JP4744189B2 - カテーテルの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、抗血栓性および滑り性が向上されたカテーテルを製造する方法に関する。
従来より、医療の現場では、心臓疾患などの診断または治療の目的で、カテーテルを人体に挿入することが広く行われている。カテーテルは、可撓性を有する長尺の管状物であり、血管系において人体の任意の挿入口から診断または治療を所望する部位にまで血管に沿って挿入される。このようなカテーテルにおいては、挿入時の疼痛、癒着、感染などの原因となる生体組織の損傷を軽減するため、生体内に円滑に挿入できるようにその表面が低摩擦性である(滑り性に優れる)こと、ならびに、長期生体内留置において、血栓などの生体成分付着を抑制するための生体適合性(抗血栓性)を有することが求められる。
カテーテルの形成材料としては、従来より様々なものが提案されてきたが、近年、熱可塑性エラストマーが検討されている。熱可塑性エラストマーは、分子中に弾性を有するゴム成分(ソフトセグメント)と、塑性変形を防止する分子拘束成分(ハードセグメント)との両成分を有し、現在様々な種類のものが開発されている。熱可塑性エラストマーの中でも、たとえばハードセグメントとしてポリアミド、ソフトセグメントとしてポリエーテルを有するポリアミドエラストマーであるペバックス(アトケム社製)は、可撓性や耐薬品性、成形加工性の観点から、カテーテルの形成に用いられている。しかし、このような熱可塑性エラストマーを用いて形成されたカテーテルは、未だ滑り性および生体適合性が不十分であった。
そこで、カテーテル表面を滑り性および生体適合性を有する材料で被覆することが試みられている。カテーテルのような生体に適用されるデバイス表面を被覆するための技術として、たとえば特許文献1には、抗血栓性に優れたポリエチレングリコール(PEG)を大気圧グロー放電によるプラズマ処理により本体上に付着させる方法が提案されている。この特許文献1に記載された方法は、優れた抗血栓性が必要とされる血液フィルターなどに好適に適用できるものである。
しかしながら、このような特許文献1に記載された方法をカテーテル(特には熱可塑性エラストマーで形成されたカテーテル)に適用しようとすると、得られたPEG付着物は十分な滑り性を達成することができず、また容易に剥離してしまうため実用化に問題がある。
特開2001−323091号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、従来よりも抗血栓性および滑り性の両方が改善されたカテーテルを製造する方法を提供することである。
本発明のカテーテルの製造方法は、熱可塑性エラストマーを主体成分とする基材をポリエチレングリコールで被覆後、プラズマ処理および熱処理を施すことを特徴とする。
ここにおいて、基材をポリエチレングリコールで被覆する前に、基材表面をプラズマ処理することが、好ましい。
また本発明のカテーテルの製造方法においては、ポリエチレングリコール溶液に基材を浸漬することにより、基材をポリエチレングリコールで被覆することが好ましい。
本発明のカテーテルの製造方法は、さらに、熱可塑性エラストマーが、ハードセグメントとしてポリアミド、ソフトセグメントとしてポリエーテルを有するものであることが好ましい。
本発明によれば、従来よりも抗血栓性および滑り性の両方が改善されたカテーテルを製造することができる方法を提供することができる。
本発明は、熱可塑性エラストマーを主体成分とする基材をポリエチレングリコール(PEG)で被覆後、プラズマ処理および熱処理を施すことを特徴とするカテーテルの製造方法である。本発明において、プラズマ処理および熱処理の順序は特に制限されるものではなく、いずれを先に行うようにしてもよく、また、同時に行う(すなわち、加熱しながらプラズマ処理を施す)ようにしてもよい。しかしながら、同時に行う場合には、カテーテルの形状から基材に対して熱を均等に加えることが困難となる虞があり、また最も時間を要する熱処理を最終工程とする方が作業性がよいことから、プラズマ処理を施した後、熱処理を行うようにするのが、好ましい。
