JP3608038B2 - プロペラファン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気調和機などに用いられるプロペラファンに関する。
【0002】
【従来の技術】
空気調和機などに用いられるプロペラファンは、略円筒形状のボスに複数枚の翼を配設した構成で、これらの翼は半径が小さい位置から大きい位置に行くにしたがって翼を回転方向に前進(スキュー)、さらには吸込み側へ傾斜(前傾)させることで低騒音化を図ることが知られ、例えば、特開平2−2000号公報に記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術においては、騒音、効率に大きく影響する翼端前縁の形状に着目して最適化がされてなく、さらなる低騒音化、高効率化については、十分とは言い難かった。
【0004】
本発明の目的は、空気調和機などに適した、より一層の低騒音化、高効率化が図られるプロペラファンを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は回転軸に取り付けられるボスの外周部に複数枚の翼が設けられたプロペラファンにおいて、回転軸から任意の半径に沿って切断した翼の円筒断面において反りが最大となる位置は、半径が大きくなるに従い翼の後縁側に位置されたものである。
【0006】
これにより、半径が大きくなる位置ほど翼の最大反り位置を後縁側とするので、翼の回転軸方向の高さを大きくすることなく、翼の出口角を翼端で大きくして昇圧効果を高めることができる。よって、半径方向流れの発生を抑制して、遠心力による逆流を防止して、騒音の増加、効率の低下を防ぐことができる。
【0007】
また、本発明は、プロペラファンにおいて、翼端の延長線と翼前縁の延長線が交差してできる点から、翼端及び翼前縁から同一距離離れた翼端の点と翼前縁の点とを結んでできる直線は、同一距離が翼端から翼弦長の20%までの範囲において、回転軸に垂直となる平面に対して略平行とされたものである。
【0008】
これにより、空気の流れは、デルタ翼が一様流中にある迎角を持って置かれた場合と同様になり、翼前縁及び翼端で発生する渦を同程度にできるので、過大な漏れ渦の発生をなくすことができる。よって、効率の低下、騒音の増大を防止できる。
【0009】
さらに、上記に記載のものにおいて、翼の出口角が最大となる半径位置は、翼の最大半径をRt、ボスの半径をRbとしたとき、(Rt+Rb)/2以上Rt以下とされたことが望ましい。
【0010】
さらに、上記に記載のものにおいて、回転軸から任意の半径に沿って切断した前記翼の円筒断面において反りが最大となる位置は、半径が大きくなるに従い後縁側に位置されたことが望ましい。
【0011】
さらに、上記に記載のものにおいて、翼前縁は、丸みを有した形状とされたことが望ましい。
【0012】
さらに、上記に記載のものにおいて、翼前縁は、複数の三角形の突起を有したセレーション形状とされたことが望ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態を示すプロペラファンの斜視図であり、図の断面9は、翼端の延長線11と翼前縁の延長線10とが交差してできる点Aから略同一距離L離れた翼端の点Bと翼前縁の点Cとを通り、回転軸3と平行な平面5で切断した時の断面である。なお、翼端の点Bと翼前縁の点Cとを結んでできる直線は、少なくともLが、0<L≦0.2Ct(Ctは翼端での翼弦長)となる範囲で、回転軸に垂直となる平面に対して略平行とされている。また、図の点線8は、半径rの位置での翼の円筒断面を示すための線である。
【0014】
図2は、図1において、矢印Dの示す方向から、上記の点B、点Cを通る断面9を見た側面図である。直線BCは、回転軸3に垂直な平面に対して、略水平となっている。
【0015】
図3は、図1において、矢印Eの示す方向から、点線8にて示した円筒断面をを示している。翼の円筒断面形状は、反りhを持っており、前縁6は圧力面31、負圧面32側とも丸みを有している。 図4は翼の出口角β2の半径方向分布を示しており、出口角β2は翼端で最大値をとっている。
【0016】
また、図5は翼の円筒断面において、反りhが最大となる位置の前縁からの距離xを翼弦長cで割った値、すなわち、無次元の最大反り位置x/cの半径方向分布を示しており、これは半径が大きい位置ほど大きな値をとっている。すなわち、半径が大きいほど最大反り位置は後縁側に位置している。
【0017】
