以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[電磁リレー]
まず、本発明の適用対象となる電磁リレーの構成及び基本的な動作について、図1及び図2を用いて説明する。この電磁リレー10は、例えば、車両に搭載される電動4輪駆動システムにおいて、車両用の電源1と駆動モータ等の電気負荷2との間に接続されて、駆動モータ等の電気負荷2に対する電源供給と遮断とを切り替えるためのスイッチとして利用されるものである。
この電磁リレー10は、図1に示すように、ボビンなどに巻回された励磁コイル11と、励磁コイル11の外周を覆って励磁コイル11の通電時に磁気回路を形成するヨーク12と、励磁コイル11の巻回中心を通るようにヨーク12の内部に挿通された鉄心13と、鉄心13に対して絶縁部材14を介して固定された可動端子15と、可動端子15に対して相対向するように配置された一対の固定端子16を備えている。
電磁リレー10におけるこれらの各部材は、それぞれ筐体17の内部に収容され、固定端子16の一部のみが筐体17の外部に露出している。そして、一対の固定端子16のうちの一方の筐体17外部に露出した部分が、銅線などの電力線を介して電源1に電気的に接続され、一対の固定端子16のうちの他方の筐体17外部に露出した部分が、銅線などの電力線を介して駆動モータ等の電気負荷2に電気的に接続されている。
以上のように構成される電磁リレー10では、励磁コイル11への非通電時には、鉄心13が図示しないバネなどの力により図1中矢印A方向に付勢され、図1に示すように、鉄心13に固定された可動端子15が固定端子16から離間した状態とされる。これにより、可動端子15に設けられている接点15aと、固定端子16に設けられている接点16aとが非接触状態とされ、その結果、電源1と電気負荷2とが電気的に切り離されて、電気負荷2に対する電源供給は遮断される。
一方、励磁コイル11への通電時には、励磁コイル11の電磁誘導作用により発生する磁界により、ヨーク12と鉄心13との間に磁気回路が形成されて鉄心13をバネの付勢力に抗して移動させる力が働く。そして、鉄心13が図2中矢印B方向へと移動することで、図2に示すように、鉄心13に固定された可動端子15が固定端子16に近接した状態とされる。これにより、可動端子15に設けられている接点15aと、固定端子16に設けられている接点16aとが接触状態とされ、その結果、電源1と電気負荷2とが電気的に接続されて、電気負荷2に対して電源が供給される。なお、励磁コイル11の通電時における鉄心13の移動量は、例えば、鉄心13に設けられたストッパ13aがヨーク12の内周面に当接することで規制されるようになっている。
以上のように、電磁リレー10は、励磁コイル11に対する通電が制御されることで、可動端子15が固定端子16に対して近接離間する方向に移動して、駆動モータ等の電気負荷2に対する電源供給と遮断とを切り替える。このような電磁リレー10は、車載レイアウト上の要求から、例えば車両のフロア下などの温度変化や湿度変化が比較的大きい場所に配置することも検討されており、低温環境下での凍結による可動端子15の接点15aと固定端子16の接点16aとの間の接触不良を防止するために、何らかの対策を講じることが求められている。すなわち、電磁リレー10が車両のフロア下などに配置された場合、例えば寒冷地や早朝等の外気温度が極めて低い環境下では、筐体17の内部で空気中の水分などが付着氷結して、凍結が発生する可能性がある。特に、固定端子16はその一部が筐体17外部に露出して外気に晒されるので、外気温度が極低温になると凍結の可能性が高く、固定端子16の接点16aを覆うように氷結の層が形成されると、励磁コイル11の通電時に可動端子15の接点15aとの間に接触不良が生じ、スイッチとしての機能を適切に発揮できなくなる。
本発明は、以上のような電磁リレー10の筐体17内部の凍結による可動端子15と固定端子16との間の接触不良を防止するための有効な対策の1つとして提案されたものであり、電磁リレー10の筐体17内部に凍結が生じているか否かを判定して、凍結が生じていると判定されたときには、筐体17又は筐体17内部の凍結発生箇所に振動を発生させて、この振動により短時間で速やかに筐体17内部の凍結を解除するようにした点を大きな特徴とするものである。なお、本発明の適用対象となる電磁リレーは、上述した構成の電磁リレー10に特に限定されるものではなく、本発明は、励磁コイルの電磁誘導作用により可動端子が固定端子に対して近接離間する方向に移動することでスイッチングが行われる電磁リレーに対して広く適用可能である。
以下、本発明に係る凍結解除装置の具体例として、第1乃至第4の4つの実施例について説明する。
[第1実施例]
図3は、第1実施例の凍結解除装置を説明するための構成図である。本例の凍結解除装置は、電磁リレー10の動作を制御するコントロールユニット20の一機能として実現されるものであり、電磁リレー10の可動端子15を固定端子16に対して近接離間する方向に繰り返し移動させることで筐体17又は筐体17内部の凍結発生箇所を振動させて、筐体17内部の凍結を解除するようにしたものである。
コントロールユニット20は、通常時は、例えば外部からのオン/オフ指令などに従って、上述したように励磁コイル11に対する通電を制御することによって、駆動モータ等の電気負荷2に対する電源供給と遮断とを切り替える制御を行う。本例では、このコントロールユニット20に、以上のような通常時の制御機能のほかに、凍結状態判定手段21としての機能と、振動発生手段22としての機能とを持たせるようにしている。