本発明におけるプラズマ処理は、特定ガス雰囲気下、基材をPEGで被覆してなる構造物にプラズマを照射する処理である。この処理により、PEGが基材と架橋し、基材上にPEG層が形成される。
本発明におけるプラズマ処理において用いられる処理ガスとしては、He、Ar/He/N2/H2、Ar/He/CO2/H2、Ar/He/CH4/CO2、Ar/He/O2、Ar/N2/H2、Ar/CO2/H2、Ar/CH4/CO2、Ar/O2、He/N2/H2、He/CO2/H2、He/CH4/CO2、He/O2、Ar、N2などを用いることができるが、安定なグロー放電を生じるガスであることから、Heが好ましい。
プラズマ処理の際の温度条件は、熱処理を同時に行うか否かで異なる。熱処理の前または後にプラズマ処理を行う場合には、室温で行われる。また、熱処理を同時に行う場合には、後述する熱処理の温度でプラズマ処理を行う。
プラズマ処理を熱処理の前または後に行う場合には、処理時間は、5分間以上であるのが好ましく、15分間以上であるのがより好ましい。プラズマ処理の時間が5分間未満であると、架橋が不十分であり、得られたカテーテルにおいて被覆層が剥離してしまう傾向にあるためである。また、長時間のプラズマ処理を施した場合には、架橋が進行しすぎて、得られたカテーテルにおいてPEG層の滑り性が悪くなる虞があることから、処理時間は1時間以下であるのが好ましく、30分間以下であるのがより好ましい。
また、プラズマ処理と熱処理を同時に行う場合、処理時間は、5分間〜1時間であるのが好ましく、15分間〜1時間であるのがより好ましい。プラズマ処理および熱処理の時間が5分間未満であると、PEG層が剥離しやすくなる傾向にあるためであり、また、1時間を超えると、架橋が進行しすぎて、得られたカテーテルにおいてPEG層の滑り性が悪くなる虞があるためである。
本発明におけるプラズマ処理の方式は特に制限されるものではなく、グロー放電方式、コロナ放電方式などが挙げられるが、均一な処理を実施するためにはグロー放電が好ましく、また生産上のコストの観点から、大気圧グロー放電方式がより好ましい。プラズマ処理装置としては、平行平板電極の間でカテーテルを回転でき、かつ気密性を保持し得るような装置が好ましく、具体的には、AP−1800F1−BL(エア・ウォーター株式会社製)などを好適に用いることができる。
本発明のカテーテルの製造方法における熱処理は、基材とPEG(プラズマ処理後である場合はPEG層)との密着性を向上させる処理である。当該熱処理は、基材の融点以下の温度で行うのであれば温度条件は特に制限されるものではないが、好ましくは60〜120℃、より好ましくは100℃前後(80〜110℃)に加熱して行う。加熱温度が60℃未満であると、PEG層が剥離しやすくなる傾向にあるためであり、また、120℃を超えると、基材を形成する熱可塑性エラストマーが耐熱性に劣るものである場合には、基材にダメージを与えてしまう虞があるためである。
加熱処理をプラズマ処理の前または後に行う場合、処理時間は1時間以上であるのが好ましく、3時間以上であるのがより好ましい。処理時間が1時間未満であると、基材と被覆層との密着性が不十分である傾向にある。また処理時間は、量産に対する利便性の観点からは、24時間以下であるのが好ましく、12時間以下であるのがより好ましい。なお、プラズマ処理と加熱処理とを同時に行う場合には、熱エネルギーとプラズマエネルギーが同時にかけられているため、処理時間は1時間未満であることが好ましい。
加熱処理をプラズマ処理の前または後に行う場合(すなわち、加熱処理をプラズマ処理と別個に行う場合)、加熱処理に用いる装置としては、たとえば、ウィンディーオーブンWFO−1200型(東京理化器械株式会社製)を用いることができる。
