JP2014147639A - 医療用具 - Google Patents
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Abstract
【課題】表面張力の小さい基材に対するコート性に優れる医療用具を提供する。
【解決手段】表面張力が30mN/m以下である基材と、前記基材表面上に形成される、下記式(1):
ただし、R1は、炭素原子数1〜4のアルキレン基を表わし;R2は、炭素原子数1〜4のアルキル基を表わし;およびR3は、水素原子またはメチル基を表わす、
で示される構成単位を有するセグメントおよびエポキシ基を有する構成単位を有するセグメントを有するブロックコポリマーを含むコート層と、を有する医療用具。
【選択図】なし
【解決手段】表面張力が30mN/m以下である基材と、前記基材表面上に形成される、下記式(1):
ただし、R1は、炭素原子数1〜4のアルキレン基を表わし;R2は、炭素原子数1〜4のアルキル基を表わし;およびR3は、水素原子またはメチル基を表わす、
で示される構成単位を有するセグメントおよびエポキシ基を有する構成単位を有するセグメントを有するブロックコポリマーを含むコート層と、を有する医療用具。
【選択図】なし
Description
本発明は、医療用具に関する。より詳細には、本発明は、表面張力の小さい基材に対するコート性に優れる医療用具に関する。
血漿分離用膜、カテーテル、人工肺用膜、人工血管、人工臓器等の医療用具は、近年、医療技術の向上に伴い、様々な疾患の治療に使用されている。これらの医療用具は、血液、体液または生体組織と長時間接触するため、血液、体液または生体組織との親和性、さらには、血液の凝固を防ぐ血液適合性(抗血栓性)が、求められている。
通常、医療用具への抗血栓性の付与は、医療用具を構成する基材を抗血栓性材料で被覆する方法や、基材の表面に抗血栓性材料を固定する方法により行われる。例えば、特許文献1では、下記一般式(I)で表わされる繰返し単位を構成成分とするヒドロキシル基を含まない合成高分子を表面に有する人工臓器用膜または医療用具であって、補体系を実質的に活性化することなく該表面を生体内組織や血液と接して使用される人工臓器用膜または医療用具が開示される。上記合成高分子は、血液と接すると、補体系の活性化や血小板の粘着が軽微となり、優れた血液適合性を発現できる。
(ただし、式中、R1は炭素数1〜4のアルキレン、R2は炭素数1〜4のアルキルであり、またR3はHまたはCH3をそれぞれ表す)
しかしながら、上記一般式(I)で表わされる繰返し単位を構成成分とする合成高分子は、ポリプロピレンなどの表面張力の大きな材料から形成される基材に対しては優れたコート性を示すものの、ポリメチルペンテンなどの表面張力の小さな材料から形成される基材に対しては十分なコート性を達成できず、使用中に上記合成高分子の被膜が剥離するおそれがあった。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、表面張力の小さい基材に対するコート性に優れる医療用具を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、表面張力の小さい基材に対する血小板付着防止能に優れる医療用具を提供することである。
本発明者は、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、上記合成高分子にエポキシ基を有する構成単位を有するセグメントをさらにブロック形態で導入することによって、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記諸目的は、表面張力が30mN/m以下である基材と、前記基材表面上に形成される、下記式(1):
ただし、R1は、炭素原子数1〜4のアルキレン基を表わし;R2は、炭素原子数1〜4のアルキル基を表わし;およびR3は、水素原子またはメチル基を表わす、
で示される構成単位を有するセグメントおよびエポキシ基を有する構成単位を有するセグメントを有するブロックコポリマーを含むコート層と、を有する医療用具によって達成できる。
で示される構成単位を有するセグメントおよびエポキシ基を有する構成単位を有するセグメントを有するブロックコポリマーを含むコート層と、を有する医療用具によって達成できる。
本発明によれば、表面張力の小さい基材に対して優れたコート性を有する医療用具が提供されうる。
本発明の医療用具は、表面張力が30mN/m以下である基材と、前記基材表面上に形成される、下記式(1):
ただし、R1は、炭素原子数1〜4のアルキレン基を表わし;R2は、炭素原子数1〜4のアルキル基を表わし;およびR3は、水素原子またはメチル基を表わす、
で示される構成単位(本明細書中では、「式(1)の構成単位」とも称する)を有するセグメント(本明細書中では、「式(1)の構成単位由来のセグメント」とも称する)およびエポキシ基を有する構成単位(本明細書中では、「エポキシ基含有構成単位」とも称する)を有するセグメント(本明細書中では、「エポキシ基含有構成単位由来のセグメント」とも称する)を有するブロックコポリマー(本明細書中では、「本発明に係るブロックコポリマー」とも称する)を含むコート層と、を有する。
で示される構成単位(本明細書中では、「式(1)の構成単位」とも称する)を有するセグメント(本明細書中では、「式(1)の構成単位由来のセグメント」とも称する)およびエポキシ基を有する構成単位(本明細書中では、「エポキシ基含有構成単位」とも称する)を有するセグメント(本明細書中では、「エポキシ基含有構成単位由来のセグメント」とも称する)を有するブロックコポリマー(本明細書中では、「本発明に係るブロックコポリマー」とも称する)を含むコート層と、を有する。
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリメチルペンテン(TPX)等の、表面張力が小さい樹脂は、一般的に、成型時の離型性に優れる一方で、その表面へポリマー等をコーティングする場合、コート性が悪いという欠点がある。このうち、例えば、ポリメチルペンテンからなる人工肺膜はガス交換性能を長時間にわたって維持できるため、長期補助循環用の人工肺膜として好適に使用されている。一方で、人工肺膜は、長期間血液と接触するため、抗血栓性(特に血小板の付着・粘着防止性)が強く要求されるが、ポリメチルペンテン(さらにはポリテトラフルオロエチレン)自体には十分な抗血栓性(特に血小板の付着・粘着防止性)はない。このため、これらの表面張力が小さい樹脂からなる基材には抗血栓性物質によるコート層を形成する必要があるが、上記したように表面張力が小さい樹脂はコート性が劣るため、抗血栓性物質によるコート層が基材から剥離しやすく、血小板粘着防止性、特に長期間使用した場合の血小板粘着防止性(血小板粘着防止維持性)が十分達成できない。
