JP6456196B2 - 抗血栓性接着用組成物、ならびに該抗血栓性接着用組成物を利用した医療用具およびその製造方法 - Google Patents

抗血栓性接着用組成物、ならびに該抗血栓性接着用組成物を利用した医療用具およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6456196B2
JP6456196B2 JP2015047613A JP2015047613A JP6456196B2 JP 6456196 B2 JP6456196 B2 JP 6456196B2 JP 2015047613 A JP2015047613 A JP 2015047613A JP 2015047613 A JP2015047613 A JP 2015047613A JP 6456196 B2 JP6456196 B2 JP 6456196B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
antithrombogenic
adhesive composition
polyvinyl chloride
weight
antithrombotic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015047613A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016165422A (ja
Inventor
崇王 安齊
崇王 安齊
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
TRUMO KABUSHIKI KAISHA
Original Assignee
TRUMO KABUSHIKI KAISHA
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by TRUMO KABUSHIKI KAISHA filed Critical TRUMO KABUSHIKI KAISHA
Priority to JP2015047613A priority Critical patent/JP6456196B2/ja
Publication of JP2016165422A publication Critical patent/JP2016165422A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6456196B2 publication Critical patent/JP6456196B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Description

本発明は、抗血栓性接着用組成物、および該抗血栓性接着用組成物により接着された接着部を有する医療用具に関する。本発明はまた、上記抗血栓性接着用組成物により医療用チューブの接着部を接着する工程を含む、医療用具の製造方法に関する。
近年、各種の高分子材料を利用した医療材料の検討が進められており、人工腎臓用膜、血漿分離用膜、カテーテル、ステント、人工肺用膜、人工血管、癒着防止膜、人工皮膚等への利用が期待されている。これらにおいては、生体にとって異物である合成高分子材料を生体組織や血液等の体液と接触させて使用することとなる。したがって、医療材料は、生体適合性を有することを要求される。医療材料に要求される生体適合性はその目的や使用方法によって異なるが、血液と接する材料として使用する医療材料には、血液凝固系の抑制、血小板の粘着・活性化の抑制、補体系の活性化の抑制という特性(抗血栓性)が求められる。
通常、医療用具への抗血栓性の付与は、医療用具を構成する基材を抗血栓性材料で被覆する方法や、基材の表面に抗血栓性材料を固定する方法により行われる。
例えば、特許文献1には、血小板の粘着・活性化の抑制、補体系の活性化の抑制効果、生体内組織との親和性といった生体適合性を同時に満たす合成高分子を表面に有する、生体内組織や血液と接して使用される人工臓器用膜または医療用具が開示されている。特許文献1には、抗血栓性材料である合成高分子として、ポリメトキシエチルアクリレート(PMEA)等が開示されている。
特開平4−152952号公報
人工血管、人工臓器等の長期間に渡って血液と接触する医療用具では、血液の凝固を防ぐ抗血栓性が非常に重要である。このような医療器具の血液流路は、一般的には樹脂製のチューブや分岐管等で構成されているため、チューブと分岐管の間に嵌合部等の接続部が存在する。この接続部は、血液等の循環流体の露出を有効に防止するため、接着剤により接着性を向上させることが考えられる。
しかしながら、医療器具の血液流路の接続部では、血液と接触する面に段差(段差面)が生じる場合がある。このような場合、段差面のある部分(段差部)で血流が滞るため、段差部周辺に血栓が形成されやすい傾向にある。また、医療器具の血液流路の接続部では、樹脂製のチューブ等に接着剤を塗布する際に抗血栓性材料が剥れたり、接着剤が抗血栓性材料を被覆したりする虞がある。このような場合、血液流路の接続部は、血流回路を構成するチューブ等の内表面に抗血栓性材料が被覆されていない領域ができるため、血栓が形成されやすくなる虞がある。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、医療用具に用いる医療用チューブの接続部において優れた接着性と高い抗血栓性とを付与できる抗血栓性接着用組成物を提供することにある。
本発明者は、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、100重量部のポリ塩化ビニルを溶解する有機溶媒、および0.1〜5重量部の抗血栓性高分子材料を含む抗血栓性接着用組成物により上記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明によれば、医療用具に用いるチューブの接続部において優れた接着性と高い抗血栓性とを付与できる抗血栓性接着用組成物が提供される。
図1は、実施例1において用いた、100重量部の有機溶剤に対して1重量部の抗血栓性高分子材料を含む抗血栓性接着用組成物により接着したチューブについての、抗血栓性試験直後の嵌合部の拡大写真である。 図2は、実施例2において用いた、100重量部の有機溶剤に対して0.5重量部の抗血栓性高分子材料を含む抗血栓性接着用組成物により接着したチューブについての、抗血栓性試験直後の嵌合部の拡大写真である。 図3は、比較例3において用いた、抗血栓性高分子材料を含まない有機溶剤により接着したチューブについての、抗血栓性試験直後の嵌合部の拡大写真である。
本発明は、ポリ塩化ビニルを溶解する有機溶媒:100重量部、および抗血栓性高分子材料:0.1〜5重量部を含む、抗血栓性接着用組成物に関する。本発明にかかる抗血栓性接着用組成物によれば、医療用具に用いるチューブの接続部において、優れた接着性と高い抗血栓性とを付与することができる。本発明の技術的範囲を制限するものではないが、これは、以下のメカニズムによるものと考えられる。すなわち、本発明に係る抗血栓性接着用組成物は、抗血栓性材料である抗血栓性高分子材料を0.1重量部以上含む。従って、本発明に係る抗血栓性接着用組成物により医療用チューブ等の接合物を接着することで、血栓が形成されやすい嵌合部においても血栓の形成が抑制される。一方、抗血栓性接着用組成物に含まれる抗血栓性高分子材料は5重量部以下であるため、優れた接着性が得られ、高い液密性を達成することができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
