本発明は、シャッタ羽根や絞り羽根などをモータで駆動するようにしたカメラ用羽根駆動装置に関する。
最近のカメラ用シャッタ装置の中には、2枚のシャッタ羽根を相反する方向へ同時に往復回転させたり直線的に往復作動させたりして、円形の露光開口を開閉するようにしたものが知られているが、このような構成のシャッタ装置は、銀塩フィルムカメラにもデジタルカメラ(デジタルスチルカメラ,デジタルビデオカメラ,各種情報端末装置用カメラなどの固体撮像素子を用いたカメラ)にも採用されている。そして、この種のシャッタ装置は、シャッタ羽根が、主地板と補助地板との間に構成された羽根室に配置されていて、円形の露光開口を、その略中央部から開き且つその略中央部に向けて閉じるようにしているため、シャッタ羽根を所定の途中位置で停止状態にし、撮影終了に際して閉じ作動を行わせることにより、絞り羽根の役目をも行えるようにしたものがある。更に、最近では、特に、携帯電話などの小型の情報端末装置に組み込むものとして、1枚のシャッタ羽根を往復回転させて露光開口を開閉するようにしたものも注目されている。
また、最近のカメラ用絞り装置の中には、2枚の絞り羽根を、主地板と補助地板との間に構成した羽根室に配置し、相反する方向へ同時に直線的に作動させて、所定の絞り開口規制位置で停止させるようにしたものも知られているが、小型化された普及カメラの場合には、円形の小さい絞り開口部を形成した1枚の絞り羽根を、露光開口に進入させることによって小口径による撮影を行い、退避状態にさせておくことによって大口径による撮影を行うようにしたものが多くなっている。そして、それらの構成の絞り装置は、上記のような種類のシャッタ装置と同様に、銀塩フィルムカメラにもデジタルカメラにも採用されている。
また、絞り装置と同様に撮影光量を減じるものとして、NDフィルタ装置が知られているが、最近のNDフィルタ装置としては、上記の絞り羽根のような円形の開口部(この場合の開口部は、上記の撮影光路用の開口部と略同等の大きさにする場合がある)を形成した羽根部材に、その開口部を覆うようにしてNDフィルタ板を取り付けたものをフィルタ羽根とし、上記の絞り羽根と同様にして作動させるようにしたものが一般的である。しかしながら、そのほかにも、NDフィルタ板を羽根の形状にしただけのものをフィルタ羽根としたり、そのような羽根形状のNDフィルタ板を円形の開口部を有する2枚の羽根部材でサンドウィッチし、3枚重ね構成のフィルタ羽根としたりしたものも知られている。そして、それらのような構成のフィルタ装置は、上記のシャッタ装置や絞り装置と同様に、銀塩フィルムカメラにもデジタルカメラにも採用することが可能となっている。
また、上記の各装置においては、駆動源としてモータや電磁プランジャを用いるのが普通であるが、最近では、低コストで小型化し易いことから、ムービングマグネット型モータなどと称されている電流制御式のモータが多く採用されている。このモータは、通常、主地板の羽根室外の面に取り付けられており、その構成としては種々のものが知られている(特許文献1,2,3参照)。しかしながら、基本的には、2極又は4極に着磁された円筒形又は円柱形の永久磁石部を有する回転子が、その径方向位置に一つ又は二つの出力ピン(駆動ピンともいう)を有していて(出力ピンが二つのものは特許文献4参照)、その出力ピンを羽根室内で1枚又は2枚の羽根に連結させ、固定子コイルに対する通電方向に対応した方向へ所定の回転角度範囲で回転するように構成されている。
そして、上記の出力ピンは、磁性体の粒子を混入した合成樹脂材料により、上記の円柱形をした永久磁石部と同時成形によって形成されるものが知られている(特許文献2参照)が、これまで実際に製品化されたものとしては、円筒形の永久磁石部を予め成形しておき、それに対して合成樹脂材料による所謂アウトサート加工によって、回転軸と共に成形するようにしたもの(特許文献3参照)が多い。また、それらのほかには、予め出力ピンも別部材として製作しておき、それを永久磁石部と一体化させて回転子を構成するようにしたものも知られている。
更に、この種のモータは、回転子の軸受けを、固定子枠と主地板とで行う場合(特許文献2参照)と、二つの固定子枠で行う場合(特許文献3,4参照)とが一般的であるが、前者の変形例としては、固定子枠と主地板のいずれか一方に軸を設け、また、後者の変形例としては、二つの固定子枠のいずれか一方に軸を設けることによって、回転子に設けられた貫通孔をその軸に回転可能に嵌合させる場合もある。そして、それらのいずれの軸受け構成を採用する場合でも、主地板に対するモータの最終的な組み付けは、前者の場合は固定子枠を地板に取り付け、後者の場合は、二つのうちのいずれか一方の固定子枠を地板に取り付けるようにしているが、その取付方法は、二つのビスで取り付ける場合(特許文献2,3参照)と、主地板に設けられたフック部とビスとによって取り付ける場合(特許文献4,5参照)が多く、そのほかにも、複数のフック部だけで取り付けるようにしたものが知られている。
また、このようなシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置は、夫々の装置を一つのユニットとして製作することもある(特許文献1,2,4参照)が、他の一つ又は二つの装置と共に一つのユニットとして製作することもある(特許文献3,5参照)。また、シャッタ装置の場合には、開き用のシャッタ羽根と閉じ用のシャッタ羽根とを夫々の駆動源によって個別に作動させるようにすることがある。更に、絞り装置の場合には、円形をした絞り開口部の大きさの異なる複数枚の絞り羽根を夫々の駆動源によって個別に作動させるようにするために、複数の絞り装置を一つのユニットとして製作することがあるし、フィルタ装置の場合には、濃度の異なる複数枚のフィルタ羽根を夫々の駆動源によって個別に作動させるようにするなどのために、複数のフィルタ装置を一つのユニットとして製作することもある。そして、そのような複数の装置を一つのユニットとして製作する場合には、夫々の駆動源によって作動させられる羽根相互の衝突を防ぐために、主地板と補助地板の間を中間板(仕切板などともいう)で仕切り、それらの羽根を別々の羽根室に配置すること(特許文献3参照)が知られているし、それらの羽根が常に好適な重なり状態を維持し得る構成とすることによって、羽根室をそのように分割しない場合(特許文献5参照)も知られている。
