JP4737159B2 - 内燃機関の排気浄化装置及び粒子状物質排出量推定方法 - Google Patents
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Description
しかし、可変容量ターボチャージャの設けられた内燃機関においては、可変容量ターボチャージャの駆動を通じて過給圧が制御されることに関係して、推定されるPM堆積量が不正確になるおそれのあることが確認された。これは、内燃機関のPM排出量に関しては、吸入空気量の多少から影響を受けるだけでなく、過給圧の大小に応じて内燃機関の吸入空気の酸素密度が変化することからも影響を受けるためと推測される。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、可変容量ターボチャージャの設けられた内燃機関の排気浄化装置であって、同機関の排気系に設けられて排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、機関定常運転時の粒子状物質の排出量である基準排出量を同機関の吸入空気量における機関定常時の値に対する偏差に基づき補正して内燃機関からの粒子状物質の排出量とするPM排出量推定手段とを備え、その排出量を用いて求められる前記フィルタでの粒子状物質の堆積量に基づき同フィルタに堆積した前記粒子状物質を除去するためのフィルタ再生制御を実施する内燃機関の排気浄化装置において、前記可変容量ターボチャージャは、機関運転状態に基づき定められる目標過給圧に向けて内燃機関の過給圧を変化させるよう駆動制御されるものであり、前記PM排出量推定手段は、内燃機関の過給圧における機関定常時の値に対する比率を表す過給圧偏差比を求め、その過給圧偏差比が大となるほど前記基準排出量を減量側に大きく補正し、前記過給圧偏差比が小となるほど前記基準排出量を増量側に大きく補正するものとした。
具体的には、機関過渡運転時における過給圧がそのときの機関運転状態で定常運転を行った場合の値よりも高いときには、過給圧が高くなって上記過給圧偏差比が大となるほど、機関定常運転時のPM排出量として算出される基準排出量が減量側に大きく補正される。過給圧が上述したように高くなるということは、内燃機関の吸入空気における酸素密度が大となって同機関のPM排出量が少なくなることを意味する。従って、上述した基準排出量の減量補正を通じて、機関過渡運転時の過給圧の影響を受けて基準排出量が不適切な値となることは的確に抑制される。
具体的には、機関過渡運転時における吸入空気量がそのときの機関運転状態で定常運転を行った場合の値よりも多いときには、吸入空気量が多くなって上記吸入空気偏差比が大となるほど、機関定常運転時のPM排出量として算出される基準排出量が減量側に大きく補正される。吸入空気量が上述したように多くなるということは、内燃機関の吸入空気に含まれる酸素の量が多くなって同機関のPM排出量が少なくなることを意味する。従って、上述した基準排出量の減量補正を通じて、機関過渡運転時の吸入空気量の影響を受けて基準排出量が不適切な値となることは的確に抑制される。
図1は、本実施形態の制御装置が適用される内燃機関10の構成を示している。この内燃機関10は、コモンレール方式の燃料噴射装置、及び可変容量ターボチャージャ11を備えるディーゼル機関となっており、大きくは吸気通路12、燃焼室13、及び排気通路14を備えて構成されている。
なお排気通路14の上記PMフィルタ26の上流側及び下流側には、PMフィルタ26に流入する排気の温度である入ガス温度を検出する入ガス温度センサ28、及びPMフィルタ26通過後の排気の温度である出ガス温度を検出する出ガス温度センサ29がそれぞれ配設されている。また排気通路14には、上記PMフィルタ26の排気上流側とその排気下流側との差圧を検出する差圧センサ30が配設されている。更に排気通路14の上記NOx触媒コンバータ25の排気上流側、及び上記PMフィルタ26と上記酸化触媒コンバータ27との間には、排気中の酸素濃度を検出する2つの酸素センサ31、32がそれぞれ配設されている。
[燃料噴射量制御]
