JP2003112911A - 多層カーボンナノチューブの精製方法 - Google Patents

多層カーボンナノチューブの精製方法

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JP2003112911A JP2001307126A JP2001307126A JP2003112911A JP 2003112911 A JP2003112911 A JP 2003112911A JP 2001307126 A JP2001307126 A JP 2001307126A JP 2001307126 A JP2001307126 A JP 2001307126A JP 2003112911 A JP2003112911 A JP 2003112911A
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powder
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Kazuyuki Taji
和幸 田路
Hiroyuki Ito
啓之 伊藤
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Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 多層カーボンナノチューブの回収率が高く、
かつ純度の高い精製方法を提供する。 【解決手段】 多層カーボンナノチューブを含有する煤
状粉末を機械的剪断力により湿式粉砕を行う工程と、該
粉砕物を還流条件下で熱水処理する工程とを備えた精製
工程で構成するか、さらに該熱水処理工程で得られた分
散液を遠心分離する工程を備えた精製工程で構成する。
こうすることで煤状粉末の絡み合いが解きほぐされ多層
カーボンナノチューブとグラファイト片の分離が十分に
行われる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、幾何学的、物理化
学的特徴を利用して電子材料やナノテクノロジーへの応
用などさまざまな分野への応用が考えられる多層カーボ
ンナノチューブの精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】カーボンナノチューブは、例えば電界放
出型電子源、フラットパネル(電界放出型)ディスプレ
イ、走査型プローブ顕微鏡の探針、ナノオーダー半導体
集積回路、水素ガス吸蔵物質、ナノボンベとして近年用
途が期待されている。このような急速な需要の拡大から
大量に安定して生産することができるカーボンナノチュ
ーブの製造方法および精製方法が研究されている。
【0003】ダイヤモンド、グラファイトおよびフラー
レンなどの同素体であるカーボンナノチューブの研究
は、1991年にフラーレンの副生成物として多層カー
ボンナノチューブが飯島らによって発見されたことから
始まった。多層カーボンナノチューブはグラファイト棒
のアーク放電によるフラーレン合成の際の陰極堆積物に
含まれ、多層のグラファイトシート(グラフェンシー
ト)が丸まった同心円筒状の構造を持ち、直径は約0.
5〜10nm程度の微細物である。その後、1993年
に飯島らは鉄粉末を触媒としたアーク放電により、直径
が1nm前後の単層カーボンナノチューブを含む煤の合
成に成功した。また、それと同時期にコバルトを触媒と
したアーク放電により直径が1.2nmの単層カーボン
ナノチューブを発見した。単層カーボンナノチューブは
一枚のグラファイトシート(グラフェンシート)が円筒
状に巻かれた構造で、直径は数nmである。多層カーボ
ンナノチューブの合成には金属触媒を必要としないが、
単層カーボンナノチューブの合成には金属触媒が必要不
可欠である。また、金属触媒の種類により、異なる直径
や長さの単層カーボンナノチューブを選択的に合成する
ことができる。
【0004】上記のようにカーボンナノチューブには多
層構造(多層カーボンナノチューブ)のものと単層構造
(単層カーボンナノチューブ)のものがあり、現在さま
ざまな用途が検討され研究、開発が進んでいる。今後期
待されている有望な応用分野としては以下に示すような
用途例が挙げられるが、いずれも実用化のためにはカー
ボンナノチューブの大量合成と合成により得られる生成
物(例えばアーク放電法では陰極堆積物の煤状粉末)の
高純度化精製が不可欠であるカーボンナノチューブの応
用分野の代表的な用途を以下に例示する。
【0005】電界放出型ディスプレイ 先端が細長いカーボンナノチューブは、電圧を印加する
とその先端に強い電場を生じるため、比較的低い電圧で
電子を放出することができる。この電界放出特性により
予熱をしなくても電子放出が可能である。しかもカーボ
ンナノチューブは高融点であるため、電子放出によって
先端が加熱され高温になったとしても融解する心配がな
い。このような性能を利用すればカーボンナノチューブ
製電極を配列した極薄型のディスプレイが可能となる。
このようなディスプレイができれば、従来のCRT(C
athode Ray Tube:陰極放電管)のよう
に、ヒータで加熱し高電圧を印加して電子を放射し、電
子銃を走査させながら蛍光体を発光させる方式に比べて
薄型化はもとより著しく省電力化が可能となる。
【0006】ナノオーダー半導体集積回路 カーボンナノチューブは、立体構造(原子間結合の幾何
学的螺旋構造)の違いにより、金属的な物理特性と半導
体的な物理特性を示す。このような金属的性質と半導体
的性質およびカーボンナノチューブの寸法が直径約0.
