第1の発明は、利用側熱交換器の流入流体温度を検出する利用側熱交換器入口流体温度検出手段と、熱源側熱交換器の流入流体温度を検出する熱源側熱交換器入口流体温度検出手段と、利用側熱交換器入口流体温度検出手段と熱源側熱交換器入口流体温度検出手段の少なくとも一方の検出値から目標膨張機構回転数を演算する目標膨張機構回転数演算手段と、膨張機構の回転数と目標膨張機構回転数の差が所定値以上であることを判定基準として冷媒不足を判定する冷媒不足判定手段とを設けたものであり、適正冷媒時に最適と予測される膨張機構の回転数と現状の膨張機構の回転数を比較し、その差が大きければ、冷媒不足の状態であると判定できるので、信頼性の低下を防止できる。
第2の発明は、利用側熱交換器の流入流体温度を検出する利用側熱交換器入口流体温度検出手段と、熱源側熱交換器の流入流体温度を検出する熱源側熱交換器入口流体温度検出手段と、利用側熱交換器入口流体温度検出手段と熱源側熱交換器入口流体温度検出手段の少なくとも一方の検出値から目標予減圧器開度を演算する目標予減圧器開度演算手段と、予減圧器の開度と目標予減圧器開度の差が所定値以上であることを判定基準として冷媒不足を判定する冷媒不足判定手段とを設けたものであり、適正冷媒時に最適と予測される予減圧器の開度と現状の予減圧器の開度を比較し、その差が大きければ、冷媒不足の状態であると判定できるので、信頼性の低下を防止できる。
第3の発明は、利用側熱交換器の流入流体温度を検出する利用側熱交換器入口流体温度検出手段と、熱源側熱交換器の流入流体温度を検出する熱源側熱交換器入口流体温度検出手段と、利用側熱交換器入口流体温度検出手段と熱源側熱交換器入口流体温度検出手段の少なくとも一方の検出値から目標バイパス弁開度を演算する目標バイパス弁開度演算手段と、バイパス弁の開度と目標バイパス弁開度の差が所定値以上であることを判定基準として冷媒不足を判定する冷媒不足判定手段とを設けたものであり、適正冷媒時に最適と予測されるバイパス弁の開度と現状のバイパス弁の開度を比較し、その差が大きければ、冷媒不足の状態であると判定できるので、信頼性の低下を防止できる。
第4の発明は、利用側熱交換器へ流入する流体の搬送量を検出する利用側流体搬送量検出手段と、利用側熱交換器出口流体温度の目標値を演算する利用側熱交換器出口流体目標温度演算手段と、利用側熱交換器出口流体温度を検出する利用側熱交換器出口流体温度検出手段と、目標値と利用側熱交換器出口流体温度検出手段の検出値との温度差を演算する利用側熱交換器出口流体温度差演算手段を設け、冷媒不足判定手段に循環量の検出値が所定値未満であってかつ温度差の演算値が所定値以上であることを第1から第3の発明のいずれかの判定基準に加えたものであり、利用側流体搬送手段の出力が最小値となっていることを判定できるために、誤って冷媒不足を判定するのを防止し、冷媒不足をより正確に検出することができ、信頼性の低下を防止できる。
第5の発明は、冷凍サイクル装置の通電電流を検出する電流検出手段を設け、冷媒不足判定手段に通電電流の検出値が所定値未満であることを第1から第4の発明のいずれかの判定基準に加えたものであり、圧縮機構が低負荷で運転されていることを判定できるために、誤って冷媒不足を判定するのを防止し、冷媒不足をより正確に検出することができ、信頼性の低下を防止できる。
第6の発明は、冷凍サイクル装置が除霜運転中か否かを判定する除霜運転判定手段を設け、冷媒不足判定手段に冷凍サイクル装置が除霜運転中でないことを第1から第5の発明のいずれかの判定基準に加えたものであり、除霜運転中に誤って冷媒不足を判定するのを防止し、冷媒不足をより正確に検出することができ、信頼性の低下を防止できる。
第7の発明は、利用側熱交換器と熱源側熱交換器の流入流体温度を検出し、利用側熱交換器の流入流体温度と熱源側熱交換器との流入流体温度の少なくとも一方から目標膨張機構回転数を演算し、膨張機構の回転数と目標膨張機構回転数の差が所定値以上であるときに、冷媒不足と判定するものであり、適正冷媒時に最適と予測される膨張機構の回転数と現状の膨張機構の回転数を比較し、その差が大きければ、冷媒不足の状態であると判定できるので、信頼性の低下を防止できる。
第8の発明は、利用側熱交換器と熱源側熱交換器の流入流体温度を検出し、利用側熱交換器の流入流体温度と熱源側熱交換器との流入流体温度の少なくとも一方から目標予減圧器開度を演算し、予減圧器の開度と目標予減圧器開度の差が所定値以上であるときに、冷媒不足と判定するものであり、適正冷媒時に最適と予測される予減圧器の開度と現状の予減圧器の開度を比較し、その差が大きければ、冷媒不足の状態であると判定できるので、信頼性の低下を防止できる。
第9の発明は、利用側熱交換器と熱源側熱交換器の流入流体温度を検出し、利用側熱交換器の流入流体温度と熱源側熱交換器との流入流体温度の少なくとも一方から目標バイパス弁開度を演算し、バイパス弁の開度と目標バイパス弁開度の差が所定値以上であるときに、冷媒不足と判定するものであり、適正冷媒時に最適と予測されるバイパス弁の開度と現状のバイパス弁の開度を比較し、その差が大きければ、冷媒不足の状態であると判定できるので、信頼性の低下を防止できる。
第10の発明は、冷凍サイクル装置の利用側熱交換器に流入する流体の循環量と流体の利用側熱交換器出口温度とを検出し、利用側熱交換器出口温度の検出値と利用側熱交換器出口温度の目標値との温度差を演算し、循環量の検出値が所定値未満であり、温度差の演算値が所定値以上であることを、第7から第9の発明のいずれかの判定基準にさらに加えるものであり、利用側流体搬送手段の出力が最小値となっていることを判定できるために、誤って冷媒不足を判定するのを防止し、冷媒不足をより正確に検出することができ、信頼性の低下を防止できる。
第11の発明は、冷凍サイクル装置の通電電流を検出し、通電電流の検出値が所定値以下であることを、第7から第10の発明のいずれかの判断基準にさらに加えるものであり、圧縮機構が低負荷で運転されていることを判定できるために、誤って冷媒不足を判定するのを防止し、冷媒不足をより正確に検出することができ、信頼性の低下を防止できる。