本発明は、熱可塑性エラストマーを主体成分とする基材をPEGで被覆後、プラズマ処理および熱処理を施すことによって、基材上にPEG層を形成し、さらに基材とPEGとの密着性を向上させることができる。このような本発明により、従来よりも滑り性および抗血栓性の両方が改善されたカテーテルを製造することができる。
本発明のカテーテルの製造方法においては、基材をPEGで被覆する前に、基材表面をプラズマ処理(「前プラズマ処理」と呼ぶ)することが好ましい。前プラズマ処理を施すことによって、基材表面の濡れ性を向上することができ、PEGを基材表面に付着させ易くなるという利点がある。
前プラズマ処理に用いられる処理ガスは、特に制限されるものではなく、たとえば、He、Ar/He/N2/H2、Ar/He/CO2/H2、Ar/He/CH4/CO2、Ar/He/O2、Ar/N2/H2、Ar/CO2/H2、Ar/CH4/CO2、Ar/O2、He/N2/H2、He/CO2/H2、He/CH4/CO2、He/O2、Ar、N2などを用いることができる。中でも、PEGと親和性を有する親水性の置換基(−NH2、−COOH、−COH、−OH)を被処理物に導入し得ることから、N2、H2、CO2、CH4、O2を含む混合ガスを用いるのが好ましい。
前プラズマ処理の温度条件については特に制限されるものではなく、通常、常温(25℃)で行う。また、前プラズマ処理の時間についても特に制限されるものではないが、表面に置換基をできるだけ多く導入する観点から、30分間以上行うことが好ましい。また、長時間のプラズマ処理は基材にダメージを与える虞があることから、処理時間は1時間以下とすることが好ましい。
前プラズマ処理の方式は特に制限されるものではなく、グロー放電方式、コロナ放電方式などが挙げられるが、均一な処理を実施するためにはグロー放電が好ましく、また生産上のコストの観点から、大気圧グロー放電方式がより好ましい。プラズマ処理装置としては、たとえば、AP−1800F1−BL(エア・ウォーター株式会社製)などを好適に用いることができる。
また本発明のカテーテルの製造方法においては、基材をPEGで被覆する方法については特に制限されるものではなく、浸漬塗布、はけ塗り、ミストコーティング、静電塗布など従来公知の適宜の方法で行うことができる。中でも、最も簡易で膜厚の制御が容易であることから、浸漬塗布(すなわち、PEG溶液に基材を浸漬する)によって基材をPEGで被覆することが好ましい。
浸漬塗布を行う場合、PEG溶液は、20重量%以下(好ましくは5〜10重量%)の濃度を用いることが好ましい。20重量%を超える濃度のPEG溶液を用いると、膜厚が厚くなりすぎて、その後のプラズマ処理においてプラズマエネルギーが基材とPEGとの界面にまで到達せずに得られたPEG層が剥離しやすくなってしまう傾向にあるためである。
PEG溶液の調製に用いる溶媒としては、揮発性でPEGを溶解し得るものであれば特に制限されるものではなく、たとえばエタノール、メタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類やアセトン、クロロホルムなどの有機溶媒などを用いることができるが、本発明の方法で製造されるカテーテルは生体内に挿入されるものであることに鑑みて、高い安全性の観点からエタノールを用いるのが好ましい。
本発明のカテーテルの製造方法では、基材をPEGで被覆した後、脱溶媒する観点から、乾燥処理を施すことが好ましい。乾燥処理は、たとえば、真空乾燥、自然乾燥、温風乾燥、冷風乾燥など従来公知の適宜の方法で施すことができるが、比較的短い時間(20〜30分間)で脱溶媒することができ、また基材への影響がないことから、真空乾燥により乾燥処理を施すことが好ましい。真空乾燥は、たとえば、真空乾燥器(V0−42D、ADVANTEC社製)を用い、常温で1Torr(133.32Pa)に到達後、上述した範囲内の時間で施すことができるが、勿論これに限定されるものではない。
