JP4753669B2 - パンタグラフ揚力測定装置 - Google Patents
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走行する電車や機関車などの電気車では、パンタグラフに作用する空気力によってパンタグラフのすり板が架線のトロリ線を押上げる力(押上力)が変化する。この押上力の変化分をパンタグラフ揚力と称し、押上力が増加するときの符号を正とする。図12に示す従来のパンタグラフ揚力測定装置115は、パンタグラフ101のすり板102が取り付けられた集電舟103とパンタグラフ101の台枠113との間に配置され、パンタグラフ101に作用するパンタグラフ揚力を測定するためのロードセル116と、集電舟103とロードセル116とを連結するワイヤ117と、ワイヤ117を集電舟103に接続するための治具118などを備えている。このような従来のパンタグラフ測定装置115では、集電舟103と台枠113とをロードセル116及びワイヤ117によって連結して、パンタグラフ101の高さを一定にしている。従来のパンタグラフ揚力測定装置115では、風洞試験装置内のパンタグラフ101に装着された状態で気流を流し、パンタグラフ101に作用するパンタグラフ揚力が測定されるとともに、このパンタグラフ101から発生する騒音を騒音測定装置によって測定している。しかし、従来のパンタグラフ揚力測定装置115では、ロードセル116及びワイヤ117に空気力が作用するとともに、治具118を集電舟103に取り付ける必要があるため、集電舟103のまわりの空気の流れが治具118のために変化してしまう場合があり、パンタグラフ101に作用するパンタグラフ揚力をロードセル116によって正確に測定できない問題点があった。また、従来のパンタグラフ揚力測定装置115では、ロードセル116、ワイヤ117及び治具118から騒音が発生するため、パンタグラフ101の正確な空力音を測定するためにはロードセル116、ワイヤ117及び治具118を取り外してパンタグラフ揚力の測定とは別に騒音を測定する必要がある。このため、騒音測定時にはパンタグラフ101の状態をパンタグラフ揚力測定時と同じ条件に調整する必要があり、調整に手間がかかり試験回数が増加する問題点があった。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、パンタグラフ(1)に作用するパンタグラフ揚力を測定するパンタグラフ揚力測定装置であって、前記パンタグラフの主軸(6)のてこ部(6d)とこのパンタグラフの固定部(13e)との間に作用する荷重を検出し、前記パンタグラフ揚力を検出するパンタグラフ揚力検出部(16)と、前記てこ部と前記固定部との間に前記パンタグラフ揚力検出部を連結する連結部(17,18)とを備え、前記パンタグラフ揚力検出部及び前記連結部は、前記パンタグラフの風防部(12)に覆われていることを特徴とするパンタグラフ揚力測定装置(15)である。
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係るパンタグラフ揚力測定装置が取り付けられたパンタグラフを模式的に示す斜視図である。
図1〜図3に示すパンタグラフ揚力測定装置15は、パンタグラフ揚力を測定する装置である。パンタグラフ揚力測定装置15は、気流の流れによってパンタグラフ1を昇降させる方向の空気力がこのパンタグラフ1に作用したときに、主軸6のてこ部6dと台枠13の固定部13eとの間に作用する荷重を検出して、この検出結果に基づいてパンタグラフ揚力を演算する。パンタグラフ揚力測定装置15は、図1〜図3に示すパンタグラフ揚力検出部16と、連結部17,18と、図1に示す信号処理部19と、パンタグラフ揚力演算部20と、記録部21と、表示部22と、印刷部23と、制御部24などを備えている。
図4に示す間隔調整部18cは、パンタグラフ1の集電舟3の高さを所定の高さに調整するために、主軸6のてこ部6dと台枠13の固定部13eとの間の間隔を調整する手段である。間隔調整部18cは、図4(B)に示すように、集電舟3の高さを低くするときには、主軸6のてこ部6dと台枠13の固定部13eとの間の間隔を広く調整し、図4(A)に示すように集電舟3の高さを高くするときには、主軸6のてこ部6dと台枠13の固定部13eとの間の間隔を狭く調整する。間隔調整部18cは、図2及び図3に示すように、筒状部18hと、ナット18i,18jなどを備えている。筒状部18hは、内周部に雌ねじ部18k,18mが形成された筒ナット状の部材であり、図3に示すように雌ねじ部18k,18mの一方は右ねじであり他方は左ねじである。ナット18i,18jは、連結軸18aの雄ねじ部18e,18fにそれぞれ装着されており、雄ねじ部18e,18fと雌ねじ部18k,18mとが緩むのを防止する。ナット18oは、パンタグラフ揚力検出部16の雌ねじ部16bと連結軸18aの雄ねじ部18dとが緩むのを防止する部材であり、雄ねじ部18dに装着されている。
