以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。以下の記載では、先ず、本発明の電子写真感光体が適用される接触帯電による画像形成装置及び電子写真感光体カートリッジについて説明したのち、本発明に係る電子写真感光体について説明する。
(画像形成装置)
先ず、本発明の画像形成装置の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。なお、本発明に係る電子写真感光体の詳細については後述する。
図1に示すように、本発明の画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電部材(帯電部)2、露光装置(露光部)3及び現像装置(現像部)4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置5、クリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム型の電子写真感光体(以下、電子写真感光体ドラム1ともいう。)を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電部材2、露光装置3、現像装置4、転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電部材2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。図1では、帯電部材2の一例としてローラ型の接触帯電部材(帯電ローラ)を示しているが、本発明はこれに限るものではなく、接触帯電を行うものであればどのような形態のものであっても構わない。以下、接触帯電部材について詳細に説明する。
電子写真感光体1に帯電を行う帯電部材2の形状は、電子写真感光体1に接触する公知の形態のものであればどのようなものでも使用可能で、ブラシ型、ブレード型、フィルム型又はローラ型等、その形態は制限されない。例えば図1に示すローラ型の帯電部材2は、通常、芯材とその周囲を覆う導電材料から構成される。導電材料としては、ドラム型の電子写真感光体1に密着させて接触させる必要から、比較的硬度が低い導電性又は半導電性の弾性体が好ましく、例えばゴム材にカーボン等の導電性粒子又はその他の半導電性粒子を含有させた導電性ゴムが使用される。また、下記の図2に示すように、帯電部材2を支持部材23と表面部材24とに分けて、支持部材23に適当に硬度を持たせて電子写真感光体1への密着性を保ちながら、表面部材24で適度な電気抵抗を保持させた機能分離型帯電部材を使用することもできる。
図2は、ローラ型の帯電部材21を用いた本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。図2の電子写真感光体1はドラム型であるが、シート型又はベルト型等の電子写真感光体であってもよい。図2中、符号22は帯電部材21を支える芯材である。この芯材22の両端は、電子写真感光体1に帯電部材21を接触させるために適当な圧力印加装置、例えば金属バネ等で支えられた軸受けに保持される。そして、この芯材22の軸受け又は他の電気的接触手段を使ってバイアス電位が印加される。芯材22の材質としては、導電性を持つものならば何でもよく、通常は金属が使われる。金属の例としては、鉄、銅、真鍮、ステンレス材、アルミニウム等が挙げられる。芯材22のその他の例としては、導電性の有機材料例えばカーボンを練り込んだ樹脂成型品等を用いることもできる。
図2中、符号23はローラ型の支持部材であり、電子写真感光体1に密着して接触し回転する。回転の駆動力は軸25を介して外部から加えてもよく、又は電子写真感光体1との接触摩擦力で自由に回転させてもよい。支持部材23の材質としては、導電性又は半導電性を持つものなら何でもよい。通常は、電子写真感光体1と密着させて接触させる必要から、比較的表面硬度が低い弾性体であるゴム材、例えばNBR、EPDM、シリコン、ネオプレン又は天然のゴム材、或いはこれらのゴムにカーボン等の導電性粒子又は半導電性粒子を練り込んだ導電性ゴム等が使用される。もちろん良好な密着性が保たれるようによく精密加工された表面を持てば、ゴムのような弾性体以外の材料を用いてもよい。しかるに、このような接触型の帯電部材21を用いた場合、帯電の均一性が問題となり、帯電部材21の電気伝導度が大きすぎると、電子写真感光体1の帯電ムラが生じて、正規現像時は黒部分の画像ムラ、反転現像時は白部分のカブリとなる画像欠陥になる。逆に電気伝導度が小さすぎると、帯電不良が生じて像担持体が十分に帯電されない。従って、支持部材23の体積抵抗率は102Ω・cm以上であることが好ましく、特に104Ω・cm以上であることが好ましい。また、支持部材23の体積抵抗率は1015Ω・cm以下であることが好ましく、特に1012Ω・cm以下であることが好ましい。
図2中、符号24は表面部材であり、機能分離型帯電部材を使用する場合に設けられる。表面部材24の材質としては、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、その他種々のポリエステル樹脂等が主成分として使用される。表面部材24の体積抵抗率は103Ω・cm以上であることが好ましく、更には105Ω・cm以上であることが好ましく、特には109Ω・cm以上であることが好ましい。また、表面部材24の体積抵抗率は1015Ω・cm以下であることが好ましく、特には1012Ω・cm以下であることが好ましい。表面部材24の膜厚は、帯電部材21としての摩耗による耐久性を考慮すると厚い方がよいが、厚くしすぎると電子写真感光体1への帯電能が悪くなるので、通常0.01μm以上、1000μm以下、好ましくは0.1μm以上、500μm以下の範囲である。表面部材24の製法としては、支持部材23の上にデイップ法、スプレー法、真空蒸着法、プラズマコーテイング法等で形成される。
電子写真感光体1を帯電させるために、帯電部材21、すなわち芯材22に印加する電圧としては、直流電圧のみ、又は直流に交流を重畳してもよい。交流としては、周期的に変化する電圧であれば何でもよい。電圧の範囲としては、直流電圧の場合、正又は負の100V以上4000V以下、好ましくは300V以上3000V以下である。重畳する交流電圧としては、ピーク間電圧が100V以上4000V以下、好ましくは300V以上3000V以下である。なお、図2においては、直流電源20を用いている。
図3は、ブラシ型の帯電部材を用いた本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。図3の電子写真感光体1もドラム型であるが、シート型又はベルト型等の電子写真感光体であってもよい。ブラシ型の接触帯電部材としては、平板上にブラシを固定して使う固定型の導電性ブラシ31a(図3(A)を参照)と、回転しながら使う回転型の導電性ブラシ31b(図3(B)を参照)とに分けられるが、いずれの方式も用いることができる。
図3(A)の固定型の導電性ブラシ31aは、基布33に導電性繊維よりなるブラシ毛32を織り込み、更に基布の裏面に導電性接着剤をコーティングして得ることができる。ブラシ毛32の材料は、適度な導電性材料であればよく、例えば、タングステン、ステンレス、金、白金、鉄、銅、アルミニウム等の金属線を挙げることができる。また、レーヨン、ナイロン、アセテート、銅アンモニア、ビニリデン、ビニロン、フッ化エチレン、プロミックス、ベンゾエート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリクラール、ポリノジック、ポリプロピレン等の繊維中に、カーボンブラック、炭素繊維、金属粉、金属ウィスカー、金属酸化物、半導体材料等の抵抗調整剤を分散させた導電性繊維を用いることができる。なお、抵抗調整剤を繊維の内部に分散させるのではなく、繊維表面に被覆してもよい。また、図3(B)の回転型の導電性ブラシ31bは、基布33に導電性繊維よりなるブラシ毛32を織り込んだ生地を導電性シャフト35に巻くことにより得られる。回転の駆動力は、導電性シャフト35を介して外部から加えてもよく、又は電子写真感光体1との接触摩擦力で自由に回転させてもよい。いずれの場合もブラシ毛の特性としては、直径約10μm、体積抵抗率103Ω・cm以上107Ω・cm以下のものが一般的である。
