JP4742598B2 - パターニング用基板および細胞培養基板 - Google Patents

パターニング用基板および細胞培養基板 Download PDF

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    • C12M25/00Means for supporting, enclosing or fixing the microorganisms, e.g. immunocoatings

Description

本発明は、細胞を高精細なパターン状に接着させることが可能な細胞培養用パターニング基板や、その細胞培養用パターニング基板の形成に用いられるパターニング用基板、そのパターニング用基板を形成するために用いられるパターニング用基板用コーティング液、および細胞を高精細なパターン状に接着させた細胞培養基板に関するものである。
現在、いろいろな動物や植物の細胞培養が行われており、また、新たな細胞の培養法が開発されている。細胞培養の技術は、細胞の生化学的現象や性質の解明、有用な物質の生産などの目的で利用されている。さらに、培養細胞を用いて、人工的に合成された薬剤の生理活性や毒性を調べる試みがなされている。
一部の細胞、特に多くの動物細胞は、何かに接着して生育する接着依存性を有しており、生体外の浮遊状態では長期間生存することができない。このような接着依存性を有した細胞の培養には、細胞が接着するための担体が必要であり、一般的には、コラーゲンやフィブロネクチンなどの細胞接着性タンパク質を均一に塗布したプラスチック製の培養皿が用いられている。これらの細胞接着性タンパク質は、培養細胞に作用し、細胞の接着を容易にしたり、細胞の形態に影響を与えることが知られている。
一方、培養細胞を基材上の微小な部分にのみ接着させ、配列させる技術が報告されている。このような技術により、培養細胞を人工臓器やバイオセンサ、バイオリアクターなどに応用することが可能になる。培養細胞を配列させる方法としては、細胞に対して接着の容易さが異なるような表面がパターンをなしているような基材を用い、この表面で細胞を培養し、細胞が接着するように加工した表面だけに細胞を接着させることによって細胞を配列させる方法がとられている。
例えば、特許文献1には、回路状に神経細胞を増殖させるなどの目的で、静電荷パターンを形成させた電荷保持媒体を細胞培養に応用している。また、特許文献2では、細胞接着阻害性あるいは細胞接着性の光感受性親水性高分子をフォトリソグラフィ法によりパターニングした表面上への培養細胞の配列を試みている。
さらに、特許文献3では、細胞の接着率や形態に影響を与えるコラーゲンなどの物質がパターニングされた細胞培養用基材と、この基材をフォトリソグラフィ法によって作製する方法について開示している。このような基材の上で細胞を培養することによって、コラーゲンなどがパターニングされた表面により多くの細胞を接着させ、細胞のパターニングを実現している。
しかしながら、このような細胞培養部位のパターニングは、用途によっては高精細であることが要求される場合がある。上述したような感光性材料を用いたフォトリソグラフィ法等によるパターニングを行う場合は、高精細なパターンを得ることはできるが、細胞接着性材料が感光性を有する必要があり、例えば生体高分子等にこのような感光性を付与するための化学的修飾を行うことが困難な場合が多く、細胞接着性材料の選択性の幅を極めて狭くするといった問題があった。また、フォトレジストを用いたフォトリソグラフィ法では、現像液等を用いる必要性があり、これらが細胞培養に際して悪影響を及ぼす場合があった。
さらに、高精細な細胞接着性材料のパターンの形成方法として、マイクロ・コンタクトプリンティング法が、ハーバード大学のジョージ M,ホワイトサイズ(George M. Whitesides)により提唱されている(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7等)。しかしながら、この方法を用いて工業的に細胞接着性材料のパターンを有する細胞培養基材を製造することは難しいといった問題があった。
特開平2−245181号公報 特開平3−7576号公報 特開平5−176753号公報 米国特許第5,512,131号公報 米国特許第5,900,160号公報 特開平9−240125号公報 特開平10−12545号公報
そこで、基材上に細胞を高精細なパターン状に接着し、培養させるために用いられる細胞培養用パターニング基板や、細胞を高精細なパターン状に接着させた細胞培養基板等の提供が望まれている。
本発明は、基材と、上記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上に形成され、細胞と接着性を有しかつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解または変性される細胞接着材料を少なくとも含有する細胞接着層とを有することを特徴とするパターニング用基板を提供する。
本発明によれば、上記光触媒含有層上に上記細胞接着層が含有されていることから、パターニング用基板にエネルギーを照射することによって、容易に細胞接着層中の細胞接着材料を分解または変性させることができる。これにより、細胞接着材料が分解または変性された細胞との接着性が低い領域と、エネルギーが照射されずに細胞接着材料が含有される細胞との接着性が高い領域とを容易に形成することが可能なパターニング用基板とすることができる。
上記発明においては、基材または上記光触媒含有層上にパターン状に遮光部が形成されているものとすることができる。これにより、上記パターニング用基板の基材側からエネルギーを照射することによって、遮光部が形成されていない領域上の細胞接着層に含有される細胞接着材料のみを分解または変性させることができ、容易に細胞との接着性が良好な領域と、細胞との接着性が悪い領域とを形成することができるからである。
また、上記発明においては、上記細胞接着層中に、少なくともエネルギー照射された後に、細胞と接着することを阻害する細胞接着阻害性を有する細胞接着阻害材料が含有されていることが好ましい。これにより、上記細胞接着材料が分解または変性された領域の細胞との接着性を、より低いものとすることができ、細胞接着材料が分解または変性されていない領域のみに、高精細なパターンで細胞を接着させることが可能となるからである。
また、本発明は上記いずれかのパターニング用基板の上記細胞接着層が、パターン状に上記細胞接着材料が分解または変性された細胞接着阻害部と、上記細胞接着阻害部以外の領域である細胞接着部とを有することを特徴とする細胞培養用パターニング基板を提供する。
本発明によれば、上記細胞接着材料が分解または変性されて細胞との接着性が低い細胞接着阻害部と、上記細胞接着材料が分解または変性されずに、細胞との接着性が良好な細胞接着部とを有することから、複雑な工程や、細胞に悪影響を及ぼすような処理液等を用いることなく、細胞接着部のみに高精細に細胞を接着させることが可能な細胞培養用パターニング基板とすることができる。
またさらに、本発明は、上記細胞培養用パターニング基板の、上記細胞接着部上に、細胞が接着していることを特徴とする細胞培養基板を提供する。
本発明によれば、上記細胞接着部および細胞接着阻害部を有する細胞培養用パターニング基板を用いることによって、容易に細胞接着部上に細胞が接着されたものとすることができる。
また、本発明は、細胞と接着性を有しかつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解または変性される細胞接着材料と、少なくともエネルギー照射された後に、細胞と接着することを阻害する細胞接着阻害性を有する細胞接着阻害材料とを含有することを特徴とするパターニング用基板用コーティング液を提供する。
本発明によれば、上記パターニング用基板用コーティング液を光触媒を含有する層等の上に塗布して層を形成することにより、上記細胞接着材料により、細胞との接着性が良好な層とすることができる。一方、この層にエネルギーを照射することによって上記細胞接着材料を分解または変性することができ、また上記細胞接着阻害材料が含有されていることから、細胞との接着性を低いものとすることができる。したがって、容易に細胞との接着性が良好な領域と、細胞との接着性が低い領域とを形成することが可能なパターニング用基板用コーティング液とすることができる。