プロペラファンを回転させた際の、翼端及び前縁部4の流れを図6に模式的に示す。プロペラファンが回転することで、空気の流れ36は相対的に、翼4に対して反回転方向の速度を持って流入してくる。このとき、ファンの上流側だけでなくファンの側方からも空気は流入してくるので、前記流入流れ36は、略二等辺三角形ABCの辺BCにほぼ垂直な角度で流入してくることになる。この流れは、デルタ翼が一様流中にある迎角を持っておかれた場合と同等となる。翼の圧力面4aに当たった流れの一部は、翼前縁(辺AB)、および翼端(辺AC)から負圧面4bに回り込み、その際に、渦35を発生する。本プロペラファンの場合、辺BCが回転軸に垂直な平面に対して平行となっているため、辺ABと辺ACから発生する渦35は同程度の大きさであり、どちらか一方が他方に比べて極端に大きくなるということがない。
【0018】
従来のプロペラファンにおいては、略二等辺三角形ABCの形状は、前進、前傾など、翼の基本パラメータを最適化した結果として決定してしまい、例えば、図11に示すように、点Bが点Cに対して負圧面側に位置し、辺BCが回転軸に垂直な平面に対して傾いていた。その場合の流れは、図12に示すように、翼端、すなわち辺ABから発生する渦39は、翼前縁(辺AC)から発生する渦38よりも極端に大きくなっていた。この過大な漏れ渦39は、効率の低下、騒音の増大をもたらす。
【0019】
以上の説明のように、本プロペラファンは、翼端及び前縁部分から発生する渦35を従来のものより小さくできるため、効率の向上、騒音の低減の効果が得られる。
【0020】
一方で、略二等辺三角形ABCの形状を、上記のように決定したために、従来、前進、前傾によって制御していた半径方向流れを制御する新たな施策が必要となる。半径方向外向き流れの抑制が十分でないと、図13に示すように、遠心力によって流れ41は半径の小さい方から、大きいほうへと流れ、その結果、翼端入口側や翼根元出口側で逆流42、43が生じ、騒音の増加、ならびに効率の低下が起きる。
【0021】
本プロペラファンでは、図4に示したように、出口角β2は翼端で最大としている。これによって、半径の大きい位置での昇圧効果が高まり、その結果、半径方向流れの発生が抑制され、より広い動作点において、図7に示すように、軸流の好ましい流れ37を維持することが可能となる。
【0022】
ただし、図3からわかるように、同一の翼弦長cのまま、翼端での出口角β2を大きくしようとすると、翼の回転軸方向の高さHが大きくなってしまい、例えば空気調和機などに搭載する際、その機器全体のコンパクト性をも阻害してしまう恐れがある。
【0023】
本プロペラファンでは、図5に示すように、半径が大きい位置ほど翼の最大反り位置を翼後縁側に位置させることによって、翼の回転軸方向の高さHを維持、もしくは低減しながら、図4に示した出口角の分布を実現できる。
【0024】
以上によって、プロペラファンの効率は向上し、騒音、特に広帯域に渡って乱流音の低減が図れる。乱流音の低減がなされると、プロペラファンの翼枚数と回転数の積の整数倍の周波数における狭帯域騒音、いわゆる羽根音が目立つようになってくる。また、羽根音は、例えば空気調和機などにプロペラファンを搭載した際に、その上流側で発生した空気の乱れが流入することや、周囲に障害物が存在することで、プロペラファンへの空気の流入が不均一となるために、さらに大きくなる。
【0025】
本プロペラファンでは、図3に示したように、翼の前縁において、圧力面、負圧面とも丸みを有しているので、上記の羽根音が増大しやすい流れの状況においても、その流入流れに対して鈍感となり、より広い範囲の流入角に対して、剥離し難く、良好な流れを得ることができる。その結果、乱流音の低減で目立つようになった羽根音も低減できるので、騒音レベルが低く、耳障りもよいプロペラファンを実現できる。
【0026】
本プロペラファンの効果を図8に示す。図8の上の図は、第1の実施例のプロペラファンの騒音レベルを、以上説明してきた改良を施していない従来のプロペラファンの騒音レベルから引いた、騒音低減量を表している。図8の下の図は、本プロペラファンを回転させるときの軸動力を、従来のプロペラファンのものと比較して、その低減比を表している。全流領域に渡って、騒音低減の効果が得られる。また、効率も全流領域で向上しており、そのため軸動力も低減されている。
【0027】
なお、略二等辺三角形となるABCの形状は、図9に示したようにすることでも良い。図9は、図1における、矢印Dの示す方向から、図9のものを点B、点Cを通る断面を見た側面図である。点B、点Cを含む断面9bの形状は、翼の圧力面側に凸となっている。本例でも辺ABと辺ACから発生する渦は同程度の大きさであり、どちらか一方が他方に比べて極端に大きくなるということはない。
【0028】
