JP4738611B2 - カーボンナノチューブの精製方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、幾何学的、物理化学的特徴を利用して電子材料やナノテクノロジーへの応用などさまざまな分野への応用が考えられるカーボンナノチューブの精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カーボンナノチューブは、例えば電界放出型電子源、フラットパネル(電界放出型)ディスプレイ、走査プローブ顕微鏡の探針、水素ガス吸蔵物質、ナノボンベとして近年用途が期待されている。このような急速な需要の拡大から大量に安定して生産することができるカーボンナノチューブの製造方法および精製方法が研究されている。
【0003】
カーボンナノチューブの研究は、1991年にフラーレンの副生成物として多層ナノチューブ(以下、MWNTsという。)が飯島らによって発見されたことから始まった。MWNTsはグラファイト棒のアーク放電によるフラーレン合成の際の陰極堆積物に含まれ、多層のグラファイトシートが丸まった同心円筒状の構造を持ち、直径は数十nmの微細物である。その後、1993年に飯島らは鉄粉末を触媒としたアーク放電によって、直径が1nm前後の単層ナノチューブ(以下、SWNTsという。)を含む煤の合成に成功した。またそれと同時期に、コバルトを触媒としたアーク放電により、直径が1.2nmのSWNTsを合成した。SWNTsは一枚のグラファイトシートが円筒状に巻かれた構造で、直径は数nmである。MWNTsの合成には金属触媒を必要としないが、SWNTsの合成には金属触媒が必要不可欠である。また、金属触媒の種類により、異なる直径のSWNTsを選択的に合成することができる。現在さまざまな用途が検討されているが、実用化のためには高純度化精製が不可欠である。
【0004】
カーボンナノチューブは主にグラファイト棒を用いたアーク放電によって合成される。アーク放電は、不活性ガス中で炭素電極間に電圧を印加し放電させる方法である。アーク放電により電極間の温度は数千度に達し、気化した陽極が不活性ガスで冷却され、陰極および装置内壁に煤が堆積する。SWNTsを合成するためには、Fe/NiやCo/Niなどの金属触媒を陽極に添加する必要がある。金属触媒の種類によって合成されるSWNTsの性質や含有量が異なるが、Fe/Niを用いると高濃度のSWNTsを含む煤が得られる。その他にもSWNTsの合成法には、高出力のレーザーでグラファイトを気化させるレーザー蒸発法がある。この方法はSWNTsの純度の高い煤が得られるという利点を持つが、アーク放電法に比べて装置が複雑で、かつ煤の生産性が低いため、大量合成には不向きである。
【0005】
アーク放電によって合成された煤の中には、SWNTs以外にもアモルファスカーボン、グラファイト微粒子、金属微粒子、ナノ粒子などの不純物が多量に含まれている。これら不純物を取り除くためには精製が必要となるが、現在まで提案されている精製法には、燃焼処理法、水熱処理法、限外濾過法、沈降分離法などがある。
【0006】
燃焼処理法は、酸素雰囲気下で加熱すると炭素は酸化してCO2 等のガスとなることを利用して分離する方法である。アモルファスカーボンとSWNTsを比較すると、構造的にSWNTsよりアモルファスカーボンの方が酸化されやすい。したがって、この燃焼温度の差を利用してSWNTsが酸化されない温度で煤を大気中で加熱することにより、アモルファスカーボンを除去することができる。この燃焼処理は、約370℃で1時間程度が適当とされている。ただし、この方法では、SWNTsよりもグラファイトの方が酸化温度が高いため、グラファイトは除去されない。
【0007】
水熱処理法は、合成したSWNTs含有煤を蒸留水中で還流装置を用いて長時間加熱(100℃)する方法である。この水熱処理法により、煤中の非晶質カーボンナノチューブ粒子やカーボンナノ多面体粒子のネットワークを破壊することができる。
【0008】
限外濾過法は、分離対象物質の大きさを利用して分離する方法で、レーザー蒸発法で合成した煤に対し、ナノ粒子とSWNTsを分離することができる。
【0009】
また、ナノ粒子、SWNTs、グラファイトをその沈降速度の違いを利用して分離する方法もある。蒸留水中で超音波を照射して分散させると、グラファイトがもっとも速く沈降し、ナノ粒子が分散状態で上澄みに残る。これを利用して、この方法では、まず超音波分散後しばらく静置して上澄みを取り除くという処理を繰り返し行ってナノ粒子を除去し、次にすぐに沈降するグラファイトを取り除くため、超音波照射によりSWNTsを分散させてSWNTsの分散液を取り出すことを数回行う。
