前記酸化手段によって分離された水素の流量制御する流量制御手段と、
    前記酸化手段によって分離された水素の流量を計測する流量センサと、
    前記流量センサによって計測された水素の流量に基づいて前記加熱手段による加熱量を変化させ、前記酸化手段による水素の発生量を制御する発生量制御手段とを備えた水素製造装置。
  3. 請求項1または2に記載した水素製造装置であって、
    前記金属またはその酸化物として、ナノサイズ微粒子のものを用いる水素製造装置。
  4. 請求項1からのいずれか一項に記載した水素製造装置であって、
    前記金属酸化物として酸化鉄を用いる水素製造装置
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