JP5929471B2 - 物質の吸着が抑制された管状基材およびその製造方法 - Google Patents

物質の吸着が抑制された管状基材およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、物質の吸着が抑制された管状基材、特に、医療、生化学試験および細胞培養に使用される、生体関連物質の吸着が抑制されたチューブ、ならびにその製造方法に関する。
近年、高分子材料を利用した医療用材料の検討がなされている。例えば、血液、薬剤、細胞等を移送するために、チューブ型の医療用具が提供されている。また、医療分野に限らずバイオテクノロジー分野においても、細胞バッグ等に連結されて細胞バック等から細胞を移送するためのチューブ型の細胞培養器具が提供されている。このような器具の表面には生体関連物質(例えば、細胞、タンパク質、血液など)の非特異吸着が生じないこと、表面の潤滑性が高いことが望まれる。上記のチューブの内側表面が物質の吸着が容易な性質を有していると、移送される物質が内側表面に付着するという問題があった。そこで、生体関連物質の非特異吸着を効果的に防ぐポリエチレングリコール(PEG)などの親水性ポリマーに注目が集まっている。
特許文献1には、抗血栓性医療用チューブであって、該チューブの内側にポリアルキレングリコール溶液を循環した後、乾燥することで、チューブの内側表面にポリアルキレングリコールが固定化された抗血栓性医療用チューブが開示されている。
特許文献2には、外層および内層の2層からなるカテーテルチューブであって、体腔内における潤滑性等を向上させることを目的として親水性高分子を含有するコーティング液にチューブを浸漬し、その後コーティング液からチューブを引き上げて乾燥することで外層の外面に親水性高分子がコーティングされてなるカテーテルチューブが開示されている。
特開平3−64146号公報 特開2007−325639号公報
一般的に、プラスチックは成型し易く、輸送上、廃棄上の問題が小さいという利点がある。このため生化学試験用器具の材料としてプラスチックは好ましい。しかしながら、親水性を付与するためのPEGなどの親水性ポリマーを、プラスチックを含む基体表面、特に管状基体の内側表面に導入することは従来困難であった。その理由として、プラスチックを含む表面に、親水性ポリマー鎖を連結するための起点となる官能基を高密度に導入することが困難であること、大部分のプラスチックは化学薬品に対する耐性が低いことが挙げられる。
そこで本発明は、プラスチックを含む管状基体の内側表面に、親水性ポリマーを含む親水性層が導入された管状基材、および該管状基材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、表面にプラスチックを含む管状基体の内側表面上にポリシロキサンを含むプライマー層を配置し、該プライマー層上に、親水性ポリマーを含む親水性層を形成することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)内側表面にプラスチックを含む管状基体と、
前記管状基体の内側表面上に配置された、ポリシロキサンを含むプライマー層と、
前記プライマー層上に配置された、前記プライマー層のポリシロキサンの側鎖と共有結合を介して連結された親水性ポリマーを含む親水性層と、
を含む管状基材。
(2)管状基体が外側表面にプラスチックを含み、
前記管状基体の外側表面上に配置された、ポリシロキサンを含むプライマー層と、
前記プライマー層上に配置された、前記プライマー層のポリシロキサンの側鎖と共有結合を介して連結された親水性ポリマーを含む親水性層と、
をさらに含む、(1)記載の管状基材。
(3)前記親水性ポリマーがポリアルキレングリコールである、(1)または(2)記載の管状基材。
(4)前記プラスチックが、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルおよびポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種である、(1)〜(3)のいずれかに記載の管状基材。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の管状基材の製造方法であって、
前記管状基体の表面上において、ケイ素原子に直結した炭素原子を含みかつ官能基を有する有機基を有するシラノール化合物を重合させ、ポリシロキサンを含むプライマー層を形成する、プライマー層形成工程と、
前記プライマー層と親水性ポリマーとを、前記ポリシロキサンの側鎖上の官能基と親水性ポリマーの官能基との反応により、共有結合を介して連結させる、親水性層形成工程と、を含む方法。
(6)前記親水性ポリマーがポリアルキレングリコールであり、前記親水性層形成工程が、前記ポリシロキサンの側鎖上の官能基とアルキレングリコールのヒドロキシル基との反応により、ポリアルキレングリコールを前記側鎖に共有結合を介して連結させるものである、(5)記載の方法。
(7)前記プライマー層形成工程の前に、前記管状基材の表面をプラズマ処理する工程をさらに含む、(5)または(6)記載の方法。
本発明によれば、プラスチックを含む管状基体の内側表面に親水性ポリマーを含む親水性層を導入することが可能である。