[抗血栓性接着用組成物]
(ポリ塩化ビニルを溶解する有機溶媒)
本発明に係る抗血栓性接着用組成物は、ポリ塩化ビニルを溶解する有機溶媒(ポリ塩化ビニル溶解性有機溶媒)を含む。一般的に、ポリ塩化ビニル製のチューブが医療用チューブとして用いられている。本発明に係る抗血栓性接着用組成物がポリ塩化ビニルを溶解する有機溶媒を含むことにより、抗血栓性接着用組成物を接続部に塗布した際、接着されるチューブ面の樹脂材料の一部が溶解し、乾燥後には接続部が液密に接着される、すなわち溶剤接着によるものと推測される。また、本発明に係る抗血栓性接着用組成物であれば、接着剤を使用しなくとも医療用チューブの接着が可能であるため、接着剤が抗血栓性高分子材料等を被覆してしまうことを防止し得る。なお、上記メカニズムは推測であり、本発明の技術的範囲をなんら制限するものでは無い。
本発明に用いられるポリ塩化ビニルを溶解する有機溶媒としては、例えば、アセトン、エタノールアミン、エチレングリコール、カルビトール、酢酸エチル、酢酸プロピル、シクロヘキサノン、セロソルブ、テトラヒドロフラン、トルエン、ジクロロメタン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等の、揮発性が高い有機溶媒が例示できる。これらを1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。揮発性の高い有機溶媒を抗血栓性接着用組成物に用いることにより、医療用具に用いるチューブの接続時に有機溶媒を乾燥する時間が短くなり、作業効率を高めることができる。本発明の一実施形態では、ポリ塩化ビニルの接着性の観点から、イソオクタン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、トルエン、およびジクロロメタンからなる群から選択される少なくとも1種以上である。有機溶媒としては、特に、速乾性、および下記一般式(1)で示される繰り返し単位(A)を有する抗血栓性高分子材料を用いた場合の溶解性の観点から、より好ましくはシクロヘキサノンが用いられる。抗血栓性高分子材料の溶解性が高い有機溶媒を用いることにより、接着面への抗血栓性材料の塗布性が良好となり、高い抗血栓性が得られる。
(抗血栓性高分子材料)
本発明に係る抗血栓性接着用組成物は、100重量のポリ塩化ビニルを溶解する有機溶媒に対し、0.1〜5重量部の抗血栓性高分子材料を含む。抗血栓性接着用組成物が含む抗血栓性高分子材料としては、例えば、ポリアルコキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、下記一般式(1)で示される繰り返し単位(A)を有するようなポリアルコキシアルキル(メタ)アクリレート)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ムコ多糖(例えば、ヘパリン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、およびこれらの誘導体(例えば、ヘパリンナトリウム、ヘパリンカリウム、ヘパリンカルシウム等のヘパリン塩、エポキシ化ヘパリン)など)、スルホ基を有する親水性高分子およびその誘導体である人工ヘパリノイド(例えば、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリビニル硫酸など)、ならびにエラスチン等が例示できる。これらを1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
抗血栓性高分子材料の分子量は、所望の活性が得られる限りにおいて制限されない。例えば、下記の一般式(1)で示される繰り返し単位(A)を有する抗血栓性親水性ポリマーを例にとると、重量平均分子量は好ましくは5万〜200万である。一般式(1)で示される繰り返し単位(A)を有する抗血栓性親水性ポリマーの重量平均分子量は、コート層の被覆のしやすさの点から、より好ましくは8万〜100万である。すなわち、本発明の一実施形態は、一般式(1)で示される繰り返し単位(A)を有する抗血栓性高分子材料の重量平均分子量が、8万〜100万である。
本発明において、一般式(1)で示される繰り返し単位(A)を有する抗血栓性親水性ポリマーをはじめとする樹脂製材料についての「重量平均分子量」は、ポリスチレンを標準物質とするゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)により測定した値を採用するものとする。また、人工ヘパリノイド、その他の生体高分子材料についての「重量平均分子量」は、プルランを標準物質とするゲル濾過クロマトグラフィー(Gel Filtration Chromatography、GFC)により測定した値を採用するものとする。
本発明の一実施形態では、抗血栓性接着用組成物が含有する抗血栓性高分子材料は、下記一般式(1)で示される繰り返し単位(A)を有する抗血栓性親水性ポリマー(以下、「下記一般式(1)で示される繰り返し単位(A)を有する抗血栓性親水性ポリマー」を、単に「繰り返し単位(A)を有するポリマー」とも称する。)である。
一般式(1)中、Rは水素原子またはメチル基であり、好ましくは水素原子である。
一般式(1)中、Rは、炭素数1〜4の環状、直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であることが好ましい。具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、シクロプロピレン基、テトラメチレン基、シクロブチレン基などが挙げられる。これらのうち、抗血栓性の向上効果を考慮すると、炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であることが好ましく、メチレン基またはエチレン基であることが特に好ましい。
一般式(1)中、Rは、炭素数1〜4の環状、直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基などが挙げられる。これらのうち、抗血栓性の向上効果を考慮すると、炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアルキル基であることが好ましく、メチル基またはエチル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
繰り返し単位(A)を有するポリマーは、繰り返し単位(A)を形成する単量体(以下、「単量体a」とも称する。)の重合反応によって得ることができる。
