JP3628295B2 - 光学用積層フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、逐次二軸延伸された二軸配向ポリエステルフィルムを基材とする光学用積層フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルなどの二軸配向熱可塑性樹脂フィルムは、優れた透明性、寸法安定性、耐薬品性から、光を透過、反射させた状態で使用する各種光学用フィルムとして広く利用されている。特に、液晶ディスプレイ(LCD)に用いられるプリズムレンズシート用ベースフィルム、ハードコートフィルム用ベースフィルム、反射防止(AR)フィルム用ベースフィルム、光拡散板用ベースフィルム、陰極線管(CRT)用破砕防止フィルム、タッチパネルやエレクトロルミネッセンスに用いられる透明導電性フィルム、プラズマディスプレイの前面板に用いられる近赤外線吸収フィルムや電磁波吸収フィルムなどの用途には、優れた強度、寸法安定性が要求されるため、比較的厚手のフィルムが用いられている。
【0003】
このような光学用フィルムは、優れた透明性と、プリズムレンズ加工やハードコート加工、AR加工の際に、加工用のコート層などとの接着性に優れることが要求され、さらに、フィルムに光学的な欠点が極力少ないことが望まれている。
【0004】
通常、フィルムにハンドリング性(易滑性、巻き取り性、耐ブロッキング性など)や耐スクラッチ性などの改良するために、フィルム中に粒子を含有させ、該フィルム表面に凹凸を形成させることが一般に行われている。しかしながら、一般に粒子とポリエステルとは屈折率の差が大きいことに起因して、およびフィルム延伸時に粒子周囲に形成されるボイドによって、フィルムの透明性が低下する傾向にある。
【0005】
このことから、より透明性に優れるフィルムを得るために、基材フィルム中の粒子の含有量を減少させることも行われるが、この場合、透明性が高くなる一方で、光学欠点はより鮮明となる傾向にある。
【0006】
さらに、フィルムの光学的な欠点は、基材フィルム表面のキズが原因の1つになっている。基材フィルム表面に微小なキズがあると、例えばレンズシートとした場合に、レンズ層によって基材フィルム表面のキズが拡大されたり、LCDにおける表示部分で光学的な欠点となる場合がある。
【0007】
こうしたキズの発生を抑制する技術として、特開平9−183201号公報には、フィルム表面に界面活性剤を有することで、長さ20mm以上かつ最大深さ0.5μm以上のキズが10個/m2以下となるポリエステル系光学用フィルムが開示されている。しかしながら、この技術では、より微小なキズの発生を抑制することが困難であり、最近の光学用フィルムに要求されるレベルを満足するものではなかった。
【0008】
また、従来の二軸配向ポリエステルフィルムは、一般に他の材料、例えばアクリル系樹脂を主成分とするプリズムレンズ層やハードコート層との接着性が悪いという問題もある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、他の部材などとの接着性に優れ、且つ光学欠点の少ない光学用積層フィルムを提供することにある。さらなる目的として、透明性にも優れた光学用積層フィルムを提供する。
【0010】
【課題を解決しようとする手段】
上記目的を達成し得た本発明の光学用積層フィルムは、逐次二軸延伸された厚さ50μm以上の二軸配向ポリエステルを基材とし、該基材の少なくとも片面に接着性改質樹脂層を形成した積層フィルムであって、表面に存在する深さ1μm以上、長さ3mm以上の全キズが100個/m2以下であるところに要旨を有する。上記全キズの個数は、光学用積層フィルムの用途によっては、30個/m2以下であることが好ましく、10個/m2以下であることがさらに好ましい。なお、「積層フィルムの表面」とは、上記接着性改質樹脂層を設けた面および設けていない面のいずれの表面も含む。
【0011】
さらに上記光学用積層フィルムにおいては、上記全キズの個数が100個/m2以下存在する場合、表面に存在する深さ1μm以上、長さ3mm以上の縦方向キズまたは横方向キズが50個/m2以下であることが好ましい。
【0012】
なお、縦方向キズとは、最も長い方向が、光学用積層フィルムの縦方向(フィルムを製造する際の走行方向)、言い換えれば該フィルムを製造する際に巻き取る方向に平行な方向から±45°以下のずれを有するキズを意味する。また、横方向キズとは、最も長い方向が、光学用積層フィルムの横方向、すなわち該フィルムを製造する際に巻き取る方向に垂直な方向から±45°未満のずれを有するキズを意味する。
【0013】
また、本発明において「キズ」とは、光学用積層フィルム表面の微細な凹部および/または凸部を意味し、突起状の状態も含む。なお、光学用積層フィルム表面を垂直方向から観察した時に50μm以内に近接するキズの凹凸は同一のキズとして考え、それらのキズの最外部を覆う最小面積の長方形の長さおよび幅を、キズの長さおよび幅とした(肉眼では同一と判断されても、顕微鏡観察では離れている場合があるため、キズの長さと幅の定義をこのようにする)。なお、キズの深さとは、光学用積層フィルム表面からの厚み方向の最大深さを意味し、該キズによってフィルム表面に盛り上がりが生じている場合は、盛り上がり部の頂部から底部までの最大深さを意味する。
【0014】
上記光学用積層フィルムにおいては、JIS−K7105の規定に準じて測定されるヘーズが1.0%以下であることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明の光学用積層フィルムでは、上記基材中に実質的に粒子を存在させずに、上記接着性改質樹脂層のみに粒子を含有させてなることが望ましい。
【0016】
また、本発明の光学用積層フィルムの上記基材を構成する樹脂はポリエステル樹脂であり、該ポリエステル樹脂には、マグネシウム化合物がマグネシウム原子換算で40〜70ppm、およびリン化合物がリン原子換算で10〜55ppm含有されており、且つ該ポリエステル樹脂の275℃における溶融比抵抗値は、0.45×108Ω・cm以下であることが推奨される。
【0017】
上記基材を構成するポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートを主成分とするものであることが好ましい。
【0018】
また、上記接着性改質樹脂層を構成する樹脂は、共重合ポリエステル樹脂、ポリウレタン系樹脂、およびアクリル系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を主成分とするものであることが望ましく、該接着性改質樹脂層に含まれる上記粒子は、シリカが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、光学用フィルムの光学欠点を低減すべく鋭意検討を重ねた。その結果、光学用フィルム表面に存在する特定形態のキズが光学欠点の原因となることをつき止め、該キズの低減を図ることで該光学欠点を低減し、高品質の光学用フィルムを提供し得ることを見出し、本発明を完成させたのである。
【0020】
本発明の光学用積層フィルムは、基材となる逐次二軸延伸された二軸配向ポリエステルフィルム(以下、「基材フィルム」ということがある)の少なくとも片面に接着性改質樹脂層を形成したものであり、該光学用積層フィルムの表面に存在する深さ1μm以上、長さ3mm以上の全キズが100個/m2以下である。上記全キズの個数が100個/m2以下であれば、例えば光拡散板用フィルムのような該フィルムからの散乱光が観察される光学部材において、光学欠点が認知されない。
【0021】
また、本発明の光学用積層フィルムが液晶保護フィルム、反射防止フィルム、近赤外線吸収フィルム、その他一般のハードコートフィルムなど、該フィルムの透過光が直接観察される光学部材に採用される場合では、上記全キズの個数は30個/m2以下であることが好ましい。上記全キズの個数をこのような範囲とすれば、光学欠点による問題が生じない。
【0022】
さらに、フィルム表面のキズが拡大投影されてしまうレンズフィルムや、表面にハードコート層、裏面に透明導電層が形成されるタッチパネル用透明導電性フィルムなどの光学部材に、本発明の光学用積層フィルムが適用される場合では、上記全キズの個数は10個/m2以下であることが推奨される。
【0023】
勿論、本発明の光学用積層フィルムにおいては、上記全キズの個数は0個/m2であることが最も好ましい。
【0024】
また、具体的に言えば、上記縦方向キズまたは上記横方向キズの個数が50個/m2以下、好ましくは30個/m2以下、より好ましくは15個/m2以下、さらに好ましくは10個/m2以下、特に好ましくは5個/m2以下、最も好ましくは0個/m2であることが推奨される。縦方向キズおよび横方向キズのいずれもが上記個数範囲を満たすことがより望ましい。
【0025】
さらに、本発明の光学用積層フィルムは、JIS−K7105に準じて測定されるヘーズが1.0%以下であることが好ましい。ヘーズが1.0%を超える光学用積層フィルムでは、例えばディスプレイの構成部材(LCD用のレンズフィルムや、CRT用のARフィルムなど)に用いた場合に、画像の鮮明度が低下する傾向にある。より好ましいヘーズの上限は0.8%、さらに好ましい上限は0.6%である。
【0026】
次に本発明の光学用積層フィルムの構成および製造方法について詳述する。
【0027】
[基材]
本発明で使用する基材は、強度などの点から、厚さ50μm以上の二軸配向ポリエステルフィルムを用いる。基材フィルムの厚みの上限も特に限定されないが、取り扱い性や光学用部材としての規格の面から、300μm以下であることが推奨される。
【0028】
上記ポリエステルは、透明性、寸法安定性、耐薬品性に優れており、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)、あるいはこれらの樹脂を構成する成分を主成分とするポリエステル系共重合体などが挙げられる。なお、上記ポリエステル系共重合体における「主成分」とは、上記例示のポリエステル(PET、PBTおよびPEN)を構成する成分(多価カルボン酸成分および多価アルコール成分から形成されるエステル成分)が、該ポリエステル系共重合体を構成する多価カルボン酸成分および多価アルコール成分から形成されるエステル成分100モル%中、50モル%以上であることを意味する。
【0029】
