JP4737791B2 - 艶消し電着塗料およびその電着塗装方法 - Google Patents

艶消し電着塗料およびその電着塗装方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、艶消し電着塗料およびその電着塗装方法に関する。詳しくは、(A)特定のアクリル樹脂、および(B)全アルキルエーテル基中イソブチルエーテル基が50%〜70%であるメラミン樹脂を含有し、特にアルミニウム材の塗装に好適なアニオン型艶消し電着塗料およびその電着塗装方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、陽極酸化処理したアルミニウム材は軽量でかつ強度が強く、さらには耐食性に優れることから、ビルや住宅の窓枠、ドアー、エクステリア等の建材関係に広く使用されている。アルミニウム材の塗装には、ワンコートで仕上がり性の良いアニオン型電着塗料が一般的に使用されている。そのアニオン型電着塗料としては、カルボキシル基および水酸基を含有する水性アクリル樹脂にメラミン樹脂架橋剤を配合し、水分散してなるメラミン硬化型電着塗料が代表的であり、現在では艶消しタイプの電着塗装が主流となっている。
【0003】
メラミン樹脂については、ホルムアルデヒドを用いてアミノ基をメチロール化し、さらにメチロール基をアルコールでエーテル化した、アルキルエーテル化メラミン樹脂が一般的に用いられる。アルコールとしては、メチルアルコール、n−ブチルアルコールが代表的である。
【0004】
しかしながら、それぞれのアルコールにおいて次のような欠点を有している。すなわち、メチルエーテル化メラミン樹脂は、アクリル樹脂との相溶性が良すぎるため、焼き付けに際してメラミン樹脂の相分離がほとんど起こらず、そのため塗膜の平滑感、肉持ち感が乏しいという問題点がある。
またメチルエーテル化メラミン樹脂は水溶性であるため、時間が経過すると、水分散粒子中から一部メラミン樹脂が水中に溶け出し、被塗物に析出せずに塗料浴液中に滞留するため、浴液組成が経時的に変化し、安定した塗膜品質が得られにくいという問題点がある。
【0005】
一方、n−ブチルエーテル化メラミン樹脂は油溶性であるため、浴液への溶け出し問題はないが、カルボキシル基および水酸基を含有する親水性のアクリル樹脂との相溶性が不充分であり、安定な水分散液が得られにくい。またメラミン樹脂との相溶性を向上させるためにアクリル樹脂の親水性を低下させると、アクリル樹脂自身の水分散安定性が損なわれるという問題点がある。さらに分散安定性の良好な塗料が得られた場合でも、メラミン樹脂の相分離による塗膜の乳白化、不透明感が大きくなり、いわゆる白ボケ感が増大し商品価値が低下するという問題点がある。またn−ブチルエーテル基はメチルエーテル基と比較して反応性が低く、充分な性能を得るためにはより高温で焼き付ける必要がある。
【0006】
このため現在一般的に使用されているメラミン樹脂は、メチルエーテル基およびn−ブチルエーテル基を共有する、いわゆる混合エーテル型のメラミン樹脂である。混合エーテル型メラミン樹脂においては、水溶性と油溶性バランスがとれ、上記の問題点はある程度改良されるものの、それぞれの分子においてメチルエーテル化とn−ブチルエーテル化の比率が一定であるわけではなく、メチルエーテル基の多いもの、n−ブチルエーテル基の多いもの(メチルエーテル基あるいはn−ブチルエーテル基単独のものも存在)が混在しているため、上記の問題点が完全に解消されているわけではない。従って安定した塗膜品質を得るためには、厳密な塗料浴液管理が必要である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は水分散性が良好で、塗料浴液の組成的な経時変化が少なく、簡単な浴液管理で安定した塗膜品質が得られ、かつ低温焼き付けが可能な、新しい艶消し電着塗料およびその電着塗装方法の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはイソブチルエーテル基含有のメラミン樹脂に着目し、鋭意研究を重ねて、上記の問題点を解決した。