先ず、風洞試験装置内にパンタグラフ1を設置して風防部12を取り外し、図1に二点鎖線で示すダンパ装置14を取り外す。そして、図2及び図3に示すように、連結部17のてこ部17aを締結部材17bによって主軸6のてこ部6dに固定するとともに、連結部18の円環部18gを台枠13の固定部13eに固定して、パンタグラフ揚力検出部16及び連結部17,18がパンタグラフ1に装着される。次に、連結部18の雄ねじ部18e,18fと間隔調整部18cの雌ねじ部18k,18mとの噛み合い量を調整する。その結果、図4に示すように、主軸6のてこ部6dと台枠13の固定部13eとの間の間隔が変化するため、図1に示すA1,A2方向に主軸6が回転して枠組5が昇降し、図4に示すようにパンタグラフ1の姿勢が変化し集電舟3の高さも変化する。
図5に示す縦軸は、揚力平均値(N)であり、横軸は風速(km/h)であり、ワイヤ方式は図12に示す従来のパンタグラフ揚力測定装置115のようなワイヤ117及び治具118を用いる測定方法であり、新方式は図1に示すパンタグラフ揚力測定装置15のようなワイヤ117及び治具118を用いない測定方式である。図5に示すグラフは、パンタグラフ1,101の高さを同一にしたときのパンタグラフ揚力の測定結果である。図5に示すように、新方式では従来のワイヤ方式とほぼ同じ結果が得られていることがわかる。
図6に示す縦軸は、騒音レベル(dB)であり、横軸は1/3オクターブバンド中心周波数(Hz)であり、ワイヤ方式は風速270km/h及び風速300km/hのときの騒音データであり、新方式は風速270km/h及び風速300km/hのときの騒音データである。図6に示すグラフは、パンタグラフ1,101の高さを同一にしたときの騒音測定結果である。図6に示すように、1/3オクターブバンド中心周波数が6.3kHzを超えるとワイヤ方式ではワイヤから発生する空力音のため騒音レベルが高くなっているが、新方式では騒音レベルが低下している。その結果、新方式では、パンタグラフ揚力検出部16及び連結部17,18が気流の流れを遮ることがないためワイヤ方式に比べてパンタグラフ1の空力音を精度よく測定していることが分かる。
(1) この第1実施形態では、パンタグラフ1の風防部12にパンタグラフ揚力検出部16が覆われている。このため、気流の影響を受けない場所にパンタグラフ揚力検出部16が配置されており、パンタグラフ揚力検出部16に空気力が作用するのを防ぐことができるとともに、パンタグラフ揚力検出部16から空力音が発生するのを防ぐことができる。その結果、パンタグラフ揚力検出部16が気流の影響を受けないため、パンタグラフ揚力と騒音を同時に正確に測定することができる。
図7は、この発明の第2実施形態に係るパンタグラフ揚力測定装置が取り付けられたパンタグラフを模式的に示す斜視図である。図8は、この発明の第2実施形態に係るパンタグラフ揚力測定装置のパンタグラフ揚力検出部及び連結部の平面図である。図9は、この発明の第2実施形態に係るパンタグラフ揚力測定装置のパンタグラフ揚力検出部及び連結部の側面図である。図10は、図9のX-X線で切断した状態を示す断面図である。以下では、図1〜図3に示す部分と同一の部分については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
パンタグラフ揚力検出部16及び連結部17,18をパンタグラフ1に装着し、パンタグラフ1に風防部12を装着した後に、図7に示す駆動操作部25を操作して駆動力発生部18nを正転又は逆転させ、連結部18の雄ねじ部18e,18fと間隔調整部18cの雌ねじ部18k,18mとの噛み合い量を調整する。その結果、図4に示すように、パンタグラフ1の姿勢が変化し集電舟3の高さも変化する。駆動状態検出部26が駆動力発生部18nの回転子18tの回転量を検出してこの検出結果を制御部24に出力すると、この検出結果に基づいて制御部24が集電舟3の高さを演算してこの演算結果を表示部22に表示する。このため、表示部22に表示される集電舟3の高さを確認しながら駆動操作部25を手動操作し、パンタグラフ1の姿勢が任意の姿勢に変化して集電舟3の高さが調整される。