本発明は、このように、所定の角度範囲内でだけ往復回転する永久磁石製の回転子が少なくとも一つ備えられていて、その回転子と一体に設けた出力ピンが、羽根室内に配置されている上記のようなシャッタ羽根,絞り羽根,フィルタ羽根のうちの少なくとも1枚の羽根を往復作動させるようにしたカメラ用羽根駆動装置に関するものである。
特開平8−286231号公報
特開2000−197326号公報
特開2000−60088号公報
特開2002−315294号公報
特開2002−139765号公報
ところで、最近では、デジタルスチルカメラやカメラ付き携帯電話などの普及に伴って、上記のような羽根駆動装置に対しても、一層の小型化と低コスト化が要求されている。しかしながら、そのためには、なんといっても、モータ自体の構成と、主地板に対するモータの取付け構成の改善が必要になってくる。そこで、取付け構成の観点から、上記のような従来の構成を見てみると、ビスやフック部を用いているので、必ずしも好適なものとはいえない。
即ち、ビスだけで取り付けるようにした場合は、固定子枠を主地板に確実に固定することができるとはいえ、ビスは、装置の構成部品としては比較的高価な部品であるため、コスト面でかなり不利になってしまう。しかも、ビスは、ねじ部よりも頭部の径が大きいため、それだけ固定子枠に大きな取付面を必要とするし、頭部の厚さも影響して、カメラ内におけるスペース効率を損なうものとなっている。
また、フック部だけで取り付けるようにした場合は、ビスだけで取り付ける場合よりもコスト面ではかなり有利となるが、それらのフック部が、通常、合成樹脂製の主地板に一体成形されているものであることから、衝撃によって固定子枠との相対位置関係がずれ易く、それを防ぐためには、フック部や固定子枠の取付け部位の形状を高精度に加工する必要があり、それらの製作を難しいものにしてしまうということがある。しかも、フック部で取り付ける場合は、装置を平面的に見て、固定子枠の外縁を掛け止めするのが普通であるが、主地板に対するフック部の設置位置についてもおのずと制約があるため、固定子枠を好適に取り付けるようにするためには、フック部の設置箇所に合わせて固定子枠の平面形状を必要以上に大きくしなければならないということもある。
そこで、特許文献4,5に記載の構成では、それらの中間をとり、固定子枠を主地板に確実に固定するためにビスを一つだけ用いるようにし、また、そのビス締めによって固定子枠に傾きが生じ、その固定位置から離れた位置が浮き上がるのを防止するのに、主地板にフック部を一つだけ設けるようにしている。しかしながら、このような構成は、ビスが一つ削減できたので、それだけ有利になったとはいえ、依然として一つのビスと一つのフック部を用いているので、上記したコスト面やカメラ内でのスペース効率の面で、改善が十分とはいえない。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、従来のように、別部材であるビスや主地板に設けられたフック部を用いることなく、モータの固定子枠を主地板に間接的に確実に取り付けることが可能であるとともに、コスト面でもカメラ内におけるスペース効率の面でも、従来よりも有利となる構成のカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、永久磁石を有していると共に回転中心の径方向位置に少なくとも一つの出力ピンを設けている回転子と、中空部を形成したボビン部を有していて同じ方向に軸状をした複数のボスを形成している合成樹脂製の固定子枠と、前記ボビン部に巻回されているコイルと、略U字形をしていて二つの脚部の先端を磁極部として前記回転子の周面に対向させていると共に一方の脚部を前記中空部に挿入しているヨークと、前記複数のボスを貫通させる複数の孔と前記出力ピンを作動可能に貫通させる孔とを形成していて前記固定子枠との間に前記回転子と前記ヨークとを配置しており前記固定子枠との少なくとも一方によって前記回転子を軸受けしている主地板と、前記主地板との間に羽根室を構成していると共に前記主地板に形成されている前記複数の孔に対応させて前記複数のボスを貫通させる複数の孔を形成している補助地板と、前記羽根室内に配置されていて前記出力ピンによって作動させられる少なくとも1枚の羽根と、を備えていて、前記固定子枠は、前記複数のボスを前記主地板に形成された前記複数の孔と前記補助地板に形成された前記複数の孔とに順に貫通させた後、前記複数のボスの先端に熱溶融で鍔部を形成することによって前記補助地板に取り付けられているようにする。
その場合、前記複数のボスの一部は、前記主地板に形成されている前記孔に貫通させられた後、その先端を熱溶融で鍔部に形成されているようにしてもよい。
更に、前記回転子と、前記固定子枠と、前記コイルと、前記ヨークとを複数組備えていて、前記主地板には、それらの固定子枠の前記複数のボスを貫通させる複数の孔と、それらの回転子の前記出力ピンを作動可能に貫通させる複数の孔とが形成されており、前記羽根室には、それらの出力ピンによって作動させられる複数種の前記羽根が配置されているように構成してもよい。
本発明のカメラ用羽根駆動装置は、合成樹脂製であるモータの固定子枠に複数の軸状をしたボスを形成しておき、そのボスを比較的厚さを有する主地板に設けられた複数の孔に貫通させてから補助地板に設けられた複数の孔に貫通させ、その先端に熱溶解で鍔部を形成することによって、固定子枠を補助地板に取り付けているので、従来のモータの取付け構成に比較して、コスト面でもカメラ内でのスペース効率の面でも有利であり、銀塩フィルムカメラやデジタルスチルカメラの場合はもちろんのこと、特に、カメラ付き携帯電話などの小型のカメラ付き情報端末装置に用いて有効なものである。