図4は、フィルム型の帯電部材を用いた本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。図4の電子写真感光体1もドラム型であるが、シート型又はベルト型等の電子写真感光体であってもよい。フィルム型の帯電部材37としては、図4に示すように、導電性フィルム38の一辺が導電性の支持板39の一辺に支持された態様で構成され、導電性フィルム38の他の一辺が電子写真感光体1に接触するように構成される。
導電性フィルム38の材質としては、アルミニウム、金、銅、鉄、銀、クロム、ニッケル、白金、錫、チタニウム等の金属、又はこれらの合金等を挙げることができる。また、合成樹脂材料に導電性材料を分散させたり、樹脂材料の表面を導電化処理したりして、適宜導電性化又は低抵抗化した材料を用いてもよい。特に、樹脂中に金属粉、金属ウィスカー、カーボンブラック、カーボンファイバー等を含有させて低抵抗の材料を得ることもできる。また、導電性フィルム38の機械的強度を調整するために、フィルムの縦横の機械的強度に異方性を持たせたり、フィルム材料の結晶化度を適宜変更したり、液晶ポリマーの如き異方性材料を用いたりしてもよい。こうした導電性フィルム38は帯電に用いられるため、体積抵抗率が103Ω・cm以上108Ω・cm以下程度のフィルムであることが望ましい。
以上、図2〜図4により、各種の帯電部材の例を説明したが、それらの各帯電部材は、図1に示す帯電部材2として好ましく使用できる。なお、本願における体積抵抗率は、いずれも、IEC60093に準拠した方法により測定される。
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED等が挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行うようにしてもよい。露光を行う際の光は、任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm以上700nm以下のやや短波長寄りの単色光、波長380nm以上500nm以下の短波長の単色光で露光を行えばよい。
現像装置4は、露光した電子写真感光体1上の静電潜像を目に見える像に現像することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、カスケード現像、一成分絶縁トナー現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像等の乾式現像方式や、湿式現像方式等が挙げられる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジ等の容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル等の金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等を被覆した樹脂ロール等からなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。但し、現像ローラ44と電子写真感光体1とは当接せず、近接していてもよい。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、シリコン樹脂やウレタン樹脂等の樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅等の金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、通常、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は、5g/cm以上500g/cm以下)される。この規制部材45には、必要に応じて、トナーTとの摩擦帯電よりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は必要に応じて設けられ、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTの種類は任意であり、粉砕トナーのほか、懸濁重合法や乳化重合法等を用いた重合トナー等を用いることができる。特に、重合トナーを用いる場合には径が4μm以上8μm以下程度の小粒径のものが好ましく、また、トナーの粒子の形状も球形に近いものからポテト状の球形から外れたものまで様々に使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写等の静電転写法、圧力転写法、粘着転写法等、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙,媒体)Pに転写するものである。
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナー等、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、電子写真感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。なお、残留トナーが少ないか、又は、ほとんど無い場合には、クリーニング装置6は無くても構わない。
定着装置7は、上部定着部材(加圧ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73がそなえられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73がそなえられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、ステンレス,アルミニウム等の金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シート等が公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着等、任意の方式による定着装置を設けることができる。
以上のように構成された画像形成装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。すなわち、先ず、電子写真感光体1の表面(感光面)が、接触型の帯電部材2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させてもよく、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された電子写真感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その電子写真感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは電子写真感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが電子写真感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が電子写真感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに電子写真感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としてもよい。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程等の工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。但し、画像形成装置としては、反転現像を用いたものが、本発明の感光体の特徴において特に高い効果が現れる。
(電子写真感光体カートリッジ)
本発明の電子写真感光体カートリッジは、電子写真感光体1と、帯電装置(帯電部)2、露光装置(露光部)3、及び現像装置(現像部)4のうち、少なくとも一つとを、備えた一体型のカートリッジ(電子写真感光体カートリッジ。以下適宜、「感光体カートリッジ」という。)として構成されている、この感光体カートリッジは、通常、複写機やレーザービームプリンター等の画像形成装置本体に対して脱着可能に構成されている。
