本発明は、シャッタ羽根や絞り羽根などの羽根部材をモータで駆動するようにしたカメラ用羽根駆動装置に関する。
カメラに採用されているレンズシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置は、各々羽根部材を有していて、それらをアクチュエータによって往復作動させるようにしている。それらのうち、レンズシャッタ装置の場合には、相反する方向へ同時に回転する2枚のシャッタ羽根を備えたもの(例えば、特許文献1,2参照)が多いが、レンズ口径の小さなカメラに採用されるものとしては、往復回転する1枚のシャッタ羽根だけを備えたものも知られている(例えば、特許文献3参照)。そして、それらのシャッタ装置は、銀塩カメラにもデジタルカメラ(デジタルスチルカメラ, デジタルビデオカメラ,携帯用情報端末装置に内蔵するカメラなど)にも採用することが可能となっている。
また、絞り装置の場合には、複数枚の絞り羽根を備えたものも知られているが、最近では小型のデジタルカメラの普及により、露光開口よりも小さい円形の開口部を有していて、往復回転することによって、その開口部を露光開口に進退させるようにした1枚の絞り羽根を備えたものが多くなっている(例えば、特許文献1,3参照)。
更に、フィルタ装置の場合には、少なくとも1枚のフィルタ羽根を、必要に応じて露光開口に進退させるようにするのが普通であるが、その1枚のフィルタ羽根自体は、上記の1枚の絞り羽根と同様に円形の開口部(但し、露光開口と略同じ大きさの場合もある)を有していて、その開口部の近傍位置にその開口部を覆うようにしてNDフィルタ板を取り付けたもの(例えば、特許文献1,2参照)が多い。しかしながら、NDフィルタ板だけでフィルタ羽根を構成したものも知られているし、円形の開口部を有する2枚の羽根の間にNDフィルタ板を挟み合わせ、三者をあたかも3層の1枚の羽根であるかのようにして往復回転させるようにしたものもある。
このような各羽根部材は、最近では、モータなどによって駆動されるのが普通になっているが、そのモータとしては、ステップモータのほかにムービングマグネット(型)モータなどと称されている電流制御式のモータが多く使用されている。この電流制御式のモータは、回転子が、径方向に着磁された永久磁石を有していて、その回転子が所定の角度範囲で往復回転すると、それと一体に設けられた出力ピン(駆動ピンなどともいう)が羽根部材を往復回転させるようになっている。また、回転子を軸受けしている固定子には、回転子の軸受け部を囲むようにして、一つ又は二つのコイルが巻回されており、コイルが一つの場合には、電流の供給方向を切り換えて、その供給方向に対応した方向へ回転子を回転させ、コイルが二つの場合には、両者に対して反対方向の電流を個別に供給したり同時に供給したりして、回転子を所定の方向へ回転させたり、磁力のバランス位置で停止させたりするようにしている。
また、この種の電流制御式のモータは、コイルへの無通電状態において、回転子の停止位置が安定しずらい。そこで、撮影の都度、羽根部材が必ず初期位置から作動を開始できるようにするために、撮影前に、ホール素子やフォトセンサなどによって、羽根部材の位置検出を行い、初期位置からずれた位置にあるときには、コイルへ通電して初期位置へ復帰させておいてから、撮影を開始するようにしたものが知られている。また、最初から、羽根部材が初期位置で安定状態を維持できるようにするために、回転子の磁極と対向する固定子側に磁性体棒を取り付けておき、コイルに通電していないときであっても、その磁性体棒と回転子の永久磁石との間に作用する吸引力によって、回転子の停止位置を安定化できるようにしたものも知られている(特許文献1参照)。
ところで、上記のようなシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置は、各々の装置だけでユニット化されることもあるが、同じカメラに二つ以上の装置を備える場合には、それらを一つのユニットとして製作するのが普通であり、特許文献1,2には、そのようにして製作する場合の例が記載されている。また、それらの例においては、二つの地板の間を中間(地)板で仕切って二つの羽根室を構成し、夫々の装置の羽根部材を別々の羽根室に配置するようにしているが、二つの地板の間には一つの羽根室しか構成せず、その羽根室内に二つの装置の羽根部材を両方とも配置するようにした構成も知られている。本発明は、上記のように各々がモータ駆動式である二つの装置を、一つのユニットとして構成したカメラ用羽根駆動装置に関するものである。