これに対して、本発明の医療用具は、上述したように、式(1)の構成単位由来のセグメント及びエポキシ基含有構成単位由来のセグメントを有するブロックコポリマーで被覆されている。このうち、本発明に係るブロックコポリマー中の上記式(1)の構成単位由来のセグメントは、本発明に係るブロックコポリマー(ゆえに、本発明に係るブロックコポリマーを含むコート層)に優れた抗血栓性を付与する。本発明に係るブロックコポリマー(ゆえに、本発明に係るブロックコポリマーを含むコート層)が優れた抗血栓性を発揮するメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。なお、下記推測によって本発明は限定されない。詳細には、式(1)の構成単位由来のセグメント(アルコキシアルキル(メタ)アクリレート部分)は、分子内に極性基としてエーテル結合とエステル結合を有しているのみであり、これらの極性基は窒素原子(アミノ基、イミノ基)やカルボキシル基等と異なり、生体内成分と強い静電的相互作用を持たない。このため、式(1)の構成単位由来のセグメントは、生体内組織や血液に対して活性が低く、また、大きな疎水性基が存在せず適度な親水性を示すため、疎水性相互作用も小さく、優れた生体適合性を発現できる。例えば、医療用具表面と生体内組織や血液中のタンパク質との接触を考えると、なるべくタンパク質の吸着変性や活性化が起こらない表面が好ましく、物質間に働く大きな相互作用である疎水性相互作用や静電的相互作用を小さくすることが有用である。この点からも、本発明の医用用具は、タンパク質の吸着変性や活性化の抑制の点で好適な表面構造となり得る。また、式(1)の構成単位由来のセグメントには、水酸基が存在せず、適度の親水性を有しているので、血液浄化や人工肺システム等の膜素材として血液と接して使用した場合、補体系の活性化や血小板の付着(粘着)が軽微となり、優れた血液適合性を発現できる。さらに、水酸基に起因した水素結合による生体成分との相互作用、吸着タンパクの変性などが全くまたはほとんど起こらない。このため、式(1)の構成単位由来のセグメントを有する本発明に係るブロックコポリマーは、優れた血栓付着抑制/防止性(抗血栓性)を発揮できる、すなわち、本発明に係るブロックコポリマーは、血栓付着抑制/防止材料でありうる。
本明細書において、「血栓付着抑制/防止性(抗血栓性)に優れる」または「優れた血栓付着抑制/防止性(抗血栓性)」とは、血小板付着(粘着)を抑制・防止できることを意味する。詳細には、下記実施例における「血小板付着試験(試験1)」において、血小板付着数(血小板粘着防止能)が80個以下(下限=0個)であることが意味する。好ましくは、本発明の医療用具は、下記実施例における「血小板付着試験(試験1)」における血小板付着数(血小板粘着防止能)が0〜80個であり、より好ましくは0〜40個である。なお、「血小板付着試験(試験1)」における血小板付着数(血小板粘着防止能)の下限は、低いほど好ましいため、0個である。
また、本発明に係るブロックコポリマー中のエポキシ基含有構成単位由来のセグメントは、本発明に係るブロックコポリマー(ゆえに、本発明に係るブロックコポリマーを含むコート層)に、優れたコート性、特に表面張力が30mN/m以下の基材に対して優れたコート性を付与する。本発明に係るブロックコポリマー(ゆえに、本発明に係るブロックコポリマーを含むコート層)が優れたコート性、特に表面張力が30mN/m以下の基材に対して優れたコート性を発揮するメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。なお、下記推測によって本発明は限定されない。詳細には、このセグメント中のエポキシ基は表面張力の小さい基材に対しても、強固に結合(固定化)できる。このため、本発明に係るブロックコポリマーは、このセグメント中のエポキシ基を介して、基材に強固に結合(固定化)するため、基材からのコート層の剥離を抑制・防止できる。したがって、エポキシ基含有構成単位由来のセグメントを有する本発明に係るブロックコポリマーは、表面張力が30mN/m以下の基材に対して優れたコート性を発揮でき、式(1)の構成単位由来のセグメントによる血栓付着抑制/防止性(抗血栓性)を長期間維持できる。
本明細書において、「基材に対するコート性に優れる」または「優れた基材に対するコート性」とは、コート層が基材に強固に結合(固定化)することを指す。詳細には、下記実施例における「血液循環試験(試験2)」において、循環開始時から180分後の血小板数の維持率(血小板粘着防止維持能)が80%以上であることが意味する。好ましくは、本発明の医療用具は、下記実施例における「血液循環試験(試験2)」における血小板数の維持率(血小板粘着防止維持能)が80〜100%であり、より好ましくは90〜100%である。なお、「血液循環試験(試験2)」における血小板数の維持率の上限は、高いほど好ましいため、100%である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」及び「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
[医療用具]