また、本発明は、基材と、上記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上にパターン状に形成された細胞と接着性を有する細胞接着材料を少なくとも含有する細胞接着部と、上記細胞接着材料が分解または変性された細胞接着阻害部と、上記細胞接着部上に細胞が接着した細胞培養基板の製造方法であって、
上記細胞接着部上に細胞を接着させる細胞接着工程を行った後、上記細胞接着阻害部上に、エネルギー照射を行うことにより、上記細胞接着部上に接着した細胞のパターンを維持させる細胞維持工程を有することを特徴とする細胞培養基板の製造方法を提供する。
本発明によれば、上記細胞接着工程により、細胞接着部上に細胞を接着させた後、上記細胞維持工程により、上記細胞培養基板の細胞接着阻害部にエネルギーを照射することによって、細胞接着阻害部に接着した細胞等を除去することが可能となり、細胞接着部のみに高精細なパターン状に細胞が接着した細胞培養基板とすることができるからである。
本発明によれば、エネルギーを照射することによって、細胞接着材料が分解または変性された細胞との接着性が低い領域と、エネルギーが照射されずに細胞接着材料が含有される細胞との接着性が高い領域とを容易に形成することが可能なパターニング用基板とすることができる。
本発明は、細胞を高精細なパターン状に接着させることが可能な細胞培養用パターニング基板や、その細胞培養用パターニング基板の形成に用いられるパターニング用基板、そのパターニング用基板を形成するために用いられるパターニング用基板用コーティング液、および細胞を高精細なパターン状に接着させた細胞培養基板等に関するものである。以下、それぞれについてわけて説明する。
A.パターニング用基板用コーティング液
まず、本発明のパターニング用基板用コーティング液について説明する。本発明のパターニング用基板用コーティング液は、細胞と接着性を有しかつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解または変性される細胞接着材料と、少なくともエネルギー照射された後に、細胞と接着することを阻害する細胞接着阻害性を有する細胞接着阻害材料とを含有するものである。
本発明のパターニング用基板用コーティング液は、上記細胞接着材料していることから、パターニング用基板用コーティング液を例えば光触媒を含有する層等の上に塗布して層を形成した場合に、細胞との接着性が良好なものとすることができる。また、その層にエネルギーを照射した場合には、エネルギー照射に伴う光触媒の作用によって、細胞接着材料が分解または変性されて、細胞との接着性が低いものとすることができる。またこの際、パターニング用基板用コーティング液中には上記細胞接着阻害材料が含有されていることから、この細胞接着阻害材料の細胞接着阻害性によって、細胞との接着性をより低いものとすることができる。したがって、本発明によれば、上記パターニング用基板用コーティング液を用いて層を形成することにより、エネルギーが照射されていない領域のみに、高精細なパターン状に細胞を接着させることが可能なものとすることができる。
以下、本発明のパターニング用基板用コーティング液に用いられる各構成について説明する。
1.細胞接着材料
まず、本発明のパターニング用基板用コーティング液に用いられる細胞接着材料について説明する。本発明のパターニング用基板用コーティング液に用いられる細胞接着材料は、細胞と接着性を有しかつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解または変性されるものであれば、その種類等は特に限定されるものではない。ここで、細胞と接着性を有するとは、細胞と良好に接着することをいい、細胞との接着性が細胞の種類によって異なる場合等には、目的とする細胞と良好に接着することをいう。
本発明に用いられる細胞接着材料は、このような細胞との接着性を有しており、エネルギー照射に伴う光触媒の作用によって分解または変性されて、細胞との接着性を有しなくなるものや、細胞との接着を阻害する細胞接着阻害性を有するものに変化するもの等が用いられる。
ここで、上記のような細胞と接着性を有する材料には、物理化学的特性により細胞と接着性を有する材料と、生物化学的特性により細胞と接着性を有する材料との2種類がある。
物理化学的特性により細胞と接着性を有する材料の、細胞との接着性を決定する物理化学的な因子としては、表面自由エネルギーや、静電相互作用等が挙げられる。例えば細胞との接着性が材料の表面自由エネルギーにより決定される場合には、材料が所定の範囲内の表面自由エネルギーを有すると細胞と材料との接着性が良好となり、その範囲を外れると細胞と材料との接着性が低下することとなる。このような表面自由エネルギーによる細胞の接着性の変化としては、例えば資料CMC出版 バイオマテリアルの最先端 筏 義人(監修)p.109下部に示されるような実験結果が知られている。このような因子により細胞との接着性を有する材料としては、例えば親水化ポリスチレン、ポリ(N‐ イソプロピルアクリルアミド)等が挙げられる。このような材料を用いた場合、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、例えば上記材料の表面の官能基が置換等されたり、分解されること等によって、表面自由エネルギーが変化し、細胞との接着性が低いもの、または上記細胞接着阻害性を有するものとすることができる。
また、静電相互作用等により細胞と材料との接着性が決定される場合には、材料が有する正電荷の量等によって細胞との接着性が決定されることとなる。このような静電相互作用により細胞との接着性を有する材料としては、例えばポリリジン等の塩基性高分子、アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の塩基性化合物およびそれを含む縮合物等が挙げられる。このような材料を用いた場合、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、上記材料が分解または変性されることによって、例えば表面に存在する正電荷量を変化させることができ、細胞との接着性が低いもの、または上記細胞接着阻害性を有するものとすることができる。
また、生物学的特性により細胞と接着性を有する材料としては、特定の細胞と接着性が良好なもの、または多くの細胞と接着性が良好なもの等が挙げられ、具体的には、フィブロネクチン、ラミニン、テネイシン、ビトロネクチン、RGD(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)配列含有ペプチド、YIGSR(チロシン−イソロイシン−グリシン−セリン−アルギニン)配列含有ペプチド、コラーゲン、アテロコラーゲン、ゼラチン等が挙げられる。このような材料を用いた場合、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、例えば上記材料の構造の一部を破壊したり、主鎖を破壊すること等によって、細胞との接着性が低いもの、または上記細胞接着阻害性を有するものとすることができる。
このような細胞接着材料は、用いられる材料の細胞接着性により適宜選択されるものであるが、通常、パターニング用基板用コーティング液中に0.01重量%〜95重量%、中でも1重量%〜10重量%含有されることが好ましい。これにより、細胞接着材料を含有する領域を細胞との接着性が良好な領域とすることができるからである。
2.細胞接着阻害材料
次に、本発明のパターニング用基板用コーティング液に用いられる細胞接着阻害材料について説明する。本発明のパターニング用基板用コーティング液に用いられる細胞接着阻害材料は、少なくともエネルギー照射された後に、細胞と接着することを阻害する細胞接着阻害性を有するものである。ここで、上記細胞接着阻害性とは、パターニング用基板用コーティング液が塗布されて層が形成された際に、エネルギーが照射された領域に細胞が接着することを阻害する性質をいうこととする。また、細胞との接着性が細胞の種類によって異なる場合等には、目的とする細胞との接着を阻害する性質を有することをいう。
本発明においては、このような細胞接着阻害性を少なくともエネルギー照射された後に有するものであれば、特にその材料等は限定されるものではなく、例えばエネルギー照射される前から、細胞接着阻害性を有するものであってもよく、またエネルギー照射される前は細胞接着阻害性を有しておらず、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により細胞との接着性が低くなり、細胞接着阻害性を発揮するもの等であってもよい。