図1は、本発明の管状基材の一実施形態を示す。 図2は、本発明の管状基材の表面に形成されたプライマー層の一実施形態を示す。 図3は、本発明の管状基材の一実施形態を示す。 図4は、本発明の管状基材を用いた細胞培養器具の一実施形態を示す。 図5は、実施例における接触角測定の結果を示す。 図6は、実施例における細胞培養試験の結果を示す。 図7は、実施例における細胞培養試験の結果を示す。左はコーティング処理を施していない場合の結果を示し、右はコーティング処理をプラズマ処理後にコーティング処理を施した場合の結果を示す。
はじめに、本発明の管状基材の全体構成の概要を、図1を参照して説明する。
管状基材10は、内側表面Sにプラスチックを含む管状基体11と、その内側表面S上に配置された、ポリシロキサンを含むプライマー層12と、プライマー層12上に配置された、親水性ポリマーBを含む親水性層13とを備える。親水性ポリマーがポリエチレングリコールである場合について、図1dに示す。
図1cに示すように、親水性層13の親水性ポリマー鎖はプライマー層12を構成するポリシロキサンの側鎖Aと共有結合を介して連結されている。ここで側鎖Aは、後述する式1のシラノール化合物が有する、R1に由来する基であり、R1上の官能基または該官能基から誘導された官能基が親水性ポリマーの官能基、好ましくはポリアルキレングリコールの末端のヒドロキシル基と共有結合を形成して形成された二価の基を指す。ケイ素原子に結合する基Xは式1のシラノール化合物のR1(p=2の場合)、R2(p+q=3の場合)、またはヒドロキシル基(q=3の場合)に由来する基である。プライマー層12中のポリシロキサンは直鎖状であってもよいし、分岐鎖状または網目状の構造を有していてもよいが、好ましくは分岐鎖状または網目状の構造を有する。ポリシロキサンが分岐鎖状または網目状の構造を有するとき、Xは、他の繰り返し単位(図示していない)のケイ素原子と結合する架橋基である。架橋基としてのXとしては、式1のシラノール化合物のヒドロキシル基に由来するエーテル基(−O−)が挙げられる。ポリシロキサンが直鎖状の構造を有するとき、Xは、式1に定義するR1またはR2、未反応のヒドロキシル基、加水分解されずに残存した式2に定義する基Y等の一価の基である。
管状基体11は、少なくとも内側表面Sにプラスチックを含む。管状基体11の内側表面Sは、少なくともプライマー層および親水性層を形成する部分においてプラスチックを含めばよい。ポリシロキサンを含むプライマー層12は管状基体11の内側表面Sに結合することができる。プライマー層12中におけるポリシロキサンの状態は必ずしも明らかではないが、図2に示すように複数のポリシロキサン分子の主鎖部分同士が会合し、側鎖である有機基が基体表面および親水性層の側に面した二層構造を形成している可能性がある。このような二重構造が形成される機構は以下のように推定される。まず、シラノールのポリマー化によってファンデルワールス力が増大したポリシロキサンがプラスチック表面に物理吸着する。このとき、プラスチック表面とシラノール化合物の有機基との間に働く疎水性相互作用によりシラノール化合物の有機基はプラスチック側に配向する。ポリシロキサンの一層目が形成された後、溶媒側に配向したシラノール基(Si−OH)に別のポリシロキサンが結合する。このとき、シラノール基同士の水素結合によりシラノール化合物の有機基は溶媒側に配向する。その結果、ポリシロキサンは図2に示すような二層構造となると考えられる。溶媒側に配向した有機基は親水性層との共有結合を形成することができる。
管状基体11は、外側表面S’にもプラスチックを含み、外側表面S’上に配置された、ポリシロキサンを含むプライマー層12’と、プライマー層上に配置された、親水性ポリマーBを含む親水性層13’とを備えることが好ましい(図3)。この場合も、管状基体11の外側表面S’は、少なくともプライマー層および親水性層を形成する部分においてプラスチックを含めばよい。外側表面に配置されるプライマー層と親水性層の構造については上記と同様である。
(管状基体)
本発明における管状基体は、少なくともプライマー層が形成される表面、少なくとも内側表面にプラスチックを含む。好ましくは管状基体の外側表面にもプラスチックを含み、より好ましくは全体がプラスチックからなる。
プラスチックの具体例としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系重合体;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン系共重合体、ABS樹脂などのスチレン系樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、エチレングリコール−テレフタル酸−イソフタル酸共重合体、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリウレタン系樹脂;エポキシ系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46などのポリアミド樹脂;メチルペンテン樹脂;フェノール樹脂;メラミン樹脂;エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは、単独でもよいし、二種以上混合して用いてもよい。ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンおよびポリエチレンは、プライマー層および親水性層を形成しやすいため特に好ましい。