本発明のカテーテルの製造方法は、具体的には、〔1〕前プラズマ処理、〔2〕PEG塗布、〔3〕乾燥、〔4〕プラズマ処理、〔5〕熱処理、の各工程を経るように実現される。なお、上述したように〔4〕プラズマ処理と〔5〕熱処理とは、同時に行ってもよいし、熱処理を先に行ってもよい。これらの各工程の好適な条件等は上述したとおりである。
なお、プラズマ処理と熱処理とを行った後、得られたカテーテルに超音波洗浄を施すのが好ましい。超音波洗浄を施すことで、PEG被覆層表面に付着した残存モノマーを洗浄除去できるという利点があるためである。なお、超音波洗浄の処理時間は30分間未満であることが好ましい。超音波洗浄の処理時間が30分間を超えると、PEG被覆層が剥離してしまう虞があるためである。超音波洗浄は、たとえば、超音波洗浄器(PHENIX1200FM、株式会社カイジョー製)を用いて好適に施すことができる。超音波洗浄に使用する洗浄液は、未反応のモノマーが溶けやすいものであれば特に制限されるものではないが、安全性の高い純水を使用することが好ましい。
本発明によれば、従来よりも抗血栓性が改善されたカテーテルを製造することができる。カテーテルの抗血栓性の評価は、当分野において抗血栓性試験として一般的に実施されている血小板多血漿を用いたin vitro血小板粘着性試験を用いて行うことができる。ここで、図1は、本発明の製造方法で得られたカテーテル(後述する実施例1)にin vitro血小板粘着性試験を施したカテーテル表面の一部の電子顕微鏡写真であり、図1(a)は500倍拡大、図1(b)は2000倍拡大したものを示している。また図2は、本発明とは異なりプラズマ処理および熱処理を施さず基材をそのまま用いたカテーテル(後述する比較例1)にin vitro血小板粘着性試験を施したカテーテル表面の一部の電子顕微鏡写真であり、図2(a)は500倍拡大、図2(b)は2000倍拡大したものを示している。図1、図2を比較すると明らかなように、本発明の製造方法で得られたカテーテルでは、基材をそのまま用いたカテーテルと比較して、500倍、2000倍の電子顕微鏡写真のいずれでも血小板の付着量が少なく、抗血栓性が改善されていることが分かる。具体的には、図1に示した場合の平均血小板付着密度は40個/64・44μm2であるのに対し、図2に示した場合の平均血小板付着密度は1個/64・44μm2であった(平均血小板付着密度の測定方法は後述する。)。
また本発明によれば、上述した抗血栓性に加えて、滑り性も改善されたカテーテルを製造することができる。滑り性の改善は、たとえば、指に水をつけて、カテーテルの壁面を数回擦って滑りの有無を確認する触感試験で評価することができるし、また、図3に示す試験機を用いた試験で摩擦低減率を算出することでも評価することができる(当該試験の詳細な手順および摩擦低減率の算出方法は後述する)。たとえば、本発明の製造方法で得られたカテーテル(後述する実施例1〜6)の摩擦低減率は27〜41%の範囲であったのに対し、基材をそのまま用いたカテーテル(後述する比較例1)の摩擦低減率は100%、基材をPEGで被覆後プラズマ処理のみを施したカテーテル(後述する比較例2)の摩擦低減率は74.4%、基材をPEGで被覆後熱処理のみを施したカテーテル(後述する比較例3)の摩擦低減率は93.4%であった。
本発明のカテーテルの製造方法においては、基材として熱可塑性エラストマーを主体成分とするものを用いる。たとえば、熱可塑性エラストマーとして後述するペバックス(ATOCHEM社製)を用いる場合、基材は100%のペバックスを含有する。
本発明において用いられる熱可塑性エラストマーは、分子中に弾性を有するゴム成分(ソフトセグメント)と、塑性変形を防止する分子拘束成分(ハードセグメント)との両成分を有するものであれば特に制限されるものではなく、従来公知の適宜のものを用いることができる。このような熱可塑性エラストマーとしては、たとえばアミド系、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、エステル系、フッ素系などが挙げられる。上記中でも、優れた可撓性や耐薬品性、成形加工性を有する観点から、ハードセグメントとしてポリアミド、ソフトセグメントとしてポリエーテルを有するアミド系熱可塑性エラストマーが好ましい。
