JP4745626B2 - 軸流式送風装置 - Google Patents

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Description

本発明は、軸流式送風装置に関するものである。
従来、軸流式送風装置においては、電源装置からモータに電流を供給することによってモータが駆動され、それに伴って、ファンが回転させられることにより、風が発生させられる。この場合、前記ファンにおける複数の翼は、揚力を発生させるための揚力面理論に基づいて、前記モータに投入されるエネルギー条件に対応させて回転させたときに、十分な揚力を発生させることができ、失速することがないように設計される。
図2は従来の軸流式送風装置のファンの概念図、図3は従来のファンにおける迎角と揚力係数との関係を示す図である。なお、図3において、横軸に迎角θ2を、縦軸に揚力係数CLを採ってある。
図2において、11はファンを構成する翼であり、ファンの径方向における所定の半径位置で翼11をカットしたときの断面を表す。ファンを矢印X方向に回転させると、翼11は矢印X方向に移動させられ、空気は翼11に対して矢印V方向に流入する。また、q1は前記翼11の前縁によって表されるノーズ、q2は前記翼11の後縁によって表されるテール、M1は前縁q1と後縁q2とを結ぶ線分によって表されるノーズテールライン、M2は翼11の移動方向(矢印X方向)に延びる線分によって表されるベースラインである。
前記ファンが1回転させられるときに、翼11上の半径が値rになる所定の半径位置の点が円周方向に移動する距離をβとしたとき、該距離βは、
β=2πr
で表される。そして、前記ファンが1回転させられるときの前記点が軸方向に移動する距離をピッチPとすると、ノーズテールラインM1とベースラインM2との成す角度によって表されるピッチ角θ1は、
θ1=tan-1(P/2πr)
になる。
ところで、ファンを回転させると揚力Fが発生するが、該揚力Fが発生する分だけファンの回転に伴って発生する誘導速度(誘導抗力に対応する速度)Viの分だけ、揚力Fを発生させるのに寄与する角度、すなわち、迎角θ2は小さくなる。
そして、揚力係数をCLとし、空気密度をρとし、所定の半径rの半径位置における翼11の速度をvとし、前記半径位置における翼弦長をLとしたとき、揚力Fは
F=∫{(1/2)・CL・ρ・v2 ・L}dr
で表すことができ、揚力係数CLが大きいほど大きく、揚力係数CLが小さいほど小さい。また、該揚力係数CLは迎角θ2に対応して変化し、揚力係数CLが所定の範囲内に収まらない場合、ファンは失速する。
図3において、実線で示される特性を有する第1の翼、及び破線で示される特性を有する第2の翼のいずれにおいても、迎角θ2が零(0)〔°〕に近い負の値を採るときに、揚力係数CLは、ほぼ零になる。例えば、ファンを軸流式送風装置ファンの一種である扇風機に適用して、定格回転速度である1000〜1500〔rpm〕で回転させたとき、第1の翼において、迎角θ2が、
−11〔°〕<θ2<13〔°〕
の範囲に収まる場合、正の方向に大きくなるほど、揚力係数CLは正の方向に大きくなり、負の方向に大きくなるほど、揚力係数CLは負の方向に大きくなる。そして、第1の翼において、迎角θ2が13〔°〕で揚力係数CLは正の方向においてピークになり、13〔°〕より大きくなると、揚力係数CLは急激に小さくなり、ファンは失速する。また、第1の翼において、迎角θ2が−11〔°〕で揚力係数CLは負の方向においてピークになり、−11〔°〕より小さくなると、揚力係数CLは急激に小さくなり、ファンは失速する。
前記第2の翼において、迎角θ2が、
−14〔°〕<θ2<15〔°〕
の範囲に収まる場合、正の方向に大きくなるほど、揚力係数CLは正の方向に大きくなり、負の方向に大きくなるほど、揚力係数CLは負の方向に大きくなる。そして、第2の翼において、迎角θ2が15〔°〕で揚力係数CLは正の方向においてピークになり、15〔°〕より大きくなると、揚力係数CLは急激に小さくなり、ファンは失速する。また、第2の翼において、迎角θ2が−14〔°〕で揚力係数CLは負の方向においてピークになり、−14〔°〕より小さくなると、揚力係数CLは急激に小さくなり、ファンは失速する。
このように、一般に、翼11の迎角θ2が15〔°〕又は−14〔°〕付近の値を採るとファンが失速し、それに伴って、ファンに振動及び騒音が発生してしまう。
