JP4749548B2 - インテイン媒介ペプチド連結 - Google Patents

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Description

【0001】
(発明の背景)
遺伝子工学は、タンパク質の操作のための有効なアプローチである。しかしながら、遺伝的な方法は、天然でコードされるアミノ酸の使用により制限される。さらに、細胞毒性タンパク質を、生きた起源からの発現および単離により得ることは困難である。なぜなら、該毒性タンパク質の発現は該宿主の死をもたらしうるからである。
【0002】
これらの問題を克服するためのプロトコールは、ある程度は開発されている。それらには、例えば、全合成(Kent, S.B. (1988) Ann. Rev. Biochem. 57:957-989)、ミスアシル化tRNAの使用(Norenら, (1989) Science 244:182-188)、および半合成技術(Offord, R. (1987) Protein Eng. 1:151-157; Royら, (1994) Methods in Enzymol. 231:194-215; Wallance, C.J. (1993) FASEB 7:505-515に概説されている)が挙げられる。しかしながら、これらの方法はすべて、産生されうる断片のサイズまたは低い反応収率により制限される。
【0003】
したがって、融合断片のサイズに関する制限を伴うことなく、発現されたタンパク質への合成タンパク質またはペプチド断片のインビトロ融合を可能にする高収率の半合成技術を開発することが望ましいであろう。
【0004】
同様に、細胞毒性タンパク質を産生させるためには、宿主から産生された後のタンパク質活性が回復されるように不活性な発現タンパク質にインビトロで合成断片を融合させる方法を開発することが望ましいであろう。
【0005】
連結用にチオエステルタグ付きタンパク質を産生させるために修飾Sce VMAインテインが使用されている(1997年6月16日付け出願の米国特許出願第08/811,492号の実施例19; Chong, (1996) J. Biol. Chem., 271(36):22159-22168; Chong, (1997) Gene, 192:271-281; およびMuirら (1998) Proc. Natl. Acad. Sci USA 95:6705-6710)。
【0006】
いくつかの欠点としては、連結に最適なチオール-試薬でのSce VMAインテインの切断が乏しいことによる低い収率、カラム上での反応のために大量のペプチドが必要なこと、臭気性試薬の使用、および/または大きな真核性インテインの使用による低いタンパク質収率が挙げられる。
【0007】
(発明の概要)
本発明によれば、タンパク質スプライシング要素(インテイン)に融合した標的タンパク質を産生させ該融合体を選択的に切断し該標的タンパク質のC末端チオエステルにおいて合成タンパク質またはペプチドを連結する工程を含んでなる、半合成融合タンパク質のインビトロ製造方法が提供される。これは、前記の欠点および問題の多くを克服するものである。特に、本発明においては、連結反応に対して最適化されたチオール試薬により、より良好なチオール誘導性切断(すなわち、チオールにより誘導される切断)が生じるため、より高い収率がをもたらされる。オフカラム(off-column; カラム外)連結は、サンプルの濃縮およびペプチド使用量の減少を可能にする。特に好ましい実施形態においては、無臭性チオール試薬である2-メルカプトエタンスルホン酸(MESNA)などのチオール試薬を、より良好に細菌細胞内でしばしば発現される、細菌に由来するMxeインテインと共に、切断および連結に使用する。さらに、本発明は、ペプチドが、インテインと該標的タンパク質との間で形成されるチオエステル結合に直接連結されるのを可能にする。本発明はまた、細胞毒性タンパク質の製造方法であって、タンパク質スプライシング要素に融合した該タンパク質のトランケート化不活性形態をインビボで産生させ、該融合体を選択的に切断し、該標的タンパク質のC末端チオエステルにおいて合成タンパク質またはペプチドを連結して、該天然細胞毒性タンパク質の活性を回復させる工程を含んでなる製造方法を提供する。そのような切断可能な融合タンパク質を製造するための組換えベクターも提供する。
【0008】
(図面の簡単な記載)
