JP4734213B2 - 電力変換装置あるいは無効電力補償装置による交流電圧制御方法 - Google Patents
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Description
図1は本発明の第1実施例に係る無効電力補償装置の交流電圧制御ブロックの構成を示す図で、図29の交流電圧制御回路6に対して遅延回路16、差分器17、レベル検出器18、無効電流指令値補正回路19、加算器20、リミッタ回路21を追加したものである。
図1の制御方法を用いた場合、交流電圧の変動が小さい場合や、き電回路における負荷起動のようにゆっくり交流電圧が変動する場合には、現時点での交流電圧検出値Vacと遅延時間ΔTd前の交流電圧検出値すなわち遅延回路16の出力電圧の差は小さいため、レベル検出器18は動作しない。このため無効電流指令補正値ΔIqrefはゼロであり、最終的な無効電流指令値Iqrefとしては交流電圧制御回路6の出力Iqrefoがそのまま使用される。すなわち従来の無効電力補償装置の制御と全く同じ動作をする。
本実施例による無効電力補償装置を使用すると、負荷起動などによるゆっくりした電圧変化に対しては、従来通り交流電圧制御により安定に系統電圧が電圧指令値に近づくよう無効電力出力が制御され、列車がき電区間を抜けて急峻な過電圧が発生した場合には、ステップ的に遅れ無効電力出力を増加させて高速に過電圧を抑制することができ、更に制御の切換などを行うことなくスムーズに通常時の制御に戻ることができる。
上記第1実施例では交流電圧制御方式を、無効電力補償装置に適用する場合について説明したが、自励式交直変換器を用いた電力変換装置の無効電力制御に本実施例を適用する場合も、全く同じ作用、効果を得ることができる。この場合、図1に示す構成の交流電圧制御ブロックを図30に示す電力変換装置の交流電圧制御回路12周辺部分に適用する。有効電力制御の方法については従来システムと同様である。
上記第1実施例では交流電圧制御回路6で使用する交流電圧検出値Vacと、遅延回路16及び差分器17に入力されて交流電圧の変動の大きさを検出するための交流電圧検出値Vacを、共通の信号としていたが、これを別々の信号を使用しても同様の効果を得ることができる。つまり、交流電圧制御回路6は比較的応答速度がゆっくりしているため、そこで使用する電圧検出値も若干の遅れは許容できるので、例えば高調波成分を除去するなどの処理をした信号を電圧検出値として使用する。一方、電圧変動の大きさを検出するための交流電圧検出値は高速性が求められるため、そうした処理を行わないといった方法を適用することができる。他の部分の構成や作用は第1実施例と同様である。
[第4実施例]
図4は本発明の第4実施例に係る電力変換装置の交流電圧制御ブロックの構成を示す図で、図30の交流電圧制御回路12に対して遅延回路16、差分器17、レベル検出器18、有効電流指令値補正回路22、無効電流指令値補正回路19、加算器20、加算器23、リミッタ回路21、リミッタ回路56を追加したものである。
図4の制御方法を用いた場合、交流電圧の変動が小さい場合や、き電回路における負荷起動のようにゆっくり電圧が変動する場合には、現時点での交流電圧検出値Vacと遅延時間ΔTd前の交流電圧検出値すなわち遅延回路16の出力の差は小さいため、レベル検出器18は動作しない。このため有効電流指令補正値ΔIdref、無効電流指令補正値ΔIqrefはゼロであり、最終的な有効電流指令値Idrefは上位制御系から与えられるIdrefoが、無効電流指令値Iqrefとしては、交流電圧制御回路12の出力Iqrefoがそのまま使用される。すなわち従来の電力変換装置と全く同じ動作をする。
本実施例による電力変換装置を使用すると、負荷起動などによるゆっくりした電圧変化に対しては、従来通り交流電圧制御回路12により安定に系統電圧が電圧指令値に近づくよう無効電力出力が制御され、列車がき電区間を抜けた場合などに急峻な過電圧が発生すると、ステップ的に遅れ無効電力出力を増加させ、かつ変換器10による有効電力消費量を増やす、あるいは有効電力供給量を減らす。この結果、高速に過電圧を抑制することができ、更に制御の切換などを行うことなくスムーズに通常時の制御に戻ることができる。電圧変動の要因が負荷量、すなわち有効電力量の変化である場合には、変換器の無効電力出力のみを補正するよりも、本実施例のように有効電力と無効電力の両方を補正した方が、より効果的に電圧変動を抑制できる。
