JP4752084B2 - 二軸配向ポリエステルフィルム及びロール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二軸配向ポリエステルフィルムの製造において、フィルムをロール状に巻き取った際の巻姿が良好であり、しかも長期間、品質や品位が保持されるロールが得られるフィルム、及びロール状に巻き上げた際に巻姿が良好となるロールに関する。
【0002】
【従来の技術】
フィルムを巻き上げてロール状の製品とする場合、通常は無機あるいは有機の微小粒子を原料樹脂中に混ぜ込んで、フィルム表面に突起を形成させたり、微小粒子を含む層をコーティングにより付与したりする。これは、フィルムを巻き上げる際にフィルム走行に伴う空気の流れ(随伴流)によってフィルム間に空気が巻き込まれても、空気をロールの外へ逃がす役割を担っている。
【0003】
しかしながら、昨今の二軸配向ポリエステルフィルムはガラス代替や、LCD(液晶表示装置)に用いられるプリズムレンズシート(輝度拡張フィルム)用のベースフィルム、ハードコート加工やAR(アンチリフレクション;防眩)フィルム用のベースフィルム、プラズマディスプレイ用近赤外線吸収フィルムのベースフィルム、タッチパネルやエレクトロルミネッセンス用透明導電フィルムのベースフィルムCRT用の破砕防止フィルムなどの光学製品に用いられることが多くなり、表面平滑性や透明性に対する要求が非常に強くなってきている。この要求を満たすために、フィルム中に含有させる粒子の含有量を減らしたり、平均粒子径を小さくすることが行われている。
【0004】
しかし、フィルム中の粒子含有量を少なくすると、フィルム表面への突起の形成が不十分となり、ロール状に巻き上げる際に随伴流の排除ができず、ずれが発生したり、局所的に空気が多く巻き込まれたりして、製品の歩留まりが極端に低下する。また、平均粒径の小さな粒子をフィルム中に含有させた、表面平滑性に優れたフィルムの場合、フィルムどうしの擦れによってフィルム表面にキズがつきやすいといった悪さもある。このようなキズは、光学用フィルムの基材として用いた場合に、光学欠点として認識されるため可能な限り少なくする必要がある。
【0005】
従来から前述の問題を回避するために、フィルム端部に凹凸または突起を形成して巻き取る方法が知られている。例えば、特開平4−85248号公報、特開平4−85249号公報、特開平9−124199号公報が開示されている。従来の技術では、凹凸または突起の配列方向や距離を適当とすることで、フィルムを巻取る工程において随伴流により巻き込まれた空気が抜け、巻ズレ等が防止できる。
【0006】
しかしながら、この技術のみでは巻き上げた直後には良好な巻姿が得られるが、長時間経過後にはロールから徐々に空気が抜け、巻締り現象をおこしてフィルムの平面性が損なわれたり、特に表面が平滑な二軸配向ポリエステルフィルムではフィルムどうしの接触によってキズが入る等の問題が発生することがあった。特に、比較的厚いフィルムで問題の発生が顕著であった。フィルムロールは流通の過程で長期間保管される場合があり、従来技術では長期間にわたる品質を保証できなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題はかかる問題点を解決し、二軸配向ポリエステルフィルムをロール状に巻き取った際の巻姿が良好であり、しかも長期間、品質や品位が保持されるロールが得られる二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる実状に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、幅方向両端部に突起付与処理を施したフィルムをロール状に巻き上げるに際し、突起付与処理ロールが接するフィルム面積に対する、該突起付与処理によって変形した部分をフィルム面に垂直に投影した面積の割合が、本発明で特定する範囲となるように処理したフィルムを用いることで、巻込まれる空気が適性化され、巻き上がり時の巻姿が良好で、長期間経過後でも一旦巻き込まれた適性量の空気が保持され、巻姿が良好なまま得られ、平面性の悪化やキズの発生がないロールが得られる事を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の課題は、以下の手段により達成される。