図1は、インテイン媒介ペプチド連結を可能にする化学反応を示す流れ図である。IMPACT(商標)での精製中に該標的タンパク質のC末端において産生されるチオエステルを、「天然化学連結」反応において使用した。これは、細菌により発現されたタンパク質(細菌発現タンパク質)に対する合成ペプチドの連結を可能にした。典型的な連結反応は、該標的タンパク質-インテイン-CBD融合体の発現、およびそれに続くキチン樹脂への結合を含むものであった。チオール試薬は、該インテインの切断を誘導した。該標的を該キチン樹脂から溶出し、合成ペプチドを加えた。該連結反応を一晩進行させた。
【0009】
図2は、種々のチオールを使用する切断および連結反応の結果を示すゲルである。種々のチオールでの切断および連結反応が10〜20% トリシンゲル上で可視化された。MYB [マルトース結合タンパク質-Sce VMAインテイン(N454A)-キチン結合ドメインの融合タンパク質]およびMXB [マルトース結合タンパク質-Mxe GyrA(N198A)インテイン-キチン結合ドメインの融合タンパク質]を、150mM Tris、100mM NaCl(pH8)中、N末端システインを有する30アミノ酸のペプチドの存在下、種々のチオール(50mM)と共に4℃で一晩インキュベートした。該ペプチドはMBPのC末端に連結される。レーン1〜5:MYBとの連結。レーン1:チオール無し。レーン2:ジチオトレイトール。レーン3:2-メルカプトエタンスルホン酸。レーン4:3-メルカプトプロピオン酸。レーン5:チオフェノール。レーン6〜10:MXBとの連結。レーン6:チオール無し。レーン7:ジチオトレイトール。レーン8:2-メルカプトエタンスルホン酸。レーン9:3-メルカプトプロピオン酸。レーン10:チオフェノール。
【0010】
図3は、Sce VMAインテインとマルトース結合タンパク質との間で形成されたチオエステルへのペプチドの直接連結を示すゲルである。10〜20%トリシンゲルでの直接連結反応のSDS-PAGE。レーン1:マルトース結合タンパク質-Sce VMA1インテイン-キチン結合ドメインよりなる前駆体タンパク質(MYBleu)を、100mM NaCl、1%SDSおよびmMトリス-(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含有する50mMトリズマ塩基(pH 8.5)のバッファー中、>95℃に5分間加熱し、ついで室温で一晩インキュベートした。切断産物であるSce VMA1インテイン(Y)およびマルトース結合タンパク質(M)と共に、該前駆体(MYBleu)が可視化されている。レーン2:該30アミノ酸ペプチド(1mM)を加えること以外はレーン1に記載のものと同じ条件に、該前駆体タンパク質を付した。該30アミノ酸ペプチドがマルトース結合タンパク質に融合した際に形成された連結産物(M+30マー)と共に、該前駆体(MYB)および切断産物(YおよびM)が可視化されている。
【0011】
図4は、実施例1のpTXB1発現ベクター(配列番号7および配列番号8)を示す図である。
【0012】
図5は、pTXB1のDNA配列(配列番号5)である。
【0013】
図6は、HpaIタンパク質連結反応の結果を示すゲルである。タンパク質連結反応を10〜20%トリシンゲル上で調べた。レーン1:pTXB2-HpaIプラスミドを含有するER2566細胞のIPTG(0.5mM)誘導後の清澄化細胞抽出物。HpaI223-Mxe GyrA-インテイン-CBD(52kDa)の融合タンパク質が可視化されている。レーン2:キチンカラムに通過させて該融合タンパク質の結合を引き起こした後のレーン1と同様の細胞抽出物。レーン3:MESNAの添加により該融合タンパク質から切断した後のHpaI223(25.7kDa)。レーン4:1mMの31アミノ酸ペプチド(連結産物29.6kDa)(これは、4℃で一晩のインキュベーションの後の完全長HpaIの産生に必要な残基に相当する)およびHpaI223(0.2mg/mL)の連結産物。レーン5:2つの不純物およびBSA(66kDa)を含有する組換え起源(29.6kDa)からの完全長HpaI。
【0014】
図7は、ビオチン化ペプチドに連結した種々のタンパク質のウエスタンブロットである。Mex GyrA IMPACT(商標)誘導体で精製したタンパク質を、抗体認識配列を含有する合成ペプチドに連結した。
【0015】
(発明の詳細な記載)
本発明の連結方法は、システインまたはN末端システイン含有ペプチド断片が、インテインのチオール誘導性切断により産生された細菌発現タンパク質にインビトロで融合されうるという知見に基づく(米国特許第5,496,714号; 1997年6月16に出願された米国特許出願第08/811,492号の実施例19; Chongら, (1996) 前掲、およびChongら, (1997) 前掲)。