上記のエネルギー照射される前から、細胞接着阻害性を有する細胞接着阻害材料としては、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、分解等されずに細胞接着阻害性を発揮するものを用いることができ、このようなものとして具体的にはフルオロアルキル鎖を含むアルコキシシラン類およびそれを含む重縮合物、ベタイン構造などを有する両性イオン材料、リン脂質含有材料、ポリ(2−メトキシエチル)アクリレート等が挙げられる。上記のような材料を細胞接着阻害材料として用いる場合には、パターニング用基板用コーティング液が塗布されて層が形成された後のエネルギーが照射されない領域において、上記細胞接着材料の細胞との接着性を阻害しない程度含有されることが好ましい。
本発明においては、上記細胞接着阻害材料として、特にエネルギー照射される前は細胞接着阻害性を有しておらず、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により細胞との接着性が低くなり、細胞接着阻害性を発揮するものを用いることが好ましい。このような材料を細胞接着阻害材料として用いた場合、パターニング用基板用コーティング液を塗布して層を形成した際に、エネルギー照射されない領域においては、細胞接着阻害材料が細胞接着阻害性を発揮しないことから、上記細胞接着材料の細胞との接着性が阻害されることがなく、またエネルギーを照射された領域においては、バインダの細胞との接着性をより低いものとすることができるからである。
このような細胞接着阻害材料として用いられる材料としては、例えば主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであって、光触媒の作用により分解されるような有機置換基を有するものが好ましく、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
上記の(1)の場合、一般式:
SiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基、またはこれらを含む有機基であり、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、ここでYで示される有機基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
また、上記の(2)の反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
Figure 0004742598
ただし、nは2以上の整数であり、R,Rはそれぞれ炭素数1〜20の置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R、Rがメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。上記のような材料を用いることによって、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、エネルギー照射された領域の表面を高い親水性を有するものとすることができる。この高い親水性により細胞の接着が阻害され、エネルギー照射された領域には細胞が接着しないものとすることができるからである。上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコン化合物をバインダに混合してもよい。
上記材料を細胞接着阻害材料として用いる場合、エネルギーが照射される前の水との接触角が15°〜120°、中でも20°〜100°の範囲内となるものであることが好ましい。これにより、上記細胞接着材料の細胞との接着性を阻害することのないものとすることができるからである。
また、この細胞接着阻害材料にエネルギーが照射された場合には、水との接触角が10°以下となるものであることが好ましい。上記範囲とすることにより、高い親水性を有するものとすることができ、細胞との接着性を低いものとすることができるからである。
なお、ここでいう水との接触角は、水、もしくは同等の接触角を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。
また、本発明においては、エネルギーが照射された領域の濡れ性の変化を起こさせること等により、細胞との接着性が低下する、もしくはそのような変化を補助する分解物質等を上記細胞接着阻害材料とともに用いてもよい。
このような分解物質としては、例えばエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解等されて、親水性となること等により、細胞との接着性が低下する界面活性剤等を挙げることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
また、界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を挙げることができる。
本発明においては、このような細胞接着阻害材料は、用いられる材料の細胞接着阻害性により適宜選択されるものであるが、通常パターニング用基板用コーティング液中に、0.01〜95重量%、中でも0.1〜10重量%含有されていることが好ましい。
3.パターニング用基板用コーティング液
次に、本発明のパターニング用基板用コーティング液について説明する。本発明のパターニング用基板用コーティング液は、上記細胞接着材料と、上記細胞接着阻害材料とを含有するものであれば、特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜バインダ等の成分を含有しているものであってもよい。バインダを含有させることにより、パターニング用基板用コーティング液を、例えば光触媒を含有する層等の上に塗布する際の塗工が容易なものとすることや、形成された層に強度や耐性を付与する等、様々な特性を付与することが可能となるからである。このようなバインダとしては、パターニング用基板用コーティング液が必要とされる目的に応じて適宜選択される。なお、本発明においては、このバインダとしての役割を、上記細胞接着阻害材料が果たすものとしてもよい。
B.パターニング用基板
次に、本発明のパターニング用基板について説明する。本発明のパターニング用基板は、基材と、上記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上に形成され、細胞と接着性を有しかつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解または変性される細胞接着材料を少なくとも含有する細胞接着層とを有するものである。
本発明のパターニング用基板は、例えば図1に示すように、基材1と、その基材1上に形成された光触媒含有層2と、その光触媒含有層2上に形成された細胞接着層3とを有するものである。
本発明によれば、上記細胞接着層が光触媒含有層上に形成されていることから、細胞接着層にエネルギーを照射することによって、近接する光触媒含有層中の光触媒の作用により、容易に細胞接着層中に含有される細胞接着材料を分解または変性させることができる。これにより、パターン状にエネルギーを照射することによって、特別な装置や複雑な工程を必要とせず、細胞接着材料が分解または変性された細胞との接着性が低い領域と、エネルギーが照射されず、細胞接着材料が分解または変性されていない細胞との接着性が良好な領域とを容易に形成することができるのである。
ここで、本発明のパターニング用基板は、例えば図2に示すように、基材1上に遮光部4が形成されているものであってもよい。また、例えば図3に示すように、光触媒含有層2上に遮光部4が形成されており、この光触媒含有層2および遮光部4を覆うように細胞接着層3が形成されているものであってもよい。このような遮光部が形成されている場合には、基材側等から全面にエネルギーを照射した際、遮光部が形成されていない領域上の細胞接着層中に含有される細胞接着材料のみが分解または変性されることとなる。これにより、例えばフォトマスク等を用いることなく、パターン状にエネルギーを照射することができ、容易に細胞が接着する領域と、細胞が接着しない領域とを形成することが可能となる。
以下、本発明のパターニング用基板の各構成について説明する。
1.細胞接着層