第12の発明は、冷凍サイクル装置が除霜運転中でないことを、第7から第11の発明のいずれかの判断基準にさらに加えるものであり、除霜運転中に誤って冷媒不足を判定するのを防止し、冷媒不足をより正確に検出することができ、信頼性の低下を防止できる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。例えば、以下の実施の形態では、給湯機を例にとり説明するが、本発明が給湯機に限定されるものではなく、空気調和機などであってもよい。
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態における冷凍サイクル装置を、図1に概略構成図を示し、説
明する。図1の冷凍サイクル装置は、駆動手段10により駆動される圧縮機構11、利用側熱交換器としての給湯用熱交換器(放熱器)12の冷媒流路12a、発電機13により動力回収される膨張機構14、熱源側熱交換器としての蒸発器15などからなる冷媒回路Aと、利用側流体搬送手段としての給水ポンプ17、放熱器12の流体流路12b、給湯タンク18などからなる流体回路Bとから構成されている。
さらに、本冷凍サイクル装置は、蒸発器15に流体(例えば、外気)を搬送する熱源側流体搬送手段としての送風装置(ファン)16と、蒸発器15の流体流路(例えば、送風回路)の入口の流体(例えば、外気)の温度(以下、外気温度と呼ぶ)を検出する熱源側熱交換器入口流体温度検出手段19とを備えている。熱源側熱交換器入口流体温度検出手段19は、例えば、蒸発器15のフィン上に固定された温度サーミスタである。また、本冷凍サイクル装置は、放熱器12の流体流路12bの入口の流体(例えば、水)の温度(以下、入水温度と呼ぶ)を検出する利用側熱交換器入口流体温度検出手段20と、流体流路12bの出口の流体(例えば、湯)の温度(以下、出湯温度と呼ぶ)を検出する利用側熱交換器出口流体温度検出手段21とを備えている。
これらは、例えば、放熱器12の入口・出口の配管上に設けられ配管の温度を検出する温度サーミスタや、配管中に設けられ直接水温を検出する温度サーミスタである。さらに、本冷凍サイクル装置は、外気温度や入水温度や利用者によるリモコン設定(即ち、使用条件)などから、出湯温度の目標値を演算する利用側熱交換器出口流体目標温度演算手段22と、利用側熱交換器出口流体温度検出手段21の検出値(以下、出湯温度検出値と呼ぶ)及び利用側熱交換器出口流体目標温度演算手段22が演算した目標値(以下、出湯温度目標値と呼ぶ)に応じて、給水ポンプ17の回転数を演算・操作する利用側流体搬送量演算操作手段23と、利用側流体搬送量演算操作手段23の給水ポンプ17への回転数指示値から流体流路12bを流れる流体の搬送量(以下、水循環量)を推定する利用側流体搬送量検出手段24と、出湯温度目標値と出湯温度検出値との差を演算する利用側熱交換器出口流体温度差演算手段25とを備えている。
さらに、本冷凍サイクル装置は、駆動手段10から圧縮機構11への通電電流を検出する電流検出手段31と、圧縮機構11の吐出温度を検出する吐出温度検出手段41とを備えている。吐出温度検出手段41は、例えば、圧縮機構11の吐出から放熱器12の冷媒流路12aの入口までの配管上に設けられ配管の温度を検出する温度サーミスタである。また、本冷凍サイクル装置は、熱源側熱交換器入口流体温度検出手段19の検出値(外気温度)や利用側熱交換器入口流体温度検出手段20の検出値(入水温度)などから、発電機13、すなわち、膨張機構14の第1目標膨張機構回転数を演算する目標膨張機構回転数演算手段42と、吐出温度検出手段41の検出値に応じて膨張機構14の第2目標膨張機構回転数を演算し、さらに、目標膨張機構回転数演算手段42が演算した第1目標膨張機構回転数、あるいは、自らが演算した第2目標膨張機構回転数のいずれかを選択して膨張機構14の回転数を操作する膨張機構回転数演算操作手段43と、第1目標膨張機構回転数と第2目標膨張機構回転数(あるいは、第1目標膨張機構回転数と膨張機構回転数演算操作手段43が実際に操作した膨張機構14の回転数)を比較する膨張機構回転数変化判定手段44とを備えている。
更に、冷凍サイクル装置が除霜運転中であるか否かを判定する除霜運転判定手段51と、利用側流体搬送量検出手段24、利用側熱交換器出口流体温度差演算手段25、電流検出手段31、膨張機構回転数変化判定手段44、除霜運転判定手段51などからの各信号により、冷媒不足を判定する冷媒不足判定手段61とを備えている。
次に、上述のように構成された冷凍サイクル装置の通常運転時の動作について説明する。冷媒回路Aでは、冷媒である二酸化炭素(CO2)を、駆動手段10により駆動される
圧縮機構11で臨界圧力を越える圧力まで圧縮する。その圧縮された冷媒は、高温高圧状態となり、放熱器12の冷媒流路12aを流れる際に、流体流路12bを流れる水に放熱して冷却される。その後、冷媒は膨張機構14で減圧され低温低圧の気液二相状態となる。
この際、膨張機構14では冷媒の圧力エネルギーを動力に変換し、その動力は発電機13にて電力に変換される。このように、膨張時の圧力エネルギーを電力として回収しCOPを向上させることができる。膨張機構14で減圧された冷媒は蒸発器15に供給される。蒸発器15では、冷媒は送風装置(ファン)16によって送り込まれた外気によって加熱され、気液二相またはガス状態となり、再び圧縮機構11に吸入される。
一方、流体回路Bでは、給水ポンプ17により給湯タンク18の底部から放熱器12の流体流路12bへ送り込まれた水は、冷媒流路12aを流れる冷媒により加熱され、高温の湯となり、その湯を給湯タンク18の頂部から貯める。このような動作を繰り返すことにより、本実施の形態の冷凍サイクル装置は給湯装置として利用できる。
