JP4746631B2 - 透明な成形材料 - Google Patents

Description

本発明の主題は、透明で印刷可能な物品の製造に適当な、コポリアミドから成る透明な成形材料である。前記物品は例えばシート、特にスキー又はスノーボードの上塗である。

実用新案ＤＥ２９５１９８６７Ｕ１には、モノマー単位ラウリンラクタム並びにカプロラクタム及び/又はヘキサメチレンジアミン／ジカルボン酸から構成されているコポリアミドから成る装飾可能なシートが記載されている。このようなコポリアミドは、確かに一般には透明であり、また良好に装飾可能ではあるが、しかしながらそのようなコポリアミドから成る成形部材又はシートを押出成形により製造する際には問題が繰り返し生じる。特に、射出成形工具又は押出成形工具上又は引取ロール上にプレートアウト被覆物が形成され、この被覆物は必要な清浄化作業のためにしばしば製造の中断を引き起こす。更に、このようなシートの熱形状安定性は不十分であるため、昇華印刷又は熱拡散印刷を用いた装飾の際に変形する危険性がある。従って、前記方法の場合に本来の望ましいであろう温度よりも低い温度で装飾しなければならない。

M. Beyer及びJ. Lohmarによる論文Kunststoffe 90 (2000) 1, 第98 - 101頁には、ＰＡ１２成形材料から成る印刷可能なシートのための例が報告されている。しかしながら、このようなシートはプレートアウトに関する同様の欠点及び低すぎる熱形状安定性を有する。

本発明の課題は、特に、一方では十分な耐応力亀裂性を達成するために十分な結晶性を有するが、それにもかかわらず他方では十分に透明である成形材料を提供することであった。十分な耐応力亀裂性は、それから製造されるシート又は成形部材を付加的にか又は代替的にスクリーン印刷又はオフセット印刷で装飾すべき場合だけでなく、完成部材をアルコールベースの清浄化剤で処理し、後で使用する際にも重要である。透明性は、シートにおいて十分に文字の鮮明な反転印刷が可能であるほどに十分でなければならない。更に、成形材料は、加工の際に、プレートアウトの原因を少なくとも明らかに低下することが望ましい。熱拡散印刷又は昇華印刷を用いても良好に印刷可能である物品、例えば成形部材又はシートに加工できるポリアミド成形材料を提供することも、基礎となる課題の本質的な観点であった。この感熱印刷法は、しばしば、シート又は成形部材の向上した熱形状安定性を必要とする。ここで問題となっている成形材料の場合、熱形状安定性はクリスタリット溶融点Ｔ_mと相関関係にある；この感熱印刷法に関しては少なくとも１８０℃のＴ_mが望ましい。低すぎる熱形状安定性は、印刷すべきシート又は成形部材の反り又は変形の形で現れる。それに反して、昇華温度の低下によってコントラスト及び印刷像の鮮鋭度が損なわれ、それというのも、インキはもはやシート内に十分に深く浸透しないためである。それ以外の加工特性、例えば基材、例えばスキーのボディへの堅固に付着する接着性、又は背面射出成形可能性が、表面の、拡散浸透していないインキ残分によって損なわれてはならないことは、当業者にとっては自明である。

意外にもこの課題は、以下に記載されるコポリアミドを少なくとも５０質量％まで、有利には少なくとも６０質量％まで、特に有利には少なくとも７０質量％、８０質量％又は９０質量％まで、最も有利には少なくとも９５質量％まで含有する成形材料の、印刷可能な又は印刷された物品の製造のための使用により解決されることができる。