本発明の実施の形態を、図示した五つの実施例によって説明する。それらの実施例は、いずれも、銀塩フィルムカメラに採用することも、デジタルスチルカメラなどのデジタルカメラにも、採用することのできるものであるが、それらの作動については、デジタルカメラに採用された場合で説明することにする。尚、図1〜図3は、実施例1を説明するためのものであり、図4及び図5は、実施例2を説明するためのものであり、図6及び図7は、実施例3を説明するためのものであり、図8及び図9は、実施例4を説明するためのものであり、図10及び図11は、実施例5を説明するためのものである。
実施例1を、図1〜図3を用いて説明するが、図1は、本実施例におけるシャッタ羽根の全開状態(初期状態)を示した平面図であり、図2は、図1の要部の構成を理解し易いようにして示した断面図であり、図3は、シャッタ羽根の閉鎖状態を示した平面図である。そこで、先ず、本実施例の構成から説明する。本実施例は、一つのモータを駆動源としたシャッタ装置だけを一つのユニットとして構成したものである。主地板1は、後述のモータやシャッタ羽根などを取り付けたり、カメラ本体や情報端末装置の本体などに対する取付部を有していることから、複雑な形状が得られ且つ所定の剛性が得られるようにするために、合成樹脂で比較的厚く形成されている。また、補助地板2は、後述のようにして主地板1に取り付けられ、主地板1との間に羽根室を構成している。そして、主地板1と補助地板2には、それらの略中央部に円形をした撮影光路用の開口部1a,2aが形成されているが、露光開口は、直径の小さい開口部1aが規制するようになっている。また、主地板1と補助地板2は、どちらを被写体側にして配置してもよいようになっているが、本実施例の場合には、補助地板2を被写体側に配置し、主地板1を固体撮像素子側に配置するものとする。
主地板1には、上記の開口部1aのほかに、カメラ本体や情報端末装置本体に取り付けるための二つの取付孔1b,1cが、最も厚い肉厚部に形成されている。また、後述の回転子3に設けられた出力ピン3cを作動可能に貫通させるための大きな一つの孔1dと、後述の第1固定子枠4に設けられた二つのボス4b,4cを個別に貫通させるための二つの孔1e,1fが形成されている。更に、主地板1の羽根室側の面、即ち被写体側の面には、二つの軸1g,1hと、三つのストッパ1i,1j,1kと、三つのボス1m,1n,1pとが設けられており、また、後述のシャッタ羽根9,10を作動可能に収容するための窪み部1qも形成されている。
そして、それらのうち、軸1g,1hは、いずれも先端が、補助地板2に設けられた二つの孔(符号を付けていない)に貫通させられ、僅かに被写体側に突き出ている。また、三つのストッパ1i,1j,1kは、いずれも先端が、補助地板2から被写体側に僅かに突き出ているが、ストッパ1jは、その先端が補助地板2に設けられた孔2bに貫通させられている。また、三つのボス1m,1n,1pは、主地板1が部品単体として製作されたときには単純な軸状をしていたが、組立時において、それらを補助地板2の孔2c,2d,2eに貫通させておき、先端を熱溶融させて鍔部1m−1,1n−1,1p−1を形成しており、それによって、補助地板2が主地板1に取り付けられている。
主地板1の羽根室外の面、即ち固体撮像素子側の面には、周知のムービングマグネット型モータが配置されている。先ず、本実施例の回転子3は、径方向に2極に着磁された円筒状の永久磁石3aを有している。また、図2に示されているように、回転軸3bと、その径方向位置において回転軸3bと平行に延伸するように形成された出力ピン3cとは、合成樹脂のアウトサート加工によって永久磁石3aに一体成形されたものである。尚、本実施例の場合には、回転子3がこのように構成されているが、本発明の回転子は、このような構成に限定されるものではなく、後述の実施例3,4に記載の構成をしたものであっても、実施例5に記載の構成をしたものであっても差し支えないし、また、永久磁石は4極に着磁されたものであっても構わない。
本実施例の固定子枠は、図2から分かるように平板状の第1固定子枠4と、一端を閉塞された円筒状の第2固定子枠5とによって構成されており、それらに形成された孔によって回転子3の回転軸3bを軸受けしている。また、第2固定子枠5には、周面の一部に逃げ窓5aが形成されており、第1固定子枠4には、上記した主地板1の孔1dと略同じ形状の孔4aが形成されていて、回転子3が所定の回転角度内で回転し得るようになっている。また、これらの固定子枠4,5は合成樹脂製であって、両者の外周面には、回転子3の軸受部を囲むようにして環状の凹溝が一連に形成されており、その凹溝の中にコイル6が巻回されている。更に、第2固定子枠5には、回転子3の回転軸3bと平行に四つの細長い溝が形成されていて、図1に示すように、それらに各々鉄ピン7が挿入されている。これらの4本の鉄ピン7は、コイル6の非通電状態において、回転子3の停止状態を維持させるためのものであるが、その具体的な働きは周知であるため、説明を省略する。そして、このようにコイル6を巻回し鉄ピン7を挿入した第2固定子枠5の周囲には、円筒形をしたヨーク8が嵌装されている。
次に、このような構成のモータを主地板1に取り付ける方法を説明する。上記の第1固定子枠4には、主地板1側の面に、二つのボス4b,4cが形成されている。これらのボス4b,4cは、第1固定子枠4が部品単体として製作されたときには単純な軸状をしていたが、モータの組み付け時において、それらを、主地板1の孔1e,1fに貫通させておき、先端を熱溶融させて鍔部4b−1,4c−1を形成したことによって、第1固定子枠4を主地板1に取り付けている。その場合、ボス4b,4cと孔1e,1fとの嵌合公差は小さく、しかも、主地板1が厚くて嵌合長も大きいので、第1固定子枠4の位置決めが高精度に行え、主地板1に対する平面方向への位置ずれは生じない。また、主地板1と第1固定子枠4とは密着しているので、その状態で鍔部4b−1,4c−1を形成したことによって、ボス4b,4cが軸方向へ移動してしまうようなこともない。そして、このようにしてモータを主地板1に取り付けた状態においては、回転子3の出力ピン3cは、主地板1の孔1dから羽根室内に挿入され、その先端を、補助地板2に形成された円弧状の長孔2fに挿入している。