ここで、膨張機構14の回転数は応答性の向上などを目的として以下のように操作される。すなわち、起動時などの冷凍サイクルが安定していないときには、膨張機構回転数演算操作手段43は、外気温度や入水温度などから目標膨張機構回転数演算手段42が演算した第1目標膨張機回転数となるように、膨張機構14、すなわち、発電機13の回転数を調整(フィードフォワード制御)する。一方、冷凍サイクルが安定しているときには、膨張機構回転数演算操作手段43は、吐出温度検出手段41の検出した吐出温度があらかじめ定めた目標吐出温度となるように、自ら演算した第2目標膨張機構回転数に膨張機構14、すなわち、発電機13の回転数を調整(フィードバック制御)している。
次に、図1の冷凍サイクル装置において、吐出温度が一定となるように制御された状態で、冷媒不足となった場合の冷凍サイクルの動きについて説明する。図2は圧力・エンタルピ線図であり、適正冷媒量時の冷凍サイクルを実線で、冷媒不足時の冷凍サイクルを冷媒不足の程度が小さい順に、破線、一点鎖線で示す。また、図3は、冷媒量比、すなわち、適正な冷媒量に対する冷媒不足時の冷媒量の比に対する密度比(DE/DC)の変化を示している。
冷媒不足が生じると、圧縮機構11が吐出する冷媒の循環量が不足し、放熱器12での加熱能力が低下する。また、高圧側圧力(圧縮機構11の吐出から膨張機構14入口までの圧力)、低圧側圧力(膨張機構14の出口から圧縮機構11の吸入までの圧力)は、とも低下する。特に、適正冷媒量時において超臨界サイクルとなる二酸化炭素(CO2)を冷媒に用いた場合には、図2に示すように、冷媒不足時の高圧側圧力の低下度合いが低圧側圧力に対して大きい。このため、図3に示すように、冷媒量が不足するにしたがい、密度比(DE/DC)は、低下する傾向にある。
したがって、動力回収を行う膨張機構14を用いた冷凍サイクル装置では、背景技術で説明したようにDE/DC(密度比)とHze/Hzc(回転数比)の積が常に一定となるように、冷凍サイクルはバランスしようとするので、圧縮機構11の回転数(Hzc)が一定であるならば、膨張機構14の回転数(Hze)は、適正冷媒時の回転数より増加する傾向にある。すなわち、現状の膨張機構14の回転数が、適正冷媒時の回転数より大幅に高い場合には、冷媒量が不足していると考えられる。
そこで、本実施の形態の冷凍サイクル装置では、膨張機構回転数変化判定手段44が、適正冷媒時の特性に基づいてあらかじめ定められた演算式を用いて外気温度や入水温度などから求められる第1目標膨張機構回転数(すなわち、適正冷媒時に最適と予測された膨
張機構14の回転数)と、実際の冷凍サイクルの吐出温度に基づいて演算された第2目標膨張機構回転数、あるいは、第1目標膨張機構回転数と膨張機構回転数演算操作手段43が実際に操作した膨張機構14の回転数(すなわち、現状の膨張機構14の回転数)を比較して、冷媒不足の状態を判定するものである。具体的には、第2目標膨張機構回転数と第1目標膨張機構回転数との差があらかじめ定められた所定値以上であれば、冷媒不足の状態であると判定するものである。
つまり、図3から明らかになった動力回収を行う膨張機構を用いた冷凍サイクル装置の特性を利用し、適正冷媒時に最適と予測される膨張機構14の回転数と現状の膨張機構14の回転数を比較し、その差が大きければ、冷媒不足の状態であると判定するものである。
本実施の形態では、この判定に基づいて、例えばリモコン等の表示器(図示せず)に異常表示を行うとともに、冷媒不足判定手段61から信号を受けた駆動手段10が圧縮機構11や膨張機構14を停止し、圧縮機構11や膨張機構14を損傷させるといった冷凍サイクル装置の信頼性の低下を防止する。
次に、冷媒不足を判定する具体的な制御方法について、図4のフローチャートを用いて説明する。フローチャートのステップ101では、圧縮機構11の運転が開始されて所定時間経過後(すなわち、起動時などの冷凍サイクルが不安定な状態を経過した後)、経過時間計測値tをリセットし、経過時間の計測を開始する。次のステップ102で、熱源側熱交換器入口流体温度検出手段19により外気温度(Ta)を検出する。ステップ103では、利用側熱交換器入口流体温度検出手段20より入水温度(Twi)を検出する。ステップ104で、目標膨張機構回転数演算手段42は、検出された外気温度(Ta)と入水温度(Twi)より、適正冷媒時の特性に基づいてあらかじめ定められた演算式を用いて、第1目標膨張機構回転数(Hze1)を演算する。
次に、ステップ105では、吐出温度検出手段41により、圧縮機構11の吐出温度を検出する。さらに、ステップ106で、膨張機構回転数演算操作手段43は、検出した吐出温度があらかじめ定めた目標吐出温度となるような第2目標膨張機構回転数(Hze2)を演算する。
さらにステップ107で、膨張機構回転数変化判定手段44は、第2目標膨張機構回転数と第1目標膨張機構回転数の差を演算し、その差(Hze2−Hze1)があらかじめ定められた所定値(Hze0)以上の場合には、次のステップ108に進み、所定値(Hze0)未満の場合にはステップ101に戻る。
次に、ステップ108で、経過時間計測値tとあらかじめ定めた時間t0を比較して、各々の検出手段の誤検出を防止するために、ステップ7の条件が連続して一定時間、成立しているか否かを判定する。そして、経過時間tが一定時間t0以上経過した場合には次のステップ109に進み、経過していない場合にはステップ102に戻る。なお、この誤検出を防止するためのステップ108を省略しても良い。
ステップ101からステップ108までを実行し、第2目標膨張機構回転数と第1目標膨張機構回転数の差(Hze2−Hze1)があらかじめ定められた所定値(Hze0)以上となる条件が一定時間、成立した場合には、ステップ109で、冷媒不足判定手段61は冷媒不足の状態であると判定する。そして、この判定に基づいて、例えばリモコン等の表示器(図示せず)に異常表示を行うとともに、冷媒不足判定手段61から信号を受けた駆動手段10が圧縮機構11を停止し、圧縮機構11を損傷させるといった冷凍サイクル装置の信頼性の低下を防止する。