例えば、図1に示す電子写真感光体1及び帯電部材2は、多くの場合、少なくともこの両方を備えたカートリッジとして画像形成装置の本体から取り外し可能に設計されているが、その帯電部材2は、カートリッジとは別体に、例えば画像形成装置の本体に設けられていてもよい。なお、感光体カートリッジは、帯電装置(帯電部)2、露光装置(露光部)3、及び現像装置(現像部)4の他、必要に応じて、転写装置5、クリーニング装置6、及び定着装置7のいずれか1又は2以上を更に備えたものとしてもよい。
感光体カートリッジは、例えば、電子写真感光体1や帯電部材2が長期の使用等により劣化した場合に、この感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することができるようになっている。また、後述するトナーについても、多くの場合、トナーカートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置本体から取り外し可能に設計され、使用しているトナーカートリッジ中のトナーが無くなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるようになっている。更に、電子写真感光体1、帯電部材2、トナーが全て備えられたカートリッジを用いることもある。
以上、本発明の画像形成装置及び電子写真感光体カートリッジは、電荷リークに基づいた黒点や白点状のスポット欠陥の発生を防ぐことができる電子写真感光体を備えるので、接触帯電部材と感光体ドラムとが軸方向で接触する際に、電荷リークにより感光体ドラムの軸方向全体の帯電能が低下するという現象をなくし、その現象に基づいた帯電不良をなくすことができる。
(電子写真感光体)
次に、本発明の特徴部分である電子写真感光体について詳しく説明する。本発明の電子写真感光体1は、表面に接触する帯電部材により帯電される電子写真感光体であって、導電性支持体と、その導電性支持体上に少なくとも感光層とを有するものである。
本発明は、こうした接触帯電方式を用いる電子写真感光体1の光導電材料(以下、適宜、「電荷輸送物質」ということがある。)として、特定の群より選ばれる化合物を複数種用いたことに特徴がある。すなわち、本発明の電子写真感光体は、その感光層が、下記式(1)で表される化合物を少なくとも1種含有し、前記含有化合物以外の化合物であって下記式(2)で表される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする。
式(1)中、Ar1、Ar2はいずれも窒素原子に対して少なくとも3位に置換基を有するアリール基である。Ar3、Ar4は置換基を有していてもよいアリール基であり、Ar5は置換基を有していてもよいアリーレン基、好ましくはフェニレン基であり、n1は芳香環の数であり1以上10以下である。Ar3、Ar4、Ar5がいずれも置換基を有していない場合には、Ar1、Ar2のいずれか一方又は両方は窒素原子に対して3位以外の位置にも置換基を有する。なお、Ar1、Ar2が有する置換基、及びAr3、Ar4、Ar5が有していてもよい置換基は、同一でも異なっていてもよい。
式(2)中、Ar6、Ar7、Ar8、Ar9は置換基を有していてもよいアリール基であり、Ar10は置換基を有していてもよいアリーレン基、好ましくはフェニレン基であり、n2は芳香環の数であり1以上10以下である。なお、Ar6、Ar7、Ar8、Ar9、Ar10が有していてもよい置換基は、同一でも異なっていてもよい。
先ず、式(1)について詳しく説明する。
式(1)において、Ar1、Ar2は、窒素原子に対して少なくとも3位に置換基を有したアリール基である。Ar1、Ar2の各アリール基が有する芳香環の数は、通常1以上、また、通常5以下好ましくは3以下の範囲である。各アリール基が2以上の芳香環を有する場合、それらは互いに縮合して縮合環になっていてもよい。また、1又は2以上の芳香環に対して、更に1又は2以上の非芳香族性の環が縮合して縮合環になっていても構わない。各アリール基の炭素数は、通常18以下、好ましくは14以下の範囲である。具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、テルフェニリル基等が挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
Ar1、Ar2が有する少なくとも3位の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、置換アミノ基が挙げられるが、その中でもアルキル基、アルコキシ基が好ましい。また、「少なくとも」としたのは、Ar3、Ar4、Ar5がいずれも置換基を有していない場合には、Ar1、Ar2のいずれか一方又は両方が、窒素原子に対して3位以外の位置にも置換基を有することを意味している。この場合における3位以外の置換基についても、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、置換アミノ基が挙げられる。その中でも、アルキル基、アルコキシ基が好ましい。3位の置換基及び3位以外の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、1−メチルヘプチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の、鎖式又は環式のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基等を例示できる。
Ar1、Ar2が有する3位の置換基、及び、Ar1、Ar2が有することがある3位以外の置換基は、いずれもその炭素数が、通常8以下、好ましくは6以下、より好ましくは3以下の範囲である。置換基の炭素数が大きすぎると、残留電位が高くなり易いという理由から好ましくない。なお、上述の例示置換基が更に上述の例示置換基によって置換されている場合には、それらを含めた置換基全体の炭素数が上記範囲を満たすようにする。好ましい置換基としては、無置換又は置換の炭化水素基であり、より好ましくは無置換のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
式(1)において、Ar3、Ar4は、置換基を有していてもよいアリール基である。Ar3、Ar4の各アリール基が有する芳香環の数も、上記Ar1、Ar2と同様、通常1以上、また、通常5以下好ましくは3以下の範囲である。各アリール基が2以上の芳香環を有する場合、それらは互いに直接結合していてもよいし縮合環であってもよい。また、1又は2以上の芳香環に対して、更に1又は2以上の非芳香族性の環が直接結合していてもよいし縮合した縮合環になっていてもよい。各アリール基の炭素数は、通常18以下、好ましくは14以下の範囲である。具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、テルフェニリル基等が挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
Ar3、Ar4が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、置換アミノ基が挙げられるが、その中でもアルキル基、アルコキシ基が好ましい。配位位置は制限されず、いずれであっても構わない。また、Ar3、Ar4各々が有していてもよい置換基の数は、通常2以下、好ましくは1又は0である。置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、1−メチルヘプチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の、鎖式又は環式のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基等を例示できる。置換基の炭素数は、通常20以下、好ましくは10以下、より好ましくは3以下の範囲である。置換基の炭素数が大きすぎると、残留電位が高くなり易いという理由から好ましくない。なお、上述の例示置換基が更に上述の例示置換基によって置換されている場合には、それらを含めた置換基全体の炭素数が上記範囲を満たすようにする。好ましい置換基としては、無置換又は置換の炭化水素基であり、より好ましくは無置換のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