尚、本実施例の場合には、鍔部4b−1,4c−1が主地板1に対して固着されていることを要しないが、ボス4b,4cの先端を溶融させたとき、鍔部4b−1,4c−1が主地板1に対して熱溶着されるようになっていても構わないし、むしろその方が好都合な場合もある。また、本実施例の場合には、鍔部4b−1,4c−1が、後述するシャッタ羽根9,10の作動領域外に位置しているため、主地板1の羽根室側の面から突き出ているが、作動領域内に位置させたい場合には、主地板1の羽根室内の面に窪みを形成し、それらの鍔部4b−1,4c−1を窪み内に収容させる必要がある。しかしながら、そのようにすることによって、本実施例の場合には、その取付箇所に特に制約を受けることがないという特徴がある。
最後に、羽根室内に配置されている2枚のシャッタ羽根9,10を説明する。補助地板2側に配置されているシャッタ羽根9は、主地板1の軸1gに回転可能に取り付けられていて、回転子3の出力ピン3cを挿入させるための長孔9aを有している。また、主地板1側に配置されているシャッタ羽根10は、主地板1の軸1hに回転可能に取り付けられていて、回転子3の出力ピン3cを挿入させるための長孔10aを有している。即ち、回転子3の出力ピン3cは、両方の長孔9a,10aに挿入されていて、図1において回転子3が時計方向へ回転したときには、2枚のシャッタ羽根9,10を相反する方向へ回転させるようになっている。そして、このように構成されたシャッタ装置は、補助地板2側を取付面として、カメラ本体などに取り付けられる。
次に、本実施例の作動を説明する。上記したように、本実施例のシャッタ装置は、銀塩フィルムカメラにも採用することが可能な機能を有している。しかしながら、その作動説明は、デジタルスチルカメラや情報端末装置用カメラなどの固体撮像素子を備えたカメラに採用された場合で説明する。図1は、カメラの電源がオン状態になっているが、撮影が行われていない状態を示したものである。従って、この状態では、モニターによって、被写体像を観察することもできるし、撮影済みの画像も観察することができるようになっている。本実施例では、この状態を初期状態ということにする。また、周知であるため、詳しい説明を省略するが、このとき、回転子3は、永久磁石3aの磁極と鉄ピン7との配置関係によって、図1において反時計方向へ回転するように付勢されている。そのため、出力ピン3cには、シャッタ羽根9を時計方向へ回転させ、シャッタ羽根10を反時計方向へ回転させる力が働いているが、シャッタ羽根9,10がストッパ1i,1kに接触していることによって、この停止状態が維持されている。
このような図1の状態において、撮影に際してレリーズボタンを押すと、露光制御回路からの信号によって固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、その後、あらたに撮影のための電荷の蓄積が開始(撮影のための露光開始)される。そして、被写体の輝度に対応した所定の時間が経過すると、露光制御回路からの信号によって、モータのコイル6に対して正方向の通電が行われ、回転子3は、図1において時計方向へ回転させられる。そのため、出力ピン3cは、シャッタ羽根9を反時計方向へ回転させ、シャッタ羽根10を時計方向へ回転させて、露光開口を規制している開口部1aを閉じさせる。そして、シャッタ羽根9,10が開口部1aを完全に閉鎖し、シャッタ羽根9がストッパ1jに当接して停止させられた状態が、図3に示された状態である。ところで、この図3の状態からも分かるように、開口部1aは、2枚のシャッタ羽根9,10の両方によって閉鎖されている。従って、シャッタ装置の仕様上、いずれか一方のシャッタ羽根だけで開口部1aを閉鎖させるようにすることが許されるのであれば、他方のシャッタ羽根は不要となり、シャッタ羽根は1枚だけでもよいことになる。
このようにしてシャッタ羽根9,10が開口部1aを閉鎖すると、その直後に、固体撮像素子で光電変換された撮像情報が画像処理回路を介して記憶装置に転送される。そして、その転送が終了すると、モータのコイル6に、先ほどとは逆方向の通電が行われる。そのため、回転子3は、図3において反時計方向へ回転させられ、出力ピン3cによって、シャッタ羽根9を時計方向へ回転させ、シャッタ羽根10を反時計方向へ回転させる。それによって、シャッタ羽根9,10は、開口部1aを開いてゆき、開口部1aを完全に開放した後、ストッパ1i,1kに当接して停止させられる。その後、コイル6への通電が断たれると、図1に示した初期状態に復帰したことになる。
このように、本実施例は、2枚のシャッタ羽根9,10を備えたシャッタ装置として構成したものであるが、上記したように、仕様上で許されるのであれば、1枚のシャッタ羽根だけを備えたシャッタ装置とすることもできる。また、その1枚のシャッタ羽根を、開口部1aよりも小さい直径の開口部を有する絞り羽根と交換することによって、絞り装置とすることも可能であるし、上記した各構成のフィルタ羽根と交換することによって、フィルタ装置とすることも可能である。更に、特許文献4に記載されているように、回転子3に二つの出力ピンを設けるようにすれば、2枚のシャッタ羽根を直線的に往復作動させるシャッタ装置とすることができるし、それらの2枚の羽根を作動の途中位置でストッパによって停止させ得るようにすれば、絞り装置とすることも可能である。そして、これらのことは、以下に説明する各実施例にも言えることである。
次に、実施例2を、図4及び図5を用いて説明するが、本実施例の場合も、一つのモータを駆動源としているシャッタ装置だけを一つのユニットとして構成したものであり、図4は、本実施例におけるシャッタ羽根の全開状態(初期状態)を示した平面図であり、図5は、図4の要部の構成を理解し易いようにして示した断面図である。ところで、本実施例のシャッタ装置は、その構成が、実施例1の構成と殆ど同じであって、第1固定子枠4の取付け構成が異なっているだけである。そのため、実施例1の場合と実質的に同じ部材,部位には同じ符号を付けておき、異なる構成についてだけ説明することにする。また、本実施例のシャッタ装置の作動は、実施例1の場合と全く同じようにして行われる。従って、重複を避けるために、その作動説明を省略する。