凍結状態判定手段21は、電磁リレー10の筐体17内部に凍結が生じているか否かを判定するものである。具体的には、コントロールユニット20には、電磁リレー10の一対の固定端子16のうちの一方が接続された電源1側の回路電圧と、一対の固定端子16のうちの他方が接続された電気負荷2側の回路電圧とが入力されるようになっている。また、コントロールユニット20には、例えば電磁リレー10の筐体17及びその外部に露出した固定端子16の近傍に設置された温度センサ31の検出値が入力されるようになっている。そして、コントロールユニット20の凍結状態判定手段21は、励磁コイル11を通電させて可動端子15を固定端子16に対して近接する方向に移動させ、可動端子15の接点15aと固定端子16の接点16aとを接触させる操作を行ったときの電源1側の回路電圧と電気負荷2側の回路電圧とを比較し、その差が所定の閾値以下となっているか否かにより、可動端子15と固定端子16との間の電気的導通状態を判定する。そして、閾値を超える電位差が生じていて可動端子15と固定端子16間の電気的導通状態が不良と判定され、且つ、温度センサ31の検出値から、電磁リレー10の筐体17内部が凍結に至る温度状態にあると推定される場合に、電磁リレー10の筐体17内部に凍結が生じているものと判定する。
振動発生手段22は、凍結状態判定手段21により電磁リレー10の筐体17内部に凍結が生じていると判定されたときに、筐体17又は筐体17内部の振動発生箇所に振動を発生させるものである。具体的には、振動発生手段22は、電磁リレー10の励磁コイル11に対する電圧の印加と停止とを繰り返し行い、可動端子15を固定端子16に対して近接離間する方向に繰り返し移動させることで、筐体17又は筐体17内部の凍結発生箇所に振動を発生させる。
本例では、特に低温環境下で凍結が生じ易い固定端子16の凍結を想定し、固定端子16の接点16a表面に付着した氷結層を効果的に除去できるようにするために、固定端子16に大きな振動を発生させるようにする。これを実現するため、振動発生手段22は、可動端子15を固定端子16に対して近接離間する方向に移動させる際の周波数、すなわち励磁コイル11に対する電圧の印加と停止との繰り返し周波数を、固定端子16の共振周波数に設定して、固定端子16に共振周波数での振動を発生させる。これにより、固定端子16には振幅の大きな振動が発生することになり、凍結解除の効果は大きくなる。
なお、電磁リレー10の固定端子16の共振周波数は、固定端子16の構造及び材料から事前に算出するようにしてもよいし、実際に部品を製造して予め実験等を行うことで求めるようにしてもよい。また、励磁コイル11に対する電圧の印加と停止とを繰り返す過程で、固定端子16の振動振幅を測定し、振幅が大きくなるような周波数に調整する制御を行うようにしてもよい。また、励磁コイル11に対する電圧の印加と停止との繰り返し周波数は、固定端子16の共振周波数に完全に合致していなくても、効果や制御のし易さ等を考慮して、固定端子16の共振周波数に近い周波数を選択するようにしてもよい。
図4は、以上のようにコントロールユニット20の一機能として実現される本例の凍結解除装置において、電磁リレー10の筐体17内部の凍結を解除するために、コントロールユニット20により実行される一連の処理の流れを示すフローチャートである。この図4に示す処理フローは、例えば、車両のイグニッションスイッチがオフからオンに切り替わったとき、或いは、電磁リレー10を利用する電動4輪駆動システムが起動されたときに開始される。
図4の処理フローが開始されると、コントロールユニット20は、まず、ステップS101において、電磁リレー10の励磁コイル11に対する電圧印加、停止の繰り返し回数nの値を0に初期化する。次に、コントロールユニット20は、ステップS102において、電磁リレー10の励磁コイル11に対して所定の電圧を印加して、可動端子15を固定端子16に近接する方向へと移動させる。そして、コントロールユニット20は、可動端子15を固定端子16に近接させた状態で、ステップS103において、電磁リレー10の一対の固定端子16のうちの一方に接続された電源1側の回路電圧Vsと、一対の固定端子16のうちの他方に接続された電気負荷2側の回路電圧Vlとを測定し、ステップS104において、電源1側の回路電圧Vsと電気負荷2側の回路電圧Vlとの差、すなわち電磁リレー10の一対の固定端子16の一方と他方との電位差が、予め定めた所定の閾値V0以下になっているか否かを確認する。なお、この閾値V0は、固定端子16が持つ電気的抵抗値と、可動端子15が持つ電気的抵抗値、固定端子16の接点16aと可動端子15の接点15aとの間の接触抵抗、及びそれぞれの抵抗値の温度による変化等を考慮して、事前に最適な値に設定される。
このステップS104で電源1側の回路電圧Vsと電気負荷2側の回路電圧Vlとの差が閾値V0以下であれば、可動端子15と固定端子16との間の電気的導通状態は良好であるので、コントロールユニット20は、筐体17内部に凍結は生じていないと判定して、図4に示す処理フローを終了する。一方、ステップS104で電源1側の回路電圧Vsと電気負荷2側の回路電圧Vlとの差が閾値V0を超えていれば、ステップS105へと処理を移行する。
次に、コントロールユニット20は、ステップS105において、電磁リレー10の励磁コイル11に対する電圧の印加を停止し、ステップS106において、温度センサ31によって検出される温度検出値が、予め定めた所定の閾値T℃以下であるか否かを判定する。なお、ここでの閾値T℃は、水などの液体の凝固点や温度センサ31の設置位置から予想される凍結発生箇所(本例では筐体17内部の固定端子16の接点16a付近)までの距離、凍結発生が予想される固定端子16の材料の比熱等を考慮して、事前に最適な値に設定される。
このステップS106で温度センサ31の検出値が閾値T℃を超えていれば、電磁リレー10の筐体17内部が凍結に至る温度状態にないにも拘わらず可動端子15と固定端子16との間で接点不良が生じている状態であるので、コントロールユニット20は、ステップS109へと処理を移行して、筐体17内部の凍結以外の何らかの要因で電磁リレー10に故障が発生していると判断し、例えば警告灯の表示などにより車両の乗員にその旨を報知する等の処理を行って、図4に示す処理フローを終了する。
一方、ステップS106で温度センサ31の検出値が閾値T℃以下であれば、コントロールユニット20は、次のステップS107において、励磁コイル11に対する電圧印加、停止の繰り返し回数nの値をインクリメントする。そして、コントロールユニット20は、ステップS108において、励磁コイル11に対する電圧印加、停止の繰り返し回数nの値が予め定めた規定値Nに達したか否かを判断し、励磁コイル11に対する電圧印加、停止の繰り返し回数nの値が規定値Nに達していなければ、ステップS102に戻って励磁コイル11に対する電圧の印加を再開し、以降の処理を繰り返し行う。