この第2実施形態では、主軸6のてこ部6dと台枠13の固定部13eとの間の間隔を調整するための駆動力を外部操作によって自動的に駆動力発生部18nが発生する。このため、主軸6のてこ部6dと台枠13の固定部13eとの間の間隔を、気流の流れを遮らずに駆動力発生部18nによって遠隔操作して調整することができる。その結果、例えば、風洞試験中に風洞試験装置内に作業者が入り込みパンタグラフ1の姿勢を手作業で変える必要がなくなり、パンタグラフ1に気流が流れている状態でこのパンタグラフ1の姿勢を自動的に変化させ、集電舟3の高さを変化させながらパンタグラフ揚力及び騒音を測定することができる。
図11は、この発明の第3実施形態に係るパンタグラフ揚力測定装置が取り付けられたパンタグラフを模式的に示す斜視図である。
図11に示すパンタグラフ揚力測定装置15は、集電舟3の振動を振動検出部27によって検出してパンタグラフ揚力検出部16の出力信号から慣性力成分を除去し、パンタグラフ揚力演算部20の演算結果を補正する。パンタグラフ揚力測定装置15は、図11に示すように、パンタグラフ揚力検出部16と、連結部17,18と、信号処理部19と、パンタグラフ揚力演算部20と、記録部21と、表示部22と、印刷部23と、制御部24と、駆動操作部25と、駆動状態検出部26と、振動検出部27と、信号処理部28と、慣性力演算部29と、補正部30などを備えている。
この第3実施形態では、パンタグラフ1の集電舟3の振動を検出する振動検出部27の検出結果に基づいて、このパンタグラフ揚力を演算するパンタグラフ揚力演算部20の演算結果を補正部30が補正する。このため、パンタグラフ1に作用するパンタグラフ揚力をより一層精度よく演算することができる。
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、シングルアーム型パンタグラフを例に挙げて説明したが、翼型パンタグラフや菱形パンタグラフなどについてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、風洞試験装置内で実物のパンタグラフ1を試験する場合を例に挙げて説明したが、風洞試験装置内で模型パンタグラフを試験する場合についてもこの発明を適用できる。さらに、この実施形態では、風洞試験装置内でパンタグラフ揚力及び空力音を測定する場合を例に挙げて説明したが、実際の車両を使用する現車試験でパンタグラフ揚力及び空力音を測定する場合についてもこの発明を適用することができる。この場合に、すり板2がトロリ線に接触しないように集電舟3の高さを一定にして試験することができる。
3 集電舟
6 主軸
6a〜6d てこ部
12 風防部
13 台枠
13d,13e 固定部
15 パンタグラフ揚力測定装置
16 パンタグラフ揚力検出部
17,18 連結部
18c 間隔調整部
18n 駆動力発生部
20 パンタグラフ揚力演算部
24 制御部
25 駆動操作部
26 駆動状態検出部
27 振動検出部
29 慣性力演算部
30 補正部
Claims (4)
- パンタグラフに作用するパンタグラフ揚力を測定するパンタグラフ揚力測定装置であって、
前記パンタグラフの主軸のてこ部とこのパンタグラフの固定部との間に作用する荷重を検出し、前記パンタグラフ揚力を検出するパンタグラフ揚力検出部と、
前記てこ部と前記固定部との間に前記パンタグラフ揚力検出部を連結する連結部とを備え、
前記パンタグラフ揚力検出部及び前記連結部は、前記パンタグラフの風防部に覆われていること、
を特徴とするパンタグラフ揚力測定装置。 - 請求項1に記載のパンタグラフ揚力測定装置であって、
前記パンタグラフの集電舟の高さを所定の高さに調整するために、前記てこ部と前記固定部との間の間隔を調整する間隔調整部を備えること、
を特徴とするパンタグラフ揚力測定装置。 - 請求項2に記載のパンタグラフ揚力測定装置において、
前記間隔調整部は、前記てこ部と前記固定部との間の間隔を調整するための駆動力を外部操作によって自動的に発生する駆動力発生部を備えること、
を特徴とするパンタグラフ揚力測定装置。 - 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のパンタグラフ揚力測定装置において、
前記パンタグラフの集電舟の振動を検出する振動検出部の検出結果に基づいて、前記パンタグラフ揚力を演算するパンタグラフ揚力演算部の演算結果を補正する補正部を備えること、
を特徴とするパンタグラフ揚力測定装置。
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