管状基体は、あらかじめ表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、オゾン処理などの物理的な処理が施されていてもよい。このような処理を施すことにより、プラスチックの種類に限定されることなく、より安定的にプライマー層および親水性層を形成することが可能になる。プラズマ処理としては、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理、酵素プラズマ処理などが挙げられるが、製造効率の観点から大気圧プラズマ処理が好ましい。具体的には、プラズマ処理は、例えば、CF4の存在下、RFパワー:200〜500W、ガス流量:10〜30sccm、処理圧:0.5〜1.5Pa、処理時間:5〜20秒の条件で実施することができる。このようなプラズマ照射条件により、基材表面の凹凸が大きくなりプライマー層との結合密度が向上し、親水性ポリマーの付加量を増大させることができる。
本発明において管状基体の形状は、細長く、内部が空洞で、両端が外に開口している形状を有するものであれば特に制限されない。分岐を有しており、3以上の開口を有する形状でもよい。管状基体は、筒、筒状基体、ホース、ホース状基体、パイプ、パイプ状基体、チューブまたはチューブ状基体と称される場合もある。管状基体の長さ(例えば、図1のL)は特に制限されず、用途により異なるが、輸液チューブなどの場合には長さが80cm以下であることが好ましく、その他送液チューブやカテーテルチューブの場合には、通常50〜200cmである。
管状基体の断面形状(例えば、図1b)は特に制限されないが、好ましくは略円形である。略円形には、円形にゆがみや凹凸部を有するもの、楕円形、多角形(3角形〜20角形等)などが包含され、好ましくは円形である。断面の空洞部分の寸法は、カテーテルチューブの場合には、外径が1〜3.5mmであることが好ましく、輸液チューブやその他送液チューブの場合は、外径が1〜8mmであることが好ましい。大容量で細胞培養を行った後の細胞混濁液の回収には、外径が10〜50mmのものを用いることが好ましい。
管状基体の厚さ(例えば、図1のw)は特に制限されず、プラスチックの種類により様々ではあるが、通常10〜800μmであり、送液用チューブの場合には、好ましくは10〜500μmである。
管状基体の形状の具体例として、例えば、送液チューブ、連結チューブ、カテーテル、ピペット、シリンジ、コネクタなどが挙げられる。送液チューブおよび連結チューブとしては、細胞培養用の細胞バッグ(カルチャーバッグ)等に連結されて細胞バック等から細胞を移送するためのチューブなどが例示できる(図4参照)。
(プライマー層)
プライマー層は、少なくともポリシロキサンを含む層により形成することができる。ここで、ポリシロキサンとはシロキサン結合(Si−O−Si)の繰り返し単位からなるポリマーであり、シラノール化合物の縮合重合によって得ることができる。シラノール化合物の縮合はシラノール化合物の分子間で起こる反応である。基体表面のプラスチック分子が反応性の官能基を有してない場合には、シラノール化合物と基体表面のプラスチック分子との間では反応は起こらない。その場合、シラノール化合物および形成されたポリシロキサンは基体表面のプラスチック分子とは化学的に反応せずに、単に物理的に吸着していると考えられる。この点は、ガラスを基体とする場合とは大きく異なる。このようなシラノール化合物のプラスチック表面への吸着力は、モノマーでは極めて弱いが、ある程度縮合が進み、ポリマー(ポリシロキサン)となれば強くなる。シラノール化合物を適度に縮合することによって、プラスチック表面にポリシロキサンを含むプライマー層が形成される。
(シラノール化合物)
本発明で用いられるシラノール化合物は、シラノール基(Si−OH)に加えて、ケイ素原子に直結した炭素原子を含みかつ官能基を有する有機基を有する。この有機基はポリシロキサンの側鎖となる。シラノール化合物は典型的には式1で表される構造を有する:
(R1p(R24-p-qSi(OH)q ・・・・(式1)
(pは1または2であり、qは2または3であり、p+qは3または4であり、R1は、独立に、ケイ素原子に直結した炭素原子を含みかつ官能基を有する有機基であり、R2はケイ素原子に直結した炭素原子を含む有機基である)。p=1かつq=2または3であることが好ましく、p=1かつq=3であることがより好ましい。p+q=4である場合、R2は存在しない。
1は、好ましくは、水素原子が1つ以上(好ましくは1つ)の官能基により、必要に応じて適当なリンカー構造を介して、置換されている、炭素数が1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜6の炭化水素基である(ただし、前記炭化水素基の全部または一部がビニル基である場合のように、前記炭化水素基自体が官能基である場合は官能基により置換されている必要はない)。前記炭化水素基は、直鎖または分岐鎖あるいは環構造を有する、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基(アルキル基、炭素数2以上のアルケニル基、または炭素数2以上のアルキニル基)であってもよいし、単環または多環の炭素数6以上の芳香族炭化水素基であってもよいし、1つ以上の前記脂肪族炭化水素基によって置換された前記芳香族炭化水素基であってもよいし、1つ以上の前記芳香族炭化水素基によって置換され前記脂肪族炭化水素基であってもよい。前記炭化水素基では、炭素−炭素結合が、1または2個の、酸素、窒素および硫黄から選択される同一または異なる原子により中断されていてもよい。炭化水素基の例としては好ましくはプロピル基、エチル基が挙げられる。
