JP4753182B2 - フッ素含有排水の処理方法 - Google Patents

フッ素含有排水の処理方法

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Description

本発明は、フッ素除去効果に優れたフッ素含有排水の処理方法に関する。
フッ素は、アルミニウムの電解精錬工程、リン酸肥料の製造工程、ステンレス鋼等のピクリング工程、シリコン等の電気部品の洗浄工程等から排出される排水や、ごみ焼却場洗煙排水、石炭火力排煙脱硫排水等に含有されているが、排水中のフッ素濃度につては排水基準が規定されており、その基準値以下になるように排水処理がなされている。
現在、実用化されているフッ素の処理方法としては、(I)カルシウム塩を添加して難溶性のフッ化カルシウム(CaF2)を生成し沈殿分離する方法、(II)アルミニウム塩を添加して水酸化アルミニウム(Al(OH)3)と共沈させ分離する方法、(III)上記カルシウム塩による凝集沈殿方法とアルミニウム塩による凝集沈殿方法を組み合わせる方法などが一般的である。
一方、最近では生活環境項目の見直しからフッ素の排水基準が厳しくなる方向にあり、フッ素を更に高度に除去処理する必要が生じてきた。具体的には、1999年4月にフッ素の環境基準値が0.8mg/Lとして定められた(平成11年環境庁告示第14号)。一方、水質汚濁防止法では2001年にフッ素の排出基準が15mg/Lから8mg/Lに強化されて同年7月より施行されているが、さらに厳しい排水基準を設けている自治体もあり、基本的には排水中のフッ素濃度を上記環境基準程度まで下げる技術が望まれている。
そこで、フッ素濃度を上記環境基準に適するまで除去する方法として、フッ素の溶解度の低いフッ素アパタイトを生成させてこれを分離し、除去する方法が提案されている。例えば、リン酸(塩)とシード(例えばCaF2)を添加し、消石灰スラリーでpH調整し、第二沈降槽において固液分離を行い、残留フッ素をフッ素アパタイト[Ca10(PO4)62]として除去する方法(特許文献1)、廃水のpHをアルカリ性に調整してハイドロオキシアパタイトを生成する薬剤を加えてハイドロオキシアパタイトを生成させ、フッ素をこのハイドロオキシアパタイトに反応捕捉させる方法(特許文献2)が知られている。
また、リン酸塩と水酸化カルシウムを添加した被処理水を撹拌し、これを骨炭層に通してフッ素アパタイトを除去する方法(特許文献3)、フッ素イオン含有水に特定割合でカルシウム剤およびリン酸剤を添加してフルオロアパタイトを生成し、これをフルオロアパタイト層に吸着させることにより、フッ素イオンを除去する方法(特許文献4)、排水にCa塩を添加してフッ素をフッ化Caにして除き、次にリン酸塩を添加して残留フッ素および残留Ca塩との反応でフルオロアパタイトを生成してフッ素を除く方法(特許文献5)、フッ素化合物含有液体にカルシウム化合物を添加してpHを上げた後にリン酸類ないしリン酸化合物を添加してpHを下げてフッ素除去する方法(特許文献6)などが知られている。
このように、フッ素アパタイト〔Ca10(PO4)62〕としてフッ素を固定化して除去する方法は公知であるが、必ずしも安定してフッ素濃度を環境基準の0.8mg/l以下に低減できないので、フッ素濃度を0.8mg/l以下にするためには多量のリン酸とカルシウム化合物を添加する必要があった。また、生成したフッ素アパタイトは微細粒子のため、濾過性や沈降分離性が悪く、固液分離操作が面倒である上に、生成したケーキの含水率が高く、ハンドリングが困難であるという問題があった。
特開昭52−088577号公報 特開昭52−137152号公報 特開昭53−125357号公報 特開昭58−199088号公報 特開昭62−125894号公報 特開2002−370093号公報
本発明は、従来のフッ素除去方法における上記問題を解決したものであり、従来の方法よりもフッ素除去効果が格段に優れたフッ素除去方法を提供するものである。