すなわち本発明は、(A)(a)α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体、(b)水酸基含有α,β−エチレン性不飽和単量体、(c)架橋官能基として、側鎖にβ−メチル置換グリシジル基、アセトアセチル基、あるいはアルコキシシリル基から選ばれる官能基を有するα,β−エチレン性不飽和単量体を少なくとも1種類以上、ならびに(d)その他のα,β−エチレン性不飽和単量体を共重合したアクリル樹脂、および(B)全アルキルエーテル基中イソブチルエーテル基が50%〜70%であるメラミン樹脂を含有するアニオン型艶消し電着塗料およびその電着塗装方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の艶消し電着塗料およびその電着塗装方法について詳細に説明する。
【0010】
〔(A)アクリル樹脂〕
上記〔A〕中の成分(a)α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、アクリル樹脂に水分散性、電気泳動性を付与するものである。例示すればアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等が挙げられる。これらの1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0011】
成分(a)の使用量は、アクリル樹脂中の酸価が好ましくは10〜150、より好ましくは20〜100となるような範囲で使用される。アクリル樹脂の酸価が10未満では充分な水分散安定性が得られにくく、また150を超えると電気泳動性、析出性が低下し、塗膜の耐水性、耐アルカリ性が低下する。
【0012】
また成分(b)水酸基含有α,β−エチレン性不飽和単量体は、塗膜の焼き付けに際してメラミン樹脂と反応して硬化性を付与するものである。例示すると2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等および、これらのラクトン変性物が挙げられ、1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0013】
このような成分(b)はアクリル樹脂中の水酸基価が好ましくは20〜200、より好ましくは40〜160となるような範囲で使用される。水酸基価が20未満では焼き付け時のフロー性が確保されにくい。また200を超えると塗膜が脆化し、耐水性が低下して充分な性能が得られにくい。また塗料の安定性が低下し、電着後の塗膜の水洗性も低下する。
【0014】
また成分(c)架橋官能基を有するα,β−エチレン性不飽和単量体は、アクリル樹脂中に安定的に不溶性のミクロゲルを生成させ、艶消し性能を付与するものである。例示するとアセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、β−メチル置換グリシジルアクリレート、β−メチル置換グリシジルメタクリレート等が挙げられ、後述する方法で水分散化を行った後、分散粒子内にミクロゲルを生成させ光沢の低減化を図る。
【0015】
さらにアクリル樹脂の骨格を形成する成分である(d)その他のα,β−エチレン性不飽和単量体については、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル、あるいはその他のビニル単量体およびアミド系単量体を用いることができる。具体的な化合物を例示すると、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ヘプチルアクリレート、ヘプチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート等のアクリル酸またはメタクリル酸のエステル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニル単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、メチロールメタクリルアミド、メトキシメチルアクリルアミド、n−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド等のアミド系単量体が挙げられる。これらは1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0016】