式(1)において、Ar5は、置換基を有していてもよいアリーレン基である。このアリーレン基が有する芳香環の数は、通常1以上、好ましくは2以上、また、通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。アリーレン基が2以上の芳香環を有する場合、下記構造式に示すビフェニリレン基やテルフェニリレン基等のようにフェニレンが2〜10の範囲で直接結合していてもよいし、下記構造式に示すナフチリレン基、フェナントリレン基、アントリレン基等のようにフェニレンが2〜10の範囲で互いに縮合した縮合環になっていてもよい。このアリーレン基の炭素数は、通常25以下、好ましくは20以下である。
芳香環の数n1が2以上の場合、複数のAr5は互いに同じでも異なっていてもよく、複数のAr5は直接結合していてもよい。また、複数のAr5のアリーレン基が置換基を有する場合、それらの置換基が互いに結合して環を形成していてもよい。
Ar5が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、置換アミノ基が挙げられるが、その中でもアルキル基、アルコキシ基が好ましい。配位位置は制限されず、配位可能ないずれの位置であっても構わない。また、Ar5が有していてもよい置換基の数は、通常2以下、好ましくは1又は0であり、特には0であることが好ましい。置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、1−メチルヘプチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の、鎖式又は環式のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基等を例示できる。置換基の炭素数は、通常20以下、好ましくは10以下、より好ましくは3以下の範囲である。置換基の炭素数が大きすぎると、残留電位が高くなり易いという理由から好ましくない。なお、上述の例示置換基が更に上述の例示置換基によって置換されている場合には、それらを含めた置換基全体の炭素数が上記範囲を満たすようにする。好ましい置換基としては、無置換又は置換の炭化水素基であり、より好ましくは無置換のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5の置換基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
下記式(3)で表される化合物郡は、式(1)の中でも好ましい化合物であり、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4がいずれもフェニル基であり、Ar5はn1が2のビフェニリレン基である。
式(3)において、R1、R2は、Ar1、Ar2の置換基であって窒素原子に対して3位の置換基である。R1、R2としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、1−メチルヘプチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の、鎖式又は環式のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;塩素、臭素、フッ素等のハロゲン原子;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等の置換アミノ基が挙げられる。中でもアルキル基、アルコキシ基が好ましく、アルキル基が特に好ましい。アルキル基の中でも、鎖式のアルキル基が好ましい。鎖式のアルキル基は、直鎖状のものであっても、枝分かれ鎖を有しているものであっても構わない。アルキル基の炭素数は1以上20以下が好ましく、より好ましくは炭素数が1以上10以下であり、特に好ましくは炭素数1以上3以下である。このように、化合物の中になるべくヘテロ原子を持ち込まず、電荷輸送能には寄与しない余分なアルキル部分を小さくすることで、移動度の大きいより高性能な電荷輸送物質となる。
式(3)中、R3〜R8は、水素原子又は置換基であり、置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、1−メチルヘプチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の、鎖式又は環式のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;塩素、臭素、フッ素等のハロゲン原子;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等の置換アミノ基が挙げられる。中でも、水素原子、アルキル基、アルコキシ基が好ましく、水素原子とアルキル基が特に好ましい。アルキル基の中でも、鎖式のアルキル基が好ましい。鎖式のアルキル基は、直鎖状のものであっても、枝分かれ鎖を有しているものであっても構わない。アルキル基の炭素数は1以上20以下が好ましく、より好ましくは炭素数が1以上10以下であり、特に好ましくは炭素数1以上3以下である。但し、R3、R4、R7、R8がいずれも水素原子の場合、R5、R6のいずれか一方又は両方は、窒素原子(アミノ基)に対してm位以外の位置に水素原子以外の置換基を有する。窒素原子(アミノ基)に対してm位の置換基はどちらかといえば移動度を下げる方向に働くため、テトラフェニルベンジジンの4つのフェニル基全てのm位に置換基が付くのは避ける必要がある。なお、式(3)中、e及びfは、それぞれ0以上4以下の整数を表す。また、g及びhは、それぞれ0以上5以下の整数を表す。また、i及びjは、それぞれ0以上4以下の整数を表す。
式(3)で表される具体的な化合物としては、表1に示す化合物が例示されるが、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。
表1中、R3〜R6の置換基を例示する数字と組成式は、それぞれ、置換基が結合する位置と、その置換基の組成式を表している。R3〜R6の置換基の結合位置は、窒素原子の結合位置を1位とし、R7とR8の置換基の結合位置は、芳香環同士の結合位置を1位とした時の結合位置である。例えば、化合物A7の(R3)eに記載の2−CH3は、2位の位置にCH3が置換されていることを示している。なお、置換基が複数存在する場合には、ひとつの欄に組成式を複数表示するか、同一の置換基が複数存在する場合には組成式の前にカンマで区切って結合位置を複数表示した(表2を参照)。また、横線は置換基が存在しないことを表す。
下記に、表1に示す化合物A1〜A16の化学構造式を示す。
次に、式(2)について詳しく説明する。
式(2)において、Ar6、Ar7、Ar8、Ar9は、置換基を有していてもよいアリール基である。各アリール基が有する芳香環の数は、通常1以上、また、通常5以下好ましくは3以下の範囲である。各アリール基が2以上の芳香環を有する場合、それらは互いに直接結合していてもよいし縮合環であってもよい。また、1又は2以上の芳香環に対して、更に1又は2以上の非芳香族性の環が直接結合していてもよいし縮合した縮合環になっていてもよい。各アリール基の炭素数は、通常18以下、好ましくは14以下の範囲である。具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、テルフェニリル基等が挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