本発明の主題は、前記成形材料から製造される物品でもある。

本発明により使用可能なコポリアミドは次のモノマー組み合わせ；
ａ）脂肪族の非分枝ジアミン及び脂肪族の非分枝ジカルボン酸からなる実質的に等モル量の混合物６５〜９９Ｍｏｌ％、有利には７５〜９８Ｍｏｌ％、特に有利には８０〜９７Ｍｏｌ％、とりわけ有利には８５〜９６Ｍｏｌ％、その際、前記混合物は、場合により塩として存在し、かつ更にジアミン及びジカルボン酸は、組成の計算の際にそのつど個々に計算され、但し、ジアミン及びジカルボン酸からなる前記混合物は平均して８〜１２個のＣ原子、有利には９〜１１個のＣ原子をモノマーあたりに含有するとの限定を有する；
ｂ）脂環式ジアミン及びジカルボン酸からなる実質的に等モル量の混合物１〜３５Ｍｏｌ％、有利には２〜２５Ｍｏｌ％、特に有利には３〜２０Ｍｏｌ％、とりわけ有利には４〜１５Ｍｏｌ％、
から構成されている。

ａ）で使用される線状の非分枝ジアミンは、通常は６〜１８個のＣ原子を有する；例えばここでは、１，６−ヘキサメチレンジアミン、１，８−オクタメチレンジアミン、１，９−ノナメチレンジアミン、１，１０−デカメチレンジアミン及び１，１２−ドデカメチレンジアミンが適する。

ａ）で使用される線状の非分枝ジカルボン酸は、同様に通常６〜１８個のＣ原子を有する；例えば、アジピン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、１，１２−ドデカン二酸、ブラシル酸及び１，１４−テトラデカン二酸が適する。

有利には次の組み合わせ、ヘキサメチレンジアミン／１，１２−ドデカン二酸、１．１０−デカメチレンジアミン／セバシン酸、ヘキサメチレンジアミン／セバシン酸、及び１，１０−デカメチレンジアミン／１，１２−ドデカン二酸が有利である。

ｂ）で使用される脂環式ジアミンは、通常８〜２４個のＣ原子を有する。例えば１，４−又は１，３−ビス（アミノメチル）ヘキサン、４，４′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、４，４′−ジアミノ−３，３′−ジメチルジシクロヘキシルメタン、４，４′−ジアミノ−３，３′−ジメチルジシクロヘキシルプロパン並びにイソホロンジアミンが適する。

ｂ）で使用されるジカルボン酸は、ａ）で使用されるのと同じ群から選択されてよい。両方のジカルボン酸は、同一又は相違していてよい。しかしながら、有利には６〜１８個のＣ原子を有するそれぞれの別のジカルボン酸が使用されてもよく、例えば２−メチルペンタン二酸、イソフタル酸又はシクロヘキサン−１，４−ジカルボン酸が使用されてよい。

コポリアミドの製造のために、ジカルボン酸及びジアミンの代わりに、無論、これらのポリアミド形成性誘導体を使用することもできる。

有利な一実施態様において、前記コポリアミドは、１８０〜２２０℃の範囲の、有利には１８５〜２１０℃の範囲の、特に有利には１９０〜２００℃の範囲のクリスタリット溶融点Ｔ_mを有する。更に、コポリアミドの溶融エンタルピーは、有利には少なくとも３０Ｊ／ｇ、より有利には少なくとも４５Ｊ／ｇ、特に有利には少なくとも５５Ｊ／ｇである。Ｔ_m及び溶融エンタルピーは、ＤＳＣにより、ＩＳＯ １１３５７に応じて、２加熱曲線中で、２０Ｋ／ｍｍの加熱速度でもって測定される。目的値の達成のために必要とされる、ｂ）によるモノマー混合物割合は当業者が、僅かな手実験（Hanversuch）により容易に算出できる。

一般的には前記コポリアミドは、相対溶液粘度η_relを、ｍ−クレゾール中の０．５質量％の溶液に対して、２３℃でＩＳＯ ３０７により測定して、約１．５〜約２．５、有利には約１．７〜約２．２、特に有利には約１．８〜約２．１を有する。有利な一実施態様において、この溶融粘度は、機械的分光計（コーンプレート）中で、ＡＳＴＭ Ｄ４４４０により２４０℃及び剪断速度１００ｓ^-1で測定して、２５０〜１００００Ｐａｓ、有利には３５０〜８０００Ｐａｓ、特に有利には５００〜５０００Ｐａｓを有する。

