JP4734790B2 - サーボバルブのノズルフラッパ機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、航空機、船舶、車両、一般産業機械等に用いられるサーボバルブに関し、特に、航空機用ジェットエンジンの燃料制御等に有効なサーボバルブのノズルフラッパ機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
航空機用ジェットエンジンの燃料制御等に用いられるサーボバルブには種々のタイプのものがあり、例えば図3に示すようなノズルフラッパ方式のサーボバルブが一般に知られている。
【0003】
すなわち、このサーボバルブ31は、入力電流をアーマチュア34を介してフラッパ38の変位に変換するトルクモータ部32と、フラッパ38の変位をフラッパ38を挟んで対向して設けられる一対のノズル39、39を介して油圧の圧力差に変換する油圧増幅部36と、油圧増幅部36の圧力差をピストン45の変位に変換し、作動油の流量を制御するバルブ部42と、ピストン45の変位をフラッパ38にフィードバックするフィードバック部52とを具えている。
【0004】
そして、上記のような構成のサーボバルブ31のトルクモータ部32に電流を入力すると、入力電流に応じたトルクがトルクモータ部32に発生してアーマチュア34が回転し、アーマチュア34の回転に追従してフラッパ38が揺動してノズル39の方向に変位し、フラッパ38の変位に応じて両ノズル39、39の背圧に差が生じる。ここで、両ノズル39、39の背圧は、バルブ部42のピストン45の両端面に作用する圧力であるから、両ノズル39、39の背圧の差に応じてピストン45が移動し、変位する。そして、ピストン45が変位すると、ピストン45の変位に追従してフィードバック部52のフィードバックワイヤ53が撓み、フィードバックワイヤ53が撓んだ状態から元の状態に復帰することによりフラッパ38が中央に押し戻され、両ノズル39、39の背圧の差が0となり、ピストン45がその位置に停止し、バルブ部42を介しての作動油の流量が決定される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような構成のサーボバルブ31にあっては、フラッパ38と両ノズル39、39との隙間が数十μmと非常に狭く設定されているため、その隙間内に作動油中に含まれる塵埃等のコンタミナントを噛み込んだ場合に、それを自力で排除することができない。このため、フラッパ38の動きが阻害されてしまい、トルクモータ部32のトルクに応じてフラッパ38を変位させることができなくなり、入力電流に応じた作動油の流量の制御を行うことができなくなる。
【0006】
本発明は、前記のような問題点を解決したものであって、フラッパとノズルとの間に作動油中に含まれる塵埃等のコンタミナントを噛み込むのを阻止し、これによりフラッパのスムーズな動きを確保して、トルクモータ部のトルクに応じてフラッパを確実に変位させ、入力電流に応じた作動油の流量の制御を確実に行うことができるサーボバルブのノズルフラッパ機構を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の問題点を解決するために本発明は、入力電流をフラッパの変位に変換するトルクモータ部と、前記フラッパの変位をフラッパを挟んで対向して設けられるノズルを介して油圧の圧力差に変換する油圧増幅部と、該油圧増幅部の圧力差をピストンの変位に変換し、作動油の流量を制御するバルブ部と、前記ピストンの変位を前記フラッパにフィードバックするフィードバック部とを具えたサーボバルブのノズルフラッパ機構であって、前記ノズルを回転可能に設け、該ノズルの一部に作動油を作用させることにより該ノズルを回転させるように構成した手段を採用したものである。
この場合、前記ノズルは、非回転の外筒と、該外筒内に回転可能に設けられるとともに、先端部が該外筒から突出して前記フラッパと対向する内筒とからなり、該内筒の一部に作動油を作用させることにより該内筒を回転させるように構成するとよい。
さらに、前記内筒を、内筒の内部に作用する作動油の圧力と、内筒の後端部に作用する作動油の圧力との差により常時前記フラッパの方向に押圧するように構成するとよい。
