JP2008121096A - 金属酸化物の還元方法及び水素製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】金属の酸化還元反応を繰返して行う水素製造方法において、金属の焼結を抑制して良好な水素発生能力及び金属酸化物の還元能力を長期間にわたり維持することができ、且つ低コストである金属酸化物の還元方法を提供する。
【解決手段】水素製造装置には反応管11が設けられ、水素19と不活性ガス20が供給される混合ガス導入ラインと水タンク23からの水導入ラインおよび水素排出ラインと水排出ラインとが設けられている。200〜600℃に加熱された反応管の充填部13には金属酸化物が充填されており、水素分圧が20%〜80%の混合ガスを供給し接触させることにより金属に還元される。水素製造方法は上記還元方法により得られた金属を水に接触させることにより水素を発生させることができる。
【選択図】図1
【解決手段】水素製造装置には反応管11が設けられ、水素19と不活性ガス20が供給される混合ガス導入ラインと水タンク23からの水導入ラインおよび水素排出ラインと水排出ラインとが設けられている。200〜600℃に加熱された反応管の充填部13には金属酸化物が充填されており、水素分圧が20%〜80%の混合ガスを供給し接触させることにより金属に還元される。水素製造方法は上記還元方法により得られた金属を水に接触させることにより水素を発生させることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、金属酸化物の還元方法及び水素製造方法に関するものである。詳細には、本発明は、金属と水とを接触させて水素を製造する際に生成した金属酸化物の還元方法及び水素製造方法に関するものである。
近年、水素を燃料として用いる燃料電池等のシステムが数多く研究開発されており、水素は究極のクリーンエネルギーとして注目されている。この水素を安全且つ安価に供給する方法としては、触媒を用いてガソリンや灯油を改質する方法、水素吸蔵合金を用いる方法(水素貯蔵量:2.1重量%)、ベンゼン−シクロヘキサン系を水素化/脱水素反応する方法(水素貯蔵量:7.1重量%)等のいくつかの水素製造方式が提案されている。このような水素製造方式の中でも、金属の酸化還元反応を利用する方法(すなわち、金属により水を還元して水素を発生させる方法)は、安価な金属を用いて、金属100重量部あたり最大4.8重量部程度の水素を得ることができるので特に注目されている。また、この方法では、得られる水素が一酸化炭素等の触媒被毒物質を含有していないので、水素の純度が高いという更なる利点もある。
金属の酸化還元反応を利用する方法では、金属と水とを接触させることにより水素を発生させることができる。この反応では、同時に金属酸化物が生成するが、この金属酸化物は水素と接触させることにより金属に還元することができる。そして、この還元された金属は水と接触させることにより水素を再び発生させることができる。このように、金属の酸化還元反応を利用する方法では、金属酸化物を水素で還元して金属を得る反応と、得られた金属を水で酸化して水素を発生させる反応とが繰返し行われる。例えば、コストパフォーマンスの点で優れる鉄を金属として用いた場合には、酸化鉄を水素で還元して鉄を得る反応(1)と、反応(1)で得られた鉄を水で酸化して水素を発生させる反応(2)とが繰返し行われる。
Fe3O4+4H2→3Fe+4H2O (1)
3Fe+4H2O→Fe3O4+4H2 (2)
上記反応によれば、理論的には、原料の鉄100重量部あたり、最大で4.8重量部の水素を発生させることができる。
Fe3O4+4H2→3Fe+4H2O (1)
3Fe+4H2O→Fe3O4+4H2 (2)
上記反応によれば、理論的には、原料の鉄100重量部あたり、最大で4.8重量部の水素を発生させることができる。
このような金属の酸化還元反応を利用する水素製造方法では、反応活性を高めるために金属粒子が用いられている。かかる金属粒子は、ナノメートルオーダーの粒径を有する、細孔のない一次粒子であり、一次粒子は凝集して二次粒子を形成している。この二次粒子は、一次粒子の間隙としての細孔を有している。