本発明は、以下に示す構成によって上記課題を解決したフッ素除去方法に関するものである。
(1)フッ素含有排水中で、珪酸カルシウムとリン酸源の存在下でフッ素アパタイト−シリカ複合体を生成させることによって、フッ素を吸着固定して排水からフッ素を除去することを特徴とするフッ素含有排水の処理方法。
(2)フッ素含有排水のフッ素に対するリンの質量比(P/F)10以上のリン酸源を添加する上記(1)に記載するフッ素含有排水の処理方法。
(3)カルシウムとリンのモル比(Ca/P)が1.5〜2.0になるように珪酸カルシウムとリン源をフッ素含有排水に添加する上記(1)または上記(2)に記載するフッ素含有排水の処理方法。
(4)カルシウムとケイ素のモル比(Ca/Si)が0.1〜2.0である珪酸カルシウムを用いる上記(1)〜上記(3)の何れかに記載するフッ素含有排水の処理方法。
(5)処理温度が25℃〜100℃である上記(1)〜上記(4)の何れかに記載するフッ素含有排水の処理方法。
本発明のフッ素含有排水の処理方法は、フッ素含有排水中で、珪酸カルシウムとリン酸源(リン酸またはリン酸化合物)の存在下で、フッ素アパタイト−シリカ複合体を生成させることによって、フッ素を吸着固定して排水からフッ素を除去する処理方法であり、生成したフッ素アパタイト−シリカ多孔質体の細孔容積が高く、好ましくは全細孔容積0.5ml/g以上の複合多孔質体であるため、フッ素に対して吸着容量が大きく、吸着速度が速いという優れた性質を有している。
本発明のフッ素含有排水の処理方法によれば、具体的には、排水中のフッ素に対するリンの質量比(P/F)10以上、カルシウムとリンのモル比(Ca/P)1.5〜2.0になるように珪酸カルシウムおよびリン源の添加量を調整し、また、カルシウムとケイ素のモル比(Ca/Si)が0.1〜2.0の珪酸カルシウムを用い、25℃〜100℃の温度で処理することによって、60分以内に処理水のフッ素濃度を0.8mg/l以下に低減することができ、さらに好ましい態様では30分以内に処理水のフッ素濃度を0.5mg/l以下に低減することができる。
また、本発明の処理方法により生成したフッ素含有物は、例えば、平均粒径10〜60μm、好ましくは10〜40μmの適度な粒子径を有しているので、高い濾過性、沈降性を有しており、フッ素除去後の除去剤の固液分離処理が極めて容易である。
本発明の処理方法によれば、生成したフッ素含有物のリン溶解度が低く、リンが溶出し難いので、処理した排水中のリン濃度が低く、例えば、リン濃度が8mg/l以下、好ましくは3mg/l以下であり、リンに関しても環境基準を十分満足する。
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。なお、%は単位固有の場合を除いて質量%である。
本発明のフッ素含有排水の処理方法は、フッ素含有排水中で、珪酸カルシウムとリン酸源の存在下でフッ素アパタイト−シリカ複合体を生成させることによって、フッ素を吸着固定して排水からフッ素を除去することを特徴とする処理方法である。
本発明のフッ素処理方法は、フッ素含有排水に、珪酸カルシウムと共にリン酸源を添加することによって、アパタイトの生成と同時にフッ素を吸着させるものであり、予め生成させたアパタイトにフッ素を反応させる従来の処理方法よりもフッ素の吸着効果が高く、優れたフッ素除去効果を得ることができる。
珪酸カルシウムの代わりに、他のカルシウム化合物、例えば消石灰、生石灰、塩化カルシウムなどを添加しても、フッ素アパタイトが生成し、処理水中のフッ素を除去することができるが、珪酸カルシウムを用いた場合に比べてフッ素除去の安定性に劣るだけでなく、生成したフッ素アパタイトが微細な粒子であるため濾過性に劣り、処理水と分離するのが困難である。