1における、前記炭化水素基の1つ以上の水素を、必要に応じて適当なリンカー構造を介して、置換する官能基としては、親水性ポリマーの官能基、例えばポリアルキレングリコールのヒドロキシル基と反応して共有結合を形成することができる官能基、あるいは、そのような官能基に変換可能な官能基が挙げられる。典型的には、(1H−イミダゾール−1−イル)カルボニル基、スクシンイミジルオキシカルボニル基、グリシジル基、エポキシ基、アルデヒド基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、アジド基、シアノ基、活性エステル基(1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシカルボニル基、ペンタフルオロフェニルオキシカルボニル基、パラニトロフェニルオキシカルボニル基等)、ハロゲン化カルボニル基、イソシアネート基、マレイミド基等が挙げられ、なかでもグリシジル基またはエポキシ基が好ましい。グリシジル基またはエポキシ基は、それ自体がヒドロキシル基と反応して共有結合を形成可能であるが、特開2009−156864号公報に記載されている方法に従って、グリシジル基またはエポキシ基をアルデヒド基に変換し、形成されたアルデヒド基と、ヒドロキシル基とを反応させることもできる。これらの官能基は、前記炭化水素基の水素原子を直接置換してもよいし、適切なリンカー構造を介して置換してもよい。リンカー構造としては、例えば炭素の数が0〜3個、窒素、酸素および硫黄から選択される同一または異なるヘテロ原子の数が0〜3個である二価の基が挙げられ、例えば、炭化水素基が左側に、官能基が右側にそれぞれ結合するとしたとき、−O−、−S−、−NH−、−(C=O)O−、−O(C=O)−、−NH(C=O)−、−(C=O)NH−、−(C=O)S−、−S(C=O)−、−NH(C=S)−、−(C=S)NH−、−(N=C=N)−、−CH=N−、−N=CH−、−O−O−、−S−S−、−(O=S=O)−で表される構造が挙げられる。
1の特に好ましい態様としては3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基が挙げられる。
2は、好ましくは、置換基により置換されていないという点を除いてR1について上述したものと同様の(ただしR1とは独立して選択される)炭化水素基であり、なかでも、炭素数が1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基が特に好ましい。
(加水分解によりシラノール化合物を生成するケイ素化合物)
前記シラノール化合物は、加水分解によりシラノール基(Si−OH)を生成可能な基を有するケイ素化合物を、加水分解することにより生成することができる。このようなケイ素化合物は式2で表される構造を有する:
(R1p(R24-p-qSi(Y)q ・・・・(式2)
(Yは、独立に、加水分解によりシラノール基を生成可能な基であり、p、q、R1、R2はそれぞれシラノール化合物に関して定義したとおりである)。
Yとしては、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシ基またはアリールオキシ基により置換されたアルコキシ基、アルコキシ基またはアリールオキシ基により置換されたアリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基等が好ましい。Yとしては特に、炭素数1〜6のアルコキシ基(特にメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基)、炭素数1〜6の、アルコキシ基により置換されたアルコキシ基(例えばメトキシエトキシ基)、炭素数1〜6のアルキルカルボニルオキシ基(例えばアセトキシ基)、塩素原子が好ましい。
式2のケイ素化合物としては、シランカップリング剤として市販されている化合物を好適に使用することができ、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランまたは3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
(プライマー層の形成方法)
プライマー層を形成する際、式2のケイ素化合物を以下のように加水分解し、式1のシラノール化合物を生成することができる。加水分解の条件は特に限定されないが、例えば次の方法が可能である。まず、式2のケイ素化合物に希塩酸を添加し、基Yを加水分解する。希塩酸のpHは2.0〜3.0に調整するのが望ましい。ケイ素化合物に対する水分子のモル比は2〜4とする。この操作によって基Yはシラノール基へ変換され、式1のシラノール化合物が生成する。
次いでシラノール化合物を基体表面に適用し、縮合重合によりポリシロキサンを形成する。式1のシラノール化合物は、塩基とともにアルコールに溶解する。シラノール化合物の終濃度は0.1〜10%(v/v)の範囲で調整することが望ましい。塩基はトリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンなどを用いることができるが、これらに限定されない。塩基の終濃度は0.1〜10%(v/v)の範囲で調整することが望ましい。アルコールはエタノール、2−プロパノール、tert−ブチルアルコール等を用いることができるが、これらに限定されない。このシラノール化合物溶液を基体のプラスチック表面に接触させ、10分〜24時間放置する。反応温度は4〜80℃の範囲で設定できるが、特に室温(20〜25℃)が好ましい。管状基体のプラスチック表面とシラノール化合物溶液との接触は、該管状基体をシラノール化合物溶液に浸漬することによりまたは潜らせることにより実施できる。管状基体が長く、内側表面にシラノール化合物溶液を接触させることが難しい場合は、ポンプ等を用いて管状基体の内側にシラノール化合物溶液を送液させることによりプライマー層を形成することができる。