【0016】
本明細書に開示する連結方法は、発現されたタンパク質のC末端α-炭素においてチオエステルを適切に産生させるためにタンパク質スプライシング要素インテイン(Perlerら, (1994) Nucleic Acids Res. 22:1125-1127)を利用するものである。この反応性チオエステルは、標的タンパク質とインテインとの間に存在しうるか、またはチオール試薬の添加により産生されうるであろう。これまでに、そのようなチオエステルの産生としては、チオール試薬ジチオトレイトール(DTT)の存在下でN末端結合部においてチオール誘導性切断を受けるように修飾されたインテイン(CIVPS)を使用するものが記載されている(Chongら (1997) 前掲; Combら 米国特許第5,496,714号)。このC末端チオエステルは、細菌発現タンパク質に35S-システインまたはN末端システイン含有ペプチド断片を融合させるために「天然化学連結」型反応(Dawsonら, (1994) Science 266:776-779)において既に使用されている(実施例19, Combら 米国特許第5,834,247号, Chong (1996) 前掲およびChong (1997) 前掲)。
【0017】
本発明の連結方法は、記載されているとおりに(Chongら (1997) 前掲)インテインを使用してチオエステルタグ付き標的タンパク質を精製することから開始する。本発明の直接連結方法は、標的タンパク質-インテイン-CBDを含む前駆体の単離から開始する。1つの好ましい実施形態においては、宿主細胞は細菌である。他の実施形態においては、宿主細胞は酵母、昆虫または哺乳類細胞でありうる。合成ペプチドのN末端のシステインチオールは、該標的タンパク質の新たに単離されたC末端α-炭素上に存在するチオエステルを求核的に攻撃するか、あるいは該標的タンパク質とインテインとの間に存在するチオエステルを直接的に攻撃する。これはまず、それらの2つの反応物の間でチオエステルを生成し、それは自発的に転移して天然ペプチド結合を与える(図1)。
【0018】
細菌発現標的タンパク質の90%以上が該合成ペプチドまたはタンパク質に融合されうるように連結効率を最適化するために、特異的なチオール試薬およびインテインをスクリーニングする。好ましい実施形態においては、該インテインは任意のCIVPS、例えばSce VMA、Mxe GyrAまたはそれらの突然変異体の誘導体であってもよく、該チオール試薬は2-メルカプト-エタンスルホン酸、チオフェノール、DTTまたは3-メルカプトプロピオン酸である(Combら, 米国特許第5,496,714号; 米国特許第5,834,247号)。
【0019】
1つの特に好ましい実施形態においては、突然変異により阻止されたタンパク質スプライシング活性を有するインテインを使用する。しかしながら、該突然変異体は、それ自身とN末端タンパク質との間でチオエステルの形成が可能となるようにN-Sシフトを受ける能力を保有していなければならない。ついでこのチオエステルは、チオール試薬により又はペプチド配列のN末端システインにより求核的に攻撃されうる。例えば、マイコバクテリウム・ゼノピ(Mycobacterium xenopi)のGyrA遺伝子(Telentiら, (1997) J Bacteriol 179:6378-6382)由来のインテインのC末端アスパラギン(asn 198)をアラニンに突然変異させることにより、チオール誘導性切断要素が産生された。この修飾インテインは、該連結反応に最適なチオール試薬(例えば、MESNAおよびチオフェノール)で良好に切断された。さらに、関心のあるインテインを含有する前駆体タンパク質を多種多様なチオール試薬と共にインキュベートし、ついで該前駆体タンパク質の切断の度合を測定することにより、最適なチオール試薬およびインテインの組合せを決定することができる(図2)。
【0020】
そのようなインテインおよび特異的チオール試薬の使用は、最適な収率および高い連結効率をもたらす。典型的には、該N末端連結断片の90%以上を突然変異させることができる。
【0021】
本発明の連結方法により、蛍光プローブ、スピン標識、アフィニティータグ、放射能標識または抗原決定基を有する合成ペプチド断片を産生させ、修飾インテインの使用により単離され、インビボで発現されたタンパク質にこれを連結することにより、非コードアミノ酸を大きなタンパク質内に取り込ませ得る可能性が増大する。
【0022】