5〜10nm程度、長さが1μm程度の微細物であるこ
とを利用して半導体集積回路への応用研究が進められて
いる。とくに、エネルギーギャップの大きさがカーボン
ナノチューブの半径に反比例し、ギャップが1eV以下
の領域では連続的に変化する現象は現在、主に利用され
ている半導体材料にはない特性である。また、カーボン
ナノチューブは融点が高く、炭素原子から構成されてい
るので他の原子との反応性に乏しいため、半導体として
の動作安定性向上に寄与することが期待される。
【0007】Liイオン2次電池 単層カーボンナノチューブの場合、通常複数のカーボン
ナノチューブが束状になって存在していることが多い。
この束状になったカーボンナノチューブの一本一本の間
隙にLiなどのアルカリ金属が入り込むことができると
いうことが分かっている。また、多層カーボンナノチュ
ーブの場合にもカーボンナノチューブの層間にLiなど
のアルカリ金属が入り込むことができる。このような性
質を利用し、例えばLiイオン2次電池の電極材料に応
用すると、従来用いられている結晶性の低いグラファイ
ト負極材料に比べて、より高密度容量の2次電池を作る
ことが可能となる。
【0008】走査型プローブ顕微鏡用探針 走査トンネル顕微鏡(STM:Scanning Tu
nneling Microscope)はナノメート
ルスケールの物体を探査したり、走査する道具として用
いられている。STMを駆使することによって個々の原
子や分子を視覚化することができ、またそれらを表面で
操ることができるが、探針の制御や信号検出の精度は1
−11mオーダと極めて高いので探針の先端が非常に重
要な要素となる。理想的な探針としては、先端が1原子
レベルであり、化学的には不活性であること、導電性で
あることが必要である。カーボンナノチューブの先端は
炭素1原子に限りなく近い構造を持っており、化学的に
も安定で導電性もあるため、走査型プローブ顕微鏡の探
針としての条件を満たしている。また、カーボンナノチ
ューブを使用することによって万が一探針が測定対象試
料に接触してしまっても、しなやかに湾曲して破損する
ことはないので、従来のように先端が鈍化してしまって
使用できなくなるという心配がない。
【0009】ナノアクチュエータ カーボンナノチューブが微細な繊維状であり、電気伝導
性が高いこと、機械的に著しく強度が高いことなどを利
用してナノサイズのアクチュエータとしての用途が提案
されている。カーボンナノチューブに電圧を印加すると
カーボンナノチューブ内の炭素原子間結合が伸縮する。
この伸縮による変形は、電気を歪み(動き)に変換する
代表的なピエゾ素子よりも大きい。また、カーボンナノ
チューブの持つ高剛性な性質からピエゾ素子よりも移動
にかかる時間は短く、力も強い。カーボンナノチューブ
が有する前記原理による効果は液体中でも同様であり、
医療分野での微細な部分で利用できるナノマシンの動力
源として応用が期待される。また、カーボンナノチュー
ブの有する耐熱性を利用すれば、従来の素子では作業不
可能な高温箇所での利用が可能となる。
【0010】カーボンファイバーに代わる超高強度繊維 従来工業用として用いられているカーボンファイバーに
比べてカーボンナノチューブは弾性率(ヤング率)が大
きく機械的強度が強いため大量生産できれば、例えば複
合材料用の補強用超高強度繊維材料として使用でき、従
来の強度を大きくしのぐ可能性がある。
【0011】水素貯蔵 燃料電池は、水素と酸素の反応により電気エネルギーを
取り出して利用し、生成した水を大気中に排出するた
め、クリーンエネルギーとして近年活発な研究が進めら
れている。原料となる水素を貯蔵する物質としては活性
炭素繊維、水素化金属などが知られているが、これら水
素吸蔵物質の単位体積および質量あたりの取り出せる
(貯蔵できる)エネルギー量はまだ十分とはいえない。
カーボンナノチューブは軽く、かつ中空であるため、単