本発明の医療用具は、血液、体液または生体組織と接触して使用されるものであり、例えば、体内埋入型の人工器官や治療用具(インプラント)、体外循環型の人工臓器類、カテーテル、ガイドワイヤー等を例示できる。具体的には、血管や管腔内へ挿入または置換される人工血管、人工気管、ステントや、人工皮膚、人工心膜等の埋入型医療用具;人工心臓システム、人工肺システム、人工腎臓システム、人工肝臓システム、免疫調節システム等の人工臓器システム;留置針;IVHカテーテル、薬液投与用カテーテル、サーモダイリューションカテーテル、血管造影用カテーテル、血管拡張用カテーテル及びダイレーターもしくはイントロデューサー等の血管内に挿入ないし留置されるカテーテル、または、これらのカテーテル用のガイドワイヤー、スタイレット等;胃管カテーテル、栄養カテーテル、経管栄養用(ED)チューブ、尿道カテーテル、導尿カテーテル、気管内吸引カテーテルをはじめとする各種の吸引カテーテルや排液カテーテル等の血管以外の生体組織に挿入ないし留置されるカテーテル類などが例示できる。メトキシエチルアクリレート(MEA)等の式(1)の構成単位由来のセグメントを有する本発明に係るブロックコポリマーは抗血栓性に優れ、また、エポキシ基含有構成単位由来のセグメントを有する本発明に係るブロックコポリマーはエポキシ基を介した強固な基材へのコート性を発揮できる。このため、本発明の医療用具では、コート層が、優れた血小板粘着防止能を発揮しつつ、ポリメチルペンテン等の表面張力が小さくコート性に劣る材料から形成される基材に対して強固に結合できる。したがって、本発明の医療用具は、大量の血液と接する長期補助循環用の人工肺システム(人工肺膜)に特に好適に使用できる。
本発明の医療用具は、血液、体液または生体組織と接触して使用されるものであり、例えば、体内埋入型の人工器官や治療用具(インプラント)、体外循環型の人工臓器類、カテーテル、ガイドワイヤー等を例示できる。具体的には、血管や管腔内へ挿入または置換される人工血管、人工気管、ステントや、人工皮膚、人工心膜等の埋入型医療用具;人工心臓システム、人工肺システム、人工腎臓システム、人工肝臓システム、免疫調節システム等の人工臓器システム;留置針;IVHカテーテル、薬液投与用カテーテル、サーモダイリューションカテーテル、血管造影用カテーテル、血管拡張用カテーテル及びダイレーターもしくはイントロデューサー等の血管内に挿入ないし留置されるカテーテル、または、これらのカテーテル用のガイドワイヤー、スタイレット等;胃管カテーテル、栄養カテーテル、経管栄養用(ED)チューブ、尿道カテーテル、導尿カテーテル、気管内吸引カテーテルをはじめとする各種の吸引カテーテルや排液カテーテル等の血管以外の生体組織に挿入ないし留置されるカテーテル類などが例示できる。メトキシエチルアクリレート(MEA)等の式(1)の構成単位由来のセグメントを有する本発明に係るブロックコポリマーは抗血栓性に優れ、また、エポキシ基含有構成単位由来のセグメントを有する本発明に係るブロックコポリマーはエポキシ基を介した強固な基材へのコート性を発揮できる。このため、本発明の医療用具では、コート層が、優れた血小板粘着防止能を発揮しつつ、ポリメチルペンテン等の表面張力が小さくコート性に劣る材料から形成される基材に対して強固に結合できる。したがって、本発明の医療用具は、大量の血液と接する長期補助循環用の人工肺システム(人工肺膜)に特に好適に使用できる。
[基材]
本発明において、基材は、表面張力が30mN/m以下である基材であり、表面張力が25mN/m以下である基材であることが好ましい。
本発明において、基材は、表面張力が30mN/m以下である基材であり、表面張力が25mN/m以下である基材であることが好ましい。
ここで、基材を構成する材料は、基材の表面張力が30mN/m以下となるような材料であれば特に制限されない。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、表面張力=20mN/m)、ポリメチルペンテン(TPX、表面張力=24mN/m)などが挙げられる。これらのうち、基材は、ポリテトラフルオロエチレンおよび/またはポリメチルペンテンを含む材料から形成されることが好ましく、ポリテトラフルオロエチレンまたはポリメチルペンテンを含む材料から形成されることがより好ましい。特に人工肺膜への用途を考慮すると、ポリメチルペンテンが好適である。なお、上記材料は、1種を単独で使用しても、あるいは2種以上を使用してもよい。また、基材の表面張力が30mN/m以下である限り、表面張力が30mN/mを超える材料が一部使用されてもよい。なお、基材を2種以上の材料から形成する場合の基材の表面張力は、各材料の表面張力にその組成(割合)をかけたものの合計として算出される。例えば、ポリメチルペンテン(TPX、表面張力=24mN/m)80質量部とポリプロピレン(PP、表面張力=34mN/m)20質量部とから形成された基材の表面張力は、26(=24×0.8+34×0.2)mN/mとなる。
また、基材の形態としては、上記のような材料を単独で用いた成型体に限定されず、ブレンド成型物、アロイ化成型物、多層化成形物なども使用可能である。ただし、溶媒で基材を膨潤させてコート層(本発明に係るブロックコポリマー)を強固に結合(固定化)したい場合には、少なくとも基材表面に存在させる材料としては、後述のコート液に使用される溶媒により良好に膨潤し得る材料が好ましい。基材の形状としては、特に制限されず、適用される医療用具の種類に応じて、シート状、チューブ状等の多様な形状を使用可能である。
[コート層]
本発明において、コート層は、上記基材の少なくとも一方の表面上に形成され、基材を被覆する。ここで、「被覆」とは、基材の表面全体がコート層(本発明に係るブロックコポリマー)により完全に覆われている形態のみならず、基材の表面の一部のみがコート層(本発明に係るブロックコポリマー)により覆われている形態、すなわち、基材の表面の一部のみにコート層が形成(本発明に係るブロックコポリマーが付着)した形態をも含むものとする。
本発明において、コート層は、上記基材の少なくとも一方の表面上に形成され、基材を被覆する。ここで、「被覆」とは、基材の表面全体がコート層(本発明に係るブロックコポリマー)により完全に覆われている形態のみならず、基材の表面の一部のみがコート層(本発明に係るブロックコポリマー)により覆われている形態、すなわち、基材の表面の一部のみにコート層が形成(本発明に係るブロックコポリマーが付着)した形態をも含むものとする。
また、コート層は、本発明に係るブロックコポリマーを含む。ここで、コート層は、他の添加剤、薬剤(生理活性物質)などを含んでもよい。しかし、コート層は、本発明に係るブロックコポリマーのみから構成されることが好ましい。
また、基材と接していない側のコート層上、あるいは基材とコート層との間に、別途高分子層、薬剤コート層、表面潤滑層などを設けてもよい。しかし、本発明の医療用具は、基材上に本発明に係るコート層が直接形成されてなる構造を有することが好ましい。
なお、場合によっては、本発明に係るブロックコポリマーを製造する上で使用される物質(例えば、溶剤、界面活性剤など)がコート層に残る場合もあるが、このような場合であっても、本発明による効果(コート性、血小板付着防止能、血小板付着防止維持能など)が損なわれない限り、許容でき、このような形態は、本発明に係るブロックコポリマーから構成される形態に包含される。