まず、本発明のパターニング用基板に用いられる細胞接着層について説明する。本発明のパターニング用基板に用いられる細胞接着層は、後述する光触媒含有層上に形成され、細胞と接着性を有しかつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解または変性される細胞接着材料を少なくとも含有するものであれば、特に限定されるものではない。
上記細胞接着層としては、例えば細胞と接着性を有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解または変性される細胞接着材料を含有するコーティング液等を用いて、層を形成したもの等とすることができるが、本発明においては、特に細胞接着材料と細胞接着阻害材料とを含有している、上述したパターニング用基板用コーティング液を用いて、層を形成したものとすることが好ましい。これにより、細胞接着層にエネルギーが照射された際に、エネルギーが照射された領域の細胞との接着性をより低いものとすることができ、エネルギーが照射されていない領域のみに、高精細なパターンで細胞を接着させることができるからである。
このような細胞接着層を形成する方法としては、上記パターニング用基板用コーティン液等を一般的な塗布方法により塗布すること等によって形成することができ、塗布方法として具体的には、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、ビードコート法等を用いることができる。また、吸着法も好適に用いることができる。
また、例えば後述する基材に凹部が形成されている場合には、上記基材の凹部に後述する光触媒含有層を形成した後、上記凹部にパターニング用基板用コーティング液等を滴下し、乾燥させて細胞接着層とするキャスト法や、上記基材の凹部に後述する光触媒含有層を形成した後、パターニング用基板用コーティング液等を滴下し、所定時間後、洗浄する吸着法等も用いることができる。
ここで、本発明に用いられる細胞接着層に用いられる細胞接着材料、細胞接着阻害材料等については、上述した「A.パターニング用基板用コーティング液」の項で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
上記細胞接着層の膜厚としては、パターニング用基板の種類等によって適宜選択されるものであるが、通常0.001μm〜1μm程度、中でも0.005μm〜0.1μm程度とすることが好ましい。
2.光触媒含有層
次に、本発明のパターニング用基板に用いられる光触媒含有層について説明する。本発明のパターニング用基板に用いられる光触媒含有層は、少なくとも光触媒を含有する層であれば、特に限定されるものではなく、光触媒のみからなる層であってもよく、またバインダ等、他の成分を含有する層等であってもよい。
この光触媒含有層における、後述するような酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本発明においては、このキャリアが光触媒含有層上に形成された細胞接着層中の細胞接着材料に作用を及ぼすものであると思われる。
本発明で使用する光触媒としては、光半導体として知られる例えば酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi23)、および酸化鉄(Fe23)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
本発明においては、特に酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本発明ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の酸化チタンが好ましい。アナターゼ型酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
このようなアナターゼ型酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径が50nm以下が好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
ここで、光触媒のみからなる光触媒含有層を用いた場合には、上記細胞接着層中の細胞接着材料の分解または変性に対する効率が向上し、処理時間の短縮化等のコスト面で有利である。一方、光触媒とバインダとからなる光触媒含有層を用いた場合には、光触媒含有層の形成が容易であるという利点を有する。
光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒含有層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒含有層とすることが可能であり、これにより細胞接着材料を均一に分解または変性させることが可能であり、かつ光触媒のみからなることから、バインダを用いる場合と比較して効率的に細胞接着材料を分解または変性させることが可能となる。なお、後述する基材に凹部が形成されている場合にも、上記方法により光触媒含有層を形成することができる。
また、光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法の他の例としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基材上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
また、バインダを用いる場合は、バインダの主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えばこのようなバインダとしては、上述した細胞接着層の項で説明したオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
このようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記光触媒含有層は、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を後述する基材上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することができる。
また、例えば後述する基材に凹部が形成されている場合には、上記塗布液等を凹部に滴下し、乾燥させて光触媒含有層を形成するキャスト法等も行うことができる。
また、バインダとして無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiX4で表され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、この場合には、無定形シリカの前駆体と光触媒の粒子とを非水性溶媒中に均一に分散させ、透明基材上に空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、常温で脱水縮重合することにより光触媒含有層を形成できる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。また、これらの結着剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
また、光触媒含有層には上記の光触媒、バインダの他に、上述した細胞接着層の項で説明した界面活性剤等を含有させることもできる。
ここで、本発明においては上記光触媒含有層は、その表面は細胞との接着性が、例えば表面が親水性であること等によって細胞との接着性が低いことが好ましい。これにより、上記細胞接着層が分解等されて光触媒含有層が露出した場合に、その領域を細胞との接着性が低い領域とすることができるからである。
また、本発明においては、上述したように上記光触媒含有層上に遮光部が形成されていてもよい。これにより、上記細胞接着層の全面にエネルギーを照射した場合に、遮光部が形成された領域上の光触媒は励起されず、遮光部が形成された領域以外の細胞接着層中に含有される細胞接着材料を分解または変性させることができるからである。またこの場合、遮光部が形成されている領域の光触媒は励起されないことから、エネルギーが照射される方向が特に限定されない、という利点を有する。
このような遮光部としては、パターニング用基板に照射されるエネルギーを遮断することが可能なものであれば、特に限定されるものではなく、例えばスパッタリング法、真空蒸着法等により厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより形成されてもよい。このパターニングの方法としては、スパッタ等の通常のパターニング方法を用いることができる。