また、1回の水素発生(ワンパス水素)工程において一定以上の水素発生量を長時間安定化させるために、金属と水又は水蒸気とを反応させる際に、水又は水蒸気を供給するにあたり、5〜60秒の供給と5〜60秒の停止とを繰返す方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、1回の水素発生(ワンパス水素)工程において一定以上の水素発生量を長時間安定化させるために、金属と水又は水蒸気とを反応させる際に、水又は水蒸気を供給するにあたり、5〜60秒の供給と5〜60秒の停止とを繰返す方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、金属の酸化還元反応を利用する水素製造方法では、反応を進めるために熱力学的に数百℃の温度が必要であり、さらに反応を効率よく進めるために350〜500℃程度の高温が必要であるため、金属の酸化還元反応を繰返すと、金属の二次粒子が焼結してしまうという問題があった。その結果、金属の酸化還元反応を繰返すにつれて、一次粒子の間隙としての細孔を介した水素や水の移動が難しくなって金属の酸化還元反応が十分に進まなくなり、水素発生能力及び金属酸化物の還元能力が次第に低下していた。このような金属の二次粒子の焼結による問題は、高い反応性を確保するためにナノメートルオーダーの粒径を有する金属の一次粒子を用いる場合に顕著であり、また、金属の酸化反応よりも金属酸化物の還元反応において生じていた。
かかる金属酸化物の還元反応では、水素と接触し易い金属酸化物の二次粒子の表面近傍が短時間で金属に還元されるのに対して、水素と接触し難い金属酸化物の二次粒子の内部は還元に時間がかかる。そのため、金属酸化物の二次粒子の内部と表面とでは還元度に差が生じ、金属酸化物の二次粒子の表面では、水素で過度に還元された過還元の金属状態となって、隣接する一次粒子間での焼結が進み易くなる。つまり、金属酸化物の二次粒子の内部は十分に還元されていないにも関わらず、次々と流れてくる水素によって金属酸化物の二次粒子の表面が過還元され、還元された金属の一次粒子の表面同士がネッキングして部分的に焼結してしまう。このように金属酸化物の二次粒子内部が十分に還元されないということは、金属あたりの水素発生量が期待したほど得られないという結果を引き起こす。更には、金属酸化物の二次粒子内部まで一気に完全に還元されるわけではないので、金属酸化物の還元速度も大きくはならず、還元に長時間を要し、単位時間あたりに必要な金属酸化物の還元効率が低下するという問題があった。
このような金属の焼結を抑制する方法としては、少量(3mol%)のAl、Cr、Ti、V、Ga、Mo及びZr等の元素を金属(鉄)に添加する方法がある(例えば、特許文献2及び非特許文献1参照)。
このような金属の焼結を抑制する方法としては、少量(3mol%)のAl、Cr、Ti、V、Ga、Mo及びZr等の元素を金属(鉄)に添加する方法がある(例えば、特許文献2及び非特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献2及び非特許文献1は、材料の観点から金属の焼結を抑制する方法を検討したものであって、所定の元素を金属に添加した材料を調製するのに手間とコストがかかっていた。
従って、本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、金属の酸化還元反応を繰返して行う水素製造方法において、金属の焼結を抑制して良好な水素発生能力及び金属酸化物の還元能力を長期間にわたり維持することができ、且つ低コストである金属酸化物の還元方法及び水素製造方法を提供することを目的とする。
従って、本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、金属の酸化還元反応を繰返して行う水素製造方法において、金属の焼結を抑制して良好な水素発生能力及び金属酸化物の還元能力を長期間にわたり維持することができ、且つ低コストである金属酸化物の還元方法及び水素製造方法を提供することを目的とする。
そこで、本発明者等は上記のような問題を解決すべく鋭意研究した結果、金属酸化物を金属に還元する際に生成する水が、金属の焼結に多大な影響を与えることを見出した。すなわち、金属の酸化還元反応を繰返すことにより生じる金属の焼結は、金属酸化物を金属に還元する際に生成した水が金属又は金属酸化物から十分に除去されずに、局所的に過度の還元反応が起こることに起因しており、還元反応に必要な水素以外に、生成した水を効率良く反応系外に排出するガス成分の存在が重要であることを見出した。
従って、本発明は、金属と水とを接触させて水素を製造する際に生成した金属酸化物の還元方法であって、水素と不活性ガスとからなり、且つ水素分圧が20%〜80%の混合ガスを接触させて前記金属酸化物を金属に還元することを特徴とする金属酸化物の還元方法である。
また、本発明は、上記金属酸化物の還元方法により得られた金属と水とを接触させて水素を発生させることを特徴とする水素製造方法である。
また、本発明は、上記金属酸化物の還元方法により得られた金属と水とを接触させて水素を発生させることを特徴とする水素製造方法である。
本発明によれば、金属の酸化還元反応を繰返して行う水素製造方法において、金属の焼結を抑制して良好な水素発生能力及び金属酸化物の還元能力を長期間にわたり維持することができ、且つ低コストである金属酸化物の還元方法及び水素製造方法を提供することができる。
実施の形態1.