これらのポリエステルは、本発明の効果、特に透明性を確保できる範囲であれば、単独で使用してもよく、2種以上を混合しても用いてもよい。中でもPETおよび/またはPENを主成分とするポリエステル樹脂であることが好ましい。なお、ここでいう「主成分」とは、ポリエステル樹脂100質量%中、PETおよび/またはPENが50質量%以上であることを意味する。
【0030】
上記のポリエステル系共重合体において、上記例示のポリエステルを構成する成分を主成分とする場合、他の共重合成分(副成分)に用いられる多価カルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸(PET、PBTの構成成分を主成分とする場合を除く)、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸(PENの構成成分を主成分とする場合を除く)などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸などが挙げられる。また、多価アルコール成分としては、エチレングリコール(PET、PENの構成成分を主成分とする場合を除く)、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール(PBTの構成成分を主成分とする場合を除く)、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール;p−キシレングリコールなどの芳香族グリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール;平均分子量が150〜20000のポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0031】
なお、基材の構成素材として上記例示のポリエステルを主成分とし、上記のポリエステル系共重合体を混合したポリエステル樹脂を用いる場合、全ポリエステル樹脂中の共重合体の比率は20質量%未満であることが好ましい。ポリエステル系共重合体の比率が20質量%以上では、基材の強度、透明性、耐熱性が低下し易くなる。
【0032】
基材の構成素材としてポリエステル樹脂を用いる場合、基材フィルムの原料となるポリエステル樹脂ペレットの固有粘度は、0.45dl/g以上0.70dl/g以下であることが好ましい。固有粘度が0.45dl/g未満では、基材フィルムの耐引裂き性が不十分となる傾向にあり、フィルム製造時に破断が多発し易くなる。他方、固有粘度が0.7dl/gを超えると、ペレットから基材フィルムを製造する際に行う精密濾過(後述する)において、濾圧の上昇が大きくなるため、該濾過の実施が困難となる。
【0033】
本発明に係る基材フィルムは、後述するように、通常、フィルム状に溶融押出し、これを金属ロールでキャストして製膜する。このキャストの際に、溶融フィルムと金属ロールとの密着性を高めるべく、静電密着させることが推奨される。よって、基材を構成するポリエステル樹脂は、溶融比抵抗値が低いことが望ましい。具体的には、上記ポリエステル樹脂の275℃における溶融比抵抗値は、0.45×108Ω・cm以下であることが好ましく、0.30×108Ω・cm以下であることがさらに好ましい。他方、ポリエステル樹脂の溶融比抵抗値があまり低過ぎると、基材フィルムが静電気の影響を受け易くなり、ハンドリング性が低下する傾向にある。よって、上記ポリエステル樹脂の275℃における溶融比抵抗値は、0.10×108Ω・cm以上であることが好ましく、0.12×108Ω・cm以上であることがさらに好ましい。
【0034】
なお、本発明で規定する溶融比抵抗値は、後述する実施例において採用する方法によって測定される値である。
【0035】
上記ポリエステル樹脂の溶融比抵抗値は、該ポリエステル樹脂中に、マグネシウム化合物およびリン化合物を含有させることで確保できる。
【0036】
マグネシウム化合物中のマグネシウムは、ポリエステル樹脂の溶融比抵抗値を低下させる作用を有する。このような作用を有効に発揮させると共に、マグネシウム化合物に起因する異物の生成やポリエステル樹脂の着色を抑える観点から、ポリエステル樹脂中のマグネシウム化合物量は、マグネシウム原子換算で40ppm(質量基準、以下同じ)以上、好ましくは45ppm以上であって、70ppm以下、好ましくは65ppm以下とすることが推奨される。
【0037】
好ましいマグネシウム化合物の具体例としては、マグネシウムの水酸化物、脂肪族ジカルボン酸塩(酢酸塩、酪酸塩など、好ましくは酢酸塩)、芳香族ジカルボン酸塩、フェノール性水酸基を有する化合物との塩(フェノールとの塩など)などが挙げられる。
【0038】
リン化合物は、それ自体ポリエステル樹脂の溶融比抵抗値を低下させる作用は有しないが、マグネシウム化合物と組み合わせることにより、溶融比抵抗値の低下に寄与し得る。その理由は明らかではないが、リン化合物を含有させることにより、異物の生成を抑制し、電荷担体の量を増大させることができるのではないかと考えられる。よって、上記の作用を有効に発揮させると共に、リン化合物に起因する異物の生成を抑える観点から、ポリエステル樹脂中のリン化合物量は、リン原子換算で10ppm(質量基準、以下同じ)以上、好ましくは15ppm以上であって、55ppm以下、好ましくは50ppm以下とすることが推奨される。
【0039】
上記のリン化合物としては、リン酸類(リン酸、亜リン酸、次亜リン酸など)、およびそのエステル(アルキルエステル、アリールエステルなど)、並びにアルキルホスホン酸、アリールホスホン酸及びそれらのエステル(アルキルエステル、アリールエステルなど)が挙げられる。好ましいリン化合物としては、リン酸、リン酸の脂肪族エステル(リン酸のアルキルエステルなど;例えば、リン酸モノメチルエステル、リン酸モノエチルエステル、リン酸モノブチルエステルなどのリン酸モノC1−6アルキルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸ジエチルエステル、リン酸ジブチルエステルなどのリン酸ジC1−6アルキルエステル、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステルなどのリン酸トリC1−6アルキルエステルなど)、リン酸の芳香族エステル(リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジルなどのリン酸のモノ、ジ、またはトリC6−9アリールエステルなど)、亜リン酸の脂肪族エステル(亜リン酸のアルキルエステルなど;例えば、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリブチルなどの亜リン酸のモノ、ジ、またはトリC1−6アルキルエステルなど)、アルキルホスホン酸(メチルホスホン酸、エチルホスホン酸などのC1−6アルキルホスホン酸)、アルキルホスホン酸アルキルエステル(メチルホスホン酸ジメチル、エチルホスホン酸ジメチルなどのC1−6アルキルホスホン酸のモノまたはジC1−6アルキルエステルなど)、アリールホスホン酸アルキルエステル(フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチルなどのC6−9アリールホスホン酸のモノまたはジC1−6アルキルエステルなど)、アリールホスホン酸アリールエステル(フェニルホスホン酸ジフェニルなどのC6−9アリールホスホン酸のモノまたはジC6−9アリールエステルなど)などが例示できる。特に好ましいリン化合物には、リン酸、リン酸トリアルキル(リン酸トリメチルなど)が含まれる。これらリン化合物は単独で、または2種以上組合わせて使用できる。
【0040】
基材の構成素材である熱可塑性樹脂には、必要に応じて、本発明の作用を阻害しない範囲で各種の添加剤が含有されていてもよい。上記添加剤としては、例えば、帯電防止剤、UV吸収剤、安定剤などが挙げられる。
【0041】
熱可塑性樹脂フィルムにおいては、易滑性付与を目的として粒子を含有させる場合があるが、本発明に係る基材では、透明性向上の点から、こうした粒子の含有量は少ない方が好ましく、粒子が実質的に存在していないことがより好ましい。なお、「粒子が実質的に存在しない」とは、接着性改質樹脂層を積層しない基材において、粒子の存在量が蛍光X線分析法の検出限界以下であることを意味する。なお、光学用積層フィルムのハンドリング性や耐スクラッチ性を維持しながら透明性を向上させるためには、例えば、基材には実質的に粒子を存在させずに、接着性改質樹脂層のみに粒子を含有させるなどとすればよい。
【0042】
さらに、上記基材では、内部に存在する異物が少ないことが好ましい。基材中の異物を低減するには、例えば、基材フィルムの成形の際に、素材である熱可塑性樹脂を溶融状態で精密濾過する方法(後述する)などが採用できる。基材中に異物が存在すると、基材フィルム製造時の冷却工程において、該異物の周囲で熱可塑性樹脂の結晶化が進み易い。このような結晶化によって、その後の延伸工程において、延伸の不均一となるため、基材フィルムに微小な厚みの差異が生じ、その部分付近がレンズ状態となり易い。基材フィルムの上記レンズ状態となった部分では、光が屈折または散乱するため、目視したときには実際の異物よりも大きく観察されるようになる。よって、このような基材を用いた光学用積層フィルムを、たとえばディスプレイ用途などに用いた場合では、上記レンズ状態となった部分で画像斑が生じる傾向にある。
【0043】
[接着性改質樹脂層]
本発明の光学用積層フィルムの接着性改質樹脂層を構成する樹脂は、上記例示の如き光学用途において、他の部材などとのより優れた接着性を確保する観点から、共重合ポリエステル樹脂、ポリウレタン系樹脂、およびアクリル系樹脂よりなる群から選択される1種以上を主成分とするものであることが好ましい。なお、接着性改質樹脂層における上記「主成分」とは、該層を構成する樹脂100質量%中、上に列挙した樹脂の少なくとも1種が50質量%以上であることを意味する。
【0044】
接着性改質樹脂層に用い得る共重合ポリエステル樹脂をしては特に限定されず、従来公知のものが使用できる。
【0045】
上記共重合ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸など、およびそれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。また、グリコール成分としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0046】