図6は本発明の第5実施例に係る電力変換装置の交流電圧の制御ブロックの構成を示す図で、図30の交流電圧制御回路12に対して遅延回路16、差分器17、レベル検出器18、電流指令値補正回路25、増幅器26、増幅器27、加算器20、加算器23、リミッタ回路21、リミッタ回路56を追加したものである。
図4の第4実施例は、有効電流指令補正値ΔIdref、無効電流指令補正値ΔIqrefがそれぞれ図5に示すように個別の値、継続時間、戻し速度を設定できる構成である。それに対して図6の第5実施例における電流指令値補正回路25は図2と同様の信号を出力し、この出力信号に対して異なる増幅率Kd、Kq倍した値が有効電流指令補正値ΔIdref、無効電流指令補正値ΔIqrefとなる。このため、両信号の大きさは個別に設定できるが、継続時間や戻し速度は共通である。有効電力の補正と無効電力の補正の継続時間や戻し速度に違いを持たせる必要がない場合には、第4実施例に比べて回路構成が簡便な第5実施例を使用しても同等の作用及び効果を得ることができる。シミュレーション結果、実験結果、変電所の特性、き電系統の特性を考慮して適切な回路構成が決定される。
図7は本発明の第6実施例に係る電力変換装置の交流電圧の制御ブロックの構成を示す図で、前述の第4及び第5実施例等では、上位系から与えられる有効電流指令値Idrefoを、交流電圧制御回路12の出力を使用して生成したものである。上記特許文献1で提案されている制御方法に対し、第4実施例と同様に遅延回路16、差分器17、レベル検出器18、有効電流指令値補正回路22、無効電流指令値補正回路19、加算器20、加算器23、リミッタ回路21、リミッタ回路56を追加したものである。
図7の制御方法を用いた場合、交流電圧の変動が小さい場合や、き電回路における負荷起動のようにゆっくり電圧が変動する場合には、現時点での交流電圧検出値Vacと遅延時間ΔTd前の交流電圧検出値すなわち遅延回路16の出力の差は小さいためレベル検出器18は動作しない。このため有効電流指令補正値ΔIdref、無効電流指令補正値ΔIqrefはゼロであり、最終的な有効電流指令値Idref及び、無効電流指令値Iqrefとしては、交流電圧制御回路12の出力をそれぞれ増幅器28、増幅器29でKP倍、KQ倍した値がそのまま使用される。
本実施例による電力変換装置を使用すると、負荷起動などによるゆっくりした電圧変化に対しては、従来通り交流電圧制御により安定に系統電圧が電圧指令値に近づくよう有効電力出力及び無効電力出力が制御され、列車がき電区間を抜けた場合などに急峻な過電圧がすると、ステップ的に遅れ無効電力出力を増加させ、かつ変換器による有効電力消費量を増やす、あるいは有効電力供給量を減らす。この結果、高速に過電圧を抑制することができ、更に制御の切換などを行うことなくスムーズに通常時の制御に戻ることができる。電圧変動の要因が、負荷量すなわち有効電力量の変化である場合には、変換器の無効電力出力のみを補正するよりも、有効電力と無効電力の両方を補正した方が、より効果的に電圧変動を抑制できる。
図8は本発明の第7実施例に係る電力変換装置の交流電圧の制御ブロックの構成を示す図である。本実施例が図7の第6実施例と異なる点は、図7の有効電流指令値補正回路22と無効電流指令値補正回路19の代わりに、電流指令値補正回路25、増幅器26、増幅器27を設けた点であり、その他の構成は第6実施例と同じである。すなわち、第4実施例(図4)に対する第5実施例(図6)と同様である。
前述の第6実施例は、有効電流指令補正値ΔIdref、無効電流指令補正値ΔIqrefがそれぞれ図5に示すように個別の値、継続時間、戻し速度を設定できる構成である。それに対して図8の第7実施例における電流指令値補正回路25は図2と同様の信号を出力し、この出力信号に対して異なる増幅率Kd、Kq倍した値が有効電流指令補正値ΔIdref、無効電流指令補正値ΔIqrefとなる。このため、両信号の補正の大きさは個別に設定できるが、継続時間や戻し速度は共通である。有効電力の補正と無効電力の補正の継続時間や戻し速度に違いを持たせる必要がない場合には、前述の第6実施例に比べて回路構成が簡便な第7実施例を使用しても同等の作用及び効果を得ることができる。前述したように、シミュレーション結果、実験結果、変電所の特性、き電系統の特性を考慮して適切な回路構成が決定される。
以上で説明した各実施例(第4実施例〜第7実施例)では、検出した交流電圧の大きさが短時間で大きく変化した際に、有効電流指令値及び無効電流指令値に対して補正を行う構成としたが、無効電流指令値のみ、あるいは有効電流指令値のみに対して補正を行う構成でも同等の効果を得ることができる。