特開2000−60088号公報
特開2002−139765号公報
特開2000−292827号公報
上記のように、二つの装置を一つのユニットとして構成したカメラ用羽根駆動装置の場合は、最近では携帯電話などに内蔵する必要性が生じてきたことから、低コスト化は勿論のこと、装置の薄型化や、スペース効率を考慮したコンパクト化が要求されている。しかしながら、特許文献1,2からも分かるように、羽根室を構成している地板の一つは、羽根室外の面に二つのモータを取り付けたり、羽根室内の面には羽根部材を取り付けたりする必要があって、複雑な表面形状や所定の剛性を要求されるため、通常は、所定の厚さを有する合成樹脂製とされている。他方、モータは、羽根部材との連結構成を簡単にするために、回転子の回転軸を地板に対して垂直に配置するようにし、二つの軸受け部材によって軸受けされているのが普通であるが、地板に取り付ける方の板状の軸受け部材は、複雑な形状を必要とすることから、比較的厚手の合成樹脂製とされている。そのため、従来のユニットでは、相互に取り付けられる地板と軸受け部材とが、いずれも厚手の合成樹脂製であることから、装置の薄型化を図ること、具体的には、モータ取付位置において必要とする光軸と平行な方向の寸法を小さくすることが、極めて困難であった。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、各々のモータによって駆動されるシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置のうち、二つの装置を一つのユニットとして構成するに際し、二つのモータとそれらが駆動する羽根部材とを取り付けていた従来の地板を、各々のモータの軸受け部材である固定子枠同士を1枚の板状に組み合わせて兼用させ、従来のモータ取付位置における光軸と平行な方向の寸法を小さくすることができるようにし、しかもコンパクト化や低コスト化も可能としたカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、各々が少なくとも一つの肉薄領域と軸受け部とを有しており両者の該肉薄領域を重ねることによって全体として1枚の略板状に組み合わされ両者の少なくとも一方によって撮影光路用の開口部を形成する第1モータ用第1固定子枠及び第2モータ用第1固定子枠と、各々が軸受け部を有している第1モータ用第2固定子枠及び第2モータ用第2固定子枠と、各々が前記各々のモータの二つの軸受け部に軸受けされていて回転軸と平行な出力ピンを有している第1モータ用回転子及び第2モータ用回転子と、各々が前記各々のモータの二つの軸受け部を覆うようにして巻回された第1モータ用コイル及び第2モータ用コイルと、前記撮影光路用の開口部との少なくとも一方によって露光開口を規制する撮影光路用の開口部を有しており前記二つの第1固定子枠と相互に取り付けられていてそれらの固定子枠との間に羽根室を構成しているカバー板と、前記羽根室内で前記二つの第1固定子枠の一方に回転可能に取り付けられていて前記第1モータの出力ピンによって前記二つの第1固定子枠にわたって往復回転させられる少なくとも1枚の第1羽根部材と、前記羽根室内で前記二つの第1固定子枠の他方に回転可能に取り付けられていて前記第2モータの出力ピンによって前記二つの第1固定子枠にわたって往復回転させられる少なくとも1枚の第2羽根部材と、を備えているようにする。
その場合、前記二つの第1固定子枠と前記カバー板との間に配置されていて前記カバー板との間に前記羽根室を構成している隔壁板が備えられており、該隔壁板に形成された撮影光路用の開口部と、前記二つの第1固定子枠の少なくとも一方によって形成された撮影光路用の開口部との、少なくとも一つによって露光開口が規制されているようにしてもよい。
本発明は、各々のモータによって駆動されるシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置のうち、二つの装置を一つのユニットとして構成したカメラ用羽根駆動装置において、各々の装置のモータと羽根部材とを全て取り付けていた従来の地板を、各々のモータの回転子を軸受けしている固定子枠部材同士を板状に組み合わせて兼用させるようにしたため、従来のモータ取付位置における装置の薄型化、即ち光軸と平行な方向の寸法を小さくすることができ、しかも、低コスト化とコンパクト化も可能になる。