本発明の光学用積層フィルムにおいて接着性改質樹脂層を形成する際には、該フィルム製造時に、接着性改質樹脂を水に溶解または分散させた水性塗布液を基材に塗布し、乾燥させるといった所謂インラインコーティング法が好ましく採用される。このインラインコーティング法であれば、広幅で厚みの薄い光学用積層フィルムが、生産性よく得られる。よって、上記共重合ポリエステル樹脂は水溶性、または水分散性に優れることが好ましく、例えば、「カルボキシル基およびその塩を有する化合物」および/または「スルホン酸基およびその塩を有する化合物」を共重合成分として使用したものであることが推奨される。以下、カルボキシル基およびその塩を「カルボン酸(塩)基」と称し、スルホン酸基およびその塩を「スルホン酸(塩)基」と称す。
【0047】
カルボン酸(塩)基を有する化合物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−オキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6,−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸など、あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
スルホン酸(塩)基を有する化合物としては、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホ−p−キシリレングリコール、2−スルホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
上記の共重合ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分およびグリコール成分、あるいは共重合するための化合物は、夫々2種以上を併用してもよい。
【0050】
この他、上記の共重合ポリエステル樹脂としては、例えば(メタ)アクリル酸、ウレタン結合を有する化合物、エポキシ基を有する化合物などで変性したブロック共重合体、グラフト共重合体などの変性ポリエステル系共重合樹脂などを用いることも可能である。
【0051】
中でも、疎水性共重合ポリエステル樹脂に少なくとも1種の二重結合を有する酸無水物をグラフトさせた自己架橋性のポリエステル系グラフト共重合体は、特にレンズフィルムのレンズ層やハードコートフィルムのハードコート層の主成分であるアクリル樹脂との接着性に優れると共に、耐水密着性にも優れる。このため、接着性改質樹脂層に上記自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体を用いた光学用積層フィルムは、高湿度の環境下でも使用可能となる。
【0052】
接着性改質樹脂層に用い得るポリウレタン系樹脂としては、溶剤溶解性、水溶性、水分散性のいずれでもよく、接着性改質樹脂層に要求される特性や製造方法に合わせて適宜選択できる。本発明の光学用積層フィルムの製造で好ましく採用される上記インラインコーティング法によって接着性改質樹脂層を形成する場合には、水溶性または水分散性に優れる水性ポリウレタン系樹脂を使用することが推奨される。このような水性ポリウレタン系樹脂としては、カルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基、硫酸半エステル基およびその塩、などにより水への親和性が高められたポリウレタン系樹脂が挙げられる。
【0053】
上記ポリウレタン系樹脂の合成に用いられるポリヒドロキシ化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・ポリプロピレングリコール、ポリテトラプロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリテトラメチレンセバケート、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、グリセリンなどが挙げられる。
【0054】
また、上記ポリウレタン系樹脂の合成に用いられるポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとトリメチロールエタンの付加物などが挙げられる。
【0055】
上記ポリウレタン系樹脂の合成に用いられるカルボキシル基含有ポリオ−ルとしては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、トリメリット酸ビス(エチレングリコール)エステルなどが挙げられる。
【0056】
上記ポリウレタン系樹脂の合成に用いられるアミノ基含有カルボン酸としては、例えば、β−アミノプロピオン酸、γ−アミノ酪酸、p−アミノ安息香酸などが挙げられる。
【0057】
上記ポリウレタン系樹脂の合成に用いられる水酸基含有カルボン酸としては、3−ヒドロキシプロピオン酸、γ−ヒドロキシ酪酸、p−(2−ヒドロキシエチル)安息香酸、リンゴ酸などが挙げられる。
【0058】
上記ポリウレタン系樹脂の合成に用いられるアミノ基または水酸基と、スルホン酸基とを有する化合物としては、例えば、アミノメタンスルホン酸、2−アミノエタンスルホン酸、2−アミノ−5−メチルベンゼン−2−スルホン酸、β−ヒドロキシエタンスルホン酸ナトリウム、脂肪族ジ第1級アミン化合物のプロパンサルトン、ブタンサルトン付加生成物などが挙げられる。中でも脂肪族ジ第1級アミン化合物のプロパンサルトン付加物が好ましい。
【0059】
上記ポリウレタン系樹脂の合成に用いられるアミノ基または水酸基と、硫酸半エステル基とを有する化合物としては、例えば、アミノエタノール硫酸、アミノブタノール硫酸、ヒドロキシエタノール硫酸、α−ヒドロキシブタノール硫酸などが挙げられる。
【0060】
上記のポリウレタン系樹脂の合成に用いられる化合物は、2種以上を併用することができる。
【0061】
さらに、上記のポリウレタン系樹脂として、特公昭42−24194号公報、特公昭46−7720号公報、特公昭46−10193号公報、特公昭49−37839号公報、特開昭50−123197号公報、特開昭53−126058号公報、特開昭54−138098号公報などにより公知のアニオン性基を有するポリウレタン系樹脂あるいはそれらに準じたポリウレタン系樹脂を挙げることができる。
【0062】
上記のポリウレタン系樹脂の主要な構成成分は、ポリイソシアネート、ポリオール、鎖延長剤、架橋剤などである。また、分子量300〜20000のポリオール、ポリイソシアネート、反応性水素原子を有する鎖延長剤、およびイソシアネート基と反応する基、およびアニオン性基を少なくとも1個有する化合物からなる樹脂が望ましい。ポリウレタン系樹脂中のアニオン性基は、好ましくは−SO3H、−OSO2H、−COOH、およびこれらのアンモニウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩あるいはマグネシウム塩が挙げられる。
【0063】
接着性改質樹脂層に用いられるアクリル系樹脂としては特に限定されず、従来公知のものが採用できる。すなわち、アクリル系樹脂を構成するモノマー成分としては、公知のもの、具体的には、アルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロビル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基など);2−ヒドロキシルエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩など)などのカルボキシル基またはその塩を含有するモノマー;などが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いて共重合できる。さらに、これらは他のモノマーと併用することができる。
【0064】
上記他のモノマーとしては、例えば、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマー;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)などのスルホン酸基またはその塩を含有するモノマー;クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)などのカルボキシル基またはその塩を含有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物を含有するモノマー;ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリスアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマル酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルキルイタコン酸モノエステル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、塩化ビニルなどが挙げられる。
【0065】
この他、上記のアクリル系樹脂としては、例えば、ウレタン結合を有する化合物、エポキシ基を有する化合物などで変性したブロック共重合体、グラフト共重合体などの変性アクリル系樹脂などを用いることも可能である。
【0066】
上記のアクリル系樹脂の数平均分子量は、10万以上、好ましくは30万以上であることが、基材フィルムおよび/または本発明の光学用積層フィルムの二次加工によってさらに形成される反射防止層、ハードコート層、防眩層などの積層物との密着性を確保する点で好ましい。
【0067】
上記の共重合ポリエステル樹脂、ポリウレタン系樹脂およびアクリル系樹脂は、夫々単独で、あるいは2種以上を併用することが可能である。特に、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン系樹脂とを併用する場合などは、良好な接着性、耐水性、耐溶剤性を獲得できる組合せもあり、推奨される。
【0068】
本発明において、接着性改質樹脂層の形成は、例えば、接着性改質樹脂層を構成する上記の成分を含有する塗布液を、基材上に塗布することにより行われる。この場合、上記塗布液の製造においては、接着性改質樹脂層構成成分を溶媒に溶解あるいは分散させてもよい。
【0069】
さらに、上記塗布液には、構成樹脂の熱架橋反応を促進するため、触媒を添加してもよい。触媒としては、例えば、無機物質、塩類、有機物質、アルカリ性物質、酸性物質および含金属有機化合物など、触媒として公知の種々の化学物質の中から、接着性改質樹脂層を構成する樹脂に応じて適宜選択すればよい。