図9は本発明の第8実施例に係る無効電力補償装置あるいは電力変換装置の交流電圧制御ブロック中の、無効電流指令補正値ΔIqrefを生成する制御ブロックの構成を示す図である。この制御ブロックは、図1に示す第1実施例のレベル検出器18と無効電流指令値補正回路19の代わりに、複数のレベル検出器18−1、18−2〜18−n及び複数の無効電流指令値補正回路19−1、19−2〜19−n、及び最大値選択回路30を設けたものである。
本実施例において、無効電流指令値補正回路19−1、19−2〜19−nに設定されている無効電流指令補正値ΔIqref−1、ΔIqref−2〜ΔIqref−nは、それぞれの動作指令を与えるレベル検出器18−1、18−2〜18−nに設定された動作レベル値に応じた値を使用する。動作レベル値が大きいほど、すなわち電圧の変化量が大きいほど無効電流指令補正値の大きさも大きい値とする。例えば、レベル検出器18−1のレベル値がΔV=2kV、レベル検出器18−2のレベル値がΔV=3kV、レベル検出器18−3のレベル値がΔV=4kVの場合、値ΔIqref−1=0.1pu、ΔIqref−2=0.2pu、ΔIqref−3=0.3puといった値を設定する。
以上のように、電圧変化量が大きいほど無効電流指令補正値も大きくなるため、より効果的に電圧変動を抑制することができる。また必要以上に補正を行うことによる電圧のアンダーシュートを防止できる。
図11は本発明の第9実施例に係る電力変換装置の交流電圧制御ブロック中の、有効電流指令補正値ΔIdref及び無効電流指令補正値ΔIqrefを生成する制御ブロックの構成を示す図である。この制御ブロックは、図4に示す第4実施例あるいは図7に示す第6実施例のレベル検出器18、有効電流指令値補正回路22、無効電流指令値補正回路19の代わりに、複数のレベル検出器18−1、18−2〜18−n、複数の有効電流指令値補正回路22−1、22−2〜22−n、複数の無効電流指令値補正回路19−1、19−2〜19−n、及び最大値選択回路31、最大値選択回路30を設けたものである。
本実施例では第8実施例と同様に、有効電流指令値補正回路22−1、22−2〜22−nに設定されている各有効電流指令補正値と、無効電流指令値補正回路19−1、19−2〜19−nに設定されている各無効電流指令補正値は、それぞれの動作指令を与えるレベル検出器18−1、18−2〜18−nに設定された動作レベル値に応じた値を使用する。動作レベル値が大きいほど、すなわち電圧の変化量が大きいほど有効電流指令補正値及び無効電流指令補正値の大きさも大きい値とする。
これにより、電圧変化量が大きいほど有効電流指令補正値及び無効電流指令補正値も大きくなるため、より効果的に電圧変動を抑制することができる。また必要以上に補正を行うことによる電圧のアンダーシュートを防止できる。
図12は本発明の第10実施例に係る電力変換装置の交流電圧制御ブロック中の、有効電流指令補正値ΔIdref及び無効電流指令補正値ΔIqrefを生成する制御ブロックの構成を示す図である。この制御ブロックは、図6に示す第5実施例あるいは図8に示す第7実施例のレベル検出器18、電流指令値補正回路25の代わりに、複数のレベル検出器18−1、18−2〜18−n、複数の電流指令値補正回路25−1、25−2〜25−n、及び最大値選択回路30を設けたものである。
本実施例では第8実施例と同様に、電流指令値補正回路25−1、25−2〜25−nに設定されている各電流指令補正値は、それぞれの動作指令を与えるレベル検出器18−1、18−2〜18−nに設定された動作レベル値に応じた値を使用する。動作レベル値が大きいほど、すなわち電圧の変化量が大きいほど電流指令補正値の大きさも大きい値とする。
これにより、電圧変化量が大きいほど有効電流指令補正値及び無効電流指令補正値も大きくなるため、より効果的に電圧変動を抑制することができる。また必要以上に補正を行うことによる電圧のアンダーシュートを防止できる。
以上で説明した第9実施例及び第10実施例では、電圧変動のレベル(大きさ)に応じて、有効電流指令補正値と無効電流指令補正値の両方の大きさを変える構成とした。しかし、有効電流指令補正値は各レベル共通とし、無効電流指令補正値のみ電圧変動のレベルに応じて大きさを変える方法を使用しても同等の効果を得ることができる。逆に無効電流指令補正値は各レベル共通とし、有効電流指令補正値のみ電圧変動の大きさのレベルに応じて大きさを変える方法を使用しても同等の効果を得ることができる。
図13は本発明の第11実施例に係る無効電力補償装置あるいは電力変換装置の交流電圧制御ブロック中の、無効電流指令補正値ΔIqrefを生成する制御ブロックの構成を示す図で、図1に示す第1実施例に対し、レベル検出器32と論理積(AND)回路33を追加したものである。