以下に、図1を参照して本発明の実施の形態1について説明する。
図1は、本発明の金属酸化物の還元方法及び水素製造方法を実施するのに好適な水素製造装置を示す模式図である。
図1に示すように、水素製造装置には、SUS製の反応管11が設けられている。この反応管11には、水素19及び不活性ガス20がそれぞれガスマスフローコントローラ17及び18を介して分圧調整機能付ガス混合器16で混合され、該混合ガスが電磁弁15を介して供給される混合ガス導入ラインと、水タンク23から液体マスフローコントローラ22及び電磁弁21を介して水が供給される水導入ラインと、電磁弁24及びガスマスフローコントローラ25を介して水素タンク26に水素を排出する水素排出ラインと、電磁弁27を介して水タンク28に水を排出する水排出ラインとが設けられている。
以下に、図1を参照して本発明の実施の形態1について説明する。
図1は、本発明の金属酸化物の還元方法及び水素製造方法を実施するのに好適な水素製造装置を示す模式図である。
図1に示すように、水素製造装置には、SUS製の反応管11が設けられている。この反応管11には、水素19及び不活性ガス20がそれぞれガスマスフローコントローラ17及び18を介して分圧調整機能付ガス混合器16で混合され、該混合ガスが電磁弁15を介して供給される混合ガス導入ラインと、水タンク23から液体マスフローコントローラ22及び電磁弁21を介して水が供給される水導入ラインと、電磁弁24及びガスマスフローコントローラ25を介して水素タンク26に水素を排出する水素排出ラインと、電磁弁27を介して水タンク28に水を排出する水排出ラインとが設けられている。
さらに、反応管11には、反応管11を加熱するための加熱手段14が設けられている。かかる加熱手段14としては、特に制限されることはなく、従来公知のヒーター等を用いればよい。
また、反応管11内には、2枚の向かい合うSUS製のメッシュ12の間に挟まれた充填部13が設けられており、かかる充填部13には金属酸化物が充填されている。かかる充填部13に充填された金属酸化物は、水素と接触させることによって還元されて金属となる。次いで、還元された金属は、水と接触させることによって酸化されて再び金属酸化物となる。このように、充填部13の充填物は、金属の酸化還元反応に伴い、金属酸化物から金属へ、金属から金属酸化物へと順次繰返して変化する。
かかる金属としては、水を還元して水素を発生する金属であれば、特に制限されることはなく、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、インジウム、スズ、マグネシウム、ガリウム、ゲルマニウム及びセリウム等を挙げることができる。また、これらの金属を含む合金を用いてもよい。これら金属の中でも、コストパフォーマンスの点で最も優れる鉄が好ましい。
また、反応管11内には、2枚の向かい合うSUS製のメッシュ12の間に挟まれた充填部13が設けられており、かかる充填部13には金属酸化物が充填されている。かかる充填部13に充填された金属酸化物は、水素と接触させることによって還元されて金属となる。次いで、還元された金属は、水と接触させることによって酸化されて再び金属酸化物となる。このように、充填部13の充填物は、金属の酸化還元反応に伴い、金属酸化物から金属へ、金属から金属酸化物へと順次繰返して変化する。
かかる金属としては、水を還元して水素を発生する金属であれば、特に制限されることはなく、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、インジウム、スズ、マグネシウム、ガリウム、ゲルマニウム及びセリウム等を挙げることができる。また、これらの金属を含む合金を用いてもよい。これら金属の中でも、コストパフォーマンスの点で最も優れる鉄が好ましい。