単量体aとしては、具体的には、メトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート(MEA)、メトキシプロピルアクリレート、メトキシブチルアクリレート、エトキシメチアクリレートル、エトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレート、エトキシブチルアクリレート、プロポキシメチルアクリレート、プロポキシエチルアクリレート、プロポキシプロピルアクリレート、プロポキシブチルアクリレート、ブトキシメチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシプロピルアクリレート、ブトキシブチルアクリレート、メトキシメチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、メトキシプロピルメタクリレート、メトキシブチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、エトキシプロピルメタクリレート、エトキシブチルメタクリレート、プロポキシメチルメタクリレート、プロポキシエチルメタクリレート、プロポキシプロピルメタクリレート、プロポキシブチルメタクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシプロピルメタクリレート、ブトキシブチルメタクリレートが挙げられる。上記一般式(1)で示される単量体としては、好ましくはメトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート(MEA)、エトキシメチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシメチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレートであり、入手が容易であるという観点から、より好ましくはメトキシエチル(メタ)アクリレートである。これらの単量体を1種単独で、または2種以上を混合して用いることもできる。
なお、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」および/または「メタアクリレート」を意味する。
上記の繰り返し単位(A)を有するポリマーは、単量体aに加え、さらに、単量体aと共重合可能な他の単量体(以下、単に「他の単量体」とも称する。)に由来する繰り返し単位を有していてもよい。単量体aと共重合可能な他の単量体としては、例えば、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アミノメチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノイソプロピルアクリレート、ジアミノメチルアクリレート、ジアミノエチルアクリレート、ジアミノブチルアクリレート、メタアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、アミノメチルメタクリレート、アミノエチルメタクリレート、ジアミノメチルメタクリレート、ジアミノエチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、エチレン、プロピレン、カルボキシベタイン(メタ)アクリレート、N−ビニルアセトアミド、スルホベタイン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等がある。これらを1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
繰り返し単位(A)を有するポリマーが、単量体aと他の単量体との共重合体である場合、他の単量体に由来する繰り返し単位の割合は、例えば0モル%を超えて、15モル%以下であり、好ましくは0モル%を超えて、13モル%以下である(前記繰り返し単位(A)、および他の単量体に由来する繰り返し単位の合計量が100モル%である)。共重合体における繰り返し単位(A)、繰り返し単位(B)、または他の単量体に由来する繰り返し単位の割合は、重合の際に用いる単量体の割合を変更することで、任意に調整できる。
繰り返し単位(A)を有するポリマーの末端は特に制限されず、使用される原料の種類によって適宜規定されるが、通常、水素原子である。繰り返し単位(A)を有する抗血栓性親水性ポリマーが共重合体である場合、共重合体の構造も特に制限されず、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。
上記繰り返し単位(A)を有するポリマーの製造方法は特に制限されない。例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などの公知の重合方法が採用でき、好ましくは製造が容易なラジカル重合を使用する。
繰り返し単位(A)を有するポリマーの重合方法は、通常、上記繰り返し単位(A)に対応する単量体aと、必要に応じて用いられる他の単量体とを、重合溶媒中で重合開始剤と共に撹拌・加熱することにより(共)重合させる方法が使用される。
重合温度は、分子量の制御の点から、40℃〜120℃とするのが好ましい。重合反応は通常30分〜24時間行われる。
重合溶媒としては、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン供与性溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;などが好ましい。これらを1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
重合溶媒中の単量体濃度(固形分濃度)は、反応溶液全体に対して、通常5〜90重量%であり、好ましくは10〜80重量%である。なお、重合溶媒に対する単量体濃度は、単量体a、ならびに任意に含まれるこれらと共重合可能な他の単量体(以下、「単量体a、ならびに他の単量体」を、「重合単量体」とも称する。)の総重量の濃度を指す。
重合単量体を添加した重合溶媒は、重合開始剤の添加前に、脱気処理を行ってもよい。脱気処理は、例えば、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスにて、重合単量体を添加した重合溶媒を0.5〜5時間程度バブリングすればよい。脱気処理の際は、重合単量体を添加した重合溶媒を40℃〜120℃程度、好ましくは重合工程における重合温度に調温しても良い。
繰り返し単位(A)を有するポリマーの製造には、従来公知の重合開始剤を用いることができ、特に制限されるものではないが、例えば2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤;過硫酸カリウム(KPS)、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、t−ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物等の酸化剤に、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸等の還元剤を組み合わせたレドックス系重合開始剤等が使用できる。