本実施例を使用した場合、交流電圧検出値Vacが急激に大きく変動し、かつその過電圧値が一定値以上になった場合に、無効電流指令値補正回路19が動作して遅れ無効電流がステップ的に増加することによって過電圧が抑制される。Vacが急激に大きく変動しても、例えば変動する前の電圧が低下していて急峻に上昇した電圧の絶対値がレベル検出器32に設定された動作レベルを超えなければ、従来の制御と同様に交流電圧制御回路6のみで電圧の制御が行なわれる。また過電圧の絶対値が大きくても、変動がゆっくりしている場合にはレベル検出器18が動作しないので従来の制御と同様に交流電圧制御回路6のみで電圧の制御が行なわれる。
電圧が急激に大きくなっても、その絶対値が大きくなければ問題のないような系統に接続されている場合には、本実施例の制御を適用することにより、急激な過電圧を抑制し、かつ低め電圧で運転している場合の不要な過電圧抑制動作を防止することができる。
図14は本発明の第12実施例に係る電力変換装置の制御回路中の、有効電流指令補正値ΔIdref、及び無効電流指令補正値ΔIqrefを生成する制御ブロックの構成を示す図で、図8に示す第7実施例に対し、レベル検出器32と論理積(AND)回路33を追加したものである。第11実施例と同様に、レベル検出器18は入力信号が予め設定された動作レベル値を越えた場合に「ON」信号を論理積回路33へ与える一方、レベル検出器32には現時点での交流電圧検出値Vacが入力され、その大きさが予め設定された動作レベル値を越えた場合に「ON」信号を論理積回路33へ与える。論理積回路33ではレベル検出器18及びレベル検出器32の出力の両方が「ON」となった場合に、電流指令値補正回路25に対して動作指令を与える。これ以外の構成は図8の第7実施例と同様である。
本実施例を使用した場合、交流電圧検出値Vacが急激に大きく変動し、かつその過電圧値が一定値以上になった場合に、電流指令値補正回路25が動作して遅れ無効電流及び有効電力がステップ的に増加することによって過電圧が抑制される。検出値Vacが急激に大きく変動しても、たとえば変動する前の電圧が低下していて過電圧の絶対値がレベル検出器32に設定された動作レベルを超えなければ、従来の制御と同様に交流電圧制御回路12のみで電圧の制御が行なわれる。また過電圧の絶対値が大きくても、変動がゆっくりしている場合にはレベル検出器18が動作しないので従来の制御と同様に交流電圧制御回路12のみで電圧の制御が行なわれる。
電圧が急激に大きくなっても、その絶対値が大きくなければ問題のないような系統に接続されている場合には、本実施例の制御を適用することにより、急激な過電圧を抑制し、且つ低め電圧で運転している場合の不要な過電圧抑制動作を防止することができる。
図1の第1実施例に対して交流電圧検出値Vacに対するレベル検出器32と論理積回路33を追加することにより図13の第11実施例を構成し、図8の第7実施例に対して交流電圧検出値Vacに対するレベル検出器32と論理積回路33を追加することにより図14の第12実施例を構成したように、図4に示す第4実施例、図6に示す第5実施例、あるいは図7に示す第6実施例に対しても、交流電圧検出値Vacに対するレベル検出器32と論理積回路33を追加することによって、第11実施例、第12実施例と同様の効果を得ることができる。1例として、図7に示す第6実施例に対して、交流電圧検出値Vacに対するレベル検出器32と論理積回路33を追加した構成を図15に示す。
図16は本発明の第13実施例に係る無効電力補償装置あるいは電力変換装置の交流電圧制御ブロック中の、無効電流指令補正値ΔIqrefを生成する制御ブロックの構成を示す図である。この制御ブロックは図1に示す第1実施例に対し、レベル検出器32と論理和(OR)回路34を追加したものである。
本実施例を使用した場合、交流電圧検出値Vacが急激に大きく変動した場合、あるいは過電圧値が一定値以上になった場合に、無効電流指令値補正回路19が動作し、遅れ無効電流がステップ的に増加することによって過電圧が抑制される。検出値Vacの電圧上昇が交流電圧制御回路6の応答速度より速く、遅延回路16と差分器17とレベル検出器18で構成されるレベル検出回路の応答速度より遅い場合で、過電圧の絶対値がレベル検出器32に設定された動作レベルを超えた場合には、無効電流指令値補正回路19が動作して過電圧を急速に抑制するよう動作する。
電圧の変動がそれほど急峻でなくても、過電圧絶対値が大きいと問題が生じるような系統に接続されている場合には、本実施例の制御を適用することにより、確実に過電圧を抑制することができる。
