JP4754059B2 - オレフィン系樹脂防水シート用液状シール材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、防水シートの施工時に防水シート同士を熱風溶接機により溶融接合した際の接合端部に配置するシール材組成物に関するもので、オレフィン系の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーからなる防水シートの接合端部の水密処理を施すための液状シール材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、熱可塑性樹脂組成物からなる防水材としてポリ塩化ビニル製防水シートが多用されている。防水シートの施工方法は、接着剤や固定用ビスにより施工下地面に固定し、防水シート同士を熱融着や接着剤、または溶剤により接合することにより行う。しかしながら、接合した際の端部は接合不良による漏水が起こる可能性が高い。そのため、この接合端部に対して更に水密処理を行うことが多く、その方法としては溶接棒を接合端部に熱融着する方法や、液状シール材を接合端部に塗布する方法があり、特に施工性の簡便さから液状シール材を用いる方法が増えてきている。ポリ塩化ビニル製防水シートの場合、ポリ塩化ビニルの溶剤に対する高い溶解性のため、防水シートと同質の樹脂組成物を溶剤に溶解した液状シール材を防水シートに塗布すれば容易に一体化するため、強固に、また確実に水密処理をすることができる。
【0003】
一方、近年環境破壊などの観点から含ハロゲン素材が忌避される傾向にあり、防水材においても非塩化ビニル系材料からなる製品の開発が行われている。この非塩化ビニル系防水材は主に熱可塑性オレフィン系樹脂やオレフィン系熱可塑性エラストマーなどのオレフィン系樹脂組成物からなる製品が開発されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、オレフィン系樹脂は非極性材料であり、また溶剤に対する溶解性も低い為、接着という観点からは不利な材料であり、防水シート同士の接合端部の水密処理においても、従来の塩化ビニル製防水シートのように防水シートと同質の樹脂組成物を溶剤に溶解した液状シール材を用いる方法は困難であり、また、強固に接着できる材料も少ない為、オレフィン系樹脂製防水シートにおいては、液状シール材による防水シート接合端部の水密処理を用いる方法は困難であった。
【0005】
そのため、ポリオレフィン樹脂やオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる防水シート用のシール材として特開2000−73045号公報に示されるようなスチレン−オレフィン−スチレントリブロック共重合体を主成分とする防水シート用のシール材が開発された。しかし、スチレン−オレフィン−スチレントリブロック共重合体をシール材の主成分とした場合、スチレンユニットによる光エネルギーの吸収のため耐候性が劣るという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、オレフィン系の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーからなる防水シートと強固に接着し、また耐候性にも優れるオレフィン系樹脂防水シート用液状シール材を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、請求項1では、樹脂成分が、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、又は190℃における溶融粘度が400〜8500Pa・sであるエチレン−プロピレン共重合体から成るオレフィン系共重合体とスチレン−オレフィン共重合体から成り、該樹脂成分が溶剤に溶解されていることを特徴とするオレフィン系樹脂防水シート用液状シール材であり、該オレフィン系共重合体は、オレフィン材料への親和性、強度、耐候性などに優れ、液状シール材の樹脂組成物に好適であるが、溶剤に対する溶解性に若干劣るため、液状シール材の樹脂含有量を増やすことができず、溶剤揮散後の液状シール材膜は肉痩せするため、溶剤に対する溶解性の高いスチレン−オレフィン系共重合体をブレンドすることにより液状シール材として樹脂含有量が十分で、溶剤が揮散した後も肉痩せしない液状シール材が得られた。また、スチレン−オレフィン系共重合体単独に比べて樹脂成分中のスチレン含有量も低減されているため紫外線劣化などが抑えられ、耐候性に優れる液状シール材を得ることができた。また、前記のオレフィン系共重合体がエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、又は190℃における溶融粘度が400〜8500Pa・sであるエチレン−プロピレン共重合体であることを特徴とするオレフィン系樹脂防水シート用液状シール材であり、この3種類のオレフィン系共重合体はオレフィン系樹脂の中でも比較的溶剤に対する溶解性が高く、また、耐候性も優れるため液状シール材として好適である。
【0008】
また、請求項2では前記オレフィン系共重合体と前記スチレン−オレフィン共重合体との配合割合が、前者が20〜80wt%、後者が80〜20wt%であることを特徴とするオレフィン系樹脂防水シート用液状シール材である。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明を詳しく説明する。
【0010】