そこで、扇風機においては、定格回転速度で運転しているときに振動及び騒音が発生することがないように、翼11の面上の仕事率が大きい70〜90〔%〕の半径位置において、前記迎角θ2が12〔°〕以下になるように設計される。そして、前記迎角θ2に基づいて、かつ、誘導速度Viを考慮してピッチ角θ1、キャンバーf等が設計される。なお、ピッチ角θ1については、扇風機の場合、誘導速度Viが零になる状態があるので、ピッチ角θ1が迎角θ2と等しくされることが多い(例えば、特許文献1参照。)。
特開2003−328980号公報
しかしながら、前記従来の扇風機においては、例えば、翼11の直径を30〔cm〕とし、定格回転速度を1200〔rpm〕とすると、翼11の先端部の周速度が18〔m/s〕以上になり、高くなってしまう。したがって、翼11に必要となる強度が大きくなるが、翼11の強度を大きくするために翼11を硬い材料で形成すると、ファンの重量が大きくなるだけでなく、ファンを覆い、衝突を防止するための防護ネットを配設し、安全性を図る必要がある。
また、前記扇風機においては、コストを低くするために翼11のひねりが少なくされるので、十分な風を発生させるために、翼11の先端部のピッチ角θ1をその分大きくしている。したがって、翼11の先端部の仕事率が大きくなり、翼11の先端部に強い渦が発生してしまう。
この場合、翼11の先端部のわずかに前方において煙を流し、風の流れを調べてみると、前記渦はファンの回転方向と逆の方向に巻いて発生し、しかも、渦の直径は翼11の半径よりかなり小さいことが分かる。さらに、前記防護ネットの中心部に板等が配設されるので、風が扇風機の前方から後方に逆流し、煙が渦に吸い込まれてしまうことが分かる。
このように、強い渦を伴って風が送られるので、人体を局部的に冷却することができるが、連続的に風を受けると、冷え過ぎてしまい、不快感を覚えてしまう。
本発明は、前記従来の軸流式送風装置の問題点を解決して、振動及び騒音が発生するのを抑制することができ、翼に必要となる強度を小さくすることができ、しかも、翼の先端部に渦が発生するのを抑制し、連続的に風を受けても不快感を覚えることがない軸流式送風装置を提供することを目的とする。
そのために、本発明の軸流式送風装置においては、複数の翼を備えたファンと、該ファンを回転させるための駆動部とを有する。
そして、前記ファンの出力軸からの径方向の位置を表す所定の半径位置で翼をカットしたときの断面において、翼の前縁と後縁とを結ぶ線分によって表されるノーズテールラインと、翼の移動方向に延びる線分によって表されるベースラインとの成す角をピッチ角θ1とし、翼厚中心線とノーズテールラインとの間の距離を表すキャンバーをfとし、翼弦長に対する前記キャンバーfの最大値の割合をキャンバー比ηとしたとき、
前記翼の70〜90〔%〕の半径位置において、前記ピッチ角θ1が、径方向内方ほど大きく、径方向外方ほど小さく設定され、
27〔°〕≦θ1≦60〔°〕
の範囲に収められ、
前記翼の70〜90〔%〕の半径位置において、前記ピッチ角θ1が大きい領域で前記キャンバーfが小さく設定され、最大キャンバー位置が翼の前縁側に置かれ、前記ピッチ角θ1が小さい領域で前記キャンバーfが大きく設定され、最大キャンバー位置が翼の後縁側に置かれ、かつ、前記キャンバー比ηが、
10〔%〕≦η≦25〔%〕
の範囲に収められ、
前記翼の70〜90〔%〕の半径位置において、前記ピッチ角θ1と前記キャンバー比ηとを加えた値によって表される翼算定指標αが、
40≦α≦70
の範囲に収められる。
また、前記翼の外周縁の周速度が8〔m/s〕以下になるように設定される。
本発明によれば、軸流式送風装置においては、複数の翼を備えたファンと、該ファンを回転させるための駆動部とを有する。
そして、前記ファンの出力軸からの径方向の位置を表す所定の半径位置で翼をカットしたときの断面において、翼の前縁と後縁とを結ぶ線分によって表されるノーズテールラインと、翼の移動方向に延びる線分によって表されるベースラインとの成す角をピッチ角θ1とし、翼厚中心線とノーズテールラインとの間の距離を表すキャンバーをfとし、翼弦長に対する前記キャンバーfの最大値の割合をキャンバー比ηとしたとき、
前記翼の70〜90〔%〕の半径位置において、前記ピッチ角θ1が、径方向内方ほど大きく、径方向外方ほど小さく設定され、
27〔°〕≦θ1≦60〔°〕
