JP4745492B2 - 架橋性樹脂組成物及び架橋アイオノマー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン系アイオノマーの架橋性樹脂組成物及び架橋アイオノマーに関するもので、より詳細にはフィルム、シート、表皮材等の成形品として、また樹脂の改質剤として有用な架橋アイオノマー及びそれに用いる架橋性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレン系アイオノマーは、優れた耐衝撃性、耐裂断性、耐磨耗性等を有し、これらの特性を利用して、ゴルフボールの表皮材などスポーツ用品の用途に広く使用されている。また、エチレン系アイオノマーは、透明性、ヒートシール性、ホットタック性、深絞り成形性、耐油性、耐摩耗性、耐ピンホール性などに優れ、かつ米国のFDAや日本の食品包材としての規制に合格しているところから、単層フィルムの形で或いは他の樹脂、金属箔、あるいは紙などの複層フィルムの形で、肉用真空包装フィルム、液体包装袋、乾燥・粉体食品包装、スナック食品、ペースト状物の包装用チューブ、ガラス瓶用蓋材、スキン包装など、広範な包装材用途に使用されている。
【0003】
エチレン系アイオノマーは、疎水性のエチレン連鎖に親水性のカルボキシル基が側鎖として結合しており、更にカルボキシル基の一部もしくは全部が金属イオンによって中和された構造を持つ。このアイオノマーにおいては、側鎖のイオン性基が相互作用して、非極性マトリックス中にイオン濃度の高い会合体(架橋体)を形成しているものであり、このためイオン架橋共重合体とも呼ばれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、イオン架橋に加えて化学的架橋構造を有するアイオノマー架橋体を得るべく種々の検討を行った。その結果、アルカリ金属またはアルカリ土類金属アイオノマーは、カーボネート骨格を有するビスヒドロキシ化合物と反応し、脱炭酸を伴う架橋反応が生起して、アイオノマー架橋体が得られることを見出した。
【0005】
本発明の目的は、イオン架橋に加えて化学的架橋構造を有するアイオノマー架橋体及びこの架橋体を製造するための樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、押出成形等の溶融成形が可能で、耐熱性や硬度の向上したアイオノマー架橋体及びこの架橋体を製造するための樹脂組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、
(A)イオン種がアルカリ金属またはアルカリ土類金属成分であるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーと、(B)両末端にヒドロキシル基を有し且つカーボネート骨格を有する架橋剤とを含有してなり、前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー(A)は、メルトフローレート(190℃、2160g荷重)5〜500g/10分及び不飽和カルボン酸含量2乃至35重量%であるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体ベースポリマーのカルボキシル基の6〜80モル%が中和されたアイオノマーであり、前記架橋剤(B)の数平均分子量は500乃至5000であり、(A)100重量部あたり(B)が0.1乃至5重量部の量で存在することを特徴とする架橋性樹脂組成物が提供される。
本発明によればまた、上記架橋性樹脂組成物を動的に熱処理してなることを特徴とする架橋アイオノマーが提供される。動的熱処理は220℃以上の温度で行われていることが好ましい。
本発明の架橋アイオノマーでは、下記式(1)
R=Tc/To (1)
式中、Toは架橋剤(B)を添加前のエチレン系アイオノマー(A)
の溶融混練時のトルク(kg・m)であり、Tcは架橋剤
(B)を添加5分後のエチレン樹脂組成物の溶融混練時の
トルク(kg・m)である、
のトルク比(R)が1.5乃至3.5の範囲にあることが好ましい。
【0007】
【発明の実施形態】
[作用]
本発明の架橋性樹脂組成物は、(A)イオン種がアルカリ金属またはアルカリ土類金属成分であるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーと、(B)両末端にヒドロキシル基を有し且つカーボネート骨格を有する化合物とを含有してなる。
この架橋性樹脂組成物は、これを動的に熱処理すること、好適には220℃以上の温度で反応させることにより、容易に架橋アイオノマー、即ちイオン架橋に加えて共有結合による架橋が行われたアイオノマーを与える。
【0008】
この架橋アイオノマーを生成させるためには、用いるアイオノマーの金属イオン種がアルカリ金属またはアルカリ土類金属成分であることが重要であり、ZnやCoのような多価金属成分をイオン種としたアイオノマーでは、架橋反応が進行しない。
この理由としては、アイオノマー中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属成分が、架橋剤としてのポリカーボネートの脱炭酸による架橋を行うための触媒として有効に作用するためと考えられる。
【0009】