ここで、本例では、コントロールユニット20が、この励磁コイル11に対して電圧の印加と停止とを繰り返す際の繰り返しの周波数を、筐体17内部で凍結発生が予想される部材、具体的には、本例では固定端子16の共振周波数f0に設定する。これにより、励磁コイル11の電磁誘導作用による可動端子15の移動に伴って固定端子16に自己の共振周波数f0に合致する周波数の振動が発生し、固定端子16が大きな振幅で振動することになる。そして、この固定端子16の振動によって接点16a表面の氷結層などが除去されると、可動端子15と固定端子16との間の電気的導通状態は良好になるので、コントロールユニット20は、ステップS104で電源1側の回路電圧Vsと電気負荷2側の回路電圧Vlとの差が閾値V0以下であることを確認して、図4に示す処理フローを終了する。
一方、繰り返し回数nの値が規定値Nに達するまで励磁コイル11に対する電圧印加と停止とを繰り返しても、なお可動端子15と固定端子16との間の電気的導通状態が回復しない場合には、コントロールユニット20は、ステップS109へと処理を移行して、筐体17内部の凍結以外の何らかの要因で電磁リレー10に故障が発生していると判断し、例えば警告灯の表示などにより車両の乗員にその旨を報知する等の処理を行って、図4に示す処理フローを終了する。
以上、具体的な例を挙げて詳細に説明したように、本発明の第1実施例の凍結解除装置によれば、電磁リレー10の動作を制御するコントロールユニット20が、電磁リレー10の筐体17内部、具体的には固定端子16の接点16a近傍などに凍結が生じているか否かを判定し、凍結が生じている場合には、励磁コイル11に対する電圧の印加と停止とを繰り返して、可動端子15を固定端子16に対して近接離間する方向に繰り返し移動させることで、凍結が生じている固定端子16を振動させて凍結を解除するようにしているので、筐体17内部の凍結を要因とする電磁リレー10の可動端子15と固定端子16との接点間の接触不良といった問題を有効に防止できる。
また、特に、本例の凍結解除装置では、凍結発生箇所である固定端子16などを機械的に振動させることで凍結を解除するようにしているので、例えば、凍結発生箇所を加熱して凍結を解除する場合に比べて、凍結解除を短時間で速やかに行うことができる。
また、本例の凍結解除装置では、凍結発生箇所である固定端子16などに自己の共振周波数に合致した周波数の振動を発生させるようにしているので、固定端子16などを大きな振幅で振動させることができ、効率的に凍結を解除することができる。
また、本例の凍結解除装置では、電磁リレー10自体の作動により凍結を解除するようにしており、例えば凍結を解除するための専用の加熱装置などを別途設置する必要がないので、このような加熱装置などを別途設置した場合に懸念されるシステムの大型化やコスト増といった問題も有効に回避することができる。
また、本例の凍結解除装置では、電磁リレー10の筐体17内部に凍結が発生したと判定されたときのみ電磁リレー10に通電し、凍結発生箇所である固定端子16などを機械的に振動させることで凍結を解除するようにしているので、例えば、凍結の発生自体を防止するために励磁コイルに長時間通電させて発熱させたりする場合に比べ、エネルギ損失を大幅に低減することができる。
なお、以上の説明では、コントロールユニット20が励磁コイル11に対する電圧の印加と停止とを繰り返して、可動端子15を固定端子16に対して近接離間する方向に繰り返し移動させることで、筐体17内部の凍結発生箇所の共振周波数に合致した周波数の振動を発生させるようにしているが、電磁リレー10の筐体17の共振周波数に合致した周波数の振動を発生させて、筐体17を大きな振幅で振動させるようにしても、筐体17内部の凍結を解除する上で有効である。
[第2実施例]
次に、本発明の第2実施例の凍結解除装置について説明する。本例の凍結解除装置は、上述した第1実施例と同様、電磁リレー10の動作を制御するコントロールユニット20の一機能として実現されるものであり、電磁リレー10の可動端子15を固定端子16に対して近接離間する方向に繰り返し移動させることで凍結発生箇所である固定端子16などを振動させて、凍結を解除するようにしたものである。
ただし、本例の凍結解除装置では、コントロールユニット20の振動発生手段22が、凍結発生箇所である固定端子16などを振動させて凍結を解除する処理を行う際に、電磁リレー10の励磁コイル11に対して印加する電圧値を、通常のスイッチング操作時に励磁コイル11に対して印加する電圧値よりも高電圧に設定するようにしている。また、本例の凍結解除装置では、コントロールユニット20の振動発生手段22が、凍結発生箇所である固定端子16などを振動させて凍結を解除する処理を行う際に、励磁コイル11に対して電圧を印加する時間を、電圧の印加を停止する時間よりも長く設定するようにしている。
図5は、本例の凍結解除装置において、電磁リレー10の筐体17内部の凍結を解除するために、コントロールユニット20により実行される一連の処理の流れを示すフローチャートである。この図5に示す処理フローは、例えば、車両のイグニッションスイッチがオフからオンに切り替わったとき、或いは、電磁リレー10を利用する電動4輪駆動システムが起動されたときに開始される。
図5の処理フローが開始されると、コントロールユニット20は、まず、ステップS201において、電磁リレー10の励磁コイル11に対する電圧印加、停止の繰り返し回数nの値を0に初期化するとともに、励磁コイル11への印加電圧Vの値を、通常のスイッチング操作時の印加電圧と同等の値Vaに設定する。
次に、コントロールユニット20は、ステップS202において、電磁リレー10の励磁コイル11に対してステップS201で設定した電圧Vaを印加して、可動端子15を固定端子16に近接する方向へと移動させるとともに、内蔵するタイマなどで電圧印加時間T1のカウントを開始する。そして、コントロールユニット20は、可動端子15を固定端子16に近接させた状態で、ステップS203において、電磁リレー10の一対の固定端子16のうちの一方に接続された電源1側の回路電圧Vsと、一対の固定端子16のうちの他方に接続された電気負荷2側の回路電圧Vlとを測定し、ステップS204において、電源1側の回路電圧Vsと電気負荷2側の回路電圧Vlとの差、すなわち電磁リレー10の一対の固定端子16の一方と他方との電位差が、予め定めた所定の閾値V0以下になっているか否かを確認する。