さらに、この方法は、宿主源(例えば、細菌)から不活性トランケート化前駆体を精製し、合成ペプチドの連結後に活性タンパク質または酵素を産生させることにより、細胞毒性タンパク質の単離を可能にする。例えば、これまで通常の方法ではうまくクローニングされなかった制限エンドヌクレアーゼを、本発明に従い産生させることができる。
【0023】
また、該直接的連結方法は、外的なチオール試薬を使用することなくタンパク質またはペプチド配列を別のタンパク質またはペプチド配列に連結することを可能にする。直接的連結は、標的タンパク質とインテインとの間で形成されたチオエステルを1つのペプチドのN末端アミノ酸が求核攻撃することに基づくものである(図3)。
【0024】
要約すると、現在では遺伝的に産生させることができない独特の特性を有する融合タンパク質を、本発明の方法を用いて産生させることができる。
【0025】
以下に記載する実施例は、本発明の特定の好ましい実施形態として意図されるにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、本明細書に開示の方法の修飾および変形を含み、それらは当業者に明らかであろう。
【0026】
前記および後記で引用されている参照文献を、参照により本明細書に組み入れることとする。
【0027】
実施例 I
連結用のベクターpTXB1およびpTXB2の作製
pmxeMIPTyrXmnSPdelのXmnIおよびPstI部位内へのリンカーの挿入により、Mxe GyrAインテイン(Telentiら, (1997) J Bacteriol. 179:6378-6382)のアスパラギン198をアラニンに突然変異させて、pMXP1を得た。まず、サイレント突然変異誘発により、非修飾Mxe GyrAインテイン配列内にXmnI部位を導入した。該PstI部位は該プラスミド中のユニーク部位であった。該リンカーは、mxe#3(5'-GGTTCGTCAGCCACGCTACTGGCCTCACCGGTTGATAGCTGCA-3')(配列番号1)およびmxe#4(5'-GCTATCAACCGGTGAGGCCAGTAGCGTGGCTGACGAACC-3')(配列番号2)を含んでいた。
【0028】
mxe#1(5'-TCGAATCTAGACATATGGCCATGGGTGGCGGCCGCCTCGAGGGCTCTTCCTGCATCACGGG AGATGCA-3')(配列番号3)およびmxe#2(5'-CTAGTGCATCTCCCGTGATGCAGGA AGAGCCCTCGAGGCGHGCCGCCACCCATGGCCATATGTCTAGAT-3')(配列番号4)を含むもう1つのリンカーをpMXP1のXhoIおよびSpeI部位内に挿入して、Mxe GyrAインテイン(pMXP2)の前にマルチクローニング部位(XbaI-NdeI-NcoI-NotI-XhoI-SapI)を導入した。
【0029】
pMXP2の0.6キロベースのNotI-AgeI断片をpTYB1(IMPACTキット, New England Biolabs, Beverly, MA)内の同じ部位内に連結し、pMXP2のNcoI-AgeI断片をpTYB3(IMPACTキット, New England Biolabs, Beverly, MA)内にクローニングして、それぞれプラスミドpTXB1(図4および5を参照されたい)(配列番号5)およびpTXB2を作製した。これらのベクターは、該修飾Mxe GyrAインテイン-キチン結合ドメイン融合体の上流にマルチクローニング部位を有する。これにより、関心のある標的遺伝子のインフレームにインテインおよびキチン結合ドメイン(CBD)の挿入が可能になる。
【0030】
連結用のベクターpMYBleuの作製
pMYBleuは、Chongら, (1998), J. Biol. Chem. 273:10567-10577に記載されているとおりであった。このベクターは、Sce VMAインテイン-キチン結合ドメインの上流のマルトース結合タンパク質よりなるものであった。-1位には天然残基(これはグリシンである)の代わりにロイシンが存在する。
【0031】
チオエステルタグ付きタンパク質の精製
若干の修飾を有するSce VMAインテイン(Chongら, (1997) Gene 192:271-281)を使用して、記載されているとおりにタンパク質の精製を行った。適当なインサートを有するpTXBベクターを含有するER2566細胞(New England Biolabs, Beverly, MAからのIMPACT T7取扱いマニュアル)を、37℃で0.5〜0.6のOD600まで増殖させ、その時点で、それらを0.5mM IPTGで15℃で一晩誘導した。細胞を遠心分離により回収し、超音波処理により細胞溶解した(氷上で行った)。バッファーA(50mM Tris, pH 7.4および500mM NaCl)中で平衡化した該三成分融合タンパク質をキチンビーズ(10mLベッド容積、図6のレーン1および2)に結合させ、10カラム容積のバッファーAで洗浄して未結合物質を除去した。