1. 突起付与処理ロールによって形成される突起を幅方向両端部近傍の少なくとも片面に有する二軸配向ポリエステルフィルムであって、かつ突起付与処理によって変形した部分の高さが、非処理部のフィルム平均厚みの1〜20%であり、突起付与処理ロールが接するフィルム面積に対する、前記突起付与処理によって変形した部分をフィルム面に垂直に投影した面積の割合が0.18〜0.25であり、光学用フィルムの基材として使用することを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。
2. 非処理部のフィルム平均厚みが30〜300μmであり、かつ突起付与処理により変形した部分の平均高さが3〜30μmであることを特徴とする前記1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
3. 突起付与処理された部分の幅が5〜20mmであることを特徴とする前記1又は2に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
4. 前記二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に高分子易接着層を設けており、前記高分子易接着層が平均粒径20nm以上300nm未満の不活性粒子及び平均粒径300nm以上1000nm以下の不活性粒子を含有し、前記二軸配向ポリエステルフィルムが実質上粒子を含有せず、ヘイズ値が1.0%以下であることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
5.前記1〜4のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムを巻き上げてなることを特徴とするロール。
6.40℃、70%RHの部屋に30日間保管した後の空気含有率が0.06%以上であることを特徴とする前記5に記載のロール。
【0015】
次に、本発明を詳しく説明する。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、突起付与処理ロールが接するフィルム面積に対する、前記突起付与処理によって変形した部分をフィルム面に垂直に投影した面積の割合(突起面積の割合)は、0.18〜0.25であることが必要である。突起面積の割合が0.18未満では、フィルムロールを長期間保管した際にフィルムの平面性の乱れが悪化し、かつフィルム表面にキズが発生するため好ましくない。一方、突起面積の割合が0.25を超えると、フィルムを巻上げ直後の段階でフィルムの平面性の乱れが悪化し、かつフィルム表面にキズが発生するため好ましくない。
【0016】
突起付与処理によって変形した部分の任意の1つをフィルム面に垂直に投影した面積(突起面積)は、0.01〜0.2mm2であることが空気保持性の点から好ましい。突起面積が0.01mm2未満では、フィルムロールを長期間保管した際にフィルムの平面性の乱れが悪化しやすくなり、かつフィルム表面にもキズが発生しやすくなるため好ましくない。一方、突起面積が0.2mm2を超えると、フィルムを巻上げ直後の段階でフィルムの平面性の乱れが悪化しやすくなり、かつフィルム表面にキズが発生しやすくなるため好ましくない。
【0017】
また、巻き込まれた空気の排除性、保持性のバランスを良好とするためには、突起付与処理によって変形した部分の平均高さ(B)が、非処理部のフイルム平均厚み(A)の1〜20%であることが好ましい。さらに好ましくは、2〜18%である。B/Aが1%未満では、フィルムの巻上げ直後にキズが発生しやすくなり好ましくない。一方、B/Aが20%を超えると、長期間保管した際に平面性の乱れが悪化しやすくなり好ましくない。
【0018】
さらに、非処理部のフィルムの平均厚みが30〜300μmであり、かつ突起付与処理により変形した部分の平均高さが3〜30μmであることが好ましい。前記平均厚みが30μm未満、あるいは平均高さが3μm未満では、フィルムの巻上げ直後にキズが発生しやすくなり好ましくない。一方、前記平均厚みが300μmを超える場合、あるいは平均高さが30μmを超える場合、長期間保管した際に平面性の乱れが悪化しやすくなり好ましくない。
【0019】
さらに、巻き込まれた空気の排除性、保持性と製品ロスの観点から、突起付与された部分の幅は、5〜20mmであることが好ましい。
【0020】
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムには、易滑性付与を目的とした不活性粒子は、透明性の点から、実質上含有させないことが望ましい。不活性粒子を実質上含有させないことは、本発明の二軸配向ポリエステルのヘイズ値が1%以下となるような、高透明性を有する二軸配向ポリエステルを得るのに特に有効である。フィルム中に実質上不活性粒子を含有していないとは、不活性粒子の含有量が蛍光X線分析で分析した際に検出限界以下となることを意味する。