また、かかる金属は、反応性の観点から、一次粒子の粒径が1μm以下であることが好ましく、0.005〜0.5μmであることがより好ましい。一次粒子の粒径が1μmを超えると、所望の反応活性が得られないことがある。
かかる金属の一次粒子は、凝集して二次粒子を形成している。かかる二次粒子は、金属の酸化還元反応をスムーズに行う観点から、二次粒子の比表面積が大きいことが好ましい。本発明においては、かかる二次粒子を、粉末状、粒状、ペレット状、球状、ハニカム状等の形態で用いることが可能である。
かかる金属の一次粒子は、凝集して二次粒子を形成している。かかる二次粒子は、金属の酸化還元反応をスムーズに行う観点から、二次粒子の比表面積が大きいことが好ましい。本発明においては、かかる二次粒子を、粉末状、粒状、ペレット状、球状、ハニカム状等の形態で用いることが可能である。
本発明の金属酸化物の還元方法では、金属酸化物を所定の混合ガスと接触させることで金属に還元することができる。
かかる還元方法において用いられる混合ガスは、水素19と不活性ガス20とから構成される。かかる成分以外のガス成分を用いると、金属酸化物の粒子表面で別の反応が生じるので好ましくない。ここで使用可能な不活性ガス20としては、ヘリウム、窒素及びアルゴンからなる群から選択される1種類以上のガスであることが好ましい。
かかる還元方法において用いられる混合ガスは、水素19と不活性ガス20とから構成される。かかる成分以外のガス成分を用いると、金属酸化物の粒子表面で別の反応が生じるので好ましくない。ここで使用可能な不活性ガス20としては、ヘリウム、窒素及びアルゴンからなる群から選択される1種類以上のガスであることが好ましい。
また、かかる還元方法において用いられる混合ガスは、水素分圧が20%〜80%、好ましくは40〜60%である。水素分圧が20%未満であると、還元反応に必要な水素が反応系に十分に供給されずに反応速度が著しく低下してしまい、還元反応が十分に進まない。その結果、水素貯蔵合金(最大水素貯蔵量:2.1重量%)程度の水素量しか得られなくなる。さらに、還元反応を十分に進めるために莫大なガス流量が必要となって実用上の問題があるだけではなく、DSS(Daily Stop Start)運転等のような、のべ1000回にも達する起動/停止が伴う運転に適さない。一方、水素分圧が80%を超えると、残圧力成分である不活性ガス20の流れが少なすぎて、生成した水を金属又は金属酸化物粒子から効率良く除去することができなくなる。その結果、水素のみを使用する従来の還元反応と大差なく、金属酸化物粒子の内部と表面とにおける還元度の差が大きくなって、金属の焼結が進み、金属の酸化還元反応を繰返すにつれて水素発生能力及び金属酸化物の還元能力が低下してしまう。
かかる金属酸化物の還元方法を行うには、水導入ラインの電磁弁21及び水素排出ラインの電磁弁24を閉じて、混合ガス導入ラインの電磁弁15及び水排出ラインの電磁弁27を開けた後、加熱手段14を所定の温度に加熱しつつ、混合ガス導入ラインから所定の混合ガスを反応管11に所定の流量で導入すればよい。こうすることにより、金属酸化物と混合ガスとが接触して金属酸化物が金属に還元され、それと同時に生成した水が、金属又は金属酸化物から分離されて水排出ラインから効率良く除去される。
金属酸化物の還元を行う際の加熱温度としては、200〜600℃であることが好ましく、350〜500℃であることがより好ましい。200℃未満であると、還元反応が十分に進行しないことがある。一方、600℃を超えると、金属が著しく焼結してしまうことがある。
また、反応時間及び混合ガスの流量としては、特に制限されず、使用する反応管11の大きさ及び金属酸化物の量等に応じて適宜設定すればよい。