本実施例においては、第1固定子枠4の主地板1側の面に形成された二つのボス4b,4cが、実施例1の場合よりも長く形成されている。また、本実施例の補助地板2には、主地板1の孔1e,1fと対向する位置に、孔2g,2hが形成されている。そして、ボス4b,4cは、モータの組み付け時において、主地板1の孔1e,1fに貫通させた後、それらの先端を補助地板2の孔2g,2hに貫通させ、熱溶融させることによって鍔部4b−1,4c−1を形成している。そのため、鍔部4b−1,4c−1は、実施例1の場合とは異なり、補助地板2の被写体側の面から突き出ることになるが、本実施例のシャッタ装置は、主地板1の軸1g,1hの先端や回転子3の出力ピン3cの先端も同様に突き出ていて、補助地板2側を他のカメラ構成体への取付面としているため、それらと同じ程度の突き出し量であれば、何ら問題がない。このように、本実施例は、ボス4b,4cが、実施例1の場合と同じ役目をしているほか、主地板1のボス1m,1n,1pと同じ役目をもしているものである。
尚、実施例1で述べた、この取付け構成以外の説明事項については、本実施例にも適用されるが、本実施例の場合には、シャッタ羽根9,10の作動領域にボス4b,4cを設置することはできない。また、本実施例の場合には、二つの固定子枠4,5のうち、主地板1側で回転子3を軸受けしている第1固定子枠4にボス4b,4cを設けているが、二つの固定子枠4,5の構成を、例えば特許文献4に記載されているように構成した場合は、それらの二つのボスは、主地板1から遠い方で回転子3を軸受けしている第2固定子枠5に設けることになる。そして、このことは、実施例1の場合も同様である。更に、本実施例においては、第1固定子枠4に、二つのボス4b,4cを設けているが、構成次第によっては一つだけとしてもよく、このことは、他の実施例における固定子枠の場合も同じである。
実施例3を、図6及び図7を用いて説明するが、図6は、本実施例におけるシャッタ羽根の全開状態(初期状態)を示した平面図であり、図7は、図6の要部の構成を理解し易いようにして示した断面図である。本実施例は、上記の実施例1,2と同様に、一つのモータを駆動源としたシャッタ装置だけを一つのユニットとして構成したものであるが、モータの構成が大きく異なっていて、ユニット全体を扁平化しているのが特徴である。そこで、先ず、構成から説明する。本実施例の主地板21は、合成樹脂で比較的厚く形成されていて、略中央部に円形をした開口部21aを有している。また、補助地板22は、略長方形をしていて、主地板21との間に羽根室を構成している。そして、補助地板22にも略中央部に円形をした開口部22aが形成されているが、本実施例の場合には、その開口部22aの方が、主地板21の開口部21aよりも直径が小さくて、露光開口を規制するようになっている。また、本実施例の場合にも、主地板21と補助地板22は、どちらを被写体側にして配置してもよいが、以下においては、実施例1,2の場合とは逆に、主地板21を被写体側に配置したものとして説明する。尚、本実施例においては、カメラ本体などへの取付部は、図示を省略されている。
主地板21には、上記の開口部21aのほかに、後述の回転子23に設けられた出力ピン23bを貫通させるための円弧状の長孔21bと、後述の固定子枠24に設けられた二つのボス24b,24cを個別に貫通させるための二つの孔21c,21dが形成されている。更に、主地板21の羽根室側の面、即ち撮像素子側の面には、二つの軸21e,21fと、二つのストッパ21g,21hと、二つのボス21i,21jとが設けられており、また、後述のシャッタ羽根27,28を作動可能に収容するための窪み部21kも形成されている。
そして、それらのうち、軸21e,21fは、いずれも先端が、補助地板22に設けられた二つの孔(符号を付けていない)に貫通させられ、僅かに固体撮像素子側に突き出ている。また、二つのストッパ21g,21hも、それらの先端が、補助地板22から固体撮像素子側に僅かに突き出ている。更に、二つのボス21i.21jは、主地板21が部品単体として製作されたときには単純な軸状をしていたが、組立時において、それらを補助地板22の孔22b,22cに貫通させておき、先端を熱溶融させて鍔部21i−1,21j−1を形成しており、それによって、補助地板22が主地板21に取り付けられている。
主地板21の羽根室外の面、即ち被写体側の面には、軸21mが設けられている。そして、その羽根室外の面には、周知のムービングマグネット型モータが配置されている。先ず、本実施例の回転子23は、径方向に2極に着磁された円筒状の永久磁石23aを有していて、上記の軸21mに回転可能に取り付けられている。また、その永久磁石23aと一体化された合成樹脂製の出力ピン23bがその径方向位置に設けられていて、上記の長孔21bから羽根室内に挿入し、その先端を、補助地板22に形成された円弧状の長孔22dから僅かに突き出している。
上記の実施例1,2の場合には、二つの固定子枠4,5を備えていたが、本実施例の場合には一つの固定子枠24を備えているだけである。この固定子枠24は合成樹脂製であって、中空のボビン部24aを有しており、そこにコイル25が巻回されている。また、そのボビン部24aの中空部には、略U字形をしていて二つの脚部を有しているヨーク26が、一方の脚部を挿入して取り付けられている。そして、そのヨーク26は、二つの脚部の先端を磁極部として、永久磁石23aの周面に対向させている。また、その先端部には、上記の実施例1,2における鉄ピン7と同じ役目をする部位が設けられているが、本発明とは直接関係がないので、その詳細な説明は省略する。尚、主地板21のストッパ21hは、このヨーク26の一方の脚部の配置に支障を与えない形状となっている。
更に、固定子枠24は、主地板21の軸21mを嵌合させる孔(符号を付けていない)を有しており、主地板21側の面には、二つのボス24b,24cが形成されている。これらのボス24b,24cは、固定子枠24が部品単体として製作されたときには単純な軸状をしていたが、モータの組み付け時において、主地板21の孔21c,21dに貫通させた後、それらの先端を補助地板22の孔22e,22fに貫通させ、熱溶融させることによって鍔部24b−1,24c−1を形成している。そのため、本実施例の場合も、実施例2の場合と同様に、二つのボス24b,24cは、主地板21のボス21i,21jと同じ役目をもしている。