(本発明に係るブロックコポリマー)
本発明に係るブロックコポリマーは、式(1)の構成単位由来のセグメントおよびエポキシ基含有構成単位由来のセグメントを有する。
本発明に係るブロックコポリマーは、式(1)の構成単位由来のセグメントおよびエポキシ基含有構成単位由来のセグメントを有する。
(式(1)の構成単位由来のセグメント)
式(1)の構成単位由来のセグメントは、下記式(1):
式(1)の構成単位由来のセグメントは、下記式(1):
で示される構成単位を有する。上述したように、式(1)の構成単位由来のセグメントは、医療用具(コート層)に血小板付着防止能、血小板付着防止維持能を付与する。式(1)の構成単位は、1種単独で存在してもよいし、2種以上の混合形態で存在してもよい。
上記式(1)において、R1は、炭素原子数1〜4のアルキレン基を表わす。ここで、炭素原子数1〜4のアルキレン基としては、特に制限されず、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基などの直鎖または分岐鎖のアルキレン基が挙げられる。これらのうち、エチレン基が好ましい。
また、上記式(1)において、R2は、炭素原子数1〜4のアルキル基を表わす。ここで、炭素原子数1〜4のアルキル基としては、特に制限されず、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの直鎖または分岐鎖のアルキル基、およびシクロプロピル基が挙げられる。これらのうち、メチル基が好ましい。
また、上記式(1)において、R3は、水素原子またはメチル基を表わす。
すなわち、式(1)で示される構成単位は、メトキシエチル(メタ)アクリレートであることが好ましい。これにより、本発明の医療用具の血小板付着防止能、血小板付着防止維持能をより向上できる。
ここで、式(1)の構成単位由来のセグメントは、式(1)の構成単位以外の構成単位(他の構成単位)を有していてもよい。ここで、他の構成単位は、本発明による効果(血小板付着防止能、血小板付着防止維持能など)が損なわれない限り、特に制限されない。具体的には、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アミノメチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノイソプロピルアクリレート、ジアミノメチルアクリレート、ジアミノエチルアクリレート、ジアミノブチルアクリレート、メタアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、アミノメチルメタクリレート、アミノエチルメタクリレート、ジアミノメチルメタクリレート、ジアミノエチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、エチレン、プロピレン、下記式(a):
ただし、R4は、水素原子またはメチル基である、
で示されるダイアセトン(メタ)アクリルアミド、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、硫酸ビニル、硫酸アリル、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート由来の構成単位などが挙げられる。ここで、式(1)の構成単位由来のセグメントが他の構成単位を有する場合の、他の構成単位の組成は、本発明による効果(コート性、血小板付着防止能、血小板付着防止維持能など)が損なわれない限り、特に制限されない。具体的には、式(1)の構成単位由来のセグメント中に存在する他の構成単位の割合は、5〜30モル%程度であることが好ましい。
で示されるダイアセトン(メタ)アクリルアミド、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、硫酸ビニル、硫酸アリル、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート由来の構成単位などが挙げられる。ここで、式(1)の構成単位由来のセグメントが他の構成単位を有する場合の、他の構成単位の組成は、本発明による効果(コート性、血小板付着防止能、血小板付着防止維持能など)が損なわれない限り、特に制限されない。具体的には、式(1)の構成単位由来のセグメント中に存在する他の構成単位の割合は、5〜30モル%程度であることが好ましい。
(エポキシ基含有構成単位)
エポキシ基含有構成単位は、上述したように、医療用具(コート層)にコート性、血小板付着防止維持能を付与する。エポキシ基含有構成単位は、1種単独で存在してもよいし、2種以上の混合形態で存在してもよい。
エポキシ基含有構成単位は、上述したように、医療用具(コート層)にコート性、血小板付着防止維持能を付与する。エポキシ基含有構成単位は、1種単独で存在してもよいし、2種以上の混合形態で存在してもよい。
エポキシ基含有構成単位は、エポキシ基を有するものであれば特に制限されない。具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレート、グリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらのうち、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。すなわち、エポキシ基を有する構成単位が、グリシジル(メタ)アクリレート由来の構成単位であることが好ましい。これにより、本発明の医療用具のコート性、血小板付着防止維持能をより向上できる。
ここで、エポキシ基含有構成単位由来のセグメントは、エポキシ基含有構成単位以外の構成単位(他の構成単位)を有していてもよい。ここで、他の構成単位は、本発明による効果(コート性、血小板付着防止能、血小板付着防止維持能など)が損なわれない限り、特に制限されず、上記式(1)の構成単位由来のセグメントで記載された他の構成単位と同様の構成単位が例示できる。ここで、エポキシ基含有構成単位由来のセグメントが他の構成単位を有する場合の、他の構成単位の組成は、本発明による効果(コート性、血小板付着防止能、血小板付着防止維持能など)が損なわれない限り、特に制限されない。具体的には、エポキシ基含有構成単位由来のセグメント中に存在する他の構成単位の割合は、5〜30モル%程度であることが好ましい。