また、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層をパターン状に形成する方法であってもよい。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製遮光部の厚みとしては、0.5〜10μmの範囲内で設定することができる。このような樹脂製遮光部のパターニングの方法は、フォトリソ法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
3.基材
次に、本発明に用いられる基材について説明する。本発明に用いられる基材は、上記光触媒含有層を形成可能な層であれば、特に限定されるものではなく、例えば金属、ガラス、シリコン等の無機材料、およびプラスチックで代表される有機材料等を用いることができる。
ここで、基材の可撓性等はパターニング用基板の種類や用途等によって適宜選択される。また、上記基材の透明性は、パターニング用基板の種類や、上記細胞接着材料を分解または変性させるために照射されるエネルギーの照射方向等によって、適宜選択され、例えば基材が遮光部等を有しており、上記エネルギーの照射が、基材側から行われる場合等には、基材が透明性を有するものとされる。
なお、本発明においては、基材が平坦なものであってもよいが、基材に凹部が形成されていてもよい。このような基材としては、例えば図10(a)に示すように、1つの凹部が形成されているものであってもよく、また例えば図10(b)に示すように、複数の凹部が形成されているものであってもよい。
またこの際、上記凹部を有する基材の側壁に上記光触媒含有層や細胞接着層が形成されないように処理が施されたものであってもよい。このような処理としては、例えばマスク等を用いてCVD法により上記側壁のみに撥液性を有する材料を付着させる方法や、上記凹部全面に撥液性を有する材料を付着させた後、筒状のマスク等を用いて紫外線処理やプラズマ処理等を行い、上記凹部の底面のみ、親液化させる方法等が挙げられる。
ここで、本発明において、上記基材は、アルカリ洗浄等の薬液洗浄されたものであってもよく、また酸素プラズマ処理や紫外線処理等のドライ洗浄が行われたものであってもよい。この場合、上記光触媒含有層を形成するための塗布液等の濡れ性が向上する。またさらに表面に反応性の官能基が配置されることとなることから、光触媒含有層の密着性が向上する、という利点を有する。
ここで、本発明の基材には、上述したように、遮光部が形成されていてもよい。基材上に形成される遮光部としては、上述した光触媒含有層の項で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。なお、上記遮光部は、上記光触媒含有層が形成される側の面に形成されるものであってもよく、また反対側の面に形成されるものであってもよい。
また、基材上に上記遮光部を形成し、その遮光部上に上記光触媒含有層を形成する場合には、その光触媒含有層と遮光部との間にプライマー層を形成してもよい。このプライマー層の作用・機能は必ずしも明確なものではないが、プライマー層を形成することにより、光触媒の作用による細胞接着層中の細胞接着材料の分解または変性を阻害する要因となる遮光部および遮光部間に存在する開口部からの不純物、特に、遮光部をパターニングする際に生じる残渣や、金属、金属イオン等の不純物の拡散を防止する機能を示すものと考えられる。したがって、プライマー層を形成することにより、高感度で細胞接着材料を分解または変性させることができ、その結果、高解像度のパターンを得ることが可能となるのである。
なお、本発明においてプライマー層は、遮光部のみならず遮光部間に形成された開口部に存在する不純物が光触媒の作用に影響することを防止するものであるので、プライマー層は開口部を含めた遮光部全面にわたって形成されていることが好ましい。
本発明におけるプライマー層は、上記遮光部と上記光触媒含有層とが接触しないようにプライマー層が形成された構造であれば特に限定されるものではない。
このプライマー層を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、光触媒の作用により分解されにくい無機材料が好ましい。具体的には無定形シリカを挙げることができる。このような無定形シリカを用いる場合には、この無定形シリカの前駆体は、一般式SiXで示され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物であり、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
また、プライマー層の膜厚は、0.001μmから1μmの範囲内であることが好ましく、特に0.001μmから0.1μmの範囲内であることが好ましい。
4.パターニング用基板
次に、本発明のパターニング用基板について説明する。本発明のパターニング用基板は、基材上に、上記光触媒含有層が形成されており、その光触媒含有層上に細胞接着層が形成されたものであれば、特に限定されるものではなく、例えば必要に応じて他の層が積層されたもの等であってもよい。
C.細胞培養用パターニング基板
次に、本発明の細胞培養用パターニング基板について説明する。本発明の細胞培養用パターニング基板は、上述したパターニング用基板の上記細胞接着層が、パターン状に上記細胞接着材料が分解または変性された細胞接着阻害部と、上記細胞接着阻害部以外の領域である細胞接着部とを有するものである。
本発明の細胞培養用パターニング基板は、例えば図4に示すように、基材1と、その基材1上に形成された光触媒含有層2と、その光触媒含有層2上に形成された細胞接着層3とを有するものであり、その細胞接着層3は、層中の細胞接着材料が分解または変性された細胞接着阻害部6と、細胞接着材料が分解または変性されていないそれ以外の領域である細胞接着部5とを有するものである。
本発明によれば、上記細胞接着阻害部においては、細胞接着材料が分解または変性されていることから、細胞との接着性が低い。また上記細胞接着部においては、細胞接着材料が含有されており、細胞との接着性が高い。したがって、複雑な工程や、細胞に悪影響を及ぼす処理液等を用いることなく、細胞接着部にのみ細胞を接着させることが可能となるのである。
また、上記細胞接着部上に細胞を接着させた後、全面にエネルギーを照射することによって、光触媒含有層中に含有される光触媒の作用によって、細胞が接着した細胞接着部の細胞接着材料を分解または変性させることができ、細胞接着層の全面を細胞との接着性が低いものとすることができる。これにより、細胞接着部上に接着した細胞を剥離することができ、パターン状に形成された細胞を得ることができる。なお、この際照射されるエネルギーは細胞に影響を与えない程度のエネルギーとされる。
ここで、上記細胞接着部とは、細胞と接着性を有しかつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解または変性される細胞接着材料を含有する領域であり、目的とする細胞との接着性が良好な領域である。ここで、細胞との接着性を有するとは、上述した「A.パターニング用基板用コーティング液」の項で説明したような物理化学的細胞接着性や生物学的細胞接着性を有することとする。
一方、細胞接着阻害部とは、上記細胞接着材料が分解または変性された領域であり、細胞との接着性が低い領域である。ここで、上記細胞接着材料が分解または変性されているとは、上記細胞接着材料が含有されていない、もしくは上記細胞接着部に含有される細胞接着材料の量と比較して、細胞接着材料が少ない量含有されていることをいう。例えば上記細胞接着材料がエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解されるものである場合には、細胞接着阻害部中にはその細胞接着材料が少量含有されている、または細胞接着材料の分解物等が含有されている、もしくは細胞接着層が完全に分解除去されて光触媒含有層が露出すること等となる。また、上記細胞接着材料がエネルギー照射に伴う光触媒の作用により変性されるものである場合には、細胞接着阻害部中にはその変性物等が含有されていることとなる。本発明においては、上記細胞接着阻害部に、細胞との接着を阻害するような細胞接着阻害性を有する細胞接着阻害物質が含有されていることが好ましい。これにより、細胞接着阻害部の細胞との接着性をより低いものとすることができ、上記細胞接着部のみに、高精細に細胞を接着させることが可能となるからである。