位体積および質量あたり多量のガスを貯蔵することが可
能である。単層カーボンナノチューブの先端を開口させ
ることによって単層カーボンナノチューブ内部に水素を
貯蔵することが可能となり、より安定な状態で水素を貯
蔵することができる。単層カーボンナノチューブを水素
貯蔵に用いた場合、活性炭素繊維のおよそ10倍の水素
貯蔵量が見込まれており、自動車用燃料電池の実用化に
必要とされる貯蔵能力を満たすことが可能なレベルとな
る。
【0012】カーボンナノチューブの合成方法として
は、高出力のレーザーでグラファイトを気化させるレー
ザー蒸発法、化学気相法(CVD)あるいはグラファイ
ト棒を用いたアーク放電法などが知られている。レーザ
ー蒸発法では不純物の少ないカーボンナノチューブが得
られるという利点はあるが生成速度が遅く生産性が低い
こと、アーク放電法に比べて装置が複雑で工業用として
向いていないという難点がある。また、化学気相法(C
VD)ではカーボンナノチューブの長さが長く、長さの
揃ったものが得られるという利点はあるが、分子構造に
欠陥が多く、そのため電導性が低下するなどの問題があ
るほか、成長速度が遅く生産性が低いという難点があ
る。このため、レーザー蒸発法および化学気相法(CV
D)はいずれもカーボンナノチューブの大量合成には不
向きである。一方、グラファイト棒を用いたアーク放電
法は、カーボンナノチューブの長さを揃えるのは難しい
がカーボンナノチューブの分子構造に欠陥がほとんどな
く、生成速度が速いため大量生産に向いた方法である。
【0013】前記理由から、カーボンナノチューブは主
にグラファイト棒を用いたアーク放電法によって合成さ
れる。アーク放電は、不活性ガス中で炭素電極間に電圧
を印加し放電させる方法である。アーク放電により電極
間の温度は数千度に達し、気化した陽極が不活性ガスで
冷却され、陰極および装置内壁に煤状粉末が堆積する。
【0014】アーク放電法によってカーボンナノチュー
ブを合成する場合、カーボンナノチューブは陰極堆積物
の煤状粉末中に存在する。アーク放電法では、通常多層
構造のカーボンナノチューブ(多層カーボンナノチュー
ブ)が生成する。単層構造のカーボンナノチューブ(単
層カーボンナノチューブ)を合成するためには、Fe/
NiやCo/Niなどの金属触媒を陽極に添加する必要
がある。アーク放電により生成した煤状粉末中には、カ
ーボンナノチューブ等の炭素クラスター以外にもさまざ
まな炭素化合物、例えば非晶質カーボン(アモルファス
カーボン)、グラファイト片、カーボンナノ粒子(ナノ
粒子)、金属微粒子(金属触媒を用いた場合)などが副
生成物として同時に合成され含まれている。
【0015】上記のようにグラファイト棒のアーク放電
によって生成した陰極堆積物中の煤状粉末である炭素化
合物の混合物からカーボンナノチューブ、例えば多層カ
ーボンナノチューブを精製するため、酸化燃焼法、粉体
精製法、遠心分離法などが試みられている。しかし、酸
化燃焼法では、目的物以外の炭素化合物の燃焼と共に多
層カーボンナノチューブが燃焼したり、燃焼によって多
層カーボンナノチューブ構造がやせて細くなるなどの問
題がある。一方、粉体精製法、遠心分離法など他の精製
法では精製物の純度が低いなど、現在まで効率的に多層
カーボンナノチューブを精製する方法は見出されていな
い。このため、現在応用研究の目的に利用されている高
純度多層カーボンナノチューブは、ほとんど酸化燃焼法
により精製されたものが使用されている。
【0016】酸化燃焼法は、炭素化合物が酸素雰囲気下
で加熱されると酸化してCO2などのガスとなる燃焼温
度の差を利用して分離する方法である。アモルファスカ
ーボンとカーボンナノチューブを比較すると、構造的に
カーボンナノチューブよりアモルファスカーボンの方が
構造が不完全なため不安定で酸化されやすい。したがっ
て、この燃焼温度の差を利用してカーボンナノチューブ