図17は本発明の第14実施例に係る電力変換装置の交流電圧制御ブロック中の、有効電流指令補正値ΔIdref、及び無効電流指令補正値ΔIqrefを生成する制御ブロックの構成を示す図である。この制御ブロックは、図8に示す第7実施例に対し、レベル検出器32と論理和(OR)回路34を追加したものである。図16の第13実施例と同様に、レベル検出器18は入力信号が予め設定された動作レベル値を越えた場合に「ON」信号を論理和回路34へ与える。一方、レベル検出器32には現時点での交流電圧検出値Vacが入力され、その大きさが予め設定された動作レベル値を越えた場合に「ON」信号を論理和回路34へ与える。論理和回路34ではレベル検出器18あるいはレベル検出器32の出力のいずれか一方が「ON」となった場合に、電流指令値補正回路25に対して動作指令を与える。これ以降の構成は図8の第7実施例と同様である。
本実施例を使用した場合、交流電圧検出値Vacが急激に大きく変動した場合、あるいは過電圧値が一定値以上になった場合に、電流指令値補正回路25が動作して有効電力及び遅れ無効電流がステップ的に増加することによって過電圧が抑制される。Vacの変動が比較的ゆっくりしていてレベル検出器18では動作しない場合でも、過電圧の絶対値が大きくなりレベル検出器32に設定された動作レベルを超えた場合には、電流指令値補正回路25が動作して過電圧を急速に抑制するよう動作する。
電圧の変動がそれほど急峻でなくても、過電圧絶対値が大きいと問題が生じるような系統に接続されている場合には、本実施例の制御を適用することにより、確実に過電圧を抑制することができる。
図1の第1実施例に対して交流電圧検出値Vacに対するレベル検出器32と論理和回路34を追加することにより図16の第13実施例を構成し、図8の第7実施例に対して交流電圧検出値Vacに対するレベル検出器32と論理和回路34を追加することにより図17の第14実施例を構成したように、図4に示す第4実施例、図6に示す第5実施例、あるいは図7に示す第6実施例に対しても、交流電圧検出値Vacに対するレベル検出器32と論理和回路34を追加することによって、第13実施例、第14実施例と同様の効果を得ることができる。1例として、図7に示す第6実施例に対して、交流電圧検出値Vacに対するレベル検出器32と論理和回路34を追加した構成を図18に示す。
図19は本発明の第15実施例に係る電力変換装置の交流電圧制御ブロック中の、有効電流指令値及び無効電流指令値を出力する制御ブロックを示し、特に各電流指令値に対する出力リミッタの構成を示すブロック図である。図中の有効電流指令補正値ΔIdref’は図4、図7における有効電流指令値補正回路22の出力信号、あるいは図6、図8、図12、図14、図17における増幅器26の出力信号、あるいは図11における最大値選択回路31の出力信号である。また、無効電流指令補正値ΔIqref’は図4、図7における無効電流指令値補正回路19の出力信号、あるいは図6、図8、図12、図14、図17における増幅器27の出力信号、あるいは図11における最大値選択回路30の出力信号である。更に、図中の有効電流指令値Idrefo’は図4〜図17の各実施形態で上位制御系あるいは交流電圧制御回路12から与えられる有効電流指令値信号である。また、無効電流指令値Iqrefo’は図4〜図17の各実施形態で交流電圧制御回路12あるいは増幅回路29から与えられる無効電流指令値信号である。
図19に示す第15実施例を使用した場合、過電圧が発生しておらず有効電流指令補正値ΔIdref’、無効電流指令補正値ΔIqref’がゼロの時は上位制御系や交流電圧制御回路から与えられる電流指令値Idref’、Iqref’がそれぞれ有効電力定格値±0.8pu、無効電力定格値±0.6puで制限され、従来の制御回路と同等に動作する。過電圧が発生し有効電流指令補正値ΔIdref’、無効電流指令補正値ΔIqref’が発生した場合、リミッタ回路21により無効電流指令値Iqrefは変換器容量定格値±1.0puを越えない範囲内で補正が行われる。その結果得られる値は、場合によっては無効電力定格値±0.6puを越える大きさ(例えば+0.9pu)になる可能性がある。その場合、リミット値演算回路37で演算されるリミッタ回路56の上下限リミット値は、±√(MVA2−Iqref2)=±√(12−0.92)=±0.436puとなる。有効電流指令値Idrefはこの範囲を逸脱しないようリミッタ回路56により制限されて出力される。