主地板21と補助地板22の間に構成された羽根室内には、本実施例の場合も2枚のシャッタ羽根27,28が配置されている。そして、補助地板22側に配置されているシャッタ羽根27は、主地板21の軸21eに回転可能に取り付けられていて、その長孔27aに回転子23の出力ピン23bを挿入させている。また、主地板21側に配置されているシャッタ羽根28は、主地板21の軸21fに回転可能に取り付けられていて、その長孔28aに回転子23の出力ピン23bを挿入させている。
次に、本実施例の作動を説明する。本実施例の場合にも、シャッタ羽根27,28の開閉作動自体は、実施例1の場合と実質的に同じである。そのため、簡単に説明することにする。図6は、実施例1における図1と同様に、本実施例の初期状態を示したものである。このとき、回転子23は、永久磁石23aの磁極とヨーク26の磁極部との配置関係によって、図6において反時計方向へ回転するように付勢されているが、シャッタ羽根28がストッパ21gに接触しているので、この停止状態が維持されている。
撮影に際してレリーズボタンを押すと、それまで固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、その直後から撮影のための電荷の蓄積が開始される。そして、所定の時間が経過すると、モータのコイル25に対して正方向の通電が行われ、回転子23は、図6において時計方向へ回転させられ、出力ピン23bによってシャッタ羽根27,28を相反する方向へ回転させ、露光開口を規制している開口部22aの閉じ作動を行わせる。そして、シャッタ羽根27,28が開口部22aを閉鎖した後、シャッタ羽根28がストッパ21hに当接して停止すると、その直後に、固体撮像素子で光電変換された撮像情報が画像処理回路を介して記憶装置に転送される。
その後、コイル25に、先ほどとは逆方向の通電が行われると、回転子23は反時計方向へ回転させられ、出力ピン23bによってシャッタ羽根27,28に開き作動を行わせる。そして、開口部22aを全開にした後、シャッタ羽根28がストッパ21gに当接することによって、その開き作動が終了すると、コイル25に対する通電が断たれ、図6の初期状態に復帰する。
次に、実施例4を、図8及び図9を用いて説明するが、図8は、本実施例におけるシャッタ羽根の全開状態(初期状態)を示した平面図であり、図9は、図8の要部の構成を理解し易いようにして示した断面図である。ところで、本実施例のシャッタ装置は、その構成が、実施例3の構成と殆ど同じであって、固定子枠24の取付け構成が異なるだけである。そのため、実施例3の場合と実質的に同じ部材,部位には同じ符号を付け、異なる点についてだけ説明することにする。また、本実施例のシャッタ装置の作動は、実施例3の場合と全く同じであるため、その説明を省略する。
本実施例は、実施例3におけるボス24bの取付け構成が異なるだけである。即ち、本実施例の場合には、固定子枠24のボス24bが、実施例3の場合よりも短く形成されている。また、本実施例の補助地板22には、実施例3における孔22eが形成されていない。そして、ボス24bは、モータの組み付け時に、主地板21の孔21cに貫通させた後、その先端を熱溶融させて鍔部24b−1を形成している。本実施例は、固定子枠24に複数のボスを設ける場合、このような取り付け方もできるということを示したものであって、このことは、実施例1,2の場合にも言えることである。
実施例5を、図10及び図11を用いて説明するが、図10は、本実施例におけるシャッタ羽根の全開状態(初期状態)を示した平面図であり、図11は、図10の要部の構成を理解し易いように展開状態で示した断面図である。そして、これまでの各実施例が、一つのモータを駆動源としたシャッタ装置だけを一つのユニットとして構成したものであるのに対し、本実施例は、一つのモータを駆動源としたシャッタ装置と、一つのモータを駆動源とした絞り装置とを、一つのユニットとして構成したものである。また、それらの二つのモータは、一部の構成に差異はあるものの、上記の実施例3,4に記載されたモータと同じタイプのモータである。
そこで、先ず、構成から説明する。本実施例の主地板31も、合成樹脂で厚く形成されており、略中央部に円形をした開口部31aを有している。また、その主地板31との間に羽根室を構成している補助地板32も、略中央部に円形をした開口部32aを有しているが、本実施例の場合には、その開口部32aよりも主地板31の開口部31aの直径が小さく、露光開口を規制するようになっている。そして、本実施例の場合も、実施例3,4の場合と同様に、主地板31を被写体側に、補助地板32を固体撮像素子側に配置したものとして説明する。また、本実施例においても、カメラ本体などへの取付部は、図示を省略されている。
主地板31には、上記の開口部31aのほかに、後述の二つの回転子33,37に設けられた出力ピン33a,37aを各々貫通させるための二つの円弧状の長孔31b,31cと、後述の二つの固定子枠34,38に各々二つずつ設けられたボス34b,34c,38b,38cを個別に貫通させるための四つの孔31d,31e,31f,31gが形成されている。更に、主地板31の羽根室側の面、即ち撮像素子側の面には、三つの軸31h,31i,31jが設けられており、また、後述のシャッタ羽根41,42や絞り羽根43を作動可能に収容するための窪み部31kも形成されている。そのほか、各羽根の作動を停止させるための複数のストッパも形成されているが、それらの図示は省略されている。そして、それらのうち、軸31h,31i,31jは、いずれも先端が、補助地板22に設けられた孔(符号を付けていない)を貫通し、僅かに固体撮像素子側に突き出ている。