【0070】
また、上記塗布液を水溶液とする場合、接着性改質樹脂層を構成する樹脂に応じてpHを調整するために、アルカリ性物質および/または酸性物質を添加してもよい。
【0071】
上記塗布液には、基材への塗布の際に、基材表面への濡れ性を向上させて塗布液を均一に塗布するため、界面活性剤を適量添加して用いることができる。界面活性剤としては、公知のアニオン性界面活性剤またはノニオン性界面活性剤が使用可能である。
【0072】
上記塗布液に使用する溶媒としては、水が好ましいが、水の他にエタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール類を配合してもよい。アルコール類を使用する場合、全塗布液に占めるアルコール類の割合が50質量%未満であることが好ましい。
【0073】
さらに、アルコール類以外の有機溶剤を溶解可能な範囲で混合してもよい。アルコール類以外の有機溶剤を使用する場合、塗布液全量に対する他の有機溶剤の割合は、好ましくは10質量%未満であればよく、また、アルコール類とその他の有機溶剤との合計が塗布液全量に対して、50質量%未満であればよい。アルコール類を含む有機溶剤の塗布液全量に対する配合割合が50質量%未満であれば、塗布液の乾燥時の乾燥性が向上するとともに、溶媒が水のみの場合と比較して接着性改質樹脂層の外観性が向上する効果がある。50質量%以上であると、溶剤の蒸発速度が速く、塗布液の塗布中に濃度変化が起こり、粘度が上昇して塗布性が低下するために、接着性改質樹脂層が外観不良となり易い。
【0074】
上述の通り、本発明では、透明性を確保する観点から、易滑性を付与する粒子が基材中には実質的に存在しない構成を採用することが好ましい。よって光学用積層フィルムの易滑性確保のため、接着性改質樹脂層に粒子を含有させ、該接着性改質樹脂層表面(すなわち、光学用積層フィルム表面)に適度な突起を形成することが好ましい。接着性改質樹脂層に粒子を含有させる手法としては、例えば、接着性改質樹脂層形成用の上記塗布液に粒子を添加することが挙げられる。
【0075】
このような目的で添加する粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデンなどの無機粒子;架橋高分子粒子;シュウ酸カルシウムなどの有機粒子などが挙げられる。接着性改質樹脂層を、上記共重合ポリエステル樹脂を主体として形成する場合には、シリカが特に好ましい。シリカは、ポリエステルと屈折率が比較的近いため、より透明性に優れた光学用積層フィルムを確保し得る点で最も好適である。
【0076】
接着性改質樹脂層に含有させる上記粒子は、平均粒径が0.005〜1.0μmであることが、光学用積層フィルムの透明性、ハンドリング性、耐スクラッチ性確保の点から好ましい。粒子の平均粒径の上限は、透明性の点から、0.5μmであることがさらに好ましく、特に好ましくは0.2μmである。また、粒子の平均粒径の下限は、ハンドリング性と耐スクラッチ性の点から、0.03μmであることがさらに好ましく、特に好ましくは0.01μmである。
【0077】
接着性改質樹脂層中の粒子の含有量は、接着性改質樹脂層の構成成分全量に対して、0.1〜60質量%であることが、光学用積層フィルムの透明性、接着性、ハンドリング性、耐スクラッチ性確保の点から好ましい。粒子の含有量の上限は、透明性と接着性の点から50質量%であることがさらに好ましく、特に好ましくは40質量%である。また、粒子の含有量の下限は、ハンドリング性と耐スクラッチ性の点から1質量%がさらに好ましく、特に好ましくは0.5質量%である。
【0078】
上記粒子は2種類以上を併用してもよく、同種の粒子で粒径の異なるものを配合してもよいが、いずれにしても、粒子全体の平均粒径、および合計の含有量が上記範囲を満足することが好ましい。
【0079】
なお、接着性改質樹脂層を形成するための塗布液を基材に塗布する際には、塗布液中の粒子の粗大凝集物や外来混入物などを除去するために、塗布直前に塗布液を濾材により精密濾過することが好ましい。
【0080】
上記塗布液を精密濾過するための濾材は、濾過粒子サイズが25μm以下(初期濾過効率:95%)であることが好ましい。濾過粒子サイズが25μmを超えると、粒子の粗大凝集物や外来混入物などの除去が不十分となる場合がある。このような場合、濾材で除去できなかった多くの粗大凝集物は、塗布液を基材に塗布、乾燥して得られるフィルムを一軸延伸、あるいは二軸延伸した際に、接着性改質樹脂層中でフィルムの延伸方向に広がり、例えば100μm以上の凝集物として認識されることがある。その結果、こうした凝集物に起因して、多くの光学欠点が発生する可能性がある。
【0081】
上記濾材のタイプは、上記の性能を有していれば特に限定されないが、例えば、フィラメント型、フェルト型、メッシュ型などが挙げられる。また、上記濾材の材質は、上記濾過性能を有し、且つ塗布液に悪影響を及ばさなければ特に限定はされないが、例えば、ステンレススチール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンなどが挙げられる。
【0082】
接着性改質樹脂層には、本発明の効果を阻害しない範囲で、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、耐光剤、および潤滑剤などの各種添加剤を配合してもよい。さらに、接着性改質樹脂層を形成するための塗布液を水性とする場合は、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の水溶性樹脂、水分散性樹脂およびエマルジョンなどを塗布液に添加して、性能の向上を図ることも可能である。
【0083】
基材上に接着性改質樹脂層を形成する方法として、塗布液を塗布するコーティング方法を用いる場合、塗布液中の固形分濃度は30質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0084】
[光学用積層フィルムの製造方法]
本発明の光学用積層フィルムの製造方法について、基材にPETを採用した場合を例にとって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0085】
実質的に粒子の存在しないPETのペレットを十分に真空乾燥した後、押出機に供給し、例えば約280℃でシート状に溶融押出し、好ましくは静電気を印加しながら金属冷却ロール上に密着固化(キャスト)させて未延伸PETフィルムを得る。この際、溶融PET樹脂が約280℃に保たれた任意のメルトラインで精密濾過を行い、PET樹脂中に含まれる異物を除去する。溶融PETの精密濾過に用いられる濾材は特に限定はされないが、ステンレススチール焼結体の濾材が、ポリエステル樹脂の重合触媒であるSb2O3が還元されて析出する金属Sbや、重合からペレット化までの段階で外部から混入するSi、Ti、Sb、Ge、Cuなどを主成分とする凝集物および高融点有機物の除去性能に優れるため、好適である。
【0086】
上記濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)は15μm以下であることが好ましい。濾過粒子サイズが15μmを超える濾材では、光学欠点低減の点から除去する必要があるサイズの粒子を十分に除去することができない。上記のような濾過性能を有する濾材を使用して溶融PET樹脂の精密濾過を行うことにより生産性が低下する場合があるが、光学欠点の少ないフィルムを得るには必要不可欠である。
【0087】
なお、上述のマグネシウム化合物、およびリン化合物を添加する時期は、ポリエステル樹脂の重合工程中であれば特に限定されるものではなく、例えば直接エステル化法の場合、エステル化反応前、エステル化中、エステル化終了から重合工程開始までの間、重合中、および重合後のいずれの段階でもよいが、好ましくはエステル化終了後の任意の段階、さらに好ましくはエステル化終了から重合工程開始までの間である。エステル化終了後に添加すると、それ以前に添加する場合に比べて、マグネシウム化合物に起因して生成する異物の量を低減できる。
【0088】
得られた未延伸フィルムを80〜120℃に加熱したロールで長手方向(縦方向:光学用積層フィルム製造時の走行方向)に2.5〜5.0倍延伸し、一軸配向フィルムを得る。なお、この一軸延伸を行う工程を「縦延伸工程」という場合がある。
【0089】
この際、フィルムのキズの発生を防止するためには、(a)フィルム表面そのものやロール表面、特にフィルムと接触するロール表面にキズの原因となる「欠点」を発生させないこと、(b)接触するロールの表面上でフィルムが縦方向および横方向にずれないようにすることが重要である。
【0090】
上記の「欠点」とは、ロール表面に形成されるキズ、堆積物、付着物、異物などの、フィルムと接触することによりフィルムに微細なキズを発生させるすべての要因を指す。よって、これらの欠点を無くすことで、フィルム表面へのキズの発生を低減できる。上記欠点の発生を防止するためには、例えば、下記に挙げる方法を採用することができる。
【0091】
光学用積層フィルム製造時に用いるロールの表面粗度をRaで0.1μm以下とする方法や、堆積物、付着物、異物などのキズ発生要因のロール表面への堆積を防止するため、縦延伸工程(以下、「MD工程」という)の予熱入口と冷却ロールにロールクリーナーを設置する方法が挙げられる。
【0092】
また、光学用積層フィルム製造工程におけるクリーン度をクラス1000以下(1立方フィート当たりの体積中に0.5μm以上の粒子が1000個以下)とする方法があり、特にロール周りはクラス100以下、キャスト工程で反ロール面を冷却するための送風冷却装置についてもクラス100以下のクリーンエアを使用することが好ましい。
【0093】
さらに、光学用積層フィルム製造前に、研磨材を用いてロール上の欠陥を削り取る作業などによりロールの掃除を行う方法も挙げられる。また、静電気の発生によってフィルムがゴミなどを吸着し、欠点となることを避けるため、フィルムの帯電量が全工程で±1500V以下になるよう除電装置を設ける方法も挙げられる。基材フィルムのキャストから後述するテンターまでの工程はキズが主に発生し易い工程であり、この区間をコンパクトにレイアウトし、通過時間を5分以下にすることも欠点の発生抑制に寄与し得る。
【0094】