この第15実施例によれば、通常時は従来の制御装置と同様、有効電流指令値と無効電流指令値はそれぞれ有効電力定格、無効電力定格を逸脱しない範囲の値で、更に皮相電流が変換器定格容量を越えない範囲で運転される。過電圧が発生した場合には、無効電流指令値に対して変換器定格容量を越えない範囲で補正が行われ、その結果得られた値に基づいて制限値が演算され、有効電流指令値が制限(低減)される。この結果、無効電力出力を優先する運転となり、より効果的に過電圧を抑制することができる。これはき電系統の負荷が殆どリアクトル成分だからである。
図20は本発明の第16実施例に係る電力変換装置の交流電圧制御ブロック中の、有効電流指令値及び無効電流指令値を出力する制御ブロックを示し、特に各電流指令値に対する出力リミッタの他の構成を示すブロック図である。図中の有効電流指令補正値ΔIdref’は上記第15実施例と同様に図4、図7における有効電流指令値補正回路22の出力信号、あるいは図6、図8、図12、図14、図17における増幅器26の出力信号、あるいは図11における最大値選択回路31の出力信号である。無効電流指令補正値ΔIqref’は、また第15実施例と同様に、図4、図7における無効電流指令値補正回路19の出力信号、あるいは図6、図8、図12、図14、図17における増幅器27の出力信号、あるいは図11における最大値選択回路30の出力信号である。更に、図中の有効電流指令値Idrefo’は図4〜図8、図14、図17等の実施例で上位制御系あるいは交流電圧制御回路12あるいは増幅器28から与えられる有効電流指令値信号である。また、無効電流指令値Iqrefo’は図4〜図8、図14、図17等の実施例で交流電圧制御回路12あるいは増幅回路29から与えられる無効電流指令値信号である。
図20に示す第16実施例を使用した場合、過電圧が発生しておらず有効電流指令補正値ΔIdref’、無効電流指令補正値ΔIqref’がゼロの時は上位制御系や交流電圧制御回路から与えられる電流指令値Idref’、Iqref’がそれぞれ有効電力定格値±0.8pu、無効電力定格値±0.6puで制限され、従来の制御回路と同等に動作する。過電圧が発生し有効電流指令補正値ΔIdref’、無効電流指令補正値ΔIqref’が発生した場合、無効電流指令補正値ΔIqrefは上位制御系から与えられる有効電流指令値に影響を与えず、かつ結果として得られる皮相電流が変換器容量定格値±1.0puを越えない範囲内に制限される。たとえばIdrefo=+0.8pu、Iqrefo=0.5puで運転している状態で、値ΔIqref’=+0.2puが与えられた場合に、Iqref=Iqrefo+ΔIqref’=0.7puとすると皮相電流が1.0puを越えるため、無効電流指令補正値ΔIqrefは+0.1puに制限される。更に有効電流指令補正値ΔIdrefは無効電流指令値の補正を行った上で電流容量に余裕のある範囲内に制限される。たとえば上記のようにIdrefo=+0.8puで補正後の無効電流指令値Iqref=0.6puとなった場合に、ΔIdrefとして正の値が与えられても上限リミット値がゼロになっているため有効電流に対しては補正が行われない。ΔIdrefが負の値であれば皮相電流が低減される方向なので補正が行われる。
この第16実施例によれば、通常時は従来の制御装置と同様、有効電流指令値と無効電流指令値はそれぞれ有効電力定格、無効電力定格を逸脱しない範囲の値で、更に皮相電流が変換器定格容量を越えない範囲で運転される。過電圧が発生した場合には、無効電流指令値に対して変換器定格容量を越えず、かつ上位制御系から与えられる有効電流指令値に対しては影響を与えない範囲で補正が行われ、その結果得られた値で有効電流指令値が制限されることで、無効電力出力を優先する運転となり、より効果的に過電圧を抑制することができる。
上記第15実施例、第16実施例では、過電圧の発生により有効電流指令値及び無効電流指令値に対する補正を行う場合に、無効電流指令値に対する補正を優先させて変換器定格容量内で運転を行う方法について説明した。
図21は本発明の第18実施例に係る無効電力補償装置あるいは電力変換装置が単相交流系統に接続されている場合において、その単相交流電圧の短時間の変化の大きさを検出するための回路構成を示すブロック図である。
単相交流電圧V(t)を実効値Vac、角周波数ωの正弦波とすると、単相交流電圧V(t)は、
V(t)=√2・Vac・cosωt ・・・・・・・・・・ (1)
と現すことができる。この絶対値を1サイクル間積分すると、積分値Vintは、
Vint=2√2・Vac/ω ・・・・・・・・・・ (2)