の範囲に収められ、
前記翼の70〜90〔%〕の半径位置において、前記ピッチ角θ1が大きい領域で前記キャンバーfが小さく設定され、最大キャンバー位置が翼の前縁側に置かれ、前記ピッチ角θ1が小さい領域で前記キャンバーfが大きく設定され、最大キャンバー位置が翼の後縁側に置かれ、かつ、前記キャンバー比ηが、
10〔%〕≦η≦25〔%〕
の範囲に収められ、
前記翼の70〜90〔%〕の半径位置において、前記ピッチ角θ1と前記キャンバー比ηとを加えた値によって表される翼算定指標αが、
40≦α≦70
の範囲に収められる。
また、前記翼の外周縁の周速度が8〔m/s〕以下になるように設定される。
この場合、ファンから送り出される空気の流れに渦が発生するのを抑制することができ、扇子を使用したときのような扇ぎ効果による風を発生させることができる。その結果、人体を局部的に冷却することがなくなり、連続的に風を受けても、冷え過ぎることがなく、不快感を覚えることがなくなる。
また、ファンが失速を起こさないので、ファンに振動及び騒音が発生するのを抑制することができる。
そして、ファンの回転速度が低くされるので、発生させられる揚力を小さくすることができ、翼に必要となる強度を小さくすることができる。したがって、翼を硬い材料で形成する必要がなくなり、ファンの重量を小さくすることができるだけでなく、安全性を向上させることができるので、防護ネットを配設する必要がなくなる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この場合、ファンを軸流式送風装置ファンの一種である扇風機に適用した場合について説明する。
図1は本発明の実施の形態における軸流式送風装置の斜視図、図4は本発明の実施の形態におけるファンの展開図、図5は本発明の実施の形態におけるファンの概念図、図6は本発明の実施の形態におけるピッチ角とキャンバーラインとの関係を示す図、図7は本発明の実施の形態におけるキャンバー比の説明図、図8は本発明の実施の形態における翼幅指数の説明図である。なお、図4は径方向における所定の半径位置で翼22をカットしたときの断面を表す。
図において、21は回転自在に配設されたファン、22は、該ファン21を構成する複数の、本実施の形態においては、二つの翼である。また、23は駆動部としてのモータ、24は該モータ23の出力軸であり、該出力軸24は、前記ファン21のボスを構成する。
図5に示されるように、ファン21を矢印X方向に回転させると、翼22は矢印X方向に移動させられ、空気は翼22に対して矢印V方向に流入する。また、εは前記翼22の翼厚中心線(キャンバーライン)、q1は前記翼11の前縁によって表されるノーズ、q2は前記翼22の後縁によって表されるテール、M1は前縁q1と後縁q2とを結ぶ線分によって表されるノーズテールライン、M2は翼22の移動方向(矢印X方向)に延びる線分によって表されるベースライン、Lは前記ノーズq1とテールq2との間の直線距離、すなわち、半径位置における翼幅を表す翼弦長である。前記翼厚中心線εとノーズテールラインM1との間の距離を表すキャンバーfが最大になる位置を最大キャンバー位置q3としたとき、ノーズq1から最大キャンバー位置q3までの距離を最大キャンバー距離Xcとなる。
前記ファン21が1回転させられるときに、翼22上の半径が値rになる所定の半径位置の点が円周方向に移動する距離をβとしたとき、該距離βは、
β=2πr
で表される。そして、前記ファン21が1回転させられるときの前記点が軸方向に移動する距離をピッチPとすると、ノーズテールラインM1とベースラインM2との成す角度によって表されるピッチ角θ1は、
θ1=tan-1(P/2πr)
になる。
前記ファン21を回転させると、揚力Fが発生させられる。そして、揚力係数をCLとし、空気密度をρとし、所定の半径rの半径位置における空気の速度をvとし、前記翼弦長をLとしたとき、揚力Fは
F=∫{(1/2)・CL・ρ・v2 ・L}dr
で表すことができ、揚力係数CLが大きいほど大きく、揚力係数CLが小さいほど小さい。また、前記速度vはファン21の回転速度に比例するので、前記揚力Fは、ファン21の回転速度が高いほど大きく、回転速度が低いほど小さい。
そこで、ファン21の回転速度を一定にして前記揚力Fを大きくしようとすると、揚力係数CLを大きくする必要があるが、揚力係数CLは、ノーズテールラインM1とベースラインM2との成す角度によって表されるピッチ角θ1から、ファン21の回転に伴って発生する誘導速度(誘導抗力に対応する速度)Viの分だけ角度Δθを減算することによって得られる迎角θ2