珪酸カルシウムにリン酸源を反応させることによって、珪酸カルシウムのCa分が溶出し、シリカが多孔質になると共に、溶出したカルシウム分とリン酸とが反応してアパタイトが生成すると同時に排水中のフッ素がアパタイトに取り込まれてフッ素アパタイト〔Ca10(PO4)62〕になり、フッ素アパタイト−シリカ複合体が形成される。
本発明の処理方法では、フッ素アパタイトの生成に必要なカルシウムは、珪酸カルシウムのリン酸による逐次的な分解によって生じるので、カルシウムの初期濃度は低く、フッ素アパタイトの過飽和度も液全体としては低い状態が維持される。さらに、珪酸カルシウムの分解にともなって、カルシウムイオンが細かい細孔を通じて粒子表面に供給されるため、フッ素アパタイトの過飽和度は珪酸カルシウム粒子の表面が最も高く、フッ素アパタイトの生成は珪酸カルシウム粒子の表面で進行する。従って、珪酸カルシウムを用いた本発明の処理方法では、微細なフッ素アパタイト粒子が液中に遊離せず、濾過性および沈降性の良いケーキを得ることができる。
一方、消石灰や塩化カルシウムなど、カルシウムの溶解度の高い化合物を用いた場合は、これらを投入した直後に液中のカルシウム濃度は非常に高いレベルまで達するため、リン酸、フッ素イオンと瞬時に反応してフッ素アパタイトの過飽和度が液中で非常に高くなり、液中にフッ素アパタイトの微細結晶を生成するため、生成したケーキはコロイド状になり、固液分離が困難で、含水率も高い。
さらに、消石灰や塩化カルシウムなどの化合物を用いた場合、カルシウムの溶解度が高いため、フッ素アパタイトの生成が非常に短い時間で起こり、液中のフッ素が完全に取り込まれないうちに反応が終了するので、1mg/l程度のフッ素が液中に残留することが多く、フッ素除去の効率が劣り、再現性にも欠ける。
他方、本発明の処理方法では、珪酸カルシウムにリン酸源を作用させることによって、リン酸による逐次的な珪酸カルシウムの分解によりカルシウムが液中に供給され続けるので、フッ素アパタイトの生成反応が数十分のオーダーで継続する。そのため、0.1mg/l程度の非常に低いレベルまで液中のフッ素をフッ素アパタイト−シリカ複合体のケーキ中に取り込むことができ、フッ素除去の効率が高いだけでなく、再現性のある安定したフッ素除去効果を得ることができる。
本発明のフッ素含有排水の処理方法によって生成するフッ素含有物は、フッ素アパタイト−シリカ複合多孔質体であり、例えば、全細孔容積0.5ml/g以上、BET比表面積100m2/g以上である。消石灰や塩化カルシウムなどのカルシウム化合物を用いた際に生成するフッ素アパタイトは、多孔質シリカを含有しないので、全細孔容積およびBET比表面積は本発明の複合多孔質体より小さく多孔性に劣り、概ね粒子径は10μm以下の微粒子である。
本発明の処理方法に用いる珪酸カルシウム化合物は、珪酸原料と石灰原料とを水性スラリーとしたものを、例えばオートクレーブ中において水熱反応を行なって合成した一般的によく知られているものを好適に用いることができる。その種類としては、珪酸カルシウム化合物であれば特に限定されず、例えば、トバモライト、ジャイロライト、ゾノトライトなどの結晶質珪酸カルシウム、あるいは非晶質珪酸カルシウムなど何れの珪酸カルシウムを用いることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、これらの珪酸カルシウム化合物は粉体の状態だけではなく、これらの珪酸カルシウム化合物を適当な方法で成型した板状物あるいは塊状物を用いることができる。
なお、軽量気泡コンクリートなどを用いた場合にも、フッ素アパタイト−シリカ複合多孔質体が生成するが、軽量気泡コンクリートはトバモライトを主体とした珪酸カルシウム化合物中に独立気泡を多く含む性状であって連続気泡を持たないため、生成した多孔質体の多孔質度が劣り、全細孔容積は0.3ml/g程度である。従って、フッ素の吸着能力が低く、多量のリン酸化合物、カルシウム化合物を消費するだけでなく、処理すべきフッ素含有物の量も多くなる。