【0010】
さらに、金属粒子は酸処理により除去することができる。例えば、上記沈降処理にて分離した煤を約6モル/l濃度の濃塩酸中で超音波分散させた後静置して、金属粒子を取り除く。
【0011】
したがって、合成された煤からSWNTsを精製抽出する方法としては、燃焼処理によってアモルファスカーボンを除去し、続いてSWNTsと副生成物の上記ネットワークを破壊した後、ナノ粒子とグラファイトを除去するために超音波照射と沈降分離を繰り返し行い、最後に酸処理を行って金属粒子を除去することにより、高純度のSWNTsを得ることができる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の精製方法は、回収率に再現性がないため、工業的に大量に生産する際の精製方法としては望ましくない。回収率が低下する原因として考えられるのは燃焼処理である。SWNTsはMWNTsとは異なり、耐酸化性が低いため、均一な燃焼温度によって均一に酸化しなければ、アモルファスカーボンとともに目的のSWNTsが燃焼してしまう。この燃焼温度の不均一性が回収率の再現性低下の原因と考えられる。また、ナノチューブの端部は非常に不安定で、燃焼による酸化は不安定部分から進行するため、ナノチューブの酸化反応が端部から進行してしまい、ナノチューブの端部が開口して回収率の低下につながる。
【0013】
SWNTsの回収率を向上させる酸化処理として、過マンガン酸カリウムを徐々に滴下して5時間程度還流してアモルファスカーボンを除去する方法があるが、この酸化処理ではマンガンが混入するため、後工程にて濃塩酸にて除去する必要がある。
【0014】
近い将来、SWNTs、MWNTsがその特有な性質から多くの用途に大量に使用されることが予想される。そのためには大量生産に応用可能な製造、精製方法を確立する必要があるが、現在の製造、精製方法では高品質のカーボンナノチューブを安定に供給することができない。
【0015】
大量生産するためには、製造、精製工程を自動化することが必要である。従来の精製方法では、燃焼処理法を用いると回収率が低下してしまうし、過マンガン酸カリウムを用いると副生成物としてマンガンを回収する必要がある。限外濾過法でも少量ならば分離が可能であるが、大量に処理するような状況ではフィルターの早期の交換が必要となる。このように、従来の精製方法では、合成された煤からSWNTsを精製抽出する際に、経験による評価に頼るところが大きいため、大量生産に不向きである。
【0016】
本発明は、上記従来技術の問題点に対処してなされたもので、大量生産のための精製工程の自動化が容易で、回収率の高いカーボンナノチューブの精製方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、カーボンナノチューブを含有する煤状粉末を過酸化水素水溶液中で湿式酸化処理する工程を備えてなることを特徴とするカーボンナノチューブの精製方法である。
【0018】
また本発明によれば、カーボンナノチューブを含有する煤状粉末を過酸化水素水溶液中で湿式酸化処理する第1の工程と、該第1の工程で得られた沈降物から沈降速度の違いによってカーボンナノチューブを主成分とする区画を単離する第2の工程とを有し、
前記第1および第2の工程を連続的に行うことを特徴とするカーボンナノチューブの精製方法が提供される。
【0019】
本発明のカーボンナノチューブの精製方法は、カーボンナノチューブを含有する煤状粉末を、燃焼処理および水熱処理によって酸化処理する代わりに、過酸化水素水溶液中で湿式酸化処理することを特徴とするもので、これにより精製工程の自動化とカーボンナノチューブの回収率の向上が可能となる。
【0020】
本発明では、過酸化水素水の濃度を変化させることにより酸化反応速度を調節することができるとともに、燃焼酸化とは異なり、ほぼ均一な条件で酸化することができるため、回収率の低下しない、より穏やかな条件での反応制御が可能である。また、過マンガン酸カリウムのようなマンガン生成問題を生じることなく、アモルファスカーボン等の不純物を酸化除去することが可能となる。
【0021】