θ2=θ1−Δθ
によって決まる。すなわち、図3に示されるように、迎角θ2を所定の範囲内において大きくすると、揚力係数CLを大きくすることができる。
ところで、十分な風を発生させるために、ファン21の先端部のピッチ角θ1を大きくすると、翼22の先端部に強い渦が発生してしまう。
また、ファン21の回転速度を高くすると、翼22の先端部の周速度がその分高くなり、翼22に必要となる強度が大きくなるが、翼22の強度を大きくするために翼22を硬い材料で形成すると、ファン21の重量が大きくなるだけでなく、ファン21を覆い、衝突を防止するための防護ネットを配設し、安全性を図る必要がある。
そこで、本実施の形態においては、ファン21を十分に低い回転速度で回転させ、その状態でファン21が失速を起こさないように翼22の仕様が設定される。そして、前記翼弦長L、キャンバーf、最大キャンバー距離Xc、ピッチP、ピッチ角θ1及び迎角θ2は、各翼22の半径位置ごとに設定される。なお、図1に示されるように、前記翼22の形状において、大きな力を翼22に作用させるため、根元が比較的細くされるが、風の流れを妨げない程度に広くすることができる。
ところで、図4に示されるように、翼22の外周縁において出力軸24から最も離れた点をPt1としたとき、出力軸24の中心から点Pt1までの距離を半径Rとする。そして、ファン21の出力軸24側から先端部側にかけて半径がrになる各半径位置Stを想定すると、次の式のように、各半径位置Stは、半径Rに対する半径rの割合である百分率で表すことができる。
St=r×100/R〔%〕
したがって、出力軸24の中心の半径位置Stは零〔%〕になり、点Pt1の半径位置Stは100〔%〕になる。
そして、本実施の形態において、各翼22によって十分な風を発生させるために、半径位置Stが70〜90〔%〕の範囲(70〔%〕以上、90〔%〕以下)において、ピッチ角θ1が、
27〔°〕≦θ1≦60〔°〕
の範囲の値にされる。前述されたように、迎角θ2は、誘導速度Viの分だけピッチ角θ1より小さくなるので、角度Δθを2〜4〔°〕とし、
23〔°〕≦θ2≦58〔°〕
にするのが好ましい。
本実施の形態においては、半径位置Stが70〜90〔%〕の範囲において、前記ピッチ角θ1は、一定にされるが、半径位置Stごとに27〜60〔°〕の範囲内で変化させ、半径位置Stが径方向内方ほど大きく、径方向外方ほど小さくすることができる。
ところで、前記ピッチ角θ1とキャンバーfとは相互に影響し合う。そこで、各翼22によって十分な風を発生させるために、前記ピッチ角θ1を設定するだけでなく、キャンバーfの最大値をfmaxとしたときの、翼弦長Lに対するキャンバーfの割合である百分率、すなわち、キャンバー比η
η=fmax×100/L
を同様に設定するようにしている。
本実施の形態においては、半径位置Stが70〜90〔%〕の範囲において、図7に示されるように、キャンバー比ηは、
10〔%〕≦η≦25〔%〕
の範囲にされる。
なお、キャンバーfの大きさ、及び翼弦長L上におけるキャンバーfの分布は、ピッチ角θ1、ファン21の作動状態等によって変化させることができる。例えば、図6に示されるように、ピッチ角θ1が小さい場合、十分な風を発生させるためにキャンバーfが大きくされ、しかも、最大キャンバー位置q3が後縁側に置かれ、最大キャンバー距離Xcが長くされる。また、ピッチ角θ1が大きい領域においては、翼22の後縁側における空気の流れを円滑にする必要があるので、キャンバーfを小さくする必要があり、最大キャンバー位置q3が前縁側に置かれ、最大キャンバー距離Xcが短くされる。
ところで、キャンバー比ηは、百分率で表したときの値がピッチ角θ1と等価であることが実験から分かっている。そこで、本実施の形態においては、各翼22によって十分な風を発生させるために、前述されたように、前記ピッチ角θ1及びキャンバー比ηをそれぞれ設定するだけでなく、ピッチ角θ1とキャンバー比ηとを加えた値によって表される翼算定指標α
α=θ1+η
を算出し、半径位置Stが70〜90〔%〕の範囲において、前記翼算定指標αを、次の式で表される範囲に収めるようにしている。
40≦α≦70