本発明の処理方法によって生成する複合多孔質体の粒径は、使用した珪酸カルシウムの粒径とほぼ同等である。フッ素除去効果が高く、濾過性および沈降性の良い複合多孔質体ケーキを得るには、原料の珪酸カルシウムは平均粒径10μm〜60μmであるものが好ましい。珪酸カルシウムの平均粒径が60μmより大きいと、液との接触面積の低下から脱F能力が低下する。平均粒径が10μmより小さいと濾過性および沈降性に劣り、フッ素除去後の固液分離が難しくなる。
珪酸カルシウムのカルシウムとケイ素のモル比(Ca/Si)は0.1〜2.0であるものが好ましく、0.8〜1.2のモル比がより好ましい。Ca/Siモル比がこの範囲を外れるとヒドロキシアパタイトまたはシリカの何れかの含有量が過小になるのでフッ素除去性能が低下する。
本発明の処理方法に用いるリン酸源としてリン酸またはリン酸化合物を用いることができる。リン酸化合物としては、珪酸カルシウム化合物と反応させる必要から、リン酸アンモニウムやリン酸ナトリウム、リン酸一石灰のような水溶性リン酸塩を用いることができる。リン酸またはリン酸化合物は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
なお、リン酸またはリン酸化合物を溶解した際に、処理液のpHが中性以上であると、珪酸カルシウム化合物と効率的な反応が進行しないので、pHが中性以上である場合は、他の酸、例えば塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、酢酸などの有機酸を添加してpHを酸性側にすることにより、珪酸カルシウム化合物と十分な反応をさせることができる。この場合、酸の添加量はリン酸化合物の金属成分と等量で十分である。過剰に添加すると、処理液が酸性になり、効率的なフッ素除去ができない。リン酸化合物が水溶性リン酸を含有しない場合でも、他の酸を適宜添加することにより、リン酸を添加した場合と同様な処理を行なうことができる。
リン酸源の添加量は、フッ素含有排水のフッ素に対し、リンが質量比でP/F=10以上になることが望ましい。P/F=10未満であるとリン酸の量が少なく、アパタイトの生成量が不十分になるので、フッ素除去効果が低下する。P/F=10以上であればよいが、リン酸源の添加量が多すぎると処理コストが増大するので、実用上はP/F=20以下が適当である。フッ素含有排水が予めリンを含有している場合も、このP/F=10以上の割合になるようにリン酸源を添加することによって、十分なフッ素除去効果を得ることができる。
さらに、珪酸カルシウム化合物とリン源の添加量はカルシウムとリンのモル比(Ca/P)が1.5〜2.0になる範囲が望ましい。このモル比が2.0以上であると、未反応の珪酸カルシウム化合物が残留し、アパタイトの生成量が不十分となるため、フッ素除去効果が低下する。一方、このモル比が1.5より低いとリン溶解度が高くなり、処理水のリン濃度が上がる傾向を示すので好ましくない。
フッ素含有排水の処理に関し、処理温度は高い方が効率的なフッ素除去が可能である。上限は特に定める必要はないが、加熱に係わるコスト等を勘案すれば工業的にみて25℃以上100℃未満、より好ましくは40℃以上80℃未満である。また、液を攪拌して反応速度を促進することができる。処理時間は、珪酸カルシウム化合物の種類や粒度、粉体であるか成型体かなどによって異なり、一概に定めることはできないが、通常は0.5〜12時間程度で十分である。
本発明の処理方法において、珪酸カルシウム化合物とリン酸源の添加順序は限定されない。珪酸カルシウム化合物を先に添加してもよく、リン酸源を先に添加してもよい。珪酸カルシウム化合物とリン酸源を同時に添加してもよい。