さらに、断面9bが圧力面側に凸となっているので、圧力面から負圧面へ向かう流れはスムーズとなり、発生する渦の強さは弱くなる。その結果、より一層の効率向上、騒音低減の効果が得られる。
【0029】
また、翼前縁での丸みについては、図10に示したように構成することでも良い。本例では、翼前縁の丸みに代えて、翼前縁に小さな三角形50を複数ならべて、セレーション形状としている。これによっても、前縁の丸みと同様、羽根音が増大しやすい流れの状況においても、その流入流れに対して鈍感となり、より広い範囲の流入角に対して、剥離し難く、良好な流れを得ることができる。その結果、乱流音の低減で目立つようになった羽根音を低減できるので、騒音レベルが低く、耳障りのよいプロペラファンとなる。
【0030】
また、翼の出口角が最大となる半径位置は、翼の半径方向長さの半分より外側、すなわち、翼の最大半径をRt、ボスの半径をRbとしたときの、(Rt+Rb)/2以上であれば、半径方向外向き流れを十分抑制することが可能である。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、半径方向流れを抑制しながら、翼端及び前縁部分から発生する渦を小さくできるために、高効率、低騒音のプロペラファンを得ることができ、空気調和機のより一層の低騒音化、高効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による一実施の形態のプロペラファンの斜視図。
【図2】図1のプロペラファンの翼の点B、点Cを通る断面を示す側面図。
【図3】図1のプロペラファンの翼の円筒断面図。
【図4】図1のプロペラファンの翼の出口角の半径方向分布を示すグラフ。
【図5】図1のプロペラファンの翼の最大反り位置の半径方向分布を示すグラフ。
【図6】図1のプロペラファンの翼端前縁部の流れの様子を示す模式図。
【図7】図1のプロペラファンの半径方向流れの様子を示す側面図。
【図8】一実施の形態であるプロペラファンの効果を示すグラフ。
【図9】他の実施の形態のプロペラファンの翼の点B、点Cを通る断面を示す側面図。
【図10】さらに、他の実施の形態のプロペラファンの斜視図。
【図11】従来のプロペラファンの翼のBC断面を示す側面図。
【図12】従来のプロペラファンの翼端前縁部の流れの様子を示す模式図。
【図13】従来のプロペラファンの半径方向流れの様子を示す側面図。
【符号の説明】
1…翼、2…ボス、3…回転軸、4…翼端前縁部、5…点B、点Cを通り回転軸に平行な平面、6…翼前縁、7…翼後縁、8…翼の円筒断面、9…翼端前縁部の断面、10…翼前縁の延長線、11…翼端の延長線、31…圧力面、32…負圧面、33…翼弦、34…反り線、35…渦、36…翼への流入流れ、37…空気の流れ、38…翼前縁から発生した渦、39…翼端から発生した渦、41…空気の流れ、42…入口逆流、43…出口逆流。
Claims (7)
- 回転軸に取り付けられるボスの外周部に複数枚の翼が設けられたプロペラファンにおいて、前記回転軸から任意の半径に沿って切断した前記翼の円筒断面において反りが最大となる位置は、半径が大きくなるに従い翼の後縁側に位置されたことを特徴とするプロペラファン。
- 回転軸に取り付けられるボスの外周部に複数枚の翼が設けられたプロペラファンにおいて、
翼端の延長線と翼前縁の延長線が交差してできる点から、同一距離離れた前記翼端の点と前記翼前縁の点とを結んでできる直線は、前記同一距離が前記翼端から翼弦長の20%までの範囲において、前記回転軸に垂直となる平面に対して略平行とされたことを特徴とするプロペラファン。 - 請求項1又は2に記載のいずれかにおいて、前記翼の出口角が最大となる半径位置は、前記翼の最大半径をRt、前記ボスの半径をRbとしたとき、
(Rt+Rb)/2以上Rt以下とされたことを特徴とするプロペラファン。 - 請求項2に記載のものにおいて、前記直線を通り、前記回転軸と平行となる平面で切断したときの前記翼断面は、圧力面側に凸形状とされたことを特徴とするプロペラファン。
- 請求項2に記載のものにおいて、前記回転軸から任意の半径に沿って切断した前記翼の円筒断面において反りが最大となる位置は、半径が大きくなるに従い後縁側に位置されたことを特徴とするプロペラファン。
- 請求項2に記載のものにおいて、前記翼前縁は、丸みを有した形状とされたことを特徴とするプロペラファン。
- 請求項2に記載のものにおいて、前記翼前縁は、複数の三角形の突起を有したセレーション形状とされたことを特徴とするプロペラファン。
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