重合開始剤の配合量は、繰り返し単位(A)を有するポリマーの製造に用いる全重合単量体(1モル)に対して、例えば0.0001〜1モルとなる量である。
さらに、必要に応じて、連鎖移動剤、重合速度調整剤、界面活性剤、およびその他の添加剤を、重合の際に適宜使用してもよい。
重合反応を行う雰囲気は特に制限されるものではなく、大気雰囲気下、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気等で行うこともできる。また、重合反応中は、反応液を攪拌しても良い。
重合後の繰り返し単位(A)を有するポリマーは、再沈澱法、透析法、限外濾過法、抽出法など一般的な精製法により精製することができる。
精製後の繰り返し単位(A)を有するポリマーは、凍結乾燥、減圧乾燥、噴霧乾燥、または加熱乾燥等、任意の方法によって乾燥することもできるが、重合体の物性に与える影響が小さいという観点から、凍結乾燥または減圧乾燥が好ましい。
繰り返し単位(A)を有するポリマーにおける繰り返し単位(A)、または他の単量体に由来する繰り返し単位の割合は、NMR法や、赤外線スペクトル解析等により確認すればよい。例えば、繰り返し単位(A)、および他の単量体に由来する繰り返し単位で構成される共重合体の場合、HNMR測定における積分比によって共重合体における、繰り返し単位(A)と他の単量体に由来する繰り返し単位との割合を解析できる。また、H−NMRの測定においてピークが重なる場合は、13C−NMRを用いて算出することができる。
得られた(共)重合体に含まれる、未反応の重合単量体は、共重合体全体に対して0.01重量%以下であることが好ましい。未反応の重合単量体は少ないほど好ましいので、下限は特段制限されないが、例えば0重量%である。残留単量体の含量は、例えば高速液体クロマトグラフィーなど、当業者に知られた方法により測定できる。
(抗血栓性接着用組成物の製造方法)
本発明に係る抗血栓性接着用組成物は、0.1〜5重量部の上記抗血栓性高分子材料を、100重量部のポリ塩化ビニルを溶解する有機溶媒に対して添加して調製する。100重量部のポリ塩化ビニルを溶解する有機溶媒に対する抗血栓性高分子材料の割合は、接着性と抗血栓性との両立の観点から、好ましくは0.1〜2重量部であり、より好ましくは0.3〜1重量部であり、更に好ましくは0.5〜1重量部である。
本発明に係る抗血栓性接着用組成物は、任意に、架橋剤、増粘剤、防腐剤、pH調整剤等、ゲル化剤、増粘剤、可塑剤、接着剤等、他の成分を添加する工程を含んでも良い。抗血栓性接着用組成物が架橋剤を含むことにより、抗血栓性高分子材料がより強固に被着体表面へ固定化されうる。また、抗血栓性接着用組成物が接着剤を含むことにより、抗血栓性を維持しつつ、医療用チューブの接着性をより向上し得る。接着剤としては、例えば、アクリル樹脂系(アクリルモノマーを主成分とする樹脂、例えば、ウレタンアクリレート樹脂)、エポキシ樹脂系、シアノアクリレート樹脂系、またはシリコーン系などの接着剤が例示できる。
本発明の一実施形態では、抗血栓性接着用組成物は、0.1〜5重量%の上記抗血栓性高分子材料と、99.9〜95重量%のポリ塩化ビニルを溶解する有機溶媒とからなる(抗血栓性高分子材料とポリ塩化ビニルを溶解する有機溶媒との合計量は100重量%である)。本発明の別の実施形態では、抗血栓性接着用組成物は、0.1〜2重量%の上記抗血栓性高分子材料と、99.9〜98重量%のポリ塩化ビニルを溶解する有機溶媒とからなる(抗血栓性高分子材料とポリ塩化ビニルを溶解する有機溶媒との合計量は100重量%である)。本発明のさらに別の実施形態では、抗血栓性接着用組成物は、0.5〜1重量%の上記抗血栓性高分子材料と、99.5〜99重量%のポリ塩化ビニルを溶解する有機溶媒とからなる(抗血栓性高分子材料とポリ塩化ビニルを溶解する有機溶媒との合計量は100重量%である)。
本発明に係る抗血栓性接着用組成物は、上記抗血栓性高分子材料、および任意に添加される上記の他の成分を、ポリ塩化ビニルを溶解する有機溶媒に所望量添加して調製する。抗血栓性接着用組成物の調製時の液温は、特に制限されないが、例えば15〜40℃である。調製時に、任意の手段により組成物を攪拌、または懸濁してもよい。
調製後の抗血栓性接着用組成物において、塗布性の観点から、抗血栓性高分子材料はポリ塩化ビニルを溶解する有機溶媒に溶解していることが好ましいが、分散した状態であっても良い。一般式(1)で示される繰り返し単位(A)を有する抗血栓性高分子材料を用いた場合、溶解性の観点から、ポリ塩化ビニルを溶解する有機溶媒としてはシクロヘキサノンが好ましく用いられる。
[医療用具]
本発明の一実施形態では、上記の抗血栓性接着用組成物により接着された接着部を有する、医療用具が提供される。上記の抗血栓性接着用組成物により医療用具を接着することにより、優れた接着性と高い抗血栓性とが達成され得る。
本発明に係る医療用具としては、例えば、体内埋入型の人工器官や治療器具、体外循環型の人工臓器類、カテーテル、ガイドワイヤー等を例示できる。具体的には、;人工心臓システム、人工肺システム、人工心肺システム、人工腎臓システム、人工肝臓システム、免疫調節システム等の人工臓器システム;留置針、IVHカテーテル、薬液投与用カテーテル、サーモダイリューションカテーテル、血管造影用カテーテル、血管拡張用カテーテルおよびダイレーター若しくはイントロデューサー等の血管内に挿入若しくは留置されるカテーテル;または、これらのカテーテル用のガイドワイヤー、スタイレット等;が例示できる。特に、人工肺システム等は、長時間連続して使用され、かつ、チューブの連結部等において複数の接続部を有している。そのため、大量の血液と接する人工肺システム、または人工心肺システムとして好適に使用される。
本発明に係る抗血栓性接着用組成物は、上記医療用具の製造に用いられる樹脂製部材(たとえば、チューブ等)の接続部(例えば、嵌合部、貼合部等)の接着に用いられる。本発明に係る抗血栓性接着用組成物によって接着される部材の材質は、本発明の目的効果が達成される限りにおいて特に制限されない。例えば、医療用具の製造に用いられる樹脂製部材の材質としては、ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン(PVDC);ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンや変性ポリオレフィン;ポリアミド;ポリイミド;ポリウレタン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の芳香族ポリエーテルケトン;ABS樹脂(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂);ポリカーボネート;ポリアミド系熱可塑性エラストマー;シリコーンゴム等が例示できる。本発明に係る抗血栓性接着用組成物によって接着される複数の被着体は、それぞれ同一の材質であってもよいが、異なる材質であっても良い。本発明に係る抗血栓性接着用組成物は、接着性の高さから、複数の被着体の少なくとも一つはポリ塩化ビニル製部材であることが好ましく、ポリ塩化ビニル製部材同士の接着に特に好ましく用いられる。