また、前記内筒を、内筒の後端部に設けたノズルに作動油を作用させることにより回転させるように構成してもよい。
また、前記外筒と前記内筒との間にラビリンスシールを設け、該ラビリンスシールにより両筒間をシールするとともに、前記内筒をフローティング状態に保持してもよい。
【0008】
本発明は、前記のような手段を採用したことにより、油圧増幅部のノズル(内筒)の一部に作動油を作用させ、ノズル(内筒)を回転させることにより、作動油中に含まれる塵埃等のコンタミントがノズルとフラッパとの間に噛み込むのを阻止できる。
また、内筒の内部に作用する作動油の圧力と、内筒の後端部に作用する作動油との圧力との差により内筒が常時フラッパの方向に押圧されることにより、ノズルの内筒とフラッパとの距離が一定の値に保たれる。したがって、ノズルの内筒を介して得られる背圧に誤差が生じることなく、フラッパの変位に応じた背圧をピストンの両端面に導くことができ、高精度で作動油の流量を制御することができる。
また、内筒を、内筒の後端部に設けたノズルに作動油を作用させることにより回転させるように構成したことにより、簡単な構造で内筒を回転させることができる。したがって、全体を大型化、複雑化することなく、高精度で作動油の流量を制御できる。
また、外筒と内筒との間にラビリンスシールを設け、ラビリンスシールにより両筒間をシールするとともに、内筒をフローティング状態に保持することにより、内筒と外筒との間に摩耗が生じるようなことはなく、長期的に安定した性能が得られる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示す本発明の実施の形態について説明する。
図1及び図2には、本発明によるサーボバルブのノズルフラッパ機構の一実施の形態が示されていて、このサーボバルブ1は、トルクモータ部2と油圧増幅部6とバルブ部21とフィードバック部27とを具えている。
【0010】
トルクモータ部2は、入力電流をフラッパ8の変位に変換するものであって、先端部に対向する磁極を有する永久磁石3と、永久磁石3の両磁極間に回転自在に設けられるアーマチュア4と、アーマチュア4の周囲に巻回されるコイル5とから構成され、コイル5に入力する電流に応じたトルクを発生させてアーマチュア4を回転させることができるものである。
【0011】
油圧増幅部6は、トルクモータ部2のアーマチュア4の変位をフラッパ8を介して油圧の圧力差に変換するものであって、トルクモータ部2のアーマチュア4に一体に連結されて、アーマチュア4の回転に追従して揺動するフラッパ8と、フラッパ8を挟んで対向して設けられる一対のノズル9、9とからなるノズルフラッパ機構7を具えている。
【0012】
各ノズル9は、ボディ22側に固定される非回転の外筒10と、外筒10の内部に回転可能に設けられるとともに、先端部が外筒10を貫通してフラッパ8と対向する内筒11とから構成され、内筒11の先端とフラッパ8との間には数十μmの隙間が形成されるようになっている。
【0013】
内筒11は、筒状のノズル部12と、ノズル部12の先端部外周面に一体に設けられる円板状の前シール部13と、ノズル部12の後端部に一体に設けられるカップ状の後シール部16とから構成され、ノズル部12の先端部が外筒10を貫通するようになっている。
【0014】
前シール部13の外周面及び後シール部16の外周面にはそれぞれ環状の溝14、17が軸線方向に所定の間隔ごとに連続して設けられ、この環状の溝14、17と外筒10の内周面とによってそれぞれラビリンスシール15、18が構成されるようになっている。各ラビリンスシール15、18には高圧の作動油が導かれ、これにより前シール部13と外筒10との間及び後シール部16と外筒10との間がそれぞれシールされるとともに、内筒11がフローティング状態で外筒10の内側に保持されるようになっている。
【0015】
後シール部16の内側にはオリフィス20を介して高圧の作動油が導かれ、この作動油の圧力とノズル部12の内部に作用する作動油の圧力との差により内筒11は常時フラッパ8の方向に押圧され、内筒11のノズル部12の先端とフラッパ8との距離が一定の値に保たれるようになっている。
【0016】