図1は防水シート同士を接合し、その端部の水密処理に本発明のオレフィン系樹脂防水シート用液状シール材を施したものであり、オレフィン系樹脂組成物からなる防水シート1、2は施工下地面に接着剤や固定用ビスなど周知の手段により固定し、両シートの接合端部を熱融着などの方法によって接合し、本発明の液状シール材3で防水シート2の端部を覆うように、防水シート1から防水シート2にかけて塗布した状態である。
【0011】
本発明の液状シール材3はオレフィン系共重合体とスチレン−オレフィン共重合体からなり、この両者を組み合わせることにより、接着力や強度、耐候性など液状シール材の性能が幅広い範囲で選択することができる。
【0012】
本発明の液状シール材3における樹脂組成物はオレフィン系共重合体とスチレン−オレフィン共重合体からなるが、オレフィン共重合体としては、エチレンプロピレンゴムやエチレンブテンゴム等のα−オレフィン共重合ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体やエチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン−メタクリル酸エステル共重合体、低分子量非晶性α−オレフィン共重合体が挙げられ、その中でもオレフィン系材料への親和性、溶剤に対する溶解性、耐候性に優れる点からエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、低分子量非晶性α−オレフィン共重合体が好ましい。
【0013】
エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−アクリル酸エチル共重合体としては、酢酸ビニルもしくはアクリル酸エチルの含有量が25〜50wt%、より好ましくは30〜45wt%で、メルトフロート(MFR→JIS K6760温度190℃、荷重21.18N)が2.0〜50.0g/10分の範囲のものが好ましく、また、低分子量非晶性α−オレフィン共重合体としては、エチレン−プロピレン共重合体やプロピレン−ブテン共重合体などが挙げられるが、耐候性の観点からエチレン−プロピレン共重合体が好ましく、190℃における溶融粘度が400〜8500Pa・s、より好ましくは1000〜7500Pa・sで、エチレン含有量が高いものが適度な硬度の液状シール材を得ることができ好ましい。
【0014】
本発明に用いるスチレン−オレフィン共重合体としては、スチレンとオレフィンのジブロック共重合体、トリブロック共重合体、ランダム共重合体やグラフト共重合体が挙げられるが、溶剤に対する溶解性の観点からジブロック共重合体、トリブロック共重合体、ランダム共重合体が好ましく、樹脂成分を比較的高濃度に溶解できるため、溶剤揮散後も十分の肉厚を確保した液状シール材膜を得ることができる。
【0015】
このスチレン−オレフィン共重合体のオレフィンコモノマーとしてはイソプレンや、ブタジエン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン−ブチレン共重合体、エチレン、ブタジエン水素添加物、イソプレン水素添加物等が挙げられるが、好ましくは二重結合を含まないものを用いることにより耐候性に優れた液状シール材を得ることができる。
【0016】
これらのスチレン−オレフィン共重合体は、スチレン含量が10〜60wt%、より好ましくは20〜40wt%の共重合体であり、スチレン−オレフィン共重合体のスチレン含量が10wt%以上ならば溶剤に対する溶解性が確保され、スチレン含量が60wt%以下ならばオレフィン材料への親和性が発現され、オレフィン系樹脂防水シートに対する十分な接着力が確保されるため液状シール材の樹脂成分として好適に用いることができる。
【0017】
本発明に用いる樹脂成分はオレフィン系共重合体とスチレン−オレフィン共重合体から成るが、接着力、強度、耐候性の点からブレンドする割合は、オレフィン系共重合体20〜80wt%、より好ましくは30〜70wt%とスチレン−オレフィン共重合体80〜20wt%、より好ましくは70〜30wt%である。前記の割合で樹脂をブレンドすることにより、各樹脂の特徴が発現され、それぞれの樹脂単独では足りなかった液状シール材としての性能を互いに補完でき、接着力、強度、耐候性等の性能を十分に満たす液状シール材を得るのに好適である。
【0018】
本発明の液状シール材は、前記のスチレン−オレフィン共重合樹脂とオレフィン系共重合樹脂を主成分とする樹脂組成物を溶剤に溶解させたものを用いるが、液状シール材における樹脂含有量は肉痩せがなく耐候性や強度が確保され、作業性に適した粘度範囲の液状シール材を得ることができるという点から15〜60wt%がよく、作業性と塗布した時のタレ防止などの施工性の観点から好ましくは25〜40wt%がよい。
【0019】
溶剤としてはシール材の樹脂組成物に対し優れた溶解性を示す、石油エーテルやトルエン、キシレン、シクロヘキサン、ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素等を用いることができるが、環境問題や毒性、オレフィン系樹脂組成物からなる防水シートに対しての高い親和性を考慮すると、特にトルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの溶剤を用いるのが好ましく、これらの混合溶媒を用いることも可能である。また、本発明では上記の良溶媒同士の混合溶媒以外にも著しく溶解性を損なわない範囲で、上記良溶媒にエチルメチルケトンや、アセトン、メタノール、エタノールなどの貧溶媒を混合した溶媒を用いることができ、特に低沸点の貧溶媒を混合することにより、乾燥速度を調整でき、タレ防止等の作業性を向上できるなどの利点がある。
【0020】