以上の操作によって、プラスチック表面にポリシロキサンを含むプライマー層が形成される。プライマー層の被覆密度は、シラノールや塩基の濃度、あるいはシラノール溶液をプラスチック表面に接触させる時間によって制御可能である。プライマー層の被覆密度が高ければ高いほど、次の工程で共有結合させるEG鎖の結合密度も高くなる。
形成されたポリシロキサンの側鎖上のシラノール化合物からの官能基を誘導体化して他の官能基に変換する場合には、プライマー層形成後に引き続き、ポリシロキサンの側鎖上のシラノール化合物からの官能基を、親水性ポリマーの官能基と反応して共有結合を形成することができる官能基に変換する誘導体化工程を行う。
(親水性層)
プライマー層上に配置される親水性層は、親水性ポリマーを含む。親水性ポリマーは、炭素成分を含み、ポリマーの主鎖もしくは側鎖に親水性の官能基を含むポリマーのことを指す。親水性ポリマーは、水溶性や水膨潤性を有する、炭素酸素結合を含む水溶性高分子であることが好ましい。プライマー層におけるポリシロキサン側鎖上の官能基と反応させる観点から、酸化反応を受けやすいものが好ましい。プライマー層表面上の官能基に親水性化合物を直接結合させることから、鎖状構造の一端に結合性基を有し、他端にヒドロキシル基を有するものであることが好ましい。プライマー層表面上の官能基に結合可能な官能基(結合性基)は、ヒドロキシル基であってもよいし、異なる種類の官能基(例えばアミノ基、エポキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基など)であってもよいが、ヒドロキシル基であることが好ましい。また、医療材料、生化学試験および細胞培養等に使用する場合、生体毒性の低いもの採用することが好ましい。
親水性ポリマーの具体例としては、ポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミドなどやこれらと他のモノマーとの共重合体や、グラフト重合体などが挙げられる。中でもポリアルキレングリコールは様々な分子量のものが市販されており、かつ生体適合性に優れているので好適に用いることができる。ポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールのコポリマーなどが挙げられ、本発明においてはポリエチレングリコールが好適に用いられる。
ポリエチレングリコールは、1つ以上のエチレングリコール単位(CH2−CH2−O)からなるエチレングリコール鎖(EG鎖)を少なくとも含む。エチレングリコール鎖は次式:
−(CH2−CH2−O)m
(mは重合度を示す整数である)
で表される構造を指す。
ポリエチレングリコールの分子量は特に限定されず、基材の用途に応じて適宜設定することができる。ポリエチレングリコールの数平均分子量は176以上(mが4以上)であることが好ましい。ポリエチレングリコールの数平均分子量の上限は特に限定されないが、数平均分子量が大きくなるほど粘度が増すため取扱いが難しいこと、および、ポリエチレングリコールの高密度での配置が難しいことから、ポリエチレングリコールの数平均分子量は25000以下であることが好ましく、10000以下であることがより好ましい。
ポリエチレングリコールは、次式:
HO−(CH2−CH2−O)m−H
(mは重合度を示す整数である)
で表されるエチレングリコール(EG,m=1)またはポリエチレングリコール(PEG,mは2以上)を用いて形成することができる。
ポリエチレングリコールの数平均分子量は、原料として用いられるEGまたはPEG、あるいは、担体から解離させたEGまたはPEGの数平均分子量からH2Oの分子量(18.015)を控除することにより求めることができる。EGまたはPEGの数平均分子量は蒸気圧浸透圧法または膜浸透圧法によって求められる。蒸気圧浸透圧法はEGまたはPEGの数平均分子量が100,000未満のときに使用することができる。膜浸透圧法はPEGの数平均分子量が10,000〜1,000,000のときに使用することができる。
PEGの一端のヒドロキシル基と、前記ポリシロキサンの側鎖上の官能基または該官能基から誘導された官能基との反応により形成された共有結合を介して、PEGがプライマー層に結合される。PEGの他端のヒドロキシル基は、誘導体化されておらずヒドロキシル基で封鎖された状態であってもよいし、他の物質と共有結合を形成することが可能な官能基が直接的または間接的(リンカーを解して)に導入された状態であってもよい。