後シール部16の閉塞されている軸線方向の一端部にはそこを軸線に対して所定の角度で貫通するノズル19が複数箇所に設けられ、このノズル19に後シール部16の内側に作用する高圧の作動油を導き、噴出させることにより内筒11を回転させることができるものである。ノズル19から噴出された作動油は前シール部13と後シール部16との間の中間室24を介してノズル部12内に導かれるようになっている。
【0017】
中間室24は後述するバルブ部21のシリンダ室23の両端部に連通し、各ノズル部12に作用する背圧が中間室24を介してシリンダ室23の両端部、すなわちピストン25の両端面に導かれるようになっている。
【0018】
そして、トルクモータ部2への入力電流が0の場合には、フラッパ8は両ノズル部12、12から等距離に位置し、両ノズル部12、12から同量・同圧の作動油が噴出し、両ノズル部12、12の背圧はバランスがとられた状態となる。一方、トルクモータ部2に電流が入力されてアーマチュア4が回転すると、アーマチュア4の回転に追従してフラッパ8が揺動してノズル部12の方向に変位し、フラッパ8と両ノズル部12、12との距離が変化し、両ノズル部12、12の背圧のバランスが崩れ、両ノズル部12、12の背圧が変化し、両ノズル部12、12からピストン25の両端面に導かれる作動油の圧力に差が生じ、その圧力差によりピストン25が移動し、変位することになる。
【0019】
バルブ部21は、内部にシリンダ室23が設けられるとともに、シリンダ室23と連通する供給ポート(図示せず)、戻りポート(図示せず)及び制御ポート(図示せず)が設けられるボディ22と、ボディ22のシリンダ室23内に移動自在に設けられるピストン25から構成されている。シリンダ室23の両端部には油圧増幅部6の両ノズル部12、12の背圧が導かれ、両ノズル部12、12の背圧の差に応じてシリンダ室23内をピストン25が移動し、変位する。そして、ピストン25の変位に応じて各ポートが開閉され又は各ポートの開閉度が調整され、各ポートを介しての作動油の流量が制御されるものである。
【0020】
ピストン25の長手方向の中心部の外周面には所定の深さの凹部26が環状に設けられ、この凹部26内に後述するフィードバック部27のフィードバックワイヤ28のボール29が摺動自在に結合されるようになっている。
【0021】
フィードバック部27は、一端部がフラッパ8に一体に結合される弾性変形可能なフィードバックワイヤ28と、フィードバックワイヤ28の他端部に一体に設けられるボール29とからなるものであって、ボール29はピストン25の外周面の凹部26に摺動自在に結合されるようになっている。フィードバックワイヤ28は、ピストン25の変位に追従して撓み、撓んだ状態から元の状態に復帰することによりフラッパ8を中立位置に押し戻し、ピストン25をその位置に停止させ、ピストン25を介しての作動油の流量を決定する。すなわち、フィードバックワイヤ28は、ピストン25の変位をフラッパ8にフィードバックさせる機能を有するものである。
【0022】
そして、上記のように構成したサーボバルブ1のトルクモータ部2に電流を入力すると、その入力電流に比例したトルクがトルクモータ部2に発生し、そのトルクに応じてアーマチュア4が回転する。
【0023】
また、アーマチュア4が回転すると、アーマチュア4の回転に追従して油圧増幅部6のフラッパ8が一体に揺動してノズル9の方向に変位し、両ノズル9、9のノズル部12、12から等距離に位置していたフラッパ8と両ノズル部12、12との距離が変化し、バランスが保たれていた両ノズル部12、12の背圧に差が生じる。この背圧は、ピストン25の両端面に作用する圧力であるから、圧力の低い方にピストン25が移動し始める。
【0024】
そして、ピストン25が移動すると、ピストン25の移動に伴ってフィードバック部27のフィードバックワイヤ28が撓み、フィードバックワイヤ28が撓んだ状態から元の状態に復帰することによりフラッパ8が中央に押し戻され、両ノズル部12、12の背圧の差が0となり、ピストン25がその位置に停止し、バルブ部21を介しての作動油の流量が決定される。
【0025】