ここで、本発明においては、例えば図5に示すように、上記細胞接着層3の細胞接着部5と同じパターン状に、基材1上に遮光部4が形成されていてもよい。また、光触媒含有層上に遮光部が形成されていてもよい。このような遮光部が形成されていることにより、例えば、上述した「B.パターニング用基板」で説明したパターニング用基板を形成し、基材側等から全面にエネルギーを照射することによって、遮光部が形成されていない領域上のみの細胞接着材料を分解または変性させることができ、上記細胞接着阻害部が容易に形成されたものとすることができるからである。
またこの場合、本発明の細胞培養用パターニング基板の細胞接着部上に細胞を接着した後、基材側から全面にエネルギーを照射することによって、細胞接着阻害部のみにエネルギーを照射することができる。これにより、細胞接着阻害部に細胞が付着した場合等であっても、このエネルギーの照射により、細胞接着阻害部上の細胞を除去することができ、高精細なパターンを保つことが可能となる。
ここで、本発明の細胞培養用パターニング基板に用いられる基材、光触媒含有層、および細胞接着層については、上述したパターニング用基板の項で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略し、以下、上記細胞接着阻害部の形成方法について説明する。
まず、例えば図6に示すように、基材1上に少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層2を形成し、この光触媒含有層2上に、上述した「A.パターニング用基板用コーティング液」で説明したパターニング用基板用コーティング液等を用いて、細胞接着材料を含有する細胞接着層3を形成する(図6(a))。次にこの細胞接着層3に、細胞接着阻害部を形成するパターン状に、例えばフォトマスク8等を用いてエネルギー9を照射する(図6(b))。これにより、光触媒含有層2中に含有される光触媒の作用によって、エネルギー照射された領域の細胞接着層3の細胞接着材料が分解または変性され、エネルギーが照射された領域を細胞接着阻害部6、エネルギーが照射されていない領域を細胞接着部5とすることができる(図6(c))。なお、上記細胞接着層および光触媒含有層の形成方法等については、上記「B.パターニング用基板」で説明した方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。また、上述したように、上記細胞接着阻害層中には、少なくともエネルギー照射された後に、細胞との接着を阻害する細胞接着阻害材料が含有されていることが好ましい。これにより、細胞接着阻害部の細胞との接着性をより低いものとすることができるからである。
ここで、本発明でいうエネルギー照射(露光)とは、エネルギー照射に伴う光触媒の作用によって、細胞接着材料を分解または変性させることが可能ないかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、光の照射に限定されるものではない。
通常このようなエネルギー照射に用いる光の波長は、400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下の範囲から設定される。これは、上述したように光触媒として用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
上述したような光源を用い、フォトマスクを介したパターン照射により行う方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。また、上述したように、基材が細胞接着部と同じパターン状に遮光部を有する場合には、基材側からエネルギーを全面に照射することにより、行うことができる。また、光触媒含有層上に、細胞接着部と同じパターン状に遮光部を有する場合には、どの方向からでもエネルギーを全面に照射することにより、行うことができる。これらの場合、フォトマスク等が必要なく、位置あわせ等の工程が必要ない、という利点を有する。
ここで、上述したように、上記基材が凹部を有しており、上記凹部内に上記光触媒含有層および細胞接着層が形成されている場合、上述した方法によりエネルギー照射を行ってもよい。また、例えば上記凹部が複数形成されている場合には、例えば各凹部ごとにそれぞれ異なるパターン状に露光を行ってもよい。このように各凹部ごとにそれぞれ露光を行う方法としては、例えば1つ1つの凹部に異なるマスクを配置してエネルギー照射する方法や、例えば光ファイバの先に、クロムマスクやステンシルマスク等を配置し、エネルギー照射する方法等が挙げられる。
なお、上記凹部の側壁にエネルギーが照射されないように、例えば筒状のマスク等を用い、上記凹部の底面のみ露光を行う方法を用いてもよい。
また、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、光触媒の作用によって細胞接着材料が分解または変性されるのに必要な照射量とする。
この際、光触媒含有層を加熱しながらエネルギー照射することにより、感度を上昇させることが可能となり、効率的に細胞接着材料を分解または変性させることができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
また本発明におけるフォトマスクを介して行うエネルギー照射の方向は、上述した基材が透明である場合は、基材側および細胞接着層側のいずれの方向からエネルギー照射を行っても良い。一方、基材が不透明な場合は、細胞接着層側からエネルギー照射を行う必要がある。
ここで、本発明の細胞培養用パターニング基板は、上記基材上に光触媒含有層および細胞接着層が形成され、その細胞接着層が細胞接着部および細胞接着阻害部を有するものであれば、特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜他の層が形成されているもの等であってもよい。
また本発明においては、上記細胞培養用パターニング基板形成後、上記細胞培養用パターニング基板の一部を切り取り、この細胞培養用パターニング基板の一部を凹状の基材の底部等に貼り付けたもの等を細胞培養用パターニング基板としてもよい。
D.細胞培養基板
次に、本発明の細胞培養基板について説明する。本発明の細胞培養基板は、上述した細胞培養用パターニング基板における細胞接着部上に、細胞が接着したものである。
本発明の細胞培養基板は、例えば図7に示すように、上記細胞接着層3の細胞接着部5上にのみ細胞7が接着し、細胞接着阻害部6上には、細胞7が接着していないものである。
本発明によれば、上記細胞培養用パターニング基板上には、細胞との接着性が良好な細胞接着部と、細胞との接着性を有しない細胞接着阻害部とが形成されていることから、例えば細胞を細胞培養用パターニング基板の全面に塗布した場合であっても、細胞接着部のみに細胞を接着させて、細胞接着阻害部上の細胞を容易に除去することができる。これにより、複雑な工程や細胞に悪影響を及ぼす処理液等を用いることなく、容易に形成されたものとすることができるのである。
また、本発明によれば、上記細胞培養基板の全面にエネルギーを照射することによって、細胞が接着した細胞接着部の細胞接着材料を分解または変性させることができ、細胞接着層全面の細胞との接着性を低いものとすることができる。これにより、細胞接着部上に接着した細胞を容易に剥離することができ、パターン状に形成された細胞のみを得ることができるのである。なお、この際照射されるエネルギーは細胞に影響を与えない程度のエネルギーとされる。
また、上述したように、細胞接着阻害部と同じパターン状に基材上に遮光部が形成されている場合には、必要に応じて基材側から全面にエネルギーを照射することにより、細胞接着阻害部上に付着した細胞を除去することが可能となり、細胞が細胞接着部に接着したパターンを高精細に保つことができるのである。
なお、上記遮光部が形成されていない場合には、細胞接着阻害部と同じパターン状に開口部が形成されたフォトマスク等を用いてエネルギーを照射することにより、高精細なパターンを保つことができる。
以下、本発明の細胞培養基板に用いられる細胞について説明する。ここで、細胞培養用パターニング基板については、上記「C.細胞培養用パターニング基板」で説明したものであるので、ここでの説明は省略する。
(細胞)
本発明の細胞培養基板に用いられる細胞としては、上記細胞培養用パターニング基板の細胞接着部上に接着するものであり、細胞接着阻害部上には接着しないものであれば特に限定されるものではない。