被着体の形状は医療用具の用途等に応じて適宜選択され、例えば、チューブ状、シート状、ロッド状等の形状をとりうる。被着体の形態は、上記のような材料を単独で用いた成型体に限定されず、ブレンド成型物、アロイ化成型物、多層化成形物などでも使用可能である。基材は単層であっても、積層されていてもよい。この際、基材が積層されている場合には、各層の基材は同じものであっても、異なるものであってもよい。
好ましくは、本発明に係る抗血栓性接着用組成物は、樹脂製医療用チューブの嵌合部の接着に用いられる。本発明に係る抗血栓性接着用組成物によって接着されるチューブの径は特に制限されず、例えば内径0.1〜100mm、外径0.2〜200mmである。
本発明に係る抗血栓性接着用組成物は、接着部の形成に用いられるが、接着部以外の部材表面にも上記の抗血栓性高分子材料を含むコート層を有することが好ましい。
本明細書において、「部材表面」とは、一の部材における他の部材との接続部表面、および生体組織や血液等の体液と対する部材面である。抗血栓性高分子材料を有するコート層が部材表面に形成されることにより、部材表面の抗血栓性が向上する。本発明に係る医療用具においては、生体組織や血液等の体液と対する部材面以外にも、抗血栓性高分子材料を有するコート層が形成されることを妨げるものではない。
接着部以外の部材表面に上記の抗血栓性高分子材料を含むコート層を形成する場合、例えば、抗血栓性高分子材料を含むコート液を塗布してコート層を形成すればよい。コート液の調製に用いる溶媒は、特に制限されるものでは無く、例えば、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等が例示できる。上記溶媒は、1種単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。これらの溶媒に対し、例えば、抗血栓性高分子材料の含量がコーティング剤全体に対して0.01〜20重量%となるように添加すればよい。コート液の塗布後、任意に乾燥してコート層を形成する。
本発明に係る医療用具においては、上記の抗血栓性接着用組成物を被着体に塗布し、乾燥して接着部を形成する。被着体への塗布方法は特に制限されず、例えば、ディップコーティング、噴霧、スピンコーティング、滴下、ドクターブレード、刷毛塗り、ロールコーター、エアーナイフコート、カーテンコート、ワイヤーバーコート、グラビアコート等が挙げられる。例えば、ディップコーティング(浸漬)によって塗布する場合、15〜40℃の抗血栓性接着用組成物に対し、3〜15秒、好ましくは5〜10秒間浸漬して塗膜を形成する。
塗布液の厚さは医療用具の用途によって適宜調整すればよく、特に制限されるものではないが、例えば0.1μmよりも薄く形成される。
抗血栓性接着用組成物を塗布した一の被着体は、速やか(例えば、抗血栓性接着用組成物を塗布後5分以内、好ましくは1分以内)に他の被着体と接続する。
抗血栓性接着用組成物の塗布は、複数の部材を接続(例えば、嵌合)した後、部材間の隙間に抗血栓性接着用組成物を注入したり、抗血栓性接着用組成物に接続部を浸漬したりすることにより行っても良い。または、あらかじめ抗血栓性接着用組成物を塗布した部材を、他の部材に接続(例えば嵌合)しても良い。
本発明の一実施形態では、上記抗血栓性接着用組成物により、樹脂製医療用チューブに接着部を形成する工程を含む、医療用具の製造方法が提供される。本発明の他の実施形態では、当該樹脂が、ポリ塩化ビニルである。すなわち、医療用具の部材であるポリ塩化ビニル製医療用チューブ同士の接続に、上記抗血栓性接着用組成物が用いられ得る。
接着部の形成においては、抗血栓性高分子材料の部材表面への安定性を高めるため、部材同士を接続する前に、部材の少なくとも一方を表面処理しても良い。部材の表面処理の方法としては、例えば、活性エネルギー線(電子線、紫外線、X線等)を照射する方法、アーク放電やコロナ放電、グロー放電等のプラズマ放電を利用する方法、高電界を印加する方法、極性液体(水等)を介した超音波振動を作用させる方法、オゾンガスにより処理する方法等が挙げられる。
抗血栓性接着用組成物を塗布し、接続部を形成した被着体を乾燥することにより、接着部が形成される。乾燥工程は、樹脂製部材のガラス転移温度等を考慮して適宜設定すればよいが、例えば15〜50℃である。乾燥時間は、乾燥温度や有機溶媒の種類によっても異なるが、例えば60〜600分である。乾燥工程における雰囲気は特に制限されず、大気中、または窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うこともできる。また、接着部の形成中、任意に、接着が促進されるように接着部を加圧してもよい。接着部の形成は、接続部に送風することにより促進され得る。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行った。
[抗血栓性高分子材料の製造例1: 重量平均分子量8.5万のPMEA]
15gのメトキシエチルアクリレート(MEA)(0.115mol)を55gのトルエンに溶解し、四口フラスコに入れ、80℃でNバブリングを1時間行った。その後、0.015gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、和光純薬工業製)を5gのトルエンに溶解した溶液を、MEAを溶解したトルエン溶液に加え、窒素ガス雰囲気下、80℃で5時間重合させた。重合液をノルマルヘキサンに滴下し、析出した重合体を回収した。なお、回収した重合体(PMEA(1))の重量平均分子量は、85,000であった。
[抗血栓性高分子材料の製造例2: 重量平均分子量80万のPMEA]
15gのメトキシエチルアクリレート(MEA)(0.115mol)を10gのメタノールに溶解し、四口フラスコに入れ、50℃でNバブリングを1時間行った。その後、0.015gの2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70、和光純薬工業製)を5gのメタノールに溶解した溶液を、MEAを溶解したメタノール溶液に加え、窒素ガス雰囲気下、50℃で5時間重合させた。重合液をエタノールに滴下し、析出した重合体(PMEA(2))を回収した。なお、回収した重合体の重量平均分子量は、800,000であった。
[実施例1]
製造例1で得たPMEA(1)をメタノールに溶解させ、PMEA(1)濃度が0.1重量%のコート液(1)を調製した。軟質ポリ塩化ビニルチューブ1(内チューブ、内径6mm×外径9mm×全長3cm)、および軟質ポリ塩化ビニルチューブ2(外チューブ、内径8.5mm×外径12mm×全長30cm)の内腔表面にコート液(1)をディップコーティングし、コート層を形成した。
100重量部のシクロヘキサノンに対し、製造例1で得たPMEA(1)を1重量部溶解させ、抗血栓性接着用組成物(1)を別途調製した(組成物全体に対するPMEA(1)含量:1重量%)。コート層を形成した内チューブの両端から1cmを抗血栓性接着用組成物(1)に25℃で5秒浸漬した。その後10秒以内に抗血栓性接着用組成物(1)に浸漬した部分を外チューブの両端に嵌合した。チューブを25℃で8時間、大気下で乾燥してシクロヘキサノンを揮発させ、接着部を形成した。