このステップS204で電源1側の回路電圧Vsと電気負荷2側の回路電圧Vlとの差が閾値V0以下であれば、可動端子15と固定端子16との間の電気的導通状態は良好であるので、コントロールユニット20は、筐体17内部に凍結は生じていないと判定して、図5に示す処理フローを終了する。一方、ステップS204で電源1側の回路電圧Vsと電気負荷2側の回路電圧Vlとの差が閾値V0を超えていれば、ステップS205へと処理を移行する。
次に、コントロールユニット20は、ステップS205において、電圧印加時間T1が予め設定した所定時間Tmとなるまで待機し、電圧印加時間T1が所定時間Tmとなった段階でタイマをリセットしてステップS206に進む。そして、コントロールユニット20は、ステップS206において、電磁リレー10の励磁コイル11に対する電圧の印加を停止するとともに、電圧印加停止時間T2のカウントを開始し、ステップS207において、温度センサ31によって検出される温度検出値が、予め定めた所定の閾値T℃以下であるか否かを判定する。
このステップS207で温度センサ31の検出値が閾値T℃を超えていれば、電磁リレー10の筐体17内部が凍結に至る温度状態にないにも拘わらず可動端子15と固定端子16との間で接点不良が生じている状態であるので、コントロールユニット20は、ステップS210へと処理を移行して、筐体17内部の凍結以外の何らかの要因で電磁リレー10に故障が発生していると判断し、例えば警告灯の表示などにより車両の乗員にその旨を報知する等の処理を行って、図5に示す処理フローを終了する。
一方、ステップS207で温度センサ31の検出値が閾値T℃以下であれば、コントロールユニット20は、次のステップS208において、励磁コイル11に対する電圧印加、停止の繰り返し回数nの値をインクリメントする。そして、コントロールユニット20は、ステップS209において、励磁コイル11に対する電圧印加、停止の繰り返し回数nの値が予め定めた規定値Nに達したか否かを判断し、励磁コイル11に対する電圧印加、停止の繰り返し回数nの値が規定値Nに達していなければ、ステップS211に処理を移行する。
次に、コントロールユニット20は、ステップS211において、電圧印加停止時間T2が予め設定した所定時間Tnとなるまで待機し、電圧印加停止時間T2が所定時間Tnとなった段階でタイマをリセットしてステップS212に進む。なお、このステップS211での判定に用いる所定時間Tnと、上述したステップS206での判定に用いる所定時間Tmは、Tn<Tmの関係となるように設定される。すなわち、本例では、励磁コイル11に対する電圧印加時間T1が、電圧印加停止時間T2よりも長くなるように設定されている。
次に、コントロールユニット20は、ステップS212において、励磁コイル11への印加電圧Vの値を、通常のスイッチング操作時の印加電圧と同等の値Vaから、Vaよりも大きいVuに切り替えた後、ステップS202に戻って励磁コイル11に対する電圧の印加を再開し、以降の処理を繰り返し行う。
ここで、本例では、コントロールユニット20が、この励磁コイル11に対して電圧の印加と停止とを繰り返す際の繰り返しの周波数を、筐体17内部で凍結発生が予想される部材、具体的には、本例では固定端子16の共振周波数f0に設定する。これにより、励磁コイル11の電磁誘導作用による可動端子15の移動に伴って固定端子16に自己の共振周波数f0に合致する周波数の振動が発生し、固定端子16が大きな振幅で振動することになる。そして、この固定端子16の振動によって接点16a表面の氷結層などが除去されると、可動端子15と固定端子16との間の電気的導通状態は良好になるので、コントロールユニット20は、ステップS204で電源1側の回路電圧Vsと電気負荷2側の回路電圧Vlとの差が閾値V0以下であることを確認して、図5に示す処理フローを終了する。
一方、繰り返し回数nが規定値Nに達するまで励磁コイル11に対する電圧印加と停止とを繰り返しても、なお可動端子15と固定端子16との間の電気的導通状態が回復しない場合には、コントロールユニット20は、ステップS210へと処理を移行して、筐体17内部の凍結以外の何らかの要因で電磁リレー10に故障が発生していると判断し、例えば警告灯の表示などにより車両の乗員にその旨を報知する等の処理を行って、図5に示す処理フローを終了する。
以上、具体的な例を挙げて詳細に説明したように、本発明の第2実施例の凍結解除装置によれば、上述した第1実施例の凍結解除装置と同様に、電磁リレー10の動作を制御するコントロールユニット20が、電磁リレー10の筐体17内部、具体的には固定端子16の接点16a近傍などに凍結が生じているか否かを判定し、凍結が生じている場合には、励磁コイル11に対する電圧の印加と停止とを繰り返して、可動端子15を固定端子16に対して近接離間する方向に繰り返し移動させることで、凍結が生じている固定端子16を振動させて凍結を解除するようにしているので、筐体17内部の凍結を要因とする電磁リレー10の可動端子15と固定端子16との接点間の接触不良といった問題を有効に防止できる。
また、本例の凍結解除装置では、上述した第1実施例の凍結解除装置と同様に、凍結発生箇所である固定端子16などを機械的に振動させることで凍結を解除するようにしているので、例えば、凍結発生箇所を加熱して凍結を解除する場合に比べて、凍結解除を短時間で速やかに行うことができる。
また、本例の凍結解除装置では、上述した第1実施例の凍結解除装置と同様に、凍結発生箇所である固定端子16などに自己の共振周波数に合致した周波数の振動を発生させるようにしているので、固定端子16などを大きな振幅で振動させることができ、効率的に凍結を解除することができる。