内燃機関10の燃料噴射量制御に関しては、アクセル踏込量及び機関回転速度などの機関運転状態に基づき噴射量指令値を設定し、その噴射量指令値に対応した量の燃料が噴射されるようインジェクタ40を駆動することによって実現される。従って、例えば加速のための機関過渡運転時などには、その加速要求を満たすために上記噴射量指令値が増量側の値へと変更される。このように噴射量指令値が増量側の値に変更されると、それに伴い燃料噴射量が増量して機関出力が高められ、上記加速要求が満たされるようになる。
上記内燃機関10の過給圧制御では、可変容量ターボチャージャ11の可変ノズル24aを、機関運転状態に応じて設定された目標過給圧Ptに基づくフィードバック制御もしくはオープン制御を通じて動作させ、それによって内燃機関の過給圧を上記目標過給圧Ptに向けて調整することが行われる。上記目標過給圧Ptは、機関運転状態に基づき算出されるベース過給圧Pbに対し、大気圧補正項Ph1及び大気温度補正項Ph2等の大気状態に基づく環境補正項を加えた値である。すなわち、目標過給圧Ptは、次の式「Pt=Pb+Ph1+Ph2 …(1)」を用いて算出される。
上記内燃機関10の吸入空気量制御では、EGR弁36及び吸気絞り弁19を機関運転状態に応じて設定された目標吸入空気量Atに基づくフィードバック制御を通じて動作させ、それによって内燃機関の吸入空気量Arを目標吸入空気量Atに近づけることが行われる。上記目標吸入空気量Atは、機関運転状態に基づき算出されるベース吸入空気量Abに対し、大気圧補正項Ah1及び大気温度補正項Ah2等に基づく補正を加えた値である。すなわち、目標吸入空気量Atは、次の式「At=Ab+Ah1+Ah2 …(2)」を用いて算出される。
フィルタ再生制御に関しては、PMフィルタ26でのPM堆積量PMsが許容値以上になって同PMフィルタ26等での目詰まりの発生が確認されたことなど、各種条件の成立をもって開始される。フィルタ再生制御が開始されると、内燃機関の排気温度を上昇させつつ、添加弁46から排気通路14への燃料添加等によりNOx触媒コンバータ25やPMフィルタ26のNOx触媒に未燃燃料成分を供給することで、触媒床温を上記PMの燃焼に必要な値(例えば600〜700℃)まで上昇される。これにより、PMフィルタ26に堆積したPMが燃焼して除去される。そして、上記フィルタ再生制御の実行を通じて、PMフィルタ26でのPM堆積量PMsが(例えば「0」)まで減少すると、PMフィルタ26に堆積したPMの除去が完了した旨判断され、同フィルタ再生制御が終了される。
この処理では、機関負荷(噴射量指令値)及び機関回転速度に基づき基準排出量PMebaseが算出される。この基準排出量PMebaseは、標準大気状態のもとでの機関定常運転時における内燃機関10からのPMの排出量を表す値であって、機関負荷及び機関回転速度の変化に対し図3に矢印で示されるような変化傾向を有する。
この一連の処理では、まず、過給圧偏差比Pr/Pbの算出が行われる(S102)。同過給圧偏差比Pr/Pbは、内燃機関10における吸入空気の酸素密度に関係するパラメータである同機関10の実際の過給圧Prと、そのときの機関運転状態で標準大気状態のもと定常運転を行った場合の過給圧であるベース過給圧Pbとに基づき、過給圧Prのベース過給圧Pbに対する比率として算出される値である。そして、大気状態が基準大気状態と異なったり機関過渡運転が行われたりして過給圧Prがベース過給圧Pbからずれた状態では、過給圧Prがベース過給圧Pbよりも大きくなるほど過給圧偏差比Pr/Pbが大きくなってゆき、過給圧Prがベース過給圧Pbよりも小さくなるほど過給圧偏差比Pr/Pbが小さくなってゆく。
この処理では、吸気通路12における吸気絞り弁19の下流側の部分を通過するガスの温度(以下、インマニ内ガス温度という)に基づき、第2補正係数K2が算出される。このように算出された第2補正係数K2は、インマニ内ガス温度の変化に対して図5に矢印で示されるような変化傾向を有する。
基準大気状態のもとでの機関過渡運転時において、過給圧Pr及び吸入空気量Arがそのときの機関運転状態で定常運転を行った場合の値と同じであれば、基準大気状態のもとでの機関定常運転時のPM排出量として算出される基準排出量PMebaseが内燃機関10からのPMの排出量として不適切な値になることはない。なお、基準大気状態のもとで機関定常運転を行った場合の過給圧及び吸入空気量の値とは、それぞれベース過給圧Pb及びベース吸入空気量Abと等しい値のことを意味する。