ロールについては、ロール表面に水膜を形成したり、エアフローティングタイプのロールとすることで、フィルムにロール表面の欠点が直接接触しない構造にすることができる。また、フィルムから析出するオリゴマー量を1000ppm以下とすることで、ロール表面への欠点の付着を減少させ、ロール表面の欠点を低減することができる。
【0095】
さらに、後述する延伸後の巻き取り工程において、フィルムの幅方向(横方向:光学用積層フィルム製造時の走行方向に垂直な方向)の端部側の表面を突起付きのローラで押圧して、その部分に凹凸部を形成すると共に、該凹凸部が形成されたフィルムを巻取り機構でロール状に巻き取るよう構成し、さらに該突起付きのローラにおける突起を先窄まり状に形成し、該突起の頂部に丸みをつけ、その頂面の曲率半径を0.4mm以下に設定することで、フィルムの巻取り装置において、フィルムと欠点が接触しないようにすることもできる。
【0096】
また、ロール表面上で、フィルムがずれないようにする方法としては、例えば下記に挙げる方法が採用可能である。
【0097】
ロールを小径化すること、サクションロールの使用、静電密着、パートニップの密着装置を使用するなどしてフィルムのロールへの密着力を増大させることにより、長いキズの発生を抑えることができる。特にロールを小径化することは、フィルムのずれ量の細分化にもなり、長いキズの発生防止に寄与し得る。また、キズの多くはロール幅方向の端部に向かうほど、長さおよび頻度が増加し、ロール幅方向の端部においてはキズのない部分を得ることが困難であるため、キズの少ないロール幅方向の中央付近をトリミングすることで、キズの少ないフィルムを得ることが可能となる。
【0098】
縦方向キズまたは横方向キズの発生要因としては、夫々フィルムの縦方向または横方向での、膨張、収縮などの変形も挙げられる。これらのフィルムの変形は、主としてフィルムの温度変化によって生じる。よって、例えば、ロール表面でのフィルムの温度変化を抑制することで、こうした温度によるフィルム変形量を小さくでき、縦方向キズや横方向キズの発生を防止できる。具体的には、ロール1本当たりでのフィルムの温度変化を40℃以下、好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下、さらに一層好ましくは10℃以下、特に好ましくは5℃以下とすることが推奨される。
【0099】
ロール表面でのフィルムの温度変化を抑制する方法としては、例えば、ロール間での空中冷却、水槽を通過させる水中冷却などが挙げられる。さらに、ロール本数を多くすることにより、1本当たりのロール表面でのフィルムの温度変化を低減できる。好ましくは、MD工程でのロール数を10本以上とするのがよい。
【0100】
また、複数のロールの相対的な速度の関係を、フィルムの温度や張力による変形量に対して最も近い速度プロファイルに設定することでフィルムの縦方向のズレを低減することができる。
【0101】
さらに、後述する接着性改質樹脂層形成用の塗布液の塗布工程において、乾燥条件を、ドライヤー区間の初期で乾燥を完了し、出口にかけて冷却することにより、ドライヤー出口でのフィルム温度を40℃以下として、温度変化によるフィルムのずれを低減することもできる。
【0102】
フィルム走行時の張力は、低すぎると把持力が下がってずれが発生し、高すぎても応力変形が大きくなってずれが発生するため、最適な張力範囲である4.9〜29.4MPaになるように駆動ロール速度と張力調整手段によって調節することが好ましい。また、製造時の使用温度におけるフィルムとロール間の摩擦係数を0.2以上とすることでロール表面でのフィルムのずれを抑制することができる。
【0103】
さらに、フリーロールについては特殊ベアリングを採用し、19.6N以下の回転抵抗とすることが好ましい。駆動ロールについては回転斑を0.01%以下に制御する。
【0104】
一軸延伸後のフィルムには、フィルムを搬送するために縦方向に応力がかかり、さらにこの直交方向にポアソン比と弾性率に見合った変形応力が発生するため、横方向のずれが生じる。この応力を下げるため、およびフィルムが持つ熱収縮応力を下げるため、フィルム物性に悪影響を与えない範囲で低配向化させることが好ましい。具体的には、X軸方向の屈折率差[(一軸延伸フィルムのX軸方向の屈折率)−(未延伸フィルムのX軸方向の屈折率)]が0.01〜0.12となる低配向の一軸延伸フィルムとすることが推奨される。
【0105】
本発明において、基材上に接着性改質樹脂層を形成する方法は特に限定されないが、例えば上記の工程中の任意の段階で、基材フィルムの少なくとも片面に、例えば上述した接着性改質樹脂層形成用塗布液を塗布するなどして、接着性改質樹脂層を形成すればよい。
【0106】
上記塗布液を基材フィルム上に塗布するには、接着性改質樹脂層の構成成分に、必要に応じて溶媒をあらかじめ所定量混合して上記塗布液を調製し、公知の任意の塗布方法によって行えばよい、例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法およびカーテン・コート法などが挙げられ、これらの方法を単独あるいは複数組み合わせて塗布することができる。
【0107】
基材フィルム上に接着性改質樹脂層を形成する方法として、塗布液を塗布する方法を用いる場合、塗布量は、光学用積層フィルム製造後の最終時点において、該フィルム1m2当たり、0.04〜5gとなるようにすることが、塗布均一性、耐ブロッキング性、基材との密着性、透明性の点から好ましい。塗布量の下限は、基材との密着性および透明性の点から、0.08g/m2がさらに好ましく、特に好ましくは0.2g/m2である。また、塗布量の上限は、塗布均一性と耐ブロッキング性の点から、4g/m2がさらに好ましく、特に好ましくは2g/m2である。塗布量が少なすぎると、基材フィルムと接着性改質樹脂層との間の密着性が低下しやすく、また接着性改質樹脂層中の粒子が脱落しやすくなる。塗布量が多すぎると、透明性や耐ブロッキング性が悪化するだけでなく、塗布液の物性(特にレオロジー)、設備などの問題により、均一に塗布することが困難とある傾向にある。
【0108】
上記一軸配向フィルムは、さらに幅方向(横方向=フィルムの走行方向に垂直方向)の延伸および熱固定のためにテンターに導かれる。なお、上記のように接着性改質樹脂層形成用の塗布液を塗布した場合、テンターで加熱され、熱架橋反応によって安定な接着性改質樹脂層が形成される。上記幅方向の延伸工程によって、フィルムの幅方向を2.5〜5.0倍に延伸し、さらに熱固定処理を行い、必要に応じて緩和処理をした後、適切な幅にスリットして巻き取り、本発明の光学用積層フィルムが得られる。
【0109】
なお、接着性改質樹脂層は、後述する二軸延伸後の基材フィルムの表面に設けても良いが、好ましくは基材フィルムの製造工程において、フィルムの製造と接着性改質樹脂層の形成を同時に行うことが、生産性の点で推奨される。
【0110】
また、接着性改質樹脂層形成用の塗布液を基材フィルムに塗布する段階は、未延伸フィルム製造後、あるいは一軸延伸フィルム製造後、二軸延伸フィルム製造後のどの時点でもよいが、フィルムに塗布液を塗布した後、さらに少なくとも一方向に延伸を行うことが好ましい。より好ましくは、幅方向に延伸する前の未延伸フィルムまたは縦一軸延伸フィルムで、結晶配向が完了する前の段階で塗布液を塗布するのがよい。さらに好ましくは、縦一軸延伸フィルム表面に塗布液を塗布し、次いで幅方向に延伸する方法である。
【0112】
なお、上述したキズの発生を防止するための各種方法は、本発明の光学用積層フィルムが用いられる光学部材の要求品質レベルに応じて、複数種の方法を組合せて使用することができる。
【0113】
また、本発明の光学用積層フィルムは、本発明の効果を阻害しない範囲でさらに他の層を有していてもよい。
【0114】
本発明の光学用積層フィルムは、透明性、他の部材との接着性、光学性能に優れており、LCDに用いられるプリズムレンズシート用ベースフィルム、ハードコートフィルム用ベースフィルム、ARフィルム用ベースフィルム、拡散板用ベースフィルム、CRT用破砕防止フィルム、タッチパネルやエレクトロルミネッセンスに用いられる透明導電性フィルム、プラズマディスプレイの前面板に用いられる近赤外線吸収フィルムや電磁波吸収フィルムなどに好適に使用できる。
【0115】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術的範囲に包含される。なお、実施例および比較例で用いた各フィルムの特性は、下記の方法により評価した。
【0116】
(1)キズの検出
下記の光学欠点検出方法により、250mm×250mmのフィルム片16枚について、光学的に50μm以上の大きさと認識される光学欠点を検出する。
【0117】
[光学欠点検出方法]
投光器として20W×2灯の蛍光灯をXYテーブル下方400mmに配置し、XYテーブル上に設けたスリット幅10mmのマスク上に測定対象の試験片を載置する。投光器と受光器を結ぶ線と、試験片表面の鉛直方向とのなす角度を12°となるよう光を入射すると、入射位置の試験片にキズが存在する場合に、その部分が光り輝く。その部分の光量をXYテーブル上方500mmに配置したCCDイメージセンサカメラで電気信号に変換し、その電気信号を増幅し、微分してスレッシュホールド(しきい値)レベルとコンパレータで比較して、光学欠点の検出信号を出力する。また、CCDイメージセンサカメラを用いて、キズの画像を入力し、入力された画像のビデオ信号を所定の手順により解析して、光学欠点の大きさを計測し、50μm以上の欠点の位置を表示する。光学欠点の検出は、試験片の両面について行う。
【0118】
(2)キズの大きさの測定
上記(1)において検出される光学欠点部分から、キズによる欠点を選出する。上記の試験片を適当な大きさに裁断し、マイクロマップ社製3次元形状測定装置TYPE550を用いて、試験片表面に対して垂直方向から観察し、キズの大きさを測定する。試験片、すなわちフィルムの表面に対して垂直方向から観察した時に、50μm以内に近接するキズの凹凸は同一のキズとして考え、それらのキズの最外部を覆う最小面積の長方形の長さおよび幅を、キズの長さおよび幅とする。そして、上記長方形の長さの方向が縦方向(光学用積層フィルム製造時の走行方向)から±45°以下であるキズを縦方向キズとし、そして横方向(縦方向の直交方向)から±45°未満であるキズを横方向キズとして、深さ(キズの最も高いところと最も低いところの高さの差)および長さを計測する。この結果より、深さ1μm以上且つ長さ3mm以上の縦方向キズ、横方向キズ、および全キズの個数(個/m2)を求める。
【0119】
(3)接着性