金属酸化物の還元を行う際の加熱温度としては、200〜600℃であることが好ましく、350〜500℃であることがより好ましい。200℃未満であると、還元反応が十分に進行しないことがある。一方、600℃を超えると、金属が著しく焼結してしまうことがある。
また、反応時間及び混合ガスの流量としては、特に制限されず、使用する反応管11の大きさ及び金属酸化物の量等に応じて適宜設定すればよい。
本発明の水素製造方法では、上記還元方法により得られた金属を水と接触させることにより水素を発生させることができる。
かかる水素製造方法を行うには、混合ガス導入ラインの電磁弁15及び水排出ラインの電磁弁27を閉じて、水導入ラインの電磁弁21及び水素排出ラインの電磁弁24を開けた後、加熱手段14を所定の温度に加熱しつつ、水導入ラインから水を所定の流量で反応管11に導入すればよい。反応管11は所定の温度に加熱されているので、導入された水は直ちに水蒸気となり、金属と反応して水素を発生する。そして、発生した水素は水素排出ラインから排出される。かかる排出ラインから排出された水素は、燃料電池等に供給することができる。
ここで、加熱温度としては、200〜600℃であることが好ましく、350〜500℃であることが好ましい。200℃未満であると、反応が十分に進行しないことがある。一方、600℃を超えると、金属が著しく焼結してしまうことがある。
また、反応時間及び水の流量としては、特に制限されず、使用する反応管11の大きさ及び金属の量等に応じて適宜設定すればよい。
かかる水素製造方法を行うには、混合ガス導入ラインの電磁弁15及び水排出ラインの電磁弁27を閉じて、水導入ラインの電磁弁21及び水素排出ラインの電磁弁24を開けた後、加熱手段14を所定の温度に加熱しつつ、水導入ラインから水を所定の流量で反応管11に導入すればよい。反応管11は所定の温度に加熱されているので、導入された水は直ちに水蒸気となり、金属と反応して水素を発生する。そして、発生した水素は水素排出ラインから排出される。かかる排出ラインから排出された水素は、燃料電池等に供給することができる。
ここで、加熱温度としては、200〜600℃であることが好ましく、350〜500℃であることが好ましい。200℃未満であると、反応が十分に進行しないことがある。一方、600℃を超えると、金属が著しく焼結してしまうことがある。
また、反応時間及び水の流量としては、特に制限されず、使用する反応管11の大きさ及び金属の量等に応じて適宜設定すればよい。
かかる水素製造方法において生成した金属酸化物は、上記の金属酸化物の還元方法により金属に再び還元することができる。よって、これらの工程を繰返して行うことにより、連続的に水素を製造することができる。
以下、実施例により本発明の詳細を説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
[実施例1]
8gのα−Fe2O3粉末(純度:99.9%、平均粒径:10nm、和光純薬製)をムライト製磁性坩堝の中に入れ、軽くタッピングした後、500℃で5時間、大気中にて加熱した。次に、加熱後のα−Fe2O3粉末を、開口が#50メッシュのふるい、及び開口が#200メッシュのふるいに順次通過させて、二次粒子径が100μm程度の粒状酸化鉄を得た。次に、この粒状酸化鉄を、内径20mmのステンレス製反応管の中に設置した2枚の向かい合うステンレス製#600メッシュから作製された空間(充填部)内に入れて水素製造装置に配置した。
次に、水導入ラインの電磁弁及び水素排出ラインの電磁弁を閉じて、混合ガス導入ラインの電磁弁及び水排出ラインの電磁弁を開いた後、反応管の周囲をシースヒーターを用いて400℃に加熱しながら、水素と窒素とからなる混合ガス(水素分圧:窒素分圧=60:40)を50sccmの流量で反応管に導入し、60分間放置して酸化鉄を金属鉄に還元した(1回目の還元)。