Ar6、Ar7、Ar8、Ar9が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、置換アミノ基が挙げられるが、その中でもアルキル基、アルコキシ基が好ましい。配位位置は制限されず、いずれであっても構わない。また、Ar6、Ar7、Ar8、Ar9各々が有していてもよい置換基の数は、通常2以下、好ましくは1又は0である。置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、1−メチルヘプチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の、鎖式又は環式のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基等を例示できる。置換基の炭素数は、通常20以下、好ましくは10以下、より好ましくは3以下の範囲である。置換基の炭素数が大きすぎると、残留電位が高くなり易いという理由から好ましくない。なお、上述の例示置換基が更に上述の例示置換基によって置換されている場合には、それらを含めた置換基全体の炭素数が上記範囲を満たすようにする。好ましい置換基としては、無置換又は置換の炭化水素基であり、より好ましくは無置換のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
式(2)において、Ar10は、置換基を有していてもよいアリーレン基である。このアリーレン基が有する芳香環の数は、通常1以上、好ましくは2以上、また、通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。アリーレン基が2以上の芳香環を有する場合、既述の構造式に示すビフェニリレン基やテルフェニリレン基等のようにフェニレンが2〜10の範囲で直接結合していてもよいし、既述の構造式に示すナフチレン基、フェナントリレン基、アントリレン基等のようにフェニレンが2〜10の範囲で互いに縮合した縮合環になっていてもよい。このアリーレン基の炭素数は、通常25以下、好ましくは20以下である。
芳香環の数n2が2以上の場合、複数のAr10は互いに同じでも異なっていてもよく、複数のAr10は直接結合していてもよい。複数のAr10のアリーレン基が置換基を有する場合、それらの置換基が互いに結合して環を形成していてもよい。
Ar10が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、置換アミノ基が挙げられるが、その中でもアルキル基、アルコキシ基が好ましい。配位位置は制限されず、配位可能ないずれの位置であっても構わない。また、Ar10が有していてもよい置換基の数は、通常2以下、好ましくは1又は0であり、特には0であることが好ましい。置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、1−メチルヘプチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の、鎖式又は環式のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基等を例示できる。置換基の炭素数は、通常20以下、好ましくは10以下、より好ましくは3以下の範囲である。置換基の炭素数が大きすぎると、残留電位が高くなり易いという理由から好ましくない。なお、上述の例示置換基が更に上述の例示置換基によって置換されている場合には、それらを含めた置換基全体の炭素数が上記範囲を満たすようにする。好ましい置換基としては、無置換又は置換の炭化水素基であり、より好ましくは無置換のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
Ar6、Ar7、Ar8、Ar9、Ar10の置換基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
下記式(4)で表される化合物郡は、式(2)の中でも好ましい化合物であり、Ar6、Ar7、Ar8、Ar9がいずれもフェニル基であり、Ar10はn2が2のビフェニリレン基である。
式(4)中、R9〜R14は、水素原子又は置換基であり、置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、1−メチルヘプチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の、鎖式又は環式のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;塩素、臭素、フッ素等のハロゲン原子;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等の置換アミノ基が挙げられる。中でも、水素原子、アルキル基、アルコキシ基が好ましく、水素原子とアルキル基が特に好ましい。アルキル基の中でも、鎖式のアルキル基が好ましい。鎖式のアルキル基は、直鎖状のものであっても、枝分かれ鎖を有しているものであっても構わない。アルキル基の炭素数は1以上20以下が好ましく、より好ましくは炭素数が1以上10以下であり、特に好ましくは炭素数1以上3以下である。化合物の中にはなるべくヘテロ原子を持ち込まず、電荷輸送能には寄与しない余分なアルキル部分を小さくすることが好ましく、その結果、移動度の大きいより高性能な電荷輸送物質となる。なお、式(4)中、k、l、m、nは、それぞれ0以上5以下の整数を表す。また、o及びpは、それぞれ0以上4以下の整数を表す。
式(4)で表される具体的な化合物としては、表2に示す化合物が例示されるが、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。
表2中、R9〜R14の置換基を例示する数字と組成式は、それぞれ、置換基が結合する位置と、その置換基の組成式を表している。R9〜R12の置換基の結合位置は、窒素原子の結合位置を1位とし、R13とR14の置換基の結合位置は、芳香環同士の結合位置を1位とした時の結合位置である。なお、置換基が複数存在する場合には、ひとつの欄に組成式を複数表示するか、同一の置換基が複数存在する場合には組成式の前にカンマで区切って結合位置を複数表示した。例えば、化合物B4の(R9)kに記載の2,3−CH3は、2位の位置と3位の位置にCH3が置換されていることを示している。また、横線は置換基が存在しないことを表す。
下記に、表2に示す化合物B1〜B38の化学構造式を示す。
また、上記以外に本発明に適用できる化学構造式の例を下記に示す。
以上説明したように、本発明の電子写真感光体は、その感光層が、式(1)で表される化合物を少なくとも1種含有し、その含有化合物以外の化合物であって式(2)で表される化合物を少なくとも1種含有することを特徴としている。感光層に含まれる、式(1)で表される化合物の分子量と式(2)で表される化合物の分子量は、それぞれ如何なるものでも構わないが、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物の分子量は、近いものが好ましく、含まれる複数種の化合物のうち最も大きな分子量の化合物と最も小さな分子量の化合物との分子量差は、100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。
また、式(1)で表される少なくとも1種の化合物と式(2)で表される少なくとも1種の化合物との組成比率は如何なるものであっても構わないが、それぞれの群の化合物の重量比率はより近いことが好ましく、より好ましくは各化合物群の重量比率が等しいことがより好ましいる。具体的には、それぞれの化合物群の重量比率が、9:1〜1:9であることが好ましく、7:3〜3:7であることがより好ましく、1:1であることが特に好ましい。
本発明の電子写真感光体は、上記の式(3)及び式(4)ないし表1及び表2で表されるテトラフェニルベンジジン骨格を有する各化合物群から選ばれる少なくとも1種の化合物を電荷輸送物質(光導電材料)として好ましく使用するが、その性能を損なわない限り、テトラフェニルベンジジン以外の骨格を有する公知の電荷輸送物質を併用しても構わない。併用する電荷輸送物質は如何なるものであっても構わないが、例えば、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリグリシジルカルバゾール、ポリアセナフチレン等の高分子化合物、又はインドール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアジアゾール誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、アリールアミン誘導体等の低分子化合物、又はこれらが複数結合されたものが使用でき、これらの中でも、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、アリールアミン誘導体、又はこれらが複数結合されたものが好適に用いられる。これらの電荷輸送物質を併用した場合、全電荷輸送物質に対する併用した電荷輸送物質の重量比率は、本発明の効果を妨げない限り如何なる重量比率でも構わないが、通常50%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下である。