であり、係数ω/2√2をかけてやれば実効値電圧Vacが求められる。
図22は本発明の第19実施例に係る無効電力補償装置あるいは電力変換装置が単相交流系統に接続されている場合において、その単相交流電圧の短時間の変化の大きさを検出するための他の回路構成を示すブロック図である。
図23は本発明の第20実施例に係る無効電力補償装置あるいは電力変換装置が単相交流系統に接続されている場合において、その単相交流電圧の短時間の変化の大きさを検出するための回路構成を示すブロック図である。
(1)式で得られる単相交流電圧V(t)を二乗して1サイクル間積分すると、
Vint2=2π・Vac2/ω ・・・・・・・・・・ (3)
であり、この平方根をとって係数√(ω/2π)をかけてやれば実効値電圧Vacが求められる。従って図23の回路を用いることで図21の実施例と同様に、連続的に実効値電圧すなわち単相交流電圧の大きさを提供できる。更にその値を一定時間前の値と比較することで、単相の交流電圧の大きさの短時間の変化分を検出することができる。
図21〜図23で説明した第18実施例〜第20実施例では、瞬時電圧信号の絶対値あるいは二乗値に対して基本周波数の1サイクル間の積分を行う構成としたが、これを半サイクル間の積分とし、規格化回路44の係数を2倍しても同様に単相電圧の大きさを検出できる。半サイクル積分とした場合、検出対象の正弦波電圧信号の正側と負側の大きさが非対称であると、検出した電圧の大きさに脈動が重畳する可能性があるが、1サイクル積分に比べて電圧変動をより高速に検出できるというメリットもある。適用する系統の特性や装置を、設置する目的に応じて1サイクル積分または半サイクル積分を選択すればよい。
図24は本発明の第21実施例に係る無効電力補償装置あるいは電力変換装置が単相交流系統に接続されている場合において、その単相交流電圧の短時間の変化の大きさを検出するための他の回路構成を示すブロック図である。
V=√(V2(t)+V2(t−90°)) ・・・・・・ (4)
の演算を行う。単相交流電圧V(t)が(1)式で得られる信号の場合、その90°遅れの信号は、
V(t−90°)=√2・Vac・cos(ωt−90°)=√2・Vac・sinωt ・・・・・ (5)
であり、(1)式と(5)式を(4)式に代入すると、
V=√2・Vac・√(cos2ωt+sin2ωt)=√2・Vac ・・・・・ (6)
であり、1/√2倍すれば実効値電圧すなわち単相交流電圧の大きさを検出することができる。更にその値を一定時間前の値と比較することで、単相の交流電圧の大きさの短時間の変化分を検出することができる。
図25は本発明の第22実施例に係る無効電力補償装置あるいは電力変換装置が単相交流系統に接続されている場合において、その単相交流電圧の短時間の変化の大きさを検出するための他の回路構成を示すブロック図である。
[第23実施例]
図26は本発明の第23実施例に係る無効電力補償装置あるいは電力変換装置が単相交流系統に接続されている場合において、その単相交流電圧の短時間の変化の大きさを検出するための回路構成を示すブロック図であって、その出力信号は例えば図1のレベル検出器8に供給される。
図26の(第23実施例)を使用した場合の、各信号の動作例を図27に示す。単相交流電圧の波高値が、1.0、1.0、1.1、0.9、1.4・・・と変化した場合、絶対値検出器42の出力信号は図27(a)のように変化する。これに対して3/4サイクル前〜1/4サイクル前の間の最大値を選択すると、図27(b)のような波形が得られる。これが最大値選択回路52の出力信号となる。図27(a)の信号すなわち絶対値検出器42の出力と図27(b)の信号すなわち最大値選択回路52の差分を求めると図27(c)の信号が得られる。これが加算器53の出力となる。この値がレベル検出器18の動作レベル値より大きくなるとレベル検出器が動作する。すなわち瞬時電圧がその1サイクル程度前の電圧波高値に比べて一定値以上大きくなった場合に、短時間過電圧が発生したと判断される。これにより、単相交流電圧の急激な電圧上昇を検出することができる。
Claims (11)
- 無効電力を入出力することによって、交流系統に供給される交流電圧の大きさを調整する無効電力補償装置における交流電圧制御方法において、
前記無効電力補償装置が接続された前記交流系統の電圧検出値の大きさと、所定の電圧指令値の差分が、零に近づくように無効電流指令値を発生する工程と、
前記交流電圧の基本周波数の所定サイクル数以内の短時間における前記電圧検出値の変化量が第1所定値を超えたか否か判断し、前記変化量が第1所定値を超えた場合に動作指令信号を提供する工程と、