次に、混合ガス導入ラインの電磁弁及び水排出ラインの電磁弁を閉じて、水導入ラインの電磁弁及び水素排出ラインの電磁弁を開けた後、反応管の周囲をシースヒーターを用いて400℃に加熱した反応管に0.05cc/minの一定速度で水を導入して水素を発生させた(1回目の酸化)。このとき、水素排出ラインから出てくる水素の量を時間毎に測定して、鉄100重量部あたりの水素発生量を算出した。
[実施例1]
8gのα−Fe2O3粉末(純度:99.9%、平均粒径:10nm、和光純薬製)をムライト製磁性坩堝の中に入れ、軽くタッピングした後、500℃で5時間、大気中にて加熱した。次に、加熱後のα−Fe2O3粉末を、開口が#50メッシュのふるい、及び開口が#200メッシュのふるいに順次通過させて、二次粒子径が100μm程度の粒状酸化鉄を得た。次に、この粒状酸化鉄を、内径20mmのステンレス製反応管の中に設置した2枚の向かい合うステンレス製#600メッシュから作製された空間(充填部)内に入れて水素製造装置に配置した。
次に、水導入ラインの電磁弁及び水素排出ラインの電磁弁を閉じて、混合ガス導入ラインの電磁弁及び水排出ラインの電磁弁を開いた後、反応管の周囲をシースヒーターを用いて400℃に加熱しながら、水素と窒素とからなる混合ガス(水素分圧:窒素分圧=60:40)を50sccmの流量で反応管に導入し、60分間放置して酸化鉄を金属鉄に還元した(1回目の還元)。
次に、混合ガス導入ラインの電磁弁及び水排出ラインの電磁弁を閉じて、水導入ラインの電磁弁及び水素排出ラインの電磁弁を開けた後、反応管の周囲をシースヒーターを用いて400℃に加熱した反応管に0.05cc/minの一定速度で水を導入して水素を発生させた(1回目の酸化)。このとき、水素排出ラインから出てくる水素の量を時間毎に測定して、鉄100重量部あたりの水素発生量を算出した。
30分後、水素発生量がゼロになったところで、1回目の還元と同様にして、電磁弁を切り替え、酸化鉄を金属鉄に還元した(2回目の還元)。
30分後、水素排出ラインのガスマスフローコントローラの混合ガス流量が50sccmになり、導入した混合ガスが破過したところで、1回目の酸化と同様にして水素を発生させた(2回目の酸化)。
2回目の還元及び酸化と同様の方法で、酸化及び還元を繰返し、100回及び1000回酸化後における鉄100重量部あたりの水素発生量を算出した。この結果を表1に示す。なお、鉄100重量部あたりの水素発生量の理論最大値は4.8重量部である。
30分後、水素排出ラインのガスマスフローコントローラの混合ガス流量が50sccmになり、導入した混合ガスが破過したところで、1回目の酸化と同様にして水素を発生させた(2回目の酸化)。
2回目の還元及び酸化と同様の方法で、酸化及び還元を繰返し、100回及び1000回酸化後における鉄100重量部あたりの水素発生量を算出した。この結果を表1に示す。なお、鉄100重量部あたりの水素発生量の理論最大値は4.8重量部である。
[実施例2]
2回目以降の還元に用いる水素と窒素とからなる混合ガスの分圧比を水素分圧:窒素分圧=20:80にしたこと以外は、実施例1と同様にして還元及び酸化を繰返し、1回、100回及び1000回酸化後における鉄100重量部あたりの水素発生量を算出した。この結果を表1に示す。
2回目以降の還元に用いる水素と窒素とからなる混合ガスの分圧比を水素分圧:窒素分圧=20:80にしたこと以外は、実施例1と同様にして還元及び酸化を繰返し、1回、100回及び1000回酸化後における鉄100重量部あたりの水素発生量を算出した。この結果を表1に示す。
[実施例3]
2回目以降の還元に用いる水素と窒素とからなる混合ガスの分圧比を水素分圧:窒素分圧=80:20にしたこと以外は、実施例1と同様にして還元及び酸化を繰返し、1回、100回及び1000回酸化後における鉄100重量部あたりの水素発生量を算出した。この結果を表1に示す。