以上のように、本実施の形態の冷凍サイクル装置の制御方法は、第2目標膨張機構回転数と第1目標膨張機構回転数の差(Hze2−Hze1)があらかじめ定められた所定値(Hze0)以上となる場合、すなわち、適正冷媒時に最適と予測される膨張機構14の回転数と現状の膨張機構14の回転数を比較し、その差が大きければ、冷媒不足の状態であると判定するものである。これにより、動力回収を行う膨張機構14を用いた冷凍サイクル装置の冷媒不足を確実に検知できるので、圧縮機構を損傷させるといった冷凍サイクル装置の信頼性の低下を防止できる。
(実施の形態2)
本発明の第2の実施の形態における冷凍サイクル装置を、図5に概略構成図を示し、説明する。図5において、図1と同様の構成要素は図1と同じ番号を与え、説明を省略する。図5の冷凍サイクル装置では、膨張機構14は圧縮機構11とともに駆動手段10に軸70で直結されている。
また、本冷凍サイクル装置は、膨張機構14に流入する冷媒をあらかじめ減圧する予減圧器としての予膨張弁71と、熱源側熱交換器入口流体温度検出手段19の検出値(外気温度)や利用側熱交換器入口流体温度検出手段20の検出値(入水温度)などから、予膨張弁71の第1目標予減圧器開度を演算する目標予減圧器開度演算手段72と、吐出温度検出手段41の検出値に応じて予膨張弁71の第2目標予減圧器開度を演算し、さらに、目標予減圧器開度演算手段72が演算した第1目標膨張機構回転数、あるいは、自らが演算した第2目標膨張機構回転数のいずれかを選択して予膨張弁71の開度を操作する予減圧器開度演算操作手段73と、第1目標予減圧器開度と第2目標予減圧器開度(あるいは、第1目標予減圧器開度と予減圧器開度演算操作手段73が実際に操作した予膨張弁71の開度)を比較する予減圧器開度変化判定手段74とを備えている。
さらに、本冷凍サイクル装置は、膨張機構14を流れる冷媒をバイパスさせるバイパス流路80と、バイパス流路80上に設けられ、バイパス流路80を流れる循環量を調節するバイパス弁81と、熱源側熱交換器入口流体温度検出手段19の検出値(外気温度)や利用側熱交換器入口流体温度検出手段20の検出値(入水温度)などから、バイパス弁81の第1目標バイパス弁開度を演算する目標バイパス弁開度演算手段82と、吐出温度検出手段41の検出値に応じてバイパス弁81の第2目標バイパス弁開度を演算し、さらに、目標バイパス弁開度演算手段82が演算した第1目標バイパス弁開度、あるいは、自らが演算した第2目標バイパス弁開度のいずれかを選択してバイパス弁81の開度を操作するバイパス弁開度演算操作手段83と、第1目標バイパス弁開度と第2目標バイパス弁開度(あるいは、第1目標バイパス弁開度とバイパス弁開度演算操作手段83が実際に操作したバイパス弁81の開度)を比較するバイパス弁開度変化判定手段84とを備えている。
次に、上述のように構成された冷凍サイクル装置の理想的な運転状態、すなわち、設計容積比(VC/VE)が密度比(DE/DC)と一致している運転状態での動作について説明する。冷媒回路Aでは、冷媒である二酸化炭素(CO2)を、駆動手段10により駆動される圧縮機構11で臨界圧力を越える圧力まで圧縮する。その圧縮された冷媒は、高温高圧状態となり、放熱器12の冷媒流路12aを流れる際に、流体流路12bを流れる水に放熱して冷却される。その後、冷媒はほぼ全開状態の予膨張弁71を流れた後、ほぼ全閉状態のバイパス弁81によりバイパス流路80には流れず、ほぼすべての冷媒は、膨張機構14に流入する。膨張機構14で減圧され低温低圧の気液二相状態となる。この際、膨張機構14では冷媒の圧力エネルギーを動力に変換し、その動力は軸70を介して圧縮機構11の駆動力の一部として利用される。
このように、膨張時の圧力エネルギーを動力として圧縮機構11に伝達することにより、駆動手段10の入力を低減し、COPを向上させることができる。膨張機構14で減圧された冷媒は蒸発器15に供給される。蒸発器15では、冷媒は送風装置(ファン)16によって送り込まれた外気によって加熱され、気液二相またはガス状態となり、再び圧縮機構11に吸入される。
次に、外気温度が低い場合など、実際の運転状態での密度比(DE/DC)が設計容積比(VC/VE)より大きい場合の動作について説明する。この場合には、膨張機構14入口の冷媒密度(DE)が小さくなるように、冷凍サイクルは高圧側圧力を低下させた状態でバランスしようとする。ところが、高圧側圧力が望ましい圧力より低下した状態では、吐出温度が低下し冷凍サイクル装置の加熱能力が低下したり、冷凍サイクル装置の効率が低下したりする。このため、予減圧器開度演算操作手段73は予膨張弁71を閉方向に操作し膨張機構14に流入する冷媒を減圧する。これにより、冷媒密度(DE)を小さくでき、高圧側圧力は低下せず最適な状態を維持できる。
ここで、予膨張弁71は応答性の向上などを目的として以下のように操作される。すなわち、起動時などの冷凍サイクルが安定していないときには、予減圧器開度演算操作手段73は、外気温度や入水温度などから目標予減圧器開度演算手段72が演算した第1目標予減圧器開度となるように、予膨張弁71の開度を調整(フィードフォワード制御)する。
一方、冷凍サイクルが安定しているときには、予減圧器開度演算操作手段73は、吐出温度検出手段41の検出した吐出温度があらかじめ定めた目標吐出温度となるように、自ら演算した第2目標予減圧器開度に予膨張弁71の開度を調整(フィードバック制御)している。
逆に、外気温度や入水温度や目標出湯温度が高い場合など、実際の運転状態での密度比(DE/DC)が設計容積比(VC/VE)より小さい場合の動作について説明する。この場合には、膨張機構14入口の冷媒密度(DE)が大きくなるように、冷凍サイクルは高圧側圧力を上昇させた状態でバランスしようとする。
ところが、高圧側圧力が望ましい圧力より上昇した状態では、冷凍サイクル装置の運転効率が低下してしまう。このため、バイパス弁開度演算操作手段83はバイパス弁81を開方向に操作し、一部の冷媒をバイパス流路80に流す。これにより、膨張機構14に流入する循環量を減少させることができ、高圧側圧力は上昇せず最適な状態を維持できる。