が酸化されない温度で陰極堆積物(煤状粉体)を大気中
で加熱することによりアモルファスカーボンを除去する
ことができる。
【0017】しかし、アーク放電によって生成した陰極
堆積物を上記酸化燃焼法で精製した場合、多層カーボン
ナノチューブの収率(精製された多層カーボンナノチュ
ーブ/陰極堆積物)は、例えば0.1重量%程度と低
い。この理由は、陰極堆積物中の多層カーボンナノチュ
ーブの含有濃度が例えば約5重量%程度と低いことと、
煤状粉末中に酸化燃焼速度の遅いグラファイト片が混在
し、このグラファイト片が燃焼する間に多層カーボンナ
ノチューブも同時に酸化燃焼してしまうためであると考
えられる。
【0018】このようにアーク放電によって得られる陰
極堆積物の煤状粉末には多層カーボンナノチューブのほ
か、アモルファスカーボン、グラファイト片あるいはナ
ノ粒子などの炭素化合物が網目状態(ネットワーク状)
で複雑に絡み合って凝集している。このため、従来の精
製方法のようにフルイ処理による分離操作を施しても目
的物である多層カーボンナノチューブと他の炭素化合物
を分離するのが難しい。例えばフルイによってグラファ
イト片を除去しようとすると多層カーボンナノチューブ
も一緒に絡まった状態で除去され収率が低下するほか、
フルイにより分離された回収物中にもグラファイト片が
残存するという問題がある。
【0019】回収物中のアモルファスカーボンおよびナ
ノ粒子は多層カーボンナノチューブと比較して燃焼温度
が低いため、酸化燃焼法による除去が可能であるが、グ
ラファイト片の場合には、燃焼温度が高いため、酸化燃
焼処理法ではグラファイト片が燃焼する間に、目的物で
ある多層カーボンナノチューブも部分的に燃焼してしま
い、やせ細ってしまったり、場合によっては完全に燃焼
してしまったりするという問題がある。このため、多層
カーボンナノチューブを効率的に精製するためには、燃
焼速度の遅いグラファイト片を酸化燃焼工程前に除去す
ることが重要である。
【0020】従来、多層カーボンナノチューブとグラフ
ァイト片など他の炭素化合物が絡み合って凝集している
煤状粉末を解きほぐす方法として、蒸留水中で還流装置
を用いて長時間加熱(100℃)する熱水処理法が用い
られている。しかし、この方法のみでは凝集物の破壊が
不十分であり、煤状粉末の絡み合いを期待通りに解きほ
ぐすことはできずグラファイト片の分離が十分にできな
かった。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】上記のように従来の精
製方法では、煤状粉末中にグラファイト片がネットワー
ク状態に絡み合って残存するため、酸化燃焼過程で多層
カーボンナノチューブが燃焼してやせ細ったり、完全に
燃焼してしまうなどの問題が生じている。グラファイト
片を除去し易くするため、熱水処理法が用いられている
がこの方法のみではネットワーク状態に絡んだ煤状粉体
を十分に解きほぐすことができずグラファイト片の除去
は不十分であった。このため、多層カーボンナノチュー
ブも燃焼工程で同時に酸化燃焼し収率が低下していた。
【0022】このように、現在の製造、精製方法では多
層カーボンナノチューブを高品質で安定に供給すること
ができないため、大量生産に応用可能な多層カーボンナ
ノチューブの精製方法を確立する必要がある。
【0023】本発明は、上記従来技術の問題点に対処し
てなされたものであり、大量生産のための精製工程にお
いて酸化燃焼工程の前に、ネットワーク状に絡み合って
凝集している煤状粉末を解きほぐすことにより多層カー
ボンナノチューブと他の炭素化合物との分離、分散を良
くし、グラファイト片を十分に除去して多層カーボンナ
ノチューブを高収率で精製する方法を提供することを目
的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】すなわち、請求項1の発