【0021】
なお、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを光学用フィルム基材として使用する場合、プリズムレンズ加工、ハードコート加工、AR加工などの後加工処理する材料との優れた易接着性が必要となる。このような後加工処理時の相手材料とポリエステルフィルムとの接着性を改良するために、二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、共重合ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂とを併用したものやマレイン酸グラフトポリエステルなどの高分子樹脂組成物を主たる構成成分とする高分子易接着層を設けることが好ましい。
【0022】
この高分子易接着層は、未延伸または一軸延伸後のポリエステルフィルムの少なくとも片面に易接着層を設け、その後、少なくとも一軸方向に延伸・熱固定処理するインラインコート法により積層することが好ましい。インラインコート法により積層された易接着層に、適切な粒径の不活性粒子を含有させ、易接着層表面に凹凸を形成させることにより、良好な滑り性、巻き取り性、耐スクラッチ性を付与することができる。
【0023】
このため、基材フィルムである二軸配向ポリエステルフィルム中に不活性粒子を実質上含有させる必要がないため、光学用易接着フィルムのヘイズ値が1.0%以下となるような高透明なフィルムを得るのに特に有効である。
【0024】
易接着層中に含有させる不活性粒子としては、シリカが易接着層の樹脂と屈折率が比較的近く、高い透明性が得られやすいため最も好適である。また、易接着層を構成する樹脂よりも屈折率の高い無機酸化物粒子と屈折率の小さな無機酸化物粒子を複合させた複合無機酸化物粒子を使用することも好適である。このような粒子としては、例えばアルミナ−シリカ複合酸化物粒子があり、原料のアルミナとシリカの組成を適正化することで易接着層を構成する樹脂と同程度の屈折率のものを得ることができる。
【0025】
上記水性塗布液に添加する不活性粒子の平均粒径(電子顕微鏡での観察)は、0.01〜1.0μmが好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.5μm、特に好ましくは0.03〜0.1μmである。不活性粒子の平均粒径が1.0μmを超えると、易接着フィルム表面が粗面化し、易接着フィルムの透明性が低下する傾向がある。一方、不活性粒子の平均粒径が0.01μm未満では、易接着フィルムの滑り性が不十分となりやすく好ましくない。
【0026】
また、上記塗布液を乾燥した後における塗布層(易接着層)中の不活性粒子の含有量は、0.01〜60重量%が好ましく、特に好ましくは0.1〜40重量%である。塗布層(易接着層)中の不活性粒子の含有量が60重量%を超えると、基材フィルムとの接着性が損なわれることがある。一方、不活性粒子の含有量が0.01重量%未満では、易接着フィルムの滑り性が不十分となり好ましくない。
【0027】
本発明では、易接着層に2種類の粒子(粒子A及び粒子B)を含有させることが好ましい。粒子Aの平均粒径は20〜300nm未満が好ましく、さらに好ましくは30〜100nmである。粒子Aの平均粒径が20nm未満であると、耐スクラッチ性が悪化する傾向がある。一方、粒子Aの平均粒径が300nmを超えると、ヘイズ値が高くなる傾向がある。
【0028】
粒子Aのみでは耐スクラッチ性が不十分であるため、耐スクラッチ性をさらに向上させるために、粒子Bを易接着層中に粒子Aと併用して含有させることが好ましい。粒子Bの平均粒径は300〜1000nmが好ましく、さらに好ましくは400〜800nmである。粒子Bの平均粒径が300nm未満であると、耐スクラッチ性が悪化する傾向がある。一方、粒子Bの平均粒径が1000nmを超えると、ヘイズ値が高く、全光線透過率が低くなる傾向がある。
【0029】
このような易接着層を有する二軸配向ポリエステルフィルムは、特にコーティング面でキズが発生しやすい傾向があるが、この様なフィルムに本発明を適用することで、より顕著な効果を得ることができる。
【0030】
本発明のフィルムを巻取り工程に導入することにより、ロール状に巻取られる際の随伴流により巻込まれる空気は適当量がロール外に排出され、ロール内部に最適量の空気層を含む、良好な巻姿を有するロールが得られる。さらに、長期間の保管後も空気層を保持するため、長期にわたり良好な巻姿が維持されるとともに、キズ等の発生が無い。
【0031】