前記成形材料は選択的に、次の更なる成分を含有してよい；
−その他のポリマー、例えば、ホモポリアミドであって、有利にはａ）により使用されるモノマー組み合わせから構成されているホモポリアミド、又は、ポリアミドエラストマーであって、このポリアミド含分が同様に、有利には、ａ）より使用されるモノマー組み合わせから構成されているポリアミドエラストマー、並びに、
−ポリアミド成形材料のために通常の量にある、通常の助剤及び添加剤、例えば安定剤、滑剤、着色剤又は成核剤。

前記成形材料は、物品、例えば成形部材又はシートの製造のために使用することができ、この物品も同様に本発明の主題である。前記シートは、有利な一実施態様において、厚さ０．０２〜１ｍｍ、特に有利には０．０５〜０．８ｍｍ、特にとりわけ有利には０．１〜０．６ｍｍ、とりわけ０．２〜０．５ｍｍを有する。前記シートはまた多層に構成されていてもよく、その際次の実施態様が有利である：
１．多層シートは、ポリアミドエラストマー成形材料、特にポリエーテルアミド又はポリエーテルエステルアミド、及び有利に、６〜１８個、有利に６〜１２個のＣ原子を有する直鎖脂肪族ジアミン、６〜１８個、有利に６〜１２個のＣ原子を有する直鎖脂肪族又は芳香族ジカルボン酸、及び酸素原子１個当たり平均で２．３個を上回るＣ原子と２００〜２０００の数平均分子量とを有するポリエーテルをベースとするポリエーテルアミド又はポリエーテルエステルアミドのポリアミドエラストマー成形材料から成る他の層を含む。前記層の成形材料は、他のブレンド成分、例えば、カルボキシル−ないしカルボン酸無水基又はエポキシ基を有するポリアクリラート又はポリグルタルイミド、官能基を含むゴム及び／又はポリアミドを含んでよい。このような成形材料は先行技術であり；例えばＥＰ１３２９４８１Ａ２及びＤＥ−ＯＳ１０３３３００５に記載されており、これらはここで明確に援用される。良好な層付着性を保証するために、ここで、ポリアミドエラストマーのポリアミド含分が、別の層のコポリアミド中でモノマー組み合わせａ）として使用されているのと同一のモノマーから構成されている場合が有利である。
２．この多層のシートは、同一の又は類似のコポリアミド及び／又はポリアミドをベースとする成形材料からなる更なる層を含有し、これは有利には、別の層のコポリアミド中でモノマー組み合わせａ）として使用されているのと同一のモノマーから構成されている。
３．多層シートは、支持体への結合又は多層シート構造の内部の結合のための定着剤層、例えばカルボキシル−ないし酸無水物基又はエポキシ基で官能化されたポリオレフィン、最下層の材料と支持体材料とから成るブレンド又は熱可塑性ポリウレタンを含む。

前記の実施態様は相互に組み合わせることもできる。全ての場合において、本発明により使用されるコポリアミドから成る層がカバー層を形成することは有利である。必要であれば、例えば耐引掻性に対する要求が高い場合には、このカバー層に場合により更に保護層、例えばポリウレタンベースのクリヤラッカーが施与されていてよい。カバー層は場合により集成シート(Montagefolie)でカバーされていてもよく、この集成シートは完成部材の製造の後に剥離される。

透明なカバー層と組み合わせた特別な設計変法を創作することができるように、下方に位置する第二の層、又は２つより多い層の場合には下方に存在する層のうちの一つは、無色透明、透明、また更には不透明に着色されていてよい。そのような場合、透明のカバー層は付加的に上側から印刷することができる。