明は多層カーボンナノチューブを含有する煤状粉末を機
械的剪断力により湿式粉砕を行う工程と、該粉砕物を還
流条件下で熱水処理する工程とを備えてなることを特徴
とする多層カーボンナノチューブの精製方法である。
【0025】本発明において、湿式粉砕を行う工程で
は、煤状粉末中の炭素起因生成物を粗分散させ、絡み合
ったネットワークを粗くほぐすことができる。次の熱水
処理する工程では、粗くほぐした多層カーボンナノチュ
ーブを含有する煤状粉末を蒸留水中で還流装置を用いて
長時間加熱処理(100℃)する。この熱水処理によ
り、ネットワークは一層解きほぐされ、後工程における
酸化燃焼処理の際の多層カーボンナノチューブの精製収
率が高められる。
【0026】また、請求項2の発明は多層カーボンナノ
チューブを含有する煤状粉末を機械的剪断力により湿式
粉砕を行う工程と、該粉砕物を還流条件下で熱水処理す
る工程と、該熱水処理で得られた分散液を遠心分離する
工程とを備えてなることを特徴とする多層カーボンナノ
チューブの精製方法である。
【0027】請求項2の発明によれば、熱水処理工程の
後、酸化燃焼処理する前に分散液を遠心分離することに
より、多層カーボンナノチューブと他の炭素起因生成物
が分離され、これにより小さいグラファイト片も除去さ
れるため、後工程における酸化燃焼処理の際の多層カー
ボンナノチューブの精製収率が一層高められる。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実
施の形態を説明する。図1は、本発明の多層カーボンナ
ノチューブの精製方法に係る一実施形態を示す精製工程
図である。本実施の形態の精製工程は、多層カーボンナ
ノチューブを含有する煤状粉末である凝集物を湿式粉砕
する工程、該粉砕物をフルイにかける工程、フルイ処理
により回収された粉砕物(粗分散物)を還流条件下で熱
水処理する工程、熱水処理した分散液に超音波をかける
工程および超音波により均質に分散した分散物を最後に
酸化燃焼する工程から構成されている。
【0029】湿式粉砕工程では、湿式粉砕により凝集物
が粉砕され凝集物のネットワークが粗く解きほぐされ粗
分散される。フルイ工程では、粗分散された大きな凝集
物が除去され、この工程で大きなグラファイト片も除去
される。次の熱水処理工程では、粗く粉砕された粗分散
物がさらに細かくほぐされる。熱水処理工程において
は、熱水処理後の分散液に分散剤を添加することで分散
物の再凝集が防止される。次いで超音波工程では、分散
剤を添加した分散液に超音波をかけることで分散物が一
層均質に分散する。最後の酸化燃焼工程では、前工程に
より予めグラファイト片を除去した回収物を酸素雰囲気
中で燃焼し、アモルファスカーボンやナノ粒子および残
存する小さなグラファイト片を除去する。
【0030】図2は、本発明の多層カーボンナノチュー
ブの精製方法に係る別の一実施形態を示す精製工程図で
ある。本実施の形態の精製工程は、多層カーボンナノチ
ューブを含有する煤状粉末である凝集物を湿式粉砕する
工程、該粉砕物をフルイにかける工程、フルイ処理によ
り回収された粉砕物(粗分散物)を還流条件下で熱水処
理する工程、熱水処理した分散液に超音波をかける工
程、超音波により均質に分散した分散物を遠心分離する
工程および最後に遠心分離回収物を酸化燃焼する工程か
ら構成されている。
【0031】湿式粉砕工程では、湿式粉砕により凝集物
が粉砕され凝集物のネットワークが粗く解きほぐされ粗
分散される。フルイ工程では、粗分散された大きな凝集
物が除去され、この工程で大きなグラファイト片も除去
される。次の熱水処理工程では、粗く粉砕された粗分散
物がさらに細かくほぐされる。熱水処理工程において
は、熱水処理後の分散液に分散剤を添加することで分散
物の再凝集が防止される。次いで超音波工程では、分散
剤を添加した分散液に超音波をかけることで分散物が一