なお、式(1)の構成単位由来のセグメントまたはエポキシ基含有構成単位由来のセグメント中に存在する他の構成単位の種類および組成(割合)は、同じものであってもあるいは異なるものであってもよい。同様にして、他の構成単位が、式(1)の構成単位由来のセグメントまたはエポキシ基含有構成単位由来のセグメントの一方にのみ存在しても、または双方のセグメントに存在してもよい。式(1)の構成単位由来のセグメントは、式(1)の構成単位のみから構成されることが好ましい。同様にして、エポキシ基含有構成単位由来のセグメントは、エポキシ基含有構成単位のみから構成されることが好ましい。すなわち、本発明に係るブロックコポリマーは式(1)の構成単位及びエポキシ基含有構成単位から構成されることが特に好ましい。
本発明に係るブロックコポリマーが式(1)の構成単位及びエポキシ基含有構成単位から構成される場合の式(1)の構成単位およびエポキシ基含有構成単位の混合比は、特に制限されない。具体的には、式(1)の構成単位およびエポキシ基含有構成単位の混合比(式(1)の構成単位:エポキシ基含有構成単位(モル比))は、4〜15:1であることが好ましく、4〜7:1であることがより好ましい。このような組成のブロックコポリマーは、簡便なコートプロセスにより、良好なコート性、血小板付着防止能及び血小板付着防止維持能を両立できる。
本発明に係るブロックコポリマーの末端は特に制限されず、使用される原料の種類によって適宜規定されるが、通常、水素原子である。本発明に係るブロックコポリマーの構造も特に制限されず、交互ブロックコポリマー、周期的ブロックコポリマーのいずれであってもよい。
本発明に係るブロックコポリマーの重量平均分子量は、コート性、血小板付着防止能及び血小板付着防止維持能の観点から、好ましくは10,000〜1,000,000である。本発明において、「重量平均分子量」は、ポリスチレンを標準物質とするゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)により測定した値を採用するものとする。
本発明に係るブロックコポリマーの製造方法は、特に制限されず、式(1)の構成単位由来のセグメントを構成する単量体、エポキシ基含有構成単位由来のセグメントを構成する単量体を重合する公知の重合法が使用できる。例えば、リビングラジカル重合法、マクロ開始剤を用いた重合法、重縮合法など、従来公知の重合法を適用して製造可能である。これらのうち、各セグメントやブロックコポリマーの分子量および親水性ドメインの分子量分布のコントロールがしやすいという点で、リビングラジカル重合法またはマクロ開始剤を用いた重合法が好ましく使用される。リビングラジカル重合法としては、特に制限されないが、例えば特開平11−263819号公報、特開2002−145971号公報、特開2006−316169号公報等に記載される方法、ならびにJ. Am. Chem. Soc., 117, 5614 (1995);Macromolecules, 28, 7901 (1995);Science, 272, 866 (1996);Macromolecules, 31, 5934-5936 (1998)等に記載される原子移動ラジカル重合(ATRP)法などが、同様にしてあるいは適宜修飾して適用できる。また、マクロ開始剤を用いた重合法では、例えば、エポキシ基含有構成単位由来のセグメントを構成する単量体と、パーオキサイド基等のラジカル重合成基を有するマクロ開始剤を作製した後、そのマクロ開始剤と式(1)の構成単位由来のセグメントを構成する単量体を重合させることで、本発明に係るブロックコポリマーを製造することができる。
共重合後のブロックコポリマーは、再沈澱法、透析法、限外濾過法、抽出法など一般的な精製法により精製することが好ましい。
本発明の医療用具は、コート層が基材の表面に被覆(固定)されてなる。ここで、本発明に係るブロックコポリマー(血栓付着抑制/防止材料)を基材の表面に被覆(固定)する方法は、本発明に係るブロックコポリマーを使用する以外は特に制限されず、公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾して適用できる。例えば、本発明に係るブロックコポリマーを溶媒へ溶解してコート液を調製し、このコート液を医療用具の基材へコーティングする方法が使用できる。このような方法により、コート層は、基材表面に強固に結合(固定化)し、良好な血小板粘着防止能及び血小板粘着防止維持能を発揮することができる。
上記方法において、本発明に係るブロックコポリマーを溶解するのに使用される溶媒としては、本発明に係るブロックコポリマーを溶解できるものであれば特に制限されない。具体的には、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、クロロホルム等のハロゲン化物、ヘキサン等のオレフィン類、テトラヒドロフラン(THF)、ブチルエーテル等のエーテル類、ベンゼン、トルエン等の芳香族類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド類などを例示することができるが、これらに何ら制限されるものではない。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
また、コート液中の本発明に係るブロックコポリマーの濃度は、特に限定されない。塗布性、所望の効果(例えば、コート性、血小板粘着防止能、血小板粘着防止維持能)が得られるなどの観点からは、コート液中の本発明に係るブロックコポリマーの濃度は、0.01〜20重量%、より好ましくは0.05〜15重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%である。ブロックコポリマーの濃度が上記範囲であれば、得られるコート層のコート性、血小板粘着防止能、血小板粘着防止維持能が十分発揮されうる。また、1回のコーティングで所望の厚みの均一なコート層を容易に得ることができ、操作性(例えば、コーティングのしやすさ)、生産効率の点で好ましい。なお、ブロックコポリマーの濃度が0.01重量%未満の場合、基材表面に十分な量のブロックコポリマーを結合(固定化)することができない場合がある。また、ブロックコポリマーの濃度が20重量%を超える場合、コート液の粘度が高くなりすぎて、均一な厚さのブロックコポリマーを基材表面に結合(固定化)できない場合や基材表面に素早く被覆するのが困難な場合がある。但し、上記範囲を外れても、本発明の作用効果に影響を及ぼさない範囲であれば、十分に利用可能である。