本発明の実施の形態を、二つの実施例によって説明する。それらの実施例は、いずれも、小型のカメラであれば、銀塩フィルムカメラにも各種のデジタルカメラにも採用することが可能なものであるが、特に、携帯電話などの情報端末装置に内蔵されるカメラ用の羽根駆動装置として構成されたものであって、シャッタ装置と絞り装置とを一つのユニットとして構成したものである。尚、図1〜図4は、実施例1を説明するためのものであって、図5〜図11は、実施例2を説明するためのものである。
本実施例を、図1〜図4を用いて説明するが、図1は、露光開口を全開にしている初期状態を示した平面図であり、図2は、本実施例における二つのモータを図1の状態から左右に分離した状態にして示した平面図であり、図3は、図1における左側のモータの回転子近傍を切断して示した断面図であり、図4は、露光開口の閉鎖状態を示した平面図である。
最初に構成を説明するが、本実施例においては、モータや羽根部材を取り付けていた従来の地板を設けることなく、二つのモータの軸受け部材を組み合わせて兼用させるようにしている。そこで先ず、図1及び図2に示した左側のモータを第1モータと称し、右側のモータを第2モータと称して、それらの構成から説明することにするが、これらのモータは、一般的には、ムービングマグネット型モータなどと称されている電流制御式のモータであって、固定子コイルに対する通電方向に対応して、永久磁石製の回転子が、所定の角度範囲内でだけ往復回転するモータである。また、この種のモータの場合にも、種々のタイプの構成が知られているが、本実施例に用いられている二つのモータは、特許文献1に記載されているような、最もよく知られているタイプに属するものである。
第1モータの回転子1は、図3から分かるように、略平板状をしている第1固定子枠2と、コップを伏せたような形状をしている第2固定子枠3とで軸受けされており、コイル4は、それらの固定子枠2,3の軸受け部を囲むようにして巻回され、その外側に、円筒形のヨーク5が嵌装されている。そして、回転子1は、径方向に2極に着磁された円筒形の永久磁石1aを有しているが、回転軸1bと出力ピン1cは、合成樹脂によるアウトサート加工によって永久磁石1aと一体に成形されている。
尚、本実施例の場合は、回転軸1bや出力ピン1cを合成樹脂製としているが、それらも含めて回転子1全体を永久磁石製としたものも知られており、本発明の回転子には、そのような構成のものも含まれる。また、本実施例では、回転軸1bの二つの軸部を二つの固定子枠2,3の孔に各々嵌合させているが、このような軸受け構成のほかに、固定子枠2,3の方に軸部を設け、それらを回転子1に形成された孔に嵌合させるようにした構成も知られている。そのため、本発明の軸受け部は、本実施例のような孔に限定されず、そのような軸部の場合も含まれるし、また、本発明における回転軸は、本実施例のような回転軸1aを意味するものではなく、回転子1の回転中心軸を意味するものである。
上記の第1固定子枠2は、比較的厚さのある合成樹脂製であって、図2に明示されているように、回転子1の取付位置から下方へ長く伸びており、そこに円弧状をした部分開口部2aが形成されている。また、その部分開口部2aの両端部の一方ずつを形成するようにして二つの肉薄領域2b,2cが形成されているが、それらの肉薄領域2b,2cは、第1固定子枠2の背面側(図2の裏面側)の面から、第1固定子枠2の1/2の厚さとなるように形成されていて、各々に貫通した孔2d,2eが形成されている。更に、第1固定子枠2には、回転子1の近傍位置に、上記の出力ピン1cを貫通させるための窓部2fが形成されており、背面側には、軸2gを立設している。また、図3に示すように、第1固定子枠2には、第2固定子枠3に設けられた位置決め用のピン3aを嵌合させるための貫通していない孔2hも形成されている。
上記の第2固定子枠3は合成樹脂製であって、回転子1の回転軸1bと平行に、細長い四つの長溝を有しており、それらの長溝に、4本の磁性体棒6を個別に埋設している。この磁性体棒6は、鉄ピンとも称されるものであって、永久磁石1aの周面に対向するように配置されており、コイル4に対する非通電時において、永久磁石1aとの間に作用する吸引力によって、回転子1の停止位置を安定させるためのものであるが、そのような働きをすることができる理由は、特許文献1などによって周知であるため、詳細な説明は省略する。