層ほぐされる。遠心分離工程では、炭素起因生成物を分
離して小さなグラファイト片などを除去する。最後の酸
化燃焼工程では、前工程により分散、分離し予めグラフ
ァイト片を除去した回収物を酸素雰囲気中で燃焼し、ア
モルファスカーボンやナノ粒子を除去する。
【0032】
【実施例】以下、本発明を実施例および比較例によりさ
らに説明するが、本発明は下記例に何ら限定されるもの
ではない。多層カーボンナノチューブの作製 図3に示す多層カーボンナノチューブを製造するアーク
放電装置10にて、直径10mmで純度99.95%の
グラファイト棒を陽極黒鉛材5に、直径40mmで純度
99.95%のグラファイト棒を陰極黒鉛材4に用い
て、多層カーボンナノチューブを含む煤状粉末を陰極黒
鉛材4上に以下の手順で合成した。
【0033】図3において、まず陽極黒鉛材5を陽極9
に、陰極黒鉛材4を陰極8に、両電極材が接触した状態
で取りつけた後、ロータリーポンプ1で放電室3内部を
排気し、HeガスをHeガス導入口6から真空計2にて
確認しながら350Torr(4.66×104Pa)
まで満たした後、直流電源11により直流電流100
A、電圧17.5Vの条件でアーク放電させた。アーク
放電により陽極黒鉛材5のグラファイトが蒸発し、減少
するため、放電中は均一な電圧がかかるように陽極を送
りこみながら電極間距離を約1mmに保持し、陰極黒鉛
材4に堆積する煤状粉末の成長速度が低下するまで放電
を継続した。合成終了後、陰極黒鉛材4の堆積物を半分
にカットし、内部にある多層カーボンナノチューブを含
んだ柔らかい綿状の堆積物(煤状粉末)を回収した。
【0034】多層カーボンナノチューブの精製 上記製造方法で生成した煤状粉末中には多層カーボンナ
ノチューブとアモルファスカーボン、カーボンナノ粒子
およびグラファイト片など多くの副生成物とが共存して
いる。したがって、高濃度の多層カーボンナノチューブ
を得るためには精製工程でそれらの副生成物を除去する
必要がある。この副生成物を除去するため、以下の実施
例の方法で精製を行った。実施例1および実施例2は本
発明の精製処理工程例を、比較例1は従来技術の酸化燃
焼処理工程例を示すものである。
【0035】実施例1 上記製造方法で生成した煤状粉末を採取し、図1に示す
精製工程により処理して多層カーボンナノチューブを精
製した。すなわち、煤状粉末を数mlの蒸留水と一緒に
瑪瑙乳鉢で破砕して湿式粉砕処理を施した後、フルイで
ろ過し、数十μm以上の大きなグラファイト片を除去し
た。回収したろ液を三角フラスコに入れ、還流装置を用
いて熱水処理を100℃で6時間行った。熱水処理後、
多層カーボンナノチューブの再凝集を防ぐため、煤状粉
末に対して約10%の界面活性剤(ポリオキシエチレン
オクチルフェニルエーテル)を加え、1時間超音波処理
を行い均質な分散液を得た。この溶液を0.1μmのメ
ンブランフィルターでろ過し、フィルター上に残った残
さに含まれる界面活性剤を除去するために数回蒸留水で
洗浄した。その後、残さをエタノールの入った白金るつ
ぼに入れ、分散させ、大気中で60℃にてエタノールを
蒸発させた後、界面活性剤を完全に除去するため、40
0℃で60分間燃焼した。最後に700℃で15分間焼
成して、アモルファスカーボン、カーボンナノ粒子およ
び小さなグラファイト片を酸化燃焼除去し多層カーボン
ナノチューブを回収した。
【0036】実施例2 上記製造方法で生成した煤状粉末を採取し、図2に示す
精製工程により処理して多層カーボンナノチューブを精
製した。すなわち、煤状粉末を数mlの蒸留水と一緒に
瑪瑙乳鉢で破砕して湿式粉砕処理を施した後、フルイで
ろ過し、数十μm以上の大きなグラファイト片を除去し
た。回収したろ液を三角フラスコに入れ、還流装置を用
いて熱水処理を100℃で12時間行った。熱水処理
後、分散液に分散した多層カーボンナノチューブの再凝
集を防ぐため、煤状粉末に対して約10%の界面活性剤