高濃度のフッ素含有排水に対しては、フッ化カルシウムによる凝集沈殿を行なってフッ素濃度を数十mg/l程度まで下げた後に、本処理方法を適用することができる。この場合、通常は処理水のpHが高く、そのままではリン酸と珪酸カルシウム化合物が反応しないので、塩酸や硫酸等で処理水を中性付近まで中和した後に、珪酸カルシウム化合物とリン酸源を添加する。本処理方法を適用することによって、排水のフッ素濃度を0.8mg/l以下まで下げることができる。
以下に本発明の実施例を比較例と共に示す。なお、各例において、フッ素濃度、リン濃度、沈降体積、ケーキ水比、平均粒径は下記測定方法によって求めた。
〔フッ素濃度、リン濃度〕
フッ素除去処理を行なったスラリーを濾過した液について、フッ素はイオンメーターによって、リンはモリブデンブルー比色法により濃度を求めた。
〔沈降体積〕
フッ素除去処理を行なったスラリーを、30ml沈降管(長さ230mm)で10分間沈降させた時の沈降スラリー層の全体に占める体積の割合(%)
〔ケーキ水比〕
フッ素除去処理を行なったスラリーを、φ150mmのヌッチェで吸引濾過し、105℃で一晩乾燥させたときの水分/ドライケーキ量で示した。
〔平均粒径〕
フッ素除去処理を行なったスラリーについて、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製:LA-300)を用いて測定した。
〔実施例1〕
珪酸原料(平均粒径20μmの非晶質シリカ粉)100gと消石灰100g(Ca/Siモル比0.8)を、水−固形分比15相当分の水を加え、オートクレーブ中で攪拌しながら180℃、4時間水熱反応を行ない、生成した珪酸カルシウムスラリーを濾過、乾燥して、珪酸カルシウム粉末を得た。フッ化ナトリウムとリン酸を水に溶かしてF濃度20mg/l、P濃度200mg/lに調整した水溶液200mlに対し、この珪酸カルシウム粉末をCa/P=1.67になるように添加し(P/F比10)、60℃に加温した恒温槽中で一定時間振盪し、液中のフッ素を吸着させた。この試料液を濾過後、イオンメーターにより液中のフッ素濃度を求めた。処理時間に対するフッ素濃度の変化を図1に示した。
〔実施例2〕
珪酸原料(平均粒径20μmの非晶質シリカ粉)100gと消石灰127g(Ca/Siモル比1.0)を、水−固形分比10相当分の水を加え、温浴中で攪拌しながら95℃、15時間反応を行ない、生成した珪酸カルシウムスラリーを濾過、乾燥して、珪酸カルシウム粉末を得た。この珪酸カルシウム粉末を用いて実施例1と同様の条件でフッ素含有溶液の処理を行なった。この結果を図1に示した。
〔実施例3〕
耐火被覆建材用珪酸カルシウム(ゾノトライト)スラリーを用い、実施例1と同様の条件でフッ素含有溶液の処理を行った。この結果を図1に示した。
〔比較例1〕
消石灰を用い、実施例1と同様な条件でフッ素含有溶液の処理を行った。この結果を図1に示した。
〔比較例2〕
軽量気泡コンクリート粉末を用い、実施例1と同様な条件でフッ素含有溶液の処理を行った。この結果を図1に示した。
図1に示すように、処理液中のフッ素は、比較例1、比較例2では240分後も1mg/l以上であるが、実施例1〜3は何れも60分後には0.8mg/l以下に低減しており、そのうち実施例2は30分後に液中のフッ素濃度が0.5mg/l以下に低減しており、本発明の処理方法は比較例よりも格段にフッ素除去効果が優れている。
〔実施例4〕
フッ化ナトリウムとリン酸を水に溶かしてF濃度20mg/l、P濃度300mg/lに調整した水溶液200mlに対し、実施例1で用いた珪酸カルシウム粉末をCa/P=1.67になるように添加し(P/F比15)、60℃に加温した振盪恒温槽中でフッ素除去試験を行なった。この結果を図2に示す。
〔比較例3〕
フッ化ナトリウムとリン酸を水に溶かしてF濃度20mg/l、P濃度133mg/lに調整した水溶液200mlに対し、実施例1で用いた珪酸カルシウム粉末をCa/P=1.67になるように添加し(P/F比6.65)、60℃に加温した振盪恒温槽中でフッ素除去試験を行なった。この結果を図2に示す。