(導電性支持体)
本発明の電子写真感光体は、感光層を支持するための導電性支持体を備えている。導電性支持体については特に制限はないが、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。導電性支持体の形態としては、ドラム型、シート型、ベルト型等のものが用いられる。更には、金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性等の制御や欠陥被覆のために、適当な抵抗値を有する導電性材料を塗布したものを用いてもよい。
また、導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合には、陽極酸化被膜を施してから用いてもよい。陽極酸化被膜を施した導電性支持体に対しては、公知の方法により封孔処理を施すことが望ましい。
導電性支持体の表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法や研磨処理により粗面化されていてもよい。また、導電性支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、その表面を粗面化してもよい。また、より安価にするために、切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。
(下引き層)
導電性支持体と後述する感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けてもよい。下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。
下引き層に用いる金属酸化物粒子としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子等が挙げられる。これらは一種類の粒子を単独で用いてもよいし、複数の種類の粒子を混合して用いてもよい。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコン等の有機物による処理を施されていてもよい。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。また、複数の結晶状態のものが含まれていてもよい。
また、金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性及び液の安定性の面から、平均一次粒径として、通常1nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下のものが望ましい。この平均一次粒径はTEM写真から得た。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等の有機ジルコニウム化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物等の有機チタニル化合物、シランカップリング剤等の公知のバインダー樹脂が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、或いは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、硬化剤とともに硬化した形で使用してもよい。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性、塗布性を示すことから好ましい。
下引き層に用いられるバインダー樹脂に対する無機粒子の使用比率は、任意に選ぶことが可能であるが、分散液の安定性、塗布性の観点から、通常は10重量%以上、500重量%以下の範囲で使用することが好ましい。
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体特性及び塗布性を向上させる観点から、通常は0.1μm以上、20μm以下の範囲が好ましい。
下引き層には、公知の酸化防止剤等を混合してもよい。画像欠陥防止等を目的として、顔料粒子、樹脂粒子等を含有させ用いてもよい。
(感光層)
感光層の形式としては、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一層に存在し、バインダー樹脂中に分散された単層型と、電荷発生物質がバインダー樹脂中に分散された電荷発生層及び電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層の二層からなる機能分離型(積層型)とが挙げられるが、何れの形式であってもよい。
また、積層型感光層としては、導電性支持体側から電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層して設ける順積層型感光層と、逆に電荷輸送層、電荷発生層の順に積層して設ける逆積層型感光層とがあり、いずれを採用することも可能であるが、最もバランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光層が好ましい。
(積層型感光層)
先ず、電荷発生層について説明する。積層型感光体(機能分離型感光体)の場合、電荷発生層は、電荷発生物質をバインダー樹脂で結着することにより形成される。
電荷発生物質としては、セレニウム、セレニウム合金、硫化カドミウム等の無機系光導電材料と、有機顔料等の有機系光導電材料とが挙げられるが、有機系光導電材料の方が好ましく、特に有機顔料が好ましい。有機顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等が挙げられる。これらの中でも、特にフタロシアニン顔料又はアゾ顔料が好ましい。電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、通常はこれらの有機顔料の微粒子を、各種のバインダー樹脂で結着した分散層の形で使用する。
電荷発生物質として無金属フタロシアニン化合物又は金属含有フタロシアニン化合物を用いた場合は、比較的長波長のレーザー光、例えば780nm近辺の波長を有するレーザー光に対して高感度の感光体が得られる。また、モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料を用いた場合には、白色光、又は660nm近辺の波長を有するレーザー光、又は比較的短波長のレーザー光、例えば450nm又は400nm近辺の波長を有するレーザー光に対して十分な感度を有する感光体を得ることができる。
電荷発生物質として有機顔料を使用する場合には、特にフタロシアニン顔料又はアゾ顔料を使用することが好ましい。フタロシアニン顔料は、比較的長波長のレーザー光に対して高感度の感光体が得られる点で、また、アゾ顔料は、白色光及び比較的短波長のレーザー光に対し十分な感度を持つ点で、それぞれ優れている。
電荷発生物質としてフタロシアニン顔料を使用する場合には、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、スズ、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム、アルミニウム等の金属又はその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等の配位したフタロシアニン類の各結晶型を持ったもの、酸素原子等を架橋原子として用いたフタロシアニンダイマー類等が使用される。特に、感度の高い結晶型であるX型、τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン(別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ヒドロキシインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型、I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体が好適である。