本発明において、アイオノマー骨格に共有結合による架橋構造が導入されていることは、架橋剤(B)添加前のアイオノマーに比べて、架橋剤(B)を添加し、反応させたものでは溶融混練時のトルクが顕著に上昇しているという事実により確認することができる。
即ち、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーは、もともと非イオン性の樹脂に比べて溶融粘度が高いという特性を有するものであるが、本発明による架橋アイオノマーでは、イオン架橋に加えて共有結合による架橋構造が導入されており、そのため溶融混練時におけるトルクの顕著なトルクの向上がもたらされるものである。
【0010】
本発明による架橋アイオノマーでは、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー(A)のカルボキシル基の一部が架橋剤(B)の脱炭酸による分解生成物と反応し、エステル結合を形成することにより、架橋構造が生成しているものと信じられる。
添付図面の図1は本発明による架橋アイオノマー(実施例1)の赤外線吸収スペクトルであり、図2は架橋前のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー(比較例3)の赤外線吸収スペクトルである。
これらの赤外線吸収スペクトルの対比から、本発明による架橋アイオノマーでは、波数1731〜1735cm-1にエステルのカルボニル基の特性吸収が存在しており、上記の架橋構造の存在を示している。
【0011】
本発明による架橋アイオノマーでは、押出成形等の溶融成形が可能であり、しかも上記架橋構造の導入により、耐熱性が顕著に改善されるという利点がある。
即ち、後述する例に示すとおり、架橋剤(B)による架橋構造を導入する前のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー(比較例3)を用いた積層体では、剪断接着破壊温度が111℃であるのに対して、本発明による架橋アイオノマー(実施例2)を用いた積層体では、剪断接着破壊温度が144℃であって、本発明による架橋アイオノマーでは、熱と剪断力とが作用する条件下での耐熱性が顕著に向上していることが明らかである。
【0012】
また、アイオノマーはエチレン系重合体の中でも比較的高い硬度を示し、架橋構造を導入する前のアイオノマー(比較例3)でも53のショアD硬度を有するが、本発明による架橋アイオノマーでは、架橋構造の導入により、硬度が向上しており、59のショアD硬度を示す。
【0013】
更に、本発明による架橋アイオノマーでは、本来のイオン架橋構造と架橋剤(B)による架橋構造とが多分散的に共存しており、ゴム状弾性が付与されている。これは、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー自体の改質のみならず、この架橋アイオノマーを他の熱可塑性重合体に配合して、その物性を改質する用途にも有用である。
【0014】
本発明の架橋性樹脂組成物においては、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー(A)100重量部当たり架橋剤(B)が0.1乃至5重量部、特に0.2乃至4重量部の量で存在する。
架橋剤(B)の量が上記範囲を下回ると、上記架橋構造の導入が不十分となるため、耐熱性、硬度或いはゴム状弾性等の付与が十分でなく、一方架橋剤(B)の量が上記範囲を上回ると、成形体中に発泡が発生したり、成形性が不良となるので好ましくない。
【0015】
本発明による架橋アイオノマーでは、前記式(1)で定義されるトルク比(R)が1.5乃至3.5の範囲にあることが望ましい。
このトルク比(R)が上記範囲を下回ると、前述した諸物性の改善が不十分となり、一方このトルク比が上記範囲を上回ると、架橋アイオノマーの押出成形性や加工性が低下するのでやはり本発明の目的に好ましくない。
【0016】
[エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー(A)]
本発明に用いるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー(A)は金属種がアルカリ金属またはアルカリ土類金属成分であるアイオノマーであるが、このアイオノマー(A)が酸含量が2乃至35重量%のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体から誘導されたものである。またこのアイオノマー(A)が0.1乃至50g/10分のメルトフローレート(190℃,2160g荷重)を有するものであることが好ましい。
【0017】
アイオノマーのベースポリマーであるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸のみからなる狭義の共重合体であることが好ましいが、任意にその他の共重合成分が共重合された多元共重合体であってもよい。また異種、複数のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体の混合物を使用することもできる。
【0018】
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等を例示することができ、特にアクリル酸もしくはメタクリル酸が好ましい。