次に、本実施例における第2モータの構成を説明するが、この第2モータは、第1固定子枠7の一部の形状を除いて、第1モータの構成とまったく同じである。そのため、第1固定子枠7以外の部材部位には、第1モータで用いられている符号を採用し、それらについての詳しい説明を省略する。第2モータの第1固定子枠7も、第1モータの第1固定子枠2と略同じ厚さの合成樹脂製であって、図2から分かるように、回転子1の取付位置から遠い下方位置に円弧状をした部分開口部7aが形成されている。また、その部分開口部7aの両端部の一方ずつを形成するようにして二つの肉薄領域7b,7cが形成されているが、それらは、第1固定子枠7の表面側(図2の手前側)の面から、第1固定子枠7の1/2の厚さとなるように形成されていて、各々に貫通していない孔7d,7eが形成されている。
更に、第1固定子枠7には、回転子1の近傍位置に、回転子1の出力ピン1cを貫通させるための窓部7fが形成されており、背面側には、軸7gを立設している。なお、明示していないが、第1固定子枠7には、第1モータの第1固定子枠2と同様に、第2固定子枠3に設けられたピン3aを嵌合させるための貫通していない孔も形成されている。そして、第1固定子枠7が、その肉薄領域7b,7cを、第1モータの第1固定子2に形成された肉薄領域2b,2cに重ね合わせることによって、第1モータの第1固定子2と共に1枚の板状に配置されたとき、孔2d,7dの位置合わせと、孔2e,7eの位置合わせが行われ、二つの部分開口部2a,7aによって円形の撮影光路用の開口部が形成されるようになっている。尚、本実施例の場合には、両方の第1固定子枠2,7の部分開口部2a,7aによって円形の開口部を形成するようにしているが、いずれか一方の第1固定子枠を大きくし、他方を小さくすることによって、大きい方に円形の開口部を形成するようにしてあっても差し支えない。
図1は、上記のようにして、二つの第1固定子枠2,7が、それらの肉薄領域2b,2c,7b,7cを重ね合わせて、1枚の板状となっている状態を示しているが、それらの背面側には、その状態における外形と略同じ外形をしたカバー板8が配置されている。そして、ねじ9が、図1の背面側から、明示されていないカバー板8の孔と、第1モータの第1固定子枠2に形成された孔2dに挿入され、第2モータの第1固定子枠7に形成されている孔7dにねじ込まれており、また、ねじ10が、図1の背面側から、明示されていないカバー板8の孔と、第1モータの第1固定子枠2に形成された孔2eに挿入され、第2モータの第1固定子枠7に形成されている孔7eにねじ込まれることによって、二つの第1固定子枠2,7とカバー板8の三者を固定し、1枚の板状となった二つの第1固定子枠2,7とカバー板8との間に羽根室を構成している。尚、カバー板8は、合成樹脂製であって、図示していないが、羽根室を構成するために、ねじ9,10の取付部も含めて数箇所に、第1固定子枠2,7との間隔を保つための部位が形成されている。
また、このカバー板8には、円形をした撮影光路用の開口部8aが形成されているが、その直径が、上記のようにして二つの第1固定子枠2,7によって形成された撮影光路用の開口部より大きいため、露光開口は、後者の開口部によって規制されるようになっている。しかしながら、開口部8の方の直径を小さくし、それによって露光開口を規制するようにしてもよいことは言うまでもない。また、図3から分かるように、符合を付けていないが、カバー板8には、第1モータの第1固定子枠2に形成された軸2gの先端を挿入させる孔と、回転子1が回転し得るようにして出力ピン1cの先端を挿入させる長孔とが形成されており、また、図示していないが、同様にして、第2モータの第1固定子枠7に形成された軸7gの先端を挿入させる孔と、出力ピン1cの先端を挿入させる長孔も形成されいる。
上記のようにして構成された羽根室内には、絞り羽根11とシャッタ羽根12とが配置されている。それらのうち、絞り羽根11は、円形の絞り開口11aと長孔11bとを有していて、第1モータの第1固定子枠2に設けられた軸2gに対し、回転可能に取り付けられている。そして、長孔11bには、第1モータの出力ピン1cが挿入されている。また、シャッタ羽根12は、長孔12aを有していて、第2モータの第1固定子枠7に設けられた軸7gに対し、回転可能に取り付けられており、その長孔12aには、第2モータの出力ピン1cが挿入されている。