このようなアミド系熱可塑性エラストマーとして、具体的には、(−〔NH−CO〕−〔C−O−C〕−)の構造を有するペバックス(ATOCHEM社製)を例示することができる。中でも、カテーテル先端には操作性向上の目的で柔軟性を得るため、低い融点を有するものを使用する場合もあるが、本発明では主に強度を必要とすることから、融点が159〜174℃の範囲内のペバックスを好適に用いることができる。
基材は、上記熱可塑性エラストマーを主体成分とする材料を、適宜の方法にて可撓性の管状物に成形することで得ることができる。また、市販品(たとえば、血液造影用カテーテル(IN4−100ST、ダイリン株式会社製)など)を基材をして用いてもよい。なお、当該基材に用いられる材料は、熱可塑性エラストマー以外の任意の成分として、たとえばポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル、ナイロンなどを適宜含有していても勿論よい。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
血液造影用カテーテル(IN4−100ST、ダイリン株式会社製)を基材として用いた。まず、処理ガスとしてAr/He/N/Hを用い、プラズマ発生装置(AP−1800F1−BL、エア・ウォーター株式会社製)を用いて、常温で40分間、基材に前プラズマ処理を施した。次に、5重量%の濃度のPEG600のエタノール溶液に基材を10分間浸漬し、基材表面にPEGを塗布した。そして、真空乾燥装置(V042−ADVANTEC社製)を用いて、30℃で20分間真空乾燥を施した。その後、不活性ガスとしてHeを用い、平行平板型プラズマ発生装置(AP−1800F1−BL、エア・ウォーター株式会社製)を用いて、大気圧グロー放電方式にて、15分間プラズマ処理を施した。さらに、ウィンディーオーブンWFO−1200型(東京理化器械株式会社製)を用いて、100℃で8時間熱処理を施した後、超音波洗浄器(PHENIX1200FM、株式会社カイジョー製)を用いて30分間の超音波洗浄を施した。このようにして、熱可塑性エラストマーを主体成分とする基材上をPEG層で被覆してなるカテーテルを作製した。
<実施例2>
熱処理の時間を3時間とした以外は、実施例1と同様にしてカテーテルを作製した。
<実施例3>
熱処理の時間を1時間とした以外は、実施例1と同様にしてカテーテルを作製した。
<実施例4>
熱処理の温度を60℃とした以外は、実施例1と同様にしてカテーテルを作製した。
<実施例5>
熱処理の温度を110℃とした以外は、実施例1と同様にしてカテーテルを作製した。
<実施例6>
プラズマ処理の時間を5分間とした以外は、実施例1と同様にしてカテーテルを作製した。
<比較例1>
実施例1で作製した基材をそのままカテーテルとして用いたものを比較例1とした。
<比較例2>
熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてカテーテルを作製した。比較例2のカテーテルでは、超音波洗浄開始後3分でPEG被覆層が剥離した。
<比較例3>
プラズマ処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてカテーテルを作製した。比較例3のカテーテルでは、超音波洗浄開始後3分でPEG被覆層が剥離した。
<評価試験>
〔1〕抗血栓性試験
上述のようにして得られた実施例1、比較例1の各カテーテルについて、in vitro血小板粘着性試験を用いて抗血栓性試験を行った。in vitro血小板粘着性試験とは、カテーテルを血小板多血漿(platelet rich plasma)(血液中の血小板以外の血球成分を除去したもの)に浸漬して表面に血小板を粘着させ、電子顕微鏡にてカテーテル上の血小板を観察する方法である。本試験では実験動物として、感染症の恐れがないといわれているウサギを使用した。血小板多血漿にはウサギ血液を遠心分離して得られたものを用いた。