可変容量ターボチャージャ11の製造及び組み付け誤差により、内燃機関の過給圧が適正値からずれると、その分だけ内燃機関10の吸入空気の酸素密度も適正値からずれるため、燃料噴射量に対する上記吸入空気の酸素量(質量)の比率が変わり、PM排出量PMeが内燃機関10から排出されるPMの量として不適切な値となる。しかし、圧力センサ57によって検出される過給圧Prに、可変容量ターボチャージャ11の製造及び組み付け誤差に起因する過給圧の適正値からのずれが反映されると、そのずれの分だけ過給圧偏差比Pr/Pbが増減し、更には第1補正係数K1も上記ずれの分だけ増減することとなる。そして、この第1補正係数K1の分のPM排出量PMe(基準排出量PMebase)の補正を通じて、同PM排出量PMeが上記誤差による影響を受けPM排出量として不適切な値となることは抑制される。
EGR機構を通じて吸気通路12に流入する排気は、吸気通路12に流れ込む空気(新気)に比べて高温であり、機関運転状態やEGRクーラ35での冷却度合いによって温度変化の生じるものである。従って、EGRの実行に基づき、EGR通路33から吸気通路12に排気が流入すると、インマニ内ガス温度が変動することとなり、それに合わせて内燃機関10の吸入空気の温度も変化する。このように吸入空気の温度が変化して同吸入空気の酸素密度が変化すると、燃料噴射量に対する上記吸入空気の酸素量(質量)の比率が変わり、内燃機関10から排出されるPMの量も変化する。その結果、式(4)を用いて推定されるPM排出量PMeが内燃機関10から排出されるPMの量として不適切な値となるおそれがある。
大気圧が標準大気圧と異なっていたり、大気温度が標準大気温度と異なっていたりするなど、大気状態が標準大気状態と異なっている場合には、内燃機関10の吸入空気の酸素密度も標準大気状態のときの値とは異なるものとなる。このように大気状態によって吸入空気の酸素密度が変わると、燃料噴射量に対する上記吸入空気の酸素量(質量)の比率が変わり、内燃機関10から排出されるPMの量も変化する。その結果、式(4)を用いて推定されるPM排出量PMeが内燃機関10から排出されるPMの量として不適切な値となるおそれがある。これは、式(4)から分かるように、PM排出量PMeは、標準大気状態での機関定常運転時のPM排出量として求められる基準排出量PMebaseを用いて算出されるものであり、その基準排出量PMebaseが大気状態の標準大気状態に対する変化によって内燃機関10から排出されるPMの量として不適切な値になるためである。
(1)内燃機関10から排出されるPMの量の推定値であるPM排出量PMeとして、式(4)に示されるように基準排出量PMebaseに対し第1補正係数K1等による補正を加えた値を採用している。機関過渡運転時には、過給圧Pr及び吸入空気量Arがそれらの応答遅れに起因してそのときの機関運転状態で定常運転を行った場合の値(基準大気状態にあってはベース過給圧Pb及びベース吸入空気量Ab)に対しずれた値になる。そして、そのずれ分だけ機関定常運転時のPM排出量である式(4)の基準排出量PMebaseが、内燃機関10のPM排出量に対応する値として不適切な値になる。しかし、式(4)の第1補正係数K1は、上述した機関過渡運転時における基準排出量PMebaseの不適切な値へ移行を抑制するためのものとして、過給圧偏差比Pr/Pb及び吸入空気量偏差比Ar/Abに基づき図4に示されるように求められる。このため、式(4)に基づき推定されるPM排出量PMeは、機関過渡運転時であっても内燃機関10から排出されるPMの量に対応した値となる。従って、機関過渡運転時、PM排出量PMeが同機関過渡運転時の上記過給圧Pr及び吸入空気量Arから影響を受け、同機関10からのPM排出量の推定値として不適切な値となることを抑制できる。
・PM排出量PMeを算出するに当たり、基準排出量PMebaseに対するインマニ内ガス温度に基づく補正を省略してもよい。この場合、上記式(4)の第2補正係数K2が省略されることとなる。
Claims (6)