【0019】
また、任意の他の共重合体成分としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等の不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルの様なビニルエステル、一酸化炭素等を例示することができる。
これらの共重合成分の含有量は、30重量%以下、特に20重量%以下であることが好ましい。
【0020】
ベースポリマーとして用いるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体において、不飽和カルボン酸含量が上記範囲を下回ると、架橋剤(B)による架橋の程度が不足するので好ましくなく、一方上記範囲を上回ると、樹脂の熱安定性が低下するので好ましくない。
【0021】
上記ベースポリマーのメルトフローレート(190℃、2160g荷重)は5〜500g/10分の範囲にある。このメルトフローレートが上記範囲外では、アイオノマー化が困難となったり、その取り扱いが困難となったりするので好ましくない。
【0022】
このようなエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、好ましくは高圧ラジカル共重合によって得ることができる。また、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体の加水分解によっても得ることができる。
【0023】
一方、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体の金属アイオノマーは、前述のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体を、常法によりアルカリ金属またはアルカリ土類金属成分でイオン化することによって得ることができる。
【0024】
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体の金属アイオノマーにおいては、金属イオンとして、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属成分またはマグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属成分を用いることが重要である。更に、ここに示した金属イオンの中で、2種類以上を同時に使用することもできる。
アイオノマーは、ナトリウムイオンを供給する金属化合物、例えばギ酸塩、酢酸塩、炭酸塩、酸化物、水酸化物などとベースポリマーとを反応させることによって容易に製造することができる。かかる製造方法についてもすでによく知られている。
【0025】
アイオノマー中におけるこれらカルボキシル基の中和度は、架橋剤(B)との反応性や加工性を考慮すると6〜80モル%である。
【0026】
このようなエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーには、目的に応じ任意の添加剤、例えば酸化防止剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、着色剤、無機充填剤などを配合することができる。
【0027】
[架橋剤(B)]
本発明に用いる架橋剤(B)は、カーボネート骨格を有し且つ両末端にヒドロキシル基を有する化合物である。
このような化合物はそれ自体公知のものであり、一般に2個の水酸基を有する有機化合物とホスゲンとを反応させることにより得られるものであり、一般に下記式(I)
【化1】
式中、Rはジヒドロキシ有機化合物から誘導される2価の残基である、で表される化学構造を有している。
【0028】
2個の水酸基を有する化合物(ジヒドロキシ有機化合物)としては、ビスフェノール類、例えば、
2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、
2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(ビスフェノールB)、
1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、
1, 1−ビス(4ーヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1, 1−ビス(4ーヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1, 1−ビス(4ーヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、
1, 1−ビス(4ーヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1, 2−ビス(4ーヒドロキシフェニル)エタン
等が挙げられ、また2価アルコール、例えば
エチレングリコール、
プロピレングリコール、
1,4−ブタンジオール、
ネオペンチルグリコール、
1,6−ヘキシレングリコール、
ジエチレングリコール、
トリエチレングリコール、
シクロヘキサンジメタノール、