2回目以降の還元に用いる水素と窒素とからなる混合ガスの分圧比を水素分圧:窒素分圧=80:20にしたこと以外は、実施例1と同様にして還元及び酸化を繰返し、1回、100回及び1000回酸化後における鉄100重量部あたりの水素発生量を算出した。この結果を表1に示す。
[比較例1]
2回目以降の還元に用いる水素と窒素とからなる混合ガスの分圧比を水素分圧:窒素分圧=10:90にしたこと以外は、実施例1と同様にして還元及び酸化を繰返し、1回、100回及び1000回酸化後における鉄100重量部あたりの水素発生量を算出した。この結果を表1に示す。
2回目以降の還元に用いる水素と窒素とからなる混合ガスの分圧比を水素分圧:窒素分圧=10:90にしたこと以外は、実施例1と同様にして還元及び酸化を繰返し、1回、100回及び1000回酸化後における鉄100重量部あたりの水素発生量を算出した。この結果を表1に示す。
[比較例2]
2回目以降の還元に用いる水素と窒素とからなる混合ガスの分圧比を水素分圧:窒素分圧=90:10にしたこと以外は、実施例1と同様にして還元及び酸化を繰返し、1回、100回及び1000回酸化後における鉄100重量部あたりの水素発生量を算出した。この結果を表1に示す。
2回目以降の還元に用いる水素と窒素とからなる混合ガスの分圧比を水素分圧:窒素分圧=90:10にしたこと以外は、実施例1と同様にして還元及び酸化を繰返し、1回、100回及び1000回酸化後における鉄100重量部あたりの水素発生量を算出した。この結果を表1に示す。
[比較例3]
2回目以降の還元において混合ガスの代わりに水素を用いたこと以外は、実施例1と同様にして還元及び酸化を繰返し、1回、100回及び1000回酸化後における鉄100重量部あたりの水素発生量を算出した。この結果を表1に示す。
2回目以降の還元において混合ガスの代わりに水素を用いたこと以外は、実施例1と同様にして還元及び酸化を繰返し、1回、100回及び1000回酸化後における鉄100重量部あたりの水素発生量を算出した。この結果を表1に示す。
表1に示されているように、実施例1〜3では、水素発生量が多いと共に、100回及び1000回の酸化還元反応を繰返した後でも水素発生量の低下はほとんどなかった。
また、実施例1〜3において1000回酸化後の各サンプルを反応管から取り出したところ、各サンプルは焼結することなく初期投入時の粒状形態をそのまま維持しており、Fe3O4の黒灰色であった。
以上のことから、実施例1〜3では、鉄粒子の焼結が抑制されることにより、良好な水素発生能力及び金属酸化物の還元能力を長期間にわたり維持することができたものと考えられる。
また、実施例1〜3において1000回酸化後の各サンプルを反応管から取り出したところ、各サンプルは焼結することなく初期投入時の粒状形態をそのまま維持しており、Fe3O4の黒灰色であった。
以上のことから、実施例1〜3では、鉄粒子の焼結が抑制されることにより、良好な水素発生能力及び金属酸化物の還元能力を長期間にわたり維持することができたものと考えられる。
これに対して、比較例1では、混合ガスの水素分圧が低すぎるために、水素発生量が少なかった。
また、比較例1において1000回酸化後のサンプルを反応管から取り出したところ、サンプルは焼結することなく初期投入時の粒状形態をそのまま維持していたものの、Fe3O4の黒灰色の一部が赤色を呈しており、斑点状に未反応のα−Fe2O3が残っていた。
以上のことから、比較例1では、混合ガスの水素分圧が低すぎて酸化鉄が一部しか還元されないため、水素発生量が少なくなったものと考えられる。
また、比較例1において1000回酸化後のサンプルを反応管から取り出したところ、サンプルは焼結することなく初期投入時の粒状形態をそのまま維持していたものの、Fe3O4の黒灰色の一部が赤色を呈しており、斑点状に未反応のα−Fe2O3が残っていた。