また、本例の凍結解除装置では、上述した第1実施例の凍結解除装置と同様に、電磁リレー10自体の作動により凍結を解除するようにしており、例えば凍結を解除するための専用の加熱装置などを別途設置する必要がないので、このような加熱装置などを別途設置した場合に懸念されるシステムの大型化やコスト増といった問題も有効に回避することができる。
また、本例の凍結解除装置では、上述した第1実施例の凍結解除装置と同様に、電磁リレー10の筐体17内部に凍結が発生したと判定されたときのみ電磁リレー10に通電し、凍結発生箇所である固定端子16などを機械的に振動させることで凍結を解除するようにしているので、例えば、凍結の発生自体を防止するために励磁コイルに長時間通電させて発熱させたりする場合に比べ、エネルギ損失を大幅に低減することができる。
さらに、本例の凍結解除装置では、電磁リレー10の励磁コイル11に対する電圧の印加と停止とを繰り返して凍結発生箇所である固定端子16などを振動させる際に、励磁コイル11に対して印加する電圧値を、通常のスイッチング操作時に励磁コイル11に対して印加する電圧値よりも高電圧に設定するようにしているので、可動端子15の運動エネルギを大きくして固定端子16をより大きな振幅で振動させることができ、より短時間で効率的に凍結を解除することができる。
さらに、本例の凍結解除装置では、電磁リレー10の励磁コイル11に対する電圧の印加と停止とを繰り返して凍結発生箇所である固定端子16などを振動させる際に、励磁コイル11に対する電圧印加時間T1を、電圧印加停止時間T2よりも長く設定するようにしているので、固定端子16などの振動に加えて励磁コイル11の温度上昇効果も利用して凍結の解除を図ることができ、より短時間で効率的に凍結を解除することができる。
[第3実施例]
次に、本発明の第3実施例の凍結解除装置について説明する。本例の凍結解除装置は、上述した第1実施例及び第2実施例と同様、電磁リレー10の動作を制御するコントロールユニット20の一機能として実現されるものであり、電磁リレー10の可動端子15を固定端子16に対して近接離間する方向に繰り返し移動させることで凍結発生箇所である固定端子16などを振動させて、凍結を解除するようにしたものである。
ただし、上述した第1実施例及び第2実施例では、コントロールユニット20の振動発生手段22により電磁リレー10の励磁コイル11に対する電圧印加と停止とを1回ずつ繰り返すたびに、その都度、凍結状態判定手段21による凍結状態の判定(凍結が解除されたかどうかの判定)を行うようにしていたが、本例の凍結解除装置では、励磁コイル11に対する電圧印加と停止とを所定回数繰り返す毎に、凍結状態判定手段21による凍結状態の判定(凍結が解除されたかどうかの判定)を行うようにしている。
本例の凍結解除装置では、コントロールユニット20が以上の処理を行うようにすることで、凍結発生箇所である固定端子16などの共振周波数が比較的高い周波数の場合であっても、コントロールユニット20の処理能力を大幅に高めることなく、凍結発生箇所である固定端子16などに自己の共振周波数に合致する周波数の振動を発生させて、効率的に凍結を解除できるようにしている。
すなわち、本例の凍結解除装置では、上述した第1実施例及び第2実施例と同様に、凍結発生箇所である固定端子16などに自己の共振周波数に合致する周波数の振動を発生させて効率的に凍結を解除できるようにしているが、固定端子16などの共振周波数が高い周波数である場合には、コントロールユニット20の処理能力によっては、固定端子16の共振周波数に合わせて凍結状態の判定を行うことが困難な場合もある。本例の凍結解除装置は、このような状況を想定して、励磁コイル11に対する電圧印加と停止を所定回数繰り返す毎に凍結状態の判定(凍結解除の判定)を行うことで、コントロールユニット20の処理能力を大幅に高めることなく、凍結発生箇所である固定端子16などに自己の共振周波数に合致する周波数の振動を発生させて、効率的に凍結を解除できるようにしている。
図6は、本例の凍結解除装置において、電磁リレー10の筐体17内部の凍結を解除するために、コントロールユニット20により実行される一連の処理の流れを示すフローチャートである。この図6に示す処理フローは、例えば、車両のイグニッションスイッチがオフからオンに切り替わったとき、或いは、電磁リレー10を利用する電動4輪駆動システムが起動されたときに開始される。
図6の処理フローが開始されると、コントロールユニット20は、まず、ステップS301において、電磁リレー10の励磁コイル11に対する電圧印加、停止の所定回数毎の繰り返し回数mの値を0に初期化する。次に、コントロールユニット20は、ステップS302において、電磁リレー10の励磁コイル11に対して所定の電圧を印加して、可動端子15を固定端子16に近接する方向へと移動させる。そして、コントロールユニット20は、可動端子15を固定端子16に近接させた状態で、ステップS303において、電磁リレー10の一対の固定端子16のうちの一方に接続された電源1側の回路電圧Vsと、一対の固定端子16のうちの他方に接続された電気負荷2側の回路電圧Vlとを測定し、ステップS304において、電源1側の回路電圧Vsと電気負荷2側の回路電圧Vlとの差、すなわち電磁リレー10の一対の固定端子16の一方と他方との電位差が、予め定めた所定の閾値V0以下になっているか否かを確認する。
このステップS304で電源1側の回路電圧Vsと電気負荷2側の回路電圧Vlとの差が閾値V0以下であれば、可動端子15と固定端子16との間の電気的導通状態は良好であるので、コントロールユニット20は、筐体17内部に凍結は生じていないと判定して、図6に示す処理フローを終了する。一方、ステップS304で電源1側の回路電圧Vsと電気負荷2側の回路電圧Vlとの差が閾値V0を超えていれば、ステップS305へと処理を移行する。
次に、コントロールユニット20は、ステップS305において、電磁リレー10の励磁コイル11に対する電圧の印加を停止し、ステップS306において、温度センサ31によって検出される温度検出値が、予め定めた所定の閾値T℃以下であるか否かを判定する。