図2に示すように、フッ素に対するリン酸の量がP/F比10の実施例1は、処理液中のフッ素は60分後に0.8mg/l以下になるが、P/F比6.65の比較例3は、240分後でも処理液中のフッ素は2mg/l以上であってフッ素除去効果が低く、添加するリン酸と珪酸カルシウムの量が不足していることがわかる。一方、実施例4のように、添加するリン酸と珪酸カルシウムの量を多くしてP/F比を15にすると、液中のフッ素濃度は60分後に0.1mg/l付近まで大幅に低減することができる。
〔実施例5〕
フッ化ナトリウムとリン酸を水に溶かしてF濃度20mg/l、P濃度200mg/lに調整した水溶液200mlに対し、実施例1で用いた珪酸カルシウム粉末をCa/P=2.0になるように添加し(P/F比10)、60℃に加温した振盪恒温槽中でフッ素除去試験を行なった。その結果を図3および図4に示す。
〔比較例4〕
実施例5と同様のフッ素含有水200mlに対し、実施例1で用いた珪酸カルシウム粉末をCa/P=1.40になるように添加し(P/F比10)、60℃に加温した振盪恒温槽中でフッ素除去試験を行なった。その結果を図3および図4に示す。
図3に示すように、添加する珪酸カルシウムとリン酸のCa/Pモル比は低い方がフッ素除去速度が速いことがわかる。一方、図4に示すように、Ca/Pモル比が低い比較例4は、処理液中のリンの濃度が240分後においても20mg/l以上と非常に高くなるので好ましくない。実施例1および実施例5に示すように、Ca/Pモル比が1.67〜2.0の範囲ではフッ素除去効果も高く、液中のリン濃度も低いので好ましい。
〔比較例5〕
実施例1で用いた珪酸カルシウム粉末を、実施例4と同じ条件で、処理温度のみを20℃に変えてフッ素除去試験を行なった。その結果を図5に示す。
図5に示すように、処理温度60℃の実施例4に比較して、処理温度が20℃と低い比較例5は明らかにフッ素除去が劣っており、処理温度は高い方が良いことがわかる。
〔実施例6〕
フッ化ナトリウムを水に溶かしてF濃度20mg/lに調整した水溶液200mlに対し、P濃度200mg/lになるように、リン酸一石灰を添加し、60℃で30分間振盪し、その後、実施例3で用いた珪酸カルシウム粉末をCa/P=1.67になるように添加し、60℃に加温した振盪恒温槽中でフッ素除去試験を行なった。その結果を図6に示す。
〔実施例7〕
フッ化ナトリウムを水に溶かしてF濃度20mg/lに調整した水溶液200mlに対し、P濃度200mg/lになるように、リン酸二石灰を添加し、60℃で30分間振盪した後に、塩酸を添加して、pHを4.9から3.6まで下げた。その後、実施例3で用いた珪酸カルシウム粉末をCa/P=1.67になるように添加し、60℃に加温した振盪恒温槽中でフッ素除去試験を行なった。その結果を図6に示す。
〔比較例6〕
実施例6のリン酸一石灰を添加した溶液に対し、消石灰をCa/P=1.67になるように添加し、60℃に加温した振盪恒温槽中でフッ素除去試験を行なった。その結果を図6に示す。
〔比較例7〕
実施例7のリン酸二石灰を添加した溶液に対し、塩酸を添加せず、pHが4.9のまま実施例3で用いた珪酸カルシウム粉末をCa/P=1.67になるように添加し、60℃に加温した振盪恒温槽中でフッ素除去試験を行なった。その結果を図6に示す。
図6の実施例6に示すように、リン酸の代わりにリン酸一石灰を用いても、リン酸と珪酸カルシウムの組み合わせと同様なフッ素除去を行なうことができる。水溶性リン酸を含まないリン酸二石灰と珪酸カルシウムの組み合わせでは、比較例7のようにフッ素を除去することはできないが、リン酸二石灰に適量の酸を加えてpHを下げた実施例7の場合には、同様なフッ素除去を行なうことができる。一方、珪酸カルシウムの代わりに消石灰を用いた比較例6はフッ素除去効果が低く、240分後でも液中のフッ素濃度を1mg/l程度までしか除去することができない。