PEGの他端に導入される官能基しては、代表的には、(1H−イミダゾール−1−イル)カルボニル基、スクシンイミジルオキシカルボニル基、エポキシ基、アルデヒド基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、アジド基、シアノ基、活性エステル基(1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシカルボニル基、ペンタフルオロフェニルオキシカルボニル基、パラニトロフェニルオキシカルボニル基等)、ハロゲン化カルボニル基(塩化カルボニル基、フッ化カルボニル基、臭化カルボニル基、ヨウ化カルボニル基)等が挙げられる。これらの官能基は、PEGの末端のヒドロキシル基の水素を置換する置換基として、PEGに直接的に連結されていてもよいし、PEGの末端に結合したリンカー構造に結合した官能基として、PEGに間接的に連結されていてもよい。リンカー構造としては、炭素の数が0〜3個、窒素、酸素および硫黄から選択される同一または異なるヘテロ原子の数が0〜3個である二価の基が挙げられる。親水性層には他の親水性化合物が更に含まれていてもよい。
(親水性層の形成方法)
本発明の基材は、プライマー層を形成する工程と、プライマー層のポリシロキサンに親水性ポリマーを連結させる工程とを少なくとも含む方法により製造することができる。
親水性層は、プライマー層のポリシロキサンの側鎖上の官能基(シラノール化合物の官能基に対応する官能基、あるいは、該官能基から誘導された官能基)と親水性ポリマーの官能基を反応させることにより形成することができる。反応条件は、ポリシロキサンの側鎖上の官能基と親水性ポリマーの種類に基づいて、適宜選択される。
例えば、ポリアルキレングリコールのヒドロキシル基とポリシロキサンの側鎖上の官能基を反応させる場合、酸化触媒、好ましくは触媒量の濃硫酸を含むポリアルキレングリコールをプライマー層と接触させる。ここで、数平均分子量が1000を超えるポリアルキレングリコールはあらかじめ加熱融解しておく。必要に応じて、ポリアルキレングリコールをtert−ブチルアルコールなどで希釈して用いてもよい。このポリアルキレングリコール溶液をプラスチック表面に接触させ、加熱する。加熱温度は60〜100℃の範囲で設定できるが、プラスチックの耐熱性を加味すると80℃前後(75℃〜85℃)が好ましい。加熱時間は10分〜24時間の範囲で設定できるが、加熱温度が80℃前後の場合は10分〜60分間が好ましい。
管状基体が長く、内側表面に親水性ポリマー溶液を接触させることが難しい場合は、プライマー層形成工程と同様に、ポンプ等を用いて管状基体の内側に親水性ポリマー溶液を送液させることにより親水性層を形成することができる。以上の操作によって、プライマー層に親水性ポリマーを共有結合させることができる。
親水性層における親水性ポリマーの密度および親水性は、親水性層の表面における水の接触角を指標として簡便に評価することができる。例えば、親水性層表面の水接触角が典型的には48°以下、好ましくは40°以下であれば、親水性ポリマー材料が十分な密度で存在し、親水性を有していると考えられる。なお、本発明において水接触角とは、23℃において測定される水接触角を指す。
(管状基材の用途)
本発明の管状基材は、その表面にプライマー層を介して親水性層が形成されていることから、物質の非特異吸着、特に生体関連物質の非特異吸着を抑制することができる。生体関連物質としては、DNAおよびRNAなどの核酸、ペプチド、ホルモン、酵素、抗原、抗体、サイトカイン、糖鎖、脂質、補酵素、酵素阻害剤、細胞、血液細胞、血小板、ウイルス、その他の機能を有するタンパク質が含まれる。更に、このような生体関連物質と親和性を有する低分子化合物、および高分子化合物も生体関連物質の範囲に含まれる。また、本発明の管状基材は、親水性層でコーティングされていることから、優れた汚れ防止能を有し、コンタミネーションの防止という観点からも有利である。
本発明の管状基材は、少なくとも内側表面に親水性層を有し生体関連物質の非特異吸着を抑制できることから、生体関連物質を含む液体を送液するための送液チューブとして有利に使用できる。例えば、分析機器の試薬送液チューブ、人工透析の血液循環チューブ、ピペット、シリンジ、細胞培養用のバッグ等に連結して別のバッグ等に細胞を移送するためのチューブなどに使用することができる。
細胞培養においてより多くの細胞を得ようとする場合には、培養細胞の密度が高くなると増殖が阻害されるため、新たに複数の培養容器に播種しなおす継代作業が必要となる。継代作業におけるコンタミネーションのリスクを軽減するため、培養用容器間を連結させる連続培養法が知られており、その連結において本発明の管状基材を有利に利用できる。
図4に示す実施形態では、2つのプラスチック製の細胞培養用バッグを、本発明の管状基材で連結して送液チューブとして利用することで、片方のバッグで培養した細胞をもう一方のバッグに移送することができる。細胞溶液の移送過程で、潤滑性の高いチューブ内壁へ細胞を吸着させることなく、同一の細胞濃度にてバッグからバッグへ移送することで、密封環境で移送を行うことができ、コンタミネーションを防止することができる。また、小容量のバッグから大容量のバッグへ移送することにより、段階的かつ容易にスケールアップを実施することができる。
本発明の管状基材を用いることにより、内側表面への生体関連物質の非特異吸着を防止できるため、生体関連物質を含む液体の送液において、送液中における生体関連物質のロスが少なく回収率を上げることができる。また、生体適合性および表面潤滑性を呈する親水性層がチューブ内側表面に固定されることにより、チューブ内部への挿入が想定される検医療用具(内視鏡等)との摩擦抵抗が低減され、相互摩擦による剥離、脱離を防止し、効果や安全性を長期に持続させることができる。
