以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る車両の制御装置について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
図1に示すように、本実施の形態に係る車両の制御装置が搭載された車両には、ECU(Electronic Control Unit)100と、システムメインリレー(以下、SMRと記載する。)200と、負荷回路300と、バッテリ500とが搭載される。なお、本実施の形態に係る車両の制御装置は、ECU100で実行されるプログラムにより実現される。また、車両は、本実施の形態において、高電圧の電源を有する電気自動車に適用する場合について説明するが、高電圧の電源を有する車両であれば、特にこれに限定されるものではない。たとえば、車両は、ハイブリッド車両であってもよいし、燃料電池自動車であってもよい。
負荷回路300は、車両に搭載される駆動用電動機(図示せず)およびバッテリ500から供給された直流電圧を、駆動用電動機用の交流電圧に変換するインバータ(図示せず)を含む。負荷回路300としては、上述した駆動用電動機およびインバータに特に限定されるものではない。たとえば、バッテリ500の直流電圧を昇圧するコンバータが車両に搭載されていてもよい。
バッテリ500は、充電可能な二次電池から構成されれば、特に限定されるものではなく、たとえば、ニッケル水素電池であってもよいし、リチウムイオン電池であってもよい。
SMR200は、負荷回路300とバッテリ500との間の電源ライン800上に設けられる。SMR200は、ECU100から受信した制御信号に基づいて、電源ライン800に流れる電流が導通状態および遮断状態のうちのいずれかの状態になるように制御される。
SMR200は、コイル202と、接点部材204と、固定部材208と、弾性体206とから構成される。接点部材204は、電源ライン800上に設けられる接点210,212と予め定められた距離を有する位置に設けられる。接点部材204は、固定部材208の開口部を貫通して、摺動可能に設けられる。弾性体206は、固定部材208と接点部材204とが予め定められた位置関係を保持するように設けられる。弾性体206は、たとえば、バネ等である。弾性体206が固定部材208と接点部材204とを予め定められた位置関係が保持され、接点部材204と接点210,212とは予め定められた距離を有することにより、SMR200は遮断状態となる。
また、接点部材204の周りには、コイル202が設けられる。接点部材204は、たとえば、鉄等の磁性体で形成され、コイル202に電流が流れて磁力が発生すると、図2に示すように、紙面上方に移動する。コイル202に発生する磁力に基づいて接点部材204に作用する力が弾性体206の弾性力を上回ると、接点210,212に当接するまで移動する。これにより、接点部材204により接点210,212間が導通する。すなわち、SMR200は、導通状態となる。
ECU100は、コイル202に制御信号を送信して、コイル202において発生する磁力を制御して、SMR200が導通状態および遮断状態のうちのいずれかの状態になるように制御する。ECU100には、衝撃検知センサ600および電流検知センサ700が接続される。
衝撃検知センサ600は、車両が受けた衝撃を検知する。検知された衝撃に対応する検知信号は、ECU100に送信される。衝撃検知センサ600は、たとえば、車両の加速度を検知するGセンサであってもよいし、振り子等を利用して、衝撃を受けると機械的に導通してオン信号を出力するセンサであってもよい。電流検知センサ700は、電源ライン800上の電流値を検知する。検知された電流値に対応する検知信号は、ECU100に送信される。
SMR200、負荷回路300およびバッテリ500が接続される電源ライン800上には、ヒューズ400が設けられる。ヒューズ400が設けられる位置については、特に限定されるものではないが、たとえば、バッテリ500の内部に設けられるようにしてもよい。
ヒューズ400に過大な電流が流れると、ヒューズ400の内部の素子(図示せず)が溶断して、電源ライン800上に流れる電流が遮断状態になる。ヒューズ400に過大な電流が流れてから導電素子が溶断するまでの時間(以下、溶断時間と記載する。)は、ヒューズ400に流れる電流の大きさに対応する。
図3に示すグラフにおいて、縦軸は時間であって、上に行くほど通電時間が長い。また、横軸は電流値であって、右に行くほど電源ライン800に通電する電流値が大きい。ヒューズ400は、通電する電流値が大きいと、短時間で溶断し、通電する電流値が小さいと、溶断するのに時間を要する溶断特性を有する。
電源システムの正常時の電流の最大値を示す通電電流ラインは、電流が大きいほどその通電時間は短く、連続定格電流は、長時間通電されることを示す。ヒューズ400には、正常時の電流の最大値を示す通電電流ラインに対して、十分上回る溶断特性を有するヒューズが用いられるため、通常の走行時にヒューズ400が溶断することはない。