なお、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのポリエステルは、特に限定はされないが、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルを用いると、効果の発現が最も明確である。さらに、本発明を阻害しない範囲であれば、他のポリエステルを混合したり、他の酸成分やグリコール成分が共重合されていてもよい。
【0032】
以下に、本発明の望ましい実施形態を説明する。図1は二軸配向ポリエステルフィルムの端部に突起付与処理加工を施す様子を模式的に示したものであり、図1において、1は連続的に走行している二軸配向ポリエステルフィルムであり、2は突起付与処理ロールを、2’はバックアップロールを、3は巻き上げられた二軸配向ポリエステルフィルムロールをそれぞれ示す。突起付与処理ロール2は表面に多数の突起を有する金属ロールを用いると良い。さらに好ましくは硬化加工(例えば窒化加工)を施すと良い。また、バックアップロール2’は平面ロールであり、その材質は金属で、表面が防錆加工(例えばハードクロム鍍金)してある物が望ましい。
【0033】
また、突起付与処理ロール2とバックアップロール2’とは対向配置され、それぞれがエアシリンダーによって稼動する構造を有する事が望ましく、二軸配向ポリエステルフィルム1をニップすることで突起を付与することができる。
【0034】
図2は突起付与処理加工部分を拡大し、模式的に示した図である。図2において、4は突起付与処理加工によりフィルムが変形した部分を、5はフィルムに突起付与処理ロールが接した部分を示す。
【0035】
本発明に示す突起の状態を実現するためには、突起付与処理ロールの突起の大きさ、形状や間隔を適当にする方法や、加工圧力を適当に設定する方法があるが、どちらの方法によって実現しても構わない。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。なお、本発明は実施例によって限定される物ではない。実施例、比較例における結果は、まとめて表1に示した。
【0037】
実施例および比較例によって得られた二軸配向ポリエステルフィルムを以下に示す方法で評価した。
【0038】
1)突起付与処理ロールが接するフィルム面積に対する、突起付与処理によって変形した部分をフィルム面に垂直に投影した面積の割合(突起面積の割合)
光ファイバー顕微鏡(キーエンス社製;VH-6110)を用い、フィルムの突起付与部分を20倍に拡大した画像をカラービデオプリンター(ソニー社製;CVP-M3)にて印刷した。突起付与処理による変形部分10個それぞれを四角形で近似し、縦・横の長さをそれぞれ実測した。その積から各変形部分の面積を求め、10個の平均値を突起付与処理による変形部分1つ当りの平均面積(A:mm2/個)とした。突起付与処理ロールが接した部分のうち、幅方向の長さ(W:mm)と長手方向100mmの範囲内の突起数(N:個)を求め、下記(1)式により突起面積の割合を算出した。
【0039】
突起面積の割合=(N×A)/(100×W)・・・(1)
【0040】
2)フィルム平均厚み
フィルムの非処理部において、任意の20点の厚みをデジタルマイクロメーター(ソニーマグネスケール社製;M−30)により測定し、その平均値をもってフィルム平均厚み(μm)とした。
【0041】
3)突起付与処理によって変形した部分の平均高さ
突起付与処理部分の見かけの厚みと測定部分直近の非処理部分の厚みをデジタルマイクロメーター(ソニーマグネスケール社製;M−30)にて各々20点測定し、その差の平均をもって突起付与処理によって変形した部分の平均高さ(μm)とした。
【0042】
4)空気含有率
フィルムロールの占める断面積(A1)に対する空気の占める断面積(A2)の割合を空気含有率(A1/A2:%)とした。
【0043】
ここで、フィルムロールの占める断面積(A1:mm2)は、まずフィルムロールの周長からロール径を算出し、次いで該ロール径よりロール断面積(mm2
を算出し、さらにコアの断面積(mm2)を算出し、下記(2)式により求めることができる。
【0044】
フィルムロールの占める断面積(A1)
=ロール断面積−コア部分の断面積・・・(2)
空気の占める断面積(A2)は、前記フィルムロールの占める断面積(A1)とフィルム巻き長(m)とフィルム平均厚み(μm)との積から、下記(3)式より求めることができる。
空気の占める断面積(A2)=フィルムロールの占める断面積(A1)
−フィルム巻き長(m)×フィルム平均厚み(μm)・・・(3)
【0045】
