JP4748667B2 - 混合毛材からなる化粧用ブラシ - Google Patents

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本発明は、PTT毛材と獣毛の混合により獣毛単独使用の場合より肌の感触と化粧料塗布性を向上させる相乗効果を有する化粧用ブラシに関する。
更に詳しくは、本発明は、PTTを素材として特定する繊度、ヤング率、伸張回復率に設定して、微細な凹凸を設けたテーパー部を有する毛材を用いて、獣毛と混合することにより、獣毛単独のものより肌の感触と化粧料塗布性の改善された化粧用ブラシに関する。
従来からPETやPBT等のポリエステルのモノフィラメントがブラシ素材に用いられており、ブラシの風合を改良するために、獣毛のしなやかさを追求してモノフィラメント先端部にテ−パーを設けることが知られている。例えば、PETのモノフィラメント束の先端を熱アルカリ浴に浸漬して先端にテーパーを設ける技術が、特開昭51-116298号公報及び特開昭58-76517号公報により知られているが、PETのヤング率1100〜2000kgf/mm2と獣毛のヤング率300〜500 kgf/mm2とでは混合による物性の馴染みがなく、PETによる硬さが獣毛独特の感触を弱めていた。合繊と獣毛の混合については周知で、例えば特開2005-130916号公報、特公平5-74479号公報等に提案されているが、静電気の発生を防止するために合繊素材を利用した技術や、獣毛の嵩増し材としての混合技術であり、獣毛使用効果を高めるものではなかった。
PETやPBT等のポリエステル繊維に限らず、従来の合繊のヤング率及び弾性回復率は、一般に獣毛の持つヤング率を大きく上回るので、繊度及びテーパー部が獣毛に近似していても、合繊独特の硬さにより獣毛の優れた肌の感触及び化粧料塗布性を損ねることとなっていた。獣毛は、リス毛、コリンスキー毛、狸毛、鹿毛、馬毛、山羊毛、山馬毛、貂毛、牛毛、羊毛、兎毛、猿毛、猫毛、狐毛、豚毛、狼毛、ムササビ毛等数多く知られており、特にリス毛のように貴重で独特の柔軟感触を重宝されているものがあるが、従来の毛材の混合では、これら獣毛のその優れた柔軟感触の物性が合繊の使用によっては改善できず、獣毛と合繊の混合毛材の化粧用ブラシに対する消費者の評価は高いものではなかった。このように、従来技術では、獣毛と合繊を混合使用して、獣毛独特の柔軟感触をさらに改善するものはなかった。
特開昭51-116298号公報 特開昭58-076517号公報 特開2005-130916号公報 特公平05-074479号公報
従来、合繊によるブラシ素材として代表的なものとしてポリエステル(PET)モノフィラメントがあるが、ブラシ素材に使用されるPETのヤング率は1100〜2000 kgf/mm2、20%伸張回復率は30%程度のものである。一方、獣毛のヤング率は300〜500 kgf/mm2、20%伸張回復率60〜70%程度であって、両毛材を混合してブラシ素材として使用すると、PETの粗剛な物性が獣毛よりも勝って肌を刺激して感触はチクチク感がある。粉末に使用すると粉の飛散が大きく周囲を汚す欠点がある。貴重な獣毛の独特の柔軟感触と化粧料塗布性を悪くしていた。
古来より獣毛がブラシ素材として使用されているのは、獣毛のもつ独特の柔軟感触と化粧料塗布性を活用するためであり、このような柔軟感触と化粧料塗布性等が得られなくては貴重な獣毛を用いる理由がなくなる。
PETをはじめ従来の合繊と獣毛の混合ブラシは、上述するように獣毛本来の使用物性が活用できず、混合ブラシは消費者が満足できるものでなく、合繊は獣毛の嵩増し材としての使用用途の傾向が強かった。そして、従来技術では、各種の獣毛の物性に対して、獣毛が引き立つように合繊の物性を合わせる発想はなかった。