基材表面にコート液をコーティングする方法としては、特に制限されるものではなく、塗布・印刷法、浸漬法(ディッピング法、ディップコート法)、噴霧法(スプレー法)、スピンコート法、混合溶液含浸スポンジコート法など、従来公知の方法を適用することができる。これらのうち、浸漬法(ディッピング法、ディップコート法)を用いるのが好ましい。
なお、人工肺膜、カテーテル等の細く狭い内面にコート層を形成させる場合、コート液中に基材を浸漬して、系内を減圧にして脱泡させてもよい。減圧にして脱泡させることにより、細く狭い内面に素早くコート液を浸透させ、コート層の形成を促進できる。
本発明において、基材の一部のみをコート液中に浸漬するのが困難な場合には、予めコート層を形成する必要のない基材の表面部分を着脱(装脱着)可能な適当な部材や材料で保護(被覆等)した上で、基材をコート液中に浸漬して、コート液を基材にコーティングした後、コート層を形成する必要のない基材の表面部分の保護部材(材料)を取り外し、その後、加熱操作等により反応させることで、基材の所望の表面部位にコート層を形成することができる。ただし、本発明では、これらの形成法に何ら制限されるものではなく、従来公知の方法を適宜利用して、コート層を形成することができる。例えば、基材の一部のみを混合溶液中に浸漬するのが困難な場合には、浸漬法に代えて、他のコーティング方法(例えば、医療用具の所定の表面部分に、コート液を、スプレー装置、バーコーター、ダイコーター、リバースコーター、コンマコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ドクターナイフなどの塗布装置を用いて、塗布する方法など)を適用してもよい。なお、医療用具の構造上、円筒状の用具の外表面と内表面の双方が、コート層を有する必要があるような場合には、一度に外表面と内表面の双方をコーティングすることができる点で、浸漬法(ディッピング法)が好ましく使用される。
このようにブロックコポリマーを含むコート液中に基材を浸漬した後は、コート液から基材を取り出して、乾燥する。ここで、乾燥条件は、基材上にブロックコポリマーを含むコート層(被膜)が形成できる条件であれば、特に制限されない。具体的には、乾燥温度は、好ましくは20〜150℃、より好ましくは25〜40℃である。また、乾燥時間は、好ましくは30分〜24時間、より好ましくは1〜10時間である。このような条件であれば、基材表面に本発明に係るブロックコポリマーのコート層(被膜)を形成し、また、コート層中のブロックコポリマーのエポキシ基を介した基材との結合(固定化)が起こることで基材から容易に剥離することのない、強固なコート層を形成させることができる。なお、エポキシ基は加熱することで自己架橋しうるが、架橋反応を促進するためにエポキシ反応触媒や、エポキシ基と反応しうる多官能架橋剤をコート溶液に含ませてもよい。
また、乾燥時の圧力条件も何ら制限されるものではなく、常圧(大気圧)下で行うことができるほか、加圧ないし減圧下で行ってもよい。
乾燥手段(装置)としては、例えば、オーブン、減圧乾燥機などを利用することができるが、自然乾燥の場合には、特に乾燥手段(装置)は不要である。
上記方法により、基材表面に本発明に係るブロックコポリマーのコート層(被膜)を形成した後、エポキシ基を架橋させてもよい。これにより、基材から容易に剥離することのない、強固なコート層を形成させることができる。また、本発明による医療用具は、本発明に係るブロックコポリマーによるコート層(被膜)が表面に形成される。このため、本発明による医療用具は、優れた血小板粘着防止能及び血小板粘着防止維持能を発揮できる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、ポリマーの重量平均分子量は、GPC(装置:SHODEX社 GPCシステム;標準物質:ポリスチレン)を用いて測定した。また、各ブロックコポリマーの組成は、プロトンNMRによって測定した。
また、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「重量部」あるいは「重量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
実施例1
アジピン酸2塩化物72.3g中に50℃でトリエチレングリコール29.7gを滴下した後、50℃で3時間塩酸を減圧除去して、オリゴエステルを得た。次に、得られたオリゴエステル22.5gにメチルエチルケトン4.5gを加え、これを、水酸化ナトリウム5g、31%過酸化水素6.93g、界面活性剤としてのジオクチルホスフェート0.44g及び水120gよりなる溶液中に滴下し、−5℃で20分間反応させた。得られた生成物は、水洗、メタノール洗浄を繰り返した後、乾燥させて、分子内に複数のパーオキサイド基を有するポリ過酸化物を(PPO)を得た。続いて、このPPOを0.5g、グリシジルメタクリレート(GMA)を9.5g、さらにベンゼンを溶媒として、65℃で2時間、減圧下で撹拌しながら重合した。重合後に得られた反応物をジエチルエーテルで再沈殿して、分子内にパーオキサイド基を有するポリGMA(PPO−GMA)を得た。
アジピン酸2塩化物72.3g中に50℃でトリエチレングリコール29.7gを滴下した後、50℃で3時間塩酸を減圧除去して、オリゴエステルを得た。次に、得られたオリゴエステル22.5gにメチルエチルケトン4.5gを加え、これを、水酸化ナトリウム5g、31%過酸化水素6.93g、界面活性剤としてのジオクチルホスフェート0.44g及び水120gよりなる溶液中に滴下し、−5℃で20分間反応させた。得られた生成物は、水洗、メタノール洗浄を繰り返した後、乾燥させて、分子内に複数のパーオキサイド基を有するポリ過酸化物を(PPO)を得た。続いて、このPPOを0.5g、グリシジルメタクリレート(GMA)を9.5g、さらにベンゼンを溶媒として、65℃で2時間、減圧下で撹拌しながら重合した。重合後に得られた反応物をジエチルエーテルで再沈殿して、分子内にパーオキサイド基を有するポリGMA(PPO−GMA)を得た。