ここで、バイパス弁81は応答性の向上などを目的として以下のように操作される。すなわち、起動時などの冷凍サイクルが安定していないときには、バイパス弁開度演算操作手段83は、外気温度や入水温度などから目標バイパス弁開度演算手段82が演算した第1目標バイパス弁開度となるように、バイパス弁81の開度を調整(フィードフォワード制御)する。一方、冷凍サイクルが安定しているときには、バイパス弁開度演算操作手段83は、吐出温度検出手段41の検出した吐出温度があらかじめ定めた目標吐出温度となるように、自ら演算した第2目標バイパス弁開度にバイパス弁81の開度を調整(フィードバック制御)している。
冷媒不足が生じると、図3に示すように、密度比(DE/DC)は、低下する傾向にある。したがって、動力回収を行う膨張機構14を用いた冷凍サイクル装置では、圧縮機構11と膨張機構14は同一回転数で回転するために、回転数比(Hze/Hzc)は常に一定であるので、密度比(DE/DC)が低下すると、膨張機構14入口の冷媒密度(DE)が大きくなるように、冷凍サイクルは高圧側圧力を上昇させた状態でバランスしよう
とするので、予減圧器開度演算操作手段73、あるいは、バイパス弁開度演算操作手段83は高圧側圧力を望ましい圧力に調整しようとして、予膨張弁71の開度、あるいは、バイパス弁81の開度を開方向に操作しようとする。すなわち、現状の予膨張弁71の開度、あるいは、バイパス弁81の開度が、適正冷媒時の各々の開度より大幅に高い場合には、冷媒量が不足していると考えられる。
そこで、本実施の形態の冷凍サイクル装置では、予減圧器開度変化判定手段74が、適正冷媒時の特性に基づいてあらかじめ定められた演算式を用いて、外気温度や入水温度などから求められる第1目標予減圧器開度(すなわち、適正冷媒時に最適と予測された予膨張弁71の開度)と、実際の冷凍サイクルの吐出温度に基づいて演算された第2目標予減圧器開度、あるいは、第1目標予減圧器開度と予減圧器開度演算操作手段73が実際に操作した予膨張弁71の開度(すなわち、現状の予膨張弁71の開度)を比較して、冷媒不足の状態を判定するものである。
具体的には、第2目標予減圧器開度と第1目標予減圧器開度との差があらかじめ定められた所定値以上であれば、冷媒不足の状態であると判定するものである。あるいは、バイパス弁開度変化判定手段84が、適正冷媒時の特性に基づいてあらかじめ定められた演算式を用いて、外気温度や入水温度などから求められる第1目標バイパス弁開度(すなわち、適正冷媒時に最適と予測されたバイパス弁81の開度)、あるいは、第1目標バイパス弁開度(すなわち、適正冷媒時に最適と予測されたバイパス弁81の開度)と、実際の冷凍サイクルの吐出温度に基づいて演算された第2目標バイパス弁開度、あるいは、第1目標バイパス弁開度とバイパス弁開度演算操作手段83が実際に操作したバイパス弁81の開度(すなわち、現状のバイパス弁81の開度)を比較して、冷媒不足を状態であると判定するものである。具体的には、第2目標バイパス弁開度と第1目標バイパス弁開度との差があらかじめ定められた所定値以上であれば、冷媒不足の状態であると判定するものである。
本実施の形態では、これらの判定に基づいて、例えばリモコン等の表示器(図示せず)に異常表示を行うとともに、冷媒不足判定手段61から信号を受けた駆動手段10が圧縮機構11や膨張機構14を停止し、圧縮機構11や膨張機構14を損傷させるといった冷凍サイクル装置の信頼性の低下を防止する。
次に、冷媒不足を判定する具体的な制御方法について、図6のフローチャートを用いて説明する。フローチャートのステップ201では、圧縮機構11の運転が開始されて所定時間経過後(すなわち、起動時などの冷凍サイクルが不安定な状態を経過した後)、経過時間計測値tをリセットし、経過時間の計測を開始する。次のステップ202で、熱源側熱交換器入口流体温度検出手段19により外気温度(Ta)を検出する。ステップ203では、利用側熱交換器入口流体温度検出手段20より入水温度(Twi)を検出する。ステップ204で、目標予減圧器開度演算手段72は、検出された外気温度(Ta)と入水温度(Twi)より、適正冷媒時の特性に基づいてあらかじめ定められた演算式を用いて、第1目標予減圧器開度(PLSp1)を演算する。また、ステップ205で、目標バイパス弁開度演算手段82は、検出された外気温度(Ta)と入水温度(Twi)より、適正冷媒時の特性に基づいてあらかじめ定められた演算式を用いて、第1目標バイパス弁開度(PLSb1)を演算する。
次に、ステップ206では、吐出温度検出手段41により、圧縮機構11の吐出温度を検出する。さらに、ステップ207で、予減圧器開度演算操作手段73は、検出した吐出温度があらかじめ定めた目標吐出温度となるような第2目標予減圧器開度(PLSp2)を演算する。また、ステップ208で、バイパス弁開度演算操作手段83は、検出した吐出温度があらかじめ定めた目標吐出温度となるような第2目標バイパス弁開度(PLSp
2)を演算する。
さらに、ステップ209で、予減圧器開度変化判定手段74は、第2目標予減圧器開度と第1目標予減圧器開度の差を演算し、その差(PLSp2−PLSp1)があらかじめ定められた所定値(PLSp0)以上の場合には、次のステップ211に進み、所定値(PLSp0)未満の場合にはステップ210に進む。ステップ210で、バイパス弁開度変化判定手段84は、第2目標バイパス弁開度と第1目標バイパス弁開度の差を演算し、その差(PLSb2−PLSb1)があらかじめ定められた所定値(PLSb0)以上の場合には、次のステップ211に進み、所定値(PLSp0)未満の場合にはステップ201に戻る。
次に、ステップ211で、経過時間計測値tとあらかじめ定めた時間t0を比較して、各々の検出手段の誤検出を防止するために、ステップ7の条件が連続して一定時間、成立しているか否かを判定する。そして、経過時間tが一定時間t0以上経過した場合には次のステップ211に進み、経過していない場合にはステップ202に戻る。なお、この誤検出を防止するためのステップ211を省略しても良い。