また、酸化処理とその後の沈降分離処理および酸処理を含む精製工程がすべて液相で行われるため、精製工程における各処理を連続して行うことが可能となり、精製工程の自動化を図ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明のカーボンナノチューブの精製方法の一実施の形態を示す精製工程図である。本実施の形態の精製工程は、カーボンナノチューブを高濃度で含有する煤状粉末を過酸化水素水溶液中で湿式酸化処理し、アモルファスカーボン微粒子を除去する湿式酸化工程(ステップ1)と、酸化処理後の煤状固形物について蒸留水中にて超音波分散と沈降分離を繰り返し行い、ナノ粒子とグラファイトを分離除去する沈降処理工程(ステップ2)と、沈降処理後の煤状固形物を例えば塩酸等の酸溶液にて洗浄し金属微粒子を除去する酸処理工程(ステップ3)とで構成される。
【0023】
カーボンナノチューブを高濃度で含有する煤状粉末は、例えばグラファイト棒を電極に用いたアーク放電法により合成される。この煤状粉末を、まずステップ1にて過酸化水素水溶液、好ましくは10〜25重量%の過酸化水素水溶液中で加熱還流の条件下で湿式酸化処理する。この処理で煤状粉末中のアモルファスカーボンが酸化されて除去される。
【0024】
次に、ステップ2にて、湿式酸化処理後の煤状固形物を蒸留水中に投入し、超音波にて分散させて静置後の上澄みを取り除く操作を繰り返し行って、沈降速度が遅いナノ粒子を除去する。続いて、超音波にて分散させてその分散液を回収する操作を繰り返し、カーボンナノチューブより速やかに沈降するグラファイトを除去する。
【0025】
最後に、ステップ3にて、沈降処理後の煤状固形物を濃塩酸中に投入し、超音波にて分散させた後静置する操作を繰り返して、金属微粒子を溶解除去し、沈降物を回収する。
【0026】
以上のステップ1〜3の工程により精製カーボンナノチューブを高回収率で再現性よく得ることができる。また、ステップ1〜3の工程はすべて液相で行われるため、連続して処理することができ、精製工程を自動化することができる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例についてさらに詳細に説明する。
カーボンナノチューブの作製
直径6mmの純度99.99%のグラファイト棒に直径3.2mmの穴をあけ、Fe、Ni、Cの各粉末を重量比で約1:1:3の割合で混合したものを、棒全体に対してFe/Niの濃度が約5原子%になるように充填した。この触媒含有グラファイト棒を陽極に、直径10mmのグラファイト棒を陰極に用いて、図2に示すアーク放電装置にてSWNTsを含む煤を以下の手順で合成した。
【0028】
図2において、まず、陽極1と陰極2を接触させた状態で取り付けた後、ロータリーポンプ3で排気し、真空計4にて所定圧力まで達したところで、直流電源5にて100Aの直流電流を流して、陽極1に詰めたFe/Ni粉末をグラファイトの通電抵抗加熱により焼結させた。次に、放電室6内にHeガス導入口7よりHeガスを100Torr(1.33×104Pa)まで満たし、直流電流70Aでアーク放電を行った。放電中は均一な電圧がかかるように電極間距離を約5mmに保持した。放電後、放電室6の内壁上部と天板に付着した、SWNTsが高濃度で含まれる煤を煤回収口8より回収した。
【0029】
カーボンナノチューブの精製
上記製造方法で生成した煤には、さまざまな不純物が含まれる。まず酸化処理によってアモルファスカーボン微粒子を除去する。この酸化処理を、以下の7通りで行った。比較例1は従来技術の燃焼処理例を、比較例2は従来技術の水熱処理例を、実施例1〜5は過酸化水素水による湿式酸化処理例を示すものである。
【0030】
比較例1
上記製造方法で生成した煤を370℃のオーブン中で60分間酸化処理し、アモルファスカーボンの除去を行った。
【0031】
比較例2
上記製造方法で生成した煤を約700mlの蒸留水中に入れ、還流装置にて還流しつつ加熱した。この処理は、ラマン散乱分光にて確認し、アモルファスカーボンに起因するピークがなくなるまで約6時間行った。
【0032】
実施例1
上記製造方法で生成した煤を10重量%濃度の過酸化水素水約700ml中に入れ、還流装置にて還流しつつ加熱した。この処理は、ラマン散乱分光にて確認し、アモルファスカーボンに起因するピークがなくなるまで行った。
【0033】
実施例2
上記製造方法で生成した煤を15重量%濃度の過酸化水素水約700ml中に入れ、還流装置にて還流しつつ加熱した。この処理は、ラマン散乱分光にて確認し、アモルファスカーボンに起因するピークがなくなるまで行った。