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物
などが挙げられる。
これらのジヒドロキシ有機化合物は、単独でも2種以上の組合せでも使用可能である。
【0029】
本発明に用いる架橋剤(B)は、一般に500乃至5000、特に600乃至4000の数平均分子量(Mn)を有するのがエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー(A)との反応性の点で好ましい。
即ち、分子量が上記範囲外のものでは、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーとの反応性が低下する傾向があるが、上記範囲のものを用いることにより、円滑に架橋構造の導入を行うことが可能となる。
【0030】
本発明に用いる架橋剤(B)の内好適なものは、例えば旭化成ファインケム株式会社製 CX−5508、CX−5520、CX−5510、CX−4720、CX−4920、等として容易に入手できるが、勿論この例に限定されない。
【0031】
[架橋アイオノマー及びその製法]
本発明による架橋アイオノマーは、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー(A)及び前述した量の架橋剤(B)を含有する樹脂組成物を加熱し、反応させることにより得られる。この樹脂組成物の加熱は220℃以上の温度となるように行うのが好ましい。勿論、樹脂の分解温度を越えるような温度への加熱は避けるべきである。この反応は動的熱処理、一般に溶融混練によって行うことができる。
必要な反応時間は、反応温度や混練の程度によっても相違するが、一般的にいって、3乃至6分間のオーダーで十分である。
【0032】
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーと架橋剤との混合は、溶融混練法によっても行うことができるし、ドライブレンドによっても行うことができる。
好適な方法では、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーを溶融混練し、この中に架橋剤を配合して溶融混練操作を続行して、架橋アイオノマーを製造する。溶融混練には、分解発生する炭酸ガスを除去するために、ベント(排気装置)付きの溶融混練装置を用いるのが望ましく、溶融混練装置としては、一軸或いは二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いることができる。
勿論、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーと架橋剤とを、ブレンダー、ヘンシェルミキサーなどでドライブレンドし、このブレンド物を溶融混練装置に供給して反応を行わせてもよい。
【0033】
本発明において、架橋アイオノマーの製造は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーの製造に引き続いて、一連の工程として行うこともできる。即ち、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーの製造では、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体とアルカリ金属またはアルカリ土類金属成分とを溶融混練してアイオノマーを形成させるが、生成したアイオノマーの溶融物に架橋剤を添加し、溶融混練を続行することにより、本発明の架橋アイオノマーを製造することができる。本発明のこの態様では、操作が簡単であり、工程数も少なく、製造コストも低くてすむという利点がある。
【0034】
本発明の架橋アイオノマーは、一般にメルトフローレート(190℃、2160g荷重)が0.1乃至50g/10分の範囲にあり、押出成形、射出成形などの溶融成形が容易である。
【0035】
また、本発明による架橋アイオノマーは、透明性に優れており、厚さ500μmのフィルムについての546nmの可視光の透過率は、60%以上である。
【0036】
更に、本発明による架橋アイオノマーは適度な弾性率を有しており、その引っ張り弾性率は10MPa乃至60MPaの範囲にある。
【0037】
更にまた、本発明による架橋アイオノマーは、種々の無機或いは有機の基体に対する熱接着性にも優れている。
【0038】
[用途]
本発明の架橋アイオノマーは、単層で或いは他の樹脂との積層体の形で、フィルム、シート、チューブ、中空容器、その他の成形品などの各種形状で使用できる。これらの用途によって異なるが、架橋アイオノマー層の厚みは、例えば5〜5000μmの範囲とすることができる。
【0039】
この架橋アイオノマーの押出加工性は良好であるので、これを押出成形して、フィルム乃至シートの形で各種用途に用いることができる。フィルム等への成形には、Tダイ製膜法やインフレーション製膜法を用いることができる。このフィルムは未延伸でもよく、或いは一軸延伸或いは二軸延伸により分子配向されていてもよい。
【0040】
本発明において、架橋アイオノマーは、単層のフィルムとして、或いは他の樹脂層との積層フィルムとして用いることができる。フィルムの厚みは、用途や要求される強度や柔軟性等によっても相違するが、一般に10乃至3000μmの範囲にあることが好ましい。