車両の衝突などにより、車両に衝撃を受けると、たとえば、負荷回路300において、短絡が発生する可能性がある。この場合に電源ライン800には過大な電流が流れることとなる。このような場合に、たとえば、図3に示すように、検知された電流A(2)が、A(2)に対応する溶断時間T(2)が経過するまで継続して流れると、ヒューズ400は溶断する。
このように構成される車両において、車両に衝撃を受ける場合にSMR200をすぐに遮断するように制御しようとすると、電源ライン800に流れる過大な電流を遮断するために、電流遮断性能を高く確保する必要がある。そのため、電流遮断性能を高く確保するためには、たとえば、接点210,212と接点部材204とが遮断時には、過大な電流を遮断するように、より大きく距離を離す必要がある。
本発明は、ECU100が、SMR200の導通状態時に、衝撃を受けたことを検知すると、遅延時間を設定して、設定された遅延時間が経過すると、SMR200を遮断状態になるように制御する点に特徴を有する。
以下、図4を参照して、本実施の形態に係る車両の制御装置であるECU100で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと記載する。)1000にて、ECU100は、衝撃をを検知したか否かを判断する。ECU100は、衝撃検知センサ600から受信する検知信号に基づいて、車両が衝撃を受けたか否かを判断する。衝撃を検知したと判断されると(S1000にてYES)、処理はS1100に移される。もしそうでないと(S1000にてNO)、処理はS1000に戻される。
S1100にて、ECU100は、時間計測を開始する。たとえば、ECU100は、内部に設けられるタイマ(図示せず)のカウントを開始する。S1200にて、ECU100は、電源ライン800上に流れる電流の電流値を測定する。
S1300にて、測定された電流値と、図3に示すような、ヒューズの溶断特性を示すマップとに基づいて遅延時間を計算する。遅延時間は、溶断時間に基づいて、短絡時の電流による危険が発生しない時間の範囲内で設定される。たとえば、検知された電流値がA(2)であるときには、T(2)を遅延時間として設定する。また、遅延時間は、長くとも通電電流ラインの最大電流値A(1)に対応するT(1)までの時間に設定される。SMR200は、通電電流ラインにおける電流に対して確実に遮断状態にする電流遮断性能が確保されている必要があるからである。
S1400にて、ECU100は、計測を開始してから遅延時間が経過したか否かを判断する。遅延時間が経過したと判断されると(S1400にてYES)、処理はS1500に移される。もしそうでないと(S1400にてNO)、処理はS1400に戻される。
S1500にて、ECU100はSMR200が遮断状態になるようにSMR200を制御する。具体的には、ECU100は、コイル202における磁力の発生を停止させて、接点部材202が接点210,212から離れるように制御する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る車両の制御装置であるECU100の動作について説明する。
車両が衝突などして、衝撃が検知されると(S1000にてYES)、時間計測が開始され(S1100)、電源ライン800上に流れる電流値が測定される(S1200)。測定された電流値とマップとに基づいて、遅延時間が計算される(S1300)。ここで、図3に示すように流れる電流値A(1)が検知されると、電流値A(1)のラインとヒューズ400の溶断特性のラインとの交点に対応する時間T(1)が遅延時間として設定される。計測を開始してから計算された遅延時間が経過すると(S1400)。SMR200が遮断状態になる(S1500)。
なお、検知される電流値がSMR200の電流遮断性能に対して小さい場合(たとえば、A(1)よりも小さい場合)においては、ECU200は、すぐにSMR200が遮断状態になるように制御するようにしてもよい。
以上のようにして、本実施の形態に係る車両の制御装置によると、ECUは、SMRが導通状態であるときに、車両が衝撃を受けると、設定された遅延時間が経過した後に、SMRが遮断状態になるように制御する。車両が衝撃を受けて、負荷回路の短絡により、電源ラインに、すぐにヒューズが溶断しない程度の電流が流れると、遅延時間が経過するまでSMRの遮断が待機するようにSMRが制御される。これにより、遅延時間が経過するまでにヒューズが溶断すると、SMRにより電源ラインを遮断状態にすることなく、電流を遮断することができる。SMRは、通常時の電流を遮断する程度の性能を確保すればよい。車両が衝撃を受けた時点から遅延時間の経過後には、SMRを遮断状態にすることにより、ヒューズが溶断しなかったとしても、確実に電流を遮断状態にすることができるため、電源システム全体として電流遮断性能を低下させることなくSMRに要求される電流遮断性能を低減させることができる。したがって、車両の衝突時の漏電を防止し、要求される電流遮断性能を低減できる車両の制御装置を提供することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
100 ECU、200 SMR、202 コイル、204 接点部材、206 弾性体、208 固定部材、210,212 接点、300 負荷回路、400 ヒューズ、500 バッテリ、600 衝撃検知センサ、700 電流検知センサ。