以上のことから、比較例1では、混合ガスの水素分圧が低すぎて酸化鉄が一部しか還元されないため、水素発生量が少なくなったものと考えられる。
また、比較例2及び3では、初期(1回目の酸化)の水素発生量は多かったが、酸化還元反応を繰り返すにつれて水素発生量が少なくなった。
また、比較例2において1000回酸化後のサンプルを反応管から取り出したところ、サンプルは焼結してシュリンクしており、数mm程度の黒灰色の塊状形状となっていた。同様に、比較例3において1000回酸化後のサンプルを反応管から取り出したところ、サンプルは焼結して黒灰色の塊状形状となっていた。かかる塊を割ってみたところ、内部には赤色を呈した未反応のα−Fe2O3が残っていた。
以上のことから、比較例2及び3では、混合ガスの水素分圧が高すぎるか、又は水素のみであるために、酸化還元反応を繰り返すにつれて鉄粒子が焼結してしまい、水素発生量が少なくなったものと考えられる。
また、比較例2において1000回酸化後のサンプルを反応管から取り出したところ、サンプルは焼結してシュリンクしており、数mm程度の黒灰色の塊状形状となっていた。同様に、比較例3において1000回酸化後のサンプルを反応管から取り出したところ、サンプルは焼結して黒灰色の塊状形状となっていた。かかる塊を割ってみたところ、内部には赤色を呈した未反応のα−Fe2O3が残っていた。
以上のことから、比較例2及び3では、混合ガスの水素分圧が高すぎるか、又は水素のみであるために、酸化還元反応を繰り返すにつれて鉄粒子が焼結してしまい、水素発生量が少なくなったものと考えられる。
よって、本発明の金属酸化物の還元方法及び水素製造方法は、金属の酸化還元反応を繰返して行う水素製造方法において、金属の焼結を抑制して良好な水素発生能力及び金属酸化物の還元能力を長期間にわたり維持することができる。
11 反応管、12 メッシュ、13 充填部、14 加熱手段、15 電磁弁、16 分圧調整機能付ガス混合器、17 ガスマスフローコントローラ、18 ガスマスフローコントローラ、19 水素、20 不活性ガス、21 電磁弁、22 液体マスフローコントローラ、23 水タンク、24 電磁弁、25 ガスマスフローコントローラ、26 水素タンク、27 電磁弁、28 水タンク。
Claims (5)
- 金属と水とを接触させて水素を製造する際に生成した金属酸化物の還元方法であって、
水素と不活性ガスとからなり、且つ水素分圧が20%〜80%の混合ガスを接触させて前記金属酸化物を金属に還元することを特徴とする金属酸化物の還元方法。 - 前記不活性ガスが、ヘリウム、窒素及びアルゴンからなる群から選択される1種類以上のガスであることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物の還元方法。
- 前記金属が鉄であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属酸化物の還元方法。
- 前記金属の一次粒子径が、1μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属酸化物の還元方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属酸化物の還元方法により得られた金属と水とを接触させて水素を発生させることを特徴とする水素製造方法。
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-
2006
- 2006-11-15 JP JP2006309255A patent/JP2008121096A/ja active Pending
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