5)フィルム平面性の乱れ
フィルムロールから長手方向に3mの長さのフィルムを巻出し、平面台の上へひろげ、目視により、3段階で判定した。
◎: 平面性の乱れは無い。
○: 若干平面性の乱れが有る。
× : 平面性が乱れている。
【0046】
6)キズの発生の有無
フィルムロールから長手方向に1mのフィルムを巻出し、暗室でビデオ撮影用ライト(LPL(株)製 LPL VIDEO LIGHT VL-302、ハロゲンランプ 100V-300W)を用い、フィルム全面に対し光源を斜めから角度を付けながら、キズの有無を目視でフィルム両面にわたり観察し判定した。
【0047】
7)長期保管想定加速処理
フィルムロールをコアの両端で支持した状態(フィルムが直接床に接触しない状態)で、40℃、70%RHの部屋に30日間保管し、長期保管を想定した加速処理を行った。この後、空気含有率、平面性の乱れ、及びキズ発生の有無を上記方法にしたがって評価した。
【0048】
実施例1
(1)塗布液の調整
ジメチルテレフタレート95部、ジメチルイソフタレート95部、エチレングリコール35部、ネオペンチルグリコール145部、酢酸亜鉛0.1部および三酸化アンチモン0.1部を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に、5−ナトリウムイソフタル酸6.0部を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、250℃で減圧下13〜0.3hPaで2時間かけて重縮合反応を行い、分子量19500、軟化点60℃の共重合ポリエステル樹脂(A)を得た。
【0049】
この共重合ポリエステル樹脂(A)の30%水分散液を6.7部、重亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン樹脂(B)の20%水溶液(第一工業製薬製:商品名エラストロンH−3)を40部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製:商品名 Cat64)を0.5部、水を44.3部およびイソプロピルアルコールを5部、それぞれ混合し、さらにアニオン系界面活性剤の10%水溶液を0.6部、球状シリカ粒子A(日産化学工業社製:スノーテックスOL、平均粒径40nm)の20%水分散液を1.8部、乾式法シリカ粒子B(日本アエロジル社製;アエロジルOX50、平均粒径500nm、平均一次粒径40nm)の4%水分散液を1.1部添加し塗布液とした。
【0050】
(2)易接着フィルムの製膜
フィルム原料として、固有粘度が0.62dl/gであり、実質的に不活性粒子を含有していポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを135℃で6時間減圧乾燥(1.3hPa)した後、押し出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出して、表面温度20℃に保った金属ロール上で急冷固化し、厚さ1750μmのキャストフィルムを得た。
【0051】
この時、溶融樹脂の異物除去用濾材として濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が10μmのステンレス製焼結濾材を用いた。次に、このキャストフィルムを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後、周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して一軸配向PETフィルムを得た。
【0052】
その後、前記塗布液を濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が25μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、リバースロール法で一軸配向PETフィルム片面に塗布、乾燥した。この時の塗布量(固形分重量)は0.07g/m2であった。塗布後引き続いて、フィルムの端部をクリップで把持して130℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後幅方向に4.0倍に延伸し、続いて240℃で熱固定を行い、さらに200℃で3%の横緩和を行い、厚さ125μmの易接着層を有する二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。易接着層の塗布量は乾燥後で、固形分量として0.10g/m2であった。
【0053】