続いて、得られたPPO−GMA 1.00g(GMA 0.007mol相当)を重合開始剤として、メトキシエチルアクリレート(MEA)(大阪有機化学工業製、2−MTA)14.0g(0.108mol)をクロロベンゼンに溶解し、80℃で5時間、窒素雰囲気下で重合させた。重合後に得られた反応物をヘキサンで再沈殿して回収し、構成単位としてMEA及びGMAから構成されるブロックコポリマー(1)(MEA:GMA=15:1(モル比)))を得た。得られたブロックコポリマー(1)の重量平均分子量は102,000あった。
得られたブロックコポリマー(1)を用いて、下記試験1及び試験2に記載の方法により、ポリメチルペンテン基材上にコート層を形成して、医療用具を作製した。
実施例2
実施例1と同様な方法に従って、で分子内にパーオキサイド基を有するPPO−GMAを得た。続いて、得られたPPO−GMA 2.20g(GMA 0.015mol相当)を重合開始剤として、MEA(大阪有機化学工業製、2−MTA)13.5g(0.104mol)をクロロベンゼンに溶解し、80℃で5時間、窒素雰囲気下で重合させた。重合後に得られた反応物をヘキサンで再沈殿して回収し、構成単位としてMEA及びGMAから構成されるブロックコポリマー(2)(MEA:GMA=7:1(モル比))を得た。得られたブロックコポリマー(2)の重量平均分子量は143,000であった。
実施例1と同様な方法に従って、で分子内にパーオキサイド基を有するPPO−GMAを得た。続いて、得られたPPO−GMA 2.20g(GMA 0.015mol相当)を重合開始剤として、MEA(大阪有機化学工業製、2−MTA)13.5g(0.104mol)をクロロベンゼンに溶解し、80℃で5時間、窒素雰囲気下で重合させた。重合後に得られた反応物をヘキサンで再沈殿して回収し、構成単位としてMEA及びGMAから構成されるブロックコポリマー(2)(MEA:GMA=7:1(モル比))を得た。得られたブロックコポリマー(2)の重量平均分子量は143,000であった。
得られたブロックコポリマー(2)を用いて、下記試験1及び試験2に記載の方法により、ポリメチルペンテン基材上にコート層を形成して、医療用具を作製した。
実施例3
実施例1と同様な方法に従って、分子内にパーオキサイド基を有するPPO−GMAを得た。続いて、得られたPPO−GMA 3.00g(GMA 0.021mol相当)を重合開始剤として、MEA(大阪有機化学工業製、2−MTA)11.0g(0.084mol)をクロロベンゼンに溶解し、80℃で5時間、窒素雰囲気下で重合させた。重合後に得られた反応物をヘキサンで再沈殿して回収し、構成単位としてMEA及びGMAから構成されるブロックコポリマー(3)(MEA:GMA=4:1(モル比))を得た。得られたブロックコポリマー(3)の重量平均分子量は206,000であった。
実施例1と同様な方法に従って、分子内にパーオキサイド基を有するPPO−GMAを得た。続いて、得られたPPO−GMA 3.00g(GMA 0.021mol相当)を重合開始剤として、MEA(大阪有機化学工業製、2−MTA)11.0g(0.084mol)をクロロベンゼンに溶解し、80℃で5時間、窒素雰囲気下で重合させた。重合後に得られた反応物をヘキサンで再沈殿して回収し、構成単位としてMEA及びGMAから構成されるブロックコポリマー(3)(MEA:GMA=4:1(モル比))を得た。得られたブロックコポリマー(3)の重量平均分子量は206,000であった。
得られたブロックコポリマー(3)を用いて、下記試験1及び試験2に記載の方法により、ポリメチルペンテン基材上にコート層を形成して、医療用具を作製した。
比較例1
GMA 2.20g(0.015mol)、MEA(大阪有機化学工業製、2−MTA)13.5g(0.104mol)をクロロベンゼンに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.014gを重合開始剤として添加し、80℃で5時間、窒素雰囲気下で重合させた。重合後に得られた反応物をヘキサンで再沈殿して回収し、構成単位としてMEA及びGMAから構成されるランダムコポリマー(4)(MEA:GMA=7:1(モル比))を得た。得られたランダムコポリマー(4)の重量平均分子量は96,000であった。
GMA 2.20g(0.015mol)、MEA(大阪有機化学工業製、2−MTA)13.5g(0.104mol)をクロロベンゼンに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.014gを重合開始剤として添加し、80℃で5時間、窒素雰囲気下で重合させた。重合後に得られた反応物をヘキサンで再沈殿して回収し、構成単位としてMEA及びGMAから構成されるランダムコポリマー(4)(MEA:GMA=7:1(モル比))を得た。得られたランダムコポリマー(4)の重量平均分子量は96,000であった。
得られたランダムコポリマー(4)を用いて、下記試験1及び試験2に記載の方法により、ポリメチルペンテン基材上にコート層を形成して、医療用具を作製した。
比較例2
GMA 3.00g(0.021mol)、MEA(大阪有機化学工業製、2−MTA)11.0g(0.084mol)をクロロベンゼンに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.014gを重合開始剤として添加し、80℃で5時間、窒素雰囲気下で重合させた。重合後に得られた反応物をヘキサンで再沈殿して回収し、構成単位としてMEA及びGMAから構成されるランダムコポリマー(5)(MEA:GMA=4:1(モル比))を得た。得られたランダムコポリマー(5)の重量平均分子量は86,000であった。
GMA 3.00g(0.021mol)、MEA(大阪有機化学工業製、2−MTA)11.0g(0.084mol)をクロロベンゼンに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.014gを重合開始剤として添加し、80℃で5時間、窒素雰囲気下で重合させた。重合後に得られた反応物をヘキサンで再沈殿して回収し、構成単位としてMEA及びGMAから構成されるランダムコポリマー(5)(MEA:GMA=4:1(モル比))を得た。得られたランダムコポリマー(5)の重量平均分子量は86,000であった。
得られたランダムコポリマー(5)を用いて、下記試験1及び試験2に記載の方法により、ポリメチルペンテン基材上にコート層を形成して、医療用具を作製した。
比較例3