[実施例2]
製造例1で得たPMEA(1)をメタノールに溶解させ、PMEA(1)濃度が0.1重量%のコート液(1)を調製した。軟質ポリ塩化ビニルチューブ1(内チューブ、内径6mm×外径9mm×全長3cm)、および軟質ポリ塩化ビニルチューブ2(外チューブ、内径8.5mm×外径12mm×全長30cm)の内腔表面にコート液(1)をディップコーティングし、コート層を形成した。
100重量部のシクロヘキサノンに対し、製造例1で得たPMEA(1)を0.5重量部溶解させ、抗血栓性接着用組成物(2)を別途調製した(組成物全体に対するPMEA(1)含量:0.5重量%)。コート層を形成した内チューブの両端から1cmを抗血栓性接着用組成物(2)に25℃で5秒浸漬した。その後10秒以内に抗血栓性接着用組成物(2)に浸漬した部分を外チューブの両端に嵌合した。チューブを25℃で8時間、大気下で乾燥してシクロヘキサノンを揮発させ、接着部を形成した。
[実施例3]
製造例2で得たPMEA(2)をメタノールに溶解させ、PMEA(2)濃度が0.1重量%のコート液(2)を調製した。軟質ポリ塩化ビニルチューブ1(内チューブ、内径6mm×外径9mm×全長3cm)、および軟質ポリ塩化ビニルチューブ2(外チューブ、内径8.5mm×外径12mm×全長30cm)の内腔表面にコート液(2)をディップコーティングし、コート層を形成した。
100重量部のシクロヘキサノンに対し、製造例2で得たPMEA(2)を1重量部溶解させ、抗血栓性接着用組成物(3)を別途調製した(組成物全体に対するPMEA(2)含量:1重量%)。コート層を形成した内チューブの両端から1cmを抗血栓性接着用組成物(3)に25℃で5秒浸漬した。その後10秒以内に抗血栓性接着用組成物(3)に浸漬した部分を外チューブの両端に嵌合した。チューブを25℃で8時間、大気下で乾燥してシクロヘキサノンを揮発させ、接着部を形成した。
[実施例4]
製造例2で得たPMEA(2)をメタノールに溶解させ、PMEA(2)濃度が0.1重量%のコート液(2)を調製した。軟質ポリ塩化ビニルチューブ1(内チューブ、内径6mm×外径9mm×全長3cm)、および軟質ポリ塩化ビニルチューブ2(外チューブ、内径8.5mm×外径12mm×全長30cm)の内腔表面にコート液(2)をディップコーティングし、コート層を形成した。
100重量部のシクロヘキサノンに対し、製造例1で得たPMEA(2)を0.5重量部溶解させ、抗血栓性接着用組成物(4)を別途調製した(組成物全体に対するPMEA(2)含量:0.5重量%)。コート層を形成した内チューブの両端から1cmを抗血栓性接着用組成物(4)に25℃で5秒浸漬した。その後10秒以内に抗血栓性接着用組成物(4)に浸漬した部分を外チューブの両端に嵌合した。チューブを25℃で8時間、大気下で乾燥してシクロヘキサノンを揮発させ、接着部を形成した。
[比較例1]
製造例1で得たPMEA(1)をメタノールに溶解させ、PMEA(1)濃度が0.1重量%のコート液(1)を調製した。軟質ポリ塩化ビニルチューブ1(内チューブ、内径6mm×外径9mm×全長3cm)、および軟質ポリ塩化ビニルチューブ2(外チューブ、内径8.5mm×外径12mm×全長30cm)の内腔表面にコート液(1)をディップコーティングし、コート層を形成した。
100重量部のシクロヘキサノンに対し、製造例1で得たPMEA(1)を10重量部溶解させ、比較組成物(1)を別途調製した(組成物全体に対するPMEA(1)含量:9重量%)。コート層を形成した内チューブの両端から1cmを比較組成物(1)に25℃で5秒浸漬した。その後10秒以内に比較組成物(1)に浸漬した部分を外チューブの両端に嵌合した。チューブを25℃で8時間、大気下で乾燥してシクロヘキサノンを揮発させた。
[比較例2]
製造例2で得たPMEA(2)をメタノールに溶解させ、PMEA(2)濃度が0.1重量%のコート液(2)を調製した。軟質ポリ塩化ビニルチューブ1(内チューブ、内径6mm×外径9mm×全長3cm)、および軟質ポリ塩化ビニルチューブ2(外チューブ、内径8.5mm×外径12mm×全長30cm)の内腔表面にコート液(2)をディップコーティングし、コート層を形成した。
100重量部のシクロヘキサノンに対し、製造例2で得たPMEA(2)を10重量部溶解させ、比較組成物(2)を別途調製した(組成物全体に対するPMEA(2)含量:9重量%)。コート層を形成した内チューブの両端から1cmを比較組成物(2)に25℃で5秒浸漬した。その後10秒以内に比較組成物(2)に浸漬した部分を外チューブの両端に嵌合した。チューブを25℃で8時間、大気下で乾燥してシクロヘキサノンを揮発させた。
[比較例3]
製造例2で得たPMEA(2)をメタノールに溶解させ、PMEA(2)濃度が0.1重量%のコート液(2)を調製した。軟質ポリ塩化ビニルチューブ1(内チューブ、内径6mm×外径9mm×全長3cm)、および軟質ポリ塩化ビニルチューブ2(外チューブ、内径8.5mm×外径12mm×全長30cm)の内腔表面にコート液(2)をディップコーティングし、コート層を形成した。
コート層を形成した内チューブの両端から1cmをシクロヘキサノンに25℃で5秒浸漬した。その後10秒以内にシクロヘキサノンに浸漬した部分を外チューブの両端に嵌合した。チューブを25℃で8時間、大気下で乾燥してシクロヘキサノンを揮発させ、接着部を形成した。
[1.接着性試験]
実施例1〜4、および比較例1〜3で接着したチューブについて、接着後の内チューブと外チューブとの接着性を試験した。具体的には、オートグラフ(オートグラフAGS−1 kNX、株式会社島津製作所)を用いて1kgの荷重で外チューブの端部と内チューブの端部とを15秒間牽引し、嵌合部での剥離の有無を目視で確認した。
その結果、実施例1〜4、および比較例3で接着したチューブでは、接着部に剥離は認められなかった。それに対し比較例1および2では、嵌合部に剥離が認められた。
[2.抗血栓性試験]
外チューブの一端と内チューブの一端とを、実施例1および2、ならびに比較例3で示すように接着し、内チューブと外チューブとが接続した一本の段差チューブを作製した。段差チューブの内腔を、生理食塩水で2倍に希釈したヒト新鮮血(希釈血液)6mlで満たした。その後、段差チューブの両端同士(内チューブと外チューブと)を同様に接着し、環状チューブとした。チューブを円筒型回転装置に固定し、40rpmで2時間回転させた。その後、チューブから循環血液を除去し、接着部への血栓付着状態を目視で観察した。結果を表1、図1〜3に示す。ここで、新鮮血とは、全血輸血により健常人ドナーから採取した血液で、30分以内のものをいう。なお、新鮮血には抗凝固薬を添加していない。
図1〜3では、形成された血栓が見やすいよう、抗血栓性試験後、接続部の外チューブを一部切り取って外チューブ断面を露出させて撮影した。表1、図1〜3に示す通り、本発明に係る抗血栓性接着用組成物により接着された接着部を有するチューブでは、医療用チューブの嵌合部などの血栓が比較的形成されやすい部分においても、血栓の形成が抑制された。これに対し、比較例3のチューブでは、嵌合部において血栓の形成が確認された。
1 内チューブ、
2 外チューブ、
3 血栓。