内側表面だけでなく外側表面にもプライマー層を介して親水性層が形成されている管状基材は、生体内に用いる医療用材料として特に好適に用いることができる。外側表面においても生体関連物質の非特異吸着を抑制できることから、使用時のコンタミネーションを防止でき、また血栓形成を抑制できる。さらに、表面の潤滑性が向上しており、血管等の体腔内への通過性に優れる。この表面潤滑性は、親水性ポリマーが生理食塩水、緩衝液、血液などの水系溶媒を吸水することよるものと考えられる。すなわち、管状基材表面に存在する水が、流体潤滑による潤滑機能を発現することによるものと考えられる。更に、基材上の表面潤滑性により、基材表面と生体表面との摩擦抵抗を減少させ、生体内面に与える影響を低減することができる。
内側表面および外側表面にプライマー層を介して親水性層が形成されている本発明の管状基材は、例えば、カテーテル、人工血管、尿道管、ピペット、シリンジ、体腔内にカテーテルや管腔内拡張具を挿入するためのガイドチューブ、内視鏡の挿入を補助するガイドチューブ、尿道および道尿カテーテル、栄養カテーテルなどに使用することができる。特に、内外両側面に非吸着性能を付与させることにより、カテーテル等の挿入時の摩擦抵抗が低減でき、患者の苦痛緩和に繋げることができる。
カテーテルとしては、特に限定されず、例えば、ガイディングカテーテル、造影用カテーテル、PTCA用、PTA用、IABP用等の各種バルーンカテーテル、超音波カテーテル、アテレクトミーカテーテル、内視鏡用カテーテル、留置カテーテル、薬液投与用カテーテル、マイクロカテーテル等の種々のカテーテルやイントロデューサーシース等に適用することができる。
用途によっては、管状基材の内側表面の一部のみにプライマー層を介して形成された親水性層が存在してもよく、そのような態様も本発明に包含されるが、内側表面全体にプライマー層を介して形成された親水性層が存在することが好ましい。また、外側表面にもプライマー層を介して親水性層が形成されている実施形態においては、外側の表面の一部のみにプライマー層を介して親水性層が形成されていてもよい。例えば、シリンジやピペットなどとして用いる場合は、生体内や体腔内に挿入される部分の外側表面にのみ親水性層が形成されていれば足りる場合もある。
本発明の管状基材を接合して用いることもできる。例えば、二本の管状基材をジグで固定し、加熱された(200℃以上)ブレードで管状基材を切断し、ブレーダーにて管状基材切断面を閉じたままブレーダーに沿ってジグをスライドさせ、プレーダーを引き抜いて管状基材の端面同士を溶着させる。内部に液体が格納された管状基材同士の接合も上記方法で実施することができ、内部の液体と外部環境との接触を避け、コンタミネーションを防止できる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。
<実施例1>
プラスチック製チューブにプライマー層を介して親水性ポリマーのコーティングを施した。具体的な手順を以下に記す。
1.65mlの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ)に0.35mlの希塩酸(pH2.4)を添加してシラノールを調製した。これを100mlの2−プロパノール(純正化学)に添加した。ここに、さらに4mlのトリエチルアミン(和光純薬)を添加した。このシラノール溶液に、ポリ塩化ビニル製チューブを浸漬させ、そのまま室温で135分間放置した。その後、チューブ内外を純水で洗浄し、窒素ブローで乾燥させた。この操作によってポリ塩化ビニル製チューブの内側および外側表面に、エポキシ基を有するポリシロキサン含むプライマー層が形成された。次に、触媒量の濃硫酸を含んだPEG400(関東化学)を100ml調製し、ポリ塩化ビニル製チューブを浸漬させた後、80度で45分間加熱を行った。その後、チューブ内外を純水で洗浄し、窒素ブローで乾燥させた。この操作によって、ポリ塩化ビニル製チューブの内側および外側表面上にポリエチレングリコールを含む親水性層が形成された。
<実施例2>
実施例1と同じ方法で作製したポリエチレングリコールコーティングチューブを、カッターを用いて5mm×25mmの大きさに切り出し、チューブ切片の外側および内側表面の接触角測定を行った。未コーティングのポリ塩化ビニル製チューブについても純水洗浄を施し、窒素ブローで乾燥させた後、同上のチューブ切片を作製して比較対象サンプルとした。
コーティングチューブの内側および外側表面の接触角測定の結果は、図5の通りである。未コート表面と比較して顕著に減少し、ポリエチレングリコールがチューブの内外両表面に付与されている事が示唆された。
<実施例3>
実施例2で接触角測定を行ったサンプルを、窒素ブローにて乾燥後、内側表面および外側表面が上向きとなるように、4ウェルプレート(BDファルコン製)に2種表面対象サンプル切片をそれぞれ収納し、細胞を用いた培養評価を行った。
DMEM培地中に1ウェル当たり1×105個のCCL163細胞を播種した。4日間、培養後、細胞の様子を光学顕微鏡(オリンパス社)によって観察した。ポリエチレングリコールコーティングの品質が正常に保たれれば、そのタンパク質排他性により、細胞の表面への接着箇所は発生しないことになる。
図6の結果で示された通り、未コート表面サンプルについては、内外表面共に細胞の接着および伸展箇所が確認されたが、コーティングチューブの内側および外側表面では、細胞の接着箇所が発生しない結果となった。
プライマー層を介してポリエチレングリコール層がチューブの内側および外側表面に形成されたポリ塩化ビニル製チューブについては、タンパク質の排他性が維持され、細胞の低吸着性能を付与できる事が実証された。
<実施例4>
プラスチック製プレートに表面処理を施した後、プライマー層を介して親水性ポリマーのコーティングを施した。具体的な手順を以下に記す。