アクリル樹脂の好ましい重量平均分子量は10,000〜100,000である。重量平均分子量が10,000未満の場合は、塗膜耐久性が充分に得られず、また100,000を超える場合は、水分散性が低下し、塗料の取り扱い性が不良になる。特に艶消し性と塗料安定性の点で、重量平均分子量が20,000〜70,000であるのが好ましい。
【0017】
上述したようなアクリル樹脂は、前記の各単量体(a)、(b)、(c)および(d)を溶液重合、非水性分散重合、塊状重合、エマルジョン重合、懸濁重合等の公知の方法で重合することによって得られるが、特に溶液重合が好ましく、反応温度としては通常40〜170℃が選ばれる。
【0018】
反応溶剤としては、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の親水性溶剤を用るのが好ましい。また、重合開始剤としては、有機過酸化物、アゾ系化合物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、公知のものを用いることができる。
【0019】
得られたアクリル樹脂を水分散化するために、樹脂中のカルボキシル基の少なくとも一部を塩基性物質、例えば有機アミンあるいは無機塩基で中和する。かかる塩基性物質としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン等のアルキルアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等のアルカノールアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアルキレンポリアミン、アンモニア、エチレンイミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。このような塩基性物質による中和率は30〜120%が適当であるが、特に50〜100%であると水分散性が良好で、光沢ムラを生じないので好ましい。
【0020】
〔(B)メラミン樹脂〕
本発明に使用するメラミン樹脂は全アルキルエーテル基中イソブチルエーテル基(イソブチル化度)が50〜70%の範囲にあるメラミン樹脂である。イソブチルエーテル基はn−ブチルエーテル基と比べて比較的親水性であるため、「従来の技術」の項で述べた、n−ブチルエーテル基を有するメラミン樹脂の問題点である、相溶性、分散安定性、さらには塗膜の白ボケ感等の課題を解決することができる。すなわち本発明のアクリル樹脂と本発明のメラミン樹脂は相溶性が良好であり、そのため安定な水分散液が得られ、またメラミン樹脂の相分離による塗膜の乳白化が少なく透明感も大きい。
【0021】
さらにイソブチルエーテル基はn−ブチルエーテル基と比較して水酸基との反応性が高く、より低温で焼き付けが可能である。具体的には水酸基含有の本発明のアクリル樹脂と組み合わせて、170℃以下の温度で焼き付けて充分な塗膜性能が得られる。n−ブチルエーテル基においては、170℃以下で焼き付けて充分な性能を得ることは困難である。
【0022】
本発明のメラミン樹脂は全アルキルエーテル基の50%未満の範囲で、イソブチルエーテル基以外のアルキルエーテル基を含有することができるが、このものについてはメチルエーテル基が好ましい。メラミン樹脂の中で、水溶性が大きく、そのため時間が経過すると共に水中に溶け出し、被塗物に析出せずに塗料浴液中に滞留する成分は、1分子中のメチルエーテル基数が6個のヘキサメトキシメチロールメラミンが中心である。本発明のメラミン樹脂においては、イソブチルエーテル基が全アルキルエーテル基の50%以上であるため、ヘキサメトキシメチロールメラミンの含有量は3%以下に低減化され、このものの浴液中への滞留量は極わずかである。このため浴液の長期ランニング試験においても、組成が安定しており浴液管理も容易である。またメチルエーテル基については、イソブチルエーテル基と同様に高反応性を有しており、低温焼き付け性が損なわれないので好ましい。