【0034】
実施例3
上記製造方法で生成した煤を20重量%濃度の過酸化水素水約700ml中に入れ、還流装置にて還流しつつ加熱した。この処理は、ラマン散乱分光にて確認し、アモルファスカーボンに起因するピークがなくなるまで行った。
【0035】
実施例4
上記製造方法で生成した煤を25重量%濃度の過酸化水素水約700ml中に入れ、還流装置にて還流しつつ加熱した。この処理は、ラマン散乱分光にて確認し、アモルファスカーボンに起因するピークがなくなるまで行った。
【0036】
実施例5
上記製造方法で生成した煤を30重量%濃度の過酸化水素水約700ml中に入れ、還流装置にて還流しつつ加熱した。この処理は、ラマン散乱分光にて確認し、アモルファスカーボンに起因するピークがなくなるまで行った。
【0037】
次に、上記比較例1、2、および実施例1〜5の酸化処理を行った各試料について、それぞれ蒸留水中に移し、ナノ粒子およびグラファイト粒子を除去するための沈降処理を行った。初めに、煤状試料を蒸留水中に超音波分散させ、静置した後、沈降速度が比較的遅いナノ粒子を多く含む上澄みを除去する操作を、上澄みの色が透明になるまで繰り返し行った。ついで、分散後速やかに沈降するグラファイトを除去するために、超音波分散後のSWNTsを多く含む分散液を回収する操作を繰り返し行い、SWNTsを濃縮した。
【0038】
最後に、上記沈降処理を行った各試料について、金属微粒子を除去するため、約6モル/lの濃度の塩酸溶液に入れて超音波で分散させ、約60℃のオーブン内で静置した。この操作を煤が沈降するたびに繰り返し行い、約2日間かけて行った。
【0039】
上記したように酸化処理工程を変えてSWNTsの精製を行った実験例を、比較例1、比較例2、実施例1〜5として、その精製前後および精製過程の状態評価を行った。さらに、湿式酸化処理後の沈降処理を図3に示す自動沈降分離装置にて行った実験例を実施例6として精製の状態評価を行った。
【0040】
図3において、第1槽11はグラファイトに代表されるようなSWNTsよりも重い不純物を除去するために設けられ、第2槽12はカーボンアモルファス微粒子やナノ微粒子などのSWNTsよりも軽い不純物を除去するために設置される。まず、第1槽11中に湿式酸化処理工程を終えた煤状試料を投入し、蒸留水導入口13より蒸留水を導入し、超音波発信器14により超音波振動させることにより、煤状試料を蒸留水中に分散させる。このとき、上澄みだけを第2槽12に注入することによって、SWNTsよりも重い不純物を除去することができる。次に、第2槽12に入った煤状試料を再び超音波発信器14により超音波振動させて分散させ、流出防止メッシュ15を通過した上澄みを排水口16より排出することによって、SWNTsよりも軽い不純物を除去することができる。なお、第2槽12では、アーク放電における電圧および金属触媒等の合成条件によってSWNTsの大きさが変化するので、SWNTsが排出されないよう流出防止メッシュ15の粗さおよび排水口16の高さを調節する必要がある。また、蒸留水の流量によっても排水口16の高さを調節する必要がある。この自動沈降分離装置を用いた実施例6の実験条件は以下の通りである。
【0041】
実施例6
実施例3と同様に20重量%濃度の過酸化水素水を用いて湿式酸化処理した後、煤状試料を、図3に示す自動沈降分離装置に入れ、沈降処理を行った。処理条件としては、洗浄用蒸留水の流量を0.3リットル/分とし、流出防止メッシュ15は400メッシュのものを用いた。第1槽11および第2槽12の容積は約500mlのものを使用した。その後、前述した方法で酸処理を行った。
【0042】
精製の評価
SWNTsを含む煤状試料の合成および精製状態の評価は、走査型電子顕微鏡(SEM、日立製作所製、冷陰極電界放射型走査型電子顕微鏡;S4100:加速電圧200kV)、透過型電子顕微鏡(TEM、日立製作所製、冷陰極電界照射型透過型電子顕微鏡;HF2000:加速電圧200kV)、およびラマン散乱測定を用いて行った。すなわち、SEM観察により試料中のSWNTsの全体的な濃縮状態を、TEM観察によりSWNTsの表面状態を評価した。また、試料中のSWNTsの濃度をラマン散乱スペクトルで評価した。
【0043】