このステップS306で温度センサ31の検出値が閾値T℃を超えていれば、電磁リレー10の筐体17内部が凍結に至る温度状態にないにも拘わらず可動端子15と固定端子16との間で接点不良が生じている状態であるので、コントロールユニット20は、ステップS310へと処理を移行して、筐体17内部の凍結以外の何らかの要因で電磁リレー10に故障が発生していると判断し、例えば警告灯の表示などにより車両の乗員にその旨を報知する等の処理を行って、図6に示す処理フローを終了する。
一方、ステップS306で温度センサ31の検出値が閾値T℃以下であれば、コントロールユニット20は、次のステップS307において、予め定めた所定回数だけ続けて励磁コイル11に対する電圧の印加と停止とを繰り返す。このとき、コントロールユニット20は、励磁コイル11に対して電圧の印加と停止とを繰り返す際の繰り返しの周波数を、筐体17内部で凍結発生が予想される部材、具体的には、本例では固定端子16の共振周波数f0に設定する。これにより、励磁コイル11の電磁誘導作用による可動端子15の移動に伴って固定端子16に自己の共振周波数f0に合致する周波数の振動が発生し、固定端子16が大きな振幅で振動することになる。なお、ステップS307において連続して繰り返す励磁コイル11への電圧印加と停止の回数は、コントロールユニット20の処理能力や固定端子16などの凍結発生箇所の共振周波数f0などに応じて、予め設定しておく。
次に、コントロールユニット20は、ステップS308において、励磁コイル11に対する電圧印加、停止の所定回数毎の繰り返し回数mの値をインクリメントする。そして、コントロールユニット20は、ステップS309において、励磁コイル11に対する電圧印加、停止の所定回数毎の繰り返し回数mの値が予め定めた規定値Mに達したか否かを判断し、励磁コイル11に対する電圧印加、停止の所定回数毎の繰り返し回数mの値が規定値Mに達していなければ、ステップS302に戻って励磁コイル11に対して電圧を印加し、可動端子15を固定端子16に近接させた状態で、再度、凍結状態の判定を行う。
コントロールユニット20が以上の処理を繰り返し行う中で、固定端子16の振動によって接点16a表面の氷結層などが除去されると、可動端子15と固定端子16との間の電気的導通状態は良好になるので、コントロールユニット20は、ステップS304で電源1側の回路電圧Vsと電気負荷2側の回路電圧Vlとの差が閾値V0以下であることを確認して、図6に示す処理フローを終了する。
一方、所定回数毎の繰り返し回数mの値が規定値Mに達するまで以上の処理を繰り返しても、なお可動端子15と固定端子16との間の電気的導通状態が回復しない場合には、コントロールユニット20は、ステップS310へと処理を移行して、筐体17内部の凍結以外の何らかの要因で電磁リレー10に故障が発生していると判断し、例えば警告灯の表示などにより車両の乗員にその旨を報知する等の処理を行って、図6に示す処理フローを終了する。
以上、具体的な例を挙げて詳細に説明したように、本発明の第3実施例の凍結解除装置によれば、上述した第1実施例の凍結解除装置及び第2実施例の凍結解除装置と同様に、電磁リレー10の動作を制御するコントロールユニット20が、電磁リレー10の筐体17内部、具体的には固定端子16の接点16a近傍などに凍結が生じているか否かを判定し、凍結が生じている場合には、励磁コイル11に対する電圧の印加と停止とを繰り返して、可動端子15を固定端子16に対して近接離間する方向に繰り返し移動させることで、凍結が生じている固定端子16を振動させて凍結を解除するようにしているので、筐体17内部の凍結を要因とする電磁リレー10の可動端子15と固定端子16との接点間の接触不良といった問題を有効に防止できる。
また、本例の凍結解除装置では、上述した第1実施例の凍結解除装置及び第2実施例の凍結解除装置と同様に、凍結発生箇所である固定端子16などを機械的に振動させることで凍結を解除するようにしているので、例えば、凍結発生箇所を加熱して凍結を解除する場合に比べて、凍結解除を短時間で速やかに行うことができる。
また、本例の凍結解除装置では、上述した第1実施例の凍結解除装置及び第2実施例の凍結解除装置と同様に、凍結発生箇所である固定端子16などに自己の共振周波数に合致した周波数の振動を発生させるようにしているので、固定端子16などを大きな振幅で振動させることができ、効率的に凍結を解除することができる。
また、本例の凍結解除装置では、上述した第1実施例の凍結解除装置及び第2実施例の凍結解除装置と同様に、電磁リレー10自体の作動により凍結を解除するようにしており、例えば凍結を解除するための専用の加熱装置などを別途設置する必要がないので、このような加熱装置などを別途設置した場合に懸念されるシステムの大型化やコスト増といった問題も有効に回避することができる。
また、本例の凍結解除装置では、上述した第1実施例の凍結解除装置及び第2実施例の凍結解除装置と同様に、電磁リレー10の筐体17内部に凍結が発生したと判定されたときのみ電磁リレー10に通電し、凍結発生箇所である固定端子16などを機械的に振動させることで凍結を解除するようにしているので、例えば、凍結の発生自体を防止するために励磁コイルに長時間通電させて発熱させたりする場合に比べ、エネルギ損失を大幅に低減することができる。
さらに、本例の凍結解除装置では、励磁コイル11に対する電圧印加と停止とを所定回数繰り返す毎に、凍結状態の判定(凍結が解除されたかどうかの判定)を行うようにしているので、凍結発生箇所である固定端子16などの共振周波数が比較的高い周波数の場合であっても、コントロールユニット20の処理能力を大幅に高めることなく、凍結発生箇所である固定端子16などに自己の共振周波数に合致する周波数の振動を発生させて、効率的に凍結を解除することができる。
[第4実施例]
次に、本発明の第4実施例の凍結解除装置について説明する。本例の凍結解除装置は、図7に示すように、振動発生手段としての振動モータ32を電磁リレー10の筐体17外部に取り付けて、この振動モータ32が発生する振動を、電磁リレー10の筐体17から筐体17内部の振動発生箇所に伝達させることで、筐体17内部の凍結を解除するようにしたものである。また、本例の凍結解除装置では、コントロールユニット20に、上述した振動発生手段22としての機能の代わりに、振動モータ32の動作を制御するための振動モータ制御手段23としての機能を持たせるようにしている。