主地板31の羽根室外の面、即ち被写体側の面には、二つの軸31m,31nが設けられているが、そのうち、軸31mは、羽根室側に設けられた上記の軸31iと同心になるようにして設けられている。そして、その羽根室外の面には、上記の実施例3,4と同じタイプのムービングマグネット型モータが二つ配置されている。先ず、シャッタ装置用モータの回転子33は、径方向位置に設けた出力ピン33aと共に永久磁石で製作されていて、上記の軸31mに回転可能に取り付けられている。そして、その円筒部は、径方向の2極となるように着磁されている。また、その出力ピン33aは、上記の長孔31bから羽根室内に挿入され、更に、その先端を、補助地板32に形成された円弧状の長孔32bに挿入して、固体撮像素子側へ僅かに突き出している。
シャッタ装置用モータの固定子枠34は合成樹脂製であって、中空のボビン部34aを有しており、そこにコイル35を巻回している。また、そのボビン部34aの中空部には、二つの脚部を有していて略U字形をしているヨーク36が、その一方の脚部を挿入して取り付けられている。そして、そのヨーク36は、二つの脚部の先端を磁極部として、回転子33の円筒部の周面に対向させていると共に、明示していないが、一方の先端部には、上記の実施例1,2における鉄ピン7と同じ役目をする部位が設けられている。更に、固定子枠34は、主地板31の軸31mを嵌合させる孔(符号を付けていない)を有しており、主地板31側の面には、二つのボス34b,34cが設けられている。これらのボス34b,34cは、その固定子枠34が部品単体として製作されたときには単純な軸状をしていたが、モータの組み付け時において、主地板31の孔31d,31eに貫通させた後、それらの先端を補助地板32の孔32c,32dに貫通させ、熱溶解させることによって鍔部34b−1,34c−1を形成している。
他方、絞り装置用モータも、上記のシャッタ装置用モータと同等の構成をしており、その回転子37は、径方向位置に設けられた出力ピン37aと共に永久磁石で製作され、主地板31の軸31nに回転可能に取り付けられている。そして、その円筒部は、径方向の2極に着磁されており、出力ピン37aは、主地板31の長孔31cから羽根室内に挿入され、更に、その先端を、補助地板32に形成された円弧状の長孔32cにも挿入させ、固体撮像素子側へ突き出ている。
絞り装置用モータの固定子枠38も合成樹脂製であって、中空のボビン部38aを有しており、そこにコイル39を巻回している。また、そのボビン部38aの中空部には、略U字形をしたヨーク40が、一方の脚部を挿入して取り付けられている。そして、そのヨーク40は、二つの脚部の先端を磁極部としており、明示していないが、一方の先端部には、上記の実施例1,2における鉄ピン7と同じ役目をする部位も有している。更に、固定子枠38は、主地板31の軸31nを嵌合させる孔(符号を付けていない)を有しており、主地板31側の面には、二つのボス38b,38cを設けている。そして、それらのボス38b,38cは、固定子枠38が部品単体のときには単純な軸状をしていたが、モータの組み付け時において、主地板31の孔31f,31gに貫通させた後、それらの先端を補助地板32の孔32e,32fに貫通させ、熱溶融させることによって鍔部38b−1,38c−1を形成している。このように、本実施例の場合は、上記の各実施例の場合とは異なり、補助地板32が、二つの固定子枠34,38に設けられた四つのボス34b,34c,38b,38cだけによって、主地板31と一体化されている。
本実施例においては、羽根室内に、2枚のシャッタ羽根41,42と、1枚の絞り羽根43が配置されている。そのうち、シャッタ羽根41は、主地板31の軸31hに回転可能に取り付けられていて、その長孔41aに回転子33の出力ピン33aを挿入させている。また、シャッタ羽根41よりも主地板31側に配置されているシャッタ羽根42は、主地板31の軸31iに回転可能に取り付けられていて、その長孔42aに回転子33の出力ピン33aを挿入させている。更に、絞り羽根43は、3枚の羽根41,42,43のうちでは一番補助地板32側に配置されており、主地板31の軸31jに回転可能に取り付けられていて、その長孔43aに回転子37の出力ピン37aを挿入させている。また、この絞り羽根43には、主地板31の開口部31aよりも直径の小さな開口部43bが形成されている。
次に、本実施例の作動を説明する。本実施例の場合は、撮影に際してレリーズボタンを押したとき、測光回路の測定結果に基づいて、撮影光を減じて撮影すべきと判断されたときには、最初に絞り装置を作動させておいてから撮影が開始され、撮影光を減じないで撮影すべきと判断されたときには、絞り装置を作動させることなく、直ちに撮影が開始されるが、後者の場合には、上記の各実施例の場合と同様にして、シャッタ装置が作動させられるだけであるから、本実施例の場合には、前者の場合についてだけの作動説明を行うことにする。
図10は、本実施例の初期状態を示したものである。このとき、二つのモータのコイル35,39には通電されていない。しかしながら、シャッタ装置の回転子33は、その永久磁石の磁極とヨーク36の磁極部との配置関係によって反時計方向へ回転するように付勢されており、シャッタ羽根42を図示していないストッパに接触させることによって、開口部31aの全開状態を維持させている。他方、このとき、絞り装置の回転子37も、同じようにして反時計方向へ回転するように付勢されており、絞り羽根43を図示していないストッパに接触させることによって、開口部31aからの退避状態を維持させている。
この初期状態において、レリーズボタンが押され、測光回路による測定結果によって、撮影光を減じて撮影すると判断された場合は、先ず、絞り装置用モータのコイル39に対して正方向への通電が行われる。そのため、回転子37は、時計方向へ回転させられ、出力ピン37aによって絞り羽根43を反時計方向へ回転させ、開口部31aに進入させていく。そして、絞り羽根43は、その開口部43bが光軸を中心とした位置に達したとき、図示していないストッパに当接して停止させられる。その結果、撮影光路は、開口部31aより直径の小さな開口部43bによって規制された状態になる。