【0023】
本発明のメラミン樹脂の具体的な製造方法としては、所定量のメラミン、ホルムアルデヒド、イソブチルアルコールを仕込んで昇温し、メチロール化を行った後に、酸触媒存在下イソブチルアルコールによりアルキルエーテル化反応を行う。また他の方法としては、メチルアルコールを使用して上記と同様にアルキルエーテル化を行い、必要に応じて脱メチルアルコールを行った後に、イソブチルアルコールを仕込み、酸触媒存在下エーテル交換反応を行う。いずれの場合も最終的には、反応系を中和し必要に応じ所定の濃度まで常圧または減圧下にて脱アルコールを行う。製品を例示すれば三井サイテック(株)製のマイコート548、三井化学(株)製のユーバン62、ユーバン360、ユーバン165等があり、特にマイコート548が好ましい。
【0024】
本発明のメラミン樹脂は、その官能基の種類として、置換アルキルエーテル基の50%〜70%がイソブチルエーテル基であり、その他の官能基として、メチルエーテル基はもとより、イミノ基、イミノメチロール基、メチロール基等の置換基が存在しても問題はない。
【0025】
本発明のメラミン樹脂を使用すると、水分散性が良好で、浴液組成の経時変化も少なく、塗装作業性、特に水洗性に優れ、また塗膜品質においても、平滑性、肉持ち感、ダイスマーク隠蔽性、非乳白性に優れた、艶消し電着塗料を製造することができる。本発明のメラミン樹脂の使用量は、重量比でアクリル樹脂100に対し40〜120が好ましく、さらには50〜100がより好ましい。この範囲より少ない場合は、焼き付け過程中に塗膜表面に分離するメラミン樹脂がほとんどなく、充分なフロー性が確保されず、塗膜肌が荒く、平滑感、肉持ち感のある塗膜が得られにくい。またダイスマーク、前処理ムラ隠蔽性も低下する。逆に多い場合は、アクリル樹脂との親和性が不充分になり、水分散液中でメラミン樹脂がアクリル樹脂から一部分離し、水分散液の安定性不良、分散粒径の不均一化、また電着後の水洗性不良、撥水現象、塗膜の光沢ムラ、乳白化等の問題点が生じやすい。
【0026】
また要求される性能、作業性、コスト等により、必要ならば、例えば、キシレン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等を併用することが可能である。この場合メラミン樹脂と同様な方法で使用される。本発明の技術は、さらに顔料と併用して着色タイプの電着塗料にも適用可能である。
【0027】
〔電着塗装方法〕
本発明により得られた電着塗料は、必要に応じて脱イオン水、あるいは親水性溶剤を一部含有する脱イオン水で希釈し、電着塗装に供せられる。本発明における艶消し電着塗料を実施する場合の、塗料浴の固形分濃度は4〜20重量%が適当である。4重量%未満の場合には、必要な塗膜厚を得るのに長時間を要し、20重量%を超えると浴液の状態が不安定となり、塗装系外に持ち出される塗料量も多く、問題である。
【0028】
塗装方法については、被塗装物を陽極として電着塗装を行うが、塗装電圧は30〜350V、好ましくは50〜300Vであり、通電時間は0.5〜7分、好ましくは1〜5分である。電圧が高いほど通電時間は短く、逆に電圧が低いほど通電時間は長くなる。塗装電圧は通電と同時に設定電圧をかける方法、あるいは徐々に設定電圧まで上げていく方法のどちらでもかまわない。塗装された被塗装物は必要により水洗し、次いで150〜200℃で15〜60分間加熱し最終塗膜を得る。塗膜厚は5〜30μmが好ましい。
【0029】
本発明の電着塗装方法が適用される被塗装物は、導電性を有するものであれば特に限定されないが、アルミニウムあるいはアルミニウム合金を用いた場合は、平滑性等の性能にも優れた均一な艶消し塗膜が得られ、また機械特性、耐溶剤性、耐薬品性、耐候性、作業性等に優れた塗膜を得ることができる。電着塗装については、被塗装物を陽極として、所定の電圧を負荷することにより電着析出膜を得て、必要により常法で洗浄した後、焼き付け工程を経て、低光沢性、機械特性、耐溶剤性、耐薬品性、耐候性、作業性等に優れた塗膜を得ることができる。
【0030】
【実施例】