振動モータ32は、図8に示すように、直流モータなどのモータ本体32aから突出するモータ回転軸32bの先端部分に、分銅32cを重量バランスが偏るように取り付けたものである。このような構造の振動モータ32では、モータ本体32aに電流を供給してモータ回転軸32bを回転させると、分銅32cが取り付けられていることによるモータ回転軸32bの重量不釣合いのために、振動が発生する。この振動モータ32で発生する振動の周波数は、振動モータ32の回転数を制御することによって調整可能である。
本例の凍結解除装置では、振動モータ32が、電磁リレー10の筐体17内の凍結発生箇所である固定端子16などの共振周波数に合致した振動を発生するように、コントロールユニット20の振動モータ制御手段23が、振動モータ32の動作を制御するようにしている。そして、振動モータ32で発生した振動を、電磁リレー10の筐体17から筐体17内部の固定端子16などに伝達させることで、凍結発生箇所である固定端子16などの共振周波数が、電磁リレー10の可動部分の重量や慣性による物理的な限界点を超える高い周波数の場合であっても、固定端子16などに自己の共振周波数に合致する周波数の振動を発生させて、効率的に凍結を解除できるようにしている。
すなわち、上述した第1の実施例乃至第3の実施例のように、可動端子15を固定端子16に対して近接離間する方向に繰り返し移動させることで、凍結発生箇所である固定端子16などを振動させて凍結を解除するようにした場合、可動端子15や鉄心13などの可動部分が移動できる速度は、その重量や慣性などによって物理的な限界があるので、凍結発生箇所である固定端子16などに生じさせ得る最大の振動周波数は、この可動部分の物理的な限界によって定まる。したがって、凍結発生箇所である固定端子16などの共振周波数がこのような可動部分の物理的な限界点を超える高い周波数である場合には、上述した第1の実施例乃至第3の実施例の手法では、凍結発生箇所である固定端子16などに自己の共振周波数に合致する周波数の振動を発生させることができない。
本例の凍結解除装置は、このような状況を想定して、振動発生手段として比較的高い周波数の振動を発生することが可能な振動モータ32を用い、この振動モータ32を電磁リレー10の筐体17に取り付けて、振動モータ32で発生した振動を、電磁リレー10の筐体17から筐体17内部の固定端子16などに伝達させることで、凍結発生箇所である固定端子16などの共振周波数が電磁リレー10の可動部分の物理的な限界点を超える高い周波数であっても、固定端子16などに自己の共振周波数に合致する周波数の振動を発生させて、効率的に凍結を解除できるようにしている。
なお、本例では、自己の振動を電磁リレー10の筐体17から筐体17内の凍結発生箇所に伝達する振動発生手段として、振動モータ32を例示しているが、このような振動発生手段としては、振動モータ32以外にも様々な振動発生装置が適用可能であり、例えば、電圧の印加により歪みが生じる性質を持つ圧電セラミックスを用いた振動発生装置などが有効に適用可能である。
図9は、本例の凍結解除装置において、電磁リレー10の筐体17内部の凍結を解除するために、コントロールユニット20により実行される一連の処理の流れを示すフローチャートである。この図9に示す処理フローは、例えば、車両のイグニッションスイッチがオフからオンに切り替わったとき、或いは、電磁リレー10を利用する電動4輪駆動システムが起動されたときに開始される。
図9の処理フローが開始されると、コントロールユニット20は、まず、ステップS401において、振動モータ32の作動回数lの値を0に初期化する。次に、コントロールユニット20は、ステップS402において、電磁リレー10の励磁コイル11に対して所定の電圧を印加して、可動端子15を固定端子16に近接する方向へと移動させる。そして、コントロールユニット20は、可動端子15を固定端子16に近接させた状態で、ステップS403において、電磁リレー10の一対の固定端子16のうちの一方に接続された電源1側の回路電圧Vsと、一対の固定端子16のうちの他方に接続された電気負荷2側の回路電圧Vlとを測定し、ステップS404において、電源1側の回路電圧Vsと電気負荷2側の回路電圧Vlとの差、すなわち電磁リレー10の一対の固定端子16の一方と他方との電位差が、予め定めた所定の閾値V0以下になっているか否かを確認する。
このステップS404で電源1側の回路電圧Vsと電気負荷2側の回路電圧Vlとの差が閾値V0以下であれば、可動端子15と固定端子16との間の電気的導通状態は良好であるので、コントロールユニット20は、筐体17内部に凍結は生じていないと判定して、図9に示す処理フローを終了する。一方、ステップS404で電源1側の回路電圧Vsと電気負荷2側の回路電圧Vlとの差が閾値V0を超えていれば、ステップS405へと処理を移行する。
次に、コントロールユニット20は、ステップS405において、電磁リレー10の励磁コイル11に対する電圧の印加を停止し、ステップS406において、温度センサ31によって検出される温度検出値が、予め定めた所定の閾値T℃以下であるか否かを判定する。
このステップS406で温度センサ31の検出値が閾値T℃を超えていれば、電磁リレー10の筐体17内部が凍結に至る温度状態にないにも拘わらず可動端子15と固定端子16との間で接点不良が生じている状態であるので、コントロールユニット20は、ステップS410へと処理を移行して、筐体17内部の凍結以外の何らかの要因で電磁リレー10に故障が発生していると判断し、例えば警告灯の表示などにより車両の乗員にその旨を報知する等の処理を行って、図9に示す処理フローを終了する。
一方、ステップS406で温度センサ31の検出値が閾値T℃以下であれば、コントロールユニット20は、次のステップS407において、電磁リレー10の筐体17に取り付けられた振動モータ32を所定時間作動させる。このとき、コントロールユニット20は、振動モータ32が、筐体17内部で凍結発生が予想される部材、具体的には、本例では固定端子16の共振周波数f0に合致した振動を発生するように、振動モータ32の回転数を制御する。これにより、振動モータ32の振動が電磁リレー10の筐体17から筐体17内部の固定端子16に伝達され、固定端子16に自己の共振周波数f0に合致する周波数の振動が発生して、固定端子16が大きな振幅で振動することになる。