また、これらフタロシアニンの中でも、A型(別称β型)のチタニルフタロシアニン、B型(別称α型)のチタニルフタロシアニン、粉末X線回折の回折角2θ(±0.2゜)が27.1°若しくは27.3゜に明瞭なピークを示すD型(Y型)のチタニルフタロシアニン、II型のクロロガリウムフタロシアニン、V型のヒドロキシガリウムフタロシアニン、28.1゜にもっとも強いピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン、26.2゜にピークを持たず28.1゜に明瞭なピークを有しかつ25.9゜の半値幅Wが0.1°≦W≦0.4°であるヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましい。
フタロシアニン化合物は単一の化合物のものを用いてもよいし、幾つかの混合又は混晶状態のものを用いてもよい。ここでのフタロシアニン化合物ないしは結晶状態における混合状態としては、それぞれの構成要素を後から混合したものを用いてもよいし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じさせたものを用いてもよい。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。混晶状態を生じさせるためには、特開平10−48859号公報記載のように、2種類の結晶を混合後に機械的に磨砕、不定形化した後に、溶剤処理によって特定の結晶状態に変換する方法が挙げられる。
電荷発生物質としてアゾ顔料を使用する場合には、各種ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料が好適に用いられる。
電荷発生物質として有機顔料を用いる場合には、1種を単独で用いてもよいが、2種類以上の顔料を混合して用いてもよい。この場合、可視域と近赤域の異なるスペクトル領域で分光感度特性を有する2種類以上の電荷発生物質を組み合わせて用いることが好ましく、中でもジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料とフタロシアニン顔料とを組み合わせて用いることがより好ましい。
電荷発生層に用いるバインダー樹脂は特に制限されないが、例としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼインや、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマー等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、何れか1種を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせで混合して用いてもよい。
電荷発生層は、具体的に、上述のバインダー樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に、電荷発生物質を分散させて塗布液を調整し、これを導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布することにより形成される。
塗布液の作製に用いられる溶剤としては、バインダー樹脂を溶解させるものであれば特に制限されないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等の鎖状又は環状ケトン系溶媒、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状又は環状エーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物、リグロイン等の鉱油、水等が挙げられる。これらは何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。なお、上述の下引き層を設ける場合には、この下引き層を溶解しないものが好ましい。
電荷発生層において、バインダー樹脂と電荷発生物質との配合比(重量)は、バインダー樹脂100重量部に対して電荷発生物質が通常10重量部以上、好ましくは30重量部以上、また、通常1000重量部以下、好ましくは500重量部以下の範囲である。電荷発生物質の配合比が高過ぎると、電荷発生物質の凝集等により塗布液の安定性が低下するおそれがある。一方、電荷発生物質の配合比が低過ぎると、感光体としての感度の低下を招くおそれがある。また、電荷発生層の膜厚は、通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上、また、通常10μm以下、好ましくは0.6μm以下の範囲である。
電荷発生物質を分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の公知の分散法を用いることができる。この際、粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下の範囲の粒子サイズに微細化することが有効である。
次に、電荷輸送層について説明する。積層型感光体の電荷輸送層は、電荷輸送物質を含有するとともに、通常はバインダー樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。このような電荷輸送層は、具体的には、例えば電荷輸送物質等とバインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、これを順積層型感光層の場合には電荷発生層上に、また、逆積層型感光層の場合には導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布、乾燥して得ることができる。
本発明において用いられる電荷輸送物質に関しては前述のとおりであるが、これと任意の電荷輸送物質との3種以上の組み合わせで用いることも可能である。公知の電荷輸送物質の例としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子求引性物質、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリグリシジルカルバゾール、ポリアセナフチレン等の高分子化合物、又はインドール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアジアゾール誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、アリールアミン誘導体等の低分子化合物、もしくはこれらが複数結合されたものが使用でき、これらの中でも、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、アリールアミン誘導体、もしくはこれらが複数結合されたものが好適に用いられる。
バインダー樹脂は、膜強度確保のために使用される。電荷輸送層のバインダー樹脂としては、例えばブタジエン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が好ましい。これらのバインダー樹脂は、適当な硬化剤を用いて熱、光等により架橋させて用いることもできる。これらのバインダー樹脂は、何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせで用いてもよい。
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100重量部に対して電荷輸送物質を20重量部以上の比率で使用する。中でも、残留電位低減の観点から30重量部以上が好ましく、更には、繰り返し使用した際の安定性や電荷移動度の観点から40重量部以上がより好ましい。一方、感光層の熱安定性の観点から、電荷輸送物質を通常は150重量部以下の比率で使用する。中でも、電荷輸送材料とバインダー樹脂との相溶性の観点から110重量部以下が好ましく、耐刷性の観点から80重量部以下がより好ましく、耐傷性の観点から70重量部以下が最も好ましい。