ステップ201からステップ211までを実行し、第2目標予減圧器開度と第1目標予減圧器開度の差(PLSp2−PLSp1)があらかじめ定められた所定値(PLSp0)以上となる条件が一定時間、成立した場合、あるいは、第2目標バイパス弁開度と第1目標バイパス弁開度の差(PLSb2−PLSb1)があらかじめ定められた所定値(PLSb0)以上となる条件が一定時間、成立した場合には、ステップ212で、冷媒不足判定手段61は冷媒不足の状態であると判定する。そして、この判定に基づいて、例えばリモコン等の表示器(図示せず)に異常表示を行うとともに、冷媒不足判定手段61から信号を受けた駆動手段10が圧縮機構11を停止し、圧縮機構11を損傷させるといった冷凍サイクル装置の信頼性の低下を防止する。
以上のように、本実施の形態の冷凍サイクル装置の制御方法は、第2目標予減圧器開度と第1目標予減圧器開度の差(PLSp2−PLSp1)があらかじめ定められた所定値(PLSp0)以上となる場合、すなわち、適正冷媒時に最適と予測される予膨張弁71の開度と現状の予膨張弁71の開度を比較し、その差が大きければ、冷媒不足の状態であると判定するものである。あるいは、第2目標バイパス弁開度と第1目標バイパス弁開度の差(PLSb2−PLSb1)があらかじめ定められた所定値(PLSb0)以上となる場合、すなわち、適正冷媒時に最適と予測されるバイパス弁81の開度と現状のバイパス弁81の開度を比較し、その差が大きければ、冷媒不足の状態であると判定するものである。これにより、動力回収を行う膨張機構14を用いた冷凍サイクル装置の冷媒不足を確実に検知できるので、圧縮機構11を損傷させるといった冷凍サイクル装置の信頼性の低下を防止できる。
(実施の形態3)
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態、あるいは、第2の実施の形態に、より確実に冷媒不足を検知するための手段、あるいは、制御方法を追加したものである。以下、第1の実施の形態の冷凍サイクル装置を例にとり説明するが、第2の実施の形態の冷凍サイクル装置に追加する場合でも同様である。
図1において、利用側流体搬送量演算操作手段23は、利用側熱交換器出口流体温度検出手段21が検出した出湯温度(出湯温度検出値)が、利用側熱交換器出口流体目標温度演算手段22が演算した目標値(出湯温度目標値)となるように、フィードバック制御により、給水ポンプ17の回転数を調整し、放熱器12の流体流路12bを流れる水循環量を調節することで、一定の温度のお湯が給湯タンク18に貯められるように制御している
。
次に、図7を用いて冷媒不足となった場合の冷凍サイクルの動きについて説明する。図7において、横軸の冷媒量比とは適正な冷媒量に対する冷媒不足時の冷媒量の比である。冷媒不足が生じると、圧縮機構11が吐出する冷媒の循環量が不足し、放熱器12での加熱能力が低下する。
しかしながら、上述のように出湯温度検出値が出湯温度目標値となるように、水循環量を給水ポンプ17により調節しているので、図7に示すように、ある程度の冷媒不足(図7の場合には、冷媒量比40〜50%程度)までであれば、水循環量を低下させることで、放熱器12での加熱能力が低下しても、出湯温度を一定に維持することが可能である。しかし、それ以下の冷媒量となると、給水ポンプ17の回転数が最小となり、水循環量をそれ以下にすることができなくなる(水循環量が最小となる)ために、出湯温度検出値が低下していき出湯温度目標値との温度差が大きくなる。
すなわち、実施の形態1または2で説明した判定条件を満たし、かつ、水循環量があらかじめ定められた値未満であり、かつ、出湯温度が出湯温度目標値に達していない場合には、より確実に冷媒不足の状態であると判定できる。例えば、冷媒不足でない場合であっても、目標出湯温度がリモコンなどで変更された場合など、適正冷媒時に最適と予測される膨張機構14の回転数や予膨張弁71やバイパス弁81の開度より、現状の膨張機構14の回転数や予膨張弁71やバイパス弁81の開度が大きくなることがあるが、これらの場合に誤って冷媒不足を判定するのを防止し、冷媒不足をより正確に検出することができる。
次に、冷媒不足を判定する具体的な制御方法について、図8のフローチャートを用いて説明する。図8において、図4と同様のステップは図4と同じ番号を与え、説明を省略する。
ステップ301で、利用側流体搬送量検出手段24により利用側流体搬送量(水循環量)を検出する。本実施の形態では、水循環量を直接検出するのではなく、利用側流体搬送量演算操作手段23が給水ポンプ17に指示した回転数より、水循環量を推定している。
ステップ302で、検出した水循環量Gwが、あらかじめ定められた水循環量Gw0未満であるかの比較を行い、水循環量があらかじめ定められた値Gw0未満であることを判定する。水循環量があらかじめ定められた値Gw0未満である場合には次のステップに進み、あらかじめ定められた値Gw0以上の場合にはステップ101に戻る。
次に、ステップ303で、利用側熱交換器出口流体温度検出手段21により出湯温度を検出する。ステップ304で、検出した出湯温度検出値Twと利用側熱交換器出口流体目標温度演算手段22によりあらかじめ定められた出湯温度目標値との温度差ΔTwを演算する。ステップ305では、温度差ΔTwが、演算された温度差ΔTw0以上であるかの比較を行い、出湯温度が出湯温度目標値に達しているか否かを判定する。出湯温度が出湯温度目標値に達している場合には次のステップに進み、達していない場合にはステップ101に戻る。
すなわち、本実施の形態の冷凍サイクル装置の制御方法は、第2目標膨張機構回転数と第1目標膨張機構回転数の差(Hze2−Hze1)があらかじめ定められた所定値(Hze0)以上となる場合で、かつ、水循環量があらかじめ定められた値未満であり、かつ、出湯温度が出湯温度目標値に達していない条件が一定時間、成立した場合には、冷媒不足判定手段61は冷媒不足の状態であると判定するものである。