また、本発明の液状シール材には樹脂組成物のほかに、炭酸カルシウム、シリカ、タルク等の充填剤や、接着力向上のため、脂環族や芳香族系石油樹脂などの粘着付与剤、軟化剤として、可塑剤やプロセスオイルなどを添加することできる。更に耐候性向上のために酸化防止剤や、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)等の耐光安定剤を添加することが好ましい。
【0021】
特に耐候性の向上にはHALSの添加が大きく影響を与える。添加量としては、樹脂100重量部に対して0.05〜2.5重量部添加することが好ましい。HALSを0.05重量部以上添加することにより液状シール材としての耐候性が確保され、また、2.5重量部以下にすることにより、耐候性の効果が飽和する量以上に添加するHALSを節約でき、コスト的に好ましい。また、この場合におけるHALSとしては高分子量タイプのものが好ましく、分子量が1000以上のものが好ましい。高分子量タイプのHALSを用いた場合、ブルーム等による塗布後の液状シール材膜からの損失が少なく、長期にわたり耐候性を保持する液状シール材を得ることができる。
【0022】
【実施例】
以下に本発明について実施例及び比較例を挙げて、さらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0023】
「液状シール材の作製方法」
樹脂としてオレフィン系共重合樹脂とスチレン−オレフィン共重合樹脂、溶剤、その他添加剤を溶解機に投入し、攪拌することにより組成物を溶剤に溶解し、オレフィン系樹脂防水シート用液状シール材を得た。
【0024】
「評価方法」
評価は以下の項目について行った。
180°剥離強度
引張試験機による180°剥離試験を行った。サンプルは、オレフィン系樹脂防水シート上に液状シール材をバーコーターで0.6mmの厚さで塗布し、補強材を積層し、48時間乾燥養生後20℃の環境下で100mm/minの引張速度で剥離試験を行った。
耐候性試験
促進曝露耐候試験機による耐候試験を行った。63℃、湿度50%の環境下で紫外線照射強度を60mW/cm2とし、表面のクラック発生状況を評価した。
作業性
平面部と垂直部のオレフィン系樹脂防水シートに液状シール材の試験施工を行い、塗布のしやすさ、タレの発生により作業性を評価した。
これらの項目の評価基準は、表1のように定めた。
【0025】
【表1】
【0026】
【実施例1〜6】
前記の液状シール材の作製方法により、実施例1〜6として表2〜4に示す配合の液状シール材を作製し、性能の評価に用いた。
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
【比較例1、2】
前記の液状シール材の作製方法により、比較例1、2として表5、6に示す配合の液状シール材を作製し、性能の評価に用いた。
【0031】
【表5】
【0032】
【表6】
【0033】
表4に示したように実施例では接着力、耐候性、作業性にバランスの取れた性能の液状シール材が得られた。一方、表6に示したように比較例は、評価項目のいずれかが十分な性能を得られておらず、液状シール材としての性能を満足することができなかった。
【0034】
【発明の効果】
本発明は樹脂成分が、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、又は190℃における溶融粘度が400〜8500Pa・sであるエチレン−プロピレン共重合体から成るオレフィン系共重合体とスチレン−オレフィン共重合体から成り、該樹脂成分が溶剤に溶解されていることを特徴とするから、オレフィン系の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーからなる防水シートに対し十分な接着性を有するため、防水シート同士の接合端部の十分な水密処理ができ、また耐候性にも優れ、長期にわたり防水シート接合端部からの漏水を防ぐことができ、また、オレフィン系共重合体がエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、又は190℃における溶融粘度が400〜8500Pa・sであるエチレン−プロピレン共重合体であることから、溶剤に対する溶解性が高く溶剤揮散後のシール材膜の肉痩せがなく充分な肉厚を確保するものとなり、前記の効果を更に向上させることができる。
【0035】
また、オレフィン系共重合体とスチレン−オレフィン共重合体との配合割合が、前者が20〜80wt%、後者が80〜20wt%であることを特徴とすることにより、各樹脂の特徴が発現され、それぞれの樹脂単独では足りなかった液状シール材としての性能を互いに補完でき、接着力、強度、耐候性等の性能を十分に満たす液状シール材を得るのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 防水シート同士の接合端部の水密処理状態図。
【符号の説明】
1,2:防水シート、3:液状シール材
Claims (2)
- オレフィン系樹脂よりなる防水シート同士の接合端部の水密処理に用いる液状シール材であり、樹脂成分が、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、又は190℃における溶融粘度が400〜8500Pa・sであるエチレン−プロピレン共重合体から成るオレフィン系共重合体とスチレン−オレフィン共重合体から成り、該樹脂成分が溶剤に溶解されていることを特徴とするオレフィン系樹脂防水シート用液状シール材。
- 前記オレフィン系共重合体と前記スチレン−オレフィン共重合体との配合割合が、前者が20〜80wt%、後者が80〜20wt%であることを特徴とする請求項1記載のオレフィン系樹脂防水シート用液状シール材。
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