【0032】
50mM 2-メルカプトエタンスルホン酸(MESNA)、50mM Tris(pH 8.0)および100mM NaClのバッファーを使用して切断を開始した。また、他の場合には、チオフェノール、ジチオトレイトールおよび/または3-メルカプトプロピオン酸などの他のチオール試薬を使用した。4〜25℃で一晩のインキュベーションの後、タンパク質を該カラムから溶出した(図6のレーン3)。このタンパク質はC末端にチオエステルを含有していた。
【0033】
MYB. MYBleuおよびMXBの精製:
マルトース結合タンパク質-Sce VMAインテイン(N454A)-キチン結合ドメイン(MYB)とマルトース結合タンパク質-Mxe GyrA(N198A)インテイン-キチン結合ドメイン(MXB)とよりなる完全長前駆体タンパク質を、前記のとおりの誘導および超音波処理の後に、該超音波処理サンプルをアミロース樹脂(New England Biolabs, Beverly, MA)の10mLカラムにアプライすることにより精製した。未結合タンパク質を10カラム容積のバッファーAで該カラムから洗浄した(チオエステルタグ付きタンパク質の精製を参照されたい)。結合タンパク質を、100mM NaClおよび10mMマルトースを含有する50mM Tris(pH 8)のバッファーで溶出した。画分を集め、Bio-Rad Protein Assay(Hercules, CA)を使用してタンパク質濃度を測定した。
【0034】
ペプチド合成:
後続の連結反応用のペプチドを、0.085mmolのスケールでFastMoc(商標)化学(Fieldsら, (1991) Pept Res 4, 95-101)を用いてABIモデル433Aペプチド合成装置上で合成した。0.5mmol/gで官能基化され予めローディングされたHMP(p-ヒドロキシメチルフェノキシメチル)ポリスチレン樹脂(Applied Biosystems, Foster City, CA)を、HBTUアミノ酸活性化(Dourtoglouら, (1984) Synthesis 572-574; Knorrら, (1989) Tetrahedron Lett 30, 1927-1930)を用いるFmoc/NMP化学と共に用いた。Fmocアミノ酸はApplied Biosystems(Foster City, CA)から購入した。
【0035】
各サイクル中で単一のカップリングで合成を進行させた。該樹脂からのペプチドの切断およびそれと同時の側鎖保護基の除去を、0.75gのフェノール、0.25mLの1,2-エタンジチオール、0.5mLの脱イオン水および10mLのTFAよりなる切断混合物(Perkin Elmer, Norwalk, CT)の添加により促進させた。該樹脂に窒素を流し、それを穏やかに室温で3時間攪拌した。濾過および冷(0℃)メチル-t-ブチルエーテル中への沈殿の後、該エーテル画分中の沈殿物を遠心分離により集めた。該ペプチド沈殿物を真空乾燥させ、Perceptive Biosystems(Framingham, MA)MALDI-TOF質量分析計を使用する質量分析により分析した。
【0036】
Lambda-Max Model 481 Multiwavelength検出器(214nmに設定)、500個の直列ポンプおよび自動勾配制御装置(Vydacセミ分取C18カラムを有する)を用いるWaters HPLC系を使用するHPLCにより、最終精製を行った。該ペプチドの溶出は、0.1% TFA水溶液中の6〜60%アセトニトリル(v/v)の60分間の直線勾配で行った。
【0037】
タンパク質の切断および連結反応:
MYBおよびMXBの切断: 該前駆体タンパク質(1mg/mL)を、100mM NaClを含有する150mM Tris(pH 8)中、チオール試薬(50mM)の存在下または不存在下、4℃で一晩インキュベートした。
【0038】
MYBおよびMXBを使用する連結反応: 該前駆体タンパク質(1mg/mL)を、30アミノ酸のペプチド(1mMの最終濃度、NH2-CAYKTTQANKHIIVACEGNPYVPVHFDASV-COOH(配列番号6))を該反応に加えること以外は前記の切断に関する記載のとおりに処理した(図2)。
【0039】