MEA(大阪有機化学工業製、2−MTA)15.0g(0.084mol)をクロロベンゼンに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.015gを重合開始剤として添加し、80℃で5時間、窒素雰囲気下で重合させた。重合後に得られた反応物をヘキサンで再沈殿して回収し、構成単位としてMEAのみから構成されるポリマー(6)(PMEA)を得た。得られたポリマー(6)の重量平均分子量は78,000であった。
MEA(大阪有機化学工業製、2−MTA)15.0g(0.084mol)をクロロベンゼンに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.015gを重合開始剤として添加し、80℃で5時間、窒素雰囲気下で重合させた。重合後に得られた反応物をヘキサンで再沈殿して回収し、構成単位としてMEAのみから構成されるポリマー(6)(PMEA)を得た。得られたポリマー(6)の重量平均分子量は78,000であった。
得られたポリマー(6)を用いて、下記試験1及び試験2に記載の方法により、ポリメチルペンテン基材上にコート層を形成して、医療用具を作製した。
試験1:血小板付着試験
上記実施例1〜3で得られたブロックコポリマー(1)〜(3)、比較例1〜3で得られたランダムコポリマー(4)、(5)及びポリマー(6)をコートしたポリメチルペンテン基材、ならびに未コートのポリメチルペンテン基材(比較例4)について、下記方法に従って、血小板付着数(血小板粘着防止能)を評価した。
上記実施例1〜3で得られたブロックコポリマー(1)〜(3)、比較例1〜3で得られたランダムコポリマー(4)、(5)及びポリマー(6)をコートしたポリメチルペンテン基材、ならびに未コートのポリメチルペンテン基材(比較例4)について、下記方法に従って、血小板付着数(血小板粘着防止能)を評価した。
すなわち、各ポリマーを0.2重量%の濃度で、水−アルコール混合溶液に溶解した。この溶液中にポリメチルペンテン製の板(基材)(大きさ:10mm×50mm)を常温(25℃)で1分間浸漬した後、常温(25℃)で120分間乾燥することにより、基材上に各ポリマーのコート層を形成した。なお、ポリマーをコートしていないもの(未コートの基材)を比較例4とした。
各ポリマーのコート層が形成された基材または未コートの基材と、クエン酸ナトリウムで抗凝固したヒト新鮮多血小板血漿とを、それぞれ、30分間接触させ、生理食塩水でリンスし、グルタルアルデヒドで固定した後、粘着した血小板数を電子顕微鏡下で計測した。1000倍5視野における血小板付着数の合計を算出した。結果を表1に示す。
上記表1から、本発明に係るメトキシエチルアクリレート及びグリシジルメタアクリレートから構成されるブロックコポリマーのコート層を有する基材(医療用具)は、メトキシエチルアクリレート及びグリシジルメタアクリレートから構成されるランダムコポリマー(比較例1,2)、メトキシエチルアクリレートのホモポリマー(比較例3)及び未コートの基材(比較例4)に比して、有意に血小板の付着(粘着)が抑制されたことが分かる。
試験2:模擬製品形態にコートしたものの血液循環試験
上記実施例1及び3で得られたブロックコポリマー(1)及び(3)、ならびに比較例3で得られたポリマー(6)をコートした基材について、下記方法に従って、血小板数の維持率(%)(血小板粘着防止維持能)を評価した。
上記実施例1及び3で得られたブロックコポリマー(1)及び(3)、ならびに比較例3で得られたポリマー(6)をコートした基材について、下記方法に従って、血小板数の維持率(%)(血小板粘着防止維持能)を評価した。
すなわち、各ポリマーを0.2重量%の濃度で、水−アルコール混合溶液に溶解した。この溶液を、ポリメチルペンテン膜からなる模擬製品形態(血液循環モジュール)(基材)に血液インポート側から充填し、120秒間静置した後に除去し、常温(25℃)で240分間、送風乾燥した。これらの血液循環モジュールを体外循環回路中に組み込み、ヘパリン添加ヒト新鮮血200mlおよび乳酸リンゲル液200mlで充填した。循環血液中のへパリン濃度は、0.5u/mlとした。室温(25℃)、500ml/minで6時間循環させた。循環開始前、ならびに循環開始時から5、15、30、60、120、180、240、300及び360分後に、血液をサンプリングし、血液中の血小板数を計測した。循環開始前の血小板数に対する所定時間循環後の血小板数の割合から血小板数の維持率(%)を算出した。結果を図1に示す。
図1から、実施例1,3のブロックコポリマー(1)、(3)はともに、血液循環中、血小板数の低下はわずかであり、優れた抗血栓性を維持することが分かる。それに対し、比較例3のポリマー(6)は、循環開始60分以降に血小板数が著しく低下し、抗血栓性に劣ることが分かる。
Claims (4)
- 表面張力が30mN/m以下である基材と、
前記基材表面上に形成される、下記式(1):
で示される構成単位を有するセグメントおよびエポキシ基を有する構成単位を有するセグメントを有するブロックコポリマーを含むコート層と、を有する医療用具。 - 前記基材が、ポリテトラフルオロエチレンおよび/またはポリメチルペンテンを含む材料から形成される、請求項1に記載の医療用具。
- 前記エポキシ基を有する構成単位が、グリシジル(メタ)アクリレート由来の構成単位である、請求項1または2に記載の医療用具。
- 前記式(1)で示される構成単位が、メトキシエチル(メタ)アクリレート由来の構成単位である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用具。
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Cited By (2)
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JP2016150163A (ja) * | 2015-02-18 | 2016-08-22 | テルモ株式会社 | 医療用具の製造方法 |
JP2021142162A (ja) * | 2020-03-12 | 2021-09-24 | テルモ株式会社 | 人工肺およびその製造方法 |
-
2013
- 2013-02-04 JP JP2013019556A patent/JP2014147639A/ja active Pending
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