(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)を加
え、1時間超音波処理を行い均質な分散液を得た。この
分散液を10000Gの条件で15分間遠心分離し、数
μmのグラファイト片を沈降させた。この溶液を0.1
μmのメンブランフィルターでろ過し、フィルター上に
残った残さに含まれる界面活性剤を除去するために数回
蒸留水で洗浄した。その後、残さをエタノールの入った
白金るつぼに入れ、分散させ、大気中で60℃にてエタ
ノールを蒸発させた後、界面活性剤を完全に除去するた
め、400℃で60分間燃焼した。最後に700℃で1
5分間焼成して、アモルファスカーボンやカーボンナノ
粒子を酸化燃焼除去し多層カーボンナノチューブを回収
した。
【0037】比較例1 上記製造方法で生成した煤状粉末を採取し、図4に示す
精製工程により処理して多層カーボンナノチューブを精
製した。すなわち、煤状粉末を数mlの蒸留水に加え、
フルイでろ過し、数十μm以上の大きなグラファイト片
を除去した後、実施例1、2と同様に界面活性剤を加え
た混合物を超音波で分散させた後、乾燥させて大気雰囲
気中にて酸化燃焼処理を行い、アモルファスカーボン、
カーボンナノ粒子および大、小グラファイト片を酸化燃
焼除去し多層カーボンナノチューブを回収した。
【0038】精製の評価 実施例1〜2および比較例1に示した各工程ごとの状態
評価を以下の走査型電子顕微鏡測定、透過型電子顕微鏡
測定、ラマン散乱分光測定により行い、精製工程の効果
を確認した。多層カーボンナノチューブを含む煤状粉末
試料の合成および精製状態の評価は、走査型電子顕微鏡
(SEM、日立製作所製、Hitachi S−410
0Scanning Electron Micros
cope:加速電圧5kV)、透過型電子顕微鏡(TE
M、日立製作所製、Hitachi HF−2000
FIELD EMISSION Transmissi
on Electron Microscope:加速
電圧200kV)、およびラマン散乱分光分析計(Di
lor−Jobin Yvon−Spex社製、T64
000)/(Arイオンレーザ、レオニクス社製;励起
波長514.5nm、後方散乱法)を用いて行った。
【0039】各試料の測定条件は下記により行った。 SEM測定:試料を蒸留水中で5分間超音波処理し、そ
の分散液をSEM観察用の試料ステージに滴下し、乾燥
させて測定した。 TEM測定:試料をメタノールで超音波分散させ、その
分散液をCu製のマイクログリッド上に滴下し、乾燥さ
せて測定した。 ラマン散乱分光測定:乾燥試料をサンプルホルダーに取
りつけて測定した。表1に各段階での粉末量(mg)
と、ラマンピーク比:(カーボンナノチューブのピーク
/全体のピーク)×100を示す。
【0040】
【表1】
【0041】表1から明らかなように、生成した煤状粉
末を湿式粉砕や熱水処理を施さず、単にフルイにかけ超
音波により分散して酸化燃焼する比較例1の場合には、
酸化燃焼前および酸化燃焼後の収量がいずれも本発明の
実施例1、実施例2と比較して低い値を示している。比
較例1の場合には、煤状粉末のネットワークが解きほぐ
されずに多層カーボンナノチューブとグラファイト片な
どが絡んで凝集しており、このような状態でフルイにか
けるとグラファイト片と一緒に多層カーボンナノチュー
ブまで除去されてしまい多層カーボンナノチューブの収
量が低下することが分かる。また、超音波による分散工
程後に回収される燃焼前の煤状粉末中にはグラファイト
が残存するため、グラファイトを酸化燃焼させるため十
分に過熱する必要があり、これによって同時に多層カー
ボンナノチューブの酸化燃焼が進行し、燃焼後の収率を
さらに低くする原因となっている。多層カーボンナノチ
ューブの酸化燃焼を抑えるため加熱時間を短縮するとグ