チオエステルタグ付きタンパク質の精製後の連結反応: 該キチンカラムから新たに単離したチオエステルタグ付きタンパク質に、凍結乾燥ペプチド(New England Biolabs, Beverly, MA)(1mMの最終濃度)を直接加えた。該反応を4〜25℃で一晩進行させた。どちらの連結方法においても、該反応物の縮合が10〜20%トリシンゲル上で可視化される(図6)。該連結反応を、5〜150mM TrisまたはHEPESバッファー、50〜1000mM NaCl、10mMマルトースならびにpH 6〜11および0〜6M尿素の条件中で試験した。
【0040】
直接連結反応:
MYBleu(1mg/mL)を、6M尿素または1% SDS(pH 7.5〜8.5)、50〜200m NaClおよび1mMの30アミノ酸ペプチド(NH2CAYKTTQANKHIVVACEGNPYVPVHFDASV-COOH(配列番号6))中でインキュベートした。該30アミノ酸ペプチドを加える前に、該MYBleuを4℃または100℃で0〜180分間インキュベートした。連結反応を4℃または25℃で一晩進行させた。
【0041】
実施例 II
標的タンパク質:マルトース結合タンパク質の標識
マルトース結合タンパク質(MBP、42kDa)を、MESNAの存在下でIMPACT法(New England Biolabs, Inc., Beverly, MAからのIMPACTマニュアル)を用いて前記実施例1に記載のとおりに単離した。
【0042】
N末端システインを有するビオチン化ペプチド(CDPEK*DS-COOH(配列番号9)、該ビオチンは該リシン残基のε-アミノ基に結合している)を、新たに精製した標的タンパク質に前記のとおりに連結させた。簡単に説明すると、4μLのビオチン化ペプチド(10mM)を、新たに精製したMBPサンプルの36μLアリコートと混合した。該混合物を4℃で一晩インキュベートした。
【0043】
アルカリホスファターゼ結合抗ビオチン抗体でのウエスタンブロットは、該連結産物の存在を検出したが、未連結標的タンパク質を検出しなかった(図7)。MESNAを切断に使用する場合には、該連結の効率は、典型的には、90%を超える。
【0044】
実施例 III
標的タンパク質:Bst DNAポリメラーゼIラージフラグメント(Bst Pol 1)の標識
Bst DNAポリメラーゼIラージフラグメント(67kDa)を、MESNAの存在下でIMPACT法(New England Biolabs, Inc., Beverly, MAからのIMPACTマニュアル)を用いて前記実施例1に記載のとおりに単離した。
【0045】
N末端システインを有するビオチン化ペプチド(CDPEK*DS-COOH(配列番号9)、該ビオチンは該リシン残基のε-アミノ基に結合している)を、新たに精製した標的タンパク質に前記のとおりに連結させた。簡単に説明すると、4μLのビオチン化ペプチド(10mM)を、新たに精製したBst Pol 1サンプルの36μLアリコートと混合した。該混合物を4℃で一晩インキュベートした。
【0046】
アルカリホスファターゼ結合抗ビオチン抗体でのウエスタンブロットは、該連結産物の存在を検出したが、未連結標的タンパク質を検出しなかった(図7)。MESNAを切断に使用する場合には、該連結の効率は、典型的には、90%を超える。
【0047】
実施例 IV
標的タンパク質:パラミオシンの標識
パラミオシン(29kDa)を、MESNAの存在下でIMPACT法(New England Biolabs, Inc., Beverly, MAからのIMPACTマニュアル)を用いて前記実施例1に記載のとおりに単離した。
【0048】
N末端システインを有するビオチン化ペプチド(CDPEK*DS-COOH(配列番号9)、該ビオチンは該リシン残基のε-アミノ基に結合している)を、新たに精製した標的タンパク質に前記のとおりに連結させた。簡単に説明すると、4μLのビオチン化ペプチド(10mM)を、新たに精製したパラミオシンサンプルの36μLアリコートと混合した。該混合物を4℃で一晩インキュベートした。
【0049】
アルカリホスファターゼ結合抗ビオチン抗体でのウエスタンブロットは、該連結産物の存在を検出したが、未連結標的タンパク質を検出しなかった(図7)。MESNAを切断に使用する場合には、該連結の効率は、典型的には、90%を超える。
【0050】
実施例 V
標的タンパク質:大腸菌(E. coli)チオレドキシンの標識
大腸菌(E. coli)チオレドキシン(12kDa)を、MESNAの存在下でIMPACT法(New England Biolabs, Inc., Beverly, MAからのIMPACTマニュアル)を用いて前記実施例1に記載のとおりに単離した。