本発明では、獣毛と合繊の混合ブラシにおける獣毛の使用感を損ねている課題の解決を図ろうとするもので、合繊としてはPTTを用い、その物性を獣毛の本来物性に合わせるように機能調節して、獣毛と混合することにより、獣毛単独使用の場合よりも、さらに肌の感触及び化粧料塗布性を向上させるという、いわば相乗効果を発揮せしめる混合ブラシを得ようとするものである。
本発明は、次の構成を基本とするものである。
(1)繊度50〜110dtx、ヤング率150〜200kgf/mm2、20%伸張回復率70〜90%に設定され、かつ、先端方向に微細な凹凸を設けたテ−パー部を有するポリトリメチレンテレフタレート(PTT)毛材と獣毛とが混合されてなる、獣毛単独使用の場合より肌の感触及び化粧料塗布性を改善されてなることを特徴とする化粧用ブラシ。
(2)PTTと獣毛の混合率が、PTT20〜80%及び獣毛80〜20%、であることを特徴とする(1)に記載の化粧用ブラシ。
PTTの繊度は、50〜110dtxのセミダルのモノフィラメントが好ましい。
ヤング率は紡糸時の延伸条件の調節によって150〜200kgf/mm2、20%伸張回復率70〜90%に設定する。PTTはゴム状弾性を有しており、変形に対して回復の優れていることに特徴がある。
獣毛のヤング率は、300〜500kgf/mm2の範囲にあり、リス毛では低く、山羊毛では高い。20%伸張回復率は60〜70%である。PTTのヤング率は獣毛よりやや低めにし、更に20%伸張回復率は高めに設定することが重要である。PTTの普通紡糸の延伸率では230kgf/mm2であり、普通の延伸率より低くすることで150〜200 kgf/mm2が得られるので、獣毛の種類により調節することが好ましい。
なお、本発明において、獣毛としてはリス毛、コリンスキー毛、狸毛、鹿毛、馬毛、山羊毛、山馬毛、貂毛、牛毛、羊毛、兎毛、猿毛、猫毛、狐毛、豚毛、狼毛、ムササビ毛等を使用することができる。
本発明の混合毛材ブラシでは、横に屈曲した状態からの復元性を、20%延伸回復率の補強により改善するものである。
すなわち、獣毛より柔軟で弾性回復率に優れたPTTは、各種獣毛と混合使用することにより、用いた獣毛本来の感触を損ねることなく肌の感触及び化粧料塗布性において顕著な効果を発揮することができる。
PTT毛材の使用に当たっては、PTTモノフィラメントの先端方向に微細な凹凸を設けたテーパー部は、粉末化粧料塗布性の捕捉性に有効であり、獣毛単独使用よりパウダー捕捉性が向上する。同じポリエステル繊維であっても、PETモノフィラメントでは加水分解速度が速くて微細な凹凸を設けることが困難であるが、PTTモノフィラメントでは微細な凹凸を有するテーパー部を設けることが出来るという違いがあり、本発明では後者のPTTを使用する。
本発明の化粧用ブラシにおいて、獣毛及びPTTにおいてそれぞれ設定される物性は、獣毛のヤング率が300〜500 kgf/mm2、PTTのヤング率が150〜200kgf/mm2の範囲のものである。獣毛のヤング率よりPTTのヤング率を低くすることにより、肌への感触、使用時の粉飛散の改善が得られる。また、PTTの20%伸張回復率は一般に70〜90%の範囲で、獣毛の20%伸張回復率60〜70%より高いので、横に屈曲した変形に対して獣毛の回復性を補強することができる。PTT素材の先端に微細な凹凸を有するテーパー部を設けることは必要である。
本発明のPTTブラシ毛材において、モノフィラメントの先端テーパー部に微細な凹凸を設けるのは、PTT毛材の粉末化粧料塗布性の捕捉性と放出性に優れた効果を発揮させるためである。また、本発明で用いるPTTモノフィラメント毛材は、各種獣毛との混合によって獣毛単独使用の場合よりも肌の感触及び化粧料塗布性を向上させる効果を有する。