試料フィルムの接着性改質樹脂層面に、光硬化型アクリル系ハードコート剤[大日精化社製、セイカビームEXF01(B)]を#8ワイヤバーを用いて塗布する。その後、70℃で1分間乾燥し溶剤を除去し、次いで高圧水銀灯で200mJ/cm2、照射距離15cm、走行速度5m/分の条件下で、厚み3μmのハードコート層を形成させる。得られるハードコートフィルムをJIS−K5400の「8.5.1」の記載に準じた試験方法でハードコート層と試料フィルムの被覆層間の接着性を求める。具体的には、接着性改質樹脂層を貫通して基材フィルムに達する100個のマス目状の切り傷を、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて付ける。次いで、セロハン粘着テープ(ニチバン社製405番;24mm幅)をマス目状の切り傷面に張り付け、消しゴムでこすって完全に付着させた後、垂直に引き剥がし、その状況を目視により観察し、下記の式から接着性を求める。なお、1つのマス目中で部分的に剥がれているものがあれば、それも剥がれたマス目とする。
接着性(%)=(1−剥がれたマス目の個数/マス目の個数)×100
(4)耐湿密着性
上記(3)の方法で得たハードコートフィルムを、60℃、90RH%の雰囲気下に静置する。500時間経過後にフィルムを取り出し、23℃、60RH%の雰囲気下で12時間以上放置する。このフィルムについて、(3)と同じ方法の接着性評価試験を行って(3回)、(3)に記載の式により接着性を求め、耐湿密着性とする。
【0120】
(5)ヘーズ
JIS−K7105に準じ、ヘーズメーター(東京電色工業社製「モデルTC−H3DP」)を用いて測定する。
【0121】
(6)ポリエステルの固有粘度
フェノール60質量%と1,1,2,2−テトラクロロエタン40質量%の混合溶液にポリエステルを溶解し、30℃で常法により測定する。
【0122】
(7)元素分析
下記の方法により、ポリエステル中の各元素量を定量する。
【0123】
(a)Mgの分析
試料を白金ルツボにて灰化分解し、6mol/L塩酸を加えて蒸発乾固する。
これを1.2mol/L塩酸で溶解し、ICP発光分析(島津製作所製「ICPS−2000」)でMgを定量する。
【0124】
(b)Pの分析
試料を炭酸ソーダ共存下において乾式灰化分解するか、硫酸・硝酸・過塩素酸系または硫酸・過酸化水素水系において湿式分解し、リンを正リン酸とする。次いで、1mol/L硫酸溶液中においてモリブデン酸塩を反応させてリンモリブデン酸とし、これを硫酸ヒドラジンで還元して生じるヘテロポリ青の830nmの吸光度を吸光光度計(島津製作所製、UV−150−02)で測定して比色定量する。
【0125】
(c)Sbの分析
試料を硫酸・過酸化水素水系において湿式分解し、亜硝酸ナトリウムを加えてSb5+とし、ブリリアントグリーンを添加してSbとの青色の錯体を形成させ、トルエンで抽出し、625nmの吸光度を吸光光度計(島津製作所製、UV−150−02)で測定して比色定量する。
【0126】
(8)ポリエステルの溶融比抵抗値
275℃で溶融したポリエステル中に2本の電極(ステンレススチール針金)を置き、120Vの電圧を印加した時の電流(io)を測定し、下式によって比抵抗値Si(Ω・cm)を求める。
Si(Ω・cm)=(A/L)×(V/io)
ここで、Aは電極間面積(cm2)、Lは電極間距離(cm)、Vは電圧(V)である。
【0127】
(9)ポリエステルの色調
色差計(東京電色社製「モデルTC−1500MC−88」)を用い、L値およびb値を測定する。
【0128】
(10)LCDに組み込んだ際の光学欠点
下記の3種の方法により、LCDから観察される光学欠点を求めた。
【0129】
(a)NEC社製パーソナルコンピューター(VALUESTAR NX VC26/3XC)の液晶モニター(14.1インチ)を分解し、LCD裏面の導光板、レンズシート、光拡散板の順で組み込んである光源ユニット部分において、レンズシートと光拡散板との間に試料フィルム(後記の各積層フィルム)を組み込む。液晶モニターを再度組み上げた後、コンピューターの電源を入れ、画面を白くした状態で、LCD前面から目視によって観察される試料フィルムのキズに起因する光学欠点を測定し、下記の基準で評価する。なお、目視観察は試料フィルムを変えて5回行う。光学欠点が存在する場合には、その位置をマーキングし、試料フィルムの該当箇所にキズが存在するか否かを確認する。
○:5回とも試料フィルムのキズに起因する光学欠点が観察されない場合。
×:1回でも試料フィルムのキズに起因する光学欠点が観察される場合。
本評価法(a)は、光散乱板用フィルムのような光線が散乱されて観察される光学部材用フィルムベースにおける光学欠点を評価するものである。
【0130】
(b)NEC社製パーソナルコンピューター(VALUESTAR NX VC26/3XC)の電源を入れて液晶モニター(14.1インチ)の画面を白くした状態で、該液晶モニターのLCD前面に試料フィルムを置き、LCD前面から目視観察する以外は上記(a)法と同様にして、試料フィルムのキズに起因する光学欠点を評価する。
【0131】
本評価法(b)は、液晶保護フィルム、一般のハードコートフィルム、反射防止フィルム、近赤外線吸収フィルムなどといった透過光が直接観察される光学部材用ベースフィルムにおける光学欠点を評価するものである。
【0132】
(c)NEC社製パーソナルコンピューター(VALUESTAR NX VC26/3XC)の液晶モニター(14.1インチ)を分解し、LCD裏面の導光板、レンズシート、光拡散板の順で組み込んである光源ユニット部分において、導光板とレンズシートとの間に試料フィルムを組み込む。「AR/AG(防眩)フィルム−偏光板−視野角拡大フィルム−液晶セル−視野角拡大フィルム−偏光板−偏光利用度アップフィルム」の順で構成される液晶ユニットを組み込まずに、レンズシートが最表面となる状態でモニターを組み上げた後、コンピューターの電源を入れて該モニターの画面を白くした状態で、ディスプレイ前面から目視観察する以外は上記(a)法と同様にして、試料フィルムのキズに起因する光学欠点を評価する。
【0133】
本評価法(c)は、フィルム表面のキズが拡大投影されるレンズシートのベースフィルムとして使用した場合を想定したものである。
【0134】
実施例1
基材フィルムの原料に、固有粘度が0.62dl/gで、粒子を含有していないPETのペレットを用いた。このペレットを135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機に供給し、約280℃でフィルム状に溶融押出して、表面温度20℃に保った金属ロール上で急冷固化し、厚さ1400μmのキャストフィルムを得た。溶融時に、溶融樹脂の異物除去用濾材として濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)15μmのステンレススチール製焼結濾材を用いて精密濾過を行った。次に、上記キャストフィルムを加熱されたロール群および赤外線ヒーターを用いて100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向(走行方向)に3.5倍延伸して一軸配向フィルムを得た。
【0135】
なお、フィルム製造時に用いる全ロールに関し、ロールの表面粗度をRaで0.1μm以下に管理し、縦延伸工程の予熱入口と冷却ロールにロールクリーナーを設置した。縦延伸工程のロール径は150mmであり、サクションロール、静電密着、パートニップの密着装置を採用してフィルムをロールへ密着させた。
【0136】
また、接着性改質樹脂層用塗布液として、水60質量%とイソプロピルアルコール40質量%からなる混合溶媒に対して、共重合ポリエステル樹脂分散液(東洋紡績株式会社製「MD−1200」)を混合溶媒と樹脂分散液の総量100質量部に対し4質量部、コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックス20L」、平均SEM粒径:45nm)を固形分総量100質量部に対し5質量部となるよう配合し、分散混合したものを作製した。この分散混合液を濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)25μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材を用いて精密濾過し、リバースロール法で、上記一軸配向フィルムの片面に塗布した。
【0137】
塗布後引き続いて、フィルムの端部をクリップで把持して70℃に加熱された熱風ゾーンに導き、15秒乾燥後、幅方向(走行方向の垂直方向)に115℃で4.0倍に延伸し、次いで230℃で熱固定して、最終的な塗布量が0.25g/m2の接着性改質樹脂層を片面に有し、厚さが100μmの二軸延伸フィルムを得た。この二軸延伸フィルムの全幅の中央部分1.3mをトリミングしての積層フィルム1を得た。その評価結果を表1に示す。
【0138】
実施例2
下記以外の条件を実施例1と同様にして積層フィルム2を得た。その評価結果を表1に示す。
【0139】
フィルム製造時に用いる全ロールに対して、ロールの表面粗度をRaで0.1μm以下に管理したロールを用いず、ロールクリーナーの設置も行わなかった。さらに、縦延伸工程のロール径は300mmとし、サクションロール、静電密着、パートニップなどの密着設備も使用しなかった。
【0140】
また、キャストフィルムの厚さを1750μm、二軸延伸フィルムの厚さを125μmとした。フィルム製造工程におけるクリーン度については、ロール周りについてクラス100以下、キャスト工程で反ロール面を冷却するための送風冷却装置についてクラス100以下のクリーンエアを使用した。さらに、フィルム製造前に、ロールの研磨材を用いてロール表面の欠点を削り取る作業を行った。また、ロール間での空中冷却により、ロール上でのフィルムの温度変化を10℃以下に抑えた。さらに、ロール本数は縦延伸工程で12本として1本のロールでの温度変化を少なくした。
【0141】
実施例3
下記以外の条件を実施例1と同様にして積層フィルム3を得た。その評価結果を表1に示す。
【0142】
フィルム製造時に用いる全ロールに対して、ロールの表面粗度をRaで0.1μm以下に管理したロールを用いず、ロールクリーナーの設置も行わなかった。さらに、縦延伸工程のロール径は300mmとし、サクションロール、静電密着、パートニップなどの密着設備も使用しなかった。
【0143】