電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、長寿命、画像安定性の観点、更には高解像度の観点から、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常50μm以下、好ましくは45μm以下、更には30μm以下の範囲とする。
(単層型感光層)
次に、単層型感光層について説明する。単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質に加えて、積層型感光体の電荷輸送層と同様に、膜強度確保のためにバインダー樹脂を使用して形成する。具体的には、電荷発生物質と電荷輸送物質と各種バインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、導電性支持体上(下引き層を設ける場合は下引き層上)に塗布、乾燥して得ることができる。
電荷輸送物質及びバインダー樹脂の種類並びにこれらの使用比率は、積層型感光体の電荷輸送層について説明したものと同様である。これらの電荷輸送物質及びバインダー樹脂からなる電荷輸送媒体中に、更に電荷発生物質が分散される。
電荷発生物質は、積層型感光体の電荷発生層について説明したものと同様のものが使用できる。但し、単層型感光体の感光層の場合、電荷発生物質の粒子径を充分に小さくする必要がある。具体的には、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下の範囲とする。
単層型感光層内に分散される電荷発生物質の量は、少なすぎると充分な感度が得られない一方で、多過ぎると帯電性の低下、感度の低下等の弊害があることから、単層型感光層全体に対して通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下の範囲で使用される。
また、単層型感光層におけるバインダー樹脂と電荷発生物質との使用比率は、バインダー樹脂100重量部に対して電荷発生物質が通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上、また、通常30重量部以下、好ましくは10重量部以下の範囲とする。
単層型感光層の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下の範囲である。
(その他の機能層)
積層型感光体及び単層型感光体ともに、感光層又はそれを構成する各層には、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させる目的で、周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤等の添加物を含有させてもよい。
また、積層型感光体及び単層型感光体ともに、上記手順により形成された感光層を最上層、即ち表面層としてもよいが、その上に更に別の層を設け、これを表面層としてもよい。例えば、感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で、保護層を設けてもよい。
保護層は、導電性材料を適当なバインダー樹脂中に含有させて形成するか、特開平9−190004号、特開平10−252377号各公報に記載のトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する化合物を用いた共重合体を用いることができる。保護層に用いる導電性材料としては、TPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(m−トリル)ベンジジン)等の芳香族アミノ化合物、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン、酸化アルミ、酸化亜鉛等の金属酸化物等を用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。保護層に用いるバインダー樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、シロキサン樹脂等の公知の樹脂を用いることができ、また、特開平9−190004号公報、特開平10−252377号公報の記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する骨格と上記樹脂の共重合体を用いることもできる。保護層の電気抵抗は、通常109Ω・cm以上、1014Ω・cm以下の範囲とする。電気抵抗が前記範囲より高くなると、残留電位が上昇しカブリの多い画像となってしまう一方、前記範囲より低くなると、画像のボケ、解像度の低下が生じてしまう。また、保護層は像露光の際に照射される光の透過を実質上妨げないように構成されなければならない。
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を低減、トナーの感光体から転写ベルト、紙への転写効率を高める等の目的で、表面層にフッ素系樹脂、シリコン樹脂、ポリエチレン樹脂等、又はこれらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を、表面層に含有させてもよい。或いは、これらの樹脂や粒子を含む層を新たに表面層として形成してもよい。
(各層の形成方法)
これらの感光体を構成する各層は、含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液を、導電性支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等の公知の方法により、各層ごとに順次塗布・乾燥工程を繰り返すことにより形成される。
塗布液の作製に用いられる溶媒又は分散媒には特に制限はないが、具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類等が挙げられる。また、これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の組み合わせ及び種類で併用してもよい。
溶媒又は分散媒の使用量は特に制限されないが、各層の目的や選択した溶媒・分散媒の性質を考慮して、塗布液の固形分濃度や粘度等の物性が所望の範囲となるように適宜調整するのが好ましい。
例えば、単層型感光体、及び機能分離型感光体の電荷輸送層層の場合には、塗布液の固形分濃度を通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、また、通常40重量%以下、好ましくは35重量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度を通常10cps以上、好ましくは50cps以上、また、通常500cps以下、好ましくは400cps以下の範囲とする。また、積層型感光体の電荷発生層の場合には、塗布液の固形分濃度は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常15重量%以下、好ましくは10重量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度は、通常0.01cps以上、好ましくは0.1cps以上、また、通常20cps以下、好ましくは10cps以下の範囲とする。
塗布液の塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられるが、他の公知のコーティング法を用いることも可能である。
塗布液の乾燥は、室温における指触乾燥後、通常30℃以上、200℃以下の温度範囲で、1分から2時間の間、静止又は送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また、加熱温度は一定であってもよく、乾燥時に温度を変更させながら加熱を行なってもよい。
以上のようにして作製される本発明の電子写真感光体は、帯電部材に接触する感光層が式(1)で表される化合物を少なくとも1種含有し、その含有化合物以外の化合物であって式(2)で表される化合物を少なくとも1種含有するので、使用開始時はもちろんのこと、繰り返し使用しても、白点やドットとびによる階調性の低下等の画像欠陥が発生しないと共に画像の変化が小さい、耐久性に優れた電子写真感光体とすることができる。