ポリスチレン製プレートに、ドライエッチング装置EXAM(神港精機社)を用いてCF4プラズマ照射を施した(RFパワー:300W、ガス流量:20sccm、処理圧:
1Pa、処理時間:10秒)。その後、3.3mlの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ)に0.7mlの希塩酸(pH2.4)を添加してシラノールを調製した。これを200mlの2−プロパノール(純正化学)に添加し、さらに1mlのトリエチルアミン(和光純薬)を添加した。このシラノール溶液にポリスチレン製プレートを浸漬させ、液きり後に室温で135分間放置し、プレートを純水で洗浄した後、オーブンおよび窒素ブローにて乾燥させた。この操作により、ポリスチレン製プレート表面に、エポキシ基を有するポリシロキサンを含むプライマー層が形成された。次に、触媒量の濃硫酸を含んだPEG400(関東化学)を200ml調製し、ポリスチレン製プレートを浸漬させた後、液切り後に80度で45分間加熱を行った。その後、プレートを純水で洗浄し、窒素ブローで乾燥させた。この操作によって、ポリスチレン製プレート表面上にポリエチレングリコールを含む親水性層が形成された。
<実施例5>
実施例4と同じ方法で作製したプレートサンプルを、70%エタノールにて滅菌処理した後、マウスの線維芽細胞を用いた培養評価を行った。比較評価用に、プラズマ処理およびコーティング処理されていないプレート(以下、未処理比較サンプル)についても、同様の培養評価を行った。
DMEM培地中に1ウェル当たり1×104個のCCL163細胞を播種した。4日間、培養後、細胞の様子を光学顕微鏡(オリンパス社)によって観察した。
図7の結果に示される通り、未処理比較サンプルについては、樹脂表面に細胞の接着および伸展箇所が多数確認された。表面処理後に親水性ポリマーコーティングを施したサンプル表面では、細胞は接着せずに、塊状態で浮遊する結果が得られた。
プラズマ照射後にプライマー層を介してポリエチレングリコールの親水性層が表面に付与されたポリスチレン製プレートについても、タンパク質の排他性が維持され、細胞の低吸着性能を付与できる事が実証された。
10:管状基材
11:管状基体
12:プライマー層
13:親水性層
12’:プライマー層
13’:親水性層
A:ポリシロキサンの側鎖
B:親水性ポリマー
S:管状基体の内側表面
S’:管状基体の外側表面

Claims (7)

  1. 内側表面にプラスチックを含む管状基体と、
    前記管状基体の内側表面上に配置された、ポリシロキサンを含むプライマー層と、
    前記プライマー層上に配置された、前記プライマー層のポリシロキサンの側鎖の炭素数1〜6の炭化水素基と共有結合を介して連結された、ポリアルキレングリコールである親水性ポリマーを含む親水性層と、
    を含み、前記共有結合を介する連結が、*−O−CH −CH(OH)−CH −**(式中、*はポリシロキサンの側鎖の炭化水素基との結合位置であり、**はポリアルキレングリコールのヒドロキシル基との結合位置である)で表される、管状基材。
  2. 管状基体が外側表面にプラスチックを含み、
    前記管状基体の外側表面上に配置された、ポリシロキサンを含むプライマー層と、
    前記プライマー層上に配置された、前記プライマー層のポリシロキサンの側鎖の炭素数1〜6の炭化水素基と共有結合を介して連結された、ポリアルキレングリコールである親水性ポリマーを含む親水性層と、
    をさらに含み、前記共有結合を介する連結が、*−O−CH −CH(OH)−CH −**(式中、*はポリシロキサンの側鎖の炭化水素基との結合位置であり、**はポリアルキレングリコールのヒドロキシル基との結合位置である)で表される、請求項1記載の管状基材。
  3. 前記親水性ポリマーがポリエチレングリコールである、請求項1または2記載の管状基材。
  4. 前記プラスチックが、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルおよびポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項記載の管状基材。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載の管状基材の製造方法であって、
    前記管状基体の表面上において、ケイ素原子に直結した炭素原子を含みかつ官能基を有する有機基を有するシラノール化合物を重合させ、ポリシロキサンを含むプライマー層を形成する、プライマー層形成工程と、
    前記プライマー層とポリアルキレングリコールである親水性ポリマーとを、前記ポリシロキサンの側鎖の炭素数1〜6の炭化水素基上のグリシジル基と親水性ポリマーのヒドロキシル基との反応により、共有結合を介して連結させる、親水性層形成工程と、を含む方法。
  6. 前記親水性ポリマーがポリエチレングリコールであり、前記親水性層形成工程が、前記ポリシロキサンの側鎖の3−グリシドキシプロピル基上のグリシジル基ポリエチレングリコールのヒドロキシル基との反応により、ポリエチレングリコールを前記側鎖に共有結合を介して連結させるものである、請求項5記載の方法。
  7. 前記プライマー層形成工程の前に、前記管状基材の表面をプラズマ処理する工程をさらに含む、請求項5または6記載の方法。
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