【0041】
積層フィルムの場合、相手方の樹脂フィルムとしては、高、中、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体又はそのアイオノマー、エチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合体又はそのアイオノマー、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンのようなオレフィン重合体又は共重合体、ポリスチレン、ABS系樹脂、スチレン・ブタジエンブロック共重合体のようなスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートの様なポリエステル、ナイロン6、ナイロン66のようなポリアミド、ポリ塩化ビニルおよびこれらの任意割合のブレンドのような各種重合体からなるフィルムが挙げられる。
積層フィルムの製造は、多層多重ダイを用いた共押し出し、押出コート、サンドイッチラミネーション、ドライラミネーションなどにより行うことができる。
【0042】
本発明による架橋アイオノマーのフィルム乃至シートは、種々の無機あるいは有機の基体、例えばガラス、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS、金属、(塗装)鋼板に対して、保護層として熱接着させることができる。
用途例としては、包装材料、自動車部品、電子部品、レンズ類、電機、事務機器部品、金属板、液晶板などの被覆材、接着剤、粘着剤などが挙げられる。
【0043】
本発明による架橋アイオノマーは、また、他の熱可塑性重合体に配合して、耐熱性の向上、耐衝撃性の向上、柔軟性の付与等の目的に用いることができる。
高、中、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体又はそのアイオノマー、エチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合体又はそのアイオノマー、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンのようなオレフィン重合体又は共重合体、ポリスチレン、ABS系樹脂、スチレン・ブタジエンブロック共重合体のようなスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートの様なポリエステル、ナイロン6、ナイロン66のようなポリアミド、ポリ塩化ビニルおよびこれらの任意割合のブレンドのような各種樹脂や、ポリエステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、スチレン系エラストマー、ナイロン系エラストマーのような熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの内でも、本発明による架橋アイオノマーは、エチレン系重合体の改質に特に有用である。
本発明の架橋アイオノマーは、上記熱可塑性重合体100重量部当たり80乃至10重量部、特に70乃至20重量部の量で配合することができる。
【0044】
【実施例】
本発明を、次の実施例により更に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものでは決してない。
【0045】
用いた材料は次の通りである。
(1)ベースポリマー
重合体▲1▼ エチレン・メタクリル酸共重合体
メタクリル酸含有量 15重量%
メルトフローレート 60g/10分
重合体▲2▼ エチレン・アクリル酸共重合体
アクリル酸含有量 10重量%
メルトフローレート 60g/10分
重合体▲3▼ エチレン・メタクリル酸・イソブチルアクリレート共重合体
メタクリル酸含有量 10重量%
イソブチルアクリレート含有量 10重量%
メルトフローレート 35g/10分
(2)イオン源
イオン源▲1▼ KOH
イオン源▲2▼ NaOH
イオン源▲3▼ Mg(OH)2
イオン源▲4▼ ZnO
(3)架橋剤
PC▲1▼ ポリカーボネートジオール
旭化成ファインケム株式会社製 CX−5508
分子量 800
【0046】
反応及び混練トルクの測定は下記の装置を用いて行った。
装置:東洋精機株式会社製 ラボ プラストミルC型
スクリュータイプ:R−100型
スクリュー回転数:60rpm
樹脂温240℃の各種アイオノマーに架橋剤を所定量配合し、混練下に上記温度で5分間反応させた。
架橋剤添加前のアイオノマーのトルクを1.0とし、5分間反応後の生成物のトルクの比率を求めた。
【0047】
以下の例における測定は次の通り行った。
(1)成形物の外観
上記プラストミルから取り出したサンプルの外観から、成形性を次の基準で評価した。
〇:熱可塑性を有し加工性に優れる
×:熱可塑性、成形性を失った状態
(2)表面硬度
JIS K7215に準拠し、ショアD硬度を測定した。
(3)メルトフローレート(MFR)
JIS K7210にしたがい、190℃,2160g荷重で測定した。
【0048】
(3)剪断接着破壊温度(SAFT)
試料を厚さ1mmのシートに成形した。
このシートを、ヒートシーラーを用いて、クラフト紙と下記の条件で張り合わせた。