次に、本実施例の作動を説明する。図1に示された状態は、カメラの電源はオンになっているが、両方のモータのコイル4,4には通電されていない状態である。このとき、各々の回転子1,1には、それらの永久磁石1a,1aと各々の四つの磁性体棒6との間に働く吸引力によって、反時計方向へ回転する力が与えられている。そのため、絞り羽根11とシャッタ羽根12にも、各々の出力ピン1c,1cによって時計方向へ回転する力が働いているが、それらの羽根11,12が、各々の第1固定子枠2,7に形成されている図示していないストッパに接触して、この状態が維持されている。そのため、この状態においては、二つの第1固定子枠2,7の部分開口部2a,7aによって形成されている露光開口は全開となっていて、液晶表示装置によって被写体像を観察できるようになっている。
このような初期状態において、撮影に際してレリーズボタン(スイッチ)を押すと、最初に、被写体光の測光結果に基づいて、被写体光を減じて撮影するのか減じないで撮影するのかが決定される。そして、被写体光を減じないで撮影すると決定された場合には、直ちに制御回路からの電気信号によって固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出される。それによって、撮影のための露光が開始され、新たな電荷の蓄積が行われていく。そして、露光時間制御回路によって制御された所定の時間が経過すると、その終了信号によって、第2モータのコイル4に対し、正方向に電流が供給される。そのため、回転子1は、時計方向へ回転させられ、出力ピン1cによってシャッタ羽根12を反時計方向へ回転させる。シャッタ羽根12は、その回転によって露光開口を閉鎖するが、その直後には、第1固定子枠7に設けられた図示していないストッパに当接して停止させられる。図4は、その停止状態を示したものである。
図4に示された状態になると、固体撮像素子に蓄積された撮像情報が記憶装置に転送され、それが終了すると、第2モータのコイル4に対して今度は逆方向の電流が供給される。そのため、回転子1は、反時計方向へ回転させられ、出力ピン1cによってシャッタ羽根12を時計方向へ回転させる。その後、シャッタ羽根12は、その回転によって露光開口を全開にすると、その直後に、第1固定子枠2に設けられた図示していないストッパに当接して停止させられる。そして、コイル4に対する通電が断たれることによって、図1に示した初期状態になり、次の撮影に備えることになる。
次に、測光回路の測定結果によって、被写体光を減じて撮影すると決定された場合を説明する。その場合には、先ず、第1モータのコイル4に対し、正方向に電流が供給される。そのため、回転子1は、時計方向へ回転させられ、出力ピン1cによって絞り羽根11を反時計方向へ回転させる。絞り羽根11は、その回転によって露光開口に進入していくが、絞り開口11aの中心が略光軸位置に達すると、第2モータの第1固定子枠7に設けられた図示していないストッパに当接して停止させられる。そして、その直後には、上記のようにして固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、撮影のための露光が開始されるが、その後のシャッタ羽根12の往復作動は上記のようにして行われる。
また、絞り羽根11の方は、シャッタ羽根12が露光開口を閉鎖した後であれば、シャッタ羽根12が初期位置へ復帰する前であっても復帰させることができるが、その場合には、第1モータのコイル4に対して今度は逆方向の電流が供給される。そのため、第1モータの回転子1は、反時計方向へ回転させられ、出力ピン1cによって絞り羽根11を時計方向へ回転させる。そして、絞り羽根11は、その回転によって露光開口から退くと、その直後に、第1固定子枠2に設けられた図示していないストッパに当接して停止させられる。その後、相前後して二つのモータのコイル4,4に対する通電が断たれると、図1に示した初期状態に復帰したことになる。
尚、本実施例の場合には、第1モータで絞り羽根11を作動させ、第2モータでシャッタ羽根12を作動させているが、第1モータでシャッタ羽根12を作動させ、第2モータで絞り羽根11を作動させるようにしても差し支えない。また、本実施例の場合には、1枚のシャッタ羽根12を備えているだけであるが、特許文献1,2に記載されているように、シャッタ羽根を2枚構成とすることも可能であることは言うまでもない。また、必要があれば、絞り羽根11の方も、そのような2枚構成のシャッタ羽根の場合と同様に、相反する方向へ回転する2枚の羽根で構成することが可能である。そして、これらのことは、後述の実施例2の場合も同じである。