本発明に用いられる細胞としては例えば、神経組織、肝臓、腎臓、膵臓、血管、脳、軟骨等、血球系等の非接着性細胞以外なら、生体に存在するあらゆる組織とそれに由来する細胞とすることができる。また一般的に非接着性の細胞についても、近年、接着固定を行う為に細胞膜を修飾する技術が考案されており、必要に応じてこのような技術を用いる事で本発明に用いることが可能である。
ここで、上述したような各組織は種々の機能をもつ細胞により形成されていることから、所望する細胞を選択し、使用する必要がある。例えば肝臓の場合、肝実質細胞以外にも上皮細胞、内皮細胞、クッパー細胞、繊維芽細胞、脂肪摂取細胞等から形成されることとなる。なおこの場合、細胞の種類により細胞接着材料に対する接着性が異なる為、細胞種に応じて、上記細胞接着部に用いられる細胞接着材料やその組成比の選択が必要となる。
また、細胞を細胞接着部に接着させる方法としては、上記細胞接着部と細胞接着阻害部とを有する上記細胞培養用パターニング基板の上記細胞接着部のみに細胞を接着させることが可能な方法であれば特に限定されるものではない。例えばインクジェットプリンタやマニピュレータ等で細胞を接着させる方法等であってもよいが、細胞懸濁液を播種して上記細胞接着部に細胞を接着させた後、不要となった細胞接着阻害部上の細胞をリン酸バッファで洗浄し、細胞を除去する方法が一般的に用いられる。このような方法としては、例えば参考文献”Spatial distribution of mammalian cells dicated by material surface chemistry”,Kevin E.Healy 他,Biotech.Bioeng.(1994) p.792等に記載されている方法を用いること等ができる。
E.細胞培養基板の製造方法
次に、本発明の細胞培養基板の製造方法について説明する。本発明の細胞培養基板の製造方法は、基材と、上記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上にパターン状に形成された細胞と接着性を有する細胞接着材料を少なくとも含有する細胞接着部と、上記細胞接着材料が分解または変性された細胞接着阻害部と、上記細胞接着部上に細胞が接着した細胞培養基板の製造方法であって、
上記細胞接着部上に細胞を接着させる細胞接着工程を行った後、上記細胞接着阻害部上に、エネルギー照射を行うことにより、上記細胞接着部上に接着した細胞のパターンを維持させる細胞維持工程を有するものである。
本発明の細胞培養基板の製造方法は、例えば図8に示すように、基材1と、その基材1上に形成された光触媒含有層2と、その光触媒含有層2上に形成され、細胞接着部5および細胞接着阻害部6を有する細胞接着層3と、上記細胞接着部5上に形成された細胞7とを有する細胞培養基板の製造方法である。本発明においては、上記細胞接着部5上に細胞7を接着させる細胞接着工程を行った後、上記細胞接着阻害部6に、例えばフォトマスク8等を用いてエネルギー9を照射することにより、細胞接着部5上に接着した細胞7のパターンを維持する細胞維持工程を行う。これにより、細胞が細胞接着阻害部上に付着した場合であっても、光触媒含有層中に含有される光触媒の作用により、細胞接着阻害部上の細胞を除去することが可能となり、細胞接着部上にのみ高精細に細胞が接着された細胞培養基板とすることができるのである。
以下、本発明の細胞培養基板の製造方法におけるエネルギー照射工程について説明する。
(細胞維持工程)
本発明の細胞培養基板の製造方法における細胞維持工程は、上記細胞接着部上に細胞を接着させる細胞接着工程を行った後、上記細胞接着阻害部に、エネルギー照射を行うことにより、上記細胞接着部上に接着した細胞のパターンを維持させる工程であり、細胞接着阻害部にエネルギーを照射を行い、細胞接着部上の細胞のパターンを維持することが可能であれば、そのエネルギーの照射方法等は特に限定されるものではない。
本発明においては、例えば図8に示すように、細胞接着阻害部のパターン状に開口部を有するフォトマスク8等を用いてエネルギー9を照射する方法等が挙げられる。また、例えば図9に示すように、基材1上に遮光部4が、細胞接着部5と同じパターン状に形成されている場合には、基材1側から全面にエネルギーを照射することにより、細胞接着阻害部6のみにエネルギー9を照射する方法等とすることができる。
この際、照射するエネルギーは、エネルギー照射に伴う光触媒の作用によって、細胞接着阻害部上に接着した細胞を除去することが可能なエネルギーであれば特に限定されるものではなく、具体的には、「C.細胞培養用パターニング基板」で説明したものと同様のものとすることができるので、ここでの説明は省略する。
また、本工程を行う時期としては、細胞接着部上に細胞を接着した細胞接着工程直後に行われるものであってもよく、また細胞接着部上の細胞を所定の期間培養した場合に、細胞接着阻害部上に細胞が付着し、パターンが太くなる等といった不具合がないように、細胞の種類や状態に合わせて適宜行われるものであってもよい。また、本工程は繰り返し行われるものであってもよい。
なお、上記細胞接着部上に細胞を接着させる細胞接着工程については、上述した「D.細胞培養基板」の項で説明した細胞の接着方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
(その他)
本発明の細胞培養基板の製造方法においては、上記エネルギー照射工程および細胞接着工程以外に、例えば基材上に光触媒含有層を形成する工程や、その光触媒含有層上に細胞接着層を形成する工程、その細胞接着層にパターン状にエネルギーを照射して、細胞接着部と細胞接着阻害部とを形成する工程等、必要に応じた工程を有するものであってもよい。
また、本発明の細胞培養基板の製造方法に用いられる光触媒、細胞接着材料、基材、および細胞等や、上記細胞接着阻害部の形成方法等については、上述した「D.細胞培養基板」の項で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
(光触媒含有層の形成)
イソプロピルアルコール3g、オルガノシランTSL8114(GE東芝シリコーン)0.4g、および光触媒無機コーティング剤ST−K01(石原産業)1.5gを混合し、攪拌しながら20分間、100℃で加温した。
この溶液をスピンコーティング法により予めアルカリ処理を施した厚さ0.7mmのガラス基板に塗布し、その基板を150℃の温度で10分間乾燥することにより、加水分解、重縮合反応を進行させ、光触媒がオルガノポリシロキサン中に強固に固定された膜厚0.2μmの光触媒含有層を基板上に形成した。
(細胞接着層の形成)
フィブロネクチンF−4759(シグマ)0.2mgと、純水200mlとを混合し、この水溶液を上記光触媒含有層を設けた基板の光触媒含有層に対し、基板面積1cm当たり300μlの比率で滴下し、これを4℃下で24時間静置した。更に基板をPBSにて2回洗浄の上、窒素ガスにさらし乾燥する事により、基板上に光触媒含有層と細胞接着層を有するパターニング用基板を得た。
(パターニング用基板のパターニング)
続いてこのパターニング用基板に遮光部80μm、スペース部300μmのストライプ状のフォトマスク越しに、水銀ランプにより5J/cm(波長254nm)の紫外線照射を行い、未露光部が細胞接着性で、露光部が細胞接着阻害性を有するようにパターン化された細胞接着層を有する細胞培養用パターニング基板を得た。
(細胞の接着)
各種組織に由来する細胞の培養実験手順については、例えば“組織培養の技術 第三版 基礎編”、日本組織培養学会編,朝倉書店等にその詳細が述べられている。本出願においては、ラット肝実質細胞を用いて細胞培養用パターニング基板を評価した。
まず、ラットより摘出した肝臓をシャーレに移してメスで5mm大に細分し、20mlのDMEM培地を加えてピペットで軽く懸濁した後、細胞濾過器で濾過した。得られた粗分散細胞浮遊液を500〜600rpmで90秒間遠心処理し、上清を吸引して除去した。残留した細胞に新たにDMEM培地を加えて再び遠心処理した。この操作を3回繰り返すことにより、ほぼ均一な肝実質細胞を得た。得られた肝実質細胞に、DMEM培地20mlを加えて懸濁し、肝実質細胞懸濁液を調製した。次にWaymouth MB752/1培地(L-グルタミン含有、NaHCO非含有) (ギブコ) 14.12gに蒸留水900mlを添加した。これにNaHCO 2.24g、アンホテリシンB液(ICN)10ml、ペニシリンストレプトマイシン液(ギブコ)10mlを加えて攪拌した。これをpH7.4に調整した後、全量を1000mlとし、0.22μmのメンブレンフィルターで濾過滅菌したものをWaymouth MB752/1培地液とした。先に作成した肝実質細胞懸濁液を、同じく作成したWaymouth MB752/1培地液に懸濁した上で、細胞接着部と細胞接着阻害部を有する、上述した細胞培養用パターニング基板上に播種した。この基板を37℃,5%CO付与したインキュベータ内に24時間静置し、基板上全面に肝実質細胞を接着させた。この基板をPBSで2回洗浄することで非接着細胞や死細胞を除去した後、新しい培地液と交換した。培地液を交換しながら48時間まで細胞の培養を続け光学顕微鏡で細胞を観察したところ、細胞が細胞培養用パターニング基板上の細胞接着部に沿いながら接着している事を確認した。