上記のように構成した本実施の形態によるサーボバルブ1のノズルフラッパ機構7にあっては、ノズル9を外筒10と内筒11とによって構成し、内筒11を回転可能としたことにより、作動油中に含まれる塵埃等のコンタミナントが内筒11のノズル部12とフラッパ8との間に噛み込むことが阻止され、あるいはコンタミナントを噛み込んでも、それを外方に排除することができる。したがって、フラッパ8の動きが阻害されるようなことはなくなり、トルクモータ部2のトルクに応じてフラッパ8を変位させ、入力電流に応じた作動油の流量の制御を行うことができる。
【0026】
【発明の効果】
本発明は、油圧増幅部のノズル(内筒)を回転可能に設けて、ノズル(内筒)を作動油の作用により回転させるように構成したことにより、作動油中に含まれる塵埃等のコンタミントがノズルとフラッパとの間に噛み込むのを阻止できる。したがって、フラッパの動きが阻害されるようなことはなくなり、トルクモータ部のトルクに応じてフラッパを変位させ、入力電流に応じて作動油の流量を制御できる。これにより、信頼性の高い高精度のサーボバルブを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によるサーボバルブの一実施の形態を示した概略図である。
【図2】 図1に示すものの部分拡大断面図である。
【図3】 従来のサーボバルブの一例を示した概略図である。
【符号の説明】
1、31…サーボバルブ
2、32…トルクモータ部
3…永久磁石
4、34…アーマチュア
5…コイル
6、36…油圧増幅部
7…ノズルフラッパ機構
8、38…フラッパ
9、39…ノズル
10…外筒
11…内筒
12…ノズル部
13…前シール部
14…溝
15…ラビリンスシール
16…後シール部
17…溝
18…ラビリンスシール
19…ノズル
20…オリフィス
21、42…バルブ部
22…ボディ
23…シリンダ室
24…中間室
25、45…ピストン
26、46…凹部
27、52…フィードバック部
28、53…フィードバックワイヤ
29、54…ボール
Claims (5)
- 入力電流をフラッパの変位に変換するトルクモータ部と、前記フラッパの変位をフラッパを挟んで対向して設けられるノズルを介して油圧の圧力差に変換する油圧増幅部と、該油圧増幅部の圧力差をピストンの変位に変換し、作動油の流量を制御するバルブ部と、前記ピストンの変位を前記フラッパにフィードバックするフィードバック部とを具えたサーボバルブのノズルフラッパ機構であって、前記ノズルを回転可能に設け、該ノズルの一部に作動油を作用させることにより該ノズルを回転させるように構成したことを特徴とするサーボバルブのノズルフラッパ機構。
- 前記ノズルは、非回転の外筒と、該外筒内に回転可能に設けられるとともに、先端部が該外筒から突出して前記フラッパと対向する内筒とからなり、該内筒の一部に作動油を作用させることにより該内筒を回転させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のサーボバルブのノズルフラッパ機構。
- 前記内筒は、筒状のノズル部と、該ノズル部の先端部外周面に一体に設けられる円板状の前シール部と、前記ノズル部の後端部に一体に設けられるカップ状の後シール部と、を備え、前記ノズル部の先端部が前記外筒を貫通するように構成され、前記ノズル部の内部に作用する作動油の圧力と、前記後シール部の内側に作用する作動油の圧力との差により常時前記フラッパの方向に押圧するように構成したことを特徴とする請求項2に記載のサーボバルブのノズルフラッパ機構。
- 前記内筒を、前記後シール部に設けたノズルに作動油を作用させることにより回転させるように構成したことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のサーボバルブのノズルフラッパ機構。
- 前記外筒と前記前シール部との間、および前記外筒と前記後シール部との間にラビリンスシールを設け、該ラビリンスシールにより前記外筒と前記内筒との間をシールするとともに、前記内筒をフローティング状態に保持するように構成した請求項2から請求項4のうちのいずれか一項に記載のサーボバルブのノズルフラッパ機構。
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