- 可変容量ターボチャージャの設けられた内燃機関の排気浄化装置であって、同機関の排気系に設けられて排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、機関定常運転時の粒子状物質の排出量である基準排出量を同機関の吸入空気量における機関定常時の値に対する偏差に基づき補正して内燃機関からの粒子状物質の排出量とするPM排出量推定手段とを備え、その排出量を用いて求められる前記フィルタでの粒子状物質の堆積量に基づき同フィルタに堆積した前記粒子状物質を除去するためのフィルタ再生制御を実施する内燃機関の排気浄化装置において、
前記可変容量ターボチャージャは、機関運転状態に基づき定められる目標過給圧に向けて内燃機関の過給圧を変化させるよう駆動制御されるものであり、
前記PM排出量推定手段は、内燃機関の過給圧における機関定常時の値に対する比率を表す過給圧偏差比を求め、その過給圧偏差比が大となるほど前記基準排出量を減量側に大きく補正し、前記過給圧偏差比が小となるほど前記基準排出量を増量側に大きく補正するものである
ことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。 - 前記PM排出量推定手段は、内燃機関の過給圧における標準大気状態のもとでの機関定常時の値に対する比率を前記過給圧偏差比として求めるものであり、
前記目標過給圧は、標準大気状態のもとでの機関定常運転時に適した過給圧として算出されるベース過給圧に対し大気状態に基づく環境補正を加えた値であり、
前記基準排出量は、標準大気状態のもとでの機関定常運転時における粒子状物質の排出量である
請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置。 - 前記内燃機関は、その排気の一部を同機関の吸気通路に流して再循環させるEGR機構を備えるものであり、
前記PM排出量推定手段は、前記吸気通路内における前記EGR機構を通じて排気の流入される部分よりも下流側のガス温度に基づき、そのガス温度が高いほど前記基準排出量を増量側に大きく補正し、同ガス温度が低いほど前記基準排出量を減量側に大きく補正する
請求項1または2に記載の内燃機関の排気浄化装置。 - 前記PM排出量推定手段は、内燃機関の吸入空気量における標準大気状態のもとでの機関定常時の値に対する比率を表す吸入空気量偏差比を求め、その吸入空気量偏差比が大となるほど前記基準排出量を減量側に大きく補正し、前記吸入空気量偏差比が小となるほど前記基準排出量を増量側に大きく補正するものであり、
前記内燃機関の吸入空気量は、目標吸入空気量に向けて変化するよう調整されるものであり、
前記目標吸入空気量は、標準大気状態のもとでの機関定常運転時に適した吸入空気量として算出されるベース吸入空気量に対し大気状態に基づく環境補正を加えた値であり、
前記基準排出量は、標準大気状態のもとでの機関定常運転時における粒子状物質の排出量である
請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。 - 可変容量ターボチャージャの設けられた内燃機関からの粒子状物質の排出量を推定する粒子状物質排出量推定方法であって、
機関定常運転時の粒子状物質の排出量である基準排出量を算出する処理と、
同機関の吸入空気量における機関定常時の値に対する比率を表す吸入空気量偏差比を算出する処理と、
同機関の過給圧における機関定常時の値に対する比率を表す過給圧偏差比を算出処理と、
前記吸入空気量偏差比が大となるほど前記基準排出量を減量側に大きく補正し、同吸入空気量偏差比が小となるほど前記基準排出量を増量側に大きく補正するとともに、前記過給圧偏差比が大となるほど前記基準排出量を増量側に大きく補正し、同過給圧偏差比が小となるほど前記基準排出量を減少側に大きく補正する処理と、
を実施し、
前記基準排出量を前記吸入空気量偏差比及び前記過給圧偏差比に基づき補正した後の値を内燃機関の粒子状物質排出量の推定値とする
ことを特徴とする粒子状物質排出量推定方法。 - 請求項5記載の粒子状物質排出量推定方法において、
内燃機関の吸気通路内におけるEGR機構を通じて排気の流入される部分よりも下流側のガス温度に基づき、そのガス温度が高いほど前記基準排出量を増量側に大きく補正し、同ガス温度が低いほど前記基準排出量を減量側に大きく補正する処理を実施する
ことを特徴とする粒子状物質排出量推定方法。
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