あるいは、第2の実施の形態の制御方法に追加した場合には、第2目標予減圧器開度と第1目標予減圧器開度の差(PLSp2−PLSp1)があらかじめ定められた所定値(PLSp0)以上となる場合、あるいは、第2目標バイパス弁開度と第1目標バイパス弁開度の差(PLSb2−PLSb1)があらかじめ定められた所定値(PLSb0)以上となる場合、で、かつ、水循環量があらかじめ定められた値未満であり、かつ、出湯温度が出湯温度目標値に達していない条件が一定時間、成立した場合には、冷媒不足判定手段61は冷媒不足の状態であると判定するものである。
そして、この判定に基づいて、例えばリモコン等の表示器(図示せず)に異常表示を行うとともに、冷媒不足判定手段61から信号を受けた駆動手段10が圧縮機構11を停止し、圧縮機構11を損傷させるといった冷凍サイクル装置の信頼性の低下を防止する。
以上のように、本実施の形態の冷凍サイクル装置では、誤って冷媒不足であると判定する可能性を低減でき、冷媒不足をより正確に検出することができる。
なお、本実施の形態では、利用側流体搬送量演算操作手段23の給水ポンプ17への回転数指示値から推定して水循環量を間接的に検出する構成や方法としているが、循環量計などを用いて水循環量を直接検出する構成や方法にしても良い。また、水循環量を推定せず、給水ポンプ17の回転数そのものや利用側流体搬送量演算操作手段23の指示値そのものから判定する構成等であっても良い。また、本実施の形態では、給湯装置の例で説明したので、放熱器12で冷媒と熱交換する流体(即ち、湯)の循環量と流体の放熱器出口温度とを検出し、流体の放熱器出口温度の目標値と流体の放熱器出口温度の検出値との温度差を演算し、循環量の検出値が所定値未満であり、かつ、温度差の演算値が所定値以上であることを判定基準に追加し、その冷媒不足を間接的に判定する構成及び方法としている。
これに対して、家庭用空調機等の冷凍サイクル装置の場合であれば、放熱器12で冷媒と熱交換する流体(例えば、空気)の循環量(即ち、冷媒と熱交換する流体が空気の場合には風量)と流体の放熱器出口温度とを検出し、当該放熱器出口温度の検出値と放熱器出口温度の目標値との温度差を演算し、風量の検出値が所定値未満であり、かつ、温度差の演算値が所定値以上であることを判定基準に追加し、冷媒不足を直接的に判定する(換言すれば、冷媒不足により生じる放熱器12での加熱能力の低下度合いを検知して判定する)構成及び方法とする。そして、風量の所定値や温度差の所定値は、実験などからあらかじめ定めるものであり、放熱器出口温度の目標値は、例えば外気温度や放熱器12を冷却する空気の入口温度や冷凍サイクル装置の使用条件などから演算して設定するものである。
(実施の形態4)
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3のいずれかの実施の形態に、より確実に冷媒不足を検知するための手段、あるいは、制御方法を追加したものである。以下、第1の実施の形態の冷凍サイクル装置を例にとり説明するが、第2、第3の実施の形態の冷凍サイクル装置に追加する場合でも同様である。
図1において、電流検出手段31は、駆動手段10から圧縮機構11への通電電流を検出している。冷媒不足が生じると、圧縮機構11が吐出する冷媒の循環量が不足し、2での加熱能力が低下する。また、冷媒の循環量が不足することにより圧縮機構11は低負荷となるので、圧縮機構11への通電電流は減少する。このため、実施の形態1から3で説明した判定条件を満たし、かつ、電流検出手段31により検出された通電電流があらかじめ定められた値未満である場合には、冷媒不足の状態であると判定できる。
一方、冷媒不足でない場合であっても、例えば、目標出湯温度がリモコンなどで変更された場合など、適正冷媒時に最適と予測される膨張機構14の回転数や予膨張弁71やバイパス弁81の開度より、現状の膨張機構14の回転数や予膨張弁71やバイパス弁81の開度が大きくなることがある。また、低外気温での運転時などには、水循環量があらかじめ定められた値未満であり、かつ、出湯温度が出湯温度目標値に達していないことがある。しかし、これらの場合には圧縮機構11は高負荷で運転されているので、通電電流は低下せずにむしろ増大する。したがって、電流検出手段31の検出した電流検出値があらかじめ定められた値以上となり、冷媒不足判定手段61は冷媒不足を判定せずに、圧縮機構11への通電を続行しその運転を継続させる。このため、本実施の形態では圧縮機構11の高負荷運転時に誤って冷媒不足を判定するのを防止し、冷媒不足をより正確に検出することができる。
次に、冷媒不足を判定する具体的な制御方法について、図9のフローチャートを用いて説明する。図9において、図4と同様のステップは図4と同じ番号を与え、説明を省略する。
ステップ401で、電流検出手段31(例えば、駆動手段10にインバータ回路(図示せず)から通電される電流を検出する電流センサー)により検出した通電電流を検知する。ステップ402では、検知した通電電流値Iとあらかじめ定めた電流値I0との比較を行い、圧縮機構11が高負荷の状態であるか否かを判定する。通電電流値Iが所定値I0未満の場合には次のステップ108に進み、所定値I0以上の場合にはステップ101に戻る。
すなわち、本実施の形態の冷凍サイクル装置の制御方法は、第2目標膨張機構回転数と第1目標膨張機構回転数の差(Hze2−Hze1)があらかじめ定められた所定値(Hze0)以上となる場合で、かつ、通電電流値があらかじめ定められた値未満である条件が一定時間、成立した場合には、冷媒不足判定手段61は冷媒不足の状態であると判定するものである。
あるいは、第2の実施の形態の制御方法に追加した場合には、第2目標予減圧器開度と第1目標予減圧器開度の差(PLSp2−PLSp1)があらかじめ定められた所定値(PLSp0)以上となる場合、あるいは、第2目標バイパス弁開度と第1目標バイパス弁開度の差(PLSb2−PLSb1)があらかじめ定められた所定値(PLSb0)以上となる場合、で、かつ、通電電流値があらかじめ定められた値未満である条件が一定時間、成立した場合には、冷媒不足判定手段61は冷媒不足の状態であると判定するものである。