Claims (7)

  1. 一の接着体と他の接着体とを抗血栓性接着用組成物によって接着してなる接着部を有する医療用具であって、
    前記一の接着体および前記他の接着体の少なくとも一方がポリ塩化ビニル製部材であり、
    前記抗血栓性接着用組成物は、100重量部のポリ塩化ビニルを溶解する有機溶剤、および0.1〜5重量部の抗血栓性高分子材料を含み、
    前記ポリ塩化ビニルを溶解する有機溶剤は、イソオクタン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、トルエン、およびジクロロメタンからなる群から選択される少なくとも1種以上であり、
    前記抗血栓性高分子材料は、下記一般式(1)で示される繰り返し単位(A)を有する、医療用具:
    ただし、上記一般式(1)中、R は水素原子またはメチル基であり、R は炭素数1〜4のアルキレン基であり、R は炭素数1〜4のアルキル基である。
  2. 前記抗血栓性接着用組成物が、前記ポリ塩化ビニルを溶解する有機溶剤および前記抗血栓性高分子材料のみからなる、請求項1に記載の医療用具。
  3. 前記一の接着体および前記他の接着体がポリ塩化ビニル製部材である、請求項1または2に記載の医療用具。
  4. 前記抗血栓性高分子材料の重量平均分子量が、8万〜100万である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗血栓性接着用組成物。
  5. 一の接着体と他の接着体とを抗血栓性接着用組成物によって接着して接着部を形成する工程を有し、
    前記一の接着体および前記他の接着体の少なくとも一方がポリ塩化ビニル製部材であり、
    前記抗血栓性接着用組成物は、100重量部のポリ塩化ビニルを溶解する有機溶剤、および0.1〜5重量部の抗血栓性高分子材料を含み、
    前記ポリ塩化ビニルを溶解する有機溶剤は、イソオクタン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、トルエン、およびジクロロメタンからなる群から選択される少なくとも1種以上であり、
    前記抗血栓性高分子材料は、下記一般式(1)で示される繰り返し単位(A)を有する、医療用具の製造方法:
    ただし、上記一般式(1)中、R は水素原子またはメチル基であり、R は炭素数1〜4のアルキレン基であり、R は炭素数1〜4のアルキル基である。
  6. 前記抗血栓性接着用組成物が、前記ポリ塩化ビニルを溶解する有機溶剤および前記抗血栓性高分子材料のみからなる、請求項5に記載の製造方法。
  7. 前記一の接着体および前記他の接着体がポリ塩化ビニル製医療用チューブである、請求項5または6に記載の製造方法。
JP2015047613A 2015-03-10 2015-03-10 抗血栓性接着用組成物、ならびに該抗血栓性接着用組成物を利用した医療用具およびその製造方法 Active JP6456196B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015047613A JP6456196B2 (ja) 2015-03-10 2015-03-10 抗血栓性接着用組成物、ならびに該抗血栓性接着用組成物を利用した医療用具およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015047613A JP6456196B2 (ja) 2015-03-10 2015-03-10 抗血栓性接着用組成物、ならびに該抗血栓性接着用組成物を利用した医療用具およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016165422A JP2016165422A (ja) 2016-09-15
JP6456196B2 true JP6456196B2 (ja) 2019-01-23