また、ファン21の直径をD(=2×R)とし、翼22の数をMとし、最大の翼弦長L、すなわち、最大翼幅をLmaxとしたとき、ファン21において、展開された状態の各翼22が占める割合を翼幅指数Cr
Cr=Lmax・M/D
で表すことができる。そして、本実施の形態においては、半径位置Stが70〜90〔%〕の範囲において、翼幅指数Crを0.4〜4.8の範囲に収めるようにしている。
したがって、各翼22の形状は、任意に設定することができ、図8に示されるように、翼幅指数Crを異ならせて各種の形状の翼22を形成することができる。
なお、最大翼幅Lmaxが小さい翼22を使用する場合、翼22の数Mを多くすることによって翼幅指数Crを大きくすることができる。
例えば、図8の翼幅指数Crが0.4のファン21において、翼22の数Mを2から24にすると、翼幅指数Crを、
Cr=0.4×24/2
=4.8
にすることができる。
ところで、半径位置Stが70〜90〔%〕の範囲において、前記ピッチ角θ1を、
27〔°〕≦θ1≦60〔°〕
の範囲内において、キャンバー比ηを、
10〔%〕≦η≦25〔%〕
の範囲内において、前記翼算定指標αを、
40≦α≦70
の範囲内において変化させたときに、ファン21に失速が起こらず、振動及び騒音が発生しないようにファン21を十分に低速で回転させる必要がある。
そのために、前記翼算定指標αを前記範囲内においてわずかずつ変化させ、その都度、ファン21の回転速度を徐々に高くし、各翼算定指標αごとに、ファン21に失速が起こらず、振動及び騒音が発生しない回転速度の限界値(以下「許容速度」という。)N(α)を求めるようにしている。
続いて、該各許容速度N(α)のうちの最も低い値を、ファン21の外周縁の周速度に変換し、該周速度を臨界速度Uとする。なお、前記周速度は、ファン21の外周縁のうちのモータ23から最も離れた点の移動速度で表される。
また、本実施の形態において、臨界速度Uは、
U=8〔m/s〕
になる。
したがって、ファン21の直径Dに関係なく、ファン21の周速度を8〔m/s〕以下になるようにモータ23を駆動すると、ファン21が失速を起こすのを防止することができる。
なお、前記臨界速度Uを、
U=6〔m/s〕
にすると一層ファン21に失速が起こらず、振動及び騒音が発生するのを抑制することができる。
そして、ファン21の周速度が十分に低くされるので、ファン21から送り出される空気の流れに渦が発生するのを防止することができ、扇子を使用したときのような扇ぎ効果による風を発生させることができる。その結果、人体を局部的に冷却することがなくなり、連続的に風を受けても、冷え過ぎることがなく、不快感を覚えることがなくなる。
また、翼22の全体のピッチ角θ1を十分に大きくすることができるので、翼22の先端部のピッチ角θ1を格別に大きくする必要がなくなる。したがって、翼22の先端部に強い渦が発生するのを抑制することができる。
そして、ファン21の回転速度が低くされ、周速度が8〔m/s〕以下にされるので、発生させられる揚力Fを小さくすることができ、翼22に必要となる強度を小さくすることができる。したがって、翼22を硬い材料で形成する必要がなくなり、ファン21の重量を小さくすることができるだけでなく、安全性を向上させることができるので、衝突を防止するための防護ネットを配設する必要がなくなる。
本実施の形態においては、前記各翼22の翼面は、柔軟性を有する材料、例えば、軽量ウレタン材、プラスッチック、布、紙、フィルム等から成る薄板材によって形成され、外周縁に直径が2〔mm〕程度のピアノ線等の鋼線を翼支持部材として埋設することによって、翼輪郭が形成され、ファン21の形状が維持される。
なお、前記翼22の翼面は柔軟性を有する材料から成る薄板材によって形成されるので、回転速度が高くなった場合、翼22は容易に変形する。したがって、ファン21に異常な振動が発生するのを防止することができる。また、翼22の厚さは、空気の流れを円滑にすることができれば、自由に設定することができる。
本実施の形態においては、翼22の翼面が柔軟性を有する材料から成る薄板材によって形成されるようになっているが、該薄板材に代えて金属、プラスッチック等の硬い材料によって形成することができる。その場合、翼22の前縁側にクッション材が配設される。また、団扇のように、翼22の全体に放射状又は網目状に強度支持材としての骨部材を配設し、該骨部材間にわたって紙等の薄膜材を配設することによって、翼面を形成することができる。