[実施例2]
(細胞培養用パターニング基板の作製)
遮光部80μmスペース部300μmのストライプ状遮光層を基板の表面に設けた石英基板を用い、この遮光層付き基板の表面に実施例1と同様の操作で光触媒含有層ならびに細胞接着層を形成した。次に、フォトマスクを使用する代わりに、基板の裏面側から実施例1と同じ条件で裏面全体に紫外線照射して細胞培養用パターニング基板を作製した。
(細胞の接着)
実施例1と同様に細胞を接着させた結果、本実施例においても細胞が細胞培養用パターニング基板上の細胞接着部に沿って接着していることを確認した。
[実施例3]
(光触媒含有層の形成)
ガラス基板上に実施例1と同様にして光触媒含有層を形成した。
(細胞接着材料含有層の形成)
オルガノシランTSL8114(GE東芝シリコーン)5.0g、アルキルシラン TSL8241(GE東芝シリコーン)0.55g、および0.005N塩酸2.36gを混合し、攪拌しながら12時間混合した。この溶液をスピンコーティング法により予めアルカリ処理を施した石英ガラス基板に塗布し、その基板を150℃の温度で10分間乾燥することにより、光触媒による分解反応にて細胞接着性から細胞接着阻害性に変化する材料層を基板上に形成し、パターニング用基板とした。
(パターニング用基板のパターニング)
この基板に遮光部80μmスペース部300μmのストライプ状フォトマスク越しに水銀ランプ(波長254nm)により5J/cmの紫外線照射を行い、未露光部が細胞接着性で露光部が細胞接着阻害性にパターン化された細胞接着性表面を有する細胞培養用パターニング基板を得た。
(細胞の接着)
実施例1と同様に細胞を接着させ、本実施例においても細胞が細胞培養用パターニング基板上の細胞接着部に沿って接着していることを確認した。
[実施例4]
市販の直径35mmのプラスチックディッシュ(コーニング社製)の底面の中央部に、直径14mmの穴をあけた。続いて、厚さ約0.1mmのガラス基板を用い、上記実施例1と同様に、細胞培養用パターニング基板を形成し、この細胞培養用パターニング基板を21mm角に切断した。その後、切断された細胞培養用パターニング基板のガラス基板を、上記プラスチックディッシュに、接着剤KE45T(信越シリコーン社製)を用いて貼りつけた。
(細胞の接着)
上記プラスチックディッシュを、70%エタノールで滅菌し、PBSで洗浄した後、DMEM培地で洗浄した。その後、実施例1と同様に、細胞を培養したところ、細胞がプラスチックディッシュ内の細胞接着部に沿いながら接着している事を確認した。
[実施例5]
厚さ約0.1mmの遮光層付き石英基板を用い、実施例2と同様に、細胞接着層を有する細胞培養用パターニング基板を形成し、この細胞培養用パターニング基板を21mm角に切断した。その後、実施例4と同様の手順により、切断された細胞培養用パターニング基板の石英基板を、上記プラスチックディッシュに貼りつけた。
(細胞の培養)
プラスチックディッシュを紫外線滅菌後、実施例4と同様の方法により、プラスチックディッシュ内で細胞を培養したところ、細胞がプラスチックディッシュ内の細胞接着部に沿いながら接着している事を確認した。
[実施例6]
厚さ約0.1mmの遮光層付き石英基板を用い、実施例3と同様に、細胞接着層を有する細胞培養用パターニング基板を形成し、この細胞培養用パターニング基板を21mm角に切断した。その後、実施例4と同様の手順により、切断された細胞培養用パターニング基板の石英基板を、上記プラスチックディッシュに貼りつけた。
(細胞の培養)
実施例4と同様の方法により、プラスチックディッシュ内で細胞を培養したところ、細胞がプラスチックディッシュ内の細胞接着部に沿いながら接着している事を確認した。
[実施例7]
(パターニング用基板の形成)
実施例1と同様に、光触媒含有層を基板上に形成した。続いて、可溶性タイプIコラーゲン溶液(タイプI−C、新田ゼラチン)を、pH3となるように調整された塩酸水溶液で10倍に希釈した。これをスピンコーティング法により上記光触媒含有層上に塗布し、パターニング用基板とした。
(パターニング用基板のパターニング、および細胞の接着)
実施例1と同様に、パターニング用基板のパターニングを行って、細胞培養用パターニング基板を形成した。その後、上記細胞培養用パターニング基板上に、実施例1と同様に細胞を接着させたところ、本実施例においても細胞が細胞培養用パターニング基板上の細胞接着部に沿って接着していることを確認した。
本発明のパターニング用基板の一例を示す概略断面図である。 本発明のパターニング用基板の他の例を示す概略断面図である。 本発明のパターニング用基板の他の例を示す概略断面図である。 本発明の細胞培養用パターニング基板の一例を示す概略断面図である。 本発明の細胞培養用パターニング基板の他の例を示す概略断面図である。 本発明の細胞培養用パターニング基板における細胞接着阻害部の形成方法の一例を示す工程図である。 本発明の細胞培養基板の一例を示す概略断面図である。 本発明の細胞培養基板の製造方法におけるエネルギー照射工程の一例を示す概略断面図である。 本発明の細胞培養基板の製造方法におけるエネルギー照射工程の他の例を示す概略断面図である。 本発明の細胞培養用パターニング基板に用いられる基材を説明するための概略断面図である。
符号の説明
1…基板
2…光触媒含有層
3…細胞接着層

Claims (6)

  1. 基材と、前記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、前記光触媒含有層上に形成され、細胞と接着性を有しかつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解または変性される細胞接着材料を少なくとも含有する細胞接着層とを有し、
    前記基材または前記光触媒含有層上にパターン状に遮光部が形成され、
    前記細胞接着材料が、静電相互作用により細胞と接着性を有する材料または生物学的特性により細胞と接着性を有する材料であることを特徴とするパターニング用基板。
  2. 前記細胞接着層中に、少なくともエネルギー照射された後に、細胞と接着することを阻害する細胞接着阻害性を有する細胞接着阻害材料が含有されていることを特徴とする請求項1に記載のパターニング用基板。
  3. 請求項1または請求項2までのいずれかの請求項に記載のパターニング用基板の前記細胞接着層が、パターン状に前記細胞接着材料が分解または変性された細胞接着阻害部と、前記細胞接着阻害部以外の領域である細胞接着部とを有することを特徴とする細胞培養用パターニング基板。
  4. 請求項3に記載の細胞培養用パターニング基板の、前記細胞接着部上に、細胞が接着していることを特徴とする細胞培養基板。
  5. 細胞と接着性を有しかつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解または変性される細胞接着材料と、少なくともエネルギー照射された後に、細胞と接着することを阻害する細胞接着阻害性を有する細胞接着阻害材料とを含有することを特徴とするパターニング用基板用コーティング液。
  6. 基材と、前記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、前記光触媒含有層上にパターン状に形成された細胞と接着性を有する細胞接着材料を少なくとも含有する細胞接着部と、前記細胞接着材料が分解または変性された細胞接着阻害部と、前記細胞接着部上に細胞が接着した細胞培養基板の製造方法であって、
    前記細胞接着部上に細胞を接着させる細胞接着工程を行った後、前記細胞接着阻害部上に、エネルギー照射を行うことにより、前記細胞接着部上に接着した細胞のパターンを維持させる細胞維持工程を有することを特徴とする細胞培養基板の製造方法。
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