Family

ID=56897825

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015047613A Active JP6456196B2 (ja) 2015-03-10 2015-03-10 抗血栓性接着用組成物、ならびに該抗血栓性接着用組成物を利用した医療用具およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6456196B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6584221B2 (ja) * 2015-08-24 2019-10-02 旭化成メディカル株式会社 医療用部材
AR109405A1 (es) 2016-08-26 2018-11-28 Sumitomo Chemical Co Compuestos de fenilurea y su uso

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0657247B2 (ja) * 1985-07-05 1994-08-03 東レ株式会社 コ−テイング方法
JP2806510B2 (ja) * 1990-10-18 1998-09-30 テルモ 株式会社 人工臓器用膜または医療用具
US6110483A (en) * 1997-06-23 2000-08-29 Sts Biopolymers, Inc. Adherent, flexible hydrogel and medicated coatings
JP4404468B2 (ja) * 2000-09-29 2010-01-27 テルモ株式会社 血液フィルターおよびその製造方法
JP4793700B2 (ja) * 2007-04-24 2011-10-12 東洋紡績株式会社 抗血栓性材料
EP2522375B1 (en) * 2010-01-07 2015-08-26 Toyobo Co., Ltd. Method for coating inner surface of medical tube made from vinyl chloride with anti-thrombotic material
JP6019524B2 (ja) * 2011-12-09 2016-11-02 国立大学法人九州大学 生体適合性材料、医療用具及び生体適合性材料の製造方法
JP6462278B2 (ja) * 2014-09-01 2019-01-30 国立大学法人九州大学 生体適合性コポリマー、これを利用する抗血栓コーティング剤及び医療用具

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016165422A (ja) 2016-09-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7368446B2 (ja) 親水性共重合体および医療用具
JP6373872B2 (ja) 医療用具
JP6495241B2 (ja) 医療用具の製造方法および医療用具
JP6600560B2 (ja) 抗血栓性コーティング材の製造方法
JP5969484B2 (ja) 抗血栓性材料および医療用具
US9956324B2 (en) Medical material, and medical device using the medical material
JP7209643B2 (ja) 医療用コーティング材料および該医療用コーティング材料を利用した医療用具
JP6456196B2 (ja) 抗血栓性接着用組成物、ならびに該抗血栓性接着用組成物を利用した医療用具およびその製造方法
US11439733B2 (en) Method for producing antithrombotic coating material
WO2020004385A1 (ja) 親水性共重合体および医療用具
JP6426625B2 (ja) 抗血栓性医療材料、および該医療材料を利用した医療用具
JP6278731B2 (ja) 抗血栓性医療材料、および該医療材料を利用した医療用具
WO2014123077A1 (ja) 医療用コーティング材料および医療用具
JP2014147639A (ja) 医療用具
JP6640584B2 (ja) 医療用具およびその製造方法
JP2018149270A (ja) 抗血栓性コーティング材
JP7389102B2 (ja) 医療用具の製造方法および医療用具
JP2015097550A (ja) 血液適合性材料および医療用具
JP2020039826A (ja) 医療用具の製造方法および医療用具

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180115

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180904

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20181031

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20181120

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20181218

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6456196

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250