そして、翼22の先端部に渦が発生するのを抑制することができるので、前記モータ23の消費電力を極めて小さくすることができる。したがって、モータ23として小型の直流モータを使用することができる。そして、モータ23を電池によって駆動することができるだけでなく、携帯電話等に使用される小容量の交流−直流アダプタ等によって駆動することができる。したがって、軸流式送風装置を小型化し、軽量化することができるので、床上用、机上用等のスタンド型、壁掛け型、天井取付型、吊下げ型、ワイヤ、スライドバー等と組み合わされた移動型等として使用することができる。
さらに、従来の扇風機と同様に、首振り機能を持たせたり、マイナスイオン装置を付加したりすることができる。
次に、実際の軸流式送風装置の効果について説明する。
この場合、直径Dが40〔cm〕のファン21を2枚の翼22によって作成した。90〔%〕の半径位置Stにおいて、ピッチ角θ1を45〔°〕とし、キャンバー比ηを16〔%〕とし、これにより、翼算定指標αを61とした。また、翼幅指数Crを1.5とした。また、翼22の翼面を軽量ウレタン材によって形成し、直径が2〔mm〕の鋼線を出力軸24の中心から翼22の前縁部に沿って先端部に向けて延在させ、先端部を経由して後縁部に沿って90〔%〕の半径位置Stまで延在させる。
前記構成の翼22を備えたファン21を、100〜150〔rpm〕の回転速度で回転させると、約2〔m〕離れた位置で扇ぎ効果による風を受けることができた。
この場合、最大消費電力は2〔W〕であり、実験によると、停止時におけるファン21による押圧力は約15〔g〕であり、衝突時におけるファン21による衝撃力は約120〔g〕であった。ファン21の周辺に防護ネットを配設することなく、運転時に翼22が顔に当たっても痛みを感じることがなかった。また、就寝時においては、2〔W〕でモータ23を駆動すると風が強すぎるので、ファン21を80〔rpm〕の回転速度で回転させるのが好ましい。その場合、消費電力は1〔W〕以下になる。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
本発明の実施の形態における軸流式送風装置の斜視図である。 従来の軸流式送風装置のファンの概念図である。 従来のファンにおける迎角と揚力係数との関係を示す図である。 本発明の実施の形態におけるファンの展開図である。 本発明の実施の形態におけるファンの概念図である。 本発明の実施の形態におけるピッチ角とキャンバーラインとの関係を示す図である。 本発明の実施の形態におけるキャンバー比の説明図である。 本発明の実施の形態における翼幅指数の説明図である。
符号の説明
21 ファン
22 翼
23 モータ

Claims (1)

  1. (a)複数の翼を備えたファンと、
    (b)該ファンを回転させるための駆動部とを有するとともに、
    (c)前記ファンの出力軸からの径方向の位置を表す所定の半径位置で翼をカットしたときの断面において、翼の前縁と後縁とを結ぶ線分によって表されるノーズテールラインと、翼の移動方向に延びる線分によって表されるベースラインとの成す角をピッチ角θ1とし、翼厚中心線とノーズテールラインとの間の距離を表すキャンバーをfとし、翼弦長に対する前記キャンバーfの最大値の割合をキャンバー比ηとしたとき、
    前記翼の70〜90〔%〕の半径位置において、前記ピッチ角θ1が、径方向内方ほど大きく、径方向外方ほど小さく設定され、
    27〔°〕≦θ1≦60〔°〕
    の範囲に収められ、
    前記翼の70〜90〔%〕の半径位置において、前記ピッチ角θ1が大きい領域で前記キャンバーfが小さく設定され、最大キャンバー位置が翼の前縁側に置かれ、前記ピッチ角θ1が小さい領域で前記キャンバーfが大きく設定され、最大キャンバー位置が翼の後縁側に置かれ、かつ、前記キャンバー比ηが、
    10〔%〕≦η≦25〔%〕
    の範囲に収められ、
    前記翼の70〜90〔%〕の半径位置において、前記ピッチ角θ1と前記キャンバー比ηとを加えた値によって表される翼算定指標αが、
    40≦α≦70
    の範囲に収められ、
    (d)前記翼の外周縁の周速度が8〔m/s〕以下になるように設定されることを特徴とする軸流式送風装置
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