この厚さ125μmの二軸配向ポリエステルフィルムを突起付与処理ロールによって処理し、突起面積の割合が0.18、突起付与処理によって変形した部分をフィルム面に垂直に投影した面積が0.12mm2、突起付与処理によって変形した部分の平均高さが10μmの処理済みフィルムを得た。これを処理に引き続き、巻取り張力10kg/m、巻取面圧2.5kg/mにて巻き取った。巻取り直後、長期保管想定加速処理後ともに、空気含有率が0.06であり、平面性の乱れが無く、キズの発生も観察されなかった。
【0054】
比較例1
突起面積の割合が0.008である以外は実施例1と同様にして、二軸配向ポリエステルフィルム及びフィルムロールを得た。巻き上げ直後は何ら問題の発生は無かったが、長期保管想定加速処理後は空気含有率が低下(処理前:0.06→処理後:0.02)し、平面性が乱れ、キズも観察された。
【0055】
実施例2、参考例3〜5、及び比較例2それぞれ、表1に示す条件にする以外は実施例1と同様にして、二軸配向ポリエステルフィルム及びロールを得た。
【0056】
【表1】
Figure 0004752084
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを巻き取り工程に導入することにより、ロール状に巻き取られる際の随伴流により巻き込まれる空気は適当量がロール外に排出され、ロール内部に最適量の空気層を含む、良好な巻き姿のロールが得られる。さらに、長期間の保管後も適切な空気層を保持するため、長期にわたり良好な巻き姿が維持されるとともに、キズの発生も見られない。従って、生産スケジュール調整の自由度が格段に上がり、銘柄切り替えなどの操業上のロスが減少する。また、製品ロール自体の品質が向上し、顧客におけるトラブルを減少させることが可能である。また、光学用フィルムの基材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】二軸配向ポリエステルフィルムに突起付与処理を施している様子を模式的に表した図である。
【図2】突起付与処理加工部分を拡大し、模式的に表した図である。
【符号の説明】
1 二軸配向ポリエステルフィルム
2 突起付与処理ロール
2’ バックアップロール
3 フィルムロール
4 突起付与処理加工により変形した部分
5 突起付与処理ロールがフィルムに接した部分

Claims (6)

  1. 突起付与処理ロールによって形成される突起を幅方向両端部近傍の少なくとも片面に有する二軸配向ポリエステルフィルムであって、
    かつ下記測定方法により測定した突起付与処理によって変形した部分の高さが、非処理部のフィルム平均厚みの1〜20%であり、
    突起付与処理ロールが接するフィルム面積に対する、前記突起付与処理によって変形した部分をフィルム面に垂直に投影した面積の割合が0.18〜0.25であり、
    光学用フィルムの基材として使用することを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。
    (測定方法)
    突起付与処理部分の見かけの厚みと測定部分直近の非処理部分の厚みをデジタルマイクロメーターにて各々20点測定し、その差の平均をもって突起付与処理によって変形した部分の高さとした。
  2. 非処理部のフィルム平均厚みが30〜300μmであり、かつ突起付与処理により変形した部分の平均高さが3〜30μmであることを特徴とする請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  3. 突起付与処理された部分の幅が5〜20mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  4. 前記二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に高分子易接着層を設けており、
    前記高分子易接着層が平均粒径20nm以上300nm未満の不活性粒子及び平均粒径300nm以上1000nm以下の不活性粒子を含有し、
    前記二軸配向ポリエステルフィルムが実質上粒子を含有せず、
    ヘイズ値が1.0%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムを巻き上げてなることを特徴とするロール。
  6. 40℃、70%RHの部屋に30日間保管した後の空気含有率が0.06%以上であることを特徴とする請求項5に記載のロール。
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