シートは例えば、汚染、ＵＶ線、気候の影響、化学薬品又は摩擦に対する保護シートとして使用することができ、車両、家庭内、床、トンネル、テント及び建築物におけるバリヤシートとして、又は例えばスポーツ用品、自動車の内部又は外部装飾、ボート、家庭内又は建築物における上塗のための装飾支持体として使用することができる。この使用法は成形材料が不透明に着色されている場合にも当てはまる。シートと支持体との物質密な結合は、例えば接着、圧縮、積層、同時押出成形、又は背面射出成形により製造することができる。改善された付着性を達成するために、シートを予め例えば火炎処理又はプラズマ処理することができる。

有利な一実施態様において、本発明によるシートはあらゆる種類のスノーボード状装具、例えばスキー又はスノーボードのための上塗として使用される。

装飾されたスキー上塗を作成するための公知の方法は、ＵＳ５４３７７５５に記載されている。前記方法によれば、スキーはいわゆるモノコック系により製造され、その際、上塗はまず２枚のプラスチッシートから構成され、そのうち外側のプラスチックシートは透明であり、内側のシートは不透明（白色）である。２枚のシートの貼り合わせ及び引き続く深絞り加工の前に、透明な上側シートの外側、及び、透明な上側シートと不透明な下側シートとの間の後の接触面を、種々の装飾で印刷する。上部シートのための適当なプラスチックとして、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−コポリマー（ＡＢＳ）、アクリロニトリル−スチレン−コポリマー（ＡＳ）、熱可塑性ポリウレタン（ＴＰＵ）及び脂肪族ポリアミド、特にＰＡ１１及びＰＡ１２が挙げられる。外部の影響から保護され、かついかなる場合にも印刷されているとは限らない下部シートのためだけに、ポリエステルアミド、ポリエーテルアミド、変性ポリオレフィン及びスチレン−カルボン酸無水物−コポリマー、更にはコポリアミドが挙げられる。しかしながら、上塗とスキー又はスノーボードとの結合は、全ての他の公知の成形法及び接着法によって行うこともできる。

本発明によりモノシートが使用される場合には、このシートは透明であり、有利に下面で印刷され、その際、この場合、白色又は場合により他の色に顔料着色された接着剤が光学的な背景としてシートとスキーとの間の結合のために使用される。

同時押出成形された２層シートが使用される場合には、このシートは有利に透明の上部層と、背景としての、白色か又は有色に顔料着色された下部層とから成り、その際、シートは上面で印刷されている。

本発明を以下で例示的に説明する。

比較例１：
ラウリンラクタム８０Ｍｏｌ％及びカプロラクタム２０Ｍｏｌ％からなるコポリアミドを使用した。相対溶液粘度η_relは１．９であった。

比較例２：
ラウリンラクタム８０モル％及び、ヘキサメチレンジアミンと１，１２−ドデカン二酸とから成る等モル混合物２０モル％とからなる、η_rel１．８５を有するコポリアミドを使用した。

比較例３：
ラウリンラクタム８５モル％と、イソホロンジアミン７．５モル％と、１，１２−ドデカン二酸７．５モル％とからなる、η_rel１．８５を有するコポリアミドを使用した。

実施例１：
ＣｏＰＡ６１２／ＩＰＤ１２（９０：１０）の製造のために、２００ｌの撹拌型オートクレーブに以下の出発物質を装入した：
ヘキサメチレンジアミン（６８．５％水溶液として）４１．０３ｋｇ、
イソホロンジアミン４．６２５ｋｇ、
１，１２−ドデカン二酸６２．８０ｋｇ、並びに
次亜リン酸の５０％水溶液１９．２ｇ（０．００６質量％に相当）１９．２ｇ。

出発物質を窒素雰囲気中で溶融させ、撹拌下に密閉オートクレーブ中で約２２０℃に加熱し、その際、内部圧力を約２０バールに調節した。この内部圧力を２時間維持し；その後、溶融物を連続的に標準圧力に放圧しながら更に２８０℃に加熱し、その後、窒素流中でこの温度で１．５時間維持した。引き続き更に３時間窒素を、このトルクに基づいて溶融粘度の更なる上昇がもはや示されなくなるまでこの溶融物を通じて導入した。その後、溶融物を歯車ポンプを用いて排出し、ストランドとして造粒した。このグラニュールを２４時間窒素下で８０℃で乾燥させた。