以下、具体的な実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。尚、表示単位の部は特別な記載のない場合は重量部を表している。
【0031】
〔アクリル樹脂の合成〕
合成例1〜4(樹脂液A1〜4の合成)
撹拌装置、温度計、モノマー滴下装置、還流冷却装置を有する反応装置を準備する。
表1に示す合成例1の配合に従って、(1)〜(2)を反応装置に仕込み、撹拌下に還流温度まで上昇させ、(3)〜(12)を予め均一に混合した後、3時間かけて滴下した。温度は90℃を維持した。滴下終了後、1.5時間後に(13)を加えて、更に90℃で1.5時間反応を継続して、樹脂固形分65%の透明で粘稠な樹脂液A1を得た。得られた樹脂液A1の特性値も表1に示した。
【0032】
【表1】
Figure 0004737791
【0033】
表2に示す合成例2〜4の配合に従って、合成例1と同様の条件でアクリル樹脂を合成し、樹脂固形分65%の透明で粘稠な樹脂液A2〜4を得た。得られた樹脂液A2〜4の特性値も表2に示した。
【0034】
【表2】
Figure 0004737791
【0035】
〔メラミン樹脂の製造〕
合成例5(メラミンM2、イソブチル化度70%)
撹拌装置、温度計、還流冷却装置および窒素導入管を備えた反応装置に表3の配合に示した(1)〜(3)を仕込み、減圧下60℃でメチルアルコールを除去しながら、5時間エーテル交換反応を行った。その後、1/10N−水酸化ナトリウム水溶液で中和し、減圧下に残存したイソブチルアルコールを留去して、イソブチルエーテル基70%の混合エーテル化メラミン樹脂(メラミンM2)を得た。得られた樹脂は固形分が80%であった。
【0036】
【表3】
Figure 0004737791
【0037】
合成例6(メラミンM3、イソブチル化度100%)
撹拌装置、温度計、還流冷却装置および窒素導入管を備えた反応装置に表4の配合に示した(1)〜(3)を仕込み、還流温度まで昇温した。還流温度で1時間メチロール化反応を行った後、(4)を加え、還流状態にてアルキルエーテル化反応を3時間行った。その後、1/10N−水酸化ナトリウム水溶液で中和し、減圧下にイソブチルアルコールを留去して、イソブチルエーテル化メラミン樹脂(メラミンM3)を得た。得られた樹脂は固形分が80%であった。
【0038】
【表4】
Figure 0004737791
【0039】
〔水分散樹脂液の製造〕
撹拌装置、温度計、還流冷却装置を有する反応装置を準備し、反応装置に表5〜表6に示すそれぞれの製造例1〜7の配合量に従って(1)から(9)に示す成分を仕込み、60℃で1時間撹拌混合した。このものを、あらかじめ準備しておいた(10)と(11)の混合液に徐々に添加して、水分散樹脂液を得た。この分散樹脂液に製造例1〜2および5の場合には(12)のホルマリンを添加する。その後、表5〜表6に示す条件で保温して、ミクロゲル化反応を行い、最後に(13)を加えて固形分30%に調整し、分散樹脂液1〜7を得た。
【0040】
【表5】
Figure 0004737791
【0041】
【表6】
Figure 0004737791
【0042】
〔電着塗料の調製および電着塗装〕
実施例1〜4と比較例1〜3
製造例1〜7で得られた分散樹脂液を使用して、表7〜表8に示す配合で電着浴液を得た。この電着浴液を塩化ビニル製の槽に入れ、陰極をSUS304鋼板とし、6063Sアルミ合金板にアルマイト処理(アルマイト膜厚=9μm)を施し、更に黒色に電解着色した後に、常法により湯洗されたアルミ材を陽極(被塗物)として電着塗装を行った。
【0043】
【表7】
Figure 0004737791
【0044】
【表8】
Figure 0004737791
【0045】
〔塗膜性能評価〕
電着塗装の具体的条件は浴温22℃、極間距離12cm、極比(+/−)2/1として、常法により、130Vで塗膜厚が10μmとなる様に通電し、電着終了後洗浄し、引き続いて165℃で20分間焼き付けを行った後に、塗膜性能の評価を行った。
また、実塗装ラインをランニングさせた場合の、ヘキサメトキシメチロールメラミンの蓄積量を予測する為、以下に示す浴液安定性の指標としてターンオーバーテストを行った。