更に、本実施例は、シャッタ装置と絞り装置を一つのユニットとして構成したものであるが、絞り開口11aを覆うようにして絞り羽根11にNDフィルタ板を取り付けることによって、絞り羽根をフィルタ羽根とすることが可能でなる。そのため、そのように構成した場合には、シャッタ装置とフィルタ装置を一つのユニットに構成したことになる。そして、そのようなユニットの場合には、NDフィルタ板で覆う開口の大きさや形状は、絞り開口11aと同じである必要はない。また、本実施例におけるシャッタ羽根12を、上記のようなフィルタ羽根に置き換えたり、NDフィルタ板だけで製作されたフィルタ羽根に置き換えて、絞り装置とフィルタ装置を一つのユニットにすることも可能である。そして、これらのことは、後述の実施例2の場合にも同じことが言える。
次に、図5〜図11を用いて実施例2を説明する。尚、図5は、露光開口を全開にした初期状態を示す平面図であり、図6は、図5の要部断面図であり、図7は、二つのモータの組立工程を個々に説明するための図である。また、図8は、図7に示した二つのモータを相互に組み付けたときの平面図であり、図9は、図8に示した構成に隔壁板を組み付けたときの平面図であり、図10は、図9に示した構成に絞り羽根とシャッタ羽根とを組み付けたときの平面図である。そして、図11は、図10に示した構成において露光開口を閉鎖した状態を示した平面図である。
そこで、本実施例の構成を説明するが、本実施例の場合も、二つのモータの軸受け部材を1枚の板状に組み合わせることによって、従来の地板を備えなくてよいようにしている。そのため、本実施例の場合にも、図5において左側のモータを第1モータと称し、右側のモータを第2モータと称して、それらの構成を、主に図6〜図8を用いて説明する。また、本実施例に採用されている二つのモータも、構成上に差異はあるが、基本的には、実施例1に採用されているモータと同じタイプのものである。そのため、重複を避けるために、実施例1で説明されていることは、省略したり簡略的に説明したりすることにする。
本実施例における第1モータの回転子13は、図6から分かるように、略平板状をしている第1固定子枠14と第2固定子枠15に軸受けされており、コイル16は、それらの固定子枠14,15の軸受け部を囲むようにして巻回され、その外側に、円筒形のヨーク17が嵌装されている。また、この回転子13は、径方向に2極に着磁された円筒形の永久磁石13aと、合成樹脂製の回転軸13bと出力ピン13cとを有しているが、実施例1における出力ピン1cが、先端部を下向きに形成されていたのに対して、本実施例の出力ピン13cは、先端部を上向きに形成されている。
第1モータの第1固定子枠14は、合成樹脂製であって、図7から分かるように、六つの肉薄領域14a,14b,14c,14d,14e,14fが形成されており、肉薄領域14aは、第1固定子枠14の表面側(図7の手前側)の面から、第1固定子枠14の約1/2の厚さとなるように形成されているが、肉薄領域14b,14c,14d,14eは、表面側の面から約1/4の厚さとなるように形成されている。そして、肉薄領域14bには貫通した孔14gが形成され、肉薄領域14cには背面側にピン14hが設けられている。また、肉薄領域14fは、図6から分かるように、回転子1を回転可能とするために形成されたものであるが、このような肉薄領域14fを設けることなく、実施例1における窓部2f,7fのように貫通した窓部としても構わない。そのようにすれば、第1固定子枠14を本実施例の場合よりも若干薄くすることが可能になる。更に、第1固定子枠14の表面側には、軸14iと、ストッパ用のピン14j,14kと、位置決め用の貫通していない孔14mが形成されている。
第1モータの第2固定子枠15は、合成樹脂製であって、実施例1における第2固定子枠3と全く同じ形状をしている。即ち、図7の単体図からも分かるように、回転子1の回転軸1bと平行に、細長い四つの長溝15aを有しており、図7の組立図に示すように、それらの長溝15aには、4本の磁性体棒18が個別に埋設されるようになっている。また、図6から分かるように、第1固定子枠14の孔14mに嵌合させる位置決め用のピン15bも有している。