ヒートシール温度:180℃
ヒートシール時間:10秒
ヒートシール圧 :1.0kg/cm2
表裏2回ヒートシール
得られた積層体のクラフト紙に200gの錘をつるし、0.4℃/分の速度でオーブンを加熱し、錘が落ちた温度を剪断接着破壊温度(SAFT)とした。
【0049】
[実施例1]
重合体▲1▼にイオン源▲1▼を中和度(モル%)が70%となるように添加し、反応させて得たアイオノマー100重量部当たり、PC−▲1▼を1.0重量部添加し、反応を行わせた。
得られた結果を表1及び表2に示す。
【0050】
[実施例2]
重合体▲1▼にイオン源▲1▼を中和度(モル%)が30%となるように添加し、反応させて得たアイオノマー100重量部当たり、PC−▲1▼を0.25重量部添加し、反応を行わせた。
得られた結果を表1及び表2に示す。
【0051】
[実施例3]
重合体▲1▼にイオン源▲2▼を中和度(モル%)が70%となるように添加し、反応させて得たアイオノマー100重量部当たり、PC−▲1▼を1.0重量部添加し、反応を行わせた。
得られた結果を表1及び表2に示す。
【0052】
[実施例4]
重合体▲1▼にイオン源▲3▼を中和度(モル%)が70%となるように添加し、反応させて得たアイオノマー100重量部当たり、PC−▲1▼を1.0重量部添加し、反応を行わせた。
得られた結果を表1及び表2に示す。
【0053】
[実施例5]
重合体▲2▼にイオン源▲1▼を中和度(モル%)が70%となるように添加し、反応させて得たアイオノマー100重量部当たり、PC−▲1▼を1.0重量部添加し、反応を行わせた。
得られた結果を表1及び表2に示す。
【0054】
[実施例6]
重合体▲3▼にイオン源▲1▼を中和度(モル%)が70%となるように添加し、反応させて得たアイオノマー100重量部当たり、PC−▲1▼を1.0重量部添加し、反応を行わせた。
得られた結果を表1及び表2に示す。
【0055】
[比較例1]
重合体▲1▼にイオン源▲4▼を中和度(モル%)が60%となるように添加し、反応させて得たアイオノマー100重量部当たり、PC−▲1▼を1.0重量部添加し、反応を行わせた。
得られた結果を表1及び表2に示す。
【0056】
[比較例2]
重合体▲1▼にイオン源▲1▼を中和度(モル%)が30%となるように添加し、反応させて得たアイオノマーにPC−▲1▼を添加しなかった。
得られた結果を表1及び表2に示す。
【0057】
[比較例3]
重合体▲1▼にイオン源▲1▼を中和度(モル%)が70%となるように添加し、反応させて得たアイオノマー100重量部当たり、PC−▲1▼を7.5重量部添加し、反応を行わせた。
得られた結果を表1及び表2に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、金属種としてアルカリ金属またはアルカリ土類金属成分を含むアイオノマーに、末端にヒドロキシ基を有し且つカーボネート骨格を有する架橋剤を配合し、これを動的に熱処理することにより、イオン架橋に加えて化学的架橋を有する架橋アイオノマーを製造することができる。
この架橋アイオノマーは、フィルムやシートなどに溶融成形可能であり、しかも改善された耐熱性、硬度、その他の物性を示す。
本発明の架橋アイオノマーはまた、他の熱可塑性重合体、特にエチレン系重合体に配合して、耐熱性、耐衝撃性等の改質に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による架橋アイオノマーの赤外線吸収スペクトルである。
【図2】架橋前のアイオノマーの赤外線吸収スペクトルである。
Claims (4)
- (A)イオン種がアルカリ金属またはアルカリ土類金属成分であるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーと、(B)両末端にヒドロキシル基を有し且つカーボネート骨格を有する架橋剤とを含有してなり、前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー(A)は、メルトフローレート(190℃、2160g荷重)5〜500g/10分及び不飽和カルボン酸含量2乃至35重量%であるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体ベースポリマーのカルボキシル基の6〜80モル%が中和されたアイオノマーであり、前記架橋剤(B)の数平均分子量は500乃至5000であり、(A)100重量部あたり(B)が0.1乃至5重量部の量で存在することを特徴とする架橋性樹脂組成物。
- 請求項1に記載の架橋性樹脂組成物を動的に熱処理してなることを特徴とする架橋アイオノマー。
- 動的熱処理を220℃以上の温度において行わせていることを特徴とする請求項2に記載の架橋アイオノマー。
- 下記式(1)
R=Tc/To (1)
式中、Toは架橋剤(B)を添加前のエチレン系アイオノマー(A)
の溶融混練時のトルク(kg・m)であり、Tcは架橋剤
(B)を添加5分後のエチレン樹脂組成物の溶融混練時の
トルク(kg・m)である、
のトルク比(R)が1.5乃至3.5の範囲にあることを特徴とする請求項2または3に記載の架橋アイオノマー。
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