ラマン散乱スペクトルにおいて、SWNTs特有のピークは1580cm-1および1600cm-1付近に現れる。1600cm-1付近のピークは六員環に起因する振動モードであり、グラファイトシートの振動モードと一致する。しかしながら、SWNTsは円筒構造をとるため、シートとは異なり、断面方向にも固有の振動モードを持つ。1580cm-1付近の振動モードがこれに相当する。これら2種類のピークが存在することによって、SWNTsの存在を確認することができる。また、不完全な構造をとるようなグラファイトやアモルファスグラファイトなどに起因する振動モードの吸収は1350cm-1付近に現れる。今回の測定では、これらに起因するような1350cm-1付近のピークと、SWNTsに起因するような1580cm-1および1600cm-1付近のピークとの相対強度の比較を行うことで精製の評価とした。評価結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
Figure 0004738611
【0045】
表1から明らかなように、燃焼反応による酸化処理よりも過酸化水素(H22 )水溶液を用いた湿式酸化処理法の方が回収率が高い。また、過酸化水素濃度を変えることによって、酸化処理の程度を調節することができ、回収率50%以上とするためには過酸化水素濃度を10〜25重量%の範囲とすることが好ましい。一方、過酸化水素を加えない場合、すなわち蒸留水の場合は、アモルファス不純物とSWNTsが分離しにくく、酸化処理時間を長く行う必要があるため、回収率が低い。以上のことから、過酸化水素水が湿式酸化処理に有効であることが分かる。また、実施例6の評価結果が示すように、長時間監視の必要な沈降処理を図3に示すような連続2槽分離方式の装置を用いることによって自動化することができ、SWNTsを高い回収率で精製することができる。
【0046】
【発明の効果】
上述したように、請求項1〜4の発明によれば、カーボンナノチューブを含有する煤状粉末を過酸化水素水溶液中で湿式酸化処理することにより、酸化条件を均一かつ容易に制御することができ、カーボンナノチューブの回収率を向上させることができる。
【0047】
また、請求項2の発明によれば、湿式酸化処理の工程と沈降分離処理の工程を連続して行うことによって、カーボンナノチューブの量産に必要な精製工程の自動化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカーボンナノチューブの精製方法の一実施の形態を示す精製工程図である。
【図2】カーボンナノチューブを生成するアーク放電装置の一例を示す模式図である。
【図3】自動沈降分離装置の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1……陽極、2……陰極、3……ロータリーポンプ、4……真空計、5……直流電源、6……放電室、7……Heガス導入口、8……煤回収口、11……第1槽、12……第2槽、13……蒸留水導入口、14……超音波発信器、15……流出防止メッシュ、16……排水

Claims (4)

  1. カーボンナノチューブを含有する煤状粉末を過酸化水素水溶液中で湿式酸化処理する第1の工程と、該第1の工程で得られた沈降物から沈降速度の違いによってカーボンナノチューブを主成分とする区画を単離する第2の工程とを有し、
    第1の工程を行った後、第2の工程を行い、
    第2の工程は、
    第1の工程にて得られた沈降物を第1槽に投入し、第1槽に蒸留水を導入し、沈降物を蒸留水中に分散させて、カーボンナノチューブを含む上澄みを第2槽に注入することで、カーボンナノチューブよりも重い不純物を第1槽において除去し、
    第2槽に注入されたカーボンナノチューブを含む上澄みを分散させ、カーボンナノチューブよりも軽い不純物を含む上澄みを第2槽の上部に設けられた排水口から排出することで、第2槽にカーボンナノチューブを残す、
    各工程から成るカーボンナノチューブの精製方法。
  2. 第2槽の上部に設けられた排水口の下方には、流出防止メッシュが配置されており、
    カーボンナノチューブが第2槽から排出されないように、流出防止メッシュの粗さおよび排水口の高さが調節されている請求項1に記載のカーボンナノチューブの精製方法。
  3. 前記過酸化水素水溶液中の過酸化水素濃度が10〜25重量%である請求項1または請求項2に記載のカーボンナノチューブの精製方法。
  4. 過酸化水素水溶液中での湿式酸化処理を還流条件下で行う請求項1または請求項2に記載のカーボンナノチューブの精製方法。
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