次に、本実施例における第2モータの構成を説明するが、この第2モータは、第1固定子枠19の一部の形状を除いて、第1モータの構成とまったく同じである。そのため、第1固定子枠19以外の部材部位には、第1モータで用いられている符号を採用し、それらについての詳しい説明を省略する。第2モータの第1固定子枠19も、第1モータの第1固定子枠14と略同じ厚さの合成樹脂製であって、図7に示すように、六つの肉薄領域19a,19b,19c,19d,19e,19fが形成されており、肉薄領域19aは、第2固定子枠19の背面側(図7の裏面側)の面から、第1固定子枠19の約1/2の厚さとなるように形成されているが、肉薄領域19b,19c,19d,19eは、表面側の面から約3/4の厚さとなるように形成されている。そして、肉薄領域19cには貫通した孔19gが形成され、肉薄領域19bには表面側にピン19hが設けられている。また、肉薄領域19fは、第1モータにおける第1固定子枠14の肉薄領域14fと同等のものである。更に、第1固定子枠19の表面側には、軸19iと、ストッパ用のピン19j,19kと、位置決め用の貫通していない孔19mが形成されているが、孔19mは、第1固定子枠14の孔14mと同等のものである。そして更に、第1固定子枠19には、ねじ孔を有する二つの軸19n,19rが形成されている。
ここで、第1モータの第1固定子枠14の一部を、第2モータの第1固定子枠19の一部に重ね合わせることによって、二つの第1固定子枠14,19を、図8に示すような1枚の板状に組み付ける場合を説明しておく。その場合は、第1モータの第1固定子枠14のピン14hを第2モータの第1固定子枠19の孔19gに嵌合させ、第2モータの第1固定子枠19のピン19hを第1モータの第1固定子枠14の孔14gに嵌合させればよい。それによって、肉薄領域14aと肉薄領域19aが重なり、肉薄領域14bと肉薄領域19bが重なり、肉薄領域14cと肉薄領域19cが重なり、肉薄領域14dと肉薄領域19dが重なり、肉薄領域14eと肉薄領域19eが重なることによって、1枚の板状となる。
次に、二つのモータ以外の構成を説明する。本実施例の場合には、図8に示された二つのモータの組立体に対して、図9に示されているように、隔壁板20が装着される。この隔壁板20が何故配置されているかについては後述するとして、ここでは、その形状についてだけ説明をしておく。先ず、隔壁板20には、符号を付けていないが、上記の四つの軸14i,19i,19n,19rを挿通させる孔が形成されており、それらのほかに、孔20a,20b,20c,20dと、円弧状の長孔20e,20fと、撮影光路用の開口部20gとが形成されている。そして、孔20aには、ヨーク17などと共に第1モータの第2固定子枠15が挿通され、また上記のピン14jも挿通されている。また、孔20bには、ヨーク17などと共に第2モータの第2固定子枠15と、ピン19jとが挿通されている。また、孔20c,20dには、上記のピン14k,19kが挿通され、長孔20eには第1モータの出力ピン13cが挿通され、長孔20fには第2モータの出力ピン13cが挿通されている。そして、本実施例の場合には、円形の開口部20gが露光開口を規制するようになっている。
このようにして隔壁板20を取り付けた後、図10に示すように、軸14iには絞り羽根21が回転可能に取り付けられ、軸19iにはシャッタ羽根22が回転可能に取り付けられる。そのうち、絞り羽根21は、上記の開口部20gよりも直径の小さな絞り開口21aと長孔21bとを有していて、その長孔21bには、第1モータの出力ピン13cが嵌合している。また、シャッタ羽根22は長孔22aを有していて、そこに第2モータの出力ピン13cが嵌合している。
上記のようにして絞り羽根21とシャッタ羽根22を取り付けた後、図5に示されているように、二つのねじ24、25を、上記の軸19n,19rのねじ孔にねじ込むことによって、合成樹脂製のカバー板23が取り付けられている。そのため、カバー板23には、そのための孔が形成されていていると共に、それらの孔位置の近傍やその他の複数箇所には、隔壁板20との間に羽根室を構成するために、隔壁板20と間隔を維持する部位が設けられている。また、符号を付けていないが、カバー板23には、上記の軸14i,19iを嵌合させる孔が形成されており、それらのほかに、四角い孔23a,23bと、円弧状の長孔23c,23dと、撮影光路用の開口部23eとが形成されている。そして、孔23a,23bには、上記のピン14k,19kが挿通され、長孔23cには第1モータの出力ピン13cが挿通され、長孔23dには第2モータの出力ピン13cが挿通されている。尚、本実施例の場合は、上記の開口部20gが露光開口を規制しているが、開口部20gと開口部23eの大きさを入れ替えることによって、開口部23eが露光開口を規制するようにしてもよいことは言うまでもない。