また、キャストフィルムの厚さを2632μm、二軸延伸フィルムの厚さを188μmとした。フィルム製造時の全工程において、フィルムの帯電量が±1500V以下になるよう除電装置を設けた。キャスト以降からテンター入口までの通過時間を4分とし、複数のロールの各ロール速度は、フィルムの温度や張力による変形量に対して最も近くなるよう速度プロファイルを設定し、フィルムの縦方向のずれを抑制した。接着性改質樹脂層用塗布液の塗布工程での乾燥条件は、ドライヤー区間の初期で乾燥を完了し、出口にかけて冷却するようにして、ドライヤー出口でのフィルム温度を29℃とした。また、フィルム走行時の張力を11.8MPaになるように、駆動ロールの速度調整と張力調整装置での調整を行った。
【0144】
実施例4
下記以外の条件を実施例1と同様にして積層フィルム4を得た。その評価結果を表1に示す。
【0145】
フィルム製造時に用いる全ロールに対して、ロールの表面粗度をRaで0.1μm以下に管理したロールを用いず、ロールクリーナーの設置も行わなかった。さらに、縦延伸工程のロール径は300mmとし、サクションロール、静電密着、パートニップなどの密着設備も使用しなかった。
【0146】
また、基材を形成するための溶融樹脂の異物除去用濾材として、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)10μmのステンレススチール製焼結濾材を用い、二軸延伸フィルムの厚さを125μmとした。また、フィルム製造工程におけるすべてのロールを、エアフローティングタイプのロールとすることにより、フィルム表面にロール表面の欠点が直接接触しない構造とした。一軸延伸後のフィルムのX軸方向の屈折率差(ΔNx)が0.055となるよう延伸条件を選んだ。ロールとフィルム間の静摩擦係数が、65℃で0.42となるロールを用いた。また、フリーロールについては特殊ベアリングを採用して2.9Nの回転トルクとし、駆動ロールについては回転斑を0.008%以下に制御した。フィルムの幅方向の端部側におけるフィルム表面を突起付きのローラで押圧して、そのフィルム表面に凹凸部を形成するとともに、該凹凸部が形成されたフィルムを巻取り機構でロール状に巻き取るよう構成した。上記突起付きのローラにおける突起は、先窄まり状に形成し、該突起の頂部に丸みをつけ、その頂面の曲率半径を0.3mmとすることで、フィルムの巻取り時にフィルムとロール表面の欠点とが接触しないようにした。
【0149】
実施例5
下記以外の条件を実施例1と同様にして積層フィルム5を得た。その評価結果を表1に示す。
【0150】
基材フィルムの原料に、固有粘度が0.65dl/gで、粒子を含有していないPENのペレットを用い、押出温度を300℃に、縦延伸温度を145℃に、横延伸温度を160℃に、熱固定温度を260℃に夫々変更した。
【0151】
実施例6
下記以外の条件を実施例1と同様にして積層フィルム6を得た。その評価結果を表1に示す。
【0152】
押出工程において、最高温度を270℃に、平均滞留時間を3.5分にすることで、PET中のオリゴマーの生成を抑制した。製膜後のフィルム表面のオリゴマー析出量は110ppmであった。また、フィルム製造時に用いる全ロールについて、ロールの表面粗度をRaで0.1μm以下に管理したロールを用いず、ロールクリーナーの設置も行わなかった。さらに、縦延伸工程のロール径は300mmとし、サクションロール、静電密着、パートニップなどの密着設備も使用しなかった。縦延伸前の予熱工程の最終ロールまではロール上に水膜を形成し、ロール表面がフィルム面に直接接触しない構造とした。また、縦延伸後の冷却工程において、縦延伸直後にフィルムを水槽中に浸漬して冷却し、以降のロール上での温度変化を最大で9℃とした。
【0153】
比較例1
下記以外の条件を実施例1と同様にして積層フィルム7を得た。その評価結果を表1に示す。
【0154】
フィルム製造時に用いる全ロールについて、ロールの表面粗度をRaで0.1μm以下に管理せず、ロールクリーナーの設置も行わなかった。さらに、縦延伸工程のロール径は300mmとし、サクションロール、静電密着、パートニップなどの密着設備も使用しなかった。
【0155】
比較例2
下記以外の条件を実施例2と同様にして積層フィルム8を得た。その評価結果を表1に示す。
【0156】
フィルム製造工程におけるクリーン度をクラス5000とし、フィルム製造前に、ロールの研磨材を用いてロール表面の欠点を削り取る作業を行なわなかった。さらに、ロール上でのフィルムの温度変化は最大で50℃とし、ロール本数は縦延伸工程で8本とした。
【0157】
比較例3
下記以外の条件を実施例3と同様にして積層フィルム9を得た。その評価結果を表1に示す。
【0158】
縦延伸前の予熱ロールの速度を、5本のロールに対して全体で3.5%のドラフトを生じるように設定した。さらに、塗布工程における出口のフィルム温度を63℃とし、走行時の張力を4.9MPaになるように駆動ロールの速度を設定した。
【0159】
比較例4
固有粘度が0.65dg/lで水分率が30ppmの、粒子を含有していないPETのペレットを、250℃で溶融押出し、表面温度が40℃の冷却ロール上でフィルムに成形後、長手方向に93℃で2.8倍延伸して、一軸縦延伸フィルムとした。この上に、界面活性剤(互応化学社製、プラスコートRY−2)を0.02質量%添加した水溶性共重合ポリエステル樹脂を片面に塗布、乾燥した。
【0160】
次いで、幅方向に115℃で3倍に延伸し、テンターより出たフィルムを、幅方向延伸機のクリップに対しドロー1.015のハードクロムメッキロール、シリコンゴム製のニップロールからなる張力カットロール間で均一にドローをかけ、5本のハードクロムメッキロールを通過させた後、ワインダーで巻き取って厚さ188μmの積層フィルム10を得た。なお、塗布層表面をエチルアルコールで洗浄し、界面活性剤を定量したところ、0.001g/10m2であった。本比較例4は、特開平9−183201号公報の実施例1に相当する実験例である。この評価結果を表1に示す。
【0161】
実施例8
[基材フィルム用PETの製造]
エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、テレフタル酸が86.4質量部およびエチレングリコールが64.4質量部からなるスラリーを仕込み、撹拌しながら、触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部およびトリエチルアミンを0.16質量部添加した。次いで加熱昇温を行い、ゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った。
【0162】
その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、酢酸マグネシウム4水和物0.071質量部、次いでリン酸トリメチル0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部、次いで酢酸ナトリウム0.0036質量部を添加した。得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、減圧下で260℃から280℃へ徐々に昇温し、285℃で重縮合反応を行った。重縮合反応終了後、孔径5μm(初期濾過効率95%)のナイロン製フィルターで濾過処理を行った。
【0163】
次に、空気中に存在する径が1μm以上の異物を、ヘパフィルターで減少させた密閉室内で、上記重縮合反応生成物であるPETをペレット化した。ペレット化は、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を流しながら、冷却水槽中に溶融PETを押出機のノズルから押出し、形成されたストランド状PETをカットする方法で行った。得られたPETのペレットは、固有粘度が0.62dl/g、Sb含有量が144ppm、Mg含有量が58ppm、P含有量が40ppm、カラーL値が56.2、カラーb値が1.6、275℃での溶融比抵抗値が0.23×108Ω・cmであり、不活性粒子および内部析出粒子は実質的に存在していなかった。
【0164】
[積層フィルムの製造]
上記の基材フィルム用PETペレットを135℃で6時間減圧乾燥(133Pa)した後、押出機に供給し、約280℃でシート状に溶融押出して、表面温度20℃に保った金属ロール上で急冷し、静電気を印加しながら密着固化させ、厚さ1400μmのキャストフィルムを得た。この際、溶融PETの異物除去用濾材として濾過可能な粒子サイズが15μm(初期濾過効率:95%)のステンレススチール製焼結濾材を用いて精密濾過を行った。
【0165】
このキャストフィルムを、加熱したロール群および赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して一軸配向フィルムを得た。なお、全工程でのロールの表面粗度をRaで0.1μm以下に管理し、縦延伸工程の予熱入口と冷却ロールにロールクリーナーを設置した。縦延伸工程のロール径は150mm、サクションロール、静電密着、パートニップの密着装置を採用してフィルムをロールへ密着させた。
【0166】
他方、接着性改質樹脂層用塗布液として、水60質量%とイソプロピルアルコール40質量%からなる混合溶媒に、共重合ポリエステル樹脂分散液(東洋紡績株式会社製「MD−1200」)を混合溶媒と共重合ポリエステル樹脂の総量100質量部に対して4質量部、コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスOL」、平均SEM粒径:40nm)を固形分総量100質量部に対して5質量部となるように配合し、分散混合した塗布液を作製した。
【0167】
その後、上記塗布液を、濾過可能な粒子サイズ25μm(初期濾過効率:95%)のフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、次いでリバースロール法によって、上記一軸配向フィルムの片面に塗布後、乾燥した。この際の塗布量は、0.20g/m2であった。その後、フィルムの端部をクリップで把持して130℃に加熱された熱風ゾーンに導いて乾燥した後、幅方向に4.0倍に延伸し、厚さ100μmのフィルムを得た。さらに全幅の中央部1.5mをトリミングして、積層フィルム11を得た。積層フィルムの接着性改質樹脂層面とアクリル系ハードコート層との接着性は15%であり、耐湿密着性は0%であった。しかしながら、透明導電性フィルムや近赤外線吸収フィルムなどの金属酸化物薄膜や、ポリエステル樹脂をバインダー成分とする樹脂層との接着性を確認したところ、良好であった。その他の結果は表1に示す。