まず、ウサギより採血した血液を遠心分離(1000rpm、10分間)して血小板多血漿を採取した。得られた血小板多血漿を分注してこれに実施例1、比較例1の各カテーテルを浸漬し(カテーテルの先端から約1cmの部分を浸漬)、37℃の温水で保持した。その後、4℃の温度条件で、グルタルアルデヒドに実施例1、比較例1の各カテーテルを4時間浸漬した。
こうして処理された各カテーテルに、凍結乾燥装置(VFD−21、株式会社真空デバイス製)で凍結乾燥を施し、カテーテル表面に付着した血小板中の水分を除去した後、血小板多血漿に浸漬させた部分(先端から約1cmの部分)を切断し、任意の5箇所を電子顕微鏡(S−3000N、日立株式会社製)で観察した。電子顕微鏡による観察は、500倍と2000倍で測定し、カテーテル表面に付着した血小板の数および形状変化を観察した。図1(a)は実施例1の500倍拡大、図1(b)は実施例1の2000倍拡大した電子顕微鏡写真を示し、また図2(a)は比較例1の500倍拡大、図2(b)は比較例1の2000倍拡大した電子顕微鏡写真を示している。
抗血栓性の具体的な評価は、まず、実施例1および比較例1の2000倍電子顕微鏡写真(64μm×44μm)5枚より、血小板付着数をカウントし、それぞれの血小板付着数を度数分布にて比較することで、平均血小板付着密度を算出した。算出された実施例1の平均血小板付着密度は5個/64・44μm2、比較例1の平均血小板付着密度は46個/64・44μm2であった。これらの値より算出された平均血小板付着密度比(実施例1の平均血小板付着密度/比較例1の平均血小板付着密度)は、0.11であった。なお、500倍電子顕微鏡写真は、上記で得られた平均血小板付着密度比が妥当であるか否かを評価するための広域画像として使用した。
〔2〕滑り性試験(1)
実施例1〜6、比較例1〜3の各カテーテルについて、指に水を付け、曲げたカテーテルの壁面を数回擦り、滑りの有無を観測する触感試験にて滑り性の評価を行った。結果を表1に示す。
〔3〕滑り性試験(2)
図3に示す試験機を作製し、この試験機を用いて実施例1〜6、比較例1の各カテーテルについての滑り性の評価試験を行った。図3に示す試験機は、カテーテルの一端を上側に設置した万力で固定し、カテーテルの長手方向に関する中央付近で2個の含水スポンジで挟み込み、この含水スポンジを下側に設置した万力で固定し、一定圧力で押圧し得るようにする。含水スポンジとしては20mm×20mm×17mmに切り出した、ポリウレタン製スポンジ(パワーアップパススポンジ、株式会社ワイズ製)を用い、これを6.5gの生理的食塩水で飽和させたものを用いた(含水スポンジの飽和は、万力で含水スポンジを押圧したときに水滴が落下することで確認できる)。これを下側の万力を用いて、スポンジの厚みDが8.2mmとなるように押圧した。このような状態で、移動速度20mm/分で、下側の万力ごと含水スポンジを下方に移動させた。上側に設置された万力において、カテーテルの一端はコネクタを挟んで固定されており、当該万力には上記含水スポンジの移動によりカテーテルに荷重される力を測定するセンサ(ロードセル式引張り試験機、浅野製作所製)が設置されている。このようにして、含水スポンジを移動させたときのスポンジとカテーテルとの間の摩擦力を測定した。
図4は実施例2についての試験結果を示すグラフであり、図5は比較例1についての試験結果を示すグラフであり、図6は比較例2についての試験結果を示すグラフであり、図7は比較例3についての試験結果を示すグラフである。なお、各グラフにおいて、縦軸は摩擦力、横軸は含水スポンジの移動距離(cm)を示している。評価は、センサにより得られたデータを1cmごとに区切り、それぞれの摩擦力を計算し、それらの平均値を算出した。そして、各カテーテルの平均摩擦力の値を比較例1の平均摩擦力の値で除して100を掛けて得られた値をそれぞれ摩擦低減率(%)とした。結果を表1に示す。