〔実施例8〕
水にフッ化ナトリウムを溶解してF濃度500mg/lに調整した水溶液に対し、消石灰をCa/Fモル比=0.5になるように添加し、常温で1時間撹拌して反応させて1次処理を行い、これを濾過して供試液とした(F濃度50.2mg/l、pH=11.9)。この1次処理液に20%硫酸を滴下し、pH6.8まで中和した。その後、リン酸を500mg/lの濃度になるように添加し、これに実施例1で用いた珪酸カルシウム粉末をCa/P=1.67になるように添加し、60℃に加温した振盪恒温槽中でフッ素除去試験を行なった。その結果を図7に示す。
〔比較例8〕
実施例8の1次処理液に20%硫酸を添加せずに、実施例8と同じ処理条件でリン酸と実施例1で用いた珪酸カルシウム粉末とを添加し、フッ素除去試験を行なった。その結果を図7に示す。
〔比較例9〕
実施例8の1次処理液に、実施例8と同様に20%硫酸を添加して中和処理を行なった後に、実施例8と同じ処理条件でリン酸と消石灰を添加し、フッ素除去試験を行なった。その結果を図7に示す。
図7の比較例8に示すように、消石灰で1次処理を行なった液に対し、そのままリン酸と珪酸カルシウムを添加してもフッ素はほとんど除去できないが、実施例8に示すように、1次処理液を酸で中和した後にリン酸と珪酸カルシウムを添加すれば、液中のフッ素濃度を0.8mg/l以下まで除去することができる。一方、比較例9に示すように、全く同様な条件でリン酸と消石灰で処理を行なっても、液中のフッ素濃度を0.8mg/l以下にすることはできない。
〔実施例9〕
フッ化ナトリウムを水に溶かしてF濃度50mg/lに調整した水溶液1800mlに対し、P濃度500mg/lになるようにリン酸を添加し、Ca/P=1.67になるように表1に示した珪酸カルシウム粉末(実施例1、2)あるいは消石灰または塩化カルシウム(比較試料)を添加し、60℃で120分間攪拌を行なった。スラリーの濾過性、沈降性、ケーキの水分などの性状を表1に示した。塩化カルシウムを用いた比較試料は濾液のフッ素濃度は低いが、スラリーの沈降体積が格段に大きく、濾過時間も長い。消石灰を用いた比較試料は濾過時間が著しく長く、濾液のpHも高い。一方、実施例1、2の珪酸カルシウムを用いたものは、スラリーの沈降体積が小さく、濾過時間も短い。また、濾液のフッ素濃度も低く、濾液のpHも高くない。
Figure 0004753182
実施例1〜3、比較例1〜2のフッ素除去効果を示すグラフ。 実施例1、実施例4、比較例3のフッ素除去効果を示すグラフ。 実施例1、実施例5、比較例4のフッ素除去効果を示すグラフ。 実施例1、実施例5、比較例4のリン濃度の変化示すグラフ。 実施例4、比較例5のフッ素除去効果を示すグラフ。 実施例6、実施例7、比較例6、比較例7のフッ素除去効果を示すグラフ。 実施例8、比較例8、比較例9のフッ素除去効果を示すグラフ。

Claims (5)

  1. フッ素含有排水中で、珪酸カルシウムとリン酸源の存在下でフッ素アパタイト−シリカ複合体を生成させることによって、フッ素を吸着固定して排水からフッ素を除去することを特徴とするフッ素含有排水の処理方法。
  2. フッ素含有排水のフッ素に対するリンの質量比(P/F)10以上のリン酸源を添加する請求項1に記載するフッ素含有排水の処理方法。
  3. カルシウムとリンのモル比(Ca/P)が1.5〜2.0になるように珪酸カルシウムとリン源をフッ素含有排水に添加する請求項1または請求項2に記載するフッ素含有排水の処理方法。
  4. カルシウムとケイ素のモル比(Ca/Si)が0.1〜2.0である珪酸カルシウムを用いる請求項1〜請求項3の何れかに記載するフッ素含有排水の処理方法。
  5. 処理温度が25℃〜100℃である請求項1〜請求項4の何れかに記載するフッ素含有排水の処理方法。
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