本実施例は、以上のような構成をしているが、その作動は、上記の実施例1の場合と全く同じである。そのため、被写体光を減じないで撮影を行う場合におけるシャッタ羽根22の閉鎖状態を、図11に、カバー板23を取り除いた状態にして示しておくだけにし、本実施例の作動説明は省略する。また、図10と図11とから、絞り羽根21は、ストッパ用のピン14j,14kに当接し、シャッタ羽根22は、ストッパ用のピン19j,19kに当接することが理解できるはずである。
ここで、その作動とも関係があるので、本実施例が、隔壁板20を備えている理由を説明しておく。一般に、絞り羽根21やシャッタ羽根22は、可能な限り薄く製作されるものであるため、作動中に撓みや傾きの生じることが知られている。そこで、仮に、本実施例において、隔壁板20を備えていないと仮定すると、シャッタ羽根22よりも背面側に配置された絞り羽根21は、初期位置への復帰作動に際して、上記のような撓みや傾きによって、二つの第1固定子枠14,19のいずれかの端面(図8に示されているような二つの第1固定子枠14,19によって形成されたかまぼこ形状の縁の端面)に衝突してしまうことになる。
そこで、そのような衝突が生じないようにするためには、上記のかまぼこ形状を小さくしたり、実施例1のような小さな円形の開口部を形成するだけにすればよいことになる。ところが、本実施例の場合は、そのような対策を講じることができない。それは、本実施例が、絞り羽根21やシャッタ羽根22を撮影レンズに近接させて配置させたいという要求に応えるためのものだからである。即ち、上記の対策を講じてしまうと、第1固定子枠14,19の厚さが厚いために、そのような要求に応えられなくなるということである。従って、そのような要求のない場合には、隔壁板20を設けずに、実施例1のように構成してもよいことになる。
ところが、このような要求に対して、それならば、第1固定子枠14,19のいずれか一方と、カバー板23とを、一部品として製作してしまえばよいという考えもある。確かに、低コストでそのように製作することができるのであれば、そのようにすることが好ましい。しかしながら、本実施例は、携帯電話に内蔵することが可能であることを前提にしているため、各構成部品は極めて小さいものである。そのため、図6に示すように、厚さに大きな差がある二つの部品を一つの部品として製作する場合において、所定の領域だけを極端に薄くするということは、極めて高度な成型加工技術を要することになる。そのため、本実施例の場合は、部品点数は多くなるが、全体としての低コスト化を図る目的で、隔壁板20を設けるようにしている。尚、本実施例の場合には、この隔壁板20を合成樹脂製にしているが、コストの点で許されるなら、金属製にしてもよいことは言うまでもない。
上記の各実施例においては、肉薄部を設けた二つの第1固定子枠を相互に取り付けて一つの羽根駆動装置を構成するようにしたが、肉薄部設けた第3モータを、実施例におけるいずれかの第1固定子枠に連設し、三つの装置を一つの羽根駆動装置として構成するようにしても差し支えない。
実施例1の初期状態を示した平面図である。
実施例1における二つのモータを分離させて示した平面図である。
図1の要部断面図である。
シャッタ羽根の閉鎖状態を示した平面図である。
実施例2の初期状態を示した平面図である。
図5の要部断面図である。
実施例2における二つのモータの組立工程の説明図である。
図7に示した二つのモータを相互に組み付けたときの平面図である。
図8に示した構成に隔壁板を組み付けたときの平面図である。
図9に示した構成に絞り羽根とシャッタ羽根とを組み付けたときの平面図である。
図10に示した構成においてシャッタ羽根の閉鎖状態を示した平面図である。
符号の説明
1,13 回転子
1a,13a 永久磁石
1b,13b 回転軸
1c,13c 出力ピン
2,7,14,19 第1固定子枠
2a,7a 部分開口部
2b,2c,14a〜14f,19a〜19f 肉薄領域
2d,2e,2h,7d,7e,14g,14m,19g,20a〜20d,23a,
23b 孔
2f,7f 窓部
2g,7g,14i,19i,19n,19r 軸
3,15 第2固定子枠
3a,14h,14j,14k,15b,19h,19j,19k,19m ピン
4,16 コイル
5,17 ヨーク
6,18 磁性体棒
8,23 カバー板
8a,20g,23e 開口部
9,10,24,25 ねじ
11,21 絞り羽根
11a,21a 絞り開口
11b,12a,20e,20f,21b,22a,23c,23d 長孔
12,22 シャッタ羽根
15a 長溝
20 隔壁板