搬出物：８５ｋｇ
生成物は以下の物性値を有していた：
クリスタリット融点Ｔ_m：１９５℃
相対溶液粘度η_rel：１．９５。

実施例２：
ＣｏＰＡ６１２／ＩＰＤ１２（８０：２０）の製造のために、実施例１を次の質量を使用して繰り返した：
ヘキサメチレンジアミン（６８．５％水溶液）３５．９３ｋｇ、
イソホロンジアミン９．１１１ｋｇ、
１，１２−ドデカン二酸６１．８５ｋｇ、並びに、
次亜リン酸の５０％水溶液１９．３ｇ（０．００６質量％に相当）。

搬出物：８４．１ｋｇ
生成物は以下の物性値を有していた：
クリスタリット融点Ｔ_m：１８５℃
相対溶液粘度η_rel：１．９３
実施例１及び２並びに比較例１〜３の生成物から、０．４ｍｍの厚さのシートを押出し、評価した。結果を以下の表に示す。

劣悪な加工性を有する成形材料の場合、緩慢な後結晶化により強度の反りが認められた。引取ロール上のプレートアウトを視覚的に観察した。

表：成形材料の評価

実施例１及び２からの全てのシートは、熱拡散印刷を用いて良好に装飾され、比較例１〜３のシートはこの際変形した。引取ロール上のやっかいな被覆物は比較例の際に−特に比較例１の際に−繰り返し長期間の押出成形で観察され、これに対して本発明による実施例では観察されなかった。

Claims (9)

1. 次のモノマー組み合わせ：
   ａ）６〜１８個のＣ原子を有する脂肪族の非分枝ジアミン及び６〜１８個のＣ原子を有する脂肪族の非分枝ジカルボン酸からなる実質的に等モル量の混合物６５〜９９Ｍｏｌ％、その際、ジアミン及びジカルボン酸からなる前記混合物は、平均して８〜１２個のＣ原子を含有する、並びに
   ｂ）８〜２０個のＣ原子を有する脂環式ジアミン及び６〜１８個のＣ原子を有する脂肪族の非分枝鎖状ジカルボン酸からなる実質的に等モル量の混合物１〜３５Ｍｏｌ％
   から構成されているコポリアミド少なくとも５０質量％までを含有する成形材料の、印刷可能な又は印刷されたシートの製造のための使用であって、
   前記コポリアミドが、１８０〜２２０℃の範囲のクリスタリット溶融点Ｔ _m を有することを特徴とする使用。
2. 前記コポリアミドの溶融エンタルピーが、少なくとも３０Ｊ／ｇであることを特徴とする、請求項１記載の使用。
3. 前記コポリアミドのモノマー組み合わせａ）が、
   ヘキサメチレンジアミン／セバシン酸、ヘキサメチレンジアミン／１，１２−ドデカン二酸、１，１０−デカメチレンジアミン／セバシン酸及び１，１０−デカメチレンジアミン／１，１２−ドデカン二酸の群から選択されていることを特徴とする、請求項１または２記載の使用。
4. 請求項１から３までのいずれか１項の使用により使用される成形材料を含有する、印刷可能な又は印刷されたシート。
5. 一層又は多層のシートであることを特徴とする、請求項４記載のシート。
6. ０．０２〜１ｍｍの厚さを有することを特徴とする、請求項５記載のシート。
7. ポリアミドエラストマー、ポリアミド、コポリアミド、及び定着剤の群から選択されている下方に位置する１つ以上の他の層を含むことを特徴とする、請求項５又は６記載のシート。
8. 下方に位置する層の１つが透明か又は不透明に着色されていることを特徴とする、請求項５から７までのいずれか１項記載のシート。
9. スキー又はスノーボードのための上塗であることを特徴とする、請求項５から８までのいずれか１項記載のシート。