本発明におけるPTT毛材と獣毛の混合率は、PTT20〜80%、獣毛80〜20%が好ましい。混合する獣毛の硬さは、リス毛が最も柔軟で、コリンスキー毛、狸毛、鹿毛、馬毛(腋毛)、山羊毛の順に硬くなっていくので、PTTの物性は使用する獣毛の種類によりPTTの紡糸条件を調節して目的とする物性に設定する。
本発明による混合ブラシは、獣毛のヤング率に対して、PTTのヤング率をやや下目に設定するので、PTTの物性が獣毛の塗布感触を損ねることがない。PTTのゴム弾性が作用して獣毛の物性を引き立たせる相乗効果を発揮するのである。PTTはブライトでは獣毛と混合して光沢による違和感があり、セミダルが好ましい。PTTに特定する物性は獣毛の種類により調節するのが好ましい。PTT毛材に設けた微細な凹凸を有するテーパー部は感触を獣毛に近似するだけでなく、PTTに設定するヤング率と弾性回復性が相互作用して、獣毛単独の毛材よりも肌の感触及び化粧料塗布性に優れることになる。
また、本発明では獣毛という安定供給の難しい毛材に対して、PTTという安定供給で、且つ経済性の高いブラシ毛材を使用するので、製品の安定供給の上でも利益がある。
〔実施例〕
実施例により本発明を具体的に説明する。
PTTの60dtxと80dtxnの2種類を、ヤング率190kgf/mm2、20%伸張回復率85%に設定したモノフィラメントを紡糸した。
次にモノフィラメントには、クリンプを付与して直径5cmの束に収束した。収束体を長さ7cmにカットし、長さ7cmの一端から2cmを、アルカリ浴に120℃で100分間、浸漬して微細な凹凸を有するテーパー部を設けた。
アルカリ浴の組成は、水酸化ナトリウム10重量%、加水分解促進剤としてDYK-1125(第4級アンモニウム系、一方社油脂工業株式会社製品)0.2重量%、浸透剤としてネオレートNA-30(日華化学工業株式会社製品)10重量%、オリゴマー溶解剤としてマーボンPS-K(松本油脂株式会社製品)4重量%、残量は水よりなる処理液を用いた。
テーパー処理した後に顕微鏡で観察したところ、図1に示すようにテーパー部の表面に1〜20μmの多数の凹凸が生成していることを確認した。次いで染色を行って、該PTT60dtxと80dtxの同量を混合してPTT毛材とした。
獣毛との混合毛材の使用効果を確認するために、PTT毛材とリス毛の混合率を変化して、パウダー用化粧ブラシを作成して、肌の感触とパウダー捕捉性を評価した。
表1に本発明の混合毛材を、表2にPETのみによる比較例を示す。
実施例1、2、3により、リス毛100%のものより本発明による混合ブラシ30〜70重量%の方が肌の感触及びパウダーの捕捉性に優れている、これは混合による相乗効果によるものである。
パウダー捕捉性とは、ブラシに対する粉付きを示すもので、この値がよいものほど粉末を良くキャッチして塗布性に優れる。パウダー取れの評価では、使用時にブラシより肌に粉末の移行を示すもので、粉が取れても、毛材の剛性により粉の飛散が大きいものは、使用性が悪く嫌われるので、パウダー取れ評価は悪いとされている。本発明により粉飛びについても改善されている。
なお、実施例は柔軟で定評の高いリス毛についての例であるが、コリンスキー毛、狸毛、鹿毛、山羊毛、馬毛等においても同様の結果が得られている。
実施例1のPTTを主体とするブラシ毛先端のテーパー部の写真(500倍)

Claims (2)

  1. 繊度50〜110dtx、ヤング率150〜200kgf/mm2、20%伸張回復率70〜90%に設定され、かつ、先端方向に微細な凹凸を設けたテ−パー部を有するポリトリメチレンテレフタレート(PTT)毛材と獣毛とが混合されてなる、獣毛単独使用の場合より肌の感触及び化粧料塗布性を改善されてなることを特徴とする化粧用ブラシ。
  2. PTTと獣毛の混合率が、PTT20〜80%及び獣毛80〜20%、であることを特徴とする請求項1に記載の化粧用ブラシ。
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