ラファイト片が残ってしまい純度が低くなるという問題
が生じる。
【0042】これに対して本発明の実施例1および実施
例2では、煤状粉末を水と一緒に湿式粉砕し、それぞれ
の炭素化合物を機械的剪断力により分散した後、フルイ
によって大きなグラファイト片を除去する。この場合、
多層カーボンナノチューブは比較例1と比較して凝集物
がほぐされた状態になっているのでフルイによって除去
されにくい。次に、熱水処理によって分散するため、煤
状粉末のネットワークがさらに解きほぐされ、酸化燃焼
前の多層カーボンナノチューブの収率が向上し、酸化燃
焼後の多層カーボンナノチューブの収率も向上する。実
施例2の場合には、熱水処理と超音波による分散工程の
後に遠心分離工程を導入することにより、一部残存して
いる小さなグラファイトを除去することができるため、
さらに酸化燃焼前および酸化燃焼後の収率を向上するこ
とができる。
【0043】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の湿式粉砕
工程、熱水処理工程を備えた多層カーボンナノチューブ
精製法によって、高収率で多量の多層カーボンナノチュ
ーブが得られ、実用化研究、さらには工業的用途にまで
利用できるようになる。さらには湿式粉砕工程、熱水処
理工程、遠心分離工程を組み合わせて行うことによって
より効率的に、より高い収率で精製処理を行うことがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層カーボンナノチューブの精製方法
に係る一実施形態を示す工程図である。
【図2】本発明の多層カーボンナノチューブの精製方法
に係る別の一実施形態を示す工程図である。
【図3】多層カーボンナノチューブを製造するアーク放
電装置の一例を示す模式図である。
【図4】比較例の多層カーボンナノチューブの精製方法
を示す工程図である。
【符号の説明】
1……ロータリーポンプ、2……真空計、3……放電
室、4……陰極黒鉛材、5……陽極黒鉛材、6……He
ガス導入口、7……煤回収口、8……陰極、9……陽
極、10……アーク放電装置、11……直流電源。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊藤 啓之 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 Fターム(参考) 4G046 CA00 CB02 CC10

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多層カーボンナノチューブを含有する煤
    状粉末を機械的剪断力により湿式粉砕を行う工程と、該
    粉砕物を還流条件下で熱水処理する工程とを備えてなる
    ことを特徴とする多層カーボンナノチューブの精製方
    法。
  2. 【請求項2】 多層カーボンナノチューブを含有する煤
    状粉末を機械的剪断力により湿式粉砕を行う工程と、該
    粉砕物を還流条件下で熱水処理する工程と、該熱水処理
    工程で得られた分散液を遠心分離する工程とを備えてな
    ることを特徴とする多層カーボンナノチューブの精製方
    法。
  3. 【請求項3】 前記熱水処理工程で、熱水処理後に分散
    剤を加え、次いで後工程を行うことを特徴とする請求項
    1〜2のいずれかに記載の多層カーボンナノチューブの
    精製方法。
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JP2006315893A (ja) * 2005-05-11 2006-11-24 Sumitomo Precision Prod Co Ltd カーボンナノチューブ分散複合材料の製造方法

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