前記動作指令信号が提供された場合、第2所定値の大きさで第1所定時間継続し、その後徐々に減少してゼロとなる信号を前記無効電流指令値に付加して前記無効電流指令値を補正する工程と、
前記無効電力補償装置の無効電流出力が前記補正された無効電流指令値に追従するよう制御を行う工程と、
を具備することを特徴とする交流電圧制御方法。 - 有効電力及び無効電力を入出力することによって、交流系統に供給される交流電圧の大きさを調整する電力変換装置における交流電圧制御方法において、
前記電力変換装置が接続された前記交流系統の電圧検出値の大きさと、所定の電圧指令値の差分が、零に近づくように無効電流指令値及び有効電流補正値を発生する工程と、
前記交流電圧の基本周波数の所定サイクル数以内の時間における前記電圧検出値の変化量が第1所定値を超えたか否か判断し、前記変化量が第1所定値を超えた場合に動作指令信号を提供する工程と、
前記動作指令信号が提供された場合、第2所定値の大きさで第1所定時間継続し、その後徐々に減少してゼロとなる信号を前記無効電流指令値に付加して前記無効電流指令値を補正する工程と、
前記動作指令信号が提供された場合、第3所定値の大きさで第2所定時間継続し、その後徐々に減少してゼロとなる信号を前記有効電流指令値に付加して前記有効電流指令値を補正する工程と、
前記電力変換装置の出力電流が前記補正された無効電流指令値及び前記補正された有効電流補正値に追従するよう制御を行う工程と、
を具備することを特徴とする交流電圧制御方法。 - 前記無効電流指令値を補正する工程は、前記第2所定値及び前記第1所定時間の一方あるいは両方を前記差分の大きさに応じた値に設定し、前記無効電流指令値を補正することを特徴とする請求項1または2記載の交流電圧制御方法。
- 前記無効電流指令値を補正する工程は、前記第2所定値及び前記第1所定時間の一方あるいは両方を前記差分の大きさに応じた値に設定し、前記無効電流指令値を補正し、
前記有効電流指令値を補正する工程は、前記第3所定値及び前記第2所定時間の一方あるいは両方を前記差分の大きさに応じた値に設定し、前記有効電流指令値を補正することを特徴とする請求項2記載の交流電圧制御方法。 - 前記動作指令信号を提供する工程は、前記短時間における前記電圧検出値の変化量が前記第1所定値を超え、かつ前記電圧検出値の大きさが第4所定値を超えた場合、前記動作指令信号を提供することを特徴とする請求項1または2記載の交流電圧制御方法。
- 動作指令信号を提供する工程は、前記短時間における前記電圧検出値の変化量が前記第1所定値を超えた場合、または前記電圧検出値の大きさが第4所定値を超えた場合、前記動作指令信号を提供することを特徴とする請求項1または2記載の交流電圧制御方法。
- 前記補正を行った後の有効電流指令値と無効電流指令値により得られる電流絶対値(皮相電力値)が一定の値を超える場合には、有効電流指令値に対する補正量、あるいは最終的な有効電流指令値の絶対値を低減する工程を具備することを特徴とする請求項2、4〜6のうち1項記載の交流電圧制御方法。
- 前記補正を行った後の有効電流指令値と無効電流指令値により得られる電流絶対値(皮相電力値)が一定の値を超える場合には、無効電流指令値に対する補正量、あるいは最終的な無効電流指令値の絶対値を低減する工程を具備することを特徴とする請求項2、4〜6のうち1項記載の交流電圧制御方法。
- 前記交流電圧は単相交流電圧であって、前記電圧検出値は、瞬時交流電圧の絶対値を1サイクル積分または半サイクル積分することにより得られる値、または瞬時交流電圧の二乗を1サイクル積分または半サイクル積分した値の平方根をとることにより得られる値であって、現時点での電圧検出値と一定時間前の電圧検出値の差分を前記検出値の変化量として使用することを特徴とする請求項1乃至8のうち1項記載の交流電圧制御方法。
- 前記交流電圧は単相交流電圧であって、前記電圧検出値は、瞬時交流電圧検出値の二乗と1/4サイクル前の瞬時交流電圧検出値の二乗との和の平方根を演算することで得られ、現時点での前記検出電圧と一定時間前の検出値の差分を、前記検出値の前記変化量として使用することを特徴とする請求項1乃至8のうち1項記載の交流電圧制御方法。
- 前記交流電圧は単相交流電圧であって、瞬時交流電圧検出値の絶対値と、現時点から一定時間前までの特定の期間内における瞬時電圧絶対値の最大値との差分を、前記検出値の変化量として使用することを特徴とする請求項1乃至8のうち1項記載の交流電圧制御方法。
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