【0051】
N末端システインを有するビオチン化ペプチド(CDPEK*DS-COOH(配列番号9)、該ビオチンは該リシン残基のε-アミノ基に結合している)を、新たに精製した標的タンパク質に前記のとおりに連結させた。簡単に説明すると、4μLのビオチン化ペプチド(10mM)を、新たに精製したパラミオシンサンプルの36μLアリコートと混合した。該混合物を4℃で一晩インキュベートした。
【0052】
アルカリホスファターゼ結合抗ビオチン抗体でのウエスタンブロットは、該連結産物の存在を検出したが、未連結標的タンパク質を検出しなかった(図7)。MESNAを切断に使用する場合には、該連結の効率は、典型的には、90%を超える。
【0053】
実施例 VI
細胞毒性タンパク質の単離
実施例1の連結方法を、潜在的に細胞毒性であるタンパク質の単離に適用した。ヘモフィルス・パラインフルエンゼ(Haemophilus parainfluenzae)由来のエンドヌクレアーゼ(Hpal; Itoら, (1992) Nucleic Acids Res 20:705-709)を、大腸菌(E. coli)(ER2566細胞, New England Biolabs, Inc., Beverly, MA)内で発現された該酵素の不活性トランケート化形態を化学合成欠失アミノ酸に連結することにより産生させた。
【0054】
HpaI(完全長HpaIは254アミノ酸である)の最初の223アミノ酸を、該修飾Mxe GyrAインテインおよびCBDにインフレームで融合させた。その223アミノ酸のHpaI断片を、チオエステルタグ付きタンパク質の精製に関して記載されているとおりに単離した。該トランケート化HpaIは、検出可能な酵素活性を示さなかった。
【0055】
HpaIを完全なものにするのに必要な31アミノ酸に相当する合成ペプチドを、実施例Iの方法によりHpaIの該223アミノ酸トランケート化形態に連結した。
【0056】
HpaIに関する酵素アッセイ:
該融合HpaIの活性を、それがLambda DNA(New England Biolabs, Beverly, MA)を消化する能力により測定した。連結された又はトランケート化したHpaIの系列希釈物(適当なペプチドを1mMまで加えた)を、20mM Tris-酢酸(pH 7.9)、10mM酢酸マグネシウム、50mM酢酸カリウム、1mMジチオトレイトールおよび170μg/mL BSA(合計容積30μL)中、1μgのLambda DNAと共に37℃で1時間インキュベートした。臭化エチジウムを浸透させた1%アガロースゲル上で、消化反応を可視化した。1単位のHpaIを、1μgのLambda DNAを37℃、1時間で消化するのに必要な酵素の量と定義した。
【0057】
新たに連結されたHpaIは0.5〜1.5x106単位/mgの比活性を有し、それは、完全長酵素に関する1〜2x106単位/mgの予想値と良く相関した。
【図面の簡単な説明】
【図1】 インテイン媒介ペプチド連結を可能にする化学反応を示す流れ図である。
【図2】 種々のチオールを使用する切断および連結反応の結果を示すゲルである。
【図3】 Sce VMAインテインとマルトース結合タンパク質との間で形成されたチオエステルへのペプチドの直接連結を示すゲルである。
【図4】 図4は、実施例1のpTXB1発現ベクター(配列番号7および配列番号8)を示す図である。
【図5A】 pTXB1のDNA配列(配列番号5)である。
【図5B】 pTXB1のDNA配列(配列番号5)である。
【図5C】 pTXB1のDNA配列(配列番号5)である。
【図5D】 pTXB1のDNA配列(配列番号5)である。
【図5E】 pTXB1のDNA配列(配列番号5)である。
【図6】 HpaIタンパク質連結反応の結果を示すゲルである。
【図7】 図7は、ビオチン化ペプチドに連結した種々のタンパク質のウエスタンブロットである。Mex GyrA IMPACT(商標)誘導体で精製したタンパク質を、抗体認識配列を含有する合成ペプチドに連結した。

Claims (15)

  1. ペプチド連結に適したカルボキシ末端チオエステルを有する標的タンパク質の調製方法であって、
    (a)そのカルボキシ末端においてインテインと融合した標的タンパク質を含む組換え前駆体タンパク質を宿主細胞中で発現させ、ここで、該インテインはアミノ末端とカルボキシ末端を有しており、該インテインのアミノ末端は該標的タンパク質と融合しており、および、該インテインは天然インテイン、インテイン誘導体またはインテイン突然変異体から選択され、