このようにして、絞り羽根43の作動が停止させられると、それまで固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、その直後から撮影のための電荷の蓄積が開始される。その後、所定の時間が経過すると、シャッタ装置用モータのコイル35に対して正方向への通電が行われる。それによって、回転子33は時計方向へ回転させられ、出力ピン33aによってシャッタ羽根41,42を相反する方向へ回転させ、絞り羽根43の開口部43bを閉じさせる。そして、シャッタ羽根42が図示していないストッパに当接することによって、シャッタ羽根41,42の作動が停止すると、その直後に、固体撮像素子で光電変換された撮像情報が画像処理回路を介して記憶装置に転送される。
その後、シャッタ装置用モータのコイル35に対して、先ほどとは逆方向への通電が行われる。そのため、回転子33は反時計方向へ回転させられ、出力ピン33aによってシャッタ羽根41,42を相反する方向へ回転させる。それによって、シャッタ羽根41,42は、開口部43bの開き作動を行い、シャッタ羽根42が図示していないストッパに当接することによって、その開き作動を停止させられる。他方、絞り装置の方は、シャッタ羽根41,42の開き作動が終了すると、コイル39に対して、先ほどとは逆方向への通電が行われる。そのため、回転子37は反時計方向へ回転させられ、出力ピン37aによって絞り羽根43を時計方向へ回転させる。それによって、絞り羽根43は、主地板31の開口部31aから退き、図示していないストッパに当接することによって、その復帰作動を停止させられる。その後、二つのコイル35,39に対する通電が断たれると、図10の初期状態に復帰したことになる。尚、上記においては、シャッタ羽根41,42が開き作動を終了してから、絞り羽根43が復帰作動を開始する場合で説明したが、絞り羽根43の復帰作動は、シャッタ羽根41,42が開口部43bを閉鎖した後であれば、いつ開始させるようにしても差し支えない。
このように、本実施例は、一つのモータで駆動されるシャッタ装置と、もう一つのモータによって駆動される絞り装置とを、一つのユニットに構成したものであるが、本発明は、そのような構成に限定されない。即ち、特許文献5にも記載されているように、各々のモータによって駆動されるシャッタ装置とフィルタ装置とを、一つのユニットとして構成したものにも適用されるし、絞り装置とフィルタ装置とを一つのユニットとして構成したものにも適用することができる。また、特開2001−188275号公報にも記載されているように、シャッタ装置と絞り装置とフィルタ装置とを、一つのユニットとして構成したものにも適用することができる。
更に、二つ以上の装置を一つのユニットとして構成する場合であっても、それらの装置が異種の装置である必要はなく、異なる直径の開口部を形成した複数の絞り羽根を、各々のモータによって駆動することを可能にしたユニットにも適用することができるし、異なる濃度のフィルタ板を取り付けた複数のフィルタ羽根を、各々のモータによって駆動することを可能にしたユニットにも適用することができる。また、特開2003−186079号公報にも記載されているように、一方のモータによって開き用のシャッタ羽根を駆動し、他方のモータによって閉じ用のシャッタ羽根を駆動するタイプのユニットにも適用することが可能である。
また、このように、複数のモータを備えた一つのユニット装置を構成する場合には、それらのモータの固定子枠を、特許文献3に記載のように、共通の一つの固定子枠とすることがあるが、本発明は、そのような構成にも適用することが可能である。また、本実施例の場合には、隣接しているシャッタ羽根42と絞り羽根43とが、それらのどのような作動位置においても、好適な重なり関係を維持できるように構成されているため、作動中に羽根同士が傾くなどして衝突しない(噛み合わない)ようになっているが、そのような衝突する可能性のある構成にせざるを得ないときは、シャッタ羽根42と絞り羽根43との間に周知の中間板(仕切り板)を配置するようにすればよく、そのように構成したものにも本発明を適用することが可能である。いずれにしても、本発明は、低コストでモータを確実に取り付けることのできる構成であるばかりでなく、固定子枠を大きくしなくても済むため、このように、各々のモータによって駆動される複数の羽根装置を一つのユニットとして構成する場合に、極めて有効である。
実施例1におけるシャッタ羽根の全開状態(初期状態)を示した平面図であ る。
図1の要部断面図である。
実施例1におけるシャッタ羽根の閉鎖状態を示した平面図である。
実施例2における初期状態を示した平面図である。
図4の要部断面図である。
実施例3における初期状態を示した平面図である。
図6の要部断面図である。
実施例4における初期状態を示した平面図である。
図8の要部断面図である。
実施例5における初期状態を示した平面図である。
図10の要部断面図である。
符号の説明
1,21,31 主地板
1a,2a,21a,22a,31a,32a,43b 開口部
1b,1c 取付孔
1d〜1f,2b〜2e,2g,2h,4a,21c,21d,22b,22c,22e,22f,31d〜31g,32d〜32f 孔
1g,1h,21e,21f,21m,31h,31i,31j,31m,31n 軸
1i〜1k,21g,21h ストッパ
1m,1n,1p,4b,4c,21i,21j,24b,24c,34b,34c,38b,38c ボス
1m−1,1n−1,4b−1,4c−1,21i−1,21j−1,24b−1,24c−1,34b−1,34c−1,38b−1,38c−1 鍔部
1q,21k,31k 窪み部
2,22,32 補助地板
2f,9a,10a,21b,22d,27a,28a,31b,31c,32b,32c,41a,42a,43a 長孔
3,23,33,37 回転子
3a,23a 永久磁石
3b 回転軸
3c,23b,33a,37a 出力ピン
4 第1固定子枠
5 第2固定子枠
5a 逃げ窓
6,25,35,39 コイル
7 鉄ピン
8,26,36,40 ヨーク
9,10,27,28,41,42 シャッタ羽根
24,34,38 固定子枠
24a,34a,38a ボビン部
43 絞り羽根