そして、この判定に基づいて、例えばリモコン等の表示器(図示せず)に異常表示を行うとともに、冷媒不足判定手段61から信号を受けた駆動手段10が圧縮機構11を停止し、圧縮機構11を損傷させるといった冷凍サイクル装置の信頼性の低下を防止する。
以上のように、本実施の形態の冷凍サイクル装置では、誤って冷媒不足であると判定する可能性を低減でき、冷媒不足をより正確に検出することができる。
なお、本実施の形態では、冷媒不足によって変動する圧縮機構11の負荷を、圧縮機構11への通電電流から検出する構成及び方法としているが、トルク計などを用いて圧縮機構11の負荷を直接検出する構成及び方法にしても良い。換言すれば、圧縮機の負荷を検出し、当該負荷の検出値が所定値以下であるか否かを判定し、冷媒不足を判定する条件に追加することができる。
また、本実施の形態では、電流検出手段31は圧縮機構11への通電電流を検出すると
しているが、圧縮機構11への通電電流が冷凍サイクル装置全体への通電電流の大部分を占めるために、送風装置(ファン)16や給水ポンプ17などへの通電電流を含む冷凍サイクル装置全体への通電電流を検出する構成及び方法にしても圧縮機構11の負荷を検出でき、同様の効果が得られる。また、所定値I0は、圧縮機構11の運転周波数に応じた複数の値を設定しても良い。
(実施の形態5)
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4のいずれかの実施の形態に、より確実に冷媒不足を検知するための手段、あるいは、制御方法を追加したものである。以下、第1の実施の形態の冷凍サイクル装置を例にとり説明するが、第2から第4の実施の形態の冷凍サイクル装置に追加する場合でも同様である。
図1において、除霜運転判定手段51は、冷凍サイクル装置が除霜運転中であるか否かを判定する。冷媒不足でない場合であっても、例えば、蒸発器15の除霜運転中など、適正冷媒時に最適と予測される膨張機構14の回転数や予膨張弁71やバイパス弁81の開度より、現状の膨張機構14の回転数や予膨張弁71やバイパス弁81の開度が大きくなることがある。したがって、除霜運転判定手段51が除霜中であると判定した場合には、冷媒不足判定手段61は冷媒不足を判定せずに、圧縮機構11への通電を続行しその運転を継続させる。このため、本実施の形態では除霜運転時に誤って冷媒不足を判定するのを防止し、冷媒不足をより正確に検出することができる。
次に、冷媒不足を判定する具体的な制御方法について、図10のフローチャートを用いて説明する。図10において、図4と同様のステップは図4と同じ番号を与え、説明を省略する。
ステップ101を行う前に、ステップ501において、冷凍サイクル装置が除霜運転中であるか否を判定する。冷凍サイクル装置が除霜運転中でない場合には次のステップ101に進み、除霜運転中である場合にはステップ401に戻る。その後、ステップ101からステップ108までを実行する。
そして、除霜運転中でなく、第2目標膨張機構回転数と第1目標膨張機構回転数の差(Hze2−Hze1)があらかじめ定められた所定値(Hze0)以上となる条件が一定時間、成立した場合には、ステップ109で、冷媒不足判定手段61が冷媒不足の状態であると判定し、リモコン等の表示器(図示せず)に異常表示を行うとともに、圧縮機構11を停止し、圧縮機構11を損傷させるといった冷凍サイクル装置の信頼性の低下を防止する。
また、冷媒不足でない場合であっても、除霜運転中であるために、第2目標膨張機構回転数と第1目標膨張機構回転数の差(Hze2−Hze1)があらかじめ定められた所定値(Hze0)以上となる場合には、冷媒不足判定手段61は冷媒不足を判定せずに、圧縮機構11への通電を続行してその運転を継続させる。
あるいは、除霜運転中でなく、第2の実施の形態の制御方法に追加した場合には、第2目標予減圧器開度と第1目標予減圧器開度の差(PLSp2−PLSp1)があらかじめ定められた所定値(PLSp0)以上となる場合、あるいは、第2目標バイパス弁開度と第1目標バイパス弁開度の差(PLSb2−PLSb1)があらかじめ定められた所定値(PLSb0)以上となる場合、で、かつ、通電電流値があらかじめ定められた値未満である条件が一定時間、成立した場合には、冷媒不足判定手段61は冷媒不足の状態であると判定するものである。
したがって、本実施の形態の冷凍サイクル装置では、除霜運転中である場合に誤って冷媒不足であると判定することもなく、冷媒不足をより正確に検出することができる。
なお、第1の実施の形態では、フィードフォワード制御の目標値(第1目標膨張機構回転数)とフィードバック制御の目標値(第2目標膨張機構回転数)とを比較して、膨張機構14の回転数変化方向を判定する構成や方法としているが、例えば、一定時間前の膨張機構14の回転数と膨張機構14の回転数とを比較して、膨張機構14の回転数が増加方向に調整されつつあるか、あるいは、低下方向に調整されつつあるかを判定する構成等にしても良い。
また、第1目標膨張機構回転数や第2目標膨張機構回転数に一定値を加算、乗算するなどの補正を行う構成等であっても良い。また、膨張機構14は吐出温度が一定となるように制御されているとして説明したが、圧縮機構11の吸入過熱度や、蒸発器15の出口過熱度が一定になるように制御する場合でも、同様の効果が得られる。また、第2の実施の形態の予減圧器開度、バイパス弁開度の場合も同様である。
なお、以上の第1から第5の実施の形態における冷凍サイクル装置において、膨張機構14に流入する冷媒と圧縮機構11に流入する冷媒を熱交換させる内部熱交換器を設けても良い。また、冷媒は二酸化炭素(CO2)であるとして説明したが、これに限定するものではなく、R32やR410AなどのHFC冷媒、R290などのHC冷媒であってもよい。
さらに、以上の第1から第5の実施の形態のような冷媒不足の検出方法では、高価な圧力センサー等を新たに設ける必要がなく、安価に冷凍サイクル装置を製造できるという副次的なメリットも有する。