    (b)発現させた該前駆体タンパク質を2−メルカプトエタンスルホン酸と接触させて該前駆体タンパク質からインテインを切断して、カルボキシ末端チオエステルを有する標的タンパク質を形成することを特徴とする該方法。
  2. 該インテインがサッカロミセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)VMAインテインまたはマイコバクテリウム・ゼノピ(Mycobacterium xenopi)GyrAインテインから選択される請求項1に記載の方法。
  3. 該インテインのカルボキシ末端がキチン結合ドメインであるタンパク質結合ドメインに融合する請求項1に記載の方法。
  4. 該標的タンパク質がバシルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)DNAポリメラーゼIラージフラグメント、チオレドキシンまたは細胞毒性タンパク質から選択される請求項1に記載の方法。
  5. 該標的タンパク質がマルトース結合タンパク質またはパラミオシンから選択される請求項1に記載の方法。
  6. 化学合成ペプチドまたはタンパク質をインビトロで標的タンパク質に連結することによって標的タンパク質を修飾する方法であって、
    (a)そのカルボキシ末端においてインテインと融合した標的タンパク質を宿主細胞中で発現させ、ここで、該インテインはインテイン、インテイン誘導体またはインテイン突然変異体から選択され、該インテインはチオール誘導性切断が可能であり、
    (b)2−メルカプトエタンスルホン酸を加えることによって該標的タンパク質からの該インテインの切断を誘導して、標的タンパク質上にカルボキシ末端チオエステルを形成し、
    (c)アミノ末端システインを有する化学合成ペプチドまたはタンパク質を得、
    (d)工程(b)の標的タンパク質を工程(c)の化学合成ペプチドまたはタンパク質に連結して、修飾された標的タンパク質を形成することを特徴とする該方法。
  7. 該インテインがそのカルボキシ末端においてキチン結合ドメインと融合する請求項に記載の方法。
  8. 該タンパク質が修飾前は細胞毒性タンパク質である請求項に記載の方法。
  9. 標的タンパク質を標識化する方法であって、
    (a)そのカルボキシ末端においてインテインと融合した標的タンパク質を含む組換え前駆体タンパク質を宿主細胞中で発現させ、ここで、該インテインはアミノ末端で標的タンパク質に融合するようなアミノ末端とカルボキシ末端を有しており、該インテインは天然に見出されるインテイン、インテイン誘導体またはインテイン突然変異体から選択され、および、該インテインはチオール誘導性切断が可能であり、
    (b)該前駆体タンパク質を2−メルカプトエタンスルホン酸の存在下で切断して、カルボキシ末端チオエステルを有する標的タンパク質を形成し、
    (c)マーカーとアミノ末端システインを有する化学合成ペプチドまたはタンパク質を得、
    (d)工程(b)の標的タンパク質と工程(c)の化学合成ペプチドまたはタンパク質を連結して、標的タンパク質を標識化することを特徴とする該方法。
  10. 該インテインがそのカルボキシ末端においてキチン結合ドメインと融合する請求項に記載の方法。
  11. 該マーカーが蛍光マーカー、スピン標識、アフィニティータグまたは放射能標識から選択される請求項に記載の方法。
  12. 化学合成ペプチドまたはタンパク質が抗原決定基である請求項に記載の方法。
  13. タンパク質活性を回復させるように、タンパク質の不活性形態に化学合成タンパク質またはペプチドを連結する方法であって、
    (a)そのカルボキシ末端においてインテイン、インテイン誘導体またはインテイン突然変異体の一つと融合しているタンパク質の不活性形態を含む融合タンパク質を宿主細胞中で発現させ、該融合タンパク質はプラスミドから発現され、
    (b)2−メルカプトエタンスルホン酸を加えることによって工程(a)のタンパク質のインテイン媒介切断を誘導して、不活性タンパク質上にカルボキシ末端チオエステルを形成し、
    (c)アミノ末端システインを有する化学合成タンパク質またはペプチドを得、
    (d)工程(b)の不活性タンパク質を工程(c)の化学合成ペプチドまたはタンパク質に連結して、タンパク質活性を回復することを特徴とする該方法。
  14. 該タンパク質が細胞毒性タンパク質である請求項13に記載の方法。
  15. 該細胞毒性タンパク質が制限エンドヌクレアーゼである請求項14に記載の方法。
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