Figure 0004744189
〔4〕赤外分光法(FTIR−AIR)による分析
実施例1、比較例1の各カテーテルについて、赤外分光装置(Spectrum One、Perkin Elmer社製)を用いて、赤外分光法(FTIR−AIR)による分析を行った。図8は実施例1および比較例1についてのFTIR−AIR分析結果を示すグラフである。図8より分かるように、本発明の製造方法で得られたカテーテルでは、基材をそのまま用いたカテーテルになかったOH基のピーク(3700〜3100cm-1)を確認することができる。このことから、本発明の製造方法で得られたカテーテルでは親水性が向上されており、この親水性の向上が潤滑時の滑り性(低摩擦性)の改善に起因していると推測される。
一般に、プラズマ処理によるPEGの架橋反応はOH基を消費する反応であるため、架橋度と低摩擦性は反比例すると予測される。また、プラズマは架橋反応および本体とポリエチレングリコールの化学結合反応を同時に進行させていると考えられる。低エネルギーのプラズマ処理では、PEG自体の架橋反応が抑制されるため低摩擦性は得られるが、基材との架橋反応は十分ではなく膜が剥離してしまう。逆に高エネルギーのプラズマ処理では、PEGと基材との架橋反応は十分行われるため強い密着性が得られるが、PEG自体の架橋反応が過剰となり、低摩擦性は抑制されてしまう。本発明の製造方法では、基材をPEGで被覆後、プラズマ処理および熱処理を施すことで、基材とPEGとの架橋反応が進行し、密着性が向上するものと考えられる。この際、PEG自体は熱では架橋しにくいため、架橋反応は殆ど進行せず、滑り性(低摩擦性)が維持されるものと考えられる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の製造方法で得られたカテーテル(実施例1)にin vitro血小板粘着性試験を施したカテーテル表面の一部の電子顕微鏡写真であり、図1(a)は500倍拡大、図1(b)は2000倍拡大したものを示している。 本発明とは異なりプラズマ処理および熱処理を施さず基材をそのまま用いたカテーテル(比較例1)にin vitro血小板粘着性試験を施したカテーテル表面の一部の電子顕微鏡写真であり、図2(a)は500倍拡大、図2(b)は2000倍拡大したものを示している。 滑り性評価試験に用いた試験機を説明するための図である。 実施例2についての図3に示した試験機を用いた滑り性評価試験の結果を示すグラフである。 比較例1についての図3に示した試験機を用いた滑り性評価試験の結果を示すグラフである。 比較例2についての図3に示した試験機を用いた滑り性評価試験の結果を示すグラフである。 比較例3についての図3に示した試験機を用いた滑り性評価試験の結果を示すグラフである。 実施例1および比較例1についてのFTIR−AIRの分析結果を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 熱可塑性エラストマーを主体成分とする基材をポリエチレングリコールで被覆後、プラズマ処理および熱処理を施すことを特徴とするカテーテルの製造方法。
  2. 基材をポリエチレングリコールで被覆する前に、基材表面をプラズマ処理することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. ポリエチレングリコール溶液に基材を浸漬することにより、基材をポリエチレングリコールで被覆することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 熱可塑性エラストマーが、ハードセグメントとしてポリアミド、ソフトセグメントとしてポリエーテルを有するものである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
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