次に、コントロールユニット20は、ステップS408において、振動モータ32の作動回数lの値をインクリメントする。そして、コントロールユニット20は、ステップS409において、振動モータ32の作動回数lの値が予め定めた規定値Lに達したか否かを判断し、振動モータ32の作動回数lの値が規定値Lに達していなければ、ステップS402に戻って励磁コイル11に対して電圧を印加し、可動端子15を固定端子16に近接させた状態で、再度、凍結状態の判定を行う。
コントロールユニット20が以上の処理を繰り返し行う中で、固定端子16の振動によって接点16a表面の氷結層などが除去されると、可動端子15と固定端子16との間の電気的導通状態は良好になるので、コントロールユニット20は、ステップS404で電源1側の回路電圧Vsと電気負荷2側の回路電圧Vlとの差が閾値V0以下であることを確認して、図9に示す処理フローを終了する。
一方、振動モータ32の作動回数lの値が規定値Lに達するまで以上の処理を繰り返しても、なお可動端子15と固定端子16との間の電気的導通状態が回復しない場合には、コントロールユニット20は、ステップS410へと処理を移行して、筐体17内部の凍結以外の何らかの要因で電磁リレー10に故障が発生していると判断し、例えば警告灯の表示などにより車両の乗員にその旨を報知する等の処理を行って、図9に示す処理フローを終了する。
以上、具体的な例を挙げて詳細に説明したように、本発明の第4実施例の凍結解除装置によれば、電磁リレー10の動作を制御するコントロールユニット20が、電磁リレー10の筐体17内部、具体的には固定端子16の接点16a近傍などに凍結が生じているか否かを判定し、凍結が生じている場合には、振動モータ32の振動を筐体17から筐体17内部の固定端子16などに伝達し、凍結が生じている固定端子16を振動させて凍結を解除するようにしているので、筐体17内部の凍結を要因とする電磁リレー10の可動端子15と固定端子16との接点間の接触不良といった問題を有効に防止できる。
また、本例の凍結解除装置では、上述した第1実施例の凍結解除装置乃至第3実施例の凍結解除装置と同様に、凍結発生箇所である固定端子16などを機械的に振動させることで凍結を解除するようにしているので、例えば、凍結発生箇所を加熱して凍結を解除する場合に比べて、凍結解除を短時間で速やかに行うことができる。
また、本例の凍結解除装置では、上述した第1実施例の凍結解除装置乃至第3実施例の凍結解除装置と同様に、凍結発生箇所である固定端子16などに自己の共振周波数に合致した周波数の振動を発生させるようにしているので、固定端子16などを大きな振幅で振動させることができ、効率的に凍結を解除することができる。
また、本例の凍結解除装置では、電磁リレー10の筐体17内部に凍結が発生したと判定されたときのみ振動モータ32を作動させ、凍結発生箇所である固定端子16などを機械的に振動させることで凍結を解除するようにしているので、例えば、凍結の発生自体を防止するために励磁コイルに長時間通電させて発熱させたりする場合に比べ、エネルギ損失を大幅に低減することができる。
さらに、本例の凍結解除装置では、振動モータ32の振動を電磁リレー10の筐体17から筐体17内部の固定端子16などに伝達して、凍結が生じている固定端子16を振動させるようにしているので、凍結発生箇所である固定端子16などの共振周波数が、電磁リレー10の可動部分の重量や慣性による物理的な限界点を超える高い周波数の場合であっても、固定端子16などに自己の共振周波数に合致する周波数の振動を発生させて、効率的に凍結を解除することができる。
なお、以上の説明では、電磁リレー10の筐体17内部の固定端子16に凍結が生じていることを前提としているが、本例の凍結解除装置のように、自己の振動を電磁リレー10の筐体17から筐体17内の凍結発生箇所に伝達する振動モータ32などの振動発生装置を用いる場合には、例えば、筐体17内部の鉄心13などに凍結が生じて、可動端子15を固定端子16に対して近接離間する方向に繰り返し移動させることができない場合であっても、筐体17内部の凍結発生箇所に適切に振動を発生させて、凍結を解除することができる。
また、以上の説明では、振動モータ32などの振動発生装置に、電磁リレー10の筐体17内部の凍結発生箇所の共振周波数に合致した周波数の振動を発生させるようにしているが、電磁リレー10の筐体17の共振周波数に合致した周波数の振動を発生させて、筐体17を大きな振幅で振動させるようにしても、筐体17内部の凍結を解除する上で有効である。
以上、本発明に係る電磁リレーの凍結解除装置の具体例を第1乃至第4の実施例として詳しく説明したが、以上の各実施例は本発明の一適用例を例示したものであり、本発明の技術的範囲は、以上の各実施例の説明で開示した内容に限定されるものではなく、これらの開示から容易に導き得る様々な代替技術も含まれることは勿論である。
例えば、上述した各実施例においては、コントロールユニット20が、可動端子15と固定端子16との間の電気的導通状態が不良であり、且つ、電磁リレー10の筐体17内部が凍結に至る温度状態にあると推定される場合に、電磁リレー10の筐体17内部に凍結が生じているものと判定するようにしているが、可動端子15と固定端子16との間の電気的導通状態のみに基づいて、電磁リレー10の筐体17内部に凍結が生じているか否かを判定するようにしてもよいし、電磁リレー10の筐体17内部の温度状態のみに基づいて、筐体17内部に凍結が生じているか否かを判定するようにしてもよい。
また、電磁リレー10の筐体17内部に凍結が生じているか否かの判定は、例えば、可動端子15と固定端子16との衝突音を集音マイクで検出し、正常時の衝突音と凍結発生時の衝突音とを比較するといった手法で行うようにしてもよい。
さらに、例えば、電磁リレー10の一対の固定端子16のうちの1つに電気的に接続された電気負荷2の動作状況を確認することで、電磁リレー10の筐体17内部に凍結が生じているか否かを判定するといった手法を採用するようにしてもよい。