【0168】
実施例9
接着性改質樹脂層用塗布液を下記の塗布液に変更する以外は、実施例7と同様にして、被覆フィルム12を得た。
【0169】
ジメチルテレフタレート95質量部、ジメチルイソフタレート95質量部、エチレングリコール35質量部、ネオペンチルグリコール145質量部、酢酸亜鉛0.1質量部および三酸化アンチモン0.1質量部を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。
【0170】
次に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6.0質量部を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、250℃で減圧下(13.3〜0.26hPa)で2時間かけて重縮合反応を行い、分子量19500、軟化点60℃の共重合ポリエステル樹脂(A)を得た。
【0171】
得られた共重合ポリエステル樹脂(A)の30質量%の水分散液6.7質量部、重亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン樹脂(B)の20質量%の水溶液(第一工業製薬製「エラストロンH−3」)40質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製「Cat64」)0.5質量部、水44.3質量部およびイソプロピルアルコール5質量部、を混合し、さらにアニオン性界面活性剤の10質量%の水溶液を0.6質量部、粒子(C)(日産化学工業株式会社製「スノーテックスOL」、平均SEM粒径40nm)の20質量%の水分散液を1.8質量部、粒子(D)(日本アエロジル社製「アエロジル50」、平均SEM粒径:200nm)の4%水分散液を1.1質量部添加し塗布液とした。
【0172】
得られた積層フィルム12の接着性改質樹脂層面と、アクリル系ハードコート層との接着性は100%と良好であったが、耐湿密着性は40%であった。その他の結果は表1に示す。
【0173】
実施例10
接着性改質樹脂層用塗布液を下記の塗布液に変更する以外は、実施例7と同様にして、積層フィルム13を得た。
【0174】
(i)共重合ポリエステル樹脂の調製
撹拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備したステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート163質量部、ジメチルイソフタレート163質量部、1,4ブタンジオール169質量部、エチレングリコール324質量部、およびテトラ−n−ブチルチタネート0.5質量部を仕込み、160℃から220℃まで、4時間かけてエステル交換反応を行った。
【0175】
次いで、フマル酸14質量部およびセバシン酸203質量部を加え、200℃から220℃まで1時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。次いで、255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、29Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂は、淡黄色透明であった。
【0176】
(ii)グラフト樹脂の製造
撹拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に、上記(i)の共重合ポリエステル樹脂75質量部、メチルエチルケトン56質量部およびイソプロピルアルコール19質量部を入れ、65℃で加熱、撹拌し、樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、無水マレイン酸15質量部をポリエステル溶液に添加した。
【0177】
次いで、スチレン10質量部、およびアゾビスジメチルバレロニトリル1.5質量部をメチルエチルケトン12質量部に溶解した溶液を、0.1ml/分で共重合ポリエステル溶液中に滴下し、さらに2時間撹拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリングを行った後、メタノール5質量部を添加した。次いで、水300質量部とトリエチルアミン15質量部を反応溶液に加え、1時間撹拌した。
【0178】
その後、反応器内の温度を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のトリエチルアミンを蒸留により留去し、水分散性グラフト重合樹脂を得た。この水分散性グラフト樹脂は淡黄色透明であり、その酸価は1400eq/tであった。
【0179】
(iii)塗布液の調整
上記(ii)の水分散性グラフト樹脂の25質量%水分散液40質量部、水24質量部およびイソプロピルアルコール36質量部をそれぞれ混合し、さらにプロピオン酸およびアニオン系界面活性剤を夫々塗布液に対し1質量%、コロイダルシリカ微粒子(日産化学工業株式会社製「スノーテックスOL」、平均SEM粒径:40nm)の水分散液を樹脂固形分に対しシリカ換算で5質量%添加して塗布液とした。
【0180】
得られた積層フィルム13の接着性改質樹脂層面と、アクリル系ハードコート層との接着性および耐湿密着性は、いずれも100%と良好であった。その他の結果は表1に示す。
【0181】
【表1】
【0182】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されており、接着性改質樹脂層を設けることで、他の部材などとの接着性を向上させ、且つ表面に存在する特定サイズ以上のキズの発生を抑制することで、該キズに起因する光学欠点を低減した光学用積層フィルムを提供することができた。本発明の光学用積層フィルムは、その優れた特性から、液晶ディスプレイに用いるプリズムシート、反射防止フィルムやハードコートフィルム、光拡散板などのベースフィルム、プラズマディスプレイの前面板に使用する近赤外線吸収フィルムや電磁波吸収フィルムのベースフィルム、タッチパネルやエレクトロルミネッセンス用の透明導電性フィルムのベースフィルム、陰極線管の破砕防止フィルムなどに好適である。
Claims (11)
- 逐次二軸延伸された厚さ50μm以上の二軸配向ポリエステルフィルムを基材とし、該基材の少なくとも片面に接着性改質樹脂層を形成した積層フィルムであって、
下記測定法により検出される表面に存在する深さ1μm以上、長さ3mm以上の全キズが100個/m2以下であることを特徴とする光学用積層フィルム。
(1)キズの検出
下記の光学欠点検出方法により、250mm×250mmのフィルム片16枚について、光学的に50μm以上の大きさと認識される光学欠点を検出する。
[光学欠点検出方法]
投光器として20W×2灯の蛍光灯をXYテーブル下方400mmに配置し、XYテーブル上に設けたスリット幅10mmのマスク上に測定対象の試験片を載置する。投光器と受光器を結ぶ線と、試験片表面の鉛直方向とのなす角度を12°となるよう光を入射すると、入射位置の試験片にキズが存在する場合に、その部分が光り輝く。その部分の光量をXYテーブル上方500mmに配置したCCDイメージセンサカメラで電気信号に変換し、その電気信号を増幅し、微分してスレッシュホールド(しきい値)レベルとコンパレータで比較して、光学欠点の検出信号を出力する。また、CCDイメージセンサカメラを用いて、キズの画像を入力し、入力された画像のビデオ信号を所定の手順により解析して、光学欠点の大きさを計測し、50μm以上の欠点の位置を表示する。光学欠点の検出は、試験片の両面について行う。
(2)キズの大きさの測定
上記(1)において検出される光学欠点部分から、キズによる欠点を選出する。上記の試験片を適当な大きさに裁断し、マイクロマップ社製3次元形状測定装置TYPE550を用いて、試験片表面に対して垂直方向から観察し、キズの大きさを測定する。試験片、すなわちフィルムの表面に対して垂直方向から観察した時に、50μm以内に近接するキズの凹凸は同一のキズとして考え、それらのキズの最外部を覆う最小面積の長方形の長さおよび幅を、キズの長さおよび幅とする。そして、上記長方形の長さの方向が縦方向(光学用積層フィルム製造時の走行方向)から±45°以下であるキズを縦方向キズとし、そして横方向(縦方向の直交方向)から±45°未満であるキズを横方向キズとして、深さ(キズの最も高いところと最も低いところの高さの差)および長さを計測する。この結果より、深さ1μm以上且つ長さ3mm以上の縦方向キズ、横方向キズ、および全キズの個数(個/m 2 )を求める。 - 上記縦方向キズが50個/m2以下である請求項1に記載の光学用積層フィルム。
- 上記横方向キズが50個/m2以下である請求項1に記載の光学用積層フィルム。
- 上記全キズが30個/m2以下である請求項1に記載の光学用積層フィルム。
- 上記全キズが10個/m2以下である請求項1に記載の光学用積層フィルム。
- ヘーズが1.0%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の光学用積層フィルム。
- 上記基材中に実質的に粒子を存在させずに、上記接着性改質樹脂層のみに粒子を含有させてなる請求項1〜6のいずれかに記載の光学用積層フィルム。
- 上記基材を構成する樹脂はポリエステル樹脂であり、該ポリエステル樹脂には、マグネシウム化合物がマグネシウム原子換算で40〜70ppm、およびリン化合物がリン原子換算で10〜55ppm含有されており、且つ該ポリエステル樹脂の275℃における溶融比抵抗値は、0.45×108Ω・cm以下である請求項1〜7のいずれかに記載の光学用積層フィルム。
- 上記基材を構成するポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートを主成分とするものである請求項1〜8のいずれかに記載の光学用積層フィルム。
- 上記接着性改質樹脂層を構成する樹脂は、共重合ポリエステル樹脂、ポリウレタン系樹脂、およびアクリル系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を主成分とするものである請求項1〜9のいずれかに記載の光学用積層フィルム。
- 接着性改質樹脂層に含まれる上記粒子は、シリカである請求項7〜10のいずれかに記載の光学用積層フィルム。
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