これらの結果を表9〜表10に示す。まとめると、実施例1〜4は比較例1〜2(イソブチル化度が低い)に比べ、ヘキサメトキシメチロールメラミンの蓄積量が少なく、経時での光沢変化がない事が分かる。又、比較例3に示したようにn−ブチルエーテル化メラミン樹脂を用いた場合は、ヘキサメトキシメチロールメラミンの蓄積が少なく光沢の安定性は良いが、硬化不足となり、硬度、付着性、耐薬品性が不良になり、不適切である事が分かる。
【0046】
【表9】
Figure 0004737791
【0047】
【表10】
Figure 0004737791
【0048】
(注)評価方法は次の通りである。
(1)光沢値:グロスメーターで60°グロスを測定。
(2)鉛筆硬度:JIS−K−5400 破れ判定。
(3)付着性:塗膜上にカッターナイフで100個の碁盤目を作り、その上にセロテープを貼り付けた後、すばやくセロテープを引き剥がした時の付着状態を観察する。結果の数値は次のことを意味する。
100/100:剥がれなし 0/100:全部剥がれ
(4)耐アルカリ性:20℃の1%NaOHに48hr浸漬後に塗面状態を観察。
(5)耐酸性:20℃の5%硫酸に48hr浸漬後に塗面状態を観察。
Figure 0004737791
(7)水洗性:電着終了後、2%イソプロピルアルコール水溶液に3分間浸漬し、引き上げて3分間放置しながら外観を観察する。さらに焼き付けを行って塗膜外観を観察する。この水洗性が悪いと、塗装作業性が落ちることになる。
○:引き上げ放置中に撥水現象が見られず、また焼付塗膜に筋状の光沢ムラ等も見られない。
×:引き上げ放置中に撥水現象が見られたり、あるいは焼付塗膜に筋状の光沢ムラ等が見られたりする。
(8)浴液安定性(ターンオーバーテスト)
一般的な電着塗装ラインでは、塗装による塗料固形分の持ち出しに対し、それを補い、常に電着浴液中の塗料固形分重量を一定に保つ様に新しい塗料を補給している。これにより最初に作成した電着浴液は徐々に補給された塗料で置換されていく。このことをターンオーバーと呼び、電着浴液中の塗料固形分重量に対して補給された塗料固形分重量の比率を、ターンオーバー数(To)と呼ぶ。又、このときの置換率は1−exp(−To)で表される。
上記のターンオーバーをラボスケールで行った。
[テスト方法]
▲1▼電着塗装を繰り返し、0.1ターンオーバー相当の塗料固形分が持ち出される毎に、その固形分重量を補う様に、水分散樹脂液を補給する。
▲2▼同時に中和剤量と溶剤量を測定する。中和剤は塗膜には含まれず塗料中に蓄積してくるため必要に応じてカチオン交換処理を行い過剰分を除去する。
▲3▼また、溶剤は持ち出しと蒸発により減少していく為、添加して補う。
▲4▼上記の操作を2.4ターンオーバー(置換率90%)まで繰り返した後に、塗膜の光沢値測定と浴液中のヘキサメトキシメチロールメラミン量の測定(高速液体クロマトグラフィーで測定)を行う。
【0049】
【発明の効果】
本発明の艶消し電着塗料およびその電着塗装方法を適用することにより、浴液安定性と塗装作業性に秀いで、平滑性、ダイスマーク隠蔽性、非乳白性などに優れた塗膜を形成することが可能となり、特にアルミニウム建材向けの塗装に好適である。

Claims (3)

  1. (A)(a)α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体、(b)水酸基含有α,β−エチレン性不飽和単量体、(c)架橋官能基として、側鎖にβ-メチル置換グリシジル基、アセトアセチル基、あるいはアルコキシシリル基から選ばれる官能基を有するα,β−エチレン性不飽和単量体を少なくとも1種類以上、ならびに(d)その他のα,β−エチレン性不飽和単量体を共重合したアクリル樹脂、および(B)全アルキルエーテル基中イソブチルエーテル基が50%〜70%であるメラミン樹脂を含有するアニオン型艶消し電着塗料。
  2. アクリル樹脂(A)が酸価10〜150および水酸基価20〜200である請求項1に記載のアニオン型艶消し電着塗料。
  3. 請求項1あるいは請求項2に記載